説明

ホットランナの温度制御方法及び射出成形装置

【課題】成形停止後、効率よくホットランナの温度を下げ、当該ホットランナ内に残留している樹脂の熱劣化を防止することができるホットランナの温度制御方法及びそのようなホットランナを備えた射出成形装置を提供することを課題とする。
【解決手段】射出成形機1に設けられたホットランナ53の温度制御方法であって、
前記射出成形機1の動作態様の切換えと連動して、前記ホットランナ53が所定の温度になるように前記ホットランナ53を冷却することを特徴とするホットランナの温度制御方法により上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットランナの温度制御方法及び射出成形装置に関し、より具体的には、導光板、レンズやプリズム等の光を透過させて用いる光学部品の樹脂成形に用いられるホットランナの温度制御方法及びそのようなホットランナを備えた射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安定した特性の透明な樹脂が開発され、そのような樹脂の成形技術が発達してきている。これに伴い、CDプレーヤの光学ヘッドや、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話等の光学機器のレンズとしてプラスチックレンズが使用されるようになっている。
【0003】
例えば、カメラ付き携帯電話のカメラ機構に用いられるプラスチックレンズは、サイズの小さいものが多い。このようなプラスチックレンズを射出成形機で成形する場合、成形用金型は、多数個取りとすることが一般的であり、例えば一つの金型で4個から6個のプラスチックレンズが形成される(例えば、特許文献1参照)。また、周縁の光源からの光を画面方向に反射させる役割を果たす導光板は、携帯電話や液晶ディスプレイに使用されている。
【0004】
一回の成形サイクルで成形された複数のプラスチックレンズはランナで繋がっている。ランナは金型の樹脂注入口からキャビティの入り口であるゲートまで溶融した樹脂を導くための通路内で固化した樹脂であり、成形品としては不要な部分である。したがって、ランナで繋がったプラスチックレンズは、金型から取り出された後に、ゲートの部分でランナから切り離されて一つ一つのプラスチックレンズとなる。
【特許文献1】特開平7−266391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の成形方法では、プラスチックレンズ等の成形品に対して必ずランナが形成され、ランナを切り離す必要がある。プラスチックレンズのサイズが小さい場合、ランナ部分の樹脂量がプラスチックレンズの樹脂量に比較して大きくなる。即ち、金型内で固化する樹脂全体において、ランナ部分の樹脂量の割合が大きくなり、実際に成形品となる部分の樹脂量より廃棄する部分の樹脂量のほうが大きくなってしまう。
【0006】
また、プラスチックレンズ等の光学部品に使用される樹脂には高い透明性や安定性が必要なため、高価な樹脂が多く、上述のように廃棄する部分が多いと、その分プラスチックレンズの製造コストを引き上げてしまう。
【0007】
また、成形品を金型から取り出した後にランナを切り離す工程が必要であり、この工程の分、製造コストが余計にかかってしまう。
【0008】
かかる観点より、金型内のランナ部が溶融状態で維持されるように、ランナ部を常時加熱し、金型のキャビティに充填された溶融樹脂を冷却して固化させるときには、ランナと固化させる成形品部分(キャビティ内)とをゲート遮断用のピンを用いて遮断するするホットランナ方式の樹脂成形が提案されている。ホットランナ方式の樹脂成形では、固化したランナ部が形成されず、高価な光学部品用の樹脂をランナ部として廃棄することを防止することができる。
【0009】
しかしながら、このようなホットランナ方式の樹脂成形、特に、サイズの小さいプラスチックレンズを製造するための超小型ホットランナ方式の樹脂成形では、成形品の生産を行わない場合には、加熱シリンダやホットラン内に残留している樹脂のヤケを防止するために、成形動作を停止する際にヒータの温度を成形温度から、当該成形温度よりも低い温度である保温温度に温度設定の変更を行う必要がある。
【0010】
しかし、ホットランナは、熱伝導率の低い材質で構成されているため、成形温度から保温温度への温度降下に非常に時間を必要とする。このため、成形停止時にホットランナ内に残留している樹脂は、大きな熱負荷を受けることになる。従って、次に成形を開始する際に最初のショットの成形品の物性が大幅に低下(熱劣化)したり、その後の成形においてもこうした熱劣化を完全に除去することはできずヤケ不良が発生し、良品を成形することができなかった。更に、このような熱劣化樹脂がホットランナ内に残留することもあり、分解掃除をして、これらを除去する必要もあった。
