説明

ヘテロ接合トランジスタ、及びヘテロ接合トランジスタを作製する方法

【課題】チャネル層内の抵抗の不均一を避けることを可能にする構造を有するヘテロ接合トランジスタを提供する。
【解決手段】半導体積層15が、半極性を示すIII族窒化物主面13a上に設けられ、半導体積層15が主面13aに到達する開口16を有する。開口16の側面16aは、III族窒化物半導体のa面に対して大きな角度を成すと共にIII族窒化物半導体のm面に対しても大きな角度を成して、III族窒化物半導体のc面に非常に近い面から構成される。開口16の側面16aの傾斜角は、m面やa面よりもc面に近い。この開口16の側面16aにドリフト層17及びチャネル層19が成長されるので、その成長中に不可避的に取り込まれる不純物量を小さくできる。これ故に、ドリフト層17及びチャネル層19における抵抗の不均一を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ接合トランジスタ、及びヘテロ接合トランジスタを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置が記載されている。この半導体装置は、ピンチオフ特性を改善し、またはチャネル層の移動度を向上させ電気的特性の良好な半導体装置を提供する。この半導体装置は、基板上に形成されると共に開口部を有するGaN系半導体層を備える。GaN系半導体層の開口部側面には、電子走行層が形成される。電子供給層は、電子走行層の開口部側の側面に形成され、電子供給層のバンドギャップは、電子走行層のバンドギャップより大きい。ゲート電極は、電子供給層の開口部側の側面に形成される。ソース電極は、GaN系半導体層上に形成される。ドレイン電極は、GaN系半導体層のソース電極と相対する面に接続された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−286942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体装置では、半導体装置をc面GaN基板上に形成するとき、開口部側面は、m面及びa面に近い面方位の傾斜面になる。この開口部側面上に電子走行層が形成される。発明者らの知見によれば、チャネル層のためのアンドープの半導体層を上記の傾斜面上に成長するとき、成長炉に不可避的に含まれる酸素不純物の取り込み量が増加する。酸素不純物の取り込みは、チャネル層のための成長された半導体層の抵抗が意図した値に比べて低下させる。このため、チャネル層の下部の低抵抗の薄層が形成されて、チャネル内の抵抗値を不均一にする。この薄層は、チャネル層にリークパスを形成することとなる。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、チャネル層内の抵抗の不均一を避けることを可能にする構造を有するヘテロ接合トランジスタを提供することを目的とし、またチャネル層内の抵抗の不均一を避けることを可能にする、ヘテロ接合トランジスタを作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るヘテロ接合トランジスタは、(a)半極性を示すIII族窒化物の主面を有する導電性基板と、(b)前記導電性基板の前記主面に到達する開口を有する半導体積層と、(c)前記半導体積層の前記開口内及び前記導電性基板の前記主面上に設けられ窒化ガリウム系半導体からなるドリフト層と、(d)前記半導体積層の前記開口内に設けられ窒化ガリウム系半導体からなるチャネル半導体層と、(e)前記半導体積層の前記開口内の前記チャネル半導体層上に設けられ窒化ガリウム系半導体からなるバリア層と、(f)前記バリア層上に設けられたゲート電極とを備える。前記半導体積層は、前記導電性基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層、前記導電性基板と前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層、及び前記導電性基板と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ絶縁のための窒化ガリウム系半導体層を含み、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の側面に位置する端面を有し、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の側面に位置する端面を有し、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、前記チャネル層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面及び前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、前記ドリフト層は、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、前記開口の前記側面は、前記III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、前記III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共に前記III族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成し、前記第3の角度は前記第1の角度よりも小さく、前記第3の角度は前記第2の角度よりも小さい。
【0007】
このヘテロ接合トランジスタでは、半導体積層が、半極性を示すIII族窒化物主面上に設けられており、半導体積層が導電性基板の主面に到達する開口を有する。第1導電型窒化ガリウム系半導体層の端面(開口の側面)上に、チャネル層が設けられる。また、開口の側面上に、ドリフト層が設けられる。
【0008】
III族窒化得物の成長をm面やa面及びこれらの面に近い面方位の窒化物表面に行うとき、半導体層が、成長中に不可避的に取り込まれる不純物により低抵抗になる。ドリフト層及びチャネル層の特性は、このような不純物の影響に敏感である。
【0009】
