説明

ポリアミド積層二軸延伸フィルム

【課題】 ガスバリア性、耐屈曲疲労性、透明性かつ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与された食品包装用に適するポリアミド積層二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 下記(a)層と、(b)層及び/又は(c)層からなる。
(a)層:m−及び/又はp−キシリレンジアミンと、脂肪族ジカルボン酸とから得られる半芳香族ポリアミド(A)を含む層。
(b)層:脂肪族ポリアミド(B1)と、下記のポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)よりなる脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)からなる層。
B2は、B1と同一のポリアミド形成単位とジカルボン酸からなるポリアミドハードセグメント(b1)と、特定のポリアルキレンオキサイドよりなるソフトセグメント(b2)と、電解質塩化合物(b3)とを含む。
(c)層:半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)とを含む層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性、耐屈曲疲労性、透明性かつ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与された食品包装用に適するポリアミド積層二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、強度、柔軟性、耐熱性、耐薬品性に優れ、更に、ガスバリア性に優れていることから、生肉、こんにゃく、漬け物等の食品用包材、医療用輸液等の医療用包材、農薬や試薬等の容器等に幅広く使用されている。しかしながら、用途によっては、ガスバリア性が必ずしも十分とは言えず、包材、容器等のガスバリア性を向上させる種々の方法が提案されている。
【0003】
ガスバリア性を向上させる方法のひとつとしては、例えば、ガスバリア性が良好な樹脂を脂肪族ポリアミドと積層する方法が挙げられる。中でも、m−及び/又はp−キシリレンジアミンと炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を主成分とする半芳香族ポリアミドを使用した方法が数多く検討されている。
【0004】
例えば特許文献1及び特許文献2には、繰り返し屈曲疲労による屈曲疲労性を改良したポリアミド積層フィルムに関して開示されている。
【0005】
一方、ポリアミド樹脂よりなるフィルムは、電気抵抗率が高く、帯電しやすいため、帯電した電気を漏洩することができず、表面への埃の付着や、内容物充填時のトラブル、印刷時のヒケ等、静電気に起因する種々の障害が発生する。近年、これらフィルムを用いた二次加工時、加工速度の高速化に伴い、帯電防止性不足による問題が顕在化しており、改善を望まれるところである。
【0006】
帯電防止性を改良する方法として、界面活性剤等を表面に塗布又は、ポリアルキレンオキサイド等の吸水性化合物やアルキルアミン等の低分子型帯電防止剤を樹脂に練り込む方法が知られている。しかしながら、界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドやアルキルアミン等の帯電防止剤は、初期の帯電防止性には優れるもののブリードアウトしやすく且つ耐水性が悪いため、長期間に亘り帯電防止性効果が持続しないという欠点を有している。また、湿度に対する、帯電防止発現効果の依存性が非常に大きい。
【0007】
例えば特許文献3及び特許文献4には、帯電防止効果の持続性を向上させ、帯電防止発現効果の湿度依存性を低減する方法として、ポリアミドとポリオキシアルキレングリコールを主成分とするポリエーテルエステルアミドエラストマーを、熱可塑性樹脂に配合する方法が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平05−000492号公報、
【特許文献2】特開平05−064868号公報
【特許文献3】特開昭60−023435号公報
【特許文献4】特開昭60−170646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ガスバリア性、耐屈曲疲労性、透明性かつ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与され、それぞれの性能バランスの適正化が図られたポリアミド積層二軸延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、下記の(a)層と、下記の(b)層及び下記の(c)層とから選択される少なくとも1層とを積層した少なくとも2層の積層フィルムを二軸延伸したことを特徴とするポリアミド積層二軸延伸フィルムを提供すること。
(a)層: m−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有する半芳香族ポリアミド(A)を含む層。
(b)層: 脂肪族ポリアミド(B1)70〜98重量%と、下記のポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)30〜2重量%よりなる脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)からなる層。
(b)層のポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2):脂肪族ポリアミド(B1)と同一のポリアミド形成単位を60重量%以上含み、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなるポリアミドハードセグメント(b1)と、
数平均分子量300〜5000の下記一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイドよりなるソフトセグメント(b2)と、
電解質塩化合物(b3)とを含むポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、
(b1)及び(b2)の合計重量(100重量%)に対して、(b3)が0.01〜10重量%含まれているポリエーテルエステルアミドエラストマー。
【0011】
【化1】

(式中、Qは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
(c)層: 半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)とを含む層。
