説明

プリント配線板の接続構造、配線板接続体、電子機器及び配線板接続体の製造方法

【課題】プリント配線板同士、又はプリント配線板と電子部品等とを異方導電性接着剤を介して接続する場合に、接続電極部の腐食を防止できるとともに、接続部近傍に応力や変形が集中するのを防止できる。
【解決手段】プリント配線板1と被接続部材11とを接続して構成されるプリント配線板の接続構造であって、第1の接続電極部4aが露出させられた第1の接続領域5を有する上記プリント配線板1と、第2の接続電極部14aが露出させられた第2の接続領域15を有する上記被接続部材11とを備え、異方導電性接着剤10を介して、上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部とを導通させた状態で、上記第1のプリント配線板と上記第2のプリント配線板とが接着されているとともに、上記異方導電性接着剤は、少なくとも一方の接続領域より広い領域を覆うように積層接着されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プリント配線板同士、あるいはプリント配線板と電子部品とを接続するためのプリント配線板の接続構造、配線板接続体、電子機器及び配線板接続体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、プリント配線板に電子部品等を搭載する場合のみならず、異なるプリント配線板上に設けられた接続電極を電気的に接続することにより、複数のプリント配線板を接続した構造が採用されることも多い。たとえば、電子機器の可動部への配線等の用途にフレキシブルプリント配線板が多用されるが、電子機器の小型化及び高機能化にともなって、上記フレキシブルプリント配線板同士の配線板接続体や、上記フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板との配線板接続体等の多様な配線板接続体が用いられる。
【0003】
上記プリント配線板同士、あるいはプリント配線板と電子部品を接続するのに導電性接着剤を用いることができる。導電性接着剤は、絶縁性のある樹脂接着剤に微細な導電性粒子を分散させて構成されている。接続するプリント配線板の対向する接続電極部を含む領域に上記導電性接着剤を介在させて、圧力と温度とを加えて挟圧することにより、これらプリント配線板が接着されると同時に、上記導電性粒子が電極間に掛け渡されてこれら接続電極部が導通させられる。一方、隣接する接続電極部間は電気的に絶縁される。上記導電性接着剤としてフィルム形態の異方導電性接着剤フィルム(Anisotropic Conductive Film、以下ACFという。)が採用されることが多い。
【0004】
上記ACFは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、導電性粒子と、硬化剤とを含んで構成されている。上記硬化剤は、マイクロカプセルに封入された状態で上記熱硬化性樹脂中に配合されている。上記導電性接着剤に圧力及び温度を作用させることにより、上記マイクロカプセルが破壊されて上記硬化剤が熱硬化性樹脂中に拡散され、上記導電性粒子を介して上記接続電極間を導通させた状態で上記熱硬化性樹脂が硬化させられ、配線板接続体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3912244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記プリント配線板の接続電極部に他のプリント配線板あるいは電子部品の接続電極部を接続するには、上記接続電極部を露出させなければならない。
【0007】
プリント配線板の配線層を保護するために、接着剤を介してカバーフィルムを積層して形成されるカバー層が設けられている。上記カバー層の所定の領域を切除することにより、複数の接続電極部を露出させた接続領域が設けられる。そして、他のプリント配線板や電子部品等の被接続部材の接続電極部との間で異方導電性接着剤を加熱加圧することにより、これら接続電極部が導通させられるとともに、これら部材を一体的に接合することができる。
【0008】
異方導電性接着剤は、熱硬化性樹脂を含んで構成されており、しかも、接続工程において加熱加圧されることにより接続電極部の表面に密着させられて、接続電極部の腐食を防止することができる。
【0009】
ところが、接続領域の縁部には、上記カバー層を除去したことによる段差があるため、上記カバー層の縁部近傍に積層された異方導電性接着剤を加熱加圧することは困難である。このため、上記接続領域よりひとまわり小さい範囲に異方導電性接着剤が設けられて、上記接続電極部が他のプリント配線板等の接続電極部と接続される。したがって、切除した上記カバー層の縁部と、上記異方導電性接着剤との間の領域では、接続電極部が露出させられた状態となる。このため、この領域の接続電極部に腐食が生じやすかった。
【0010】
