説明

ホップ酸アルカリ塩を含む抗菌性組成物及びその用途

本発明は、ホップ酸アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の組成物を含む抗菌性組成物、及び微生物の増殖の抑制にそれらを用いる方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2006年3月29日出願の米国特許仮出願第60/787,384号の利益を主張するものであり、この出願の全教示内容は、参照することで本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
保存料は、カビ、細菌、真菌、又は酵母菌に起因する食品の品質低下を遅らせるために多くの食品に添加される。汚染食品は、多くの人々に影響を及ぼし得る深刻な病気を引き起こすことがある。例えば、1980年代には、リステリア感染した肉製品を消費した何百人もの人々が、リステリア症に侵された。妊婦、胎児、新生児、及び幼児、並びに免疫不全の成人が、この病気に特に羅患しやすかった。早期に診断すれば治療可能であるが、未治療のリステリア症は高い死亡率を示す。食品が原因となる病気に伴うリスクが深刻である観点から、ほとんどの食品は様々な化学保存料で処理される。食品が原因となる病気のリスクは保存料の使用により軽減されるが、多くの化学保存料は、発癌性物質として作用することが、研究により示されている。そのような食品添加物への懸念が、抗菌汚染に伴うリスクにもかかわらず、化学保存料を含有していない食品を消費者が求める原因となっている。
【0003】
消費者は、化学保存料を含有しない天然の保存料を含有する安全で健全な製品を求めている。天然のホップ酸は強い抗菌作用を示す。しかし、酸化、光、及び酸触媒転位により天然のホップ酸が分解しやすいことで、この作用は制限されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のホップ酸と比べて安定性が増している1つ以上のホップ酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を含む抗菌性組成物、及びこれらの組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、一般に、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を製品に接触させることにより、製品内における微生物の増殖の防止又は抑制方法を提供する。一実施形態において、製品は食品、工業用製品、又は家庭用製品である。別の実施形態において、本方法は、本方法を施していない製品と比べて、消費者によって消費されるまで品質低下することなく製品を保存できる期間を延長する。さらに別の実施形態において、本方法は、本方法を施していない製品と比べて、製品の貯蔵寿命を延長する。さらに別の実施形態において、期間又は貯蔵寿命は少なくとも約6ヵ月、9カ月、12カ月、18カ月、24カ月、又は36カ月延長する。さらに別の実施形態において、本方法は、本方法を施していない製品と比べて、ホップ酸塩又はその誘導体の安定性を増加させるか、あるいはホップ酸の分解を軽減させる。さらに別の実施形態において、6ヵ月、9カ月、12カ月、18カ月、24カ月、又は36カ月後に検出したホップ酸(又はその誘導体)の量は、適用したホップ酸又はその誘導体の量の少なくとも75%である。
【0006】
別の態様において、本発明は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を表面に接触させることにより、表面上の微生物の増殖を防止若しくは抑制する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、工業環境(工場又は食品加工施設)、商業環境(例:オフィスビル、飛行機、列車、自動車、レストラン、カフェテリア、デイケアセンター、食品加工施設)、又は臨床環境(例:病院、診療所、クリニック、ヘルスセンター、又は研究所)に存在する表面(例:壁、床、天井、カウンター、機械、又はその他の表面若しくは装置)を洗浄、消毒、又は殺菌する。別の実施形態において、接触する表面は、住居、学校、オフィスビル、飛行機、列車、自動車、レストラン、カフェテリア、又はデイケアセンターに存在する。さらに別の実施形態において、接触する表面は、壁、床、敷物、天井、カウンター、電化製品、調理容器、食品保存容器、又は調理用のその他の器具である。
【0007】
別の態様において、本発明は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を身体部分に接触させることにより、身体部分を消毒又は殺菌する方法を提供する。一実施形態において、身体部分(例:哺乳類又は鳥類)は皮膚、毛皮、毛髪、羊毛、羽毛、口腔、又は任意の他の器官である。別の実施形態において、ホップ酸は洗肌料として調合される。さらに別の実施形態において、皮膚は手術の準備において洗浄される。
【0008】
別の態様において、本発明は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を食品に接触させることを含む、食品媒介疾患の防止又は抑制方法を提供する。一実施形態において、ホップ酸塩は、食品の加工前、加工中、又は加工後に食品に添加される。別の実施形態において、接触により、約0.1〜60ppm又は約0.04〜30ppmのホップ酸塩を含む食品が得られる。
【0009】
別の態様において、本発明は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を表面に接触させることを含む、浮遊微生物の増殖の防止又は抑制方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、担体又は希釈剤中に、ホップ酸アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩、若しくはその組み合わせの有効量を含む抗菌性組成物を提供する。好ましい実施形態において、組成物は粉末として調合される。
【0011】
別の態様において、本発明は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を含む吸収性成分を提供する。一実施形態において、組成物は体液、分泌物、又は排泄物の吸収に適する。別の実施形態において、組成物は創傷包帯、医療用スポンジ、止血用品、ガーゼ付絆創膏、創傷用パッキン、血管内閉鎖用パッキン、血管外閉鎖用包帯、膨潤性吸収用品、繊維性創傷用パッキン用品、おむつ、及び女性生理用品からなる群から選択される。
【0012】
別の態様において、本発明は、任意の前述の態様の組成物を食品に接触させることにより、食品の品質低下の抑制方法を提供する。一実施形態において、食品は肉、魚、野菜、穀物、及びパスタからなる群から選択される。別の実施形態において、肉は鶏肉、牛肉、ラム肉、豚肉、又は食肉加工品である。さらに別の実施形態において、野菜は漬物である。さらに別の実施形態において、穀物は生米又は調理米である。さらに別の実施形態において、パスタは乾燥パスタ、生パスタ、又は調理パスタである。さらに別の実施形態において、魚は生魚、調理魚、又は魚加工品である。さらに別の実施形態において、魚加工品は練り魚肉である。別の実施形態において、食品は哺乳類又は鳥類の消費用に調合された飼料である。
【0013】
別の態様において、本発明は、ホップ酸アルカリ金属塩の有効量を培地に接触させることを含む、食品内におけるリステリア・モノサイトゲネシスの増殖を予防する方法を提供する。一実施形態において、食品は0.1〜60ppm又は0.04〜30ppmのホップ酸アルカリ金属塩を含有する。別の実施形態において、接触により、約0.1〜60ppm又は0.04〜30ppmのホップ酸アルカリ金属塩を含む食品が得られる。別の実施形態において、食品は約4〜50ppmのホップ酸アルカリ金属塩を含有する。
【0014】
別の態様において、本発明は、ホップ酸アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む食品包装材料を提供する。一実施形態において、本方法は、ホップ酸塩又はその誘導体の安定性を増加させる。別の実施形態において、包装材料は高分子フィルム、食品用紙、包装紙、紙、又は肉用ケーシングからなる群から選択される。
【0015】
上述の態様のいずれかの種々の実施形態において、ホップ酸塩はホップ酸アルカリ金属塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム)、アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)、又はその誘導体である。かかる塩は水溶性であっても、概して不溶性であってもよい。ホップ酸塩は単独若しくは任意の組み合わせで用いてもよい。上述の態様の種々の実施形態において、3ヶ月、6ヵ月、9カ月、12カ月、18カ月、24カ月、又は36か月後に検出されたホップ酸は、ホップ酸又はその誘導体の適用量の少なくとも50%、75%、80%、90%、あるいは95%である。上述の態様の他の実施形態において、ホップ酸塩は水溶性アルカリ金属塩又は非水溶性アルカリ土類金属塩である。他の実施形態において、少なくとも約1%〜90%(例:0.1%、1%、2%、5%、10%、25%、75%、80%〜90%)のホップ酸は、金属塩形態又は遊離酸形態である。上述の態様のさらに他の実施形態において、ホップ酸塩は水溶性又は非水溶性の固体、液体、エマルション、スラリー、又は粉末として調合される。さらに他の実施形態において、組成物は0.1%〜90%(例:0.1%、1%、2%、5%、10%、25%、75%、80%〜90%)のホップ酸アルカリ土類金属塩を含有する。上述の態様のさらに他の実施形態において、抗菌剤はエタノール、水、又はその他の水溶液などの希釈剤中に存在する。さらに他の実施形態において、組成物は0.1%、1%、2%、5%、10%、25%、75%、80%、又は90%のホップ酸塩を含有する。好ましい実施形態において、組成物は粉末(例:ホップベータ酸ナトリウム塩又はカリウム塩、及びマルトデキストリン担体を含有する粉末)として調合される。組成物は1%〜90%のホップベータ酸ナトリウム塩を含有する。さらに他の実施形態において、ホップ酸はカプセル化された脂質(例:水素化された大豆油中)である。さらに他の実施形態において、粉末は、担体として炭水化物、タンパク質、繊維、シリカ、又は植物若しくは動物由来の樹脂を含有する。さらに他の実施形態において、繊維はセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒプロメロース(hypomellose)である。さらに他の実施形態において、担体はマルトデキストリン、クラスターデキストリン、シクロデキストリン、グルコース、コーンスターチ、コーンシロップ固形物、アラビアゴム、カラギナン(calaginan)、又はイヌリン(inuline)である。さらに他の実施形態において、希釈剤は水、水混和性有機溶媒、又はその組み合わせを含有する。さらに他の実施形態において、希釈剤はエタノール、クレモホール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール(IPA)、又はグリセロールを含有する。さらに他の実施形態において、組成物は界面活性剤を含有する。さらに他の実施形態において、担体はアルキルポリ(エチレンオキシド)であり、(「アルキルポリ(エチレンオキシド)」とは、末端ヒドロキシル、硫酸、又はカルボキシレート基がポリ(エチレン)の表面でグラフト結合したものを意味する。)アルキルポリグルコシド、糖エステル、脂肪アルコール、又はその組み合わせによるものである。さらに他の実施形態において、組成物は少なくとも1つの公知の抗菌剤をさらに含有する。さらに他の実施形態において、公知の抗菌剤はエタノール、グリシン、酢酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ε−ポリリジン、しらこ蛋白、リゾチーム、又は任意の植物由来の抗菌成分である。
