説明

ポリアミドシリコーンコポリマーの製造方法

【課題】α−付加体とβ−付加体の混合物の形態である両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの有効利用。
【解決手段】(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、及び、(a2)式:R−NH(Rは一価不飽和炭化水素基を表す)で表される活性水素非保護アミンを付加反応させて得られた(A)分子鎖両末端に式:−B−NH(Bは二価炭化水素基を表す)で表される基を有する両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、
(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、並びに、
(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体
を反応させることを特徴とする、ポリアミドシリコーンポリマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド部位とポリシロキサン部位を含むポリアミドシリコーンポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドシリコーンコポリマーは化粧品用ゲル化剤、分離膜、抗血栓材料など種々の用途に使用される高強度の熱可塑性シリコーンコポリマーである。ポリアミドシリコーンコポリマーは、通常、両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、脂肪族又は芳香族ジアミン、及び、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸又はその反応性誘導体との重縮合反応によって製造される。
【0003】
前記両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、一般に、(1)シリル化アルケニルアミンを両末端Si−H封鎖ポリシロキサンに付加し、脱シリル化反応を行うか、又は、(2)シリル化アルケニルアミンをテトラメチルジシロキサンに付加してから、脱シリル化を行い、得られたジアミノジシロキサンを末端封止剤として塩基触媒による平衡重合を行って得られる。
【0004】
これらの(1)及び(2)の従来プロセスではシリル化アルケニルアミンを使用しているので、シリル化アルケニルアミンのアルケニル基の末端に両末端Si−H封鎖ポリシロキサン又はテトラメチルジシロキサンが付加したβ−付加体を得ることができ、アルケニル基の内部に両末端Si−H封鎖ポリシロキサン又はテトラメチルジシロキサンが付加したα−付加体は殆ど生成しない。
【0005】
特開平11−209385号公報には、α−付加体を多量に含むジアミノプロピルジシロキサンによって変性されたポリイミドはα−付加体を含まないジアミノプロピルジシロキサンによって変性されたポリイミドと比べて耐熱性等の性能が低下することが記載されている。したがって、これらの(1)及び(2)の従来プロセスは、特開平11−209385号公報では優れているとされる、α−付加体を含まない両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの合成には好ましいものである。しかしながら、これらの従来プロセスはいずれもシリル化−付加−脱シリル化、又は、シリル化−付加−脱シリル化−重合という極めて煩雑な工程を必要とし、生産性が低い。
【0006】
そこで、特開平2−49793号公報、及び、特表2003−508403号公報には、活性水素を保護していないアルケニルアミンを両末端Si−H封鎖ポリシロキサンに直接付加して両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを得る方法が提案されている。しかしながら、この方法では両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンがα−付加体とβ−付加体の混合物として得られてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−209385号公報
【特許文献2】特開平2−49793号公報
【特許文献3】特表2003−508403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑みて為されたものであり、α−付加体とβ−付加体の混合物の形態である両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンの有効利用を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、及び、(a2)式:R−NH(Rは一価不飽和炭化水素基を表す)で表される活性水素非保護アミンを付加反応させて得られた(A)分子鎖両末端に式:−B−NH(Bは二価炭化水素基を表す)で表される基を有する両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、
(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、並びに、
(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体
を反応させることを特徴とする、ポリアミドシリコーンポリマーの製造方法によって達成される。
【0010】
前記(a2)活性水素非保護アミンはアリルアミンであることが好ましい。
【0011】
前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体は芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸のジハロゲン化物であることが好ましい。
【0012】
前記反応は界面重縮合であることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体を、
(D)無機塩基の存在下、
(S1)水、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒中で、
10℃以上の温度で反応させることが好ましい。
【0014】