【0012】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムの好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
[1]脂肪族ポリアミド(B1)は、カプロラクタム、ドデカンラクタム、12−アミノドデカン酸及びヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩の群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成単位からなる単独重合体或いはこれらの共重合体であること。
[2]ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のポリアミドハードセグメント(b1)のジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸であること。
[3]ソフトセグメント(b2)のポリアルキレンオキサイドが、一般式(1)のQが2及び/又は3のアルキレン基であること。
[4]ポリアミド積層二軸延伸フィルムは、両外層が(b)層及び(c)層から選択される層であり、少なくとも3層であること。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、ガスバリア性、耐屈曲疲労性、透明性かつ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与され、それぞれの性能バランスの適正化が図られている。よって、酸素による内容物の変質を嫌う食品包装用や医療、薬品包装用フィルムとして有用であるとともに、静電気に起因する問題のため、今まで制限されてきた使用範囲が拡大することとなり、その利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(a)層の半芳香族ポリアミド(A)は、m−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有する半芳香族ポリアミドである。
【0015】
半芳香族ポリアミド(A)は、m−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%〜100モル%の範囲で含有するものである。半芳香族ポリアミド(A)の分子鎖中における上記特定のポリアミド構成単位の割合が70モル%未満であると、得られる積層二軸延伸フィルムの酸素ガスバリア性が低下し、例えば温度25℃、相対湿度65%条件下で15cc/(m・24h・atm)以下のものが得られにくいために好ましくない。
【0016】
炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、2−メチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2,4/2,4,4−トリメチルアジピン酸、2−ブチルスベリン酸から誘導される単位が挙げられる。上記脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位の中でも、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸から誘導される単位が好ましく、アジピン酸から誘導される単位がより好ましい。
半芳香族ポリアミド(A)はm−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含む限り、前記ポリアミド構成単位を除く他のポリアミド構成単位を共重合することも可能である。
半芳香族ポリアミド(A)において、m−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリアミド構成単位を除く他のポリアミド構成単位としては、キシリレンジアミンから誘導される単位以外のジアミン単位、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位以外のジカルボン酸単位及びその他の単位が挙げられる。
キシリレンジアミンから誘導される単位以外のジアミン単位としては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、p−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼン等の芳香族ジアミンからなる単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位以外のジカルボン酸単位としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、トリデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸からなる単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
その他の単位としては、カプロラクタム等のラクタム、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等のアミノカルボン酸等からなる単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
半芳香族ポリアミド(A)の具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンピメラミド(ポリアミドMXD7)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセパカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)等の単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンスペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンドデカンジアミド共重合体等の共重合体が挙げられる。
【0018】
半芳香族ポリアミド(A)のJIS K−6920に準じて測定した相対粘度は、1.8〜3.5であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、得られるフィルムの機械的性質が低くなる場合がある。また、相対粘度が前記の値を超えると、溶融時の粘度が高くなり、フィルムの成形が困難となる場合がある。
