説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】250℃以下の低温硬化により優れた耐薬品性を示す硬化膜を得ることのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂、(b)キノンジアジド化合物、(c)特定のアルコキシメチル基含有化合物、(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。


(RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、炭素数2以上の2〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁膜や薄膜トランジスタ(以下TFTと略す)基板の平坦化膜などに適したポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration Cuircuit)のパッケージの実層面積を小さくするために、パッケージ外にピンを出して接合する従来のQFP(Quad Flat Package)などの方式から、パッケージにバンプを形成し、直接基板にパッケージを接合する方式が用いられるようになってきた。このため、パッケージを形成する際に半田バンプなどを形成する必要が生じ、LSIチップを保護するポリイミドなどの絶縁材料に、耐熱性や耐薬品性が求められている。特に、半田バンプ形成ではフラックス処理と呼ばれる有機酸を用いた高温処理を行うため、従来以上の耐薬品性が求められている。
【0003】
また、最近は薄型ディスプレイの需要が高まっており、中でも有機電界発光素子ディスプレイに注目が集まっている。この発光素子は有機ガスなどに非常に弱いことから、発光素子間を絶縁する材料およびTFT基板の平坦化膜には、洗浄工程などで用いられる薬品を吸収しない、薬品処理でクラックが入らないなどの優れた耐薬品性が求められている。
【0004】
さらに、最近の半導体装置や表示装置の中には、高温での処理ができないものがある。このような用途における保護膜、絶縁膜や平坦化膜には、低温で硬化可能であることが求められる。しかし、硬化温度を低くすると、樹脂の硬化が不十分であるために耐薬品性が低下するという課題があった。
【0005】
かかる課題に対して、低温で硬化可能な材料として、これまでに、ポリベンゾオキサゾール前駆体、光酸発生剤および熱酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、低温硬化により優れた耐薬品性を示す樹脂組成物として、樹脂100重量部および熱架橋剤10〜100重量部を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、より高い耐薬品性が求められる近年、これら従来公知の樹脂組成物を低温硬化して形成された樹脂膜の耐薬品性は、なお不十分であった。
【特許文献1】国際公開第2005/109099号パンフレット
【特許文献2】特開2006−10781号公報
【特許文献3】特開2007−213032号公報
【特許文献4】特開2007−304125号公報
【特許文献5】特開2007−16214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、250℃以下の低温硬化により優れた耐薬品性を示す硬化膜を得ることのできるポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂、(b)キノンジアジド化合物、(c)一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物、(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、炭素数2以上の2〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。nは10〜10000の範囲、mおよびlは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。ただし、p+q>0である。
【0010】
【化2】

【0011】
一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、CHOR20(R20は炭素数1〜6の1価の有機基を示す)を示す。Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R〜R19はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。uは3または4を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物によれば、250℃以下の低温硬化により優れた耐薬品性を示す硬化膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂を含有する。かかる樹脂は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有する樹脂となり得るものである。好ましい例として、ポリイミド前駆体のポリアミド酸やポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドが挙げられる。環状構造を有することによって、硬化膜に優れた耐熱性および耐薬品性を付与する。ここで、主成分とは、一般式(1)中のn個の構造単位を樹脂の構造単位中50モル%以上有することを意味する。70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、炭素数2以上の2〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。nは10〜10000の範囲、mおよびlは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。ただし、p+q>0である。
【0017】
上記一般式(1)中、Rは炭素数2以上の2〜8価の有機基を示し、酸の構造成分を表している。Rが2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。Rが3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸、Rが4価となる酸としては、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族のテトラカルボン酸などを挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分は、そのまま、あるいは酸無水物、活性エステルとして用いられる。酸成分を2種以上用いてもよい。
【0018】
一般式(1)中、Rは炭素数2以上の2〜8価の有機基を示し、ジアミンの構造成分を表している。一般式(1)中のR(COOR(OH)は、得られる硬化膜の耐熱性の面から、芳香族環を有し、かつ水酸基またはカルボキシル基を有するものが好ましい。このような残基を構成するジアミンの例としては、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸、ビス(アミノヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(アミノヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(アミノヒドロキシフェニル)フルオレン、ジアミノヒドロキシジフェニルエーテル、ジアミノジヒドロキシジフェニルエーテル、ジアミノヒドロキシシクロヘキサン、ジアミノジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(ヒドロキシフェニレン)ジアミン、あるいはこれらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基で置換した化合物を挙げることができる。また、一般式(1)のR(COOR(OH)の好ましい例として、下記の構造も挙げることができる。
【0019】
【化4】