前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンは下記一般式:
【化1】

(式中、Bは上記のとおりであり;Aはそれぞれ独立して一価炭化水素基を表し、mは1以上100以下の整数を表す)で表されるものが好ましい。前記mは1以上20以下が好ましい。
【0015】
前記(S2)非プロトン性有機溶媒は、水と非混和性であることが好ましい。
【0016】
前記(D)無機塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及び、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0017】
前記(S2)非プロトン性有機溶媒は、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、及び、エーテルエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0018】
前記(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子に対する前記(a2)アミンの不飽和の当量比が1以上であることが好ましい。
【0019】
前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計質量に対する前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの質量の比が0.01〜0.6であることが好ましい。
【0020】
前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体のモル数に対する前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計モル数の比が0.8〜1.2であることが好ましい。
【0021】
前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の当量数に対する前記(D)無機塩基の当量数の比が1〜2であることが好ましい。
【0022】
前記(S1)水、及び、前記(S2)非プロトン性有機溶媒の質量比が1:10〜10:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、α−付加体とβ−付加体の混合物の形態である両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを使用してポリアミドシリコーンポリマーを得るが、このようにα−付加体を多く含む両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンから得られるポリアミドシリコーンコポリマーであっても、殆どβ−付加体のみからなる両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンから得られるポリアミドシリコーンコポリマーと物理的強度及び熱的安定性が同等であることが判明した。したがって、本発明により得られるポリアミドシリコーンポリマーは、強度及び熱安定性が求められる用途であっても好適に使用することができる。
【0024】
本発明では、α−付加体を比較的多く含む両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを使用するので、上記従来プロセス(1)及び(2)のように煩雑な工程を経て得られた、α−付加体を殆ど含まない両末端アミノ基封鎖ジオルガノポリシロキサンを使用する必要がない。そこで、本発明では、容易に実施することのできる(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、及び、(a2)R−NH(Rは一価不飽和炭化水素基を表す)で表される活性水素非保護アミンの付加反応により得られたα−付加体とβ−付加体の混合物の形態である両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンを使用してポリアミドシリコーンポリマーを得る。したがって、本発明の製造方法は生産性が高く、低コストである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明では、活性水素が保護されておらず、且つ、不飽和基を有するアミンを両末端Si−H封鎖ポリシロキサンにヒドロシリル反応によって直接付加して得られた両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンを原料として、ポリアミドシリコーンポリマーを製造する。本発明で使用される両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンはα−付加(内部付加)体とβ−付加(末端付加)体の混合物である。
【0026】
本発明者らは鋭意検討した結果、直接ヒドロシリル化法によって得られた比較的多量のα−付加体を含んでいる両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンから得られたポリアミドシリコーンポリマーの物理的強度及び熱的安定性は、従来プロセスによって得られたα−付加体を殆ど含まない両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンから得られたポリアミドシリコーンポリマーのものと同等であることを予想外に見出し、本発明に到達した。
【0027】
活性水素が保護されておらず、且つ、不飽和基を有するアミンを両末端Si−H封鎖ポリシロキサンと直接付加させて両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンを得ること自体は特願平2−49793号公報及び特表2003−508403号に記載されるように公知である。しかしながら、これを原料として用いたポリアミドシリコーンポリマーの強度及び熱安定性が従来プロセスによって得られたα−付加体を殆ど含まない両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンから得られたポリアミドシリコーンポリマーのものと同等であることは知られていない。したがって、本発明において比較的多量のα−付加体を含む両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンから得られたポリアミドシリコーンコポリマーの強度及び熱安定性が低下しないことは当業者が容易には推測し得ない全く新規な知見である。