【0016】
本発明の組成物により抑制されやすい細菌の例としては、アエロバクター属、アエロモナス属、アシネトバクター属、イスラエル放線菌、アグロバクテリウム属、バチルス属、炭疽菌(Bacillus antracis)、バクテロイデス属、バルトネラ属、ボルデテラ属、ボルテラ属(Bortella)、ボレリア属、ブルセラ属、バークホルデリア属、カリマトバクテリウム属、カンピロバクター属、シトロバクター属、クロストリジウム属、ウェルシュ菌、破傷風菌、コリネバクテリウム属(Cornyebacterium)、ジフテリア菌、コリネバクテリウムsp.、エンテロバクター属、エンテロバクター・エロゲネス、腸球菌、豚丹毒菌、エシェリキア属、フランシセラ属、フソバクテリウム・ヌクレアタム、ガルドネレラ属、ヘモフィルス属、ハフニア属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、肺炎桿菌、レジオネラ菌、レプトスピラ属、リステリア属、モルガネラ属、モラクセラ属、ミコバクテリウム属、ナイセリア属、パスツレラ属、パスツレラ・マルトシダ、プロテウス、プロビデンシア属、シュードモナス菌、リケッチア属、サルモネラ属、セラチア属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、ステノトロホモナス属、連鎖球菌、ストレプトバチルス・モニリフォルミス、トレポネーマ属、梅毒トレポネーマ、フランベジア、キサントモナス、ビブリオ属、及びエルシニア属を含む1つ以上の病原菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明と請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(定義)
「アルファ酸」とは、ホップ植物又はホップ製品から単離することができるか又は合成して生成することができるフムロン(humulones)及びその誘導体として集合的に知られる1つ以上の化合物を意味する。アルファ酸の例としては、イソコフムロン、イソアドフムロン、ローイソアルファ酸(例:ローイソフムロン、ローイソコフムロン、及びローアドフムロン)、テトラヒドロイソアルファ酸(例:テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、及びテトラヒドロアドフムロン)、ヘキサヒドロイソアルファ酸(例:ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、及びヘキサヒドロアドフムロン)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、単離したアルファ酸塩は、ホップ植物又は植物抽出物中のアルファ酸に自然に付随する化合物を実質的に含んでいない。
【0019】
「抗菌性組成物」とは、微生物(例:細菌、真菌(例:カビ)、原虫、ウイルス)の増殖、繁殖、又は生存を防止する、抑制する、遅らせる、又は軽減する任意の組成物を意味する。
【0020】
「ベータ酸」とは、ホップ植物又はホップ製品から単離することができるか又は合成して生成することができるルプロン(lupulones)及びその誘導体として集合的に知られる1つ以上の化合物を意味する。単離したベータ酸の例としては、ルプロン、アドルプロン、コルプロン、テトラヒドロルプロン、テトラヒドロアドルプロン、テトラヒドロコルプロン、及び、ヘキサヒドロベータ酸、テトラヒドロベータ酸を含むこれらの誘導体、又は任意のベータ酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、単離したベータ酸塩は、ホップ植物又は植物抽出物中のベータ酸に自然に付随する化合物を実質的に含んでいない。
【0021】
「身体部分」とは、哺乳類又は鳥類である生物の任意の組織又は器官を意味する。身体部分の例としては、皮膚、毛髪、毛皮、表皮、羽毛、羊毛、皮、口腔(口唇、舌、及び歯を含むが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「従来のホップ酸」とは、分解しやすいホップ酸を意味する。
【0023】
「住居」とは、ヒトの居住地を意味する。
【0024】
「食品保存料」とは、未接触の食品と比べて、食品と接触させた際に、食品の分解(例:品質低下)を防止又は遅らせる傾向がある薬剤を意味する。そのような薬剤を含む製品は、未処理の製品と比べて、貯蔵寿命が長いので望ましい。
【0025】
「有効量」とは、微生物の増殖を防止、抑制、遅延、安定化、又は軽減する化合物の量を意味する。上述した化合物の有効量は、約0.1ppm〜約1000ppmの範囲とすることができる。有効量は、抑制する微生物、適用方法のみならず、他の薬剤との併用が可能であるかによって変わる場合がある。
【0026】
「食品保存」とは、望ましくない微生物で食品が汚染されるリスクを軽減する任意の方法を意味する。
【0027】
「食品」とは、ヒト、哺乳類、又は鳥類の消費用の任意の組成物を意味する。
【0028】
「食品の品質低下」とは、食品を不味くさせる食品中の任意の変質を意味する。変質の例としては、味、匂い、質感、又は外観の変化が挙げられる。傷んだ食品は毒性がある場合もあるし、そうでない場合もある。
【0029】
「食品媒介疾患」とは、微生物又は微生物の毒素によって汚染された食品を消費することで引き起こされる任意の疾患を意味する。食品媒介疾患は、微生物が宿主に感染することにより引き起こされるか又は、食品又は宿主中の微生物により生成された毒素の作用により引き起こされる場合がある。
【0030】
「ホップ酸」とは、任意の1つ以上のアルファ酸、ベータ酸、又はその誘導体を意味する。従って、「ホップ酸」という用語は、アルファ酸、ベータ酸、及びその様々な誘導体の組み合わせを含む。
【0031】
「ホップ酸の分解」とは、組成物中のホップ酸の量の減少を意味する。一般に、ホップ酸の分解は、酸化、光、又は酸触媒転位によって生じる。
【0032】
「増加する」又は「減少する」とは、任意のプラスの変化又はマイナスの変化をそれぞれ意味する。かかる変化は、少なくとも約5%、10%、25%、50%、75%、又は100%である。
【0033】
「工業用抗菌剤」とは、あらゆる工業環境内で表面を洗浄、消毒、又は殺菌するのに用いる抗菌性組成物を意味する。様々な実施形態において、工業用抗菌剤は、工場、食品加工施設、及び病院に存在する壁、床、天井、カウンター、及び機械に用いられる。
【0034】
「カプセル化された脂質」とは、ホップ酸塩又はその誘導体が脂質上に存在する疎水基と相互作用することを意味する。脂質は当該技術分野で公知であり、動物性、植物性、及び合成飽和脂肪、不飽和脂肪、モノ不飽和脂肪、ポリ不飽和脂肪、並びにトランス脂肪が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明のホップ酸は、部分的に水素化された大豆油を用いて脂質カプセル剤で調製される。
【0035】
「家庭用抗菌剤」とは、家の表面を洗浄、消毒、又は殺菌するのに用いる抗菌性組成物を意味する。様々な実施形態において、家庭用抗菌剤は、壁、床、敷物、天井、カウンター、電化製品、調理又は貯蔵用容器、若しくは調理に用いるその他の用具上の微生物の増殖を防止又は抑制するために、住居内の台所、浴室、及びその他の部屋で用いられる。
【0036】
「本方法を施していない製品」とは、化学又は天然保存料が欠けている製品、又はアルカリ金属ホップ酸塩又はアルカリ土類金属ホップ酸塩でないホップ酸と接触させた製品を意味する。
【0037】
「貯蔵寿命」とは、消費する前、又は消費者により使用される前に、品質低下することなく製品を保存することができる期間を意味する。
【0038】
「微生物の増殖の抑制」とは、微生物の繁殖を防止、遅延、あるいは軽減することを意味する。そのような抑制は、少なくとも約5%、10%、25%、50%、75%、又は100%である。
【0039】
「哺乳類」とは、任意の哺乳類を意味する。哺乳類の例としては、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、及びウサギが挙げられるが、これらに限定されない。鳥類である生物の例としては、ニワトリ、カモ、猟鳥メンドリ、ガチョウ、及びシチメンチョウが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「培地」とは、微生物の増殖又は生存を支持できる任意の組成物を意味する。
【0041】
「微生物」とは、細菌、真菌、原虫、ウイルス、又はその他の微小生物を意味する。微生物は、浮遊病原菌を含む。
【0042】
「実質的に含まない」とは、化合物が少なくともある程度精製されていることを意味する。アルファ酸及びベータ酸は、少なくとも50%、75%、85%、90%、95%、あるいは99%純粋であることが好ましい。
【0043】
「水溶性」とは、水に可溶であることを意味する。一実施形態において、本発明の化合物(例:水溶性ホップ酸アルカリ金属塩)は、1%〜70%の間の化合物を含む溶液を形成するために、水又は別の水性組成物に溶解させる。ここで、範囲の下限は1%〜69%の間の任意の整数であり、範囲の上限は2%〜70%の間の任意の整数である。溶液の例としては、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、あるいは95%が挙げられる。
【0044】
「非水溶性」とは、水に概して不溶性であるか、又は難溶性であることを意味する。非水溶性組成物は、1〜3%を超える濃度の水溶液をめったに形成しない。一般に、非水溶性組成物は、エタノール、クレモホール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール(IPA)、又はグリセロール、あるいは任意のその他の水混和性溶媒を含む様々な非水溶媒中に自由に溶ける。
【0045】
(詳細な説明)