半導体積層では、開口の側面は、III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共にIII族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成す。第3の角度は第1の角度よりも小さく、第3の角度は第2の角度よりも小さいので、開口の側面の傾斜角は、m面やa面よりもc面に近くなる。この開口の側面にドリフト層及びチャネル層の半導体が設けられるので、その成長中に取り込まれる不純物量を小さくできる。これ故に、ドリフト層及びチャネル層では、これらの不純物濃度は低い。したがって、このトランジスタの構造によれば、ドリフト層及びチャネル層における抵抗の不均一を避けることができる。
【0010】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタは、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層に接続されたソース電極を更に備えることができる。前記ソース電極は前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層に接続されている。
【0011】
このヘテロ接合トランジスタによれば、ソース電極が第1導電型窒化ガリウム系半導体層だけでなく、第2導電型窒化ガリウム系半導体層とオーミック接続された電極を介して接続されているので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層の電位をソース電極を用いて制御できる。
【0012】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記導電性基板の裏面に設けられたドレイン電極を更に備えることができる。このヘテロ接合トランジスタによれば、ドレイン電極が導電性基板の裏面に設けられるので、ドレイン電極をゲート電極から隔てることができる。
【0013】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記導電性基板の前記主面は、前記III族窒化物半導体のc軸の方向に延在する基準軸に直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成すことができる。
【0014】
このヘテロ接合トランジスタによれば、上記の角度範囲において、開口の側面に、不純物の取り込みによる抵抗不均一を避けることができる。
【0015】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記導電性基板の前記主面は、前記III族窒化物半導体のc軸の方向に延在する基準軸に直交する面に対して70度以上80度以下の範囲の角度を成す。
【0016】
このヘテロ接合トランジスタによれば、上記の角度範囲において、開口の側面に、不純物の取り込みによる抵抗不均一を避けることができる。また、開口の側面にc面及び/又はc面に近い面方位を提供できる。
【0017】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記チャネル層は不純物として酸素及び炭素を含み、前記チャネル層における酸素濃度は前記チャネル層における炭素濃度より小さい。
【0018】
酸素はドナーとして作用して半導体層に電子を供給する一方、炭素の添加は半導体を高比抵抗にする。このヘテロ接合トランジスタによれば、チャネル層において、酸素濃度が炭素濃度より小さい。これ故に、酸素の働きが炭素により低減される。
【0019】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記開口の前記側面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を基準にして40度以上90度以下の角度範囲にあることができる。ヘテロ接合トランジスタによれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0020】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。また、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面は、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。ヘテロ接合トランジスタによれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0021】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の端面は、前記窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。ヘテロ接合トランジスタによれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0022】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、前記導電性基板はn型GaNからなり、前記窒化ガリウム系半導体ドリフト層はGaNからなり、前記チャネル半導体層はアンドープGaNからなり、前記バリア層はAlGaNからなり、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層はn型GaNからなり、第2導電型窒化ガリウム系半導体層はp型GaNからなり、前記窒化ガリウム系半導体層はGaNからなることが良い。このヘテロ接合トランジスタによれば、実用的な構造の一例が提供される。
【0023】
本発明の別の側面は、ヘテロ接合トランジスタを作製する方法である。この方法は、(a)III族窒化物半導体の半極性を示す主面を有する導電性基板を準備する工程と、(b)前記導電性基板の前記主面に半導体積層を成長する工程と、(c)前記半導体積層に前記導電性基板の前記主面に到達する開口を形成する工程と、(d)前記半導体積層の前記開口内及び前記導電性基板の前記主面上に窒化ガリウム系半導体ドリフト層を形成する工程と、(e)前記半導体積層の前記開口の側面及び前記窒化ガリウム系半導体ドリフト層上に、窒化ガリウム系半導体からなるチャネル半導体層を成長する工程と、(f)窒化ガリウム系半導体からなるバリア層を前記チャネル半導体層上に成長する工程と、(g)前記バリア層上にゲート電極を形成する工程とを備える。