説明

ペースト状加熱発泡充填材組成物および車体部材閉断面の充填遮音方法

部分架橋ゴム、未加硫ゴム、架橋剤、可塑剤、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂とその潜在性硬化剤、および発泡剤を含有する自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物。この組成物は、自動車製造ラインの車体工程にてプレス成形した閉断面構造を有する車体部材の閉断面に、加熱発泡により遮断壁を充填形成することによる充填遮音工法に用いることができ、塗布時の糸切れ性がよく、かつ加熱発泡時の垂れが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ペースト状加熱発泡充填材組成物および車体部材閉断面の充填遮音方法に関し、更に詳しくは、閉断面構造を有する車体部材において、走行中の風切り音を遮音するための遮断壁を充填形成する方法、並びに該方法に用いる遮断壁形成用の自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物に関する。更に本発明は、上記遮断壁の加熱発泡時の垂れ流れを防止するための自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物にも関する。
【背景技術】
自動車の閉断面構造を有する車体部材にあって、主にフロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リヤピラー(Cピラー)、ホイルアーチ(タイヤハウス)、サイドシルなどでは、走行中に風切り音などの騒音が生じることから、従来より、かかる部材の閉断面に発泡体(遮断壁)を充填して、遮音することが一般的に行われている。
たとえば、車体部分の閉断面内にポリウレタンフォームを充填する方法;あるいは成形した加熱発泡性の充填材組成物を閉断面の内面に貼り付け、焼付け工程で加熱発泡させる方法が採用されているが、いずれの方法も自動化が困難である。
そこで、自動化に適する方法として、既に自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物が開発され、たとえば、特に塗布時の糸切れ性が良く、かつ加熱発泡時の垂れ流れが防止でき、高発泡倍率を有する充填材組成物として、液状ゴム(粘度低下、油面鋼板への付着性付与)、未加硫ゴム(分解ガスの保持能力による高発泡化)、加硫剤と加硫促進剤、軟化剤(ゴム粒子間の潤滑機能)、発泡剤と発泡助剤、鱗片状無機充填剤(垂れ防止、糸切れ性改善)、および揺変剤(垂れ防止)を必須成分として含有する組成物が知られている(日本国特許第3017571号公報参照)。同特許に開示された組成物は、パネルの所定位置にビード状に塗布することにより、後工程の電着塗装において乾燥炉内の加熱によって発泡状態で硬化し、優れた遮音性能、風切り音低減性能を発揮する。
【発明の開示】
本発明の目的は、上記既知組成物に勝るとも劣らない、塗布時の糸切れ性が良く、かつ加熱発泡時の垂れが防止できる、高発泡性の自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、従来のペースト状加熱発泡充填材組成物では完全に充填することが困難であった大きな閉断面を有する車体部材、例えば、ほぼ垂直の角度に保持され、大きな閉断面を有するセンターピラーのような車体部材閉断面においても、完全充填を可能とするダム材の併用する、車体部分閉断面の充填遮音方法を提供することである。
本発明の他の目的は、本発明の充填遮音方法においてに使用するダム材として好適なペースト状加熱硬化ダム材組成物を提供することである。
本発明者らは、これら目的を達成するために鋭意研究を進めたところ、部分架橋ゴム、未加硫ゴム、可塑剤、熱可塑性樹脂および架橋剤を含む組成物に、熱硬化性の材料としてエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤を配合し、これに発泡剤を加えれば、塗布形状保持性(保形性)を維持できる適度の粘度を有するペースト状とすることができて、組成物は自動塗布が可能となり、特に部分架橋ゴムが塗布時の糸切れ性に寄与し、また可塑剤と熱可塑性樹脂の加熱膨潤および架橋剤による未加硫ゴムの加熱架橋により皮膜を形成し、かつエポキシ樹脂の熱硬化によって皮膜の強靭化が図れると共に、発泡セルの形成に貢献することを見出した。