本発明は、従来のホップ酸と比べて安定性が強化された、1つ以上のホップ酸アルカリ金属塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム)、アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)、及びその他の塩を含む組成物を特徴とする。アルファ及びベータ酸塩の両方を含むホップ酸アルカリ塩は、一般に、水及び水溶液に可溶である。アルカリ土類金属塩は、エタノール及びその他の非水性希釈剤に可溶である。本発明は、微生物の生存、増殖、又は繁殖を防止、軽減、抑制、又は遅延させるための抗菌性組成物の使用方法も特徴とする。一実施形態において、本発明の組成物は、食品の寿命を維持するか又は延ばすために使用する。特に、抗菌作用を持つホップ酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びその誘導体は、食品中の微生物の増殖を抑制するのに用いられる。他の実施形態において、本発明のホップ酸組成物は、工業用加工又は工業用製品における抗菌剤として用いてもよいし、家庭における抗菌剤として用いてもよい。
【0046】
(抗菌性組成物)
本発明の抗菌性組成物は、水溶性ホップ酸アルカリ金属塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム塩)及び非水溶性ホップ酸アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)が挙げられる。本発明の組成物は従来のホップ酸の分解を誘発する条件下で安定なままであるため、そのような組成物は既存のホップ製品よりも優れている。特に、6カ月から3年、又はそれ以上保存後、本発明の組成物は、製造時に存在するホップ酸の少なくとも約50%、60%、75%、80%、又は好ましくは少なくとも約90%、95%、あるいは100%を保持することが期待される。
【0047】
水溶性ホップ酸アルカリ金属塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム塩)及び非水溶性ホップ酸アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)は、一般に、約0.1%〜約95%の範囲のレベルで希釈剤又は担体中に存在する。ここに記載される本方法は、所望又は規定の抗菌効果を達成するために、化合物又は化合組成物の有効量を投与することを意図している。溶液又はスラリーを形成するために担体物質(例:マルトデキストリン、クラスターデキストリン、コーンスターチ、コーンシロップ固形物、グルコース、シクロデキストリン、アラビアゴム、カラギナン、イヌリン、部分的に水素化された大豆油、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ロジン、ヒプロメロース)又は、水、ジュース、その他の水溶液、水混和性溶媒(エタノール、クレモホール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール(IPA)、又はグリセロール、及びその他の溶媒)などの希釈剤と組み合わせることができる有効成分(例:ホップ酸アルカリ金属塩、ホップ酸アルカリ土類金属塩)の量は、製品が抑制しようとする微生物及び製品が利用される特定用途に依る。一般的な製剤は約1%〜約95%のホップ酸を含有し、範囲の下限は5〜94%の間の任意の整数であり、範囲の上限は6〜95%の間の任意の整数であり、ホップ酸は、微生物の増殖又は繁殖に耐性を持つ製品を製造する方法での使用に適する担体(例:マルトデキストリン、クラスターデキストリン、コーンスターチ、コーンシロップ固形物、グルコース、シクロデキストリン、アラビアゴム、カラギナン、イヌリン、ロジン、部分的に水素化された大豆油、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース)中に提供される。非水性の抗菌性組成物を所望する場合、本発明の抗菌剤はロジン又は部分的に水素化された大豆油と調合されるのが好ましい。そのような組成物は、例えば、水性スラリー中で有効な抗菌性組成物を徐放させるのに使用することができる。別の例において、徐放製剤における本発明の抗菌剤は飼料に混合される。さらに他の実施形態において、本発明の抗菌性組成物は、セルロース粉末に分散される。上記の実施形態の各々において、ホップ酸アルカリ金属(例:ナトリウム、カリウム、リチウム)、アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)、又はその他のホップ酸塩は、任意の1つ以上のマルトデキストリン、クラスターデキストリン、コーンスターチ、コーンシロップ固形物、グルコース、シクロデキストリン、アラビアゴム、カラギナン、イヌリン、ロジン、部分的に水素化された大豆油、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースとともに、水、エタノール、又は別の希釈剤中に分散又は溶解される。次に、大きさが1mm未満の粒子の形成を容易化するため、組成物を噴霧乾燥する。噴霧乾燥に用いる条件は、粒子の大きさが少なくとも約1μm、5μm、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、500μm、1mm、2mm、又は5mmであるように調整するのが好ましい。ホップ酸の担体に対する比は、約1:2〜1:100の間の範囲である。好ましい比としては、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、1:30、1:50、1:75、及び1:100が挙げられる。あるいは、本発明の組成物は、少なくとも約1%、10%、20%、30%、50%、60%、75%、80%、90%、又は95%のホップ酸アルカリ金属(例:ナトリウム、カリウム、リチウム)又はホップ酸アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)を希釈剤又は担体中に含む。全てのホップ酸が、金属形態である必要はない。組成物中に存在する5%〜100%の間の任意のホップ酸は、任意時間で金属形態であり、95%〜0%の間のホップ酸は遊離酸として存在する。様々な実施形態において、本発明の組成物は、90%が金属形態で、10%が酸形態で存在する場合のホップ酸と;50%が金属形態で、50%が酸形態で存在する場合のホップ酸と;10%が金属形態で、90%が酸形態で存在する場合のホップ酸を含む。
【0048】
好ましい実施形態において、製剤は、1〜95%(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25%、75%、80%、90%、95%)の間のホップ酸を担体又は希釈剤中に含む。あるいは、そのような製剤は約20%〜約80%のホップ酸を含有する。アルファ又はベータ酸を含有する組成物は、一般的な方法により製造される。製品への添加に適するホップ酸は、一般的な錠剤、カプセル剤、固体、液体、エマルション、スラリー、細粒、又は粉末として調合することができる。これらは、製剤中、製剤後でかつ保存前、又は業者又は消費者に販売する前の任意の時間に製品へ投与することに適している。上記の量よりも少ない量、又は多い量が必要となる場合がある。本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載した式の化合物のみならず、存在する場合、微生物の増殖の抑制に効果的な量の追加の抗菌剤を含む。追加の抗菌剤の例を含む参考文献は:1)Burger’s Medicinal Chemistry & Drug Discovery 6th edition,著 Alfred Burger,Donald J.Abraham,ed.,Volumes 1 〜 6,Wiley Interscience Publication,NY,2003である。
【0049】
本発明の抗菌性組成物は、微生物の抑制を所望する実質的にあらゆる用途に用いることができる。例えば、本発明の組成物は、微生物(例:グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌)の増殖、繁殖、又は生存を防止、軽減、抑制、遅延、又は安定化するのに用いる。特定の実施形態において、本発明の抗菌性組成物は食品保存料として用いる。
【0050】
(食品保存料)
ホップ酸は、化学保存料に対する魅力的な代替物である。本発明は、分解に耐性があり、かつ、改善された安定性を示すホップ酸アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を含む抗菌剤を提供するので有利である。安定性が改善されたホップ酸塩は、少なくとも約3カ月、6カ月、又は9カ月間、抗菌効果を保持し、及び/又は、分解に耐える。抗菌効果及び/又は分解耐性は、少なくとも約12カ月、18カ月、24カ月、36カ月、又はそれより長い期間維持されるのが好ましい。微生物増殖のアッセイ方法は、当業者に公知である。一実施形態において、1つ以上のホップ酸の存在下又は非存在下において、微生物増殖をアッセイにより抗菌効果を分析する。例えば、分光学的方法(例:質量分析計)、クロマトグラフィー(例:HPLC)、又は当該技術分野で公知の任意のその他の方法を用いてホップ酸の存在の有無を検出することにより、ホップ酸の分解を分析する。
【0051】
食品用において、本明細書に記載の組成物に適当な担体としては、例えば、水、果物又は野菜の主成分、果物又は野菜のジュース若しくはピューレ、野菜スープ又はブイヨンの主成分、肉又は魚の煮汁、ブイヨン、ペースト、又はその他の肉又は魚製品、乳製品、牛乳、又はチーズ食品、若しくは当該技術分野で公知の任意のその他の食品が挙げられる。本発明の抗菌性組成物は、純粋形態又は抽出したホップとして食品に添加することもできる。食品は固体、ペースト、又は液体食品であってよい。食品の例としては、全種類のソーセージ(例:牛肉、豚肉、鶏肉、七面鳥肉、魚肉など)、最高級部分及び二級部分の肉、ランチョンミート、ハム、ラム肉、ステーキ、ハンバーガー、及び鶏肉、七面鳥肉、鴨肉、鵞鳥肉を含む鶏肉のみならず、魚、及び乳製品(例:半軟質及び硬質チーズ、プロセスチーズ、及びチーズ食品)、野菜製品(例:レタス)、豆腐、コールスロー、大豆製品、牛乳、茶、ソフトドリンク、ジュース、コーヒー、調味料、シリアル、水、クッキー、ヨーグルト、チューインガム、チョコレート、又はスープなどの動物由来及び植物由来の食品が挙げられるが、これらに限定されない。食品は「非アルコール」食品であってもよく、これは、低アルコール度(例:<3%、<2%、<1%、<0.5%、<0.25%、<0.1%、<0.05%)又は非アルコール(例:実質的に0)の食品である。
【0052】