【0019】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)は、脂肪族ポリアミド(B1)70〜98重量%及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)30〜2重量%とを含む組成物、好ましくは脂肪族ポリアミド(B1)75〜97重量%及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)25〜3重量%とを含む組成物、より好ましくは脂肪族ポリアミド(B1)80〜97重量%及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)20〜3重量%とを含む組成物(脂肪族ポリアミド(B1)とポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)との合計重量は、100重量%である)である。
【0020】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)の脂肪族ポリアミド(B1)は、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有し、脂肪族ポリアミド形成単位よりなる。
脂肪族ポリアミド(B1)は、ラクタム、アミノカルボン酸、及び/又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得ることができる。
【0021】
脂肪族ポリアミド(B1)のラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
脂肪族ポリアミド(B1)のアミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
脂肪族ポリアミド(B1)のナイロン塩を構成する脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
脂肪族ポリアミド(B1)のナイロン塩を構成する脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
脂肪族ポリアミド(B1)の具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンウンデカミド(ポリアミド911)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)等の単独重合体やこれらを形成する原料モノマーを数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
脂肪族ポリアミド(B1)は、カプロラクタム、ドデカンラクタム、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩の群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成単位からなる単独重合体或いは共重合体であることが好ましく、すなわち、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリアミド6/66共重合体(ポリアミド6とポリアミド66の共重合体、以下、共重合体は同様に記載)、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体が好ましい。
【0027】
脂肪族ポリアミド(B1)のJIS K−6920に準じて測定した相対粘度は、2.0〜5.0であることが好ましく、2.5〜4.5であることがより好ましい。脂肪族ポリアミド(B1)の相対粘度が前記の値未満であると、得られるフィルムの機械的性質が低くなる場合がある。また、脂肪族ポリアミド(B1)の相対粘度が前記の値を超えると、溶融時の粘度が高くなり、フィルムの成形が困難となる場合がある。
【0028】
なお、脂肪族ポリアミド(B1)の末端基の種類及びその濃度や分子量分布には特別の制約は無く、分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等のアミンや酢酸、ステアリン酸、安息香酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸が挙げられる。これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミドの相対粘度が前記の範囲になるように、適宜決められる。
【0029】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)のポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)は、脂肪族ポリアミド(B1)と同一のポリアミド形成単位を60重量%以上含み、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなるポリアミドハードセグメント(b1)と、
数平均分子量300〜5000の下記一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイドよりなるソフトセグメント(b2)と、
電解質塩化合物(b3)とを含むポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、
(b1)、(b2)及び(b3)の合計重量に対して、(b3)が0.01〜10重量%含まれているポリエーテルエステルアミドエラストマーである。
【0030】
【化2】

(式中、Qは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
【0031】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のポリアミドハードセグメント(b1)は、両末端基にカルボキシル基を有するポリアミドであり、脂肪族ポリアミド(B1)と同一のポリアミド形成単位を60重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上、特に好ましくは80重量%以上含み、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸から得られるものである。
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のポリアミドハードセグメント(b1)において、脂肪族ポリアミド(B1)と同一のポリアミド形成単位とは、前記のラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とからなるナイロン塩からなる単位が挙げられる。
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のポリアミドハードセグメント(b1)において、脂肪族ポリアミド(B1)と同一のポリアミド形成単位を60重量%以上含むことにより透明性に優れるフィルムが得られる。
【0032】