また、上記接続電極部が露出する上記接続領域の周縁部には、カバー層が除去されて絶縁性基材と配線層のみから構成される厚みの薄い領域が存在することになる。したがってプリント配線板が変形させられた場合、上記厚みの薄い領域に応力や変形が集中することになり、上記部分においてプリント配線板が破損しやすくなる。また、絶縁性基材が破損しない場合であっても、電極にクラックが生じたり、断線等が生じやすい。特に、酸化防止のために金メッキが設けられることがあるが、上記金メッキにクラックが生じやすいという問題があった。
【0011】
本願発明は、上記問題を解決するために案出されたものであって、プリント配線板同士、又はプリント配線板と電子部品等とを異方導電性接着剤を介して接続する場合に、接続電極部の腐食を防止できるとともに、接続部近傍に応力や変形が集中するのを防止できるプリント配線板の接続構造、配線板接続体、電子機器及び配線板接続体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に記載した発明は、プリント配線板と被接続部材とを接続して構成されるプリント配線板の接続構造であって、第1の接続電極部が露出させられた第1の接続領域を有する上記プリント配線板と、第2の接続電極部が露出させられた第2の接続領域を有する上記被接続部材とを備え、異方導電性接着剤を介して、上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部とを導通させた状態で、上記第1のプリント配線板と上記第2のプリント配線板とが接着されているとともに、上記異方導電性接着剤を、少なくとも一方の接続領域より広い領域を覆うように積層接着して構成される。
【0013】
本願発明では、上記第1の接続領域と上記第2の接続領域の少なくとも一方の接続領域より広い領域を覆うようにして異方導電性接着剤が積層接着される。すなわち、少なくとも一方の接続領域を封止するようにして、上記異方導電性接着剤が積層接着される。
【0014】
プリント配線板と被接続部材において、接続電極部を露出させて設けられる接続領域の大きさが異なる場合がある。この場合、少なくとも一方の接続領域より広い範囲に、上記異方導電性接着剤を設けることにより、上記一方の接続領域を封止し、この領域において露出させられた接続電極部の腐食を防止することができる。
【0015】
請求項2に記載した発明のように、上記異方導電性接着剤を、上記第1の接続領域及び上記第2の接続領域より広い領域に設けるのが好ましい。これにより、上記第1の接続領域と上記第2の接続領域の双方が、上記異方導電性接着剤に封止されて、これら領域において露出させられた接続電極部の腐食が防止される。
【0016】
少なくとも電気的に接続される接続電極部間においては、上記異方導電性接着剤は上記プリント配線板と上記被接続部材によって挟圧される。また、上記接続領域以外の領域であって、上記プリント配線板と上記被接続部材が重ね合わされる部分においても、これらの間に存在する異方導電性接着剤はこれら部材によって挟圧することができる。
【0017】
ところが、プリント配線板と被接続部材の一方の接続領域上に他方の部材が重ね合わされない場合、上記一方の接続領域より広い範囲に異方導電性接着剤を設けると、上記プリント配線板と上記被接続部材間で、上記異方導電性接着剤を挟圧できない領域が生じる。このような場合、上記領域の異方導電性接着剤を直接加熱加圧することにより、上記一方の接続領域を封止することができる。
【0018】
また、本願発明に係る接続構造においては、少なくとも一方の接続領域の全域を異方導電接着剤で覆うことができる。このため、上記接続領域の周縁部において、絶縁性基材と配線層のみからなる厚みの小さい領域がなくなり、上記部分に応力や変形が集中することがなくなる。したがって、プリント配線板が損傷したり、断線が生じるのを防止できる。
【0019】
また、双方の接続領域の外側において、異方導電性接着剤を介して、プリント配線板と被接続部材とを接続することができる。たとえば、被接続部材として他のプリント配線板を採用した場合、双方の接続領域の外側において、カバー層同士が異方導電性接着剤を介して接着される。このため、上記プリント配線板同士の接着強度を高めることが可能となる。
【0020】
上記プリント配線板の種類や形態は特に限定されることはない。請求項3に記載した発明のように、上記プリント配線板としてフレキシブルプリント配線板を採用できる。また、フレキシブルプリント配線板のみならず、リジッドプリント配線板に本願発明を適用することもできる。
【0021】
また、上記被接続部材も特に限定されることはない。たとえば、種々の電子部品や、請求項4に記載した発明のように他のプリント配線板を採用することができる。
【0022】
特に、一方のプリント配線板が繰り返し屈曲させられる屈曲部を構成する場合、接続部分に応力や変形が集中するのを防止することができるため、信頼性の高い配線板接続体を提供できる。
【0023】