微生物の増殖の防止、軽減、又は遅延に有用なホップ酸組成物は、製品の加工前、加工中、又は加工後に製品(例:家庭用製品、工業用製品、食品)に直接添加することができる。あるいは、本発明の組成物は、販売時点前に製品と接触するか又は製品を包装するようになっている包装材料に添加される。そのような包装材料としては、ラッピング材(例:高分子、セルロース、食品用紙、又はその他のラッピング材料)、高分子フィルム、ケーシング(例:ソーセージの外被)、プラスチック容器又は箱、若しくは食品の収容に適する任意のその他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。別の方法では、製品製造後の任意の時間、及び業者又は消費者への販売時点前に、ホップ酸組成物を食品の表面に適用する。抗菌性組成物を適用する方法は当該技術分野で公知であり、粉末を振り掛ける、水性組成物中に浸すか又は浸漬する、あるいはホップ酸又はホップ酸アルカリ塩を含む粉末、水性組成物、又は任意のその他の適当な組成物を噴霧することが挙げられる。1つ以上の食品病原菌による汚染に対して、食品を保存するために本発明の抗菌性組成物を使用するのが好ましい。
【0053】
(食品病原菌)
食品病原菌、特にリステリア・モノサイトゲネシス(Lm)は、肉、加工肉、及びチーズなどの食品の汚染物質として知られる。ホップ酸は抗菌作用を有し、食品内のリステリア属及びその他の細菌の増殖を軽減するのに有用である。ホップ又はホップ抽出物は、食品内における微生物の増殖を抑制するのに使用することができる抗菌剤である。例えば、食品内におけるリステリア属の増殖を抑制するためにホップから抽出したベータ酸を6〜50ppm使用することを記載している米国特許第5,286,506号;リステリア属を抑制するために0.4〜1.6ppmと低いレベルでテトラヒドロイソフムロン及び/又はヘキサヒドロコルプロンを使用することを記載している米国特許第5,455,038号;クロストリジウム・ボツリナム、クロストリジウム・ディフィシレ、及びヘリコバクター・ピロリを抑制するのに有効なホップ抽出物を1〜100ppm使用することを記載している米国特許第6,251,461号;水系及びプロセスの流れにおける生物汚染を制御するためにホップ抽出物を約0.01〜約10,000ppm使用することを記載している米国特許第6,379,720号;及び食品内におけるグラム陽性菌を制御するためにグラム陽性の静菌性又は殺菌性化合物と組み合わせてホップ酸及びホップ酸の誘導体を使用することを記載している米国特許第6,451,365号を参照されたい。その内容全体を本明細書に組込んだものとする。
【0054】
(食中毒)
食中毒は、病原菌、カビ、ウイルス(例:コクサッキーウイルス、腸管アデノウイルス、A型肝炎、ノーウォーク及びノーウォーク様ウイルス、ロタウイルス、パルボウイルス)、及び/又はこれらの毒素により汚染された食品の摂取によって引き起こされる疾患である。腸疾患(例:嘔吐及び下痢により特徴付けられるもの)は、罹患率において呼吸器系疾患に次いで第2位である。ほぼ全てのアメリカ国民が、毎年、腸(下痢)疾患の少なくとも1つを発症しており、食品媒介疾患はこれらの疾患のおよそ3分の1に相当する。病原体汚染された食品は、何らかの感覚刺激による品質低下の兆候を示すとは限らない。細菌性食中毒は、細菌性生物による宿主への感染又は、食品若しくは宿主内の細菌によって生成された毒素の作用によって引き起こされる場合がある。本発明の組成物又は方法を用いて増殖を抑制することができる細菌は、アエロモナス属(例:アエロモナス・ハイドロフィラ)、セレウス菌、カンピロバクター属(例:カンピロバクター・ジュジュニ)、クロストリジウム属(例:ボツリヌス菌)、エシェリキア属(例:血清型0157:H7などの大腸菌)、リステリア属(例:リステリア菌)、サルモネラ属(例:サルモネラ・エンテリディティス)、赤痢菌属(例:ソンネ菌、フレキシネル菌、ボイド菌)、及びその他のグラム陰性菌、ブドウ球菌属(例:黄色ブドウ球菌)、ビブリオ属(例:ビブリオ・バルニフィカス)、エルジニア属(例:エルシニア・エンテロコリチカ)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
殺菌及び完全に加熱調理された加工食品は、加熱調理又は低温殺菌後で且つ販売時点の包装前に、リステリア・モノサイトゲネシスなどの微生物で汚染される。そのような汚染は、熱処理(すなわち、加熱調理又は低温殺菌)の後、食品表面と微生物の接触に起因する表面汚染によるものである場合がある。微生物は、浮遊(すなわち、塵埃によって運ばれる)しているか又は、加工機器などの食品が接触する表面上に存在する場合がある。リステリア汚染に特に弱いものは、鶏肉や、ウィンナソーセージ及びその他のソーセージ、チーズ、新規のアイスクリームを含む乳製品、及び魚、海産食品、並びに関連製品(例:練り魚肉)などの加工食品である。
【0056】
(洗浄用組成物)
水溶性ホップ酸アルカリ金属塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム塩)及び非水溶性ホップ酸アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)を含有する抗菌性組成物は、用途に対して水性又は非水性希釈剤の形態で用い、表面を消毒するのに使用することができる。「消毒する」とは、表面の微生物汚染を予防若しくは治療することを意味する。本発明の組成物は、無生物環境における汚染微生物を、公衆衛生法に従って安全と考えられるレベルまで減少させるので望ましい。本発明の抗菌剤は、エアロゾル、ミスト、スプレー、泡、液体、洗浄液、リンスとして、又は没水品(submerged items)、没水製品、若しくは没水表面を処理するための浴液として調合する、及び/又は、没水表面を処理するために水系に加えてもよい。従って、種々の適当な適用方法としては、例えば、注ぎ込み、噴霧、トリガー噴霧器、エアロゾル噴霧器、又は、加圧噴射剤(pressurized propellant)及び/又は凝縮ガスを含む器具による適用、ホースが取り付けられた容器から表面上に噴霧、ウェットタイプの使い捨て器具、例えば、限定されないが、本発明の組成物で濡らした不織の拭き取り繊維、布、及び/又はスポンジなどによる表面上の拭き取りが挙げられるが、これらに限定されない。適当な適用方法としては、本発明の組成物を、純型(neat form)で、又は例えば水などの適当な水性希釈剤と同時に、及び/又は、例えば水などの適当な水性希釈剤で濃縮組成物を希釈した後に、直接適用するいずれかの方法が挙げられる。
【0057】
1つの代表的な実施形態において、水溶性ホップ酸アルカリ金属塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム塩)及び非水溶性ホップ酸アルカリ土類金属塩(例:カルシウム、マグネシウム)は、すぐ使用できる溶液を調製するために、さらに希釈することができる第1の水性又は非水性希釈剤(例:エタノール)を任意に含む、成分の濃縮混合物として調合される。使用中、表面を消毒又は殺菌するために、本発明の組成物を表面に適用し、規定時間接触させて、微生物を軽減又は殺す。この接触時間の後、本発明の組成物をそのままにしておいてもよく、又は適当な手段により表面から任意に拭き取る若しくは除去してもよい。随意的に、処理された表面は水ですすぎ、処理後の本発明の組成物を除去することができる。本発明の組成物は、洗浄剤及びその他の添加物を任意に含んでもよく、従って、表面の洗浄及び抗菌処理を同時に提供する。
【0058】
抗菌性組成物は、家庭、商業、レストラン、医療、ビジネス、及び/又は屋外環境で使用することができる。抗菌性組成物を適用することができる表面としては、金属、プラスチック、石、ガラス、セラミック、塗面、壁紙、布地、敷物等から作られたものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗菌剤は、流し台、タイル、浴槽、シャワー壁、便器、台所調理台、テーブルトップ、テーブル掛け、まな板、食器、レンジ上面、オーブン、電子レンジ、冷蔵庫、壁、床、及び/又は窓のいずれかを消毒するのに用いることができる。そのような表面は、家庭、病院、及び食品製造施設によく見られる。さらに、組成物は、一般的な構造物の内及び外面に用いることができる。一般的な構造物の内及び外表面としては、航空機、自動車、浴槽、ボート、ビル、流体分散システム、家庭用器具、家庭用固定具、シャワー室、流し台、船舶、公衆便所(sanitary closet)、乗り物、配水システム、水再循環システム、及び/又はその組み合わせの外及び内面、さらに、その仕上げ面、ラミネート加工面、被覆面、及び/又は塗面が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
必要に応じて、洗浄剤又は消毒剤として用いる本発明の組成物は、1つ以上の界面活性剤の有効量と組み合わせて提供される。そのような界面活性剤としては、非イオン性、半極性、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、及び/又は両性の界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態の一態様において、界面活性剤としては、ラウリル硫酸、ラウリルエーテル硫酸、コカミドプロピルベタイン、アルキルポリグリコシド、及び/又はアミンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。改良洗浄用組成物中の界面活性剤、及び/又は、改良洗浄用組成物と組み合わせて用いる界面活性剤の含有量は、約0.1〜2重量%である。本実施形態のさらに別の態様において、改良洗浄用組成物中の界面活性剤、及び/又は、改良洗浄用組成物と組み合わせて用いる界面活性剤の含有量は、約0.15〜1.5重量%である。本実施形態のさらに別の態様において、改良洗浄用組成物中の界面活性剤、及び/又は、改良洗浄用組成物と組み合わせて用いる界面活性剤の含有量は、約0.2〜1.5重量%である。本実施形態の別の態様において、改良洗浄用組成物中の界面活性剤、及び/又は、改良洗浄用組成物と組み合わせて用いる界面活性剤の含有量は、約0.2〜1.25重量%である。本実施形態のさらに別の態様において、界面活性剤の含有量は約0.5〜1.25重量%である。本実施形態のさらに別の態様において、界面活性剤の含有量は約0.1〜1重量%である。本実施形態のさらに別の態様において、界面活性剤の含有量は約0.15〜0.8重量%である。本実施形態の別の態様において、界面活性剤の含有量は約0.2〜0.4重量%である。本実施形態のさらに別の態様において、界面活性剤の含有量は約0.5重量%未満である。
【0060】
洗浄用又は消毒用組成物には、一般に水が挙げられる。改良洗浄用組成物が、液体で、水性の、すぐに使用できる洗浄剤である場合、改良洗浄用組成物の含水量は、一般に、改良洗浄用組成物の50重量%超である。一般に、液体の、すぐに使用できる改良洗浄用組成物は少なくとも約80重量%の水を含むが;それよりも高い又は低い含水量のものを使用することができる。
【0061】
1つ以上の追加の抗菌化合物は、改良洗浄用組成物中に含め、及び/又は、改良洗浄用組成物と組み合わせて使用して、洗浄用組成物の殺菌効力を高めることができる。そのような抗菌化合物としては、グリシン、酢酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ε−ポリリジン、しらこ蛋白、リゾチーム、又は任意の植物由来の抗菌成分、アルコール、過酸化物、ホウ酸及びホウ酸塩、塩素系炭化水素、有機金属、ハロゲン放出化合物、水銀化合物、金属塩、松根油、精油、有機硫黄化合物、ヨード化合物、硝酸銀及びその他の銀化合物、第四級リン酸化合物、及び/又はフェノール類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
