説明

プレストレストコンクリート構造体

【課題】構造が簡単であってかつ構架材との十分な接続強度を確保できるプレストレストコンクリート構造体を提供する。
【解決手段】プレストレストコンクリート構造体としてのPC壁体11cは、遠心力成形法などで長尺に成形したコンクリート成形部21の内部に、プレストレストコンクリート用の緊張材としてのPC鋼材16を軸方向に配設している。コンクリート成形部21の軸方向途中部に、構架材接続用の角形の鋼管51をコンクリート成形部21の外周面に露出した状態でボックス状に埋込む。この角形の鋼管51は、コンクリート成形部21の外形に沿って同様の形状に成形し、コンクリート成形部21の凹溝22と連続する凹溝22aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構架材接続構造を有するプレストレストコンクリート構造体に関するものである。以下、プレストレストコンクリートを、「PC」と略称する。
【背景技術】
【0002】
PC中空杭を柱列式に配置したPC中空杭壁に構架材を接合した接合構造を形成することにより、PC中空杭壁を仮設の山留壁としてのみならず、そのまま地下構造物の構造体として利用できるようにし、施工性向上・工期短縮を図るようにしたものがある。
【0003】
すなわち、PC中空杭の側面に取り付けられた埋込み鋼板に、構架材の端部が固定されるように、PC中空杭における構架材接合構造を構成する。PC中空杭は、構架材との接合部を補強する補強筋と、補強筋と埋込み鋼板とを連結するアンカー筋とを備え、さらに埋込み鋼板には構架材接合鋼板が固定され、構架材を構成するコンクリートによってこれらの鋼板を覆うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−36327号公報(第3−4頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のPC中空杭は、構架材との接合部を補強する補強筋と、補強筋と埋込み鋼板とを連結するアンカー筋とを備えているが、このような配筋構造は、構造が複雑で、配筋作業も容易でない。さらに、接続強度を確保するために配筋構造を簡略化することはできない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構造が簡単であってかつ構架材との十分な接続強度を確保できるプレストレストコンクリート構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、長尺に成形されたコンクリート成形部と、コンクリート成形部内の軸方向に配設されたプレストレストコンクリート用の緊張材と、コンクリート成形部の軸方向途中部の外周面に露出した状態でボックス状に埋込まれた構架材接続用の鋼管とを具備したプレストレストコンクリート構造体であり、そして、コンクリート成形部の外周面にボックス状に埋込まれた構架材接続用の鋼管によって、構架材との十分な接続強度を確保する。しかも、この構架材接続用の鋼管は、コンクリート成形部内に配設されたプレストレストコンクリート用の緊張材と関係なくコンクリート成形部の外周面に設置可能であり、複雑な配筋構造も必要としない。
【0008】
請求項2記載の発明は、長尺に成形されたコンクリート成形部と、コンクリート成形部内の軸方向に配設されたプレストレストコンクリート用の緊張材と、コンクリート成形部の軸方向途中部の一側面およびこの一側面に対し反対側に位置する他側面に露出した状態で埋込まれた複数の構架材接続用の埋込みプレートと、緊張材を避けてコンクリート成形部内に配設され一側面および他側面の埋込みプレートの左右一端部間および他端部間を連結する連結プレートとを具備したプレストレストコンクリート構造体であり、そして、コンクリート成形部の一側面および他側面に露出した状態で埋込まれた構架材接続用の埋込みプレートの左右一端部間および他端部間を、コンクリート成形部内の連結プレートにより連結したボックス構造によって、構架材との十分な接続強度を確保する。しかも、一側および他側の構架材接続用の埋込みプレートの左右一端部間および他端部間を、プレストレストコンクリート用の緊張材を避けてコンクリート成形部内に配設された連結プレートにより連結した簡単な構造で、接続強度を確保する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、コンクリート成形部の外周面にボックス状に埋込まれた構架材接続用の鋼管によって、構架材との十分な接続強度を確保できる。しかも、この構架材接続用の鋼管は、コンクリート成形部内に配設されたプレストレストコンクリート用の緊張材と関係なくコンクリート成形部の外周面に設置でき、複雑な配筋構造を防止できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、コンクリート成形部の一側面および他側面に露出した状態で埋込まれた構架材接続用の埋込みプレートの左右一端部間および他端部間を、コンクリート成形部内の連結プレートにより連結したボックス構造によって、構架材との十分な接続強度を確保できる。しかも、一側および他側の構架材接続用の埋込みプレートの左右一端部間および他端部間を、プレストレストコンクリート用の緊張材を避けてコンクリート成形部内に配設された連結プレートにより連結した簡単な構造で、接続強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプレストレストコンクリート構造体における構架材接続部分の第1の実施の形態を示す横断方向断面図である。
【図2】同上構造体の構架材接続部分の正面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】同上構造体を用いて施工した地下構造物を示す断面図である。
【図5】本発明に係るプレストレストコンクリート構造体における構架材接続部分の第2の実施の形態を示す横断方向断面図である。
【図6】同上構造体の構架材接続部分の正面図である。
【図7】図5におけるVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された第1の実施の形態、図5乃至図7に示された第2の実施の形態を参照して、詳細に説明する。
【0013】