【0028】
具体的には、本発明は、
(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、及び、(a2)式:R−NH(Rは一価不飽和炭化水素基を表す)で表される活性水素非保護アミンを付加反応させて得られた(A)分子鎖両末端に式:−B−NH(Bは二価炭化水素基を表す)で表される基を有する両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、
(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、並びに、
(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体
を反応させることを特徴とする、ポリアミドシリコーンポリマーの製造方法である。
【0029】
本発明で使用される(A)両末端アミノ基変性ジオルガノポリシロキサンは分子鎖両末端に式:−B−NH(Bは二価炭化水素基を表す)で表される基を有するジオルガノポリシロキサンである。一種類の両末端アミノ基変性ジオルガノポリシロキサンを使用してもよく、二種類以上の両末端アミノ基変性ジオルガノポリシロキサンを使用してもよい。
【0030】
二価炭化水素基としては、例えば、置換若しくは非置換の炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数6〜22のアリーレン基、又は、置換若しくは非置換の炭素数7〜22のアルキレンアリーレン基が挙げられる。置換若しくは非置換の炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基が好ましい。置換若しくは非置換の炭素数6〜22のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニレン基等が挙げられる。置換若しくは非置換の炭素数7〜22のアルキレンアリーレン基としては、例えば、ジメチレンフェニレン基等が挙げられる。
【0031】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式:
【化2】

(式中、Bは上記のとおりであり;Aはそれぞれ独立して一価炭化水素基を表し、mは1以上100以下の整数を表す)で表されるものが好ましい。
【0032】
一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等を含む有機基で置換された基が挙げられる。一価炭化水素基は、アルケニル基以外の基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又は、フェニル基が特に好ましい。
【0033】
上記一般式中、mは1以上100以下であるが、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。mが100以上になると分子中のアミド結合の割合が低下し、得られるポリマーの物理的強度が低下するおそれがある。
【0034】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンは、(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、及び、(a2)式:R−NH(Rは一価不飽和炭化水素基を表す)で表される活性水素非保護アミンを付加反応(ヒドロシリル化反応)させることによって製造される。
【0035】
(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式:
【化3】

(式中、A及びmは上記の通りである)で表されるものが好ましい。
【0036】
としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。アリル基が好ましい。したがって、(a2)活性水素非保護アミンとしてはアリルアミンが好ましい。
【0037】
上記付加反応は、通常のヒドロシリル化反応条件で実施し得る。ヒドロシリル化反応を促進させるため通常はヒドロシリル化触媒を使用するが、使用する触媒は特に制限はない。触媒としては、例えば、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などの第VIII族遷移金属又はそれらの化合物を好適に使用することができる。このような化合物の具体的な例としては、第VIII族遷移金属のクロロ錯体、オレフィン錯体、アルデヒド錯体、ケトン錯体、ボスフィン錯体、スルフィド錯体、ニトリル錯体等を挙げることができる。これらのうち、白金黒、塩化白金酸、又は、白金のオレフィン錯体、アルデヒド錯体、ケトン錯体などの白金系触媒が好ましく、白金のオレフィン錯体が特に好ましい。
【0038】
上記付加反応は無溶媒で行うことができるが、溶媒存在下でも行うことも可能である。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が例示される。
【0039】
(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子に対する(a2)活性水素非保護アミンの不飽和の当量比は1以上であることが好ましい。すなわち、(a2)アミン中の不飽和基と(a1)ジオルガノポリシロキサン中のSi−H基の当量比(不飽和基/Si−Hは1以上が好ましい。1未満の場合は付加反応が完結せず、分子鎖片末端にのみ(a2)活性水素非保護アミンが付加した生成物が副生したり、また、副反応としてアミノ基とSi−H基との脱水素縮合反応が顕著となるおそれがある。
【0040】
上記付加反応の方法としては、(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン及びヒドロシリル化触媒との混合物を加熱し、(a2)活性水素非保護アミンを徐々に滴下していく方法が好ましい。(a2)活性水素非保護アミン及びヒドロシリル化触媒との混合物を加熱し、(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサンを滴下していく方法は、アミノ基が白金に配位してヒドロシリル化触媒が失活し易くなるため好ましくない。また、(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン及び(a2)活性水素非保護アミンを混合し、加熱してからヒドロシリル化触媒を添加する方法は、付加反応が急速に進行して制御不能となるおそれがあるため好ましくない。