(吸収材料)
本発明の抗菌剤は、吸収材料及び/又は吸着材料と組み合わせて用いることができる。本発明の抗菌剤を含む材料は、体液、分泌物、又は排泄物などの、微生物で汚染されているか又は微生物によって汚染されやすい流体の吸収に適している。体液、分泌物、又は排泄物としては、血液、尿、唾液、漿液、滑液、胃液分泌、脳脊髄液、汗、涙液、胆汁、糜粥、粘液、硝子体液、リンパ液、傷からの浸出液、大便、血液(例:月経血)、及び精液が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明の抗菌性組成物は、創傷包帯、医療用スポンジ、止血用品、鼻止血用品、ガーゼ付絆創膏、創傷用パッキン、血管内閉鎖用パッキン、血管外閉鎖用包帯、膨潤性吸収用品、繊維性創傷用パッキン用品、又は女性生理用品としての使用に適する吸収性の繊維、若しくは非繊維材料に組み込まれる。
【0063】
(ホップ誘導体)
ホップ誘導体は、ホップ植物から(天然の生合成過程(例:生物代謝(例:哺乳類、植物、細菌))、又は、人の介入を用いた合成過程(例:化学合成)のいずれかを通して)化学的に誘導される化合物である。本発明の組成物は、ホップ由来の1つ以上の化合物を含む。特に興味深いのは、ホップ酸である。ホップは、2つの主要な有機酸のクラスである、フムロン(アルファ酸としても知られる)及びルプロン(ベータ酸としても知られる)を含む。ホップ酸は、ビール製造に用いられるホップの苦味酸成分である。アルファ酸には、コフムロン、n−フムロン、及びアドフムロンの3つの主要な類似体があり、ベータ酸には、コルプロン、ルプロン、及びアドルプロンの3つの主要な類似体がある。アルファ酸及びベータ酸は、天然のホップから、精製により調製することができ、従来の方法に従って化学合成により調製することもできる。
【0064】
ホップ誘導体の例としては、ローイソアルファ酸、イソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸、及びヘキサヒドロイソアルファ酸が挙げられる。本明細書で使用する「イソアルファ酸」という用語は、ホップ植物製品から単離し、その後、異性化されている化合物のことを言う。アルファ酸の異性化は、熱的に、例えば、沸騰により生じることができる。イソアルファ酸の例としては、イソフムロン、イソコフムロン、及びイソアドフムロンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「ローイソアルファ酸」という用語は、ホップ植物製品から単離し、その後、異性化し、還元されている(例:水素化ホウ素ナトリウムを用いて)、シス及びトランス型を含むアルファ酸のことを言う。ローイソアルファ酸の例としては、ローイソフムロン、ローイソコフムロン、及びローアドフムロンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「テトラヒドロイソアルファ酸」という用語は、イソアルファ酸の水素化により生成される還元イソアルファ酸のクラスのことを言う。テトラヒドロイソアルファ酸の例としては、テトラヒドロイソフムロン、テトラヒドロイソコフムロン、及びテトラヒドロアドフムロンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「ヘキサヒドロイソアルファ酸」という用語は、イソアルファ酸の水素化、及び得られたテトラヒドロイソアルファ酸の水素化ホウ素ナトリウム還元により生成される還元イソアルファ酸のクラスのことを言う。ヘキサヒドロイソアルファ酸の例としては、ヘキサヒドロイソフムロン、ヘキサヒドロイソコフムロン、及びヘキサヒドロアドフムロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
ベータ酸の例としては、ヘキサヒドロベータ酸、テトラヒドロベータ酸のみならず、Redihop(登録商標)のマグネシウム塩、並びにベータ酸のカリウム又はマグネシウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「ベータ酸」という用語は、ホップ植物製品から単離することができる化合物のことを言い、ルプロン、アドルプロン、コルプロン、テトラヒドロルプロン、テトラヒドロアドルプロン、テトラヒドロコルプロン、及びこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
ホップ誘導体の例としては、少なくとも1つの解離部分(例:エノールのOH又はフェノールのOH)を含むホップ酸(例:アルファ又はベータ酸)が挙げられる。
【0067】
アルファ酸及びベータ酸は、天然ホップから、精製により調製することができ、従来の方法に従って化学合成により調製することもできる。本明細書に記載の化合物は、当該技術分野で公知の従来の方法を用いて合成することができる。
【0068】
植物抽出物は、植物(例:ホップ)からの化合物の精製によく用いられる。抽出物は、乾燥させ、次に、乾燥材料を切断又は粉砕することにより調製することができる。「抽出物」という用語は、植物(例:薬用植物、ホップ)の必須成分の濃縮調製物のことを言う。一般に、抽出物は、植物を乾燥し、粉末化することにより調製される。次いで、浸軟、濾過、再濾過、向流抽出、タービン抽気、又は二酸化炭素超臨界(温度/圧力)抽出によって、適切に選択した溶媒(一般に超臨界であるか又は液体二酸化炭素、エタノール/水の混合物、メタノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、ヘキサン、石油エーテル、又はその他の有機溶媒)を利用して抽出処理を行なうことができる。好ましい実施形態において、本発明のホップ抽出物は、有機溶媒又は液体COを用いる当該技術分野で公知の抽出方法を用いて調製される。次いで、抽出物をさらに蒸発することで濃縮し、空気乾燥、噴霧乾燥、真空オーブン乾燥、流動層乾燥(fluid−bed drying)、又は凍結乾燥によって抽出製品を得る。
【0069】
候補化合物の化学合成には、多くの方法が知られている。そのような化合物は、当業者に公知の標準的な合成技術及び方法論を用いて、容易に入手可能な出発原料から合成することができる。本明細書に記載されている本方法によって識別される化合物の合成に有用な合成化学変換及び保護基方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野で公知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH 出版(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);及び L.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、及びその後の版に記載されているものが挙げられる。化学的に合成したアルファ酸及びベータ酸は、反応混合物から分離し、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、又は再結晶などの方法によって、さらに精製することができる。当業者には分かるように、本明細書の化合物のさらなる合成方法は、当業者には明らかになるであろう。さらに、種々の合成工程は、所望の化合物を得るために代替順序又は順に行なうことができる。
【0070】
本発明の化合物は1つ以上の不斉中心を含む場合があるため、ラセミ酸塩及びラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー及びジアステレオマー混合物として存在する。これらの化合物のそのような全ての異性体は、本発明に明示的に含まれる。本発明の化合物は多数の互変異性体で表すこともでき、そのような場合には、本発明は、本明細書に記載されている化合物の全ての互変異性体を明示的に含む。かかる化合物のそのような全ての異性体は、本発明に明示的に含まれる。本明細書に記載されている化合物の全ての結晶形態は、本発明に明示的に含まれる。本明細書で使用する、本明細書に記載されている式の化合物を含む本発明の化合物は、誘導体を含むことと定義する。誘導体とは、所望の特性を高めるために適切な官能性を付加することにより修飾される本発明の化合物が挙げられる。
【0071】
本発明の化合物は、選択的に生物学的特性を高めるために、適切な官能性を付加することにより修飾することができる。そのような修飾は、当該技術分野で公知であり、抗菌作用、溶解性、又は熱、光、若しくは酸化安定性を増すものが挙げられる。
【0072】
本発明の許容される塩としては、適切な無機及び有機塩基由来のものが挙げられる。適切な塩基由来の塩としては、限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、銀、銅を含む一価陽イオン、又は、限定されないが、マグネシウム、カルシウム、バリウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、及びカドミウムを含む二価陽イオンが挙げられる。特定の実施形態において、塩は、アルカリ金属(例:ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム)から誘導される。本発明は、本明細書に開示した化合物のあらゆる塩基性窒素を含有する基の四級化も想定している。水又は油溶性或いは分散性の生成物は、そのような四級化によって得ることができる。
【0073】
(抗菌作用のアッセイ方法)
特定の用量及び投与レジメンは、本明細書に記載されているように経験的に決められる。本発明の組成物の抗菌作用の決定方法は、当該技術分野で公知である。一実施形態において、抗菌作用は、コロニー形成単位に対するアッセイを用いて、候補抗菌剤とのインキュベーションによる生存微生物数の決定によって推定する。そのような方法は、例えば、Dattaら、Appl Environ Microbiol.1997 October;63(10):4123−4126,Rheeら、Appl Environ Microbiol.2003 May;69(5):2959−2963に記載されている。或いは、抑制性ハロアッセイ(inhibitory halo assay)にて測定したように、リステリア・モノサイトゲネシスの細菌コロニー上における抗菌剤の効果を決定することにより推定する(Dieuleveuxら、Appl Environ Microbiol.1998 Feb;64(2):800−803)。一実施形態において、微量アッセイ(microscale assay)を用いる(Barreteauら、「A rapid method for determining the antimicrobial activity of novel natural molecules」,J Food Prot.2004 Sep;67(9):1961−1964)。
