説明

ベルト式無段変速機、ベルト式無段変速機の制御装置および車両

【課題】変速比がTOP又はLOWになる領域での制御精度の向上
【解決手段】ベルト式無段変速機800は、それぞれ一対のフランジが軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ13及びセカンダリシーブ14に、ベルト15が巻き掛けられ、フランジを動かすアクチュエータ17と、アクチュエータ17を制御する制御装置18とを備えている。制御装置18は、ベルト式無段変速機800の実変速比が、予め定められたTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定する判定部206と、判定部206の判定に基づいて、アクチュエータ17の操作量を補正する第1補正部207を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式無段変速機およびベルト式無段変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機は、エンジン等の動力源の出力が入力されるプライマリ軸と、駆動輪への出力を取り出すセカンダリ軸とにそれぞれ配された溝幅可変の一対のプライマリシーブ及びセカンダリシーブを備えている。通常、プライマリシーブ及びセカンダリシーブは、相互間にV溝を形成する固定フランジ及び可動フランジから構成されている。各可動フランジは、プライマリ軸又はセカンダリ軸の軸線方向に移動自在に設けられている。両シーブにはVベルトが巻き掛けられている。ベルト式無段変速機は、可動フランジを移動させることによって、両シーブの溝幅が変えられて変速比が変わる。
【0003】
この種のVベルト式無段変速機には、プライマリシーブの可動フランジを移動させるアクチュエータを制御装置で制御する変速機もある。制御装置は、例えば、スロットル開度、車速などの車両情報に基づいて目標変速比を算出する。制御装置は、可動フランジの位置が目標の位置になるようにアクチュエータに制御信号を送り、これにより可動フランジの位置を制御している。斯かるVベルト式の自動無段変速機は、例えば、自動二輪車などの車両に適用されている(例えば、特許第3043061号公報等参照)。
【0004】
特開平7−158706号公報には、可動フランジの位置を検出するポジションセンサを備えている。同公報では、当該ポジションセンサの出力特性のばらつき、特性の経時変化、Vベルトの伸び、摩耗などによって、ポジションセンサで検出された検出値と、可動フランジの位置との相関関係に狂いが生じることが開示されている。さらに同公報には、プライマリシーブとセカンダリシーブの回転数の比から相関データの狂いを自己補正することが開示されている。
【特許文献1】特許第3043061号公報
【特許文献2】特開平7−158706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開平7−158706号公報に開示された変速制御方法は、ベルトのスリップの有無について判定したり、入力トルクを算出したりするなど、処理が繁雑である。
【0006】
上述した相関関係の車両ごとのばらつき、および、制御への影響を軽減する制御手法はいろいろ考えられる。例えば、可動フランジの可動域全域について測定するなどして相関関係を修正することができる。斯かる修正は、車両ごとの対応が必要であり、さらに経時的な変化に対応できない。また、実変速比を算出し、その結果をフィードバックしてベルト式無段変速機の変速比を制御する方法もある。この手法は、車両の変速応答性が悪くなると考えられる。このため、より簡単な方法で制御の精度を向上させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るベルト式無段変速機は、それぞれ一対のフランジが軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ及びセカンダリシーブに、ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機である。このベルト式無段変速機は、フランジを動かすアクチュエータと、アクチュエータを制御する制御装置とを備えており、制御装置は、ベルト式無段変速機の実変速比が、予め定められたTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定する判定部と、判定部の判定に基づいて、アクチュエータの操作量を補正する第1補正部を備えている。
【0008】
ある実施形態において、判定部は、ベルト式無段変速機の実変速比がTOPの所定の変速比になったか否かを判定する。そして、ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる目標位置にフランジを動かす制御において、当該制御が完了する前に、判定部で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定された場合に、第1補正部は、それ以上実変速比が小さくならないように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正してもよい。
【0009】
また、ある実施形態において、ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる目標位置にフランジを動かす制御において、当該制御が完了した後も、判定部で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定されない場合に、第1補正部は、実変速比がTOPの所定の変速比になるように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正してもよい。この場合、第1補正部は、車速の増加分に応じて実変速比が小さくなるように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正してもよい。
【0010】
プライマリシーブ及びセカンダリシーブは、それぞれ回転軸に取り付けられた固定フランジと可動フランジとを備え、プライマリシーブの溝幅は、当該プライマリシーブの可動フランジをアクチュエータで移動制御することによって調整されるとともに、セカンダリシーブの可動フランジは、溝幅を狭める方向に付勢されていてもよい。
【0011】
ベルト式無段変速機は、フランジの位置を検出するフランジ位置検出センサを備えていてもよい。この場合、制御装置は、目標変速比を設定する目標変速比設定部と、フランジ位置検出センサの検出値と変速比との相関関係を記憶した第1記憶部と、ベルト式無段変速機の変速比が目標変速比設定部で設定された目標変速比になるように、第1記憶部に記憶された相関関係を含む情報に基づいて、アクチュエータの操作量を設定する操作量設定部とを備えていてもよい。
【0012】
また、制御装置は、TOP又はLOWの所定の変速比を記憶した第2記憶部と、ベルト式無段変速機の実変速比を検出する実変速比検出部とを備えていてもよい。この場合、判定部は、第2記憶部に記憶されたTOP又はLOWの所定の変速比に基づいて、実変速比検出部で検出される実変速比がTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定し、第1補正部は、前記判定部の判定に基づいて、前記操作量設定部で設定されたアクチュエータの操作量を補正するものでもよい。
【0013】
フランジ位置検出センサは、フランジを移動させる機構に連動して回転する回転軸に取り付けた角度センサで構成されていてもよい。
【0014】
フランジ位置検出センサは、フランジが可動域の一方に偏った第1の状態にセンサの基準が設定され、他方に偏った第2の状態に向けてフランジが移動した際の移動量に応じて検出値が変化する。そして、第1記憶部は、フランジ位置検出センサの検出値と変速比との基準となる相関関係を記憶する。この場合において、制御装置は、第2の状態に近い方における、実変速比が所定の変速比になったときのフランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔAと、第1記憶部に記憶された基準となる相関関係に基づいて導出されるフランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔBとに基づき、ΔA/ΔBの割合によって、第1記憶部に記憶された基準となる相関関係を補正する第2補正部を備えていてもよい。
【0015】
第1の状態は、ベルト式無段変速機の変速比がLOWになる側でもよいし、TOPになる側でもよい。