前記半導体積層は、前記導電性基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層、前記導電性基板と前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層、及び前記導電性基板と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ絶縁のための窒化ガリウム系半導体層を含み、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、前記チャネル層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面及び前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、前記ドリフト層は、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、前記開口の前記側面は、前記III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、前記III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共に前記III族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成し、前記第3の角度は前記第1の角度よりも小さく、前記第3の角度は前記第2の角度よりも小さい。
【0024】
この方法によれば、半導体積層が、半極性を示すIII族窒化物主面上に成長され、半導体積層には、導電性基板の主面に到達する開口が形成される。チャネル層が、第1導電型窒化ガリウム系半導体層及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層の端面(開口の側面)上に成長される。また、ドリフト層が、開口の側面上に成長される。
【0025】
III族窒化得物の成長をm面やa面及びこれらの面に近い面方位の窒化物表面に行うとき、半導体層が、成長中に不可避的に取り込まれる不純物により低抵抗になる。ドリフト層及びチャネル層の特性は、このような不純物の影響に敏感である。
【0026】
半導体積層では、開口の側面は、III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共にIII族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成す。第3の角度は第1の角度よりも小さく、第3の角度は第2の角度よりも小さいので、開口の側面の傾斜角は、m面やa面よりもc面に近くなる。この開口の側面にドリフト層及びチャネル層の半導体を成長するので、その成長中に取り込まれる不純物量を小さくできる。これ故に、ドリフト層及びチャネル層は低い不純物濃度を有する。したがって、この方法によれば、ドリフト層及びチャネル層における抵抗の不均一を避けることができる。
【0027】
本発明に係る方法は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層に接続されたソース電極を形成する工程を更に備えることができる。前記ソース電極は前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層に接続されている。
【0028】
この方法によれば、チャネル層の一方の面上にゲート電圧が形成されると共にチャネル層の他方の面が第2導電型窒化ガリウム系半導体層に接触している。ソース電極は、チャネル層の背面に接する第2導電型窒化ガリウム系半導体層の電位を制御できる。
【0029】
本発明に係る方法では、前記開口の前記側面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を基準にして40度以上90度以下の角度範囲にあることができる。
【0030】
この方法によれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0031】
本発明に係る方法では、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。また、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面は、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。この方法によれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。さらに、本発明に係る方法では、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の端面は、前記窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。この方法によれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0032】
本発明に係る方法では、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の端面は、前記窒化ガリウム系半導体層のc面を含むことが良い。この方法によれば、上記の角度範囲において、開口の側面上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0033】
本発明に係る方法では、前記チャネル層は不純物として酸素及び炭素を含み、前記チャネル層における酸素濃度は前記チャネル層における炭素濃度より小さいことが良い。この方法によれば、酸素はドナーとして作用して半導体層に電子を供給する一方、炭素の添加は半導体を高比抵抗にする。チャネル層において、酸素濃度が炭素濃度より小さい。これ故に、酸素の働きが炭素により低減される。
【0034】
本発明に係る方法では、前記ドリフト層は不純物として酸素及び炭素を含み、前記ドリフト層における酸素濃度は前記ドリフト層における炭素濃度より小さいことが良い。この方法によれば、酸素はドナーとして作用して半導体層に電子を供給する一方、炭素の添加は半導体を高比抵抗にする。ドリフト層において、酸素濃度が炭素濃度より小さい。これ故に、酸素の働きが炭素により低減される。
【0035】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、チャネル層内の抵抗の不均一を避けることを可能にする構造を有するヘテロ接合トランジスタが提供される。また、本発明によれば、チャネル層内の抵抗の不均一を避けることを可能にする、ヘテロ接合トランジスタを作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタの構造を示す図面である。
【図2】図2は、図1に示されたヘテロ接合トランジスタの動作を示す図面である。