ポリアミドハードセグメント(b1)中のジカルボン酸は、分子量調整剤として使用し、この存在下に上記ポリアミド形成単位を常法により開環重合あるいは重縮合させることによって両末端カルボキシル基を有するポリアミドが得られる。ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4/1,5/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウム等の3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムがより好ましい。
【0033】
ポリアミドハードセグメント(b1)の数平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましい。数平均分子量が前記の値未満であるとポリエーテルエステルアミドエラストマー自体の耐熱性が低下する場合があり、前記の値を超えると、反応性が低下するためポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)製造時に多大な時間を要する場合がある。
【0034】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のソフトセグメント(b2)は、一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイド化合物である。
一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイド化合物としては、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイド(ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイドが挙げられる。これは1種又は2種以上を用いてもよく、例えば、一般式(1)のQが炭素数2と炭素数3とを含む化合物、一般式(1)のQが炭素数2と炭素数4とを含む化合物、一般式(1)のQが炭素数3と炭素数4とを含む化合物等が挙げられる。これらの中でも、エチレンオキサイドが、制電性の観点から好ましい。
【0035】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のソフトセグメント(b2)の数平均分子量は300〜5000であり、500〜3000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましい。ソフトセグメント(b2)の数平均分子量が前記の値未満であると、帯電防止性が不十分となり、前記の値を超えると、反応性が低下するためポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)製造時に多大な時間を要する。
【0036】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)において、ソフトセグメント(b2)の含有割合は、ポリアミドハードセグメント(b1)とソフトセグメント(b2)の合計重量100重量%に対して、20〜80重量%であることが好ましく、25〜75重量%であることがより好ましい。ソフトセグメント(b2)の含有量が前記の値未満であると、帯電防止性が劣る場合があり、前記の値を超えると、耐熱性が低下する場合がある。
【0037】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)の製法は特に限定されるものではないが、製法の一例を示すと、
製法1:ポリアミド形成単位とジカルボン酸を反応させて(b1)を形成せしめ、これに(b2)を加えて、高温、減圧下で重合反応を行う方法、
製法2:ポリアミド形成単位とジカルボン酸と(b2)を同時に反応槽に仕込み、水の存在下又は非存在下に、高温で加圧反応させることによって中間体を生成させ、その後減圧下で(b1)と(b2)との重合反応を行う方法等が挙げられる。
【0038】
上記の重合反応には、通常、公知のエステル化触媒が使用される。該触媒としては、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、モノブチルスズオキシド等のスズ系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、テトラブチルジルコネート等のジルコニウム系触媒、酢酸ジルコニル、酢酸亜鉛等の有機酸金属塩系触媒等が挙げられる。触媒の使用量は、(b1)と(b2)の合計量に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0039】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)の相対粘度(0.5重量%、m−クレゾール溶液、25℃)は、1.2〜3.0であることが好ましく、1.3〜2.5であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、耐熱性に劣る場合があり、前記の値を超えると成形性が低下する場合がある。
【0040】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)の電解質塩化合物(b3)は、本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムの耐屈曲疲労性を低下させることなく、湿度依存性がほとんどなく、かつ優れた帯電防止性能を付与することができる成分である。
電解質塩化合物(b3)は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンと、イオン解離可能なアニオンとによって構成される金属塩成分である。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、イオン半径の小さいナトリウム、カリウム、リチウムが好ましく、ナトリウム、リチウムがより好ましい。
【0041】
電解質塩化合物(b3)のイオン解離可能なアニオンとしては過塩素酸、過臭素酸等の過ハロゲン酸アニオン、塩素酸、臭素酸等のハロゲン酸アニオン、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンアニオン、オクチルスルホン酸、ステアリルスルホン酸等のアルキルスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸アニオン、ラウリル硫酸、エチル硫酸等のアルキル硫酸アニオン、硫酸アニオン、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸アニオン、アルキルリン酸アニオン、リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、硝酸アニオン、石炭酸アニオン、テトラフルオロホウ素、ヘキサフルオロヒ素、ヘキサフルオロリン等のハロゲン化物アニオン、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化アルキルを有する有機酸アニオン、チオシアン酸アニオン、テトラフェニルホウ素アニオン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンアニオンが好ましく、過塩素酸アニオンがより好ましい。