【0016】
実変速比検出部は、ベルト式無段変速機への入力回転数と、ベルト式無段変速機からの出力回転数との比に基づいて、ベルト式無段変速機の実変速比を算出してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制御装置は、ベルト式無段変速機の実変速比が、予め定められたTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定する判定部と、判定部の判定に基づいて、アクチュエータの操作量を補正する第1補正部を備えているので、変速比がTOP又はLOWになる領域での制御精度を向上させることができる。
【0018】
また、本発明のある一つの形態では、上述したΔA/ΔBの割合によって、第1記憶部に記憶された基準となる相関関係を補正する第2補正部を備えているので、変速比の全領域で、上述した相関関係のずれを簡単に修正することができる。これにより、ベルト式無段変速機の制御精度を比較的簡単な方法によって向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機を図面に基づいて説明する。なお、図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0020】
ベルト式無段変速機800は、図2に示すように、それぞれ一対のフランジ(31、32)、41、42)が軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ13及びセカンダリシーブ14に、ベルト15が巻き掛けられている。斯かるベルト式無段変速機800は、フランジ(31、32)、(41、42)を動かすアクチュエータ17と、アクチュエータ17を制御する制御装置18を備えている。そして、アクチュエータ17を制御し、フランジ(31、32)、(41、42)を動かすことによって、両シーブ13、14の溝幅が変わり、変速比が変わる。
【0021】
制御装置18には、フランジ32の位置を検出するフランジ位置検出センサ19が接続されている。フランジ位置検出センサ19は、フランジ32の位置を検出するとともに、アクチュエータ17の操作量を検出することができる。
【0022】
また、フランジ位置検出センサ19の検出値と変速比には相関関係がある。基準となる相関関係vは、例えば、図8に示すように、センサの基準位置から、フランジ位置検出センサ19の設計上の出力特性などを考慮して設定することができる。なお、図8に示す例では、フランジ位置検出センサ19としてポテンショメータが用いられている。同図の例では、フランジ位置検出センサは、変速比がLOWになる位置にセンサの基準位置が設定されており、フランジ位置検出センサの検出値は変速比がTOPになる位置に近づくにつれて高くなる。
【0023】
しかし、一般的に、フランジ位置検出センサ19はセンサの出力特性に個体差がある。このため、図8に示すように、フランジ位置検出センサ19の検出値と変速比との相関関係が、基準となる相関関係vからLOW側にずれていたり(w1)、TOP側にずれていたり(w2)する。このように、フランジ位置検出センサ19の検出値と変速比との相関関係が、基準となる相関関係vからずれている場合に、フランジ位置検出センサ19の検出値に基づいて、変速比を制御すると、センサの基準位置xから離れるにつれて、制御目標となる目標変速比から変速比がずれる場合がある。すなわち、図7に示すように、実際に制御される変速比(w1、w2)が目標変速比tからずれる。
【0024】
本発明者は、このような事象を考慮し、簡単な方法で制御精度を向上させることができないかを検討した。その結果、本発明者は、上述した相関関係のずれは、センサの基準位置から離れた位置に設定されるTOP又はLOWの位置で大きくなるが、TOPやLOWでは、できる限り正確に予め設定される所定の変速比に制御することが望ましいと考えた。さらに、上述した相関関係のずれによって変速比が目標変速比からずれた場合でも、変速比が目標変速比からずれる影響は、TOP近傍領域又はLOW近傍領域を除く中間領域では許容されることを見出した。
【0025】
また、本発明者は、変速比がTOP又はLOWになる領域での制御精度を向上させる方法を見出した。さらに、本発明者は、変速比の全領域で、上述した相関関係のずれを簡単に修正する方法を見出した。以下に、本発明の一実施形態を詳述する。
【0026】
この実施形態では、ベルト式無段変速機800は、図1に示すように、自動二輪車1000のパワーユニット900に装備されている。
【0027】
この実施形態では、ベルト式無段変速機800は、図2に示すように、プライマリ軸11と、セカンダリ軸12と、プライマリシーブ13と、セカンダリシーブ14と、Vベルト15と、溝幅調節機構16と、アクチュエータ17と、制御装置18と、フランジ位置検出センサ19とを備えている。
【0028】
プライマリ軸11とセカンダリ軸12は、図3及び図4に示すように、パワーユニット900のケース901に軸受を介して取り付けられている。プライマリ軸11は、エンジン902の出力軸であるクランク軸903と一体形成されている。セカンダリ軸12は、プライマリ軸11に平行に配されて駆動軸904に連結されている。クランク軸903には、クランクジャーナル905と、クランクウエブ906と、クランクピン907と、コンロッド908と、ピストン909を構成する各部材が連結されている。
【0029】
この実施形態では、プライマリシーブ13及びセカンダリシーブ14は、それぞれ回転軸(プライマリ軸11とセカンダリ軸12)に取り付けられた固定フランジ(31、41)と可動フランジ(32、42)とを備えている。セカンダリシーブ14の可動フランジ42は溝幅を狭める方向に付勢されている。プライマリシーブ13の可動フランジ32の移動は制御装置18で制御されている。固定フランジ(31、41)と可動フランジ(32、42)は、ベルト巻回用のV溝を形成する。Vベルト15は、斯かるプライマリシーブ13及びセカンダリシーブ14のV溝に巻回され、両シーブ(13、14)間で回転駆動力を伝達する。そして、可動フランジ(32、42)がプライマリ軸11とセカンダリ軸12の軸方向に移動することでV溝の溝幅が変化し、ベルト式無段変速機800の変速比が変化する。
【0030】
溝幅調節機構16は、プライマリシーブ13の可動フランジ32を移動させ、プライマリシーブ13の溝幅を調節する機構である。アクチュエータ17は溝幅調節機構16を駆動させる。この実施形態では、プライマリシーブ13の溝幅は、当該プライマリシーブ13の可動フランジ32をアクチュエータ17で移動制御することによって調整される。
【0031】
プライマリシーブ13及び溝幅調節機構16は、プライマリ軸11にそれぞれ装着されている。プライマリ軸11には、スプライン51が形成されており、端部には後述するロックナット74を取り付けるための雄ねじ52が形成されている。
【0032】
プライマリシーブ13は、図5に拡大して示すように、固定フランジ31と可動フランジ32で構成されている。固定フランジ31は先端側に固定的に配設されており、可動フランジ32は基端側にプライマリ軸11に対して軸方向に移動可能に配設されている。この実施形態では、プライマリシーブ13の固定フランジ31と可動フランジ32は、それぞれ略円盤状の部材であり、軸方向で対向する面がそれぞれ円錐面31a,32aで形成されている。固定フランジ31と可動フランジ32とは、互いの円錐面31a,32aを対向させることにより、相互間にVベルト15が巻き掛けられるV溝を形成している。
【0033】
固定フランジ31の中央部には、プライマリ軸11に挿通される挿通穴61が形成されており、斯かる挿通穴61の内周面にはプライマリ軸11のスプライン51に応じたスプラインが形成されている。また、可動フランジ32の中央部には、溝幅調節機構16に取り付けるための取付部62が形成されている。この実施形態では、溝幅調節機構16は、スライダ63と、送り部材64と、ガイド部材65と、歯車66と、固定側支持部材67とで構成されている。また、プライマリシーブ13及び溝幅調節機構16は、回転側支持部材71と、第1スリーブ72と、第2スリーブ73と、ロックナット74によって、プライマリ軸11に取り付けられている。
【0034】
回転側支持部材71、第1スリーブ72、固定フランジ31、第2スリーブ73及びロックナット74は、順にプライマリ軸11に装着されている。第1スリーブ72と固定フランジ31は、それぞれプライマリ軸11のスプライン51に噛み合った状態で装着されており、プライマリ軸11と一緒に回転する。第2スリーブ73は、プライマリ軸11に装着した部材であり、一端を固定フランジ31に当接させている。プライマリ軸11の端部に形成された雄ねじ52には、ロックナット74を螺合させている。プライマリ軸11の端部は、第2スリーブ73とケース901との間に装着した軸受75によって回転可能に支持されている。