【0074】
(キット)
本発明の組成物は、キットで提供することができる。本発明のキットは、食品への投与に適する形態で本発明の抗菌性組成物を含む。いくつかの実施形態において、キットは、食品への投与に適する有効量を含有する滅菌容器を含み;そのような容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック、又は当該技術分野で公知のその他の適当な容器形態であってよい。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は、食品保存料を保持するのに適するその他の材料で作製することができる。
【0075】
必要に応じて、本発明の組成物は、微生物汚染しやすい食品に投与するための取扱説明書とともに提供される。取扱説明書は、食品保存用の組成物の使用についての情報を一般に含む。他の実施形態において、取扱説明書は、組成物の語句の説明;食品に添加する組成物の濃度に関する情報;及び/又は引例の少なくとも1つが挙げられる。取扱説明書は、容器(存在する場合)上に直接印刷されていてもよく、又は、容器に貼り付けたラベルとして、或いは、容器中または容器と共に供される別紙、小冊子、カード、又はフォルダとしてであってもよい。
【0076】
(実施例)
実施例1:水溶性ベータ酸ナトリウム塩の調製
工程1:市販のホップCO抽出物(55%:アルファ酸、30%ベータ酸、10%未同定残渣)(10kg)をタンク1に入れる。CO抽出物は、ホップの天然二酸化炭素抽出により生成される。二酸化炭素は、ヘキサン又は塩化エチレン溶媒を用いて生成されたホップ抽出物中に一般に存在する残留溶媒を除去する天然の溶媒である。食品グレードKOH(100g)を脱イオン水(20L)中に溶解する。KOH溶液をタンク1に加え、混合物を55〜65℃で1時間攪拌し、その後、攪拌を停止し、2つの層を形成する。
【0077】
工程2:下水層(15L)をタンク2に移す。粗ベータ酸カリウム塩を室温に2時間冷却し、その後、セリット(0.5% wt/wt混合)を20〜30分間加える。得られた混合物を真空下でブフナー型濾過装置を通して濾過した。
【0078】
工程3:濾液(10L)をタンク3に移し、攪拌しながら70℃に加熱し、その後、混合物のpHが2〜3に達するまで30%のHSO水溶液で酸性にする。攪拌を止め、混合物を2つの層に形成させる。保存される上層(5L)は、約70%のベータ酸を含有する。
【0079】
工程4:NaOH水溶液(約9L)を上層(3L)に加え、65℃で攪拌しながらpHを10〜10.5に調整し、その後、活性炭(Norit A 200メッシュ)(2% wt/wt混合)を溶液に加え、30分間静かに攪拌する。混合物は、一晩インキュベートした後、濾過する。水性組成物中で10%のベータ酸ナトリウム塩とするため、濾液を脱イオン水で希釈する。あるいは、60メッシュの活性炭を含有するカラムの上に混合物を通過させる。
【0080】
実施例2:ホップベータ酸ナトリウム塩粉末の調製
ホップベータ酸は、以下の修飾を行い、実施例1で説明したように調製する。実施例1の工程4において、濾過後にホップ酸のマルトデキストリンに対する比が5:1〜10:1であるようにベータ酸ナトリウム塩水溶液をマルトデキストリンと混合することにより、pH10のマルトデキストリン水溶液を調製した。噴霧乾燥により溶液を乾燥させ、5〜10%のベータ酸ナトリウム塩を含有する淡黄色の粉末を得る。
【0081】
実施例3:67%EtOH溶液中のホップベータ酸ナトリウム塩の調製
ベータ酸は、以下の修飾を行い、実施例1で説明したように調製する。実施例1の工程4において、約30%のベータ酸ナトリウム塩を含有する500mlの水溶液を1000mlの100%EtOHと攪拌しながら混合し、10%のベータ酸ナトリウム塩を含有する67%の淡黄色エタノール溶液を得る。
【0082】
実施例4:90%EtOH溶液中のベータ酸ナトリウム塩の調製
約30%のベータ酸ナトリウム塩を含有する500mlの水溶液を0.1N HSOで中和する。ベータ酸を高濃度に含有する画分をpH7〜9で沈澱させる。固形物を分離し、水で3回洗浄する。固形物(200g)を1700mlの100%EtOH中に攪拌しながら溶解する。100mlのNaOH水溶液(16gのNaOHと84mlの水)をETOH溶液に攪拌しながら加え、10%のベータ酸ナトリウム塩を含有する淡黄色の透明な90%エタノール溶液を得る。
【0083】
実施例5:ホップ酸の安定性試験
ホップ酸を含有する以下の試料を75℃で0〜6日間好気条件下でインキュベートした。液体試料を0.1mlの容積中に溶解した。
1.水中のベータ酸を高濃度に含有するホップ抽出物(10%)(pH=7.0)
2.10%ベータ酸及び90%マルトデキストリンの粉末
3.5%ベータ酸Na塩及び95%マルトデキストリンの粉末
4.10%ベータ酸Na塩及び90%マルトデキストリンの粉末
5.水中の10%ベータ酸Na塩(pH=10)
6.10%ホップベータ酸Mg塩を有するホップ抽出物
【0084】
このインキュベーション後、ホップ酸の有無をアッセイした。20mgの各試料を75℃の好気条件下でインキュベーション後、試料を1mlの70%EtOH水溶液中に溶解した。溶液をメタノールで50倍希釈し、その後、希釈試料20μLを分析用の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入した。使用したHPLC条件は以下の通りであった:
温度:35℃
溶離液A:10mM 酢酸トリエチルアンモニウム/水
溶離液B:10mM 酢酸トリエチルアンモニウム/アセトニトリル
グラジエント:20分で溶離液B=30%から90%、その後、B=90%を5分間維持する
検出:ベータ酸370nm、その他の分解ピーク254nm
測定:370nmで3つのピーク(15〜17分)の曲線下領域
標品:American Society of Brewing ChemistsからのInternational Calibration Extract 2
HPLC型:ダイオードアレイ検出器を備えるAgilent HP1100シリーズ。
【0085】
表1に示すように、ベータ酸アルカリ塩(試料3、4、及び5)は、中性又は酸性条件(1、2、及び6)で中性形態のベータ酸よりも安定であった。これらの試験結果を表1にまとめる。
【0086】
強制条件下のホップベータ酸の安定性試験
【表1】

【0087】
本方法は、ホップ酸に観察された分解に対するホップ酸塩の化学的安定性の迅速な評価を提供する。75℃で6日後に観察された分解は、ホップ酸及び塩を室温で6カ月間保存した場合に予想される分解と同等である。
【0088】
実施例6:抗菌及び静菌分析
抗菌感受性試験は、液体希釈法を用いて行った。試験物質の原液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で調製した。制御条件下で成長させた培養液中に選択した微生物(1×10−4〜5×10−5CFU/ml)を含む試験ウエルに、試験物質又は賦形剤対照(vehicle control)を添加した。大腸菌、植物性乳酸菌、リステリア・モノサイトゲネシス、及び枯草菌の培養に適しているニュートリエントブロスと、黄色ブドウ球菌の培養に適しているソイビーン−カゼインダイジェスト培地を使用した。培養増殖は、1〜2日後に600nmでの吸収をモニタリングすることにより分光光度計で測定した。最小抑制濃度は、1〜2日後に微生物の増殖を完全に抑制した濃度として定義した。
【0089】
貯蔵寿命延長の分析は、液体希釈法を用いて行った。最終接種濃度は、1×10−2〜3×10−2CFU/mlであった。微生物の増殖は、2〜3日後に600nmでの吸収をモニタリングすることにより分光光度計で測定した。黄色ブドウ球菌に対しては、インキュベーションの0日、1日、2日、及び3日後に、試料を順次希釈し、ソイビーン―カゼインダイジェスト寒天培地の上に接種した。インキュベーションの後、コロニーを計測した。この分析結果を表2にまとめる。これは、ベータ酸アルカリ塩の組成物がグラム陽性菌、グラム陰性菌、及び真菌の増殖抑制に有効であったことを示す。
【0090】
種々の微生物に対するホップベータ酸アルカリ塩の抗菌作用(MICs)
【表2】

【0091】
実施例7:ローイソアルファ酸塩の調製
ローイソアルファ酸の無機塩は、当該技術分野で公知の任意の標準的な方法を用いて生成する。一実施形態において、ローイソアルファ酸は、以下の方法に従って生成する。
【0092】
空のドラムを秤に置いて、空重を量った。このドラムに、脱イオン水(75L)中のローイソアルファ酸(30%)の混合物80kgを室温で加えた。混合物を静かに攪拌し、水性スラリーを形成させた。MgSO(45kg)をスラリーに1度に加え、MgSOが均一に分散するまで、5〜10分間攪拌し続けた。10分後、反応が終了したかどうかを判断するために、少量の試料を取り出した。これは、HPLCを用いてローイソアルファ酸マグネシウム塩の存在を分析することで判断した。反応が終了すると、混合物を取り出し、脱イオン水を加えて、ローイソアルファ酸マグネシウム塩の濃度を83〜85%の含水量を有する15〜17%に調整した。次いで、標準的な方法を用いて混合物を乾燥させた。乾燥終了時、フレーク状の生成物をアルミニウム被膜のポリエチレンバックに詰め、加熱密封し、分析するまで室温で保存した。
【0093】
実施例8:ローイソアルファ酸カルシウム塩の調製
ローイソアルファ酸のカルシウム塩を調製するため、pH11の30%ローイソアルファ酸水溶液300グラムを200mLの脱イオン水と予め混合しておいたCaCl−2HO 37グラムと混合した。このスラリーを均一になるまで混合した。次に、スラリーを乾燥用トレー上に直接注ぎ入れ、乾燥させた。
【0094】
実施例9:ローイソアルファ酸リチウム塩の調製
ローイソアルファ酸のリチウム塩を調製するため、pH9の30%ローイソアルファ酸水溶液300グラムを300mLの脱イオン水と予め混合しておいたLiOH−HO 21グラムと混合した。このスラリーを均一になるまで混合した。次に、ブフナー漏斗を通してスラリーを濾過し、余分な水を除去し、乾燥用トレー上に置き、乾燥させた。
【0095】
実施例10:ローイソアルファ酸カルシウム塩の調製
ローイソアルファ酸のカルシウム塩を調製するため、pH11の30%ローイソアルファ酸水溶液300グラムを200mLの脱イオン水と予め混合しておいたCaCl−2HO 37グラムと混合した。このスラリーを均一になるまで混合した。次に、スラリーを乾燥用トレー上に直接注ぎ入れ、乾燥させた。
【0096】
実施例11:ローイソアルファ酸カリウム塩の調製
ローイソアルファ酸のカリウム塩を調製するため、pH10の30%ローイソアルファ酸水溶液300グラムを300mLの脱イオン水と予め混合しておいたKCO 35グラムと混合した。このスラリーを均一になるまで混合した。次に、スラリーを乾燥用トレー上に直接注ぎ入れ、乾燥させた。
【0097】
実施例12:テトラヒドロイソアルファ酸カルシウム塩の調製