【0042】
電解質塩化合物(b3)の具体例としては、過塩素酸リチウムLiClO、過塩素酸ナトリウムNaClO、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLi(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLi・N(CF3SO、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムNa・N(CFSO、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムLi・C(CFSO、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンナトリウムNa・C(CFSOが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンナトリウムがさらに好ましく、過塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
【0043】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)に使用するポリマー中に電解質塩化合物(b3)を添加する方法としては、組成物中に効果的に分散させるため、ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)に予め分散させておくことが望ましく、特にポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)の製造時に予め添加し分散させることことが望ましい。ここで、電解質塩化合物(b3)の存在下にポリアミドエラストマーを製造するには、該エラストマーの重合前、重合中、あるいは重合後エラストマーの分離・回収前に、該電解質塩化合物を一括又は分割して添加すればよい。また、この電解質塩化合物(b3)の添加方法としては、そのまま添加してもよく、重合成分にあらかじめ溶解して添加してもよく、さらには別の溶媒に溶解して添加してもよい。
【0044】
電解質塩化合物(b3)の使用量は、(B2)ポリエーテルエステルアミドエラストマー中の(b1)と(b2)の合計量に対して、0.01〜10重量%であり、0.02〜5重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることがより好ましい。電解質塩化合物(b3)の使用量が前記の値未満であると、帯電帯電防止性能が劣り、一方、前記の値を超えると、フィルムの表面外観が劣る。特に、ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)中のソフトセグメント(b2)のポリアルキレンオキサイドのモル数に対する電解質塩化合物(b3)中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンのモル数に留意が必要である。ソフトセグメント(b2)のポリアルキレンオキサイドに対する電解質塩化合物(b3)中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンのモル数を飽和溶解濃度以下にすることが望ましい。飽和溶解濃度以上の場合はソフトセグメント(b2)のポリアルキレンオキサイドに未溶解の電解質塩化合物(b3)成分は帯電防止効果に寄与しない。
【0045】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)において、脂肪族ポリアミド(B1)とポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)の配合割合は、脂肪族ポリアミド(B1)成分とポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)成分の合計量(100重量%)に基づき、脂肪族ポリアミド(B1)成分が70〜99.5重量%及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)成分が30〜0.5重量%の範囲であり、脂肪族ポリアミド(B1)成分が75〜98重量%及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)成分が25〜2重量%の範囲であることが好ましい。ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)成分の配合割合が前記の値未満であると、帯電防止性、耐屈曲疲労性の改良効果が小さく、一方、前記の値を超えると、耐熱性、フィルムの透明性が悪化し、また、それに見合う効果の向上が期待できず、経済的に不利となる。
【0046】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)において、脂肪族ポリアミド(B1)とポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)の配合方法としては、脂肪族ポリアミド(B1)とポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)に、必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合することによって製造される。例えば、タンブラーやミキサーを用いて、成形時にポリアミド系樹脂原料を直接添加するドライブレンド法、成形時に使用する濃度で予めポリアミド系樹脂原料を一軸又は二軸の押出機を用いて溶融混練する練り込み法、あるいは予め高濃度でポリアミド系樹脂原料を一軸又は二軸の押出機を用いて練り込み、これを成形時に希釈して使用するマスターバッチ法等が挙げられる。
【0047】
(c)層は、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)とを含む層であり、バージン原料同士を混合したものであってもよいし、また、本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムを製造する際に生成する規格外のフィルムや、フィルム側端部の切断端材(耳トリム)として発生するスクラップ混合物、あるいは該スクラップ混合物にバージン原料を加えて調整したものであってもよい。