【0035】
第1スリーブ72は軸方向に沿って配設されたガイド機構76を備えている。溝幅調節機構16のスライダ63はガイド機構76によって軸方向に沿って移動するように第1スリーブ72に装着されている。可動フランジ32はスライダ63に取り付けられている。スライダ63には、軸受77を介して送り部材64と歯車66が取り付けられている。また、送り部材64の外周面には雄ねじ64aが形成されており、ケース901に固定的に配設されたガイド部材65の内周面に形成された雌ねじ65aに噛み合わせている。
【0036】
溝幅調節機構16のガイド部材65は、プライマリ軸11に装着された回転側支持部材71に軸受78を介して取り付けられ、かつ、ケース901に固定的に配設された固定側支持部材67に取り付けられている。これにより、ガイド部材65はケース901に対して固定的に配設されており、プライマリ軸11が回転してもガイド部材65は回転しない。
【0037】
この実施形態では、アクチュエータ17として電動モータを用いている。電動モータ17の出力軸81は、歯車伝達機構82の複数の歯車83〜85を介して歯車66に動力を伝達している。歯車伝達機構82の複数の歯車83〜85は、パワーユニット900のケース901に軸受を介して取り付けられている。歯車伝達機構82は、電動モータ17の出力を減速させている。溝幅調節機構16の歯車66に動力を伝達している。
【0038】
この実施形態では、電動モータ17の出力は、図2に示すように、制御装置18の制御信号に基づいて、電動モータ17に供給される供給電力によって制御される。電動モータ17への供給電力は、例えば、PWM(Pulse Wide Modulation)方式で制御するとよい。PWM方式では、供給電力の電圧を一定として電動モータ17のON/OFFの時間比(Duty比)を変えることによって、電動モータ17の出力を制御している。なお、本実施形態では、PWM方式で電動モータ17の出力を制御しているが、電動モータ17の出力を適当に制御できるのであれば、PWM方式による制御だけには限らず、例えば、供給電力の電圧をアナログ的に可変として、電動モータ17の出力を制御することもできる。
【0039】
電動モータ17は、制御装置18(変速制御装置)に電気的に接続されている。この制御装置18は、電子制御装置(ECU;Electronic Control Unit)で構成されている。電子制御装置(ECU)は、例えば、演算部(マイクロコンピュータ(MPU))と、記憶部(メモリー)とを備えている。制御装置18には、車両に取り付けられた多くのセンサから多くの車両情報が入力される。
【0040】
可動フランジ32は、電動モータ17の回転、及び、送り部材64とガイド部材65との噛み合いに応じて、スライダ63とともに軸方向に移動する。可動フランジ32の位置はフランジ位置検出センサ19によって検出する。
【0041】
フランジ位置検出センサ19は、この実施形態では、図6に示すように、フランジを移動させる機構(溝幅調節機構16)に連動して回転する回転軸に取り付けたポテンショメータ19(角度センサ)で構成されている。ポテンショメータ19の回転軸91は、歯車伝達機構82の歯車85に噛み合わせた歯車92、及び、その歯車軸93に形成したウォーム94に噛み合わせている。斯かるポテンショメータ19は、パワーユニット900のケース901に取り付けられている。斯かる構成によって、ポテンショメータ19は、電動モータ17の操作量に応じて抵抗値が変化する。ポテンショメータ19の検出値と、電動モータ17の操作量、可動フランジ32の位置およびベルト式無段変速機800の変速比との間にはそれぞれ相関関係がある。このため、ポテンショメータ19は、電動モータ17の操作量だけでなく、プライマリシーブ13の可動フランジ32の位置、ベルト式無段変速機800の変速比を検出することができる。
【0042】
この実施形態では、図示は省略するが、溝幅調節機構16は、可動フランジ32の可動域のうち、プライマリシーブ13の溝幅が広くなる側(LOW)において、可動フランジ32の移動を規制する突き当てを備えている。ポテンショメータ19は、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになる側に可動フランジ32を移動させ、可動フランジ32を突き当て(図示省略)に当てた状態で、歯車伝達機構82に取り付けられている。この実施形態では、当該突き当て98、99によって、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになる側で可動フランジ32の移動が規制される。そして、当該状態で、ポテンショメータ19を歯車伝達機構82に取り付け、さらに、センサキャリブレーションを行っている。このため、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになる状態では、ポテンショメータ19の検出値は略一定の値になる。
【0043】
制御装置18は、電動モータ17の操作量を算出する。具体的には、入力された車両情報に基づいて、予め設定されたプログラムに従って、制御目標となるベルト式無段変速機800の目標変速比を算出する。そして、ベルト式無段変速機800の変速比が、目標変速比になるように、フランジ位置検出センサ19の検出値と変速比との相関関係、フランジ位置検出センサ19の検出値と電動モータ17の操作量との相関関係などに基づいて、電動モータ17の操作量を算出する。そして、算出された電動モータ17の操作量に基づいて、電動モータ17に操作信号を出力する。以下、この実施形態における制御装置18を詳細に説明する。
【0044】
この実施形態では、制御装置18は、図2に示すように、目標変速比設定部201と、第1記憶部202と、第2記憶部203と、実変速比検出部204と、操作量設定部205と、判定部206と、第1補正部207を備えている。
【0045】
また、制御装置18には、上述したフランジ位置検出センサ19の他、図2に示すように、スロットル・ポジション・センサ101(Throttle Position Sensor/TPS)、エンジン回転数センサ102、車速センサ103、104などの各種のセンサに電気的に接続されており、各種のセンサから鞍乗型車両の様々な状態について所要の情報を得ている。
【0046】
このうち、スロットル・ポジション・センサ101(TPS)は、アクセル開度(スロットル開度)を検知するセンサである。エンジン回転数センサ102は、エンジン回転数を検知するセンサであり、この実施形態では、クランク軸(プライマリ軸11)の回転数を検知するセンサで構成している。車速センサ103、104は、車速を検出する。車速センサは、例えば、セカンダリ軸12の回転数を検知するセンサ103又は駆動軸904の回転数を検知するセンサ104で構成するとよい。
【0047】
目標変速比設定部201は、目標変速比を設定する。この実施形態では、制御装置18は、例えば、車速や、スロットル開度などの車両情報に基づいて、ベルト式無段変速機800をどのような変速比にするかを定めた変速マップ211を記憶している。目標変速比の設定は、制御装置18に入力される車両情報に基づいて、変速マップ211から制御目標となる変速比を算出するとよい。
【0048】
この実施形態では、図7に示す変速マップ211が設定されている。図7は、制御装置に設定された変速マップを図示したものであり、横軸は車速、縦軸はエンジン回転数をそれぞれ示している。図7中、ベルト式無段変速機800の変速比をLOWにしたときの所定の変速比はrで示され、ベルト式無段変速機800の変速比をTOPにしたときの所定の変速比はsで示されている。この変速マップ211には、スロットル全開で加速する場合の目標変速比tと、スロットル全閉で減速する場合の目標変速比uが設定されている。
【0049】
目標変速比設定部201は、この実施形態では、まず、車速の情報に基づいて図7中の横軸上の位置を決める。次に、目標変速比設定部201は、スロットル(アクセル)の開度に応じた所定の係数を乗じて、スロットル全閉で減速する場合の目標変速比uと、スロットル全開で加速する場合の目標変速比tとの間で、エンジン902の回転速度の制御目標値を求める。この場合、スロットルの開度が小さいとそれだけスロットル全閉で減速する場合の目標変速比uに近い変速比が目標変速比に設定され、スロットルの開度が大きいとそれだけスロットル全開で加速する場合の目標変速比tに近い変速比が目標変速比に設定される。