【0011】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、成形停止後、効率よくホットランナの温度を下げ、当該ホットランナ内に残留している樹脂の熱劣化を防止することができるホットランナの温度制御方法及びそのようなホットランナを備えた射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、射出成形機に設けられたホットランナの温度制御方法であって、前記射出成形機の動作態様の切換えと連動して、前記ホットランナが所定の温度になるように前記ホットランナを冷却することを特徴とするホットランナの温度制御方法が提供される。
【0013】
当該方法において、前記射出成形機の動作態様の切換えと連動して、ホットランナ冷却部に冷却媒体を流動させることによって前記ホットランナを冷却することとしてもよい。また、前記冷却媒体の流量を調整することにより、前記ホットランナが所定の温度になるように冷却することとしてもよい。更に、前記射出成形機の前記動作態様の切換えは、前記射出成形機の成形動作終了後における成形モードから保温モードへの切換えとしてもよい。また、前記射出成形機の成形動作終了後、予め設定された所定の時間が経過すると、前記前記射出成形機の前記動作態様が自動的に前記保温モードに切換わることとしてもよい。更に、前記所定の温度は、前記射出成形機に用いられる樹脂のガラス転移温度から約50℃以内の高い温度であってもよい。また、前記ホットランナが所定の温度に到達すると、前記ホットランナの冷却を停止することとしてもよい。
【0014】
本発明の他の観点によれば、ホットランナを備えた射出成形機であって、当該射出成形機の成形動作を制御する制御部を更に備え、前記制御部により、当該射出成形機の動作態様の切換えと連動して、前記ホットランナが所定の温度になるように前記ホットランナの冷却が制御されることを特徴とする射出成形装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形停止後、効率よくホットランナの温度を下げ、当該ホットランナ内に残留している樹脂の熱劣化を防止することができるホットランナの温度制御方法及びそのようなホットランナを備えた射出成形装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本発明の一実施の形態によるプラスチックレンズ等の成形品の射出成形について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
まず、本実施の形態による射出成形を行なう射出成形機の概要について説明する。図1は本発明の実施の形態による射出成形を行なう射出成形機の側面図である。
【0019】
図1に示す電動射出成形機1は、射出装置10及び型締装置20から構成される。
【0020】
射出装置10は、加熱シリンダ11を備え、加熱シリンダ11にはホッパ12が設けられる。加熱シリンダ11内にはスクリュー13が進退自在かつ回転自在に設けられる。加熱シリンダ11内であって、スクリュー13の周囲には、熱電対等の温度センサ300が設けられ、加熱シリンダ11の内部の温度が検出される。スクリュー13の後端は支持部材14によって回転自在に支持される。支持部材14にはサーボモータ等の計量モータ15が駆動部として取り付けられる。計量モータ15の回転は出力軸に取り付けられたタイミングベルトを介して被駆動部のスクリュー13に伝達される。
【0021】
射出装置10はスクリュー13に平行なねじ軸17を有する。ねじ軸17の後端は、タイミングベルトを介して、射出モータ19の出力軸に連結されている。したがって、射出モータ19によってねじ軸17を回転させることができる。ねじ軸17の前端は支持部材14に固定されたナットに係合している。射出モータ19を駆動し、タイミングベルトを介してねじ軸17を回転させると、支持部材14は前後進可能となり、その結果、被駆動部のスクリュー13を前後移動させることができる。
【0022】