(c)層において、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)との混合割合は特に制限はないが、(A)と(B)とを重量比で7:3〜1:9の範囲内で選ぶことが好ましい。これらの混合は必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で行うことができる。タンブラーやミキサー等の公知の混合装置を使用し、各々の重合体のペレット同士を上記の混合割合になるように均一にドライブレンドする方法、各々の重合体のペレット同士を成形時に使用する濃度で予めドライブレンドし、一軸又は二軸の押出機を用いて溶融混練し混合する練り込み法等が挙げられる。
【0048】
さらに、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)は、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した水抽出量が、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。水抽出量が前記の値を超えると、ダイ付近へのオリゴマー成分の付着が著しく、これら付着物によるダイラインやフィッシュアイの発生により外観不良が生じ易い場合がある。さらに、半芳香族ポリアミド(A)及び/又は脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)は、吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると、原料を溶融押出しする際、加水分解が起こるためオリゴマーが発生し、フィルム製造が困難となるので、事前に乾燥し水分含有率が0.1重量%以下であることが好ましい。
【0049】
半芳香族ポリアミド(A)及び/又は脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)には、得られるフィルムの特性を損なわない範囲内で、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、無機質微粒子、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、着色剤や他の熱可塑性樹脂等を配合してもよい。
【0050】
本発明に係わるポリアミド積層二軸延伸フィルムは、半芳香族ポリアミド(A)を含む(a)層、脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)を含む(b)層、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)とを含む(c)層のうち、(a)層と、(b)層及び(c)層から選択される少なくとも1層とを積層した少なくとも2層の積層フィルムを二軸延伸した延伸フィルムであり、両外層が(b)層及び(c)層から選択される層である少なくとも3層の積層フィルムを二軸延伸した延伸フィルムであることが好ましい。
【0051】
ポリアミド積層二軸延伸フィルムの層構成の具体例は、
1)2層構成の場合、(a)/(c)、(a)/(b)、
2)3層構成の場合、(a)/(b)/(c)、(b)/(c)/(a)、(b)/(a)/(b)、(c)/(a)/(c)、(b)/(a)/(c)、
3)4層構成の場合、(b)/(c)/(a)/(b)、(b)/(c)/(a)/(c)、(c)/(b)/(a)/(c)、(c)/(b)/(a)/(c)等、
4)5層構成の場合、(b)/(c)/(a)/(c)/(b)、(c)/(b)/(a)/(b)/(c)、(b)/(a)/(c)/(a)/(b)、(c)/(a)/(b)/(a)/(c)等が挙げられるが、これら例示したものに限定されるものでない。
本発明の達成度、製造の簡便さを考慮すると、3層以上であることが好ましく、3〜5層とすることがより好ましい。また、積層フィルムを製造する際、規格外フィルムや切断端材(耳トリム)が発生するが、これらを使用し、経済性や資源の有効利用を考慮すると、(c)/(a)/(c)や(b)/(a)/(c)、(b)/(c)/(a)/(c)/(b)の層構成であることが好ましく、成形トラブルの少なさからは、(b)/(a)/(b)の層構成であることが好ましい。
【0052】
本発明にかかわるポリアミド積層二軸延伸フィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば共押出シート成形、共押出キャスティングフィルム成形、共押出インフレーションフィルム成形等所謂共押出法により製造することができる。
まず、半芳香族ポリアミド(A)、脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)、半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)との混合物(C)を使用して、実質的に無定型で配向していない未延伸の積層フイルムを共押出法等の方法で製造する。例えば樹脂原料を別々の押出機で溶融したものを連続的にT−ダイより押出し、キャスティングロールにて冷却しながらフィルム状に成形する共押出T−ダイ法、環状のダイスより連続的に押出し、水を接触させて冷却する共押出水冷インフレーション法、同じく環状のダイスより押出し、空気によって冷却する共押出空冷インフレーション法等を用いることができる。この際、必要に応じて、(a)層、(b)層及び/又は(c)層の各層の層間に接着層を有することが出来、接着性層の樹脂成分として無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等を用いることができる。
【0053】
延伸フィルム用原反の成形法としては特に共押出T−ダイ法、共押出水冷インフレーション法が連続延伸性の点で優れている。さらに得られた未延伸積層フイルムは延伸する。延伸方法についても公知の方法が応用できる。具体的には、(1)Tダイより溶融押出しした未延伸シートをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸法、(2)未延伸シートをテンター式同時2軸延伸機で縦横同時に同時ニ軸延伸法、(3)チューブ状に溶融押出ししたシートを気体の圧力でインフレーション式に延伸するチューブラー延伸法等によって製造できる。
【0054】