【0050】
第1記憶部202は、この実施形態では、図8に示すように、ポテンショメータ19(フランジ位置検出センサ)の検出値と変速比との基準となる相関関係vを記憶している。なお、図8は、ポテンショメータ19で検出される検出値を縦軸にとり、横軸に変速比をとり、可動フランジ32の可動域において両者の相関関係を示している。この実施形態では、第1記憶部202には、ポテンショメータ19の検出値と変速比との基準となる相関関係vを記憶している。基準となる相関関係vは、例えば、設計上定められる相関関係でもよいし、数台の実機での計測の平均値に基づいて定められる相関関係でも良い。
【0051】
この実施形態では、上述したようにポテンショメータ19は、図8に示すように、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになった状態では、ポテンショメータ19の検出値は略一定の値になる。そして、変速比の変位に対しては、数個のポテンショメータ19の平均的な出力特性を考慮して、ポテンショメータ19(フランジ位置検出センサ)の検出値と変速比との基準となる相関関係vを設定している。
【0052】
この実施形態では、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになる位置でのポテンショメータ19の検出値をセンサの基準位置xとしている。基準となる相関関係vは、ベルト式無段変速機800の変速比がTOPになる位置に向けて、可動フランジ32を移動させるにつれて、ポテンショメータ19の検出値が高くなる。
【0053】
なお、この実施形態では、ポテンショメータ19の検出値と、変速比と、電動モータ17の操作量と、可動フランジ32の位置との間にも、それぞれ相関関係がある。このため、ポテンショメータ19(フランジ位置検出センサ)の検出値と変速比の相関関係と、ポテンショメータ19の検出値と電動モータ17の操作量との相関関係と、ポテンショメータ19の検出値と可動フランジ32の位置との相関関係とは、実質的に、相互に置き換えることが可能である。この実施形態では、ポテンショメータ19の検出値に基づいて制御上の可動フランジ32の位置を求めている。すなわち、制御装置18は、ポテンショメータ19の検出値に基づいて可動フランジ32の位置を認識している。
【0054】
第2記憶部203は、TOP又はLOWの所定の変速比を記憶している。TOP又はLOWの所定の変速比は、ベルト式無段変速機800の設計上、予め所定の値を定めるとよい。この実施形態では、第2記憶部203は、ベルト式無段変速機800の変速比がTOPになる所定の変速比を記憶している。
【0055】
実変速比検出部204は、ベルト式無段変速機800の実変速比を検出する。ここで、「実変速比」は、ベルト式無段変速機800の実際の変速比であり、例えば、ベルト式無段変速機800に入力される回転数と、出力される回転数との比で求めることができる。この実施形態では、実変速比検出部204は、ベルト式無段変速機800への入力回転数と、ベルト式無段変速機800からの出力回転数との比に基づいて、ベルト式無段変速機800の実変速比を算出している。
【0056】
入力回転数は、例えば、プライマリ軸11の回転数を直接検知するセンサの他、エンジン回転数を検知するセンサや、プライマリシーブ13の回転数を検知するセンサなど、プライマリ軸11の回転数を間接的に検知できるセンサで検知するとよい。この実施形態では、入力回転数には、エンジン回転数センサ102で検知される回転数を用いている。出力回転数は、セカンダリ軸12の回転数を直接検知するセンサの他、例えば、駆動軸904の回転数を検知するセンサや、セカンダリシーブ14の回転数を検知するセンサなど、セカンダリ軸12の回転数を間接的に検知できるセンサで検知するとよい。
【0057】
操作量設定部205は、第1記憶部202に記憶された相関関係を含む情報に基づいて、ベルト式無段変速機800の変速比が、目標変速比になるように、電動モータ17の操作量を設定する。この実施形態では、目標変速比設定部201で目標変速比が設定される。次に、ベルト式無段変速機800の変速比が、当該目標変速比になるように、第1記憶部202に記憶されたポテンショメータ19の検出値と変速比との相関関係から、目標変速比に応じたポテンショメータ19の検出値を算出する。そして、算出されたポテンショメータ19の検出値に基づいて電動モータ17の操作量を決定している。なお、アクチュエータの操作量の設定は、これに限定されるものではない。
【0058】
制御装置18は、操作量設定部205で設定された電動モータ17の操作量に基づいて、電動モータ17に操作信号を出力する。ここで、変速比に対するポテンショメータ19の出力特性が、図8に示される相関関係を備えている場合には、ベルト式無段変速機800の変速比は目標変速比になるように制御される。
【0059】
このような制御において、ポテンショメータ19の出力特性に個体差がある場合には、ベルト式無段変速機800の変速比は、目標変速比からずれてしまうことがある。また、ベルトの磨耗などの経年変化や、許容され得る部品の公差などにおいても、ベルト式無段変速機800の変速比は、目標変速比からずれてしまう可能性がある。これは、制御装置18に予め記憶されたポテンショメータ19の検出値と変速比との基準となる相関関係vから、ポテンショメータ19の検出値と変速比との実際の相関関係がずれていることが要因の一つであると考えられる。
【0060】
この実施形態では、可動フランジ32の可動域のうち、プライマリシーブ13の溝幅が広くなる側(LOW)には可動フランジ32の移動を規制する突き当て(図示省略)があり、可動フランジ32を突き当て(図示省略)に当てた状態でポテンショメータ19を取り付け、センサの基準位置xを設定している。この場合、図8に示すように、実際の相関関係w1、w2は、センサの基準位置xに近い位置にあるときは、基準となる相関関係vからそれほどずれない。しかし、プライマリシーブ13の溝幅が狭くなる側(TOP側)に可動フランジ32を移動させるにつれて、ポテンショメータ19のセンサの基準位置xから遠くなり、実際の相関関係w1、w2は、基準となる相関関係vからずれる場合がある。
【0061】
従って、この実施形態では、ポテンショメータ19の検出値と変速比の相関関係が、特に、TOP側で車両ごとにばらつく。なお、ポテンショメータ19の出力特性だけでなく、Vベルト15の磨耗などの経年変化や部品公差なども、ポテンショメータ19の検出値に影響を与える。これらの影響はTOP側ほど影響が大きくなる。
【0062】
制御装置18は、この実施形態では、目標変速比設定部201で目標変速比を設定する。そして、図8で示す基準となる相関関係vから、目標変速比に応じたポテンショメータ19の検出値を導く。そして、操作量設定部205は、当該ポテンショメータ19の検出値に基づいて、電動モータ17の操作量を設定する。
【0063】
以下に、実際の相関関係w1が、変速比に対してポテンショメータ19の検出値が高くなるように、基準となる相関関係vからずれている場合を説明する。
【0064】
この場合、制御装置18は、目標変速比gを設定し、この目標変速比gに対して基準となる相関関係vに基づいて目標変速比gに応じたポテンショメータ19の検出値hを算出する。そして、このポテンショメータ19の検出値hに基づいて、実際に電動モータ17の操作量を算出し、電動モータ17を操作する。このため、y1で示すように、実際の相関関係w1がLOW側にずれている分だけ、制御されるベルト式無段変速機800の変速比g1は、目標変速比gからLOW側にずれる。
【0065】
スロットル全開で加速する場合では、図7に示すように、実変速比w1は、設定される目標変速比tよりもLOW側にずれた状態で変位する。このため、制御が完了する時点k1でも実変速比w1はTOPの所定の変速比sにならないという不具合が生じる。
【0066】
次に、実際の相関関係w2が、図8に示すように、変速比に対してポテンショメータ19の検出値が低くなるように、基準となる相関関係vからずれている場合を説明する。
【0067】
この場合、制御装置18によって制御されるベルト式無段変速機800の変速比g2は、y2で示すように、実際の相関関係w2がTOP側にずれている分だけ、目標変速比gからTOP側にずれる。変速マップ211上では、図7に示すように、実変速比w2は、設定される目標変速比tよりもLOW側にずれた状態で変位する。このため、制御が完了する時点k1よりも前の時点k2で、実変速比w2はTOPの所定の変速比sになり、制御が完了する時点k1では実変速比w2はTOPの所定の変速比sよりも小さくなるという不具合が生じる。
