説明

ペダル装置及びそれを備える自動車

【課題】運転者に違和感を与えることなく渋滞時の下肢疲労を軽減できるペダル装置を提供する。
【解決手段】ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車のペダル装置において、渋滞を検出したときは、ペダル反力を低下させる。ペダル反力の制御にあたっては、ペダルを放したり、ペダル位置を変えずにペダル位置を保持したりする場合のペダル位置に対するペダル反力は、渋滞を検出している時は、渋滞を検出していない時に比べて小さいペダル反力にする。一方、ペダルを踏み込む場合のペダル位置に対するペダル反力は、渋滞を検出しているかどうかにかからず、同じ特性を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車のペダル装置及びそれを備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車のペダルはアクセルワイヤやマスタシリンダに機械的に連結されているため、そのペダル位置とペダル反力との関係は一意に決定されていた。
【0003】
近年、バイワイヤと呼ばれる技術により、ペダル位置とペダル反力との関係を任意に設定できるようになっており、そのペダル位置と反力との関係をどのように設定または制御するかについて検討が重ねられている。
【0004】
例えば、本願の出願人による先の出願(特願2003−431804号)に記載したように、停車時にブレーキペダルを踏み続けることによる下肢疲労の軽減を目的として、車速がゼロとなったときに、ペダル反力を低下させるものがある。
【特許文献1】特願2003−431804号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
渋滞時においては発進や停止が多く、ペダルを操作している時間が多くなる。そのため下肢疲労の軽減が求められているが、上記従来技術では車速ゼロのときのみを対象としているため、車両が停車しているとき以外は通常通りのペダル反力に抗してペダルを操作する必要があり、下肢疲労の軽減の効果が十分でないという課題がある。
【0006】
また、上記従来技術によれば、ペダル反力が低下している時と低下していない時でペダルを踏み込む時のペダル踏力が変わるため、運転者に違和感を与えたり、ペダルとしてのフィーリングが悪化したりする可能性がある。
【0007】
本発明は、運転者に違和感を与えることなく渋滞時の下肢疲労を軽減できるペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車のペダル装置において、渋滞を検出したときは、ペダル反力を低下させる。渋滞の検出は、低速走行が続いているかどうか、加速と減速が頻繁に行われているかどうか、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み替えが頻繁に行われているかどうか、先行車との相対関係が近い状態が続いているかどうか、ナビゲーションシステムあるいは路車間通信システムによる渋滞情報において走行地点が渋滞であるかどうか等によって行うことができる。
【0009】
ペダル反力の制御にあたっては、ペダルを放したり、ペダル位置を変えずにペダル位置を保持したりする場合のペダル位置に対するペダル反力は、渋滞を検出している時は、渋滞を検出していない時に比べて小さいペダル反力にする。一方、ペダルを踏み込む場合のペダル位置に対するペダル反力は、渋滞を検出しているかどうかにかからず、同じ特性を実現する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、渋滞を検出したときは、車速がゼロか否かにかかわらずペダル反力が低下するので、従来技術に比べて、より下肢疲労の軽減が図られる。そして、渋滞時にはペダルを踏み続ける動作が小さなペダル踏力で可能となると共に、踏み込み動作に対しては渋滞を検知していない時と同じフィーリングが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の実施例1を構成するシステムの模式図、図2は実施例1を構成するシステムのブロック図である。
【0013】
車両は、運転者が車両を運転するために操作するペダル装置1、及び運転者によるペダル装置1の操作に応じて車両の運動を変化させる車両出力装置30,40,50,60,70,80を備える。車両出力装置30,40,50,60は制動出力装置であり、車両出力装置70,80は駆動出力装置である。
【0014】
ペダル装置1は、運転席22に座った運転者が車両を運転するために操作する装置であり、足により与えられたペダル踏力によって、一定の範囲内でペダル位置やペダル速度が変化し、また、足により与えられたペダル踏力に対して一定の範囲に拘束された回転あるいは直線運動を行う。運転のための他の操作入力装置として車両にはステアリング21等も備わっているが、本発明には直接関係がないのでここでは触れない。
【0015】
ペダル装置1において、ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。ペダル装置1は、一般にペダル踏力に応じてペダル位置(ペダルストローク)が変化し、ペダル位置に応じてペダル反力が発生する。ペダル装置1は運転者の踏み込むペダル踏力に対してペダル反力を発生させ、運転者に快適なフィーリングを与えることができる。
【0016】
本実施例の車両はバイワイヤ技術を採用している。すなわち、ペダル装置と車両出力装置の間には機械的接続が無く、通信経路111を介して通信により接続され、電気的な信号のやりとりにより情報が伝達される。ペダル装置への操作入力は電気的な信号として車両出力装置に伝えられ、車両出力装置は、伝えられた信号情報に基づいて車両出力を行う。
【0017】
ペダル装置1は、足で踏み込む作用点となる操作入力部3を備えている。車両出力装置(制動出力装置)30,40,50,60とペダル装置1の組み合わせはブレーキバイワイヤ技術による応用であり、その場合のペダル装置1はブレーキペダルである。車両出力装置70,80(駆動出力装置)のうち少なくとも一方とペダル装置1を組み合わせた場合のペダル装置1はアクセルペダルである。バイワイヤ技術によれば、ペダル装置と車両出力装置は機械的接続を持たないため、ペダル装置1のペダル反力あるいはペダル踏力に対するペダル位置は、車両出力と別に制御することが出来る。
【0018】