次に、未延伸積層フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)及びこれと直角方向(横方向)に各々2.0〜5.0倍の範囲で二軸延伸することが好ましい。延伸倍率が前記の値未満であると、操業安定性(延伸性)の改良効果が顕著に現われず、また、得られるフィルムの強度や、バリア性が劣る場合がある。また、延伸倍率が前記の値を超えると、延伸時にフィルムが裂けたり、破断する場合がある。縦横各々の延伸倍率は2.5〜4.0倍であることが好ましい。
【0055】
例えば、テンター式逐次二軸延伸法は、積層未延伸フィルムを40〜120℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60〜180℃の温度範囲内で横方向に延伸することにより本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムを製造することができる。縦方向の延伸温度は、70〜100℃、横方向の延伸温度は80〜160℃であることがより好ましい。
【0056】
上記方法により延伸されたポリアミド積層二軸延伸フィルムは、引続き熱処理をする。熱処理することにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の熱処理温度は、80℃を下限として、(B)脂肪族ポリアミド樹脂組成物の融点より5℃低い温度を上限とする範囲を選択することが好ましく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率をもった延伸フィルムを得ることができる。
本発明の共押出積層二軸延伸フィルムは、熱収縮性が乏しいか、あるいは実質的に有していないものが望ましい。よって、延伸後に行なわれる熱処理温度は150℃以上であることが好ましく、180〜220℃であることがより好ましい。緩和率は、幅方向に20%以内であることが好ましく、3〜10%であることがより好ましい。
熱処理操作により、充分に熱固定されたポリアミド積層二軸延伸フィルムは、常法に従い、冷却して巻き取る。
【0057】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムの厚みは、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。全体の厚みが、前記の値未満であると、ガスバリア性、耐屈曲疲労性のバランスが悪くなる場合があり、また、前記の値を超えると、フィルムが硬くなる場合があり、さらにラミネートする場合、フィルム全体が非常に厚くなり軟包装用に適さなくなる場合がある。
【0058】
さらに、本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール、蒸着等の二次加工工程を経てそれぞれの目的とする用途に使用することができる。
【0059】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、ガスバリア性、透明性に優れ、単独での利用価値も高いが、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層フィルムを得るために、他の熱可塑性樹脂よりなる基材層を本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルム内又は本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムの外側に設けることができる。
【0060】
他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
【0061】
ポリアミド積層二軸延伸フィルムは、本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルム、又は本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムの外側にシーラント層を設けることができる。シーラント層は、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系重合体、ポリエステル等が挙げられる。具体的には、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂、アモルファスポリエステル(A−PET)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
シーラント層の厚さは、15〜80μm程度が一般的である。シーラント層の厚みが前記の値未満であると、接着強度が劣る傾向があり、一方、前記の値を超えると軟包装用途に適さなくなる傾向がある。シーラント層のラミネート方法としては、一般的な方法である押出ラミネート及びドライラミネート、これらの組合わせ等の方法が採用されるが、これに限定されるものではない。積層する際には、ポリアミド積層二軸延伸フィルムの片面又は両面をコロナ処理して使用することが好ましい。
【0063】
例えば、押出ラミネートの場合には、本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間にポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムが得られる。
ドライラミネートの場合には、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムが得られる。ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。
【0064】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルム、又は本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムの外側に熱可塑性樹脂以外の基材である紙、金属箔、織布、不織布、金属綿状、木材等積層して使用することができる。
【0065】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、内容物が酸素による変質を嫌う食品、医薬品、薬品、香料等を密封する包材として有用で、該フィルム包材のより具体的な用途としては蓋材、パウチ類、真空包装、スキンパック、深絞り包装、ロケット包装が挙げられる。該パウチ類は、三方シール、四方シール、ピロー、ガゼット、スタンデイングパウチ等に使用する事ができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例において使用した材料、及び各種フィルムの評価方法を示す。
【0067】
[実施例及び比較例で用いた材料]
1)半芳香族ポリアミド(A)
(A−1):ポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学社製、MX−ナイロン6011)
【0068】
2)脂肪族ポリアミド(B1)