なお、上述の公知組成物において、“糸切れ性改善”に鱗片状無機充填剤(たとえばマイカ、タルク)が用いられるとあるが、鱗片状無機充填剤の使用により吐出性、発泡性が悪化することがある。
本発明の上記自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物によって、所期の遮音効果を得ることができるが、さらに検討を重ねたところ、前記ピラー部において特に閉断面の断面積が比較的広い箇所に適用する場合、図1の(1)に示すように、本発明のペースト状加熱発泡充填材組成物(または前記既知充填材組成物)1を2本のビード状に塗布し、加熱発泡させると、加熱発泡時に垂れ流れが生じ、充填不良の発泡体2の形成が認められた。
そこで、かかる垂れ流れを防止するため、自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物3を、図1の(2)に示される位置にビード状に塗布しておけば、同様に加熱発泡させたところ、硬化ダム材4の形成によって、上述の垂れ流れが防止され、充填良好な発泡体5(遮断壁)を形成しうることを見出した。
このように垂れ流れを防止するには、上記のダム材組成物3が加熱発泡時に上記の充填材組成物1が垂れ流れるより、早くゲル化し始め、ゲル化後の粘度(ゲル化温度時)が垂れ流れの圧力に耐えられる様に設計することが必要である。
本発明は、上記にような知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明は、
(1)部分架橋ゴム、未加硫ゴム、架橋剤、可塑剤、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂とその潜在性硬化剤、および発泡剤を含有し、好ましくは、30〜500Pa・s(20℃)の粘度および100℃以上の発泡開始温度を有する、自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物;
(2)自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した閉断面構造を有する車体部材の閉断面に対し、該車体部品を組立てる前に、自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物を塗布し、該車体部品をそのままの状態で前処理および電着塗装に付し、該電着塗装工程の電着炉での焼付条件下で該組成物を加熱発泡させて上記閉断面に遮断壁を充填形成することから成る車体部材閉断面の充填遮音方法において、
自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物、好ましくは部分架橋ゴム、可塑剤、熱可塑性樹脂、および所望によりエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤を含有し、粘度が30〜500Pa・s(20℃)であり、ゲル化開始温度が90℃以下で且つゲル化後の粘度が100000Pa・s以上である、自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物をペースト状加熱発泡充填材組成物に対して隣接もしくは間隔をあけて塗布し、該ペースト状加熱発泡充填材組成物の遮断壁が加熱発泡時の垂れ流れにより充填不良を生じる場合に、該垂れ流れを防止する、車体部材閉断面の充填遮音方法;
(3)部分架橋ゴム、可塑剤、熱可塑性樹脂、および所望によりエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤を含有する自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、断面積の広い部材に適用した場合の、本発明のペーストダム材使用による充填遮音効果を説明するための図である。
図2は、実施例1、比較例1,2で用いた部材およびその寸法を示すための簡略斜視図である。
図3は、実施例1、比較例1,2で用いた部材の傾斜角度と本発明のペーストダム材の塗布位置を示す簡略図である。
図4は、実施例1、比較例1,2で用いたペースト充填物と各ペーストダム材の動的粘弾性測定によるゲル化挙動およびDSCによる発泡挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
(a)部分架橋ゴム
本発明で用いる部分架橋ゴムとは、ジエン系ゴム、例えばアクリロニトリル−イソプレン共重合ゴム(NIR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等を、予めジビニルベンゼンやイオウ等の架橋剤を用いて部分的に架橋したゴムを指称し、脱硫処理を行った再生ゴムも包含する。