上記異方導電性接着剤は、絶縁性のある樹脂接着剤に微細な導電性粒子を分散させて構成されている。接続するプリント配線板の対向する接続電極を含む接続領域に上記導電性接着剤を介在させて、圧力と温度とを加えて挟圧することにより、これらプリント配線板が接着されると同時に、上記導電性粒子が電極間に掛け渡されてこれら接続電極が導通させられる。一方、隣接する接続電極間は電気的に絶縁される。上記導電性接着剤としてフィルム形態の異方導電性接着剤フィルムやペースト状の異方導電性接着剤を採用することができる。
【0024】
請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板の接続構造を備える配線板接続体に係るものである。
【0025】
本願発明に係るプリント配線板の接続構造は、種々の配線板接続体に適用することができる。たとえば、プリント配線板と電子部品等を接続して構成される配線板接続体や、プリント配線板同士を接続して構成される配線板接続体に適用できる。プリント配線同士の場合におけるプリント配線板の種類も特に限定されることはなく、フレキシブルプリント配線板同士の配線板接続体のみならず、リジッドプリント配線板とフレキシブルプリント配線板の配線板接続体にも適用できる。さらに、リジッドプリント配線板同士の配線板接続体にも適用できる。
【0026】
本願発明に係るプリント配線板の接続構造を備える配線板接続体は、携帯電話をはじめ種々の電子機器に適用できる。
【0027】
請求項7に記載した発明は、プリント配線板とこのプリント配線板に接続される被接続部材を、異方導電性接着剤を介して接続する、配線板接続体の製造方法であって、第1の接続電極部が設けられた接続領域を有する上記プリント配線板を準備する工程と、上記第1の接続電極部に接続される第2の接続電極部が設けられた第2の接続領域を有する上記被接続部材を準備する工程と、少なくとも上記第1の接続領域と上記第2の接続領域の一方の接続領域より広い領域を覆う異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の間に介挿してこれら部材を位置決め積層する積層工程と、加熱加圧治具の間において、積層された上記第1のプリント配線板、上記被接続部材及び異方導電性接着剤を加熱加圧して、上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部を導通させるとともに、上記プリント配線板と上記被接続部材とを接着する加熱加圧工程とを含んで構成される。
【0028】
上記プリント配線板を準備する工程は、接続電極部を有するプリント配線板を製作する既知の手法を用いて行うことができる。また、上記プリント配線板の種類は限定されることはなく、プリント配線板の種類に応じてプリント配線板を準備する工程を行うことができる。
【0029】
上記被接続部材は特に限定されることはない。他のプリント配線板や電子部品を被接続部材として採用することができる。上記被接続部材を準備する工程も、上記被接続部材の種類に応じて行うことができる。
【0030】
請求項8に記載した発明のように、上記積層工程において、上記第1の接続領域及び上記第2の接続領域より広い領域を覆う異方導電性接着剤を設けることができる。
【0031】
また、上記積層工程は、フィルム状の異方導電性接着剤を上記プリント配線板と上記被接続部材との間に配置することにより行うこともできるし、ペースト状の異方導電性接着剤を上記プリント配線板と上記被接続部材の少なくとも一方の接続領域より広い範囲に塗着することにより行うこともできる。
【0032】
本願発明では、上記異方導電性接着剤が、少なくとも一方の接続領域より広い範囲に積層接着される。したがって、上記加熱加圧工程において、上記接続電極間の電気的導通を行うための加熱加圧操作と、上記接続電極部間以外の領域において異方導電性接着剤を接着硬化させる加熱加圧操作を行う必要がある。また、本願発明では、加熱加圧工程において、異方導電性接着剤が上記プリント配線板と上記被接続部材との間で挟圧される場合の他、異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の一方との間で直接加熱加圧する操作を行う場合が含まれる。
【0033】
請求項9に記載した発明のように、上記複数の加熱加圧操作からなる上記加熱加圧工程を、一つの工程において行うことができる。すなわち、接続電極部間を導通させるための加熱加圧操作と、上記接続電極部間以外の領域における加熱加圧操作とを、一度の加熱加圧工程によって行うことができる。これら複数の加熱加圧操作を一度の加熱加圧工程で行う場合、上記複数の加熱加圧操作を同時に行うことできる段付き状の加熱加圧治具が用いられる。
【0034】
上記加熱加圧工程を、複数の工程に分けて行うこともできる。たとえば、請求項10に記載した発明のように、上記加熱加圧工程を、少なくとも上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部との間で上記異方導電性接着剤を加熱加圧する第1の加熱加圧工程と、上記第1の加熱加圧工程において加熱加圧されない異方導電性接着剤が存在する領域を加熱加圧する第2の加熱加圧工程とを含んで行うことができる。
【0035】