【0020】
Xは直接結合、−CH−、−C10−、−O−、−SO−、−C−または−C−を示す。
【0021】
さらに、アルカリに対する溶解性、感光性能、耐熱性を損なわない範囲で、水酸基を有していないジアミンを用いることもできる。具体的には、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノアダマンタン、ビス(アミノシクロヘキシル)プロパン、シクロヘキサンビス(メチルアミン)などを挙げることができる。
【0022】
(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂の重量平均分子量(以下、Mwという)は、アルカリ現像液への溶解性の面から、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。さらに、伸度向上の面から、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。また、数平均分子量(以下、Mnという)は50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましい。さらに、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0023】
本発明における樹脂の重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりポリスチレン換算の値として算出する値をいう。また、樹脂の構造単位の繰り返し数nは、構造単位の分子量をM、樹脂の重量平均分子量をMwとすると、n=Mw/Mである。
【0024】
本発明における樹脂には、基板に対する接着力を向上させる目的でシリコン原子含有酸二無水物および/またはシリコン原子含有ジアミンを用いることができる。具体的には、酸二無水物成分として、ジメチルシランジフタル酸、1,3−ビス(3−フタル酸)テトラメチルジシロキサンなど、ジアミン成分として、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アニリノ)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを挙げることができる。
【0025】
また、一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂を、モノアミノ化合物、モノ酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物により末端封止してもよい。末端封止により、得られるポジ型感光性樹脂組成物の粘度を適正な範囲に調整できるほか、酸末端の加水分解を抑制することができるため、保存安定性が向上する。末端基は不飽和炭化水素基および/または電子供与性基を有する炭素数2〜30の有機基が好ましく、得られる樹脂の耐熱性より芳香族環を有するものが好ましい。末端基が不飽和炭化水素基を有する場合、末端基中の不飽和炭化水素基が加熱硬化中に反応して架橋することにより、良好な機械特性が得られる。また、末端基が電子供与性基を有する場合、(c)成分であるアルコキシメチル基含有化合物との架橋反応が促進され、硬化後の膜の耐薬品性がより向上する。
【0026】
末端封止剤に用いられるモノアミノ化合物としては、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、3−エチニルアニリン、4−エチニルアニリン、3,4−ジエチニルアニリン、3,5−ジエチニルアニリンなどが好ましい。
【0027】
末端封止剤に用いられるモノ酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物およびモノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物などの無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸、3−エチニル安息香酸、4−エチニル安息香酸、3,4−ジエチニル安息香酸、3,5−ジエチニル安息香酸などのモノカルボン酸およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン等のジカルボン酸類のモノカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物などが好ましい。
【0028】
樹脂中に導入された末端成分は、例えば、樹脂を酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)やNMR測定することにより、容易に検出できる。また、樹脂を直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13CNMRスペクトル測定することにより、末端成分を検出することも可能である。
【0029】
(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、公知のポリアミド酸またはポリアミド酸エステルおよびポリヒドロキシアミドの製造方法に準じて製造することができ、その方法は特に限定されない。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物、末端封止剤を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン化合物、末端封止剤と縮合剤の存在下で反応させる方法、ジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン化合物、末端封止剤と反応させる方法などが挙げられる。さらに、上記の方法で得られたポリマーを、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させてろ別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって、未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
【0030】
重合反応に用いられる溶媒は、原料モノマーである酸無水物とジアミンを溶解できればよく、その種類は特に限定されないが、プロトン性溶媒が好ましい。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのアミド類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、トリエチレングリコールなどのグリコール類、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。重合溶媒量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して、好ましくは100〜1900重量部、より好ましくは150〜950重量部である。
【0031】
(b)キノンジアジド化合物
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(b)キノンジアジド化合物を含有する。キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。露光部と未露光部のコントラストの観点から、これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
ポリヒドロキシ化合物としては、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
ポリアミノ化合物としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
ポリヒドロキシポリアミノ化合物としては、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明において、キノンジアジドは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基および5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を用いることもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を併用することもできる。
【0036】
また、(b)キノンジアジド化合物の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対し、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。また、50重量部以下が好ましく、35重量部以下がより好ましい。
【0037】
本発明で用いる(b)キノンジアジド化合物の合成方法としては、例えば、5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとポリヒドロキシ化合物をトリエチルアミン存在下で反応させる方法などがある。
【0038】
(c)一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(c)一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物を含有する。これらを2種以上含有してもよい。アルコキシメチル基は150℃以上の温度領域で架橋反応を生じるため、該化合物を含有することで、後述する現像後加熱処理により架橋し、硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。また、架橋反応の温度領域が150℃以上であることで、パターン加工時のプリベーク工程での架橋反応を防ぐことができ、該化合物を含有した感光性樹脂組成物は高い感度を有する。一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物は、アルコキシメチル基を6個以上有するため、硬化膜の架橋密度が高くなり、耐薬品性が向上する。また、従来公知の熱架橋剤に比べて、熱架橋剤分子中におけるアルコキシメチル基の分散が大きいため、硬化時の架橋反応性が高く、耐薬品性が向上する。
【0039】
【化5】