ペダル装置1は、操作入力演算装置8によって電気的に制御可能なアクチュエータ4を備えている。アクチュエータ4は一般にはモータであり、電力を供給するかあるいは電流を流すと、回転軸9周りに部材2が回転するかあるいは回転方向の力が発生する。アクチュエータ4を制御することによって、ペダル反力を任意の大きさで生成することが出来る。また、アクチュエータ4を制御することによって、ペダル位置(ペダルストローク)やペダル速度を任意に変更することが出来る。
【0019】
ここでは、運転者がペダル装置に対して行った全ての入力を操作入力と定義し、運転者の操作入力をペダル装置1が検出した情報を操作情報と定義する。操作入力あるいは操作情報は、ペダル位置、ペダル踏力、ペダル速度と操作状態を含んでいる。ペダル速度はペダル位置の単位時間あたりの変位であり、ペダル位置を時間微分したものである。ペダル踏力とは、ペダル装置を動かすための力であり、具体的には運転者が操作入力部3を踏み込んだ力を意味する。ペダル踏力は、運転者が操作入力を行う際に抵抗しようとするペダル反力とほぼ同じ大きさの力である。ペダル位置が変動しない時、あるいはペダルが動いていない時、ペダル踏力とペダル反力が釣り合っていると言うことが出来る。操作状態は、操作入力部が踏み込まれているかどうかの状態を表す。
【0020】
操作情報検出手段11は操作入力を操作情報として検出する手段であり、ペダル位置検出手段とペダル踏力検出手段と操作状態検出手段を含む。ペダル位置検出手段12はペダル位置を検出する。ペダル位置検出手段12は、例えばアクチュエータ制御用センサ5のような形態をとる。ペダル位置検出手段12は場合によってペダル速度を検出しても良い。ペダル位置検出手段12は、ペダル位置に基づいてペダル速度を算出することによりペダル速度の検出を行っても良い。ペダル踏力検出手段6はペダル踏力を検出する。ただし、ペダル踏力検出手段6は力を検出する手段であり、ペダル踏力とペダル反力を同じものとして検出するため、ペダル踏力検出手段6はペダル反力を検出するということもできる。操作状態検出手段7は操作状態を検出する。
【0021】
操作入力演算装置8は、操作情報検出手段11によって検出された操作情報に基づいてアクチュエータ4を制御する。操作入力演算装置8は、操作情報検出手段によって検出された操作情報に基づいて、ペダル反力を生成し、ペダル位置あるいはペダル速度を変更し、車両出力指令を決定し、決定した車両出力指令を、通信経路111を介して車両出力装置に伝達する。
【0022】
車両出力装置30,40,50,60は、電気的に制御可能な制動出力装置であり、制動出力装置による車両出力は車両の減速度あるいは制動力である。制動出力装置に車両出力指令を伝達する場合、ペダル装置はブレーキペダルである。制動出力装置は伝達された車両出力指令に基づいて車両に制動力を発生させ、車両を減速させる。制動出力装置へ伝達される車両出力指令は車両の減速度あるいは制動力であっても良い。制動出力装置40,50,60は基本的に制動出力装置30と同じ構成をとる。
【0023】
制動出力装置は例えばキャリパであり、ロータを押しつけるピストンの推力を電気的に制御可能な電動ブレーキであっても良い。制動出力装置が電動ブレーキである場合、電気的な力を発生させるアクチュエータを備えており、アクチュエータによって発生する力が減速器など機械的な構成を介してピストンの推力に変換される機構であり、ピストン推力を制御することによって車両の制動力を制御することが出来る機構であっても良い。制動出力装置は例えばキャリパであり、ロータを押しつけるピストンの推力を油圧によって発生させ、油圧を電気的に制御可能な電動油圧ブレーキであっても良い。制動出力装置が電動油圧ブレーキである場合、電気的な力を発生させるアクチュエータを備えており、アクチュエータによって油圧を変化させることが出来る機構であり、油圧を制御することによって車両の制動力を制御することが出来る機構であっても良い。制動出力装置へ伝達される車両出力指令は電動ブレーキの推力であっても良いし、電動油圧ブレーキの油圧であっても良い。
【0024】
例えば、制動出力装置30はキャリパ34の発生する制動力をアクチュエータ33で制御する。アクチュエータ33は車両出力演算装置32で制御される。制御出力装置の状態は制動出力装置状態センサ35で検出することが出来る。車両出力演算装置32は制動出力装置の状態に応じてアクチュエータ33を制御する。車両出力演算装置32は必要に応じて制御出力装置の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。制御出力装置の状態には電動ブレーキの実推力あるいは電動油圧ブレーキの実油圧が含まれていても良い。
【0025】
車両出力装置70,80は、電気的に制御可能な駆動出力装置である。駆動出力装置による車両出力は、車両の速度あるいは加速度あるいは駆動力である。駆動出力装置に車両出力指令を伝達する場合、ペダル装置はアクセルペダルである。駆動出力装置は、伝達された車両出力指令に基づいて車両に駆動力を発生させ、車両を加速させる。あるいは減速を阻害する。駆動出力装置へ伝達される車両出力指令は、車両の速度あるいは加速度あるいは駆動力であっても良い。一般的に駆動出力装置は70のようなエンジンの構成を取るが、ハイブリッド車や電気自動車あるいは電動四駆車などでは、駆動出力装置に80のような電動機の構成を用いたりエンジンと電動機を組み合わせた構成を用いたりする。
【0026】
駆動出力装置70はエンジンであり、ガソリンあるいは軽油を燃料として車両を駆動する。駆動出力装置70は伝達された車両出力指令及び、駆動出力装置の状態に応じてアクチュエータ72あるいは点火プラグ73を制御し、エンジン71に車両出力を生成させる。駆動出力装置の状態は、駆動出力装置状態センサ75によって検出される。アクチュエータ72は車両出力演算装置74によって制御される。車両出力演算装置74は、必要に応じて駆動出力装置の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。駆動出力装置の状態にはエンジン71の駆動力あるいは回転数が含まれていても良い。
【0027】
駆動出力装置80は電動機であり、電力を供給したり電流を流したりする事によって車両出力を生成する。駆動出力装置80は、アクチュエータ83とアクチュエータを制御するためのセンサ85を備えており、車両出力演算装置84によって制御される。車両出力演算装置84は、必要に応じて駆動出力装置80の状態を、通信経路111を介してペダル装置1に伝達しても良い。
【0028】