部分架橋ゴムの使用によって、鱗片状無機充填剤の使用せずに組成物の塗布時の糸切れ性を改善することができる。
(b)未加硫ゴム
本発明で用いる未加硫ゴムの例は、上述のNIR、NBR、SBR、BR、IR、天然ゴムなどである。
(c)架橋剤
本発明のペースト状加熱発泡充填材で用いる架橋剤としては、加熱により活性となり、ゴムを架橋できるものであれば、既知の架橋剤がいずれも使用できる。好適な架橋剤の例には、有機過酸化物(ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ファシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなど)等が包含される。これら架橋剤は、加熱条件や架橋物の所望の物性に応じて、単独でまたは2種以上の混合物として使用できる。
(d)可塑剤
本発明で用いる可塑剤としては、上記部分架橋ゴムおよび未加硫ゴムや後記熱可塑性樹脂を膨潤溶解できるものであればいずれであってもよい。可塑剤の例には、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジデシルアジペート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル;ポリオキシエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレングリコールジベンゾエートなどのポリグリコール安息香酸エステル;トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル;アルキル置換ジフェニル、アルキル置換ターフェニル、部分水添アルキルターフェニル、芳香族系プロセスオイル、パインオイルなどの炭化水素類が包含される。
(e)熱可塑性樹脂
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、常温では粒子状で存在し、加熱により上記可塑剤に対し膨潤溶解しうる樹脂である。具体例には、アクリル酸アルキルエステル(アルキルとしてメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシルなど)もしくはメタクリル酸アルキルエステル(アルキルとしてメチル、エチル、ブチル、ラウリル、ステアリルなど)の重合体もしくは他のアクリル系モノマーとの共重合体を含むアクリル樹脂;MBS樹脂(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン);アイオノマー樹脂;AAS樹脂(アクリロニトリル/スチレン/特殊ゴム);AES樹脂(アクリロニトリル/EPDM/スチレン);AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン);ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン);その他ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂粒子が包含され、これら樹脂は、単独でまたは2種以上の混合物として、上記可塑剤との組合せて使用する。特にペースト状加熱硬化ダム材の場合には、ゲル化開始温度が90℃以下となり、ゲル化後の粘度が100000Pa・s以上(ゲル化温度において)となる様に調整して用いればよい。
(f)エポキシ樹脂
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、この分野で既知のものが使用されてよい。エポキシ樹脂の例には、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、線状脂肪族エポキサイド型、脂環族エポキサイド型等のエポキシ樹脂;さらにこれらの変性体、たとえばゴム変性エポキシ樹脂[ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルなど)とブタジエン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体との反応生成物]、ウレタン変性エポキシ樹脂[ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量500〜5000)に過剰量のジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)を反応させて得られる末端NCO含有ウレタンプレポリマーと、OH含有エポキシ樹脂(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのジグリシジルエーテルなど)との反応生成物]、チオコール変性エポキシ樹脂等が包含される。これらエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上の混合物として使用される。