【0040】
一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、CHOR20を示す。ここで、R20は炭素数1〜6の1価の有機基を示し、ポジ型感光性樹脂組成物の溶解性の点から、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R〜R19はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示し、アルキル基が好ましい。uは3または4を示す。
【0041】
(c)一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物のうち、好ましい例として以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
【化6】

【0043】
(c)一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましく、25重量部以上がさらに好ましい。25重量部以上であると架橋密度が高くなり、耐薬品性がより向上する。一方、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性、機械強度の観点から60重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、40重量部以下がさらに好ましい。
【0044】
(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤を含有する。本発明に用いる(d)成分の酸発生剤は、後述する現像後加熱により酸を発生し、(a)成分の樹脂と(c)成分のアルコキシメチル基含有化合物との架橋反応の触媒となって架橋を促進するため、低温硬化においても架橋反応が十分進行し、硬化膜の耐薬品性を飛躍的に向上させることができる。また、(a)成分の樹脂のイミド環、オキサゾール環の環化を促進するため、低温硬化においても環化反応が十分に進行し、硬化膜の耐薬品性が向上する。本発明においては、(d)成分の酸発生剤の熱分解開始温度が250℃以下であることが重要である。熱分解開始温度が250℃を超えると、低温硬化において十分な酸が発生されず、架橋反応および環化反応が十分進行せず、硬化膜の耐薬品性が低下する。トリアリールスルホニウム塩のような熱安定性に優れた酸発生剤は、分解開始温度が高く、好ましくない。また、酸発生剤の熱分解開始温度は150℃以上が好ましく、150℃以上であることでパターン加工時のプリベーク工程での酸の失活を防ぐことができる。酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸などが好ましい。
【0045】
本発明における酸発生剤の熱分解開始温度は、示差走査熱量測定により昇温速度10℃/分の条件で加熱したときの発熱ピークから求める。
【0046】
(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤としては、次に示すスルホニウム塩、スルホン酸エステルなどを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0047】
スルホニウム塩としては、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム トリフレート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリフレート、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリフレート、4−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム トリフレート、4−ヒドロキシフェニルメチル−1−ナフチルメチルスルホニウム トリフレート、4−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウム トリフレートなどが挙げられる。
【0048】
スルホン酸エステルとしては、ベンゾイントシレート、p−ニトロベンジル−9,10−エトキシアントラセン−2−スルホネート、2−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレートなどが挙げられる。
【0049】
その他、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルトリフレート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルトシレート、4−メチルフェニルスルホニルオキシイミノ−α−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル、トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ−α−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル、9−カンファースルホニルオキシイミノ−α−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル、1,8−ナフタルイミジルブタンスルホネート、1,8−ナフタルイミジル トシレート、1,8−ナフタルイミジル トリフレート、1,8−ナフタルイミジル ノナフルオロブタンスルホネートなどの酸発生剤も挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
また、一般式(3)または(4)で表される脂肪族スルホン酸化合物が特に好ましい。
【0051】
【化7】