この場合、上記第1の加熱加圧工程と、上記第2の加熱加圧工程とを、異なる加熱加圧治具によって順次行うことができる。
【0036】
上記第1の加熱加圧工程は、接続電極間を電気に導通させるために行うものである。一方、上記第2の加熱加圧工程は、上記第1の加熱加圧工程の対象とならない領域において、上記プリント配線板と上記被接続部材とを機械的に接合し、あるいは異方導電性接着剤を硬化させるとともに、上記プリント配線板あるいは上記被接続部材に積層接着するために行われる。したがって、上記第1の加熱加圧工程では、異方導電性接着剤を流動変形させるとともに、これに含まれる金属粒子等を接続電極部間に掛け渡してこれら接続電極部を導通させる必要がある。一方、第2の加熱加圧工程では、上記プリント配線板と上記被接続部材とを接着し、あるいは異方導電性接着剤を一方の部材表面に接着して硬化させればよい。したがって、上記第1の加熱加圧工程と上記第2の加熱加圧工程における加熱温度及び作用圧力を異ならせることができる。
【0037】
請求項11に記載した発明のように、上記第2の加熱加圧工程を、上記異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の間で加熱加圧する工程を含んで行うことができる。たとえば、請求項9に記載した発明において、異方導電性接着剤が、第1の接続領域及び第2の接続領域より広い範囲に積層される場合、上記両接続領域の外側において、上記異方導電性接着剤が、上記プリント配線板と上記被接続部材との間で挟圧されることになる。この場合、異方導電性接着剤は、上記プリント配線板と上記被接続部材間で挟圧されるため、上記第1の加熱加圧工程とほぼ同様の温度及び圧力で工程を行うことができる。
【0038】
また、請求項12に記載した発明のように、上記第2の加熱加圧工程を、上記異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の一方と上記加熱加圧治具との間で加熱加圧する工程を含んで行うことができる。この場合、作用圧力及び温度は、上記第1の加熱加圧工程を行う温度・圧力に比べて小さく設定できる。また、加熱加圧治具によって、異方導電性接着剤が直接加熱加圧されるため、離型シート等を介して加熱加圧操作を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
プリント配線板と被接続部材とを異方導電性接着剤で接続する場合、上記異方導電性接着剤を用いて、接続領域において露出させられた接続電極の腐食を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明に係るプリント配線板の接続構造の第1の実施形態を示す図であり、接続前の状態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すプリント配線板の接続領域を示す平面図である。
【図3】図1におけるII−II線に沿う要部断面図である。
【図4】図3に示す部材の接続後の状態を示す要部断面図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿う断面図である。
【図6】本願発明に係るプリント配線板の接続構造の第2の実施形態を示す図であり、接続前の状態を示す分解斜視図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に沿う要部断面図である。
【図8】図7に示す部材に第1の加熱加圧工程を行う状態を示す要部断面図である。
【図9】第1の加熱加圧工程を終え、第2の加熱加圧工程を行う前の状態を示す要部断面図である。
【図10】第2の加熱加圧工程を行う状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るプリント配線板の接続構造は、第1のプリント配線板1に対して被接続部材として第2のプリント配線板11を接続するものである。
【0042】
本実施形態では、上記第1のプリント配線板1と上記第2のプリント配線板2の双方にフレキシブルプリント配線板を採用している。上記第1のプリント配線板1は、フィルム状の絶縁性基材2の片側に銅等の導電性材料から形成された第1の配線層4が形成されている。上記第1の配線層4の表面側には、上記配線層4の腐食を防止する目的で、図示しない接着層を含む第1のカバー層6が設けられている。
【0043】
一方、上記第2のプリント配線板11も、第1のプリント配線板1と同様に、フィルム状の絶縁性基材12の片側に、第2の配線層14を設けた片面プリント配線板として構成されている。また、上記第2の配線層14の表面側に図示しない接着層を含む第2のカバー層13が設けられている。
【0044】
上記第1のプリント配線板1及び上記第2のプリント配線板11の上記絶縁性基材2,12として、種々の絶縁性樹脂フィルムを採用することができる。たとえば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等から形成された樹脂フィルムを採用することができる。また、一方又は双方のプリント配線板をリジッドプリント配線板とすることもできる。また、第2のプリント配線板に代えて、電子部品を接続することもできる。