通信経路111は、ペダル装置と車両出力装置の間を接続している電気信号による情報経路であり、物理的には電線で構成されている。ペダル装置と車両出力装置は空間的に離れた場所に設置されている場合が多く、その間の情報は一般的に時分割多重通信方式の電気信号を用い、通信経路111を介してやりとりされる。通信経路111に用いられる電気信号の形式はシリアル通信でも良いし、CANやFlaxRay、LAN等の多重通信でも良い。
【0029】
図3は、操作入力演算装置と車両出力演算装置と通信経路の構成例を示す図である。
【0030】
図3(a)は、通信経路が1つであり、車両出力装置151〜154を一つの車両出力演算装置150で制御する例を示している。例えば、ABS装置や横滑り防止装置のように油圧を制御する装置が一つだけであり、各キャリパには油圧を伝達し、操作入力演算装置8との電気的な通信は一つの通信経路111を介して行うような構成が、本例に該当する。
【0031】
図3(b)は、通信経路が2つあり、車両出力装置156,157,159,160を複数の車両出力演算装置155,158で制御する例を示している。例えば、車両の前輪と後輪で別系統の油圧システムとなっている場合、油圧を制御する装置は二つとなり、操作入力演算装置8との電気的な通信を行う経路も二つ必要となる。この場合、系統が二つになることにより、信頼性の向上を図ることが出来ると共に、系統別の車両出力を行うことで車両運動性能の向上を図ることが出来る。
【0032】
図3(c)は、通信経路は1つであるが、車両出力装置165〜168をそれぞれ別の車両出力演算装置161〜164で制御する例を示している。例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着している場合、各輪に車両出力を制御する装置が備えられ、操作入力演算装置と通信を行っている場合が本例に該当する。車両の四輪全てが独立に車両出力を制御する事により、高いレベルで車両運動性能の向上を図ることが出来る。
【0033】
図3(d)は、通信経路が2つあり、車両出力装置173〜176をそれぞれ別の車両出力装置169〜172で制御する例を示している。例えば、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着し、各輪に車両出力を制御する装置が備えられている場合に、前右輪と後左輪が同じ通信経路を介して操作入力演算装置8と通信を行い、前左輪と後右輪が同じ通信経路を介して操作入力演算装置8と通信を行う構成である。あるいは、車両の四輪全てに電動ブレーキを装着し、各輪に車両出力を制御する装置が備えられている場合に、前二輪が同じ通信経路を介して操作入力演算装置と通信を行い、後二輪が同じ通信経路を介して操作入力演算装置と通信を行うような構成である。この場合、通信経路が二重になることにより、片側の通信経路に障害や故障が発生した場合に置いても、もう片側の通信経路に属する車両出力装置が作動するため、車両全体としての信頼性の向上を図ることが出来る。
【0034】
図4は、ペダル装置の一例を示した図である。図4(a)はペダル装置を車両に取り付けた時に運転席から見た場合を正面とした時の正面図であり、図4(b)は側面図である。
【0035】
図示したペダル装置は、アクチュエータ201、減速器202、ペダルスイッチ203、ペダルストロークセンサ204,205、原点位置ストッパ206、ペダル端208を備えている。
【0036】
アクチュエータ201は電動機あるいはモータであり、電力を供給したり電流を流したりすることによって回転したり、回転方向の力を発生させたりする。アクチュエータ201は、DCモータ、DCブラシレスモータ、AC誘導モータ、あるいはAC同期モータとすることができる。減速器202は歯車によるもの、遊星ギアによるもの、あるいは差動減速器によるものであっても良い。ペダルスイッチ203は、ペダルが踏まれている時と踏まれていない時を判別することが出来るスイッチである。ペダルストロークセンサ204,205は、ペダル位置を検出することが出来る。ペダルストロークセンサを二つ備えていることにより、ペダル位置検出の精度を上げることが出来、一方の故障に対する耐性を得ることによる信頼性の向上が可能になる。
【0037】
原点位置とは、運転者がペダルを踏んでいない時のペダル位置であり、一般的にペダル装置にペダル踏力がかかっていないかほとんどかかっていない時のペダル位置である。原点位置にペダルがある時、ペダル位置あるいはペダルストロークは0である。原点位置にペダルがあるかどうかはペダルスイッチ203、あるいはペダルストロークセンサ204,205によって判断することができる。原点位置にペダルがある場合、ペダルは踏み込まれていないと判断される。
【0038】
部材207は、図4(b)で見て左側への移動は原点位置ストッパ206に当たる所まで可能である。図4(b)で見て左側への移動、すなわち原点位置へ移動する方向を、運転席方向あるいは手前方向あるいは戻し方向あるいは放し方向と定義する。図4(b)で見て右側への移動、すなわちペダルを踏み込んだ時に移動する方向を、奥方向あるいは踏み方向と定義する。ペダル端208は運転者が踏み込む部分であり、ペダル装置1の入力部3に相当する。ペダル端208にペダル踏力がかかるとペダルがストロークし、例えば209のようにペダル位置が移動する。
【0039】
図5は、ペダル装置の一例を模式的に示したものである。図6は、図5のペダル装置及び関連する装置について模式的に示したブロック図である。
【0040】
図示したペダル装置はパッシブ反力手段221を備えている。アクチュエータ4によって生成されるペダル反力はアクティブ反力と呼ばれ、パッシブ反力手段221によって生成されるペダル反力はパッシブ反力と呼ばれる。パッシブ反力手段221はバネによる機構であったりストロークシミュレータのような粘性をもった油圧機構であったりしても良い。パッシブ反力手段221によって生成されるパッシブ反力は、パッシブ反力手段221の機械的特性によって定まり、電気的に制御することが出来ない。本例のペダル装置は、アクティブ反力とパッシブ反力を合わせたペダル反力を生成することが出来る。アクチュエータ4が十分なペダル反力を生成出来る場合は、パッシブ反力手段221を用いず、アクティブ反力だけでペダル装置を構成しても良い。
【0041】