先ず、図1乃至図4に示された第1の実施の形態を説明する。
【0014】
図4は、地下道、地下鉄、地下貯水池などの地下構造物を示し、先ず、角形断面のプレストレストコンクリート構造体としてのプレストレストコンクリート壁体(以下、プレストレストコンクリートを「PC」という)11を連続的に地中に挿入して止水処理することで2列の連壁が形成され、これらの連壁の上端間に頂版12が現場打ちコンクリート、またはハーフプレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートにより形成され、2列の連壁間を掘下げることで、この間に空間13が形成され、2列の連壁の比較的下部間に現場打ちコンクリート、またはハーフプレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートにより構架材としての底版14が形成されている。
【0015】
図1乃至図3は、プレストレストコンクリート構造体としてのPC壁体11cを示し、遠心力成形法などで長尺に成形されたコンクリート成形部21の内部には、プレストレストコンクリート用の緊張材としてのPC鋼材16が軸方向に配設され、コンクリート成形部21の軸方向途中部には、構架材接続用の角形の鋼管51がコンクリート成形部21の外周面に露出した状態でボックス状に埋込まれている。
【0016】
この角形の鋼管51は、コンクリート成形部21の外形に沿って同様の形状に成形され、コンクリート成形部21の凹溝22と連続する凹溝22aを有している。
【0017】
そして、コンクリート成形部21の外周面にボックス状に埋込まれた構架材接続用の角形の鋼管51において凹溝22aが設けられていない平面部52に、構架材としての底版14の鋼材を、接続ボルトまたは溶接付けにより接続することで、底版14との十分な接続強度を確保する。
【0018】
しかも、この底版接続用の鋼管51は、コンクリート成形部21内に配設されたPC鋼材16と関係なくコンクリート成形部21の外周面に設置するもので、複雑な配筋構造を必要としない。
【0019】
次に、図5乃至図7に示された第2の実施の形態を説明する。
【0020】
図5乃至図7は、プレストレストコンクリート構造体としてのPC壁体11dを示し、遠心力成形法などで長尺に成形されたコンクリート成形部21の内部には、プレストレストコンクリート用の緊張材としてのPC鋼材16が軸方向に配設され、コンクリート成形部21の軸方向途中部の一側面およびこの一側面に対し反対側に位置する他側面には、構架材接続用の埋込みプレート61がそれぞれ露出した状態で埋込まれている。
【0021】
これらの一側面および他側面の埋込みプレート61は、それらの左右一端部間および他端部間を溶接された連結プレート62により連結されている。これらの連結プレート62は、PC鋼材16を避けてコンクリート成形部21内に配設されている。この連結プレート62には、図7に示されるように複数の穴63が穿設されている。
【0022】
そして、遠心力成形時に両側の連結プレート62,62間に注入されたコンクリートは、穴63を経て連結プレート62の外側にも供給され、また、この穴63内で固化されたコンクリートは、コンクリート成形部21内での連結プレート62の固定を確実にし、連結プレート62に作用する荷重を支えることができる。
【0023】
このように、コンクリート成形部21の一側面および他側面に露出した状態で埋込まれた構架材接続用の埋込みプレート61の左右一端部間および他端部間を、コンクリート成形部21内の連結プレート62により連結したボックス構造によって、十分な強度を有する構架材接続用の構造物を構成し、その埋込みプレート61に構架材としての底版14の鋼材を、接続ボルトまたは溶接付けにより接続することで、底版14との十分な接続強度を確保する。
【0024】
しかも、一側および他側の底版接続用の埋込みプレート61の左右一端部間および他端部間を、PC鋼材16を避けてコンクリート成形部21内に配設された連結プレート62により連結した簡単な構造で、接続強度を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のプレストレストコンクリート構造体は、PC壁体11,11c,11dに限定されるものではなく、PC杭体またはPC柱体にも利用できる。
【符号の説明】
【0026】
14 構架材としての底版
16 緊張材としてのPC鋼材
21 コンクリート成形部
51 鋼管
61 埋込みプレート
62 連結プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に成形されたコンクリート成形部と、
コンクリート成形部内の軸方向に配設されたプレストレストコンクリート用の緊張材と、
コンクリート成形部の軸方向途中部の外周面に露出した状態でボックス状に埋込まれた構架材接続用の鋼管と
を具備したことを特徴とするプレストレストコンクリート構造体。
【請求項2】
長尺に成形されたコンクリート成形部と、
コンクリート成形部内の軸方向に配設されたプレストレストコンクリート用の緊張材と、
コンクリート成形部の軸方向途中部の一側面およびこの一側面に対し反対側に位置する他側面に露出した状態で埋込まれた複数の構架材接続用の埋込みプレートと、
緊張材を避けてコンクリート成形部内に配設され一側面および他側面の埋込みプレートの左右一端部間および他端部間を連結する連結プレートと
を具備したことを特徴とするプレストレストコンクリート構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−102981(P2009−102981A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3156(P2009−3156)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【分割の表示】特願2004−154243(P2004−154243)の分割
【原出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【出願人】(000228660)日本コンクリート工業株式会社 (50)
【出願人】(000228785)日本サミコン株式会社 (41)
【Fターム(参考)】