【0045】
上記カバー層6,13を構成する材料も特に限定されることはなく、上記絶縁性基材2,12と同様の材料を採用することができる。
【0046】
上記配線層4,14は、上記絶縁性基材2,12の表面に所定パターンの接続配線を設けて構成されている。また、これらプリント配線板の図示しない領域に、図示しない電子部品等を搭載することもできる
【0047】
本実施形態では、上記第1のプリント配線板1の縁部近傍において、第1のカバー層6が切除されて第1の接続電極部4aが露出させられた第1の接続領域5が設けられている。本実施形態に係る上記接続領域5は、端縁に沿う長辺を有する矩形状に形成されている。
【0048】
一方、上記第2のプリント配線板11は帯状の形態を備えており、先端部近傍において、第1のカバー層13が切除されて第2の接続電極部14aが露出させられた第2の接続領域15が設けられている。本実施形態に係る上記第2の接続領域15は、上記第1の接続領域と同じ寸法を有する矩形状に形成されている。
【0049】
上記第1の接続電極部4aと上記第2の接続電極部14aとは、同じピッチで形成された直線状に形成されており、対向する接続電極部が上記異方導電性接着剤10を介して導通させられる。
【0050】
上記異方導電性接着剤10は、フィルム状の異方導電性接着剤を、上記第1の接続領域5及び第2の接続領域15より大きい矩形状に切り出して形成されている。異方導電性接着剤10は、たとえば、熱硬化性エポキシ樹脂を主剤とする接着成分中に、硬化剤を封止したマイクロカプセルと、導電性粒子とを分散配合して構成することができる。上記異方導電性接着剤10は、加熱及び加圧することにより、上記マイクロカプセルが破壊されて、上記熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させるように構成されている。なお、一方の接続領域の表面に、ペースト状の異方導電性接着剤を所定の厚みで塗着して、上記フィルム状の異方導電性接着剤10に代えることもできる。
【0051】
第1の実施形態では、図1及び図2に示すように、上記異方導電性接着剤10は、上記第1の接続領域5及び上記第2の接続領域15より広い範囲10aに積層できる大きさに切り出されている。そして、図3に示すように、上記第1の接続領域5及び上記第2の接続領域15を覆うようにして、上記異方導電性接着剤10が、上記第1のプリント配線板1と上記第2のプリント配線板11の間に積層されるとともに、これら部材が、上下の加熱加圧治具7,8の間で、加熱しながら加圧される。
【0052】
本実施形態では、上記上側加熱加圧治具7が、上記接続領域5,15の内側を挟圧する内側加圧部7aと、上記接続領域の外側を挟圧する外側加圧部7bを備える段付き状に形成されている。一方、上記下側の加熱加圧治具8は、平坦状に形成されている。
【0053】
上記異方導電性接着剤10を介して上記第1の接続電極部4aと上記第2の接続電極部14aを対向させるように、上記第1のプリント配線板1と上記第2のプリント配線板11とを位置決めして重ね合わせ、上記加熱加圧治具7,8を用いて加熱しながら両側から挟圧する。
【0054】
図4に示すように、本実施形態では、上記内側加圧部7aが対向する接続電極部4a,14a間で異方導電性接着剤10を加熱しながら加圧し、これら接続電極部の4a,14aを電気的に導通させる。一方、外側加圧部7bは、上記接続領域5,15を囲む枠状領域を、異方導電性接着剤10を挟んで加熱加圧し、上記第1のプリント配線板1のカバー層6と第2のプリント配線板11のカバー層13とを接着する。
【0055】
これにより、上記異方導電性接着剤剤10が流動させられて、上記第1の接続領域5と上記第2の接続領域15の間に充填され、これら接続領域が封止されるとともに、上記第1のプリント配線板1と上記第2のプリント配線板11とが接着される。また、同時に、図示しない導電性粒子が対向する上記第1の接続電極部4aと上記第2の接続電極部14a間に噛み込まれ、各接続電極部が厚み方向に導通させられる。これにより、図5に示すように、上記第1のプリント配線板1と上記第2のプリント配線板11とが一体的に接合された配線板接続体100が形成される。
【0056】
図4及び図5に示すように、本実施形態では、カバー層6,13が切除されることにより接続電極部4a,14aが露出させられた接続領域5,15が上記異方導電性接着剤によって完全に封止される。このため、上記接続領域5,15において露出させられた接続電極部4a,14aの腐食を防止することができる。
【0057】
また、上記接続領域5,15の全域に異方導電性接着剤が充填されるとともに、上記接続領域5,15を枠状に囲む領域において上記第1のプリント配線板1と第2のプリント配線板11のカバー層6,13が異方導電性接着剤10を介して接着されている。したがって、上記接続領域5,15の周縁部に、応力や変形が集中することもない。このため、接続信頼性の高い配線板接続体100を形成することができる。