【0052】
一般式(3)中のR21および(4)中のR22〜R23は同じでも異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12の1価の芳香族基を示す。
【0053】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
【0054】
【化8】

【0055】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
【0056】
【化9】

【0057】
(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して1重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましく、5重量部以上がさらに好ましい。この範囲であれば、(a)成分の樹脂の環化および(c)成分のアルコキシメチル基含有化合物との架橋反応がより促進され、硬化膜の耐薬品性をより向上させることができる。一方、硬化膜の電気絶縁性の観点から、20重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0058】
(e)溶剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(e)溶剤を含有する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。溶剤の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、また、好ましくは2000重量部以下、より好ましくは1500重量部以下である。
【0059】
(f)その他の添加剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、シラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、下地基板との接着性を向上させることができる。シラン化合物の具体例としては、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランや以下のシラン化合物を用いることができるがこれらに限定されない。
【0060】
【化10】

【0061】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、フェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。フェノール性水酸基を有する化合物を含有することで、得られるポジ型感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。
【0062】
また、必要に応じて上記、ポジ型感光性樹脂組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有することもできる。
【0063】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法を例示する。例えば、(a)〜(e)成分、および必要によりその他成分をガラス製のフラスコやステンレス製の容器に入れてメカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。組成物の粘度は1〜10000mPa・sが好ましい。また、異物を除去するために0.1μm〜5μmのポアサイズのフィルターで濾過してもよい。
【0064】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物(以下、感光性樹脂組成物という場合がある)を用いて耐熱性樹脂パターン(硬化膜)を形成する方法について説明する。
【0065】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板はシリコンウエハー、セラミックス類、ガリウムヒ素、金属、ガラス、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素、ITOなどが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法はスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スリットダイコーティングなどの方法が挙げられる。塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布される。
【0066】
次に、感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分〜数時間行うことが好ましい。
【0067】
次に、この感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0068】
感光性樹脂膜にパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去すればよい。現像液は、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種または2種以上添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0069】
現像後、180℃〜450℃の温度を加えて耐熱性樹脂被膜(硬化膜)に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分〜5時間実施する。硬化温度としては200〜300℃が好ましく、220〜280℃がより好ましい。また、超音波や電磁波処理により硬化させることもできる。
【0070】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜(硬化膜)は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁膜やTFT基板の平坦化膜などの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例等を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら例によって限定されるものではない。なお、実施例中のキュア膜の作製および評価は以下の方法により行った。
【0072】
酸発生剤の熱分解開始温度の測定方法
示差走査熱量測定装置(島津製作所(株)製、DSC−50)を用い、10℃/分の速度で400℃まで加熱したときの発熱ピークより、熱分解開始温度を求めた。
【0073】
感光性樹脂膜の作製
6インチシリコンウエハー上に、感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)をプリベーク後の膜厚が3μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製、塗布現像装置Mark−7)を用いて、120℃で2分プリベークすることにより、感光性樹脂膜を得た。
【0074】
膜厚の測定方法
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、プリベーク後および現像後の膜は、屈折率1.629で測定し、キュア膜は屈折率1.773で測定した。
【0075】
露光
露光機(GCA社製、i線ステッパーDSW−8570i)に、パターンの切られたレチクルをセットし、365nmの強度で露光時間を変化させて感光性樹脂膜をi線で露光した。
【0076】
現像
露光後の膜を東京エレクトロン(株)製Mark−7の現像装置を用い、水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を用いて、現像後の膜厚がプリベーク後の膜厚の90%となるよう現像を行い、ついで純水でリンス処理し、振りきり乾燥した。
【0077】
感度の算出
露光および現像後、露光部分が完全に溶出してなくなった露光量を感度とした。
【0078】
耐熱性樹脂被膜の作製
上記方法で作製した感光性樹脂膜を、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINH−21CDを用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度20ppm以下)、230℃で1時間熱処理し、硬化膜(耐熱性樹脂被膜)を得た。
【0079】
耐薬品性の評価
上記方法で作製した硬化膜を、東京応化(株)製剥離液TOK−106に60℃で10分間浸漬処理を行った。処理後の膜について、光学顕微鏡を用いてクラックの有無を評価した。また、処理前後の膜厚を測定し、膜減り量を求めた。
【0080】
<合成例1> ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)の合成
9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0081】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)を得た。
【0082】
【化11】