【0068】
このように、ポテンショメータ19の出力にばらつきがあるため、TOP側では、車両ごとに、ポテンショメータ19の検出値に対する可動フランジ32の位置がばらつく。このため、ベルト式無段変速機800の変速比もばらつく。
【0069】
この制御装置18は、図2に示すように、判定部206と第1補正部207を備えている。判定部206と第1補正部207は、ベルト式無段変速機800の変速比がTOPになる目標位置に可動フランジ32を動かす制御において、斯かる制御のばらつきを小さく抑えて制御精度を向上させるべく機能する。以下、判定部206と第1補正部207を説明する。
【0070】
判定部206は、ベルト式無段変速機800の実変速比w1、w2が、予め定められたTOPの所定の変速比sになったか否かを判定する。この実施形態では、図7に示すように、第2記憶部203に記憶されたTOPの所定の変速比sに基づいて、実変速比検出部204で検出される実変速比w1、w2がTOPの所定の変速比sになったか否かを判定する。
【0071】
この判定部206によれば、制御が完了する時点k1でも実変速比w1がTOPの所定の変速比sにならない事象や、制御が完了する時点k1よりも前に、実変速比w2がTOPの所定の変速比sになる事象を検出することができる。第1補正部207は、判定部206の判定に基づいて、電動モータ17の操作量を補正する。
【0072】
斯かる制御を、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0073】
制御装置18は、ポテンショメータ19の検出値に基づいて電動モータ17を制御する(S1)。すなわち、この実施形態では、制御装置18は目標変速比設定部201で目標変速比を設定する。そして、図8で示す基準となる相関関係vから、目標変速比に応じたポテンショメータ19の検出値(目標変速比相当の検出値)を導く。そして、操作量設定部205は、実際のポテンショメータ19の検出値が当該ポテンショメータ19の検出値(目標変速比相当の検出値)になるように、実際のポテンショメータ19の検出値をフィードバックして電動モータ17の操作量を設定する。このように操作量設定部205で電動モータ17の操作量を設定し、操作量に応じた操作信号を電動モータ17に発信する。
【0074】
次に、ベルト式無段変速機800の変速比をTOPの所定の変速比にする制御において、上述した当該制御が完了したか否かを判定する(S2)。
【0075】
この実施形態では、斯かる判定(S2)は、ポテンショメータ19の検出値に基づいて判定している。ここでは、ベルト式無段変速機800の変速比がTOPになる目標位置に可動フランジ32を動かす制御を考えている。このため、制御目標となる目標変速比は、TOPの所定の変速比sである。従って、図8に示すように、TOPの所定の変速比sと基準となる相関関係vに基づいて、ポテンショメータ19の検出値h1を算出する。そして、実際にポテンショメータ19で検出される検出値が、TOPの所定の変速比sに相当する検出値h1になった場合に、当該制御が完了したことを判定するとよい。
【0076】
次に、S2で当該制御が完了していないと判定された場合(NO)は、判定部206によって、ベルト式無段変速機800の実変速比が、予め定められたTOPの所定の変速比になったか否かを判定する(S3)。この実施形態では、図7に示すように、ベルト式無段変速機800の実変速比w1、w2を算出し、当該実変速比w1、w2がTOPの所定の変速比sになったか否かを判定するとよい。
【0077】
このS3の判定で、実変速比がTOPの所定の変速比になっていないとの判定がされた場合(NO)は、S1の制御を継続するとよい。
【0078】
図7、図8においてw2で示すように、実変速比(ポテンショメータ19の検出値)が、TOP側にずれており、制御が完了する時点k1よりも前の時点k2で、実変速比w2がTOPの所定の変速比sになっている場合には、S3の判定で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定される。このような判定がなされた場合(YES)は、第1補正部207は、それ以上変速比を小さくしないように、制御装置18で設定される電動モータ17の操作量を補正する(S4)。
【0079】
この実施形態では、図7に破線Cで示すように、S3の判定で、当該実変速比w2がTOPの所定の変速比sになったと判定された時点k2での電動モータ17の操作量が維持されるように、操作量設定部205で設定される電動モータ17の操作量(目標変速比)を補正している。例えば、当該実変速比が第2記憶部203に記憶したTOPの所定の変速比になったと判定されたときの電動モータ17の操作量を記憶して、この位置で、プライマリシーブ13の可動フランジ32が維持されるように、制御装置18で設定される電動モータ17の操作量を補正するとよい。
【0080】
なお、当該第1補正部207での補正は、実質的に、制御装置18で設定される電動モータ17(アクチュエータ)の操作量を補正するものであればよい。例えば、上述した実施形態の他、目標変速比設定部201で設定される目標変速比を補正することとしてもよい。また、制御装置18が、可動フランジ32の位置を制御目標に設定するようなものであれば、設定される可動フランジ32の位置についての制御目標位置を補正するものでもよい。
【0081】
図10は、このように実際のポテンショメータ19の検出値が基準となる相関関係vよりもTOP側にずれている場合について、電動モータ17の操作量および補正量をポテンショメータ19の検出値に換算して示している。図10の縦軸はポテンショメータ19で検出される検出量を示し、横軸は車速を示している。破線P1、P2は、第1補正部207によって補正がなされずに制御が実行された場合に検出される実際のポテンショメータ19の検出値を示している。P1はスロットル全開で加速する場合を示しており、P2はスロットル全閉で減速する場合を示している。なお、この実施形態では、同じ変速比であっても、スロットル全開で加速する場合(P1)に比べて、スロットル全閉で減速する場合(P2)は、より低い検出値が検出される。実線Q1、Q2は、第1補正部207によって補正された場合に検出されるポテンショメータ19の検出値を示している。Q1はスロットル全開で加速する場合を示しており、Q2はスロットル全閉で減速する場合を示している。R1、R2はそれぞれQ1,Q2の補正量を示している。
【0082】
この実施形態では、図7および図10に示すように、実変速比がTOPの所定の変速比sになったと判定された時点k2から補正が始まり、時点k2での可動フランジ32の位置が維持されるように補正量R1が設定される。そして、補正前の電動モータ17の操作量P1に補正量R1を加算することによって、補正後の電動モータ17の操作量Q1が設定される。これにより、図7の破線Cで示すように、変速比がTOPの所定の変速比sに近づく。斯かる補正は、実変速比がTOPの所定の変速比sになったと判定された時点k2以降維持される。
【0083】
この実施形態では、その後、スロットル全閉で減速する際は、図11に示すように、補正前の電動モータ17の操作量P2が、補正後の電動モータ17の操作量Q2よりも小さい値になるまで補正が維持される。これにより、スムーズに変速比を変化させることができる。
【0084】
次に、S2で当該制御が完了したと判定された場合(YES)を説明する。
【0085】
S2で当該制御が完了したと判定された場合(YES)は、判定部206によって、ベルト式無段変速機800の実変速比が、予め定められたTOPの所定の変速比sになったか否かを判定する(S5)。
【0086】
このS5の判定で、当該実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定された場合(YES)は、ポテンショメータ19にずれが少なく、制御が概ね正常に行われた場合であり、当該補正処理を行わず、制御を終了するとよい。
【0087】
図7、図8においてw1で示すように、実変速比(ポテンショメータ19の検出値)が、LOW側にずれており、制御が完了する時点k1でも、実変速比w1がTOPの所定の変速比sになっていない場合には、S5の判定で、実変速比がTOPの所定の変速比になっていないと判定される。このような判定がなされた場合(NO)は、第1補正部207は、実変速比がTOPの所定の変速比sになるように、制御装置18で設定される電動モータ17の操作量を補正する(S6)。
【0088】