【0058】
図6から図10に、本願発明の第2の実施形態を示す。
【0059】
第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様の第1のプリント配線板201に対して、接続領域215の形態が異なる第2のプリント配線板211を接続する。上記第1のプリント配線板201及び異方導電性接着剤210の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0060】
図6及び図7に示すように、第2のプリント配線板211の先端部におけるカバー層213を所定幅で切除することにより、接続電極部214aが露出させられた接続領域215が設けられている。上記接続領域215の幅は、第1のプリント配線板201の接続領域205より小さく設定されている。
【0061】
上記構成の第1のプリント配線板201と上記異方導電性接着剤210と上記第2のプリント配線板211とを、接続電極部204a、214aを対向するように位置決めして重ね合わせる。図6の符号210bに示す上記異方導電性接着剤210の領域に対して上記第2のプリント配線板211が積層される。すなわち、本実施形態では、第1のプリント配線板201と第2のプリント配線板211の間で、上記異方導電性接着剤210のすべての範囲が加熱加圧されるのではない。
【0062】
本実施形態では、まず、上記第1の接続電極部204aと上記第2の接続電極部214aとの間で上記異方導電性接着剤210を挟圧する第1の加熱加圧工程が行われる。図7に示すように、上記第1の加熱加圧工程を行う第1の上側加熱加圧治具207は、上記第2の接続領域215の先端側を加熱加圧できる内側加圧部207aと、上記接続領域215の基端側の外側を加圧できる外側加圧部207bとを備える。なお、下側加圧治具は、第1の実施形態と同様に平坦状の加圧面を備えて構成されている。
【0063】
上記上側加熱加圧治具207と下側加熱加圧治具208との間で、上記異方導電性接着剤210を間に介挿した第1のプリント配線板201と第2のプリント配線板211とを加熱加圧することにより、上記第1の接続電極部204aと上記2の接続電極部214aとが接続されてこれら電極間が導通させられる。また、第2のプリント配線板211における上記接続領域215の基端側のカバー層213と、上記第1のプリント配線板201の先端側のカバー層206が、所定幅にわたって上記異方導電性接着剤210を介して挟圧される。
【0064】
上記第1の加熱加圧工程においては、上記第2のプリント配線板211の先端縁部からはみ出た異方導電性接着剤210は、加熱加圧されていない。このため、上記部分の異方導電性接着剤210は硬化しておらず、また、第1の接続領域205に対しても接着されていない。
【0065】
本実施形態では、上記第1の加熱加圧工程において加熱加圧されない異方導電性接着剤が存在する領域を加熱加圧する第2の加熱加圧工程が行われる。
【0066】
図9に示すように、上記第2の加熱加圧工程は、上記第1の加熱加圧工程において、加熱加圧されない領域に対応する平坦状の加圧面227aを備える第2の上側加熱加圧治具227を用いて行われる。
【0067】
上記第2の加熱加圧工程は、異方導電性接着剤210を第1のプリント配線板201との間で直接加熱加圧するため、図示しない離型シートを挟んで加熱加圧工程を行うのが好ましい。
【0068】
上記第2の加熱加圧工程を行うことにより、第1の加熱加圧工程におい加熱加圧されなかった領域が、第1のプリント配線板201の接続領域205及びこの接続領域の基端側のカバー層206に所定幅で接着される。これより、上記第1の接続領域205と上記第2の接続領域215とが、上記異方導電性接着剤210によって覆われた、配線板接続体200が形成される。
【0069】
上記第2の実施形態に係る配線板接続体200においても、第1の実施形態に係る配線板接続体と同様に、接続電極部204a,214aが露出させられた接続領域205,215が上記異方導電性接着剤210によって完全に封止される。このため、上記接続領域において露出させられた接続電極部204a,214aの腐食を防止することができる。
【0070】
また、上記接続領域205,215の全域に異方導電性接着剤が充填されるとともに、第2のプリント配線板211のカバー層213の基端側が、異方導電性接着剤210を介して第1のプリント配線板201に接着される。さらに、上記接続領域205,215の周縁部が異方導電性接着剤で覆われる。したがって、第1の実施形態と同様に、上記接続領域の周縁部に、応力や変形が集中するのを防止できる。このため、接続信頼性の高い配線板接続体200を形成することができる。
【0071】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
異方導電性接着剤を用いて接続した接続領域近傍において、接続電極の腐食を防止できるとともに、応力や変形が集中するのを防止して、信頼性の高いプリント配線板の接続構造を提供できる。