【0041】
上記付加反応の進行はガスクロマトグラフィー、赤外吸光分析等により確認することができる。反応の完結を確認した後、過剰の(a2)活性水素非保護アミンを加熱減圧留去することにより、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0042】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン中のα−付加体とβ−付加体の割合は核磁気共鳴分析により測定することができる。(a2)活性水素非保護アミンとしてアリルアミンを使用した場合、通常のヒドロシリル化条件ではβ付加とα付加の割合はほぼ7:3である。したがって、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン中には、両末端アミノプロピル基封鎖ポリシロキサン、片末端アミノプロピル片末端アミノ(1-メチル)エチル基封鎖ポリシロキサン及び両末端アミノ(1-メチル)エチル基封鎖ポリシロキサンの3種類の異性体が存在し、それぞれの異性体の存在割合は、ほぼ49:42:9となる。本発明では、これらの異性体を分離する必要はない。
【0043】
本発明では、このようにして得られた(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンを、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、並びに、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体と反応させる。当該反応は重縮合反応である。
【0044】
本発明で使用される(B)芳香族又は脂肪族ジアミンとしては特に制限はなく、任意のものを使用することができる。(B)芳香族又は脂肪族ジアミンとしては、通常のポリアミドの製造原料として使用されるものが好ましく、脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミンシレンジアミン等が好ましく使用され、芳香族ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2'−ジトリフルオロメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が好ましく使用される。一種類の芳香族又は脂肪族ジアミンを使用してもよく、二種類以上の芳香族又は脂肪族ジアミンを使用してもよい。芳香族ジアミンの使用が好ましい。
【0045】
本発明で使用される(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体についても特に制限はない。(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体としては、通常のポリアミドの製造原料として使用されるものが好ましく、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ゼバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく使用され、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2-クロロ−テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ターフェニルジカルボン酸、2-フロロ−テレフタル酸等が好ましく使用される。反応性誘導体も特に制限はないが、ジハロゲン化物が好ましい。ジハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物のいずれも使用可能であるが、塩化物(クロライド)が好ましい。脂肪族ジカルボン酸ジハロゲン化物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物としては、例えば、テレフタル酸ジクロライド、2-クロロ−テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ナフタレンジカルボニルクロライド、ビフェニルジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライド、2-フロロ−テレフタル酸ジクロライド等が挙げられる。一種類の芳香族ジカルボン酸又はその反応性誘導体を使用してもよく、二種類以上の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体を使用してもよい。芳香族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の使用が好ましい。
【0046】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体との反応の実施方法には特に制限はなく、通常のポリアミドシリコーンポリマーの製造に使用される方法を使うことができ、例えば、特開平1−23824号公報で提案されているような10℃未満での低温溶液重縮合法を好適に実施することができる。
【0047】
一方、(D)無機塩基の存在下、(S1)水、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒中で、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体を10℃以上の温度で重縮合(以下、ここでは「常温重縮合法」という)させてポリアミドシリコーンポリマーを製造してもよい。常温重縮合法は、特に、アラミド(芳香族ポリアミド)シリコーンポリマーの製造に好適に使用することができる。
【0048】
(D)無機塩基については特に制限はなく、任意のものを使用することができる。一種類の無機塩基を使用してもよく、二種類以上の無機塩基を使用してもよい。(D)無機塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及び、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等を好適に使用することができる。