型締装置20は、可動金型21Aが取り付けられる可動プラテン22と、固定金型21Bが取り付けられる固定プラテン24とを有する。可動金型21Aと固定金型21Bとで、後述する本実施の形態による金型装置23が構成される。可動プラテン22と固定プラテン24とは、タイバー25によって連結される。可動プラテン22はタイバー25に沿って摺動可能である。また、型締装置20は、一端が可動プラテン22と連結し、他端がトグルサポート26と連結するトグル機構27を有する。トグルサポート26の中央部において、ボールねじ軸29が回転自在に支持される。ボールねじ軸29には、トグル機構27に設けられたクロスヘッド30に形成されたナット31が係合している。また、ボールねじ軸29の後端にはプーリー32が設けられ、サーボモータ等の型締モータ28の出力軸33とプーリー32との間には、タイミングベルトが設けられている。
【0023】
型締装置20において、駆動部である型締モータ28を駆動すると、型締モータ28の回転がタイミングベルト34を介してボールねじ軸29に伝達される。そして、ボールねじ軸29及びナット31によって、回転運動から直線運動に変換され、トグル機構27が作動する。トグル機構27の作動により、可動プラテン22はタイバー25に沿って移動し、型閉じ、型締め及び型開きが行なわれる。型締モータ28の出力軸33の後端には、位置検出器35が接続されている。位置検出器35は、型締モータ28の回転数又は回転量を検出することにより、ボールねじ軸29の回転に伴って移動するクロスヘッド30又はトグル機構27によってクロスヘッド30に連結された可動プラテン22の位置を検出する。
【0024】
また、本実施の形態では、電動射出成形機1に制御部40が設けられる。制御部40は、射出装置の計量モータ15及び射出モータ19を制御し、また、型締装置20の型締モータ28を制御する。制御部40は更に、後述する空気圧源225と接続している空圧バルブ220(図3参照)の開閉を制御する。これについては後に詳述する。
【0025】
次に、本実施の形態による金型装置23について、図2を参照しながら説明する。図2は、可動プラテン22及び固定プラテン24に取り付けられた金型装置23を示す断面図である。
【0026】
本実施形態の金型装置23は、プラスチック製の凸レンズ、凹レンズ、プリズム等、様々な光学部品の成形に用いることができる金型装置である。
【0027】
金型装置23はいわゆるホットランナ方式の金型装置であり、通常のコールドランナ方式において成形品に付帯して形成されるランナ部(固化した樹脂部分)は形成されない。
【0028】
ホットランナ方式では、金型内のランナ部が溶融状態で維持されるように、ランナ部を常時加熱している。従って、金型のキャビティに充填された溶融樹脂を冷却して固化させるときには、ランナと固化させる成形品部分(キャビティ内)とを遮断する機構を設ける必要がある。この遮断する機構が、図2におけるゲートバルブ機構60に相当する。
【0029】
図2において、可動金型21Aと固定金型21Bとの境目(いわゆるパーティングライン)が太線PLで示されている。太線PLの左側が可動金型21Aであり、右側が固定金型21Bである。図2に示す状態は金型装置23が型閉した状態であり、型開する場合は可動金型21Aが図2中左向きに移動する。
【0030】
可動金型21Aは、可動プラテン22に取り付けられる可動金型取付板部81と、端面が前記パーティングラインを形成する可動金型型板部83との間に、可動金型中板部82を設けた構造を有する。また、可動金型取付板部81と可動金型中板部82との間の上部および下部には、図示を省略するエジェクタのスペーサブロック87が夫々形成されている。スペーサブロック87に周囲を囲まれた部分には空間が形成されており、当該空間に、後述する中子21Aaの後端部に接続された成形品突き出しロッド86と、当該取出ロッド86の後端部を挟持する第1の突き出しプレート84及び第2の突き出しプレート85とが移動自在に設けられている。
【0031】
固定金型21Bは、固定プラテン24に取り付けられる固定金型取付板部91と、端面が前記パーティングラインを形成する固定金型型板部93との間に、固定金型中板部92を設けた構造を有する。
【0032】
また、固定金型21Bには、成形品の外形を形成するための中子21Baが設けられている。可能金型21Aには成形品の外形を形成するための中子21Aaが設けられている。中子21Aa及び中子21Baにより金型装置23が閉じた際にキャビティ52が形成される。
【0033】
キャビティ52に溶融樹脂を充填して冷却・固化させることにより、成形品50が形成される。金型装置23内で溶融樹脂が固化して成形品50を成形後、可動金型21Aが移動(型開)すると、中子21Aaは可動金型21Aの移動に連動して、図2中、左側に移動するが、成形品突き出しロッド86を介して中子21Aaを右側に移動することにより、キャビティ52内で固化した成形品50は可動金型21Aから分離して取り出すことができる。