図7は、パッシブ反力、アクティブ反力及びペダル反力の関係の一例を示す説明図である。図7(a)に示すように、パッシブ反力301は、あるペダル位置に対するペダル反力が機械的に決まっており、電気的な要素によって変化しない。アクティブ反力はパッシブ反力に加えられるか減じられることにより、ペダル反力を生成する。アクティブ反力は電気的な要素によって任意に変化することが出来るため、ペダル反力を例えば302から303の範囲で変化させることが出来る。パッシブ反力301はペダル位置が大きくなればなるほど大きくなるが、アクティブ反力で変化させることの出来るペダル反力の幅はペダル位置に関わらず一定である。パッシブ反力301を中心としてアクティブ反力を加えたペダル反力は302から303の間の任意の値を取れるため、例えば図7(b)に示すようなペダル反力304を実現することが出来る。パッシブ反力手段を用いることによってアクチュエータ4の容量あるいは大きさあるいは消費電力を小さくすることが出来る。
【0042】
ペダル装置は、アクチュエータ制御用センサ222、ペダル回転角センサ223、ペダルストロークセンサ224を備えている。アクチュエータ制御用センサ222は、アクチュエータ4の回転角度あるいは回転位相を検出することが出来る。センサ222は光あるいは磁気を用いたエンコーダであっても良いし、レゾルバであっても良い。ペダル回転角センサ223は、回転軸9に対して部材2が回転した角度を検出することが出来る。センサ223は可変抵抗を用いたポテンショメータあるいはロータリエンコーダであっても良いし、回転スリットを用いて光ピックアップで検知する方式であっても良いし、磁気素子を用いて、磁気の変化を検知する方式であっても良い。ペダルストロークセンサ224は、部材2あるいはペダル端208がストロークした量あるいはペダル位置を検出することが出来る。センサ224は可変抵抗を用いたポテンショメータであっても良いし、磁気回路を用いて磁気抵抗の変化として変位幅を検出する方法であっても良い。ペダル位置検出手段12にはセンサ222,223,224の内少なくとも一つが含まれる。
【0043】
ここでは、ペダル位置あるいはペダルストロークは奥方向へ行くほど大きな値を取り、手前方向へ行くほど小さな値を取ると定義する。ペダルを手前側から奥側に移動させる時ペダルを踏むあるいは踏み込むと定義し、ペダルを奥側から手前側に移動させる時ペダルを放すあるいは戻すと定義する。ペダル位置を変更しないようにペダルを維持している時、ペダルを保持すると定義する。一般的なペダル装置において、最大限にストロークさせた時のペダル位置は0.06〜0.1m程度である。
【0044】
図示したペダル装置は、ペダル踏力センサ227を備えている。ペダル踏力センサ227は、運転者がペダルを踏み込むペダル踏力あるいはペダルが運転者の足を押し返すペダル反力を検出することが出来る。このペダル装置は、また、ロッド力センサ228を備えている。ロッド力センサ228は、部材2とパッシブ反力手段221の間に働く力を検出することが出来る。センサ227,228は、例えば歪みゲージの抵抗変化を用いて力を検出する構成であっても良い。センサ227,228の内、少なくとも一つを用いてペダル踏力を検出することができ、ペダル踏力検出手段6にはセンサ227,228の内少なくとも一つが含まれる。ペダル踏力検出手段6は、ペダルの構造物に歪ゲージを取り付け、歪ゲージの微小変位による抵抗変化を計測することでペダル踏力を検知してもよい。なお、ペダルを踏み込む時のペダル踏力を正とする。
【0045】
図示したペダル装置は、ペダルスイッチ203を備えている。ペダルスイッチ203は操作状態検出手段7に含まれる。ペダル装置1がブレーキペダルである場合、ペダルスイッチ203はブレーキスイッチであり、ペダル装置1がアクセルペダルである場合、ペダルスイッチ203はアクセルスイッチである。操作状態検出手段7は、ペダルスイッチ203が作動していればペダルが踏まれていると判断してよく、また、ペダル位置あるいはペダル踏力が予め定められた閾値を超えている場合はペダルが踏まれていると判断しても良い。
【0046】
ペダル装置1は、車両情報検出手段241を用いて車両情報を検出する。車両情報には、車輪速、車速、加速度、他のペダルが踏まれているかどうかなどが含まれる。車両情報検出手段241には、車輪速センサ251、車速センサ252、加速度センサ253、ペダルスイッチ257が含まれる。シフトポジションスイッチはシフトポジションセンサでも良い。
【0047】
車輪速センサ251は、車軸に取付けた磁気回路を用いて車輪の回転数を検出する方式や、スリットを入れた円盤を車軸に取り付け光によって車輪の回転数を検出する方式とすることができる。車速センサ252は、直接車両の速度を検出する方式でも良いし、車輪速センサ251で得られた車輪速を元に車速を求める方式でも良い。加速度センサ253は、例えば歪みゲージを使用して車両にかかる加速度を検出する方式とすることができる。ペダルスイッチ257は、ペダル装置1の他のペダルが踏み込まれているかどうかを検出する。ペダル装置1がブレーキペダルである場合、ペダルスイッチ257はアクセルスイッチであり、ペダル装置1がアクセルペダルである場合、ペダルスイッチ257はブレーキスイッチである。ペダルスイッチ257はペダルスイッチ方式をとらず、ペダルの踏み込み量や踏み込み力を検出し、ペダルが踏み込まれているかどうか判定する方式でも良い。
【0048】
ペダル装置1は、環境情報検出手段242を用いて環境情報を検出する。環境情報には、他車両や歩行者や障害物との相対関係、相対距離、相対速度、衝突時間が含まれる。衝突時間は他車両や歩行者や障害物との衝突までの予想される時間であり、衝突時間=相対距離/相対速度、で表される。また、環境情報には、走行路周辺の地図情報あるいは走行路周辺の渋滞情報が含まれる。
【0049】
環境情報検出手段242には、外界認識センサ260、ナビゲーションシステム261、路車間通信システム262が含まれる。外界認識センサ260は、例えば赤外線レーザーあるいはミリ波を用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出するレーダ、超音波を用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出する方式、あるいは光学式カメラを用いて他車両や障害物との相対距離あるいは相対速度を検出する方式とすることができる。外界認識センサ260は、後方を走る他車両や歩行者や障害物との相対関係を検出する方式であっても良い。ナビゲーションシステム261はGPSを備えており、地球上におけるその時点での車両の走行位置を検出することが出来る。また、ナビゲーションシステム261は地図情報を備えており、車両の走行位置周辺の道路状況を検出することが出来る。路車間通信システム262は、赤外線あるいはマイクロ波あるいはFM波により車両の走行位置周辺の渋滞情報を車両外の送信端末から受け取ることが出来る。