【0083】
<合成例2> 耐熱性樹脂前駆体(ポリマーA)の合成
乾燥窒素気流下、合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)14.5g(0.024モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)0.37g(0.002モル)をN−メチルピロリドン(NMP)80gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)9.31g(0.030モル)をNMP10gとともに加えて、40℃で1時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−エチニルアニリン0.47g(0.004モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N,N’−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール5.95g(0.05モル)をNMP15gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し耐熱性樹脂前駆体のポリマーAを得た。
【0084】
<合成例3> 耐熱性樹脂前駆体(ポリマーB)の合成
末端封止剤として、4−エチニルアニリン0.47g(0.004モル)のかわりに3−アミノフェノール0.44g(0.004モル)を用い、N,N’−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール量を5.95g(0.05モル)から7.14g(0.06モル)に変更した以外は合成例2と同様にして、耐熱性樹脂前駆体のポリマーBを得た。
【0085】
<合成例4> 耐熱性樹脂前駆体(ポリマーC)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF18.3g(0.05モル)をNMP50g、グリシジルメチルエーテル26.4g(0.3モル)に溶解させ、溶液の温度を−15℃まで冷却した。ここにジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド14.7g(0.05モル)をγ−ブチロラクトン25gに溶解させた溶液を内部の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、6時間−15℃で撹拌を続けた。反応終了後、溶液を水3Lに投入して白色の沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し耐熱性樹脂前駆体のポリマーCを得た。
【0086】
<合成例5> キノンジアジド化合物(b−1)の合成
乾燥窒素気流下、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル−1)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学工業(株)製、TrisP−PA)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.10モル)、4−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド13.43g(0.05モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させた。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(b−1)を得た。
【0087】
【化12】