【図3】図3は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のヘテロ接合トランジスタ、及びヘテロ接合トランジスタを作製する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0039】
図1は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタの構造を示す図面である。図2は、図1に示されたヘテロ接合トランジスタの動作を示す図面である。ヘテロ接合トランジスタ11は、導電性基板13と、半導体積層15と、ドリフト層17と、チャネル層19と、バリア層21と、ゲート電極23とを備える。導電性基板13は、半極性を示すIII族窒化物主面13aを有すると共に、裏面13bを有する。半導体積層15は、導電性基板13の主面13aに到達する開口16を有する。開口16は、半導体積層15に形成されたメサ、凹部又は溝により規定される。ドリフト層17は、窒化ガリウム系半導体からなり、また半導体積層15の開口16内及び導電性基板13の主面13a上に設けられる。チャネル層19は、窒化ガリウム系半導体からなり、また半導体積層15の開口16内に設けられる。バリア層21は、窒化ガリウム系半導体からなり、また半導体積層15の開口16内に設けられると共に開口16内のチャネル層19上に延在する。ゲート電極23はバリア層21上に設けられ、開口16内においてバリア層21はチャネル層19とゲート電極23との間に位置する。チャネル層19とバリア層21とはヘテロ接合20を成す。ゲート電極23はヘテロ接合20に沿った二次元電子ガスの生成を制御する。
【0040】
半導体積層15は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27、及び窒化ガリウム系半導体層29を含む。第1導電型窒化ガリウム系半導体層25は、例えばn導電性を有し、また基板13の主面13a上に設けられる。第2導電型窒化ガリウム系半導体層27は、例えばp導電性を有し、また導電性基板13の主面13aと第1導電型窒化ガリウム系半導体層25との間に設けられる。窒化ガリウム系半導体層29は、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27と導電性基板13との間の絶縁のために、導電性基板13と第2導電型窒化ガリウム系半導体層27との間に設けられる。窒化ガリウム系半導体層29は、例えばアンドープ半導体であることができる。
【0041】
第1導電型窒化ガリウム系半導体層25は、半導体積層15の開口16の側面16aに位置する端面25aを有する。第2導電型窒化ガリウム系半導体層27は、半導体積層15の開口16の側面16aに位置する端面27aを有する。窒化ガリウム系半導体層29は、半導体積層15の開口16の側面16aに到達する端面29aを有する。チャネル層19は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の端面25a及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の端面27a並びにドリフト半導体層17の上面17a上に設けられる。ドリフト層17は、絶縁のための窒化ガリウム系半導体層29の端面29a上に設けられ、また主面13ア上に設けられる。ドリフト層17の側面17bは、窒化ガリウム系半導体層29の端面29aに接合を成しており、端面29aはドリフト層17の側面17bを覆っている。また、ドリフト層17の側面17bは、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の端面25a及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の端面27aとは対面していない。
【0042】
図1に示されるように、本実施例では開口16の側面16aはほぼc面(c軸に直交する面)に沿って設けられている。図1においては、結晶座標系CRが示されており、基準軸Cxはc軸の方向を示している。m面は結晶座標系CRのm軸に直交する面であり、a面は結晶座標系CRのa軸に直交する面である。開口16の側面16aは、III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共に前記III族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成す。これらの角度は、それぞれの面における法線動詞の成す角度として規定される。この定義に基づくとき、第3の角度は前記第1の角度よりも小さく、第3の角度は第2の角度よりも小さい。
【0043】
このヘテロ接合トランジスタ11では、半導体積層15が、半極性を示すIII族窒化物主面13a上に設けられており、半導体積層15が導電性基板13の主面13aに到達する開口16を有する。第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の端面27a(開口16の側面16a)上に、チャネル層19が設けられる。また、窒化ガリウム系半導体層29の端面29a(開口16の側面16a)上にドリフト層17が設けられる。
【0044】
III族窒化得物の成長をm面やa面及びこれらの面に近い面方位の窒化物表面に行うとき、成長された半導体層が、取り込まれる不純物により低抵抗になる。ドリフト層17及びチャネル層19の特性は、このような不純物の影響に敏感である。
【0045】
半導体積層15では、開口16の側面16aは、III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共にIII族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成す。このとき、第3の角度は第1の角度よりも小さく、第3の角度は第2の角度よりも小さいので、開口16の側面16aの傾斜角は、m面やa面よりもc面に近くなる。この開口16の側面16aにドリフト層17及びチャネル層19の半導体が設けられるので、その成長中に不可避的に取り込まれる不純物量を小さくできる。これ故に、ドリフト層17及びチャネル層19は低い不純物濃度を有する。したがって、このトランジスタ11の構造によれば、ドリフト層17及びチャネル層19における抵抗の不均一を避けることができる。
【0046】