【0050】
図8は、ペダル装置の種々の形態を示す模式図である。図8(a)は、回転軸401に対して操作入力部402が下になっているペダル装置の例である。図8(b)は、回転軸404に対して操作入力部403が上になっているペダル装置の例である。図8(c)は、回転軸を持っておらず、操作入力部405への操作入力に対してペダル装置が直動する例を示している。図8(d)は、回転軸406とアクチュエータ407が別になっているペダル装置の例である。アクチュエータ407の回転出力は、回転直動変換機構408により直動方向の出力に変換され部材409に作用する事によって、ペダル端410を移動させたりペダル反力を発生させたりする。回転直動変換手段としては例えばウォームギアを用いてもよいし、ボールねじを用いてもよい。
【0051】
図8(e)は、アクチュエータ411が回転電動機ではなく、直動方向に変位したり力を出したりすることが出来るペダル装置の例である。アクチュエータ411の出力が部材412に作用することによって、ペダル位置を移動させたりペダル反力を発生させたりする。アクチュエータ411は例えばソレノイドであっても良い。図8(f)は、パッシブ反力手段414が回転軸413に取り付けられているペダル装置の例を示している。図8(g)は、パッシブ反力手段415が回転軸付近に取り付けられているペダル装置の例である。
【0052】
操作入力演算装置8は、操作情報、車両情報あるいは環境情報を用いて、操作入力部を制御する。操作入力演算装置8は、また、操作情報、車両情報あるいは環境情報を用いて、車両出力指令を車両出力装置121に伝達し、車両出力を発生させる。運転者はペダル位置とペダル反力を感じながら車両を操作しているため、ペダル位置とペダル反力と車両出力の関係によって、運転しやすさ(操作性)や疲労しにくさ、運転の楽しさ(快適性)が変化する。そのため、ペダル装置は、ペダル位置、ペダル反力、車両出力を適切な関係になるように制御する。
【0053】
ペダル反力は、例えば図9に示すように設定することが出来る。図9(a)の451は剛性反力と呼ぶことができ、ペダル位置に応じて大きさの変わる反力である。ペダル位置が大きくなればなるほど剛性反力が大きくなる。同じペダル位置に対して比較的剛性反力が大きいペダルは堅いペダルであると言うことが出来る。あるペダル位置に対して比較的剛性反力が小さいペダルは柔らかいペダルであると言うことが出来る。図9(b)の453は粘性反力と呼ぶことが出来、ペダル速度に応じて大きさの代わる反力である。ペダル速度が大きくなればなるほど粘性反力が大きくなる。例えばペダルを踏み込んだ時のペダル速度が図9(c)のようであった場合、粘性反力は図9(d)のようになる。ペダル反力は剛性反力と粘性反力を合計したものとすることが出来、図9(a)の452のように設定される。
【0054】
ペダル反力をF、ペダル位置をxとすると、ペダル速度はdx/dtで表される。また、ペダル位置に依存する剛性反力をFk(x)、ペダル速度に依存する粘性反力をFd(dx/dt)とすると
F=Fk(x)+Fd(dx/dt)
あるいは
F=Fk(x)+Kd×dx/dt
となる。ここで、
Fd(dx/dt)=Kd×dx/dt
であり、Kdは予め定められた定数である。
【0055】
車両出力は、例えば図10のように設定することが出来る。車両出力は操作入力と相関を持っていなければならない。ペダル位置に応じて車両出力を発生させても良い。ペダル踏力あるいはペダル反力に応じて車両出力を発生させても良い。ペダル位置に基づいて車両出力を設定する場合、図10(a)に示すように下に凸になるように車両出力を設定する。ペダル踏力に基づいて車両出力を設定する場合、図10(b)に示すように上に凸になるように車両出力を設定する。
【0056】
図11は、渋滞検出手段の一例を示す模式図である。渋滞検出手段561は、車両情報検出手段241中の車速センサ252、アクセルスイッチ、ブレーキスイッチからの信号、及び環境情報検出手段242を構成する外界認識センサ260、ナビゲーションシステム261、路車間通信システム262からの情報を入力として渋滞検出を行う。渋滞検出手段561が渋滞を検出すると、その信号はペダル装置制御手段562に伝達され、ペダル制御手段562はペダル装置を制御する。渋滞検出手段561及びペダル装置制御手段は、例えば操作入力演算装置8によって実現することができる。
【0057】
図12は、渋滞検出手段561が渋滞を検出するための条件の一例を示した図である。
【0058】
図示するように、渋滞中かどうかの判断には、車両が低速走行を続けているかどうかが含まれる。車両が低速走行しているかどうかは、車両情報検出手段241により検出した車速を用いて判断する。車速閾値A以下の車速が時間閾値B以上継続した場合、低速走行していると判断する。例えば、25km/h以下の車速が30秒以上継続したとき低速走行していると判断する。また、20km/h以下の車速が30秒以上継続すれば中規模の渋滞が発生していると判断し、15km/h以下の車速が60秒以上継続すれば大規模な渋滞が発生していると判断する。
【0059】
渋滞中かどうかの判断には、車両が加速と減速を繰り返しているかどうかが含まれる。車両が加速と減速を繰り返しているかどうかは、車両情報検出手段241により検出した車速を用いて行う。速度閾値D以下の車速と車速閾値E以上の車速が時間閾値F以内に、回数閾値G以上交互に繰り返されたら加速と減速を繰り返していると判断する。例えば、5km/h以下の車速と20km/h以上の車速が45秒以内に、2回以上交互に繰り返されたら加速と減速を繰り返していると判断する。
【0060】
渋滞中かどうかの判断には、ブレーキペダルとアクセルペダルが頻繁に踏み換えられているかどうかが含まれる。ただし、車速が低い時に限定する。ブレーキペダルとアクセルペダルが頻繁に踏み換えられているかどうかは、操作情報検出手段7によって検出した操作情報と車両情報検出手段241により検出したペダルが踏まれているかどうかの情報を用いて行う。車速閾値H以下の車速で時間閾値I以内に、回数閾値J以上交互にブレーキペダルとアクセルペダルを踏み換えたら、ブレーキペダルとアクセルペダルが頻繁に踏み換えていると判断する。例えば、20km/h以下の車速で45秒以内に2回以上交互にブレーキペダルとアクセルペダルを踏み換えたら、ブレーキペダルとアクセルペダルが頻繁に踏み換えていると判断する。