【符号の説明】
【0073】
1 プリント配線板(第1のプリント配線板)
4a 第1の接続電極部
5 第1の接続領域
11 被接続部材(第2のプリント配線板)
10 異方導電性接着剤
14a 第2の接続電極部
15 第2の接続領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板と被接続部材とを接続して構成されるプリント配線板の接続構造であって、
第1の接続電極部が露出させられた第1の接続領域を有する上記プリント配線板と、
第2の接続電極部が露出させられた第2の接続領域を有する上記被接続部材とを備え、
異方導電性接着剤を介して、上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部とを導通させた状態で、上記第1のプリント配線板と上記第2のプリント配線板とが接着されているとともに、
上記異方導電性接着剤は、少なくとも一方の接続領域より広い領域を覆うように積層接着されている、プリント配線板の接続構造。
【請求項2】
上記異方導電性接着剤が、上記第1の接続領域及び上記第2の接続領域より広い領域に積層接着されているとともに、
上記接続領域の外側において、上記プリント配線板と上記被接続部材とが上記異方導電性接着剤を介して接着されている、請求項1に記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項3】
上記プリント配線板がフレキシブルプリント配線板である、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項4】
上記被接続部材が、他のプリント配線板である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプリント配線板の接続構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板の接続構造を備える、配線板接続体。
【請求項6】
請求項5に記載の配線板接続体を備える電子機器。
【請求項7】
プリント配線板とこのプリント配線板に接続される被接続部材を、異方導電性接着剤を介して接続する、配線板接続体の製造方法であって、
第1の接続電極部が設けられた接続領域を有する上記プリント配線板を準備する工程と、
上記第1の接続電極部に接続される第2の接続電極部が設けられた第2の接続領域を有する上記被接続部材を準備する工程と、
少なくとも上記第1の接続領域と上記第2の接続領域の一方の接続領域より広い領域を覆う異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の間に介挿してこれら部材を位置決め積層する積層工程と、
加熱加圧治具の間において、積層された上記第1のプリント配線板、上記被接続部材及び異方導電性接着剤を加熱加圧して、上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部を導通させるとともに、上記プリント配線板と上記被接続部材とを接着する加熱加圧工程とを含む配線板接続体の製造方法。
【請求項8】
上記積層工程において、上記第1の接続領域及び上記第2の接続領域より広い領域を覆う異方導電性接着剤が設けられる、請求項7に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項9】
上記加熱加圧工程が一つの工程において行われる、請求項8に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項10】
上記加熱加圧工程は、少なくとも上記第1の接続電極部と上記第2の接続電極部との間で上記異方導電性接着剤を加熱加圧する第1の加熱加圧工程と、
上記第1の加熱加圧工程において加熱加圧されない異方導電性接着剤が存在する領域を加熱加圧する第2の加熱加圧工程とを含む、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項11】
上記第2の加熱加圧工程は、上記異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の間で加熱加圧する工程を含む、請求項10に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項12】
上記第2の加熱加圧工程は、上記異方導電性接着剤を、上記プリント配線板と上記被接続部材の一方と上記加熱加圧治具の間で加熱加圧する工程を含む、請求項10又は請求項11のいずれかに記載の配線板接続体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−258739(P2011−258739A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131802(P2010−131802)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】