この実施形態では、第1補正部207は、図7に破線Dで示すように、車速の増加分に応じて実変速比が小さくなるように、制御装置18で設定される電動モータ17の操作量を補正する。この場合、例えば、車速が1km/h増加した場合に、ポテンショメータ19の検出値換算で、目標変速比をどの程度補正するかを予め定めておき、車速が増加するのに従って、実変速比が目標変速比に近づくように補正量を定めるとよい。
【0089】
図11は、このように実際のポテンショメータ19の検出値と変速比との相関関係が、基準となる相関関係よりもLOW側にずれている場合について、アクチュエータの操作量および補正量をポテンショメータ19の検出値に換算して示している。図11の縦軸はポテンショメータ19で検出される検出量を示し、横軸は車速を示している。破線P1、P2は、第1補正部207によって補正がなされずに制御が実行された場合に検出されるポテンショメータ19の検出値を示している。P1はスロットル全開で加速する場合を示しており、P2はスロットル全閉で減速する場合を示している。この実施形態では、同じ変速比であっても、スロットル全開で加速する場合(P1)に比べて、スロットル全閉で減速する場合(P2)は低い検出値が検出される。実線Q1、Q2は、第1補正部207によって補正された場合に検出されるポテンショメータ19の検出値を示している。Q1はスロットル全開で加速する場合を示しており、Q2はスロットル全閉で減速する場合を示している。R1、R2はそれぞれQ1,Q2の補正量を示している。
【0090】
この実施形態では、図7および図11に示すように、S5で実変速比がTOPの所定の変速比になっていないと判定されてから補正が始まる。そして、S2で制御が完了したと判定された時点k2からの車速の増加分に応じて、可動フランジ32がTOP側に移動するように補正量R1が設定される。そして、補正前の電動モータ17の操作量P1に補正量R1を加算することによって、補正後の電動モータ17の操作量Q1が設定される。これにより、図7の破線Dで示すように、変速比がTOPの所定の変速比sに近づく。実変速比がTOPの所定の変速比sになったと判定されるまで補正が行われる。
【0091】
この実施形態では、その後、スロットル全閉で減速する際は、R2で示すように、補正量が0になるまで、車速の減少分に応じて、補正量を減少させていく。これにより、スムーズに変速比を変化させることができる。
【0092】
このように、この制御装置18は、上述した判定部206と第1補正部207によって、変速比がLOWのときを基準にして、ポテンショメータ19のセンサの基準位置が設定されている場合に、TOP側の変速精度を向上させることができる。
【0093】
次に、変速比の全領域で、上述した相関関係のずれを簡単に修正する方法を説明する。
【0094】
この実施形態では、制御装置18は、制御装置18(第1記憶部202)に予め記憶させたポテンショメータ19の検出値と変速比との基準となる相関関係vを補正する第2補正部208を備えている。
【0095】
この実施形態では、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになる側にポテンショメータ19のセンサの基準位置が設定されている。第1記憶部202には、ポテンショメータ19の検出値と変速比の基準となる相関関係vが記憶されている。図8に示すように、ポテンショメータ19の出力特性には個体差があり、車両ごとにポテンショメータ19の検出値が、基準となる相関関係vからLOW側にずれたり(w1)、TOP側にずれたり(w2)する場合がある。
【0096】
この実施形態では、第2補正部208は、TOPの位置において、実変速比(w1、w2)が所定の変速比になったときのポテンショメータ19の検出値の変化量ΔAと、基準となる相関関係vに基づいて導出されるポテンショメータ19の検出値の変化量ΔBとに基づき、ΔA/ΔBの割合によって、基準となる相関関係vを補正する。
【0097】
これによって、TOP領域だけでなくLOWからTOPまでの全領域で、実際の相関関係(w1、w2)がΔA/ΔBの割合で是正され、基準となる相関関係vと、実際の相関関係(w1、w2)とのずれを小さくすることができるから、ベルト式無段変速機800の変速比を目標変速比に近づけることができる。これにより、変速比の全領域で、上述した相関関係のずれを簡単に修正することができる。
【0098】
以上、本発明におけるベルト式無段変速機の変速比制御の補正を種々説明したが、斯かる補正は、ポテンショメータ(フランジ位置検出センサ)の出力特性によるフランジ位置検出センサの検出値と変速比のばらつきだけでなく、出力特性の経時変化、Vベルトの伸び、摩耗などの経年変化、部品の公差による相関関係のずれなどにも対応できる。
【0099】
以上、本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機およびその制御装置を説明したが、本発明に係るベルト式無段変速機およびその制御装置は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0100】
例えば、ベルト式無段変速機800の構成、溝幅調節機構16の構造、フランジ位置検出センサ19の構造、制御装置18の構造などは、上述した実施形態で開示したものに限定されない。
【0101】
また、上述した実施形態では、ベルト式無段変速機800の変速比がLOWになる側にポテンショメータ19(フランジ位置検出センサ)のセンサの基準位置が設定されている場合を例示して説明した。フランジ位置検出センサのセンサの基準位置は、必ずしもLOWに設定される必要はなく、TOP側に設定しても良い。TOP側に設定されている場合には、LOW側において、フランジ位置検出センサの検出値と変速比の相関関係が車両ごとにばらつく可能性がある。この場合は、判定部は、ベルト式無段変速機の実変速比が、予め定められたLOWの所定の変速比になったか否かを判定するものであればよい。
【0102】
また、上述した実施形態では、ベルト式無段変速機800は、自動二輪車のパワーユニットに装備されるものを例示したが、ベルト式無段変速機800は、自動二輪車に限らず種々の車両(例えば、鞍乗型車両、スクータ型車両、ゴルフカーや四輪バギーなどの小型車両にも広く適用できる。また、パワーユニットに装備されたものを例示したが、エンジンとは別体になっている場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のとおり、本発明に係るベルト式無段変速機およびその制御方法は、車両などに装備されるベルト式無段変速機に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機が装備された自動二輪車を示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の概略図。
【図3】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の部分断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の部分断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機のプライマリシーブを示す断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機のポテンショメータの取付構造を示す図。
【図7】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の変速マップを示す図。
【図8】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機のポテンショメータの検出値と変速比との相関関係を示す図。
【図9】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の制御装置の制御フローチャート。
【図10】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の車速とポテンショメータの検出値の関係を示す図。
【図11】本発明の一実施形態に係るベルト式無段変速機の車速とポテンショメータの検出値の関係を示す図。
【符号の説明】
【0105】
1000 自動二輪車(車両)
900 パワーユニット
800 ベルト式無段変速機
11 プライマリ軸
12 セカンダリ軸
13 プライマリシーブ
14 セカンダリシーブ
15 Vベルト(ベルト)
16 溝幅調節機構
17 電動モータ(アクチュエータ)
18 制御装置
19 ポテンショメータ(フランジ位置検出センサ)
31 固定フランジ
32 可動フランジ