【0061】
渋滞中かどうかの判断には、先行車との相対関係が近い状態が続いているかどうかが含まれている。ただし、車速が低い時に限定する。先行車との相対関係が近いかどうかは環境情報検出手段242により検出した環境情報を用いて行う。車速閾値K以下の車速で距離閾値L以下の相対距離が時間閾値M以上継続した場合、先行車との相対関係が近いと判断する。例えば、25km/h以下の車速で10m以下の相対距離が20秒以上継続した場合、先行車との相対関係が近いと判断する。
【0062】
渋滞中かどうかの判断には、先行車との衝突時間が短い状態が続いているかどうかが含まれている。ただし、車速が低い時に限定する。車速閾値N以下の車速で時間閾値O以下の衝突時間が時間閾値P以上継続した場合、先行車との相対関係が近いと判断する。例えば、25km/h以下の車速で5秒以下の衝突時間が20秒以上継続した場合、先行車との相対関係が近いと判断する。
【0063】
また、渋滞中かどうかの判断には、環境情報検出手段により検出した渋滞情報が含まれている。
【0064】
例えば、図12の表に示したような条件で渋滞かどうかを判断するとともに、渋滞の規模を判断する。そして、図12に示したような条件で判断した渋滞の規模に応じて図13をもちいて説明するように、放す時のペダル反力や車両出力の特性を変更する。
【0065】
例えば図12に示した条件551〜556のうち複数の条件において渋滞が検出され、その渋滞規模がそれぞれ異なっていた場合は、最も数の多い渋滞規模を選択して、選択された渋滞規模に基づいてペダル反力や車両出力の特性を変更すればよい。また、例えば図12に示した条件551〜556のうち複数の条件において渋滞が検出され、その渋滞規模がそれぞれ異なっており、最も数の多い渋滞規模が複数あった場合は、最も数の多い渋滞規模のうち最も渋滞規模の大きいものを選択して、選択された渋滞規模に基づいてペダル反力や車両出力の特性を変更すればよい。
【0066】
図13は、渋滞において変化するペダル反力の一例を示した図である。
【0067】
図13(a)は、ペダル位置に対するペダル反力の例を示した図である。ペダル反力は、踏み込む時と放す時で別のペダル反力を持つ。換言すると、ペダル反力は踏み込む時と放す時でヒステリシスを持つ。同じペダル位置を保持しておくためには、そのペダル位置における放す時のペダル反力と踏み込む時のペダル反力の間のペダル踏力をかけ続ける必要がある。放す時のペダル反力を小さくすると、一度踏み込んだペダルのペダル位置を踏み込んだ状態で維持しておくための最低ペダル踏力が小さくなる。
【0068】
図13(a)において、501はペダルを踏み込む時のペダル反力である。ペダルを踏み込む時は、渋滞検出手段561が渋滞を検出しているかどうかに関わらず、501に示したペダル反力の特性を持つ。502は渋滞を検出していない場合にペダルを放す時のペダル反力である。503〜505は渋滞を検出している場合にペダルを放す時のペダル反力である。図示するように、渋滞の程度に応じてペダルを放す時のペダル反力を小さくする。換言すると、渋滞の程度に応じてペダル反力のヒステリシスを大きくする。渋滞の程度に応じてペダルを放すときのペダル反力を例えば、渋滞規模が小、中、大の時、それぞれ渋滞が検出されていないときと比べて2/3、1/2、1/3とする。
【0069】
図13(b)は、ペダル位置に対する車両出力の例を示した図である。ペダル位置に対する車両出力は、ペダルを踏み込む時と放す時とで別の車両出力を持っていても良い。換言すると、ペダル位置に対する車両出力は踏み込む時と放す時でヒステリシスを持っていても良い。511はペダルを踏み込む時の車両出力である。ペダルを踏み込む時は、渋滞検出手段561が渋滞を検出しているかどうかに関わらず、511の車両出力の特性を持つ。512は渋滞を検出していない場合にペダルを放す時の車両出力である。513〜515は渋滞を検出している場合にペダルを放す時の車両出力である。渋滞の程度に応じてペダルを放す時のペダル位置に対する車両出力を小さくする。換言すると、渋滞の程度に応じてペダル位置に対する車両出力のヒステリシスを大きくする。
【0070】
ペダル位置に対するペダル反力のヒステリシスに比較して、ペダル位置に対する車両出力のヒステリシスは小さい。踏み込む時のペダル反力に比較した放す時のペダル反力の割合は、踏み込む時のペダル位置に対する車両出力に比較した放す時のペダル位置に対する車両出力の割合よりも小さい。あるいは、ペダル位置に対する車両出力にはヒステリシスを持たせなくても良い。ペダルを放す時も渋滞を検知しているかどうかに関わらず511の車両出力の特性を持たせても良い。
【0071】
図13(c)は、ペダル踏力に対する車両出力の例を示した図である。ペダル踏力に対する車両出力は、ペダルを踏み込む時と放す時とで別の車両出力を持つ。換言すると、ペダル踏力に対する車両出力は踏み込む時と放す時でヒステリシスを持つ。521はペダルを踏み込む時の車両出力である。ペダルを踏み込む時は、渋滞検出手段561が渋滞を検出しているかどうかに関わらず、521の車両出力の特性を持つ。522は渋滞を検出していない場合にペダルを放す時の車両出力である。523〜525は渋滞を検出している場合にペダルを放す時の車両出力である。図示するように、渋滞の程度に応じてペダルを放す時のペダル踏力に対する車両出力を大きくする。換言すると、渋滞の程度に応じてペダル踏力に対する車両出力のヒステリシスを大きくする。
【0072】
図のような特性を持たせることで、渋滞検出手段561が渋滞を検知しているかどうかに関わらず、踏み側のペダル反力や車両出力が同じ特性となるので、運転者に違和感を与えたり、フィーリングを悪化させたりすることがない。一方、渋滞を検知しているとペダルを放す時のペダル反力が小さくなるので、ペダルを放す時やあるいは同じペダル位置を保持し続けるのに必要なペダル踏力が小さくなる。渋滞時には、運転者は頻繁にペダル操作を行う。また、例えば微少な駆動力や制動力を常に出し続けながら微加速や微減速を比較的長い時間継続することが多いため、ペダルを一定のペダル位置で踏み続けるような場合が多い。従って、本発明を適応すると、運転者に違和感を与えたり、フィーリングを悪化させたりすることなく、下肢疲労軽減を図ることが出来る。
【実施例2】
【0073】
本発明の制御は、マスタシリンダと油圧配管を持つ、従来の電動ブレーキシステムにも適用できる。図14は本発明の実施例2のシステムを示す模式図、図15は実施例2のシステムを示すブロック図である。
【0074】