【0049】
(S2)非プロトン性有機溶媒は、プロトン供与能を有さない有機溶媒である。非プロトン性有機溶媒としては、極性又は無極性のいずれのものであっても使用することができるが、少なくともある程度の極性を有するものが好ましい。また、前記非プロトン性有機溶媒は、水と非混和性であり、水と相分離し得るものが好ましいが、これに限定されない。(S2)非プロトン性有機溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルポキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド等を好適に使用することができる。テトラヒドロフラン、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。一種類の非プロトン性有機溶媒を使用してもよく、二種類以上の非プロトン性有機溶媒を使用してもよい。非プロトン性有機溶媒の使用により、高分子量のポリアミドシリコーンポリマーを得ることができる。
【0050】
常温重縮合法では、アルコール類、フェノール類等のプロトン性有機溶媒、並びに、エノール化して活性水素を生じるアルデヒド類、ケトン類、特にβ−ジケトン類、及び、ケトエステル類、特にβ−ケトエステル類の使用は好ましくない。したがって、これらの有機溶媒は反応系に存在しないことが好ましい。これらの有機溶媒は、芳香族ジカルボン酸又はその反応性誘導体と反応して、ポリアミドシリコーンポリマーの分子量及び物理的強度を低下させると共に、往々にして、望ましくない着色の原因となる。
【0051】
常温重縮合法では、(S1)水、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒の混合物中で、(D)無機塩基の存在下、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体を反応させるが、(S1)水、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒の混合比は任意であり、1:10〜10:1、より好ましくは20:80〜80:20、更により好ましくは30:80〜80:30の質量比で混合して使用することができる。
【0052】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、及び、(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの使用割合は任意であるが、後者の割合が多くなると、生成したポリアミドシリコーンポリマーの有機溶媒に対する溶解性が低下し、この結果、ポリアミドシリコーンポリマーの分子量が低下して脆くなるおそれがあるので、後者の割合は(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計質量の1〜60%が好ましく、1〜50%がより好ましい。すなわち、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計質量に対する(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの質量の比は0.01〜0.6の範囲が好ましく、0.01〜0.5がより好ましい。
【0053】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、及び、(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計モル数と(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体とのモル比も任意であるが、この比が1から大きく離れると、得られるポリアミドシリコーンポリマーの分子量が低下し、その物理的強度が低下するおそれがあるので、1に近い方が好ましい。したがって、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体のモル数に対する(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計モル数の比は0.8〜1.2の範囲が好ましく、0.9〜1.1の範囲がより好ましく、0.95〜1.05の範囲が特に好ましい。
【0054】
また、(D)無機塩基の使用量も任意であるが、(D)無機塩基の当量数は(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の当量数以上(即ち、化学量論量以上)であることが好ましい。化学量論量以下では中和が不十分となり、例えば、ポリアミドシリコーンポリマー中のハロゲン濃度等が高くなるおそれがあるためである。しかし、あまり多量に使用すると水洗によってポリアミドシリコーンポリマー中の無機塩基の濃度を低下させることが困難になるので、(D)無機塩基の当量数/(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の当量数の比は1以上2以下が好ましく、1以上1.5以下が更に好ましい。したがって、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の当量数に対する(D)無機塩基の当量数の比は1〜2の範囲が好ましく、1〜1.5の範囲がより好ましい。
【0055】
常温重縮合法では、(D)無機塩基の存在下での、(S1)水、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒の混合物中における(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の反応形態は特に限定されるものではないが、(D)無機塩基と(S1)水の混合物と、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒の混合物を混合し、必要に応じて加熱・冷却及び攪拌しながら10℃以上の温度を保ちつつ、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体を加える方法が好ましい。
【0056】