ヘテロ接合トランジスタ11は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25に接続されたソース電極31を更に備えることができる。ソース電極31は第2導電型窒化ガリウム系半導体層27に接続されている。ソース電極31が第1導電型窒化ガリウム系半導体層25だけでなく、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27にも接続されているので、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の電位はソース電極31を用いて印加されて、これが背面バイアスとなる。これは、ヘテロ接合トランジスタ11にノーマリオフ動作をさせるために好適である。
【0047】
ヘテロ接合トランジスタ11では、導電性基板13の裏面13bに設けられたドレイン電極33を更に備えることができる。ドレイン電極33が導電性基板13の裏面13bに設けられるので、ドレイン電極33をゲート電極23から隔てることができる。
【0048】
第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の第1の面25bは、チャネル層19と接合35aを成す。第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の第2の面25cは、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の第1の面27bと接合35bを成す。窒化ガリウム系半導体層29の第1の面29bは、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の第2の面27cと接合35cを成す。窒化ガリウム系半導体層29の第2の面29cは、導電性基板13の主面13aと接合35dを成す。
【0049】
開口16の側面16aでは、チャネル層19の裏面は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の端面25aと接合35aを成す。また、チャネル層19の裏面は、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の端面25a、及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の端面27aと接合35eを成す。チャネル層23の裏面は、窒化ガリウム系半導体層29の端面29aと接合35fを成す。ゲート電極18は、バリア層21にショットキ接合35gを成す。
【0050】
本発明に係るヘテロ接合トランジスタでは、導電性基板13はn型GaNからなり、ドリフト層17はGaNからなり、チャネル層19はアンドープGaNからなり、バリア層21はAlGaNからなり、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25はn型GaNからなり、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27はp型GaNからなり、絶縁用の窒化ガリウム系半導体層29はGaNからなることができる。
【0051】
ヘテロ接合トランジスタ11の一実施例を以下に示す。
導電性基板13:n型GaN(キャリア濃度:1×1019cm-3);
ドリフト層17:アンドープGaN(キャリア濃度:5×1015cm-3、厚さ:5μm);
チャネル層19:アンドープGaN(キャリア濃度:1×1015cm-3、厚さ:30nm);
バリア層21:アンドープAlGaN(厚さ:30nm、Al組成比0.25);
第1導電型窒化ガリウム系半導体層25:n型GaN(キャリア濃度:1×1018cm-3、厚さ:0.3μm);
第2導電型窒化ガリウム系半導体層27:p型GaN(キャリア濃度:1×1018cm-3、厚さ:0.5μm);
窒化ガリウム系半導体層29:アンドープGaN(厚さ:5μm)。
このヘテロ接合トランジスタによれば、実用的な構造の一例が提供される。
【0052】
図2を参照しながら、ヘテロ接合トランジスタ11の動作を説明する。ヘテロ接合トランジスタ11の導通及び非導通は、ゲート電極23に印加される電圧により制御される。ヘテロ接合トランジスタ11が非導通であるとき、ヘテロ接合トランジスタ11のソース電極31及びドレイン電極33の間に電流は流れない。ヘテロ接合トランジスタ11が導通であるとき、ソース電極31からキャリアIC1が第1導電型窒化ガリウム系半導体層25に流れ込む。第1導電型窒化ガリウム系半導体層25からチャネル層19にキャリアIC2が流れ込む。ゲートバイアスにおかげでチャネルが形成されているので、キャリアIC3は、ゲート電極直下のチャネルを通過する。チャネルを通過したキャリアIC4は、ドレインバイアスに引かれて、チャネル層19からドリフト層17に流れ込む。さらに、ドリフト層17を走行したキャリアIC5は、導電性基板13を介してドレイン電極33に到達する。
【0053】
有用な形態では、第1導電型窒化ガリウム系半導体層25の端面25aは、この半導体層25のc面を含むことが良い。また、第2導電型窒化ガリウム系半導体層27の端面27aは、この半導体層27のc面を含むことが良い。さらに、絶縁用の窒化ガリウム系半導体層29の端面29aは、この半導体層29のc面を含むことが良い。c面において、開口16の側面16a上への半導体層の成長の際に、不純物の取り込みを低減できる。
【0054】
実験的には、炭素の取り込み量及び酸素の取り込み量をc面GaN及びm面GaNにおいて調べた。
面方位、酸素濃度、炭素濃度、 濃度の単位(cm−3
c面:7×1016、8×1016
m面:9×1017、4×1016
c面上の成長では、酸素濃度が炭素濃度より小さく、m面上の成長では、酸素濃度が炭素濃度より大きい。
【0055】
実用的には、トランジスタでは、開口16の側面16aは、窒化ガリウム系半導体層25、27、29のc面を基準にして40度以上90度以下の角度範囲にあることができる。この角度範囲において、開口16の側面16a上への半導体層の成長において、不純物の取り込みを低減できる。
【0056】
ヘテロ接合トランジスタ11では、導電性基板13の主面13aはIII族窒化物半導体のc軸の方向に延在する基準軸Cxに直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成すことができる。このトランジスタ11によれば、75度とする。また、開口16の側面16aに、不純物の取り込みによる抵抗不均一を避けることができる。
【0057】