車両は、運転者が車両を運転するために操作するペダル装置1、及び運転者によるペダル装置1の操作に応じて車両に制動をかけ減速するための制動出力装置605〜608を備える。制動出力装置605〜608は、油圧によってピストンをロータに押しつけ摩擦材によって車両に制動をかけ減速するための油圧キャリパである。ペダル装置1と制動出力装置605〜608の間は機械的接続あるいは油圧配管を介して接続されており、ペダル装置1と制動出力装置605〜608の間には電気的な信号のやりとりがない。
【0075】
ペダル装置1はアクチュエータ4を備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置である。ペダル装置1は、操作入力部3に加えられたペダル踏力に応じてペダル位置をストロークし、ペダル位置に応じたペダル反力を生成する。ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。ペダル装置への操作入力は、プッシュロッド601を介して負圧ブースタ602で倍力される。倍力された操作入力は、マスタシリンダ603で油圧に変換される。マスタシリンダ603で生成された油圧は、配管を介して油圧モジュール604に達し、油圧モジュール604で分配され油圧キャリパ605〜608に伝達される。
【0076】
実施例2においては、ペダル位置と制動力の関係は機械的な条件により決定されてしまい、渋滞検出手段561が渋滞を検出したとしても可変にすることが出来ない。しかし、ペダル位置とペダル反力の関係、及びペダル踏力と制動力の関係は、ペダル装置を電気的に制御することにより可変とすることが出来る。実施例1において説明した本発明の基本的な制御方式は、ペダル位置に対する制動力の関係が可変であることを必須としない。そのため、本発明の基本的な制御方式は、実施例2に示すようにマスタシリンダと油圧配管を持つ、従来の電動ブレーキシステムにも適用することが可能である。したがって、バイワイヤ技術によらない従来の車両であっても、本発明のペダル装置1を用いるだけで、図13(a)に示すようなペダル位置とペダル踏力の関係、及び図13(c)に示すようなペダル踏力と車両出力の関係を実現することができ、本発明の基本的な制御方式を適用してその主たる効果を享受することが可能である。
【実施例3】
【0077】
図16は実施例3のシステムを示す模式図、図17は実施例3のシステムを示すブロック図である。本発明は、図16においても同様に適用することが出来る。
【0078】
運転者が車両を運転するために操作するペダル装置1は、アクチュエータ4を備え、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能である。ペダル装置1は、操作入力部3に加えられた操作力あるいはペダル踏力に応じてペダル位置をストロークし、ペダル位置に応じたペダル反力を生成する。ペダル位置とペダル反力あるいはペダル踏力の関係は、電気的な制御によって任意に設定することが出来る。
【0079】
711は車両に駆動をかけ加速するための駆動出力装置であり、ガソリンや軽油を燃料として車両を駆動し加速するためのエンジンである。ペダル装置1とエンジン711の間は機械的接続あるいはアクセルワイヤを介して接続されており、ペダル装置1とエンジン711の間には電気的な信号のやりとりがない。ペダル装置1への操作入力は、部材701に接続されたアクセルワイヤ702を介してスロットル712のスロットル開度を操作する。エンジン711は、スロットル712のスロットル開度に応じて車両を駆動する。
【0080】
実施例3においては、ペダル位置と駆動力の関係は機械的な条件により決定されてしまうが、ペダル位置と反力及びペダル踏力と駆動力の関係は、ペダル装置を電気的に制御することにより可変とすることが出来る。実施例1において説明された本発明の基本的な方式はペダル位置に対する駆動力の関係が可変であることを必須としない。そのため、本発明の基本的な方式は実施例3に適用することが可能である。従って、バイワイヤ技術によらない従来の車両であっても、本発明によるペダル装置1を用いるだけで本発明の基本的な方式を適用しその主たる効果を享受することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図。
【図2】本発明の一実施例のシステムブロック図。
【図3】操作入力演算装置と車両出力演算装置と通信経路の構成の一例を示す模式図。
【図4】ペダル装置の一実施例を示す模式図。
【図5】ペダル入力装置の一実施例を示す模式図。
【図6】ペダル装置の一実施例を示すブロック図。
【図7】ペダル反力の特性の一実施例を示すグラフ図。
【図8】ペダル装置の他の実施例を示す模式図。
【図9】ペダル反力の特性の一実施例を示すグラフ図。
【図10】車両出力の特性の一実施例を示すグラフ図。
【図11】渋滞検出手段の一例を示す模式図。
【図12】渋滞を検出するための条件の一例を示す図。
【図13】渋滞において変化するペダル反力の一例を示す図。
【図14】本発明の他の実施例のシステム構成図。
【図15】本発明の他の実施例のシステムブロック図。
【図16】実施例3のシステムを示す模式図。
【図17】実施例3のシステムを示すブロック図。
【符号の説明】
【0082】
1…ペダル装置、3…操作入力部、4…アクチュエータ、6…ペダル踏力検出手段、7…操作状態検出手段、8…操作入力演算装置、12…ペダル位置検出手段、30,40,50,60,70,80…車両出力装置、111…通信経路、241…車両情報検出手段、242…環境情報検出手段、561…渋滞検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルを有し、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車のペダル装置において、
渋滞検出手段が渋滞を検出したとき、ペダル反力を小さくすることを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
ペダルを有し、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車のペダル装置において、
渋滞検出手段が渋滞を検出したとき、前記ペダルを放している最中あるいはペダル位置を変えずにペダル位置を保持する時のペダル反力を小さくすることを特徴とするペダル装置。
【請求項3】
ペダルを有し、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能な自動車のペダル装置において、