ここで、(D)無機塩基と(S2)水の混合物は(D)無機塩基の水溶液の形態であることが好ましい。したがって、(D)無機塩基は水溶性であることが好ましい。また、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒の混合物は、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンが(S2)非プロトン性有機溶媒に溶解した溶液の形態であることが好ましい。したがって、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、及び、(B)芳香族又は脂肪族ジアミンは(S2)非プロトン性有機溶媒への溶解性を有するものが好ましい。
【0057】
また、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体は(S2)非プロトン性有機溶媒との混合物であることが好ましい。したがって、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体は(S2)非プロトン性有機溶媒への溶解性を有するものが好ましい。この場合は(S2)非プロトン性有機溶媒の一部を(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の溶解に使用する一方で残りの(S2)非プロトン性有機溶媒を(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの溶解に使用することができる。
【0058】
(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの混合物への(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の添加により、重縮合反応が開始して、ポリアミドシリコーンポリマーが合成される。前記重縮合反応は界面重縮合であることが好ましい。したがって、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの混合物への(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の添加方法は、滴下が好ましい。
【0059】
常温重縮合法の反応温度は10℃以上であるが、更に高温であってもよい。例えば、常温重縮合法は15℃以上で実施可能であり、20℃以上で実施することが好ましく、25℃以上で実施することがより好ましい。但し、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸の反応性誘導体を使用する場合、当該反応性誘導体の単なる加水分解反応を避けて高分子量のポリマーを得るためには反応温度は40℃以下が好ましい。したがって、常温重縮合法の好ましい反応温度は10〜40℃である。このように、常温重縮合法は低温条件下で行う必要がないので、冷却装置等の特殊な製造装置が不要である。したがって、常温重縮合法はポリアミドシリコーンポリマーを簡便に且つ効率的に製造することができ、コスト的にも有利である。
【0060】
常温重縮合法では、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸の反応性誘導体の反応により、塩化水素等のハロゲン化水素が生成する可能性があるが、当該ハロゲン化水素は無機塩基によって捕捉されてNaCl等の無機塩に変換される。このように、常温重縮合法では副生成物が無機塩であるので、その処理が容易である。したがって、常温重縮合法は環境負荷が低く、また、低コストである。
【0061】
常温重縮合法では、(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び(B)芳香族又は脂肪族ジアミンへの(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸の反応性誘導体の添加後、得られた反応混合物の攪拌を継続し、定期的にpH試験紙等で反応の進行をチェックすることが好ましい。
【0062】
反応終了後、反応混合物を静置して層分離させ、必要に応じて、水と非混和性の有機溶媒を添加後、有機層の水洗を繰り返して過剰な無機塩基を除き、共沸脱水することによりポリアミドシリコーンポリマーの溶液を得ることができる。そして、必要に応じて、溶媒を加熱減圧留去等によって除去することにより、固体状のポリアミドシリコーンポリマーを得ることができる。なお、前記有機溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、反応系にもともと存在する(S2)非プロトン性有機溶媒と同一種類のものが更に好ましい。
【0063】
ところで、ポリアミドシリコーンポリマーのシリコーン含有率が低い場合、反応に使用した非プロトン性溶媒の極性が不足し、反応終了後にポリアミドシリコーンポリマーがペースト状に析出してしまうことがある。その際は、水洗を繰り返して過剰の無機塩基を除いた後、このペースト状のポリアミドシリコーンポリマーにトルエン等の非極性溶媒を添加し、共沸脱水を行って水分を除去した後、溶解力の優れたN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒を添加し、先に添加した非極性溶媒を加熱減圧留去することにより、ポリアミドシリコーンポリマーがアミド系溶媒に溶解した溶液を得ることができる。そして、必要に応じて、アミド系溶媒を加熱減圧留去することにより、固体状のポリアミドシリコーンポリマーを得ることができる。
【0064】
常温重縮合法では、反応系からのポリアミドシリコーンポリマーの回収のためにメタノール等の再沈殿溶媒を多量に反応系に添加する必要がない。したがって、常温重縮合法は環境負荷が低く、低コストで、更に、ポリアミドシリコーンポリマーの生産性にも優れる。
【0065】
本発明により得られるポリアミドシリコーンポリマーは、ポリアミド部位とシリコーン部位を含むコポリマーである。ポリアミド部位とシリコーン部位の割合は特に限定されるものではないが、ポリアミド部位:シリコーン部位の質量比で20:80〜80:20が好ましく、30:70〜70:30がより好ましい。なお、ポリアミドシリコーンコポリマーはランダムコポリマー又はブロックコポリマーのいずれでもよい。
【0066】