テトラヒドロイソアルファ酸のカルシウム塩を調製するため、pH10.5の9%テトラヒドロイソアルファ酸水溶液1000グラムを100mLの脱イオン水と予め混合しておいたCaCl−2HO 42グラムと混合した。このスラリーを均一になるまで混合した。次に、ブフナー漏斗を通してスラリーを濾過し、余分な水を除去し、乾燥用トレー上に置き、乾燥させた。
【0098】
実際のところ、ホップ酸アルカリ塩(例:ナトリウム、カリウム、リチウム)、ホップ酸アルカリ土類金属塩(例:マグネシウム、カルシウム塩)、又はその他のホップ酸塩のいずれも、上述のプロセスで用いることができる。上述の実施例で述べたように、本発明は、水溶性アルカリ塩、又はアルファ酸若しくはベータ酸の非水溶性アルカリ土類金属塩の生成プロセスを提供する。実際のところ、イソアルファ酸、ローイソアルファ酸、テトラヒドロイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸、ベータ酸、ヘキサヒドロベータ酸、テトラヒドロベータ酸、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、又はその誘導体のいずれも、本発明のプロセスで用いることができる。一実施形態において、水溶液中に存在するホップ酸の濃度は5%以上50%以下の範囲である。他の実施形態において、濃度は5%以上45%以下(例:9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、及び45%)の範囲である。さらの他の実施形態において、範囲の下限は9〜49%の間のいずれかの数であり;範囲の上限は10〜50%の間のいずれかの数である。工程4のホップ酸を乾燥させて、任意の標準的な方法、又は、限定されないが、噴霧乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、鍋乾燥(pan drying)、窓乾燥(window drying)、及び凍結乾燥を含む方法を組み合わせて、塩を得ることができる。噴霧乾燥を用いるのが好ましい。
【0099】
このプロセスは、熱、光、及び酸触媒作用により分解しやすいホップ酸の塩の従来の生成方法を超える利点を提供するものである。
【0100】
本発明の化合物は、基本的に上述のような方法、かつ一般的なスキームで調製する。本明細書の変数の定義における化学基リストの記載は、リストされた基の任意の単一基又は組み合わせとして、その変数の定義を含むものである。本明細書の変数における実施形態の記載は、任意の単一実施形態、又は任意のその他の実施形態と組み合わせて、或いはその一部として、その実施形態を含むものである。別の実施形態は、本明細書のスキーム及び実施例で例示したプロセスを含む、本明細書に記載のプロセスにより作られた本明細書のいずれかの式の化合物である。本発明の別の態様は、本明細書に記載の抗菌剤として使用する本明細書のいずれかの式での化合物である。
【0101】
本明細書に引用される全ての参照文献は、印刷物、電子媒体、コンピューター可読の記憶媒体、又はその他の形態であっても、その内容全体を参照によって明示的に引用し、限定されないが、要約書、記事、ジャーナル、刊行物、テキスト、論文、インターネットウェブサイト、データベース、特許、及び特許公報が挙げられる。
【0102】
本発明をその詳細な説明と組み合わせて説明してきたが、前述の説明は本発明の範囲を限定することなく説明するためのものであり、これは、添付請求項の範囲によって定義されることを理解されたい。その他の態様、利点、及び修正物は、添付請求項の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】枯草菌(NY10−06)に対するベータ酸ナトリウム塩の静菌効果を示すグラフである。ベータ酸ナトリウム塩は、0.04〜30ppmの濃度範囲で少なくとも3日間、細菌増殖を顕著に遅らせた。
【図2】大腸菌(野生)に対するベータ酸ナトリウム塩の抗菌作用示すグラフである。ベータ酸ナトリウム塩は、0.04〜30ppmの濃度範囲の条件下で3日間、細菌増殖を著しく遅らせた。
【図3】ベータ酸ナトリウム塩及びグリシンの組み合わせが相乗的に細菌増殖を抑制することを示すグラフである。グリシンは枯草菌に対して比較的弱い作用を示すことが知られる。グリシンを単体で投与した場合、細菌増殖にほどんど効果を示さなかった(◆の点)。ベータ酸ナトリウム塩と組み合わせた場合、組み合わせにより効果の増強を示した(□の点)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を製品に接触させることを含む、前記製品内における微生物の増殖を防止又は抑制する方法。
【請求項2】
前記製品が食品、工業用製品、又は家庭用製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法を施していない製品と比べて、前記方法が、消費者によって消費されるまで品質低下することなく前記製品の保存可能な期間を延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法を施していない製品と比べて、前記方法が前記製品の貯蔵寿命を延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記期間、又は貯蔵寿命を少なくとも約9カ月、12カ月、18カ月、24カ月、又は36カ月延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記ホップ酸塩又はその誘導体の安定性を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
9カ月後に検出されるホップ酸の量が、適用した前記ホップ酸又はその誘導体の量の少なくとも75%である、請求項6に記載の方法
【請求項8】
前記ホップ酸塩が水溶性アルカリ金属塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ホップ酸塩が非水溶性アルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ホップ酸の少なくとも約1%〜90%が金属塩形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ホップ酸の少なくとも約10%〜90%が酸形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を表面に接触させることを含む、前記表面上の微生物の増殖を防止又は抑制する方法。
【請求項13】
前記方法が前記表面を洗浄、消毒又は殺菌する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面が壁、床、天井、カウンター、機械、又はその他の表面、若しくは工業、商業、又は臨床環境に存在する装置である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記工業環境が、工場又は食品加工施設である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記臨床環境が病院、診療所、クリニック、ヘルスセンター又は研究所である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
接触する前記表面が住居、学校、オフィスビル、飛行機、列車、自動車、レストラン、カフェテリア、又はデイケアセンターに存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
接触する前記表面が、壁、床、敷物、天井、カウンター、電化製品、調理容器、食品保存容器、又は調理用のその他の器具である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を身体部分に接触させることを含む、前記身体部分を消毒又は殺菌する方法。
【請求項20】
前記身体部分が皮膚、毛皮、毛髪、羊毛、羽毛、口腔、又は任意の他の器官である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記身体部分が哺乳類又は鳥類である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ホップ酸が洗肌料として調合される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記皮膚を手術準備において洗浄する、請求項22に記載の方法
【請求項24】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を食品に接触させることを含む、食品媒介疾患の防止又は抑制方法。
【請求項25】
前記食品の加工前、加工中、又は加工後に、前記ホップ酸塩を前記食品に添加する、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
前記接触により、約0.1〜60ppm又は約0.04〜30ppmのホップ酸塩を含む食品が得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を表面に接触させることを含む、浮遊微生物の増殖の防止又は抑制方法。
【請求項28】
前記ホップ酸塩がナトリウム、リチウム、及びカリウムからなる群から選択されるアルカリ金属塩である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ホップ酸アルカリ金属塩が水溶液中に提供される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ホップ酸塩が、マグネシウム又はカルシウムであるアルカリ土類金属塩である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記製品又は、表面が微生物により汚染され易い請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