また、ヘテロ接合トランジスタ11では、導電性基板13の主面13aは基準軸Cxに直交する面に対して70度以上80度以下の範囲の角度を成すことができる。このトランジスタ11によれば、上記の角度範囲において、75度とする。また、開口16の側面16aに、不純物の取り込みによる抵抗不均一を避けることができる。また、開口16の側面16aにc面及び/又はc面に近い面方位を提供できる。
【0058】
さらに、ヘテロ接合トランジスタ11では、チャネル層19は不純物として酸素及び炭素を含み、チャネル層19における酸素濃度はチャネル層19における炭素濃度より小さい。酸素はドナーとして作用して半導体層に電子を供給する一方、炭素の添加は半導体を高比抵抗にする。これ故に、チャネル層19において、酸素濃度が炭素濃度より小さい。これ故に、酸素の働きが炭素により低減される。また、ドリフト層17は不純物として酸素及び炭素を含み、ドリフト層17における酸素濃度はドリフト層17における炭素濃度より小さい。既に説明したように、酸素はドナーとして作用して半導体層に電子を供給する一方、炭素の添加は半導体を高比抵抗にする。このため、ドリフト層17において、酸素濃度が炭素濃度より小さい。これ故に、酸素の働きが炭素により低減される。
【0059】
図3〜図5は、本実施の形態に係るヘテロ接合トランジスタを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【0060】
工程S101では、図3(a)に示されるように、III族窒化物半導体の半極性を示す主面51aを有する導電性基板51を準備する。例えば、導電性基板51として、III族窒化物半導体基板を用いることができる。III族窒化物半導体基板は、例えばGaN、AlN等からなることができる。導電性基板51の主面51aは、後の工程で形成される開口の側面の傾斜角に所望の面方位を提供できるように選択される。一実施例として、{20−21}GaN面を用いることができる。この面は、GaNのc軸に対してm軸方向に約75度の角度で傾斜している。面方位の傾斜を例えばa軸方向に行うことができる。
【0061】
工程S102では、図3(a)に示されるように、導電性基板51の主面51aに半導体積層53を成長する。半導体積層53の形成では、絶縁用窒化ガリウム系半導体層55、第2導電型窒化ガリウム系半導体層57、及び第1導電型窒化ガリウム系半導体層59を基板51の主面51a上に順に成長する。この成長は、例えば有機金属気相成長法で行われる。絶縁用窒化ガリウム系半導体層55は、例えば厚さ5μmのアンドープGaNからなり、第2導電型窒化ガリウム系半導体層57は例えば厚さ1.0μmのMgドープp型GaNからなり、及び第1導電型窒化ガリウム系半導体層59は例えば厚さ0.3μmのSiドープn型GaNからなる。半導体積層53における接合61a、61bの各々も、基板51の主面51aの傾斜に応じてc軸に対して傾斜している。このとき、半導体積層53の厚さは7μmである。
【0062】
工程S103では、図3(b)に示されるように、フォトリソグラフィで半導体積層53の表面53aに形成されたマスク63を用いて、半導体積層53に開口65を形成する。開口65は、半導体積層53の表面53aから導電性基板51の主面51aに到達する。開口65は、第1〜第3部分65a、65b、65cを有する。第1の部分65aでは、導電性基板51の主面51aの一部51bが露出している。第2の部分65bでは、開口65の側面65cが、導電性基板51の主面51aから半導体積層53の表面53aまで傾斜する。開口65の側面65cには、絶縁用窒化ガリウム系半導体層55の端面55a、第2導電型窒化ガリウム系半導体層57の端面57a、及び第1導電型窒化ガリウム系半導体層59の端面59aが現れている。開口形成の結果として、半導体積層53bが形成される。半導体積層53bは、基板51の主面51aの残り51cを覆う。半導体積層53bは、開口の形状に応じて、メサ形状、或いは凹部を含む形状を成す。開口65の側面65cには、良好な条件ではほぼc面が現れる。側面65aは、基板51の主面51aに対して傾斜している。側面65aの具体的な傾斜角は、基板51の主面51aの半極の傾斜に応じて決定される。
【0063】
工程S104では、開口65を形成した後に、図3(c)に示されるように、半導体積層53b及び基板51上にドリフト層のための窒化ガリウム系半導体膜67を成長する。窒化ガリウム系半導体膜67の成長では、半導体積層53bの側面における成長速度が基板51の露出面上の成長速度より十分に大きくなる条件が用いられる。また、窒化ガリウム系半導体膜67は、開口65を埋め込む程度の厚さに成長されることが良い。窒化ガリウム系半導体膜67の厚さは、少なくとも絶縁用窒化ガリウム系半導体層55の端面55aを覆う程度である。本実施例では、窒化ガリウム系半導体膜67の厚さは、半導体積層53bの厚さ以上の値であり、例えば7μmである。
【0064】
次いで、工程S105では、図4(a)に示されるように、窒化ガリウム系半導体膜67を加工して、エピタキシャル基板の表面に半導体積層53cが露出させる。加工は例えば研磨及び化学的エッチングであることができる。研磨は、例えば機械的研磨(MP)及び化学的機械的研磨(CMP)を用いることができる。この加工の結果、エピタキシャル基板の表面には、半導体積層53c及びドリフト層のための窒化ガリウム系半導体領域67aが現れている。本実施例では、窒化ガリウム系半導体領域67aは、開口16に充填されている。窒化ガリウム系半導体領域67aは、半導体層55、57、59の端面55a、57a、59aを覆っている。本実施例では、研磨を用いて上記の加工を行う。この研磨により、半導体積層53bの最上層の半導体59の表層が少し除かれて、半導体積層53cが形成される。
【0065】
工程S106では、図4(b)に示されるように、窒化ガリウム系半導体領域67aを選択的にエッチングして、窒化ガリウム系半導体領域67bを形成する。この結果、開口65の側面65aのうち端面55aの一部及び端面57a、59aの全体を露出される。前述の開口65形成と同様である。窒化ガリウム系半導体領域67bは、端面55aの残りを覆う。窒化ガリウム系半導体領域67bはドリフト層を構成する。このエッチングで、半導体層55、57、59もエッチングされることがあるが、エッチング後において、半導体層55、57、59の端面はほぼc面からなることが良い。この工程において、半導体積層53cの開口内及び導電性基板51の主面51a上にドリフト層67bが形成される。
【0066】
必要な場合には、図4(c)に示されるように、工程S107においてチャネル層及びバリア層の成長に先立って前処理を行う。
【0067】