(g)潜在性硬化剤
本発明で用いる潜在性硬化剤としては、加熱により硬化作用を発揮する通常の硬化剤で、一般に80〜250℃の温度範囲で活性化するものが使用できる。硬化剤の具体例には、ジシアンジアミド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、イミダゾール誘導体(2−n−ヘプタデシルイミダゾールなど)、イソフタル酸ジヒドラジド、N,N−ジアルキル尿素誘導体、N,N−ジアルキルチオ尿素誘導体、メラミン誘導体等が包含される。これら硬化剤は、硬化条件や物性に応じて、単独でまたは2種以上の混合物として使用される。
(h)発泡剤
本発明のペースト状加熱発泡充填材組成物で用いる発泡剤としては、加熱により分解してガスを発生するものであれば、いずれも使用できる。発泡剤の例には、アゾ化合物(アゾジカルボンアミドなど)、ニトロソ化合物(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなど)、ヒドラジン誘導体(ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホヒドラジドなど)が包含される。これら発泡剤は、単独でまたは2種以上の混合物として、好ましくは発泡助剤(たとえば尿素)と組合せて、使用される。
(A)自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物
本発明に係る自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物(以下、単に「ペースト充填物」と称す)は、上述の部分架橋ゴム、未加硫ゴム、架橋剤、可塑剤、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、潜在性硬化剤、および発泡剤(と発泡助剤)を含有し、通常その粘度は30〜500Pa・s(20℃、せん断速度430s−1)に設定されておればよく、又、発泡開始温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは110〜140℃となる様に設定すれば良い。
さらに、本発明のペースト充填物は、必要に応じて通常の添加成分、たとえばチクソトロピー付与剤(有機ベントナイト、フュームドシリカ、ステアリン酸アルミニウム、金属石ケン類、ヒマシ油誘導体など)、充填剤(重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、クレー、シリカ、樹脂粉末、フライアッシュなど)、顔料(カーボンブラック、酸化チタン、その他無機顔料など)、脱水剤(酸化カルシウム、粉末シリカゲルなど)等を適量含んでいてよい。
本発明のペースト充填物の好適な配合例(組成物全量中の%(重量%)で表示)は、以下の通りである。
好適配合例
部分架橋ゴム 1〜10%、より好ましくは3〜7%
未加硫ゴム 1〜10%、より好ましくは3〜7%
架橋剤 0.01〜5%、より好ましくは0.02〜0.6%
可塑剤 30〜50%、より好ましくは30〜40%
熱可塑性樹脂 1〜15%、より好ましくは4〜12%
エポキシ樹脂 0.5〜10%、より好ましくは1〜7%
潜在性硬化剤 0.05〜5%、より好ましくは0.1〜3%
発泡剤 1〜10%、より好ましくは2〜7%
添加成分 25〜45%、より好ましくは30〜40%
部分架橋ゴムの量が1%未満では、塗布時の糸切れ性が改善されず、また10%を越えると、吐出性が低下するとともに、発泡倍率が低下する傾向にある。
未加硫ゴムの量が1%未満では、十分な発泡倍率が得られず、また10%を越えると、十分な吐出性・糸切れ性を確保することが困難となる傾向にある。
可塑剤の量が30%未満では、組成物の加工が困難となるとともに、吐出性が低下し、また50%を越えると、遊離の可塑剤が硬化後にブリードし発泡体の収縮を招く傾向にある。
熱可塑性樹脂の量が1%未満では、皮膜形成が不十分となり、十分な発泡倍率を得られず、また15%を越えると、粘度安定性が著しく悪化し、吐出性が低下する傾向にある。