従来のホップ酸と比べて、前記ホップ酸アルカリ金属塩の安定性が増した、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ホップ酸塩の適用により、少なくとも約9カ月、12カ月、18カ月、24カ月、又は36カ月間、微生物を抑制する請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記微生物が細菌、ウイルス、又は真菌である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記細菌が枯草菌、乳酸菌、アエロモナス属、セレウス菌、カンピロバクター属、クロストリジウム属、エシェリキア属、リステリア属、サルモネラ属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、ビブリオ属、エルジニア属、及びリステリア属からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細菌がリステリア・モノサイトゲネシスである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記真菌がペニシリウム・シトリナムである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ホップ酸がホップベータ酸、アルファ酸、又はその組み合わせ、若しくはその誘導体である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ホップ酸塩が水溶性又は非水溶性の固体、液体、エマルション、スラリー、又は粉末として調合される請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記粉末又は固体が、担体として、炭水化物、タンパク質、繊維、シリカ、又は植物若しくは動物由来の樹脂を含む請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記繊維担体がセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒプロメロースである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記炭水化物担体がマルトデキストリン、クラスターデキストリン、シクロデキストリン、グルコース、コーンスターチ、コーンシロップ固形物、アラビアゴム、カラギナン、又はイヌリンである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記液体が有機溶媒を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記液体が水、水混和性有機溶媒、又はその組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記水混和性有機溶媒がエタノール、クレモホール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール(IPA)、又はグリセロールを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記エマルションが、担体として非イオン性界面活性剤又は植物油を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記担体がアルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド、糖エステル、脂肪アルコール、又はその組み合わせである、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、前記製品又は表面を少なくとも1つの公知の抗菌剤と接触させることをさらに含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記公知の抗菌剤がエタノール、グリシン、酢酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ε−ポリリジン、しらこ蛋白、リゾチーム、又は任意の植物由来の抗菌成分である、請求項49に記載の方法。
【請求項50】
前記有効量が、1%〜90%のホップ酸アルカリ金属塩又はその組み合わせを含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ホップ酸金属塩がアルファ酸、ベータ酸、又はその組み合わせである、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記製品に2つ以上の金属塩を適用する、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
担体又は希釈剤中に、ホップ酸アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩、若しくはその組み合わせの有効量を含む抗菌性組成物。
【請求項54】
前記ホップ酸塩が水溶性又は非水溶性の固体、液体、エマルション、スラリー、又は粉末として調合される、請求項49に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物が0.1%〜90%のホップ酸アルカリ土類金属塩を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項56】
前記組成物が希釈剤中に存在する、請求項49に記載の組成物。
【請求項57】
前記希釈剤がエタノールである、請求項49に記載の組成物。
【請求項58】
前記組成物が水又は水溶液中に存在する、請求項49に記載の組成物。
【請求項59】
前記組成物が0.1%〜90%のホップ酸塩を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が粉末として調合される、請求項49に記載の組成物。
【請求項61】
前記粉末が、ホップベータ酸ナトリウム塩又はカリウム塩を含み、かつ、担体がマルトデキストリンである、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記組成物が1%〜90%のホップベータ酸ナトリウム塩を含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項63】
前記ホップ酸がカプセル化された脂質である、請求項49に記載の組成物。
【請求項64】
前記粉末が、担体として炭水化物、タンパク質、繊維、シリカ、又は植物若しくは動物由来の樹脂を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項65】
前記繊維がセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はヒプロメロースである、請求項49に記載の組成物。
【請求項66】
前記担体がマルトデキストリン、クラスターデキストリン、シクロデキストリン、グルコース、コーンスターチ、コーンシロップ固形物、アラビアゴム、カラギナン、又はイヌリンである、請求項49に記載の組成物。
【請求項67】
前記希釈剤が水、水混和性有機溶媒、又はその組み合わせを含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項68】
前記希釈剤がエタノール、クレモホール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール(IPA)、又はグリセロールを含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項69】
前記組成物が界面活性剤を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項70】
前記担体がアルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド、糖エステル、脂肪アルコール、又はその組み合わせである、請求項49に記載の組成物。
【請求項71】
前記組成物が少なくとも1つの公知の抗菌剤をさらに含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項72】
前記公知の抗菌剤がエタノール、グリシン、酢酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ε−ポリリジン、しらこ蛋白、リゾチーム、又は任意の植物由来の抗菌成分である、請求項49に記載の組成物。
【請求項73】
ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択されるホップ酸塩の有効量を含む吸収性成分。
【請求項74】
前記組成物が体液、分泌物、又は排泄物の吸収に適している、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記組成物が創傷包帯、医療用スポンジ、止血用品、ガーゼ付絆創膏、創傷用パッキン、血管内閉鎖用パッキン、血管外閉鎖用包帯、膨潤性吸収用品、繊維性創傷用パッキン用品、おむつ、及び女性生理用品からなる群から選択される、請求項73に記載の組成物。
【請求項76】
請求項49〜73のいずれか1項に記載の組成物に食品を接触させることによる、食品の品質低下の抑制方法。
【請求項77】
前記食品が肉、魚、野菜、穀物、及びパスタからなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記肉が鶏肉、牛肉、ラム肉、豚肉、又は食肉加工品である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記野菜が漬物である、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記穀物が生米又は調理米である、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記パスタが乾燥パスタ、生パスタ、又は調理パスタである、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記魚が生魚、調理した魚、又は魚加工品である、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記魚加工品が練り魚肉である、請求項77に記載の方法。
【請求項84】
前記食品が哺乳類又は鳥類の消費用に調合された動物飼料である、請求項77に記載の方法。
【請求項85】
有効量のホップ酸アルカリ金属塩を培地に接触させることを含む、食品内のリステリア・モノサイトゲネシスの増殖を予防する方法。
【請求項86】
前記食品が、0.1〜60ppm又は0.04〜30ppmのホップ酸アルカリ金属塩を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記接触により、約0.1〜60ppm又は0.04〜30ppmのホップ酸アルカリ金属塩を含む食品が得られる、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記食品が約4〜50ppmのホップ酸アルカリ金属塩を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
ホップ酸アルカリ金属塩を含む食品包装材料。
【請求項90】
前記包装材料が高分子フィルム、包装紙、紙、又は肉用ケーシングからなる群から選択される、請求項89に記載の食品包装材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−542262(P2009−542262A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503079(P2009−503079)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/008263
【国際公開番号】WO2007/117433
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508291489)
【Fターム(参考)】