工程S108では、図5(a)に示されるように、半導体積層53cの表面、開口65の側面及びドリフト層67b上に、窒化ガリウム系半導体からなるチャネル半導体層69を成長する。次いで、工程S109では、チャネル半導体層69上に、窒化ガリウム系半導体からなるバリア層71を成長する。
【0068】
工程S110では、半導体積層53cの半導体層57、59に接触を成すソース電極73の形成、バリア層71にショットキ接触を成すゲート電極の形成、及び基板51の裏面51bに接触を成すドレイン電極75の形成を行う。
【0069】
この製造方法によれば、半導体積層53が、半極性を示すIII族窒化物主面51a上に成長され、半導体積層53には、該主面51aに到達する開口65が形成される。開口65の側面65a上に、ドリフト層のための半導体層67が成長される。また、第1導電型窒化ガリウム系半導体層59及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層57の端面(開口65の側面65a)上に、チャネル層71が成長される。
【0070】
上記の説明においては、良好な形態を提供するc面傾斜を開口に形成したけれども、以下の角度条件を満たすとき、ドリフト層67b及びチャネル層71の成長中に取り込まれる不純物量を低減できる。角度条件を次のように規定する:開口65の側面65aが当該トランジスタを構成するIII族窒化物半導体のa面に対して角度(図面には記載しないが「角度θ1」として参照する)を成し、該III族窒化物半導体のm面に対して角度(図面には記載しないが「角度θ2」として参照する)を成し、該III族窒化物半導体のc面に対して角度(図面には記載しないが「角度θ3」として参照する)を成す。角度条件:角度θ3が角度θ1よりも小さく、且つ角度θ3が角度θ2よりも小さい。
【0071】
このとき、上記の角度の関係から、開口65の側面65aの傾斜角は、m面やa面よりもc面に近くなる。この側面65aにドリフト層67b及びチャネル層71の半導体を成長するので、その成長中に不可避的に取り込まれる不純物量を小さくできる。これ故に、ドリフト層76b及びチャネル層71は低い不純物濃度を有する。したがって、この方法によれば、ドリフト67b層及びチャネル層71における抵抗の不均一を避けることができる。
【0072】
この結果、チャネル層71は不純物として酸素及び炭素を含むけれども、チャネル層71における酸素濃度をチャネル層71における炭素濃度より小さくできる。また、ドリフト層67bは不純物として酸素及び炭素を含むけれども。ドリフト層67bにおける酸素濃度をドリフト層67bにおける炭素濃度より小さくできる。酸素はドナーとして作用して半導体層に電子を供給する一方、炭素の添加は半導体を高比抵抗にする。チャネル層において、酸素濃度が炭素濃度より小さい。これ故に、酸素の働きが炭素により低減される。
【0073】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0074】
11…ヘテロ接合トランジスタ、13…導電性基板、15…半導体積層、16…開口、17…ドリフト層、19…チャネル層、20…ヘテロ接合、21…バリア層、23…ゲート電極、25…第1導電型窒化ガリウム系半導体層、27…第2導電型窒化ガリウム系半導体層、29…絶縁用の窒化ガリウム系半導体層、31…ソース電極、33…ドレイン電極、35a、35b、35c、35d、35e、35f…接合、35g…ショットキ接合、CR…結晶座標系


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ接合トランジスタであって、
半極性を示すIII族窒化物主面を有する導電性基板と、
前記導電性基板の前記主面に到達する開口を有する半導体積層と、
前記半導体積層の前記開口内及び前記導電性基板の前記主面上に設けられ窒化ガリウム系半導体からなるドリフト層と、
前記半導体積層の前記開口内に設けられ窒化ガリウム系半導体からなるチャネル半導体層と、
前記半導体積層の前記開口内の前記チャネル半導体層上に設けられたバリア層と、
前記バリア層上に設けられたゲート電極と
を備え、
前記半導体積層は、前記導電性基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層、前記導電性基板と前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層、及び前記導電性基板と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ絶縁のための窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の側面に位置する端面を有し、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の側面に位置する端面を有し、
前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、
前記チャネル層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面及び前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、
前記ドリフト層は、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、
前記開口の前記側面は、前記III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、前記III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共に前記III族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成し、
前記第3の角度は前記第1の角度よりも小さく、
前記第3の角度は前記第2の角度よりも小さい、ことを特徴とするヘテロ接合トランジスタ。
【請求項2】
前記半導体積層にソース電極を更に備え、
前記ソース電極は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層及び前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル層は不純物として酸素及び炭素を含み、
前記チャネル層における酸素濃度は前記チャネル層における炭素濃度より小さい、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項4】