エポキシ樹脂の量が10%を越えると、伸びが低下することにより、発泡倍率が低下し充填性を悪化させる傾向にある。一方、エポキシ樹脂の量の下限は、特に限定されないが、通常0.5%である。エポキシ樹脂の量が0.5%未満であると、金属表面への密着性が低下する傾向にあり、また180℃以上の温度で硬化させた場合に、発泡した硬化物が収縮する傾向にある。
潜在性硬化剤の量が5%を越えると、エポキシ樹脂の硬化に対する効果は飽和傾向にある。一方、潜在性硬化剤の量の下限は、特に限定されないが、通常0.05%である。潜在性硬化剤の量が0.05%未満であると、エポキシ樹脂の硬化が不十分となる傾向にある。
架橋剤の量が5%を越えると、金属面への密着性が低下する傾向にあり、また未加硫ゴムに対する架橋は飽和状態に至っており過剰である。一方、架橋剤の量の下限は、特に限定されないが、通常0.01%である。架橋剤の量が0.01%未満であると、皮膜形成が不十分となることがあり、十分な発泡倍率が達成できないおそれがある。
発泡剤の量が1%未満では、発泡倍率が不十分であり、また10%を越えると、過発泡による連泡・密着不良が発生する傾向にある。
(B)自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物
本発明に係る自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物(以下、単に「ペーストダム材」と称す)は、下記好適な配合例で構成され、通常30〜500Pa・s(20℃、せん断速度430s−1)の粘度を有し、ゲル化開始温度は90℃以下を示し、ゲル化後の粘度は100000Pa・s以上(ゲル化温度)を示す。
好適配合例
部分架橋ゴム 1〜15%、より好ましくは4〜10%
可塑剤 20〜40%、より好ましくは25〜35%
熱可塑性樹脂 5〜20%、より好ましくは8〜15%
エポキシ樹脂 10%以下、より好ましくは0.5〜10%、
さらに好ましくは1〜6%
潜在性硬化剤 5%以下、より好ましくは0.1〜5%、
さらに好ましくは1〜3%
添加成分 40〜60%、より好ましくは45〜55%
部分架橋ゴムの量が1%未満では、糸切れ性・形状保持性が不十分な性状となり、また15%を越えると、吐出性が低下する傾向にある。
可塑剤の量が20%未満では、組成物の加工が困難となるとともに、十分な吐出性が得られず、また40%を越えると、垂れが発生し、十分な形状保持性が得られないことや、相対的に熱硬化樹脂量が低下することによるゲル化時粘度の低下により発泡体の発泡圧力を抑えきれない傾向にある。
熱可塑性樹脂の量が5%未満では、十分なゲル化時粘度が低く、ペースト充填物の垂れ流れの圧力に耐えられず、充填不良となり、また20%を越えると、粘度安定性が著しく悪化し、吐出性に悪影響を及ぼす傾向にある。
エポキシ樹脂の量が10%を越えると、粘度安定性が悪化する傾向にある。一方、エポキシ樹脂の量の下限は、特に限定されないが、通常0.5%である。エポキシ樹脂の量が0.5%未満であると、金属表面への密着性が低下する傾向にある。
潜在性硬化剤が5%を越えても、エポキシ樹脂の硬化に対する効果は更に向上せず、また粘度安定性が悪化する傾向にある。一方、潜在性硬化剤の量の下限は、特に限定されないが、通常0.1%である。潜在性硬化剤の量が0.1%未満であると、エポキシ樹脂の硬化が不十分となる傾向にある。
(C)車体部材閉断面の充填遮音方法
本発明のペースト充填物とペーストダム材を用いて、車体部材閉断面の充填遮音方法について詳述する。
本発明の充填遮音方法は、自動車製造ライン[車体工程→前処理工程(水洗→脱脂→水洗→化成処理→水洗)→電着塗装工程(水洗→電着塗装→水洗→電着炉焼付)→各種塗装作業工程(艤装工程)]において、以下の手順に従って実施しうる。
先ず、車体工程にてプレス成形した閉断面構造を有する車体部材(A〜Cピラー、ホイルアーチ、サイドシル等)の所定の閉断面に対し、その組立て前に、上記ペースト充填物を、好ましくはロボットにより、1本または2本以上のビード状(もしくは帯状)に自動塗布する。塗布量は閉断面の断面積に応じて決定されてよく、通常断面積1cm当たり0.1〜10ccの範囲の量から選択される。
次に上記ペーストダム材を、ペースト充填物に対して隣接して、もしくは垂れ流れる方向へ適当な間隔、通常0〜100mmをあけて、断面積1cm当たり0.05〜5ccの範囲の量で、これも好ましくは自動塗布する。