【0034】
固定金型21Bには、図1に示す射出装置10から溶融した樹脂が供給される。固定金型21Bの内部に連結管94が設けられ、当該連結管94の内部には、溶融した樹脂を流してキャビティ52に導くための通路(ランナ)53が形成されている。
【0035】
ランナ53の一端は、固定金型21Bの側面に形成されたノズルタッチ部54に接続される。ノズルタッチ部54には加熱シリンダ11の先端のノズル99が接続され、加熱シリンダ11で溶融されて計量された樹脂がランナ53に供給される。
【0036】
ランナ53の他端はゲート通路55に接続されており、ゲート通路55は、周囲をゲートブッシュ100に囲まれたゲート56を介してキャビティ52に接続されている。従って、ランナ53に供給された溶融樹脂はゲート通路55とゲート56を介してキャビティ52に充填される。なお、ゲート通路55には上述のようにゲートバルブ機構60が設けられておりゲート56を開放又は閉鎖できる。ゲートバルブ機構60は、ゲート通路55内に移動可能に位置するシャットオフ手段としてのバルブ61と、バルブ61を駆動する駆動機構62とを有する。
【0037】
連結管94の内部であってランナ53の周囲にはランナ53を加熱するためのヒータ96が複数配置されている。
【0038】
ランナ53内の樹脂の溶融状態が保たれるように、固定金型21B内において任意の各区域毎に埋め込まれた温度センサ200の検出値をもとに、ヒータ96の温度制御が行なわれている。
【0039】
また、連結管94の外周部には、連結管94を囲うように、冷却媒体の流路であり、ランナ冷却部として機能する気体断熱部95が配設されている。気体断熱部95は更に、固定金型中板部92及び固定金型型板部93の内部を貫挿し、固定金型型板部93の上面には当該空気の流入口210が形成され、固定金型中板部92の下面には当該空気の流出口215が形成されている。
【0040】
圧縮空気が、流入口210から冷却媒体として入り、気体断熱部95内を流動し、流出口215から排出され、これによって、ヒータ96から固定金型21Bへの熱伝導が防止される。
【0041】
但し、上述の冷却媒体は空気に限られず、例えば、窒素等であってもよい。また、冷却媒体として水等の液体を用いてもよく、この場合には気体断熱部95の代わりに、当該液体が流動できるようにスリーブ等が、冷却媒体の流路として形成される。なお、説明の便宜上、図2において気体断熱部95を大きく描いているが、実際には小さな隙間として連結管94の周囲に形成されている。
【0042】
気体断熱部95により冷却されるランナ95の温度は、上述の温度センサ200により検出される。
【0043】
図3は、図2に示したランナ95の温度制御の概念を示したブロック図である。
【0044】
図2及び図3を参照するに、気体断熱部95の流入口210(図2参照)の近傍には、図示を省略するエアノズルが配設されている。エアノズルは、空圧バルブ(弁)220(図3参照)を介して空気圧源225(図3参照)に接続している。空圧バルブ220を開放することにより、空気圧源225から圧縮空気が前記エアノズルを介して流入口210(図2参照)を通って、気体断熱部95内に吹き込まれ、気体断熱部95により周囲を囲まれたランナ53の表面が冷却される。
【0045】
空圧バルブ220の開閉は、空圧バルブ220に接続されたランナ制御部230(図3参照)により制御されている。ランナ制御部230は、前述の成形機1の制御部40(図1及び図3参照)と通信又はI/O(Input/Output)で接続されているため、空圧バルブ220の開閉を成形機1の制御部40によって行うことができる。
【0046】
次に、かかる構造におけるランナ95の温度制御の方法について図4も参照して説明する。ここで、図4は、ランナ53の温度制御の方法を示したフローチャートである。
【0047】
成形機1の制御部40は、後述する2つの動作態様の切換と、圧縮空気の気体断熱部95への流入とを連動させている。
【0048】
図3及び図4を参照するに、通常の成形動作が終了(ステップS1)すると、成形機1のオペレータは、成形機1を成形モードから保温モードへ切り換える(ステップS2(1))。即ち、成形機1の制御部40の画面に表示されたモード設定の切換えを行い、成形機1を、加熱シリンダ11等に対し成形動作を行わせる成形モードから、成形動作は行わないものの加熱シリンダ11及びランナ53等を所定の温度に保っておく保温モードへ切換える。