本発明により得られるポリアミドシリコーンポリマーは、ポリアミドシリコーンポリマーが従来利用されている用途に好適に使用することができる。例えば、本発明により得られるポリアミドシリコーンポリマーはゲル化剤として使用することができる。また、本発明により得られるポリアミドシリコーンポリマーがアラミドシリコーンポリマーである場合は、アラミド部位の高い強度とシリコーン部位の高い生体適合性、気体透過性、耐熱性等により、例えば、医療機器に使用される医療用材料、半導体デバイス等に使用される電子材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。25℃における粘度は、
【0068】
[製造例1]
25℃における粘度が8mPa・sの両末端SiH基封鎖ポリジメチルシロキサン(重合度9) 60グラム(75ミリモル)に白金と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体触媒を、白金金属量が反応混合物全体の10ppmになるようにして添加し、窒素雰囲気下で90℃に加熱した後アリルアミン10.3グラム(180ミリモル)をゆっくり滴下しつつ90〜140℃で加熱した。反応混合物のIR分析でSiH基の特性吸収が消失したことを確認した後、低沸点物を加熱減圧留去して両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンである淡黄色透明液体64グラム(収率93%)を得た。このものを29SiNMRで分析した結果α−付加体とβ−付加体の比が約30:70である異性体混合物であることが判明した。シラノール基に由来するシグナルは観察されなかった。アミノ基含有率測定値は3.51重量%(計算値:3.5重量%)であった。また、得られた両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンの異性体混合物の25℃における粘度は、14mPasであった。
【0069】
[実施例1]
4,4'-ジアミノジフェニルエーテル0.64グラム(3.2ミリモル)、製造例1で合成した両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサン(25℃における粘度:14mPas、重合度9) 10グラム(10.9ミリモル)、炭酸ナトリウム1.9グラム(17.7ミリモル)、PGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)44グラム及び水42グラムの混合物を攪拌し、水冷しながら25℃でイソフタル酸ジクロライド2.9グラム(14.1ミリモル)のPGMEA20グラム溶液を滴下した。室温で1時間攪拌後、静置して相分離させた。有機層の水洗を繰り返し、有機層を共沸脱水し、固形分濃度21.4重量%、シリコーン含有率80重量%のアラミドシリコーンコポリマーのPGMEA溶液53.5グラムを得た(収率92%)。この溶液をテフロン(登録商標)皿に移し、加熱オーブン中180℃で1時間静置し、淡褐色でほぼ透明なフィルムを得た。このフィルムの引張強度は12.8MPaであり、熱重量分析による10%熱重量損失温度Td10は446℃であった。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、製造例1で合成した両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンの代わりに実質的にα−付加体を含まない両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンとして東レ・ダウコーニング社製BY 16-853U(25℃における粘度:14mPas)を使用する他は実施例1と同様にしてシリコーン含有率80重量%のアラミドシリコーンコポリマーのPGMEA溶液を得た。この溶液をテフロン(登録商標)皿に移し、加熱オーブン中180℃で1時間静置し、淡褐色でほぼ透明なフィルムを得た。このフィルムの引張強度は12.7MPaであり、熱重量分析による10%熱重量損失温度Td10は443℃であった。
【0071】
[実施例2]
4,4'-ジアミノジフェニルエーテル1.6グラム(7.9ミリモル)、製造例1で合成した両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサン(25℃における粘度:14mPas) 5グラム(5.5ミリモル)、炭酸ナトリウム1.8グラム(16.7ミリモル)、THF(テトラヒドロフラン)30グラム及び水30グラムの混合物を攪拌し、水冷しながら25℃でイソフタル酸ジクロライド2.7グラム(13.4ミリモル)のTHF(10グラム)溶液を滴下した。25℃で1時間攪拌後、100グラムの水に投入して得た固体状のコポリマーから、トルエン30グラムとの共沸脱水で水を除き、N-メチルピロリドン(NMP)40グラムを投入してさらに共沸脱水を行い、トルエンを加熱減圧留去することで、固形分濃度16.9重量%、シリコーン含有率が60重量%のアラミドシリコーンコポリマーのNMP溶液46.9グラムを得た(収率95%)。この溶液をテフロン(登録商標)皿に移し、加熱オーブン中180℃で1時間静置し、淡褐色の白濁したフィルムを得た。このフィルムの引張強度は36MPaであり、熱重量分析による10%熱重量損失温度Td10は438℃であった。
【0072】
[比較例2]
実施例2において、製造例1で合成した両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンの代わりに実質的にα−付加体を含まない両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンとして東レ・ダウコーニング社製BY 16-853U(25℃における粘度:14mPas)を使用する他は実施例2と同様にしてシリコーン含有率60重量%のアラミドシリコーンコポリマーのNMP溶液を得た。この溶液をテフロン(登録商標)皿に移し、加熱オーブン中180℃で1時間静置し、淡褐色の白濁したフィルムを得た。このフィルムの引張強度は35.5MPaであり、熱重量分析による10%熱重量損失温度Td10は440℃であった。
【0073】
[実施例3]
1.8グラム(5.5ミリモル)のベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物にNMP40グラムを添加し、均一溶解させた。次いで水冷しつつ製造例1で合成した両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサン(25℃における粘度:14mPas) 5グラム(5.5ミリモル)を滴下した。室温で1時間攪拌した後、4グラムのトルエンを添加し、加熱共沸脱水を175℃〜180℃で2時間行い対応するポリイミドシリコーンコポリマーのNMP溶液を得た。この溶液をテフロン(登録商標)皿に移し、加熱オーブン中180℃で1時間静置し、濃褐色のフィルムを得た。このフィルムの引張強度は10.2MPaであり、熱重量分析による10%熱重量損失温度Td10は485℃であった。