【0088】
<合成例6> アルコキシメチル基含有化合物の合成
本州化学工業(株)製、TrisP−PA 169.6g(0.4モル)を、水酸化ナトリウム80g(2.0モル)を純水800gに溶解させた溶液に溶解させた。完全に溶解させた後、20〜25℃で36〜38%のホルマリン水溶液686gを2時間かけて滴下した。その後20〜25℃で17時間撹拌した。これに硫酸98gと水552gを加えて中和を行い、そのまま2日間放置した。放置後に溶液に生じた針状の白色結晶をろ過で集め、水100mLで洗浄した。この白色結晶を50℃で48時間真空乾燥した。
【0089】
得られた白色結晶を、島津製作所(株)製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にアセトニトリル/水=70/30を用い、254nmで分析したところ、出発原料は完全に消失し、純度88%であることがわかった。さらに、重溶媒にDMSO−d6を用いてNMR(日本電子(株)製、GX−270)により分析したところ、ヘキサメチロール化したTrisP−PAであることがわかった。
【0090】
次にこのようにして得た化合物をメタノール300mLに溶解させ、硫酸2gを加えて室温で24時間撹拌した。この溶液にアニオン型イオン交換樹脂(ROhm and Haas社製、アンバーリストIRA96SB)15gを加え1時間撹拌し、ろ過によりイオン交換樹脂を除いた。その後、乳酸エチル500mLを加え、ロータリーエバポレーターでメタノールを除き、乳酸エチル溶液にした。この溶液を室温で2日間放置したところ、白色結晶が生じた。得られた白色結晶を液体クロマトグラフィー法により調べると、純度98%のTrisP−PAのヘキサメトキシメチロール化合物(HMOM−TrisPPA)であった。
【0091】
<合成例7> アルコキシメチル基含有化合物の合成
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(本州化学工業(株)製、TrisP−HAP)103.2g(0.4モル)を、水酸化ナトリウム80g(2.0モル)を純水800gに溶解させた溶液に溶解させた。完全に溶解させた後、20〜25℃で36〜38%のホルマリン水溶液686gを2時間かけて滴下した。その後20〜25℃で17時間撹拌した。これに硫酸98gと水552gを加えて中和を行い、そのまま2日間放置した。放置後に溶液に生じた針状の白色結晶をろ過で集め、水100mLで洗浄した。この白色結晶を50℃で48時間真空乾燥した。
【0092】
得られた白色結晶を島津製作所(株)製の高速液体クロマトグラフィーで、カラムにODSを、展開溶媒にアセトニトリル/水=70/30を用い、254nmで分析したところ、出発原料は完全に消失し、純度92%であることがわかった。さらに、重溶媒にDMSO−d6を用いてNMR(日本電子(株)製、GX−270)により分析したところ、ヘキサメチロール化したTrisP−HAPであることがわかった。
【0093】
次にこのようにして得た化合物をエタノール300mLに溶解させ、硫酸2gを加えて室温で24時間撹拌した。この溶液にアニオン型イオン交換樹脂(ROhm and Haas社製、アンバーリストIRA96SB)15gを加え1時間撹拌し、ろ過によりイオン交換樹脂を除いた。その後、乳酸エチル500mLを加え、ロータリーエバポレーターでエタノールを除き、乳酸エチル溶液にした。この溶液を室温で2日間放置したところ、白色結晶が生じた。得られた白色結晶を液体クロマトグラフィー法により調べると、純度99%のTrisP−HAPのヘキサエトキシメチロール化合物(HEOM−TPHAP)であった。
【0094】
実施例および比較例で使用したアルコキシメチル基含有化合物、メチロール基含有化合物は以下の通りである。
【0095】
【化13】