【0049】
ここで、成形モードでは、成型品の量産を行うための全自動運転、成型品の量産前に1ショット毎に成型品を取り出しながら条件出しを行う半自動運転、加熱シリンダ11内の樹脂の入れ替えを行うパージング等の動作が行われ、射出動作やスクリュー13の回転動作を伴った稼働状態となる。
【0050】
一方、保温モードでは、射出動作やスクリュー13の回転動作を行わず一時的に成形機を停止させた状態で使用されるモードである。保温モードでは、加熱シリンダ11内に樹脂が保たれた状態となるため、樹脂ヤケを防止すべく成形時よりも低温に設定される。
【0051】
また、成形モードでは、加熱シリンダ11やランナ53は、その内部に設けられ成形に使用される樹脂がガラス状の硬い状態からゴム状に変わる温度、即ち、ガラス転移温度Tgよりも約100℃高い温度の状態にある。成形モードでは、通常、連続して成形ができる温度に設定される。
【0052】
一方、保温モードでは、加熱シリンダ11やランナ53は、前記ガラス転移温度Tgから約50℃以内の高い所定の温度(保温温度)の状態にある。ガラス転移温度Tgから約50℃以内の高い温度であれば、ランナ53内に残留している樹脂のヤケ発生を防止することができる。保温モードでは、通常、加熱シリンダ11内に成形材料を長時間滞留させても問題が生じない温度に設定される。
【0053】
更に、パージング動作を成形モードから独立したモードとしてもよい。パージング動作が行われるパージモードでは、設定温度の下限としてガラス転移温度Tgが設定される。また、パージモードでは、設定温度の上限として、スクリュー13の回転に必要なトルクが維持できる温度又はスクリュー13を回転させても当該スクリュー13が折損しない温度が実験的又は経験的に設定される。
【0054】
上述の成形モードから保温モードへの切換えと連動して、成形機1の制御部40はランナ制御部230にON信号を出力し、ランナ制御部230を介して空気圧源255と接続している空圧バルブ220を開放する(ステップS2(2))。そうすると、圧縮空気が空気圧源225から前記エアノズルを介して流入口210(図2参照)を通り、気体断熱部95内を流動し、気体断熱部95により周囲を囲まれたランナ53の表面が冷却される。
【0055】
ランナ53の温度はランナ53の周囲に設けられた温度センサ200により検出され、当該検出されたランナ53の温度が上述の保温温度に到達したか否かが確認される(ステップ3)。
【0056】
温度センサ200によって検出されたランナ53の温度が上述の保温温度に到達するまで、空圧バルブ220は開放され続け(ステップ4−1)、圧縮空気が気体断熱部95内に流動され続け、ランナ53の表面は冷却され続ける。
【0057】
温度センサ200によって検出されたランナ53の温度が上述の保温温度に到達すると、成形機1の制御部40はランナ制御部230にOFF信号を出力し、ランナ制御部230を介して空気圧源255と接続している空圧バルブ220を閉鎖する(ステップS4−2)。そうすると、空気圧源225から気体断熱部95への圧縮空気の流入が停止され、ランナ53の冷却が停止される。
【0058】
このように、本実施形態によれば、成形動作の停止後、成形モードから保温モードへの切換えと連動して、空気圧源255と接続している空圧バルブ220が開放される。従って、ホットランナの温度を、ランナ53内に残留している樹脂のヤケ発生を防止することができる温度である保温温度に到達するまで効率よく下げることができ、当該ホットランナ内に残留している樹脂の熱劣化を防止することができる。
【0059】
なお、温度センサ200によって検出されたランナ53の温度が保温温度に到達すると直ちに空圧バルブ220を完全に閉鎖するのではなく、空圧バルブ220の開閉を適宜制御してランナ53の温度を制御してもよい。即ち、気体断熱部95内を圧縮空気が流動しランナ53の表面が冷却されても、実際にはランナ53の内部は前記保温温度よりも高温であることがある。従って、当該圧縮空気の流動を停止した途端に、温度センサ200による検出温度が上昇することがある。そこで、この場合は、再度空圧バルブ200を開放して圧縮空気を気体断熱部93に再度流動させ、ランナ53を冷却する。このようにして、温度センサ200によって検出されたランナ53の温度が予め設定した保温温度に確実に到達するまで、空圧バルブ200を開閉動作を繰り返し、ランナ53の温度を制御してもよい。
【0060】