【0074】
[比較例3]
製造例1で合成した両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンの代わりに実質的にα−付加体を含まない両末端アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサンとして東レ・ダウコーニング社製BY 16-853U(25℃における粘度:14mPas)を使用する他は実施例3と同様にして対応するポリイミドシリコーンコポリマーのNMP溶液を得た。この溶液をテフロン(登録商標)皿に移し、加熱オーブン中180℃で1時間静置し、濃褐色のフィルムを得た。このフィルムの引張強度は17.8MPaであり、熱重量分析による10%熱重量損失温度Td10は485℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサン、及び、(a2)式:R−NH(Rは一価不飽和炭化水素基を表す)で表される活性水素非保護アミンを付加反応させて得られた(A)分子鎖両末端に式:−B−NH(Bは二価炭化水素基を表す)で表される基を有する両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、
(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、並びに、
(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体
を反応させることを特徴とする、ポリアミドシリコーンポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記(a2)活性水素非保護アミンがアリルアミンである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体が芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸のジハロゲン化物である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応が界面重縮合であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン、前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミン、及び、前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体を、
(D)無機塩基の存在下、
(S1)水、及び、(S2)非プロトン性有機溶媒中で、
10℃以上の温度で反応させることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサンが下記一般式:
【化1】

(式中、Bは上記のとおりであり;Aはそれぞれ独立して一価炭化水素基を表し、mは1以上100以下の整数を表す)で表されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記mが1以上20以下であることを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記(S2)非プロトン性有機溶媒が、水と非混和性であることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記(D)無機塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、及び、アルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記(S2)非プロトン性有機溶媒が、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、及び、エーテルエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項5乃至9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記(a1)分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を有するジオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子に対する前記(a2)アミンの不飽和の当量比が1以上である、請求項1乃至10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計質量に対する前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの質量の比が0.01〜0.6である、請求項1乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体のモル数に対する前記(A)両末端アミノ変性ジオルガノポリシロキサン及び前記(B)芳香族又は脂肪族ジアミンの合計モル数の比が0.8〜1.2である、請求項1乃至12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記(C)芳香族若しくは脂肪族ジカルボン酸又はその反応性誘導体の当量数に対する前記(D)無機塩基の当量数の比が1〜2である、請求項5乃至13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記(S1)水、及び、前記(S2)非プロトン性有機溶媒の質量比が1:10〜10:1である、請求項5乃至14のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−79946(P2011−79946A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232772(P2009−232772)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】