塗布後、車体部材はスポット溶接により組み立てられ、上記前処理工程および電着塗装工程を経由させ(この場合、塗布されたペースト充填物とペーストダム材は未硬化ではあるものの、共に優れた保形性を有することから、特に耐シャワー性を有し、化成処理液、電着液に対し飛散、溶解乃至脱落しない)、該電着塗装工程の電着炉での焼付条件下、一般に140〜220℃で10〜60分間の加熱処理に付す。
この加熱処理によって、ペースト充填物の加熱発泡、およびペーストダム材の加熱硬化が徐々に進行し始めるが、ペーストダム材はペースト充填物の発泡開始温度である100℃より早くゲル化を開始し、すなわち、ペーストダム材がぺースト充填物の発泡開始温度より早くゲル化し始め、かつその際の粘度が100000Pa・s以上と非常に高いため、ペースト充填物の発泡による垂れ流れが発生しても、十分にゲル化したダム材によって垂れ流れが抑制され、図1の(2)で示したように、充填良好な発泡倍率3〜30倍の発泡体(遮断壁)を形成することができる。
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1および比較例1,2
(1)ペースト充填物の調製
下記重量部の各成分を配合し、プラネタリーミキサーで30分間攪拌混合し、次いで30分間減圧脱泡し、粘度80Pa・s(20℃、せん断速度430s)のペースト充填物を得る(発泡倍率10倍に設定)。

(2)ペーストダム材の調製
下記表1に示す重量部数の各成分を配合し、プラネタリーミキサーで30分間攪拌混合し、次いで30分間減圧脱泡してペーストダム材を得る。これらの粘度(20℃、せん断速度430s−1)も、表1に記載する。

(3)充填発泡体の形成
i)図2に示す形状を有し、W=38mm、H=35mm、L=150mmの寸法を有する部材に、ペースト充填物Aを30ccまたは45ccの量でビード状に(底面に一直線状に)塗布し(ダム材を用いず)、図3の(1)に示す通り、45°、90°または135°の角度に保持し、加熱処理(160℃×20分)に付したところ、いずれの角度においても、完全充填の発泡体が得られた。このように部材閉断面の断面積が適度の場合は、ペースト充填物のみの使用で所望の充填遮音効果が達成される。
ii)図2に示す形状を有し、W=50mm、H=40mm、L=300mmの寸法を有する比較的に断面積の広い部材に対し、ペースト充填物Aを塗布し、続いて図3の(2)に示す箇所に上記(2)で調製したペーストダム材Bをそれぞれ10ccずつ、底面に一直線状に塗布した場合について、ペースト充填物Aのみを塗布した場合と上記(i)と同様な角度にて;同条件の加熱処理に付し、形成される発泡体の充填状態を下記表2に示す。なお、○は完全充填を意味し、×は、ダム材を用いない場合、図1の(1)で示されるような充填不良を示し、ダム材を用いる場合、図1の(3)で示されるように、ペースト充填物Aとペーストダム材Bの硬化速度に余り差がなく、ペースト充填物Aの垂れ流れに応じて未硬化のペーストダム材Bも流れ、その結果の充填不良を意味する。

iii)図2に示す部材において、W=60mm、H=50mm、L=300mmの寸法を有する、断面積がより広い部材について、上記(ii)と同様に処理した場合の結果を下記表3に示す。

なお、上記で用いたペースト充填物と各ペーストダム材(実施例1、比較例1,2)について、動的粘弾性測定による、ゲル挙動分析(ペーストダム材)、および、示差走査熱量測定(DSC)による発泡挙動分析(ペースト充填物)を行った結果を図4に示す。
これによると、ペースト充填物は120℃付近で発泡を開始する。これに対し実施例1、比較例1,2のペーストダム材のゲル化挙動を説明すると、
実施例1のペーストダム材は比較例1,2のそれと比較してゲル化終了が早く(ゲル化開始温度77.8℃、ゲル化終了温度86.9℃)、またゲル化終了時の粘度が非常に高く(125000Pa・s)、このため、ペースト充填物の発泡圧力によって変形することがほとんどなく、ペースト充填物を有効に受け止めることが可能となる。
一方、比較例1のペーストダム材はゲル化開始温度(81.9℃)およびゲル化終了温度(87℃)が実施例1のそれらと大差がないものの、ゲル化終了時の粘度が低いため(29700Pa・s)、ペースト充填物の発泡圧力によって変形し、発泡体の流れを受け止めることができない。また、比較例2のペーストダム材では、ゲル化終了時粘度が十分に高い(101000Pa・s)ものの、ゲル化開始温度(111.9℃)およびゲル化終了温度(133℃)が高く、発泡開始に間に合わないことから、発泡圧力により変形した。