また、空気圧源225と気体断熱部95との間の圧縮空気の流路の任意の箇所に、当該圧縮空気の流量検出器を設けてもよい。かかる流量検出器による圧縮空気の流量の検出値に基づいて、気体断熱部95を流動する圧縮空気の量を調整し、ランナ53の温度が予め設定した保温温度に確実に到達するよう、ランナ53の温度の微調整をすることができる。
【0061】
更に、オペレータによる成形モードから保温モードへの切換えを忘れた場合等に備え、成形機1が運転を停止して予め設定された所定の時間が経過すると、自動的に上述の保温モードに切換り、当該自動切換えと連動して、温度センサ200によって検出されたランナ53の温度が上述の保温温度に到達するまで、空圧バルブ220を開放して圧縮空気を気体断熱部95内に流動し、ランナ53の表面を冷却し続けることとしてもよい。この場合も、ホットランナの温度を、ランナ53内に残留している樹脂のヤケ発生を防止することができる温度である保温温度に到達するまで効率よく下げることができ、当該ホットランナ内に残留している樹脂の熱劣化を防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態による射出成形を行なう射出成形機の側面図である。
【図2】可動プラテン及び固定プラテンに取り付けられた金型装置を示す断面図である。
【図3】ランナの温度制御の概念を示したブロック図である。
【図4】ランナの温度制御の方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 射出成形機
21A 可動金型
21B 固定金型
23 金型装置
40 制御部
50 成形品
52 キャビティ
53 ランナ
56 ゲート
61a ピン
61 バルブ
95 空気断熱部
220 空圧バルブ
225 空気圧源
230 ランナ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機に設けられたホットランナの温度制御方法であって、
前記射出成形機の動作態様の切換えと連動して、前記ホットランナが所定の温度になるように前記ホットランナを冷却することを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のホットランナの温度制御方法であって、
前記射出成形機の動作態様の切換えと連動して、ホットランナ冷却部に冷却媒体を流動させることによって前記ホットランナを冷却することを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項3】
請求項2記載のホットランナの温度制御方法であって、
前記冷却媒体の流量を調整することにより、前記ホットランナが所定の温度になるように冷却することを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項記載のホットランナの温度制御方法であって、
前記射出成形機の前記動作態様の切換えは、前記射出成形機の成形動作終了後における成形モードから保温モードへの切換えであることを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項5】
請求項4記載のホットランナの温度制御方法であって、
前記射出成形機の成形動作終了後、予め設定された所定の時間が経過すると、前記前記射出成形機の前記動作態様が自動的に前記保温モードに切換わることを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項記載のホットランナの温度制御方法であって、
前記所定の温度は、前記射出成形機に用いられる樹脂のガラス転移温度から約50℃以内の高い温度であることを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項記載のホットランナの温度制御方法であって、
前記ホットランナが所定の温度に到達すると、前記ホットランナの冷却を停止することを特徴とするホットランナの温度制御方法。
【請求項8】
ホットランナを備えた射出成形機であって、
当該射出成形機の成形動作を制御する制御部を更に備え、
前記制御部により、当該射出成形機の動作態様の切換えと連動して、前記ホットランナが所定の温度になるように前記ホットランナの冷却が制御されることを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−210163(P2007−210163A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31404(P2006−31404)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】