前記導電性基板の裏面に設けられたドレイン電極を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項5】
前記導電性基板の前記主面は、前記III族窒化物半導体のc軸の方向に延在する基準軸に直交する面に対して63度以上80度以下の範囲の角度を成す、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項6】
前記導電性基板の前記主面は、前記III族窒化物半導体のc軸の方向に延在する基準軸に直交する面に対して70度以上80度以下の範囲の角度を成す、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項7】
前記開口の前記側面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を基準にして40度以上90度以下の角度範囲にある、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項8】
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を含み、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面は、前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項9】
前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の端面は、前記窒化ガリウム系半導体層のc面を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項10】
前記導電性基板はn型GaNからなり、
前記窒化ガリウム系半導体ドリフト層はGaNからなり、
前記チャネル半導体層はアンドープGaNからなり、
前記バリア層はAlGaNからなり、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層はn型GaNからなり、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層はp型GaNからなり、
前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層はGaNからなる、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたヘテロ接合トランジスタ。
【請求項11】
ヘテロ接合トランジスタを作製する方法であって、
半極性を示すIII族窒化物半導体の主面を有する導電性基板を準備する工程と、
前記導電性基板の前記主面に半導体積層を成長する工程と、
前記導電性基板の前記主面に到達する開口を前記半導体積層に形成する工程と、
前記半導体積層の前記開口内及び前記導電性基板の前記主面上に、窒化ガリウム系半導体からなるドリフト層を形成する工程と、
前記半導体積層の前記開口の側面及び前記窒化ガリウム系半導体ドリフト層上に、窒化ガリウム系半導体からなるチャネル半導体層を成長する工程と、
窒化ガリウム系半導体からなるバリア層を前記チャネル半導体層上に成長する工程と、
前記バリア層上にゲート電極を形成する工程と
を備え、
前記半導体積層は、前記導電性基板の前記主面上に設けられた第1導電型窒化ガリウム系半導体層、前記導電性基板と前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられた第2導電型窒化ガリウム系半導体層、及び前記導電性基板と前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層との間に設けられ絶縁のための窒化ガリウム系半導体層を含み、
前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、
前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、
前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層は、前記半導体積層の前記開口の前記側面に到達する端面を有し、
前記チャネル層は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面及び前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、
前記ドリフト層は、前記絶縁のための窒化ガリウム系半導体層の前記端面上に設けられ、
前記開口の前記側面は、前記III族窒化物半導体のa面に対して第1の角度を成し、前記III族窒化物半導体のm面に対して第2の角度を成すと共に前記III族窒化物半導体のc面に対して第3の角度を成し、
前記第3の角度は前記第1の角度よりも小さく、
前記第3の角度は前記第2の角度よりも小さい、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記半導体積層にソース電極を形成する工程を更に備え、
前記ソース電極は前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層及び前記第2導電型窒化ガリウム系半導体層に接続されている、ことを特徴とする請求項11に記載された方法。
【請求項13】
前記開口の前記側面は、前記第1導電型窒化ガリウム系半導体層のc面を基準にして40度以上90度以下の角度範囲にある、ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載された方法。
【請求項14】
前記チャネル層は不純物として酸素及び炭素を含み、
前記チャネル層における酸素濃度は前記チャネル層における炭素濃度より小さい、ことを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載された方法。
【請求項15】
前記ドリフト層は不純物として酸素及び炭素を含み、
前記ドリフト層における酸素濃度は前記ドリフト層における炭素濃度より小さい、ことを特徴とする請求項11〜請求項14のいずれか一項に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−77400(P2011−77400A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228859(P2009−228859)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】