以上の構成から成る本発明によれば、従来の自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物(本発明のペースト充填物も含む)の使用によっては完全充填を行うことが困難であった断面積の広い部材閉断面においても、本発明のペーストダム材の使用によって、加熱発泡時の垂れ流れを有効に防止せしめ、所望の完全充填を達成できることが分かる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分架橋ゴム、未加硫ゴム、架橋剤、可塑剤、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂とその潜在性硬化剤、および発泡剤を含有する自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物。
【請求項2】
該組成物は、組成物全重量に基づき、部分架橋ゴム1〜10重量%、未加硫ゴム1〜10重量%、架橋剤0.01〜5重量%、可塑剤30〜50重量%、熱可塑性樹脂1〜15重量%、エポキシ樹脂0.5〜10重量%、潜在性硬化剤0.05〜5重量%、および発泡剤1〜10重量%を含有し、該組成物の粘度が30〜500Pa・s(20℃)、発泡開始温度が100℃以上である請求項1に記載のペースト状加熱発泡充填材組成物。
【請求項3】
自動車製造ラインの車体工程においてプレス成形した閉断面構造を有する車体部材の閉断面に対し、該車体部品を組立てる前に、自動塗布型のペースト状加熱発泡充填材組成物を塗布し、該車体部品をそのままの状態で前処理および電着塗装に付し、該電着塗装工程の電着炉での焼付条件下で該組成物を加熱発泡させて上記閉断面に遮断壁を充填形成することから成る車体部材閉断面の充填遮音方法において、
自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物をペースト状加熱発泡充填材組成物に対して隣接もしくは間隔をあげて塗布し、該ペースト状加熱発泡充填材組成物の遮断壁が加熱発泡時の垂れ流れにより充填不良を生じる場合に、該垂れ流れを防止する、車体部材閉断面の充填遮音方法。
【請求項4】
該自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物が、部分架橋ゴム、可塑剤、熱可塑性樹脂、および所望によりエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤を含有する請求項3に記載の充填遮音方法。
【請求項5】
閉断面構造を有する車体部材が、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リヤピラー(Cピラー)、ホイルアーチ(タイヤハウス)またはサイドシルである請求項3または4に記載の充填遮音方法。
【請求項6】
ペースト状加熱発泡充填材組成物が、請求項1または2に記載のペースト状加熱発泡充填材組成物である請求項3〜5のいずれかに記載の充填遮音方法。
【請求項7】
ペースト状加熱硬化ダム材組成物が、組成物全重量に基づき、1〜15重量%の部分架橋ゴム、20〜40重量%の可塑剤、5〜20重量%の熱可塑性樹脂、10重量%以下のエポキシ樹脂および5重量%以下の潜在性硬化剤を含有し、かつ該組成物の粘度が30〜500Pa・s(20℃)である請求項4〜6のいずれかに記載の充填遮音方法。
【請求項8】
部分架橋ゴム、可塑剤、熱可塑性樹脂、および所望によりエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤を含有する自動塗布型のペースト状加熱硬化ダム材組成物。
【請求項9】
組成物全量中の各成分の割合が、部分架橋ゴム1〜15重量%、可塑剤20〜40重量%、熱可塑性樹脂5〜20重量%、エポキシ樹脂10重量%以下および潜在性硬化剤5重量%以下であり、該組成物の粘度が30〜500Pa・s(20℃)であり、ゲル化開始温度が90℃以下で且つゲル化後の粘度が100000Pa・s以上である請求項8に記載のペースト状加熱硬化ダム材組成物。
【請求項10】
閉断面構造を有する車体部材の閉断面に、請求項3〜7のいずれかに記載の充填遮音方法を施すことにより得られる充填遮音構造体。

【国際公開番号】WO2004/108807
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506818(P2005−506818)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007997
【国際出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】