82 歯車伝達機構
101 スロットル・ポジション・センサ
102 エンジン回転数センサ
103、104 車速センサ
201 目標変速比設定部
202 第1記憶部
203 第2記憶部
204 実変速比検出部
205 操作量設定部
206 判定部
207 第1補正部
208 第2補正部
211 変速マップ
k1 制御が完了する時点
k2 実変速比がTOPの所定の変速比になった時点
r LOWの所定の変速比
s TOPの所定の変速比
v 基準となる相関関係
w1、w2 実際の相関関係
x センサの基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ一対のフランジが軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ及びセカンダリシーブに、ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機であって、
前記フランジを動かすアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記ベルト式無段変速機の実変速比が、予め定められたTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づいて、アクチュエータの操作量を補正する第1補正部とを備えていることを特徴とする、
ベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記判定部は、ベルト式無段変速機の実変速比がTOPの所定の変速比になったか否かを判定し、
前記ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる目標位置にフランジを動かす制御において、当該制御が完了する前に、前記判定部で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定された場合に、
前記第1補正部は、それ以上実変速比が小さくならないように、前記制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正することを特徴とする、請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記判定部は、ベルト式無段変速機の実変速比がTOPの所定の変速比になったか否かを判定し、
前記ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる目標位置にフランジを動かす制御において、当該制御が完了した後も、前記判定部で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定されない場合に、
前記第1補正部は、前記実変速比がTOPの所定の変速比になるように、前記制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正することを特徴とする、請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項4】
前記第1補正部は、車速の増加分に応じて実変速比が小さくなるように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正することを特徴とする、請求項3に記載のベルト式無段変速機。
【請求項5】
前記プライマリシーブ及び前記セカンダリシーブは、それぞれ回転軸に取り付けられた固定フランジと可動フランジとを備え、
前記プライマリシーブの溝幅は、当該プライマリシーブの可動フランジを前記アクチュエータで移動制御することによって調整されるとともに、前記セカンダリシーブの可動フランジは、溝幅を狭める方向に付勢されている、
請求項1から4の何れかに記載のベルト式無段変速機。
【請求項6】
前記フランジの位置を検出するフランジ位置検出センサを備え、
前記制御装置は、
目標変速比を設定する目標変速比設定部と、
前記フランジ位置検出センサの検出値と変速比との相関関係を記憶した第1記憶部と、
前記ベルト式無段変速機の変速比が前記目標変速比設定部で設定された目標変速比になるように、前記第1記憶部に記憶された相関関係を含む情報に基づいて、前記アクチュエータの操作量を設定する操作量設定部とを備えている、請求項1から4の何れかに記載のベルト式無段変速機。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記TOP又はLOWの所定の変速比を記憶した第2記憶部と、
前記ベルト式無段変速機の実変速比を検出する実変速比検出部とを備え、
前記判定部は、前記第2記憶部に記憶されたTOP又はLOWの所定の変速比に基づいて、前記実変速比検出部で検出される実変速比がTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定し、
前記第1補正部は、前記判定部の判定に基づいて、前記操作量設定部で設定されたアクチュエータの操作量を補正する、請求項6に記載のベルト式無段変速機。
【請求項8】
前記フランジ位置検出センサは、フランジを移動させる機構に連動して回転する回転軸に取り付けられた角度センサである、請求項6に記載のベルト式無段変速機。
【請求項9】
前記フランジ位置検出センサは、前記フランジが可動域の一方に偏った第1の状態においてセンサの基準が設定され、かつ、他方に偏った第2の状態に向けてフランジが移動した際の移動量に応じて検出値が変化するセンサであって、
前記第1記憶部は、前記フランジ位置検出センサの検出値と変速比との基準となる相関関係を記憶しており、
前記制御装置は、前記第2の状態に近い方における、実変速比が所定の変速比になったときの前記フランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔAと、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係に基づいて導出されるフランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔBとに基づき、前記ΔA/ΔBの割合によって、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係を補正する第2補正部を備えている
ことを特徴とする、請求項6に記載のベルト式無段変速機。
【請求項10】
前記第1の状態は、ベルト式無段変速機の変速比がLOWになる側であることを特徴とする、請求項9に記載のベルト式無段変速機。
【請求項11】
前記第1の状態は、ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる側であることを特徴とする、請求項9に記載のベルト式無段変速機。
【請求項12】
前記実変速比検出部は、ベルト式無段変速機への入力回転数と、ベルト式無段変速機からの出力回転数との比に基づいて、ベルト式無段変速機の実変速比を算出することを特徴とする、請求項6に記載のベルト式無段変速機。
【請求項13】
それぞれ一対のフランジが軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ及びセカンダリシーブに、ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機であって、
前記フランジを動かすアクチュエータと、
前記フランジの位置を検出するフランジ位置検出センサと、
前記アクチュエータを制御する制御装置と
を備え、
前記フランジ位置検出センサは、前記プライマリシーブの一対のフランジがTOP又はLOWの状態のうち、一方に偏った第1の状態においてセンサの基準が設定され、かつ、他方に偏った第2の状態に向けてフランジが移動した際の移動量に応じて検出値が変化するセンサであって、
前記制御装置は、
前記フランジ位置検出センサの検出値と変速比との基準となる相関関係を記憶した第1記憶部と、
前記第2の状態に近い方において、実変速比が所定の変速比になったときの前記フランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔAと、前記第2の状態に近い方において、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係に基づいて導出されるフランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔBとに基づき、前記ΔA/ΔBの割合によって、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係を補正する第2補正部と