渋滞検出手段が渋滞を検出したとき、前記ペダルを踏み込む時のペダル反力と、前記ペダルを放す時のペダル反力との間のヒステリシスを大きくすることを特徴とするペダル装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のペダル装置において、前記ペダルはブレーキペダルあるいはアクセルペダルであることを特徴とするペダル装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペダル装置において、車速を検出する車両情報検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記車両情報検出手段によって検出された車速が予め定めた閾値以下の状態が所定時間以上継続したとき渋滞を検出することを特徴とするペダル装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペダル装置において、車両の加速と減速を検出できる車両情報検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記車両情報検出手段によって検出された加速と減速が予め決められた時間内に所定回数以上繰返されたとき渋滞を検出することを特徴とするペダル装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペダル装置において、アクセルペダルが踏まれたこととブレーキペダルが踏まれたことを検出できる車両情報検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記車両情報検出手段によって検出されたアクセルペダルとブレーキペダルの踏み替えが所定時間内に予め決められた回数以上行われたとき渋滞を検出することを特徴とするペダル装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペダル装置において、先行車との相対距離を検出する環境検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記環境検出手段によって検出された先行車との相対距離が予め決められた距離より短い状態が所定時間以上継続したとき渋滞を検出することを特徴とするペダル装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項記載のペダル装置において、ナビゲーションシステムあるいは路車間通信システムを搭載し、前記渋滞検出手段は前記ナビゲーションシステムあるいは路車間通信システムからの渋滞情報に基づいて走行地点の渋滞を検出することを特徴とするペダル装置。
【請求項10】
ペダルを有し、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置と、
渋滞検出手段とを備える自動車において、
前記渋滞検出手段が渋滞を検出したとき、前記ペダル反力を小さくすることを特徴とする自動車。
【請求項11】
ペダルを有し、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置と、
渋滞検出手段とを備える自動車において、
前記渋滞検出手段が渋滞を検出したとき、前記ペダルを放している最中あるいはペダル位置を変えずにペダル位置を保持する時のペダル反力を小さくすることを特徴とする自動車。
【請求項12】
ペダルを有し、ペダル位置あるいはペダル反力を電気的に制御可能なペダル装置と、
渋滞検出手段とを備える自動車において、
前記渋滞検出手段が渋滞を検出したとき、前記ペダルを踏み込む時のペダル反力と、前記ペダルを放す時のペダル反力との間のヒステリシスを大きくすることを特徴とする自動車。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項記載の自動車において、前記ペダルはブレーキペダルあるいはアクセルペダルであることを特徴とする自動車。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項記載の自動車において、車速を検出する車両情報検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記車両情報検出手段によって検出された車速が予め定めた閾値以下の状態が所定時間以上継続したとき渋滞を検出することを特徴とする自動車。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか1項記載の自動車において、車両の加速と減速を検出できる車両情報検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記車両情報検出手段によって検出された加速と減速が予め決められた時間内に所定回数以上繰返されたとき渋滞を検出することを特徴とする自動車。
【請求項16】
請求項10〜13のいずれか1項記載の自動車において、アクセルペダルが踏まれたこととブレーキペダルが踏まれたことを検出できる車両情報検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記車両情報検出手段によって検出されたアクセルペダルとブレーキペダルの踏み替えが所定時間内に予め決められた回数以上行われたとき渋滞を検出することを特徴とする自動車。
【請求項17】
請求項10〜13のいずれか1項記載の自動車において、先行車との相対距離を検出する環境検出手段を有し、前記渋滞検出手段は、前記環境検出手段によって検出された先行車との相対距離が予め決められた距離より短い状態が所定時間以上継続したとき渋滞を検出することを特徴とする自動車。
【請求項18】
請求項10〜13のいずれか1項記載の自動車において、ナビゲーションシステムあるいは路車間通信システムを搭載し、前記渋滞検出手段は前記ナビゲーションシステムあるいは路車間通信システムからの渋滞情報に基づいて走行地点の渋滞を検出することを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−281799(P2006−281799A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100363(P2005−100363)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】