【0096】
実施例および比較例で使用した酸発生剤は以下の通りである。
【0097】
【化14】

【0098】
<実施例1>
(a)成分である合成例2で得られたポリマーA10gに対し、(b)成分である合成例5で得られたキノンジアジド化合物[b−1]2.0g、(c)成分であるHMOM−TPHAP15g(商品名、本州化学工業(株)製、20%のγ−ブチロラクトン溶液として、架橋剤量3.0g)および(d)成分であるPAG−103(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、熱分解開始温度:155℃)0.7gを(e)成分である乳酸エチル35gに溶解して感光性樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜で耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.003μmであった。膜表面にクラックは見られず、良好な耐薬品性を示した。また、感度は85mJ/cmであった。
【0099】
<比較例1>
実施例1において(d)成分であるPAG−103を加えなかった以外は実施例1と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.048μmであり、膜表面にクラックは見られなかった。また、感度は80mJ/cmであった。
【0100】
<比較例2>
実施例1において(c)成分であるHMOM−TPHAPを加えずに溶媒としてγ−ブチロラクトンを12g加えた以外は実施例1と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜は全て溶解してしまった。また、感度は195mJ/cmであった。
【0101】
<比較例3>
実施例1において(d)成分をWPAG−505(商品名、和光純薬(株)製、熱分解開始温度:371℃)0.7gとした以外は実施例1と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.019μmであったが、膜表面にクラックが見られた。また、感度は75mJ/cmであった。
【0102】
<比較例4>
実施例1において(c)成分を“ニカラック(登録商標)”MX−270(商品名、(株)三和ケミカル製)4.0gとし、溶媒としてγ−ブチロラクトン12gを加えた以外は実施例1と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜で耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.280μmであり、膜表面にクラックが見られた。また、感度は100mJ/cmであった。
【0103】
<比較例5>
実施例1において(c)成分をTML−BPAF−MF(商品名、本州化学工業(株)製)3.0gとし、溶媒としてγ−ブチロラクトン12gを加えた以外は実施例1と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は1.165μmであった。膜表面にクラックは見られなかった。また、感度は95mJ/cmであった。
【0104】
<実施例2>
(a)成分である合成例3で得られたポリマーB10gに対し、(b)成分である合成例5で得られたキノンジアジド化合物[b−1]2.0g、(c)成分であるHMOM−TPHAP15g(商品名、本州化学工業(株)製、20%のγ−ブチロラクトン溶液として、架橋剤量3.0g)および(d)成分であるPAG−108(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、熱分解開始温度:152℃)1.0gを(e)成分である乳酸エチル35gに溶解して感光性樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜で耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.000μmであった。膜表面にクラックは見られず、良好な耐薬品性を示した。また、感度は80mJ/cmであった。
【0105】
<比較例6>
実施例2において(d)成分であるPAG−108を加えなかった以外は実施例2と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.040μmであった。膜表面にクラックは見られなかった。感度は75mJ/cmであった。
【0106】
<実施例3>
(a)成分である合成例2で得られたポリマーA10gに対し、(b)成分であるキノンジアジド化合物[b−1]2.0g、(c)成分である合成例6で得られたHMOM−TrisP−PA3.0gおよび(d)成分であるPAG−203(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、熱分解開始温度:204℃)0.7gを(e)成分であるγ−ブチロラクトン12gおよび乳酸エチル35gに溶解して感光性樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜で耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.009μmであった。膜表面にクラックは見られなかった。また、感度は90mJ/cmであった。
【0107】
<実施例4>
(a)成分である合成例4で得られたポリマーC10gに対し、(b)成分であるキノンジアジド化合物[b−1]2.0g、(c)成分である合成例7で得られたHEOM−TPHAP3.0gおよび(d)成分であるPAG−103(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.7gを(e)成分であるγ−ブチロラクトン12gおよび乳酸エチル35gに溶解して感光性樹脂組成物のワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜で耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.001μmであった。膜表面にクラックは見られなかった。また、感度は90mJ/cmであった。
【0108】
<比較例7>
実施例4において(d)成分であるPAG−103を加えなかった以外は実施例4と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.062μmであった。膜表面にクラックは見られなかった。また、感度は90mJ/cmであった。
【0109】
<比較例8>
実施例4において(c)成分であるHEOM−TPHAPを加えなかった以外は実施例4と同様にしてワニスを得た。このワニスを用いた硬化膜の耐薬品性評価を行ったところ、膜減り量は0.444μmであり、膜表面にはクラックが見られた。また、感度は110mJ/cmであった。
【0110】
実施例1〜4および比較例1〜8の組成、評価結果を表1に示す。
【0111】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂、(b)キノンジアジド化合物、(c)一般式(2)で表されるアルコキシメチル基含有化合物、(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、炭素数2以上の2〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。nは10〜10000の範囲、mおよびlは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。ただし、p+q>0である。)
【化2】

(一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、CHOR20(R20は炭素数1〜6の1価の有機基を示す)を示す。Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R〜R19はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。uは3または4を示す。)
【請求項2】
前記(d)熱分解開始温度が250℃以下である酸発生剤が一般式(3)または(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(一般式(3)中のR21および(4)中のR22〜R23は同じでも異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12の1価の芳香族基を示す。)

【公開番号】特開2010−44143(P2010−44143A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206678(P2008−206678)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】