を備えたことを特徴とする、ベルト式無段変速機。
【請求項14】
それぞれ一対のフランジが軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ及びセカンダリシーブに、ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機に装備され、前記フランジを動かすアクチュエータを制御する制御装置であって、
前記ベルト式無段変速機の実変速比が、予め定められたTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づいて、アクチュエータの操作量を補正する第1補正部とを備えた、
ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項15】
前記判定部は、ベルト式無段変速機の実変速比がTOPの所定の変速比になったか否かを判定し、
前記ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる目標位置にフランジを動かす制御において、当該制御が完了する前に、前記判定部で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定された場合に、
前記第1補正部は、それ以上実変速比が小さくならないように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正することを特徴とする、請求項14に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項16】
前記判定部は、ベルト式無段変速機の実変速比がTOPの所定の変速比になったか否かを判定し、
前記ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる目標位置にフランジを動かす制御において、当該制御が完了した後も、前記判定部で、実変速比がTOPの所定の変速比になったと判定されない場合に、
前記第1補正部は、前記実変速比がTOPの所定の変速比になるように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正することを特徴とする、請求項14に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項17】
前記第1補正部は、車速の増加分に応じて実変速比が小さくなるように、制御装置で設定されるアクチュエータの操作量を補正することを特徴とする、請求項16に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項18】
前記プライマリシーブ及び前記セカンダリシーブは、それぞれ回転軸に取り付けられた固定フランジと可動フランジとを備え、
前記プライマリシーブの溝幅は、当該プライマリシーブの可動フランジを前記アクチュエータで移動制御することによって調整されるとともに、前記セカンダリシーブの可動フランジは、溝幅を狭める方向に付勢されている、
請求項14から17の何れかに記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項19】
前記フランジの位置を検出するフランジ位置検出センサを備え、
目標変速比を設定する目標変速比設定部と、
前記フランジ位置検出センサの検出値と変速比との相関関係を記憶した第1記憶部と、
前記ベルト式無段変速機の変速比が目標変速比設定部で設定された目標変速比になるように、第1記憶部に記憶された相関関係を含む情報に基づいて、前記アクチュエータの操作量を設定する操作量設定部とを備えている、請求項14から17の何れかに記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項20】
前記TOP又はLOWの所定の変速比を記憶した第2記憶部と、
前記ベルト式無段変速機の実変速比を検出する実変速比検出部とを備え、
前記判定部は、前記第2記憶部に記憶されたTOP又はLOWの所定の変速比に基づいて、前記実変速比検出部で検出される実変速比がTOP又はLOWの所定の変速比になったか否かを判定し、
前記第1補正部は、前記判定部の判定に基づいて、前記操作量設定部で設定されたアクチュエータの操作量を補正する、請求項19に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項21】
前記フランジ位置検出センサは、フランジを移動させる機構に連動して回転する回転軸に取り付けられた角度センサである、請求項19に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項22】
前記フランジ位置検出センサは、前記フランジが可動域の一方に偏った第1の状態にセンサの基準が設定され、かつ、他方に偏った第2の状態に向けてフランジが移動した際の移動量に応じて検出値が変化するセンサであって、
前記第1記憶部は、フランジ位置検出センサの検出値と変速比との基準となる相関関係を記憶しており、
前記制御装置は、前記第2の状態に近い方における、実変速比が所定の変速比になったときの前記フランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔAと、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係に基づいて導出されるフランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔBとに基づき、前記ΔA/ΔBの割合によって、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係を補正する第2補正部を備えている、請求項19に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項23】
前記第1の状態は、ベルト式無段変速機の変速比がLOWになる側である、請求項22に記載のベルト式無段変速機。
【請求項24】
前記第1の状態は、ベルト式無段変速機の変速比がTOPになる側である、請求項22に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項25】
前記実変速比検出部は、ベルト式無段変速機への入力回転数と、ベルト式無段変速機からの出力回転数との比に基づいて、ベルト式無段変速機の実変速比を算出する、請求項19に記載のベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項26】
それぞれ一対のフランジが軸方向に相対移動し得るプライマリシーブ及びセカンダリシーブに、ベルトが巻き掛けられたベルト式無段変速機に装備され、前記フランジを動かすアクチュエータを制御する制御装置であって、
前記フランジの位置を検出し、前記プライマリシーブの一対のフランジがTOP又はLOWの状態のうち、一方に偏った第1の状態においてセンサの基準が設定され、他方に偏った第2の状態に向けてフランジが移動した際の移動量に応じて検出値が変化するフランジ位置検出センサと、
前記フランジ位置検出センサの検出値と変速比との基準となる相関関係を記憶した第1記憶部と、
前記第2の状態に近い方において、実変速比が所定の変速比になったときの前記フランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔAと、前記第2の状態に近い方において、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係に基づいて導出されるフランジ位置検出センサの検出値の変化量ΔBとに基づき、前記ΔA/ΔBの割合によって、前記第1記憶部に記憶された基準となる相関関係を補正する第2補正部と
を備えたことを特徴とする、ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項27】
請求項1〜12の何れかに記載されたベルト式無段変速機を備えた自動二輪車、鞍乗型車両、スクータ型車両、ゴルフカー又は四輪バギー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−169971(P2008−169971A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5670(P2007−5670)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】