(B1−1):ポリアミド6(宇部興産社製、UBE NYLON 1022BF、相対粘度3.35)(B2−2):ポリアミド12(宇部興産社製、UBESTA3030XA、相対粘度2.24)
3)ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)
(B2−1):ポリエーテルエステルアミドエラストマー(チバスペシャリティケミカル社製、イルガスタットP22、カプロラクタム、アジピン酸、ポリエチレンオキサイド及び過塩素酸ナトリウム含有するポリエーテルエステルアミドエラストマー)
(B2−2):ポリエーテルエステルアミドエラストマー(チバスペシャリティケミカル社製、イルガスタットP18、ドデカンラクタム、アジピン酸、ポリエチレンオキサイド及び過塩素酸ナトリウム含有するポリエーテルエステルアミドエラストマー)
(B2−3):ポリエーテルエステルアミドエラストマー(ダイセル・デグッサ社製、ダイアミド E40−S3、ドデカンラクタム、ドデカジカルボン酸、ポリテトラメチレンオキサイドからなるポリエーテルエステルアミドエラストマー)
【0069】
4)混合物(C)
(C−1):フィルム製造テストから発生した耳トリム端材物(半芳香族ポリアミド(A−1)40重量%、脂肪族ポリアミド(B1−1)56重量%、ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)4重量%との混合物)
(C−2):脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−1)55重量%と混合物(C−1)45重量%とを配合した樹脂組成物(半芳香族ポリアミド(A−1)18重量%、脂肪族ポリアミド(B1−1)73.8重量%、ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)8.2重量%との混合物)、但し脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−1)は、脂肪族ポリアミド(B1−1)90重量%、ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)10重量%との混合物
【0070】
5)ポリオレフィン
(D−1):接着性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーNF528)。
(D−2):エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)(三井・デュポンポリケミカル社製、エバフレックス A703)。
【0071】
[透明性の評価]
ヘイズは、ASTM D−1003に準じ、直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して測定した。
【0072】
[酸素透過率の評価]
ASTM D−3985に準じて、酸素ガス透過量測定装置(モダンコントロール(株)製、MOCON−OX−TRAN2/20)を使用して、23℃、相対湿度50%の条件下で測定した。
【0073】
[耐屈曲疲労性の評価]
8インチ×11インチの大きさに切断したフィルムを、23℃、相対湿度65%の条件下に、24時間以上放置してコンディショニングし、ゲルボフレックステスター(理学工業(株)製)を使用し、MIL−B−131Cに準拠した方法にて、23℃、1000回の屈曲テスト後に生じたピンホール数を計測した。
【0074】
[帯電防止性の評価]
(1)表面固有抵抗: フィルムを23℃、相対湿度50%で3日間状態調節したのち、絶縁抵抗計(横河ヒューレット・パッカード社製、4329A型)を用いて、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、印加電圧500V、30秒の条件にて表面固有抵抗を測定した。
(2)帯電圧半減期: フィルムを23℃、相対湿度60%で3日間状態調節したのち、スタチックオネストメータ(シシド静電気社製、H−0110)を用いて、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、印加電圧10kV、試料間距離20mmの条件にて、帯電圧半減期を測定した。
【0075】
(実施例1)
脂肪族ポリアミド(B1−1)90重量部及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)10重量部を配合したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒、乾燥し、脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−1)を得た。
(a)層に半芳香族ポリアミド(A−1)を、(b)層に脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−1)を使用して、円形3層ダイを備えた40mmφの押出機にて、(a)層の樹脂成分を押出温度280℃、(b)層の樹脂成分を押出温度260℃にて別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(b)/(a)/(b)の実質的に無定形で配向していない3層を直接積層したポリアミド積層未延伸フィルムを得た。
引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、(b)/(a)/(b)が5μm/5μm/5μmのポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0076】
(実施例2)
実施例1の脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−1)の代わりに、実施例1と同様の方法にて、脂肪族ポリアミド(B1−1)95重量部及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)5重量部を配合して脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−2)を得た。(b)層に脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−2)を使用した以外は、実施例1と同様の方法にてポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
脂肪族ポリアミド(B1−2)90重量部及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−2)10重量部を配合したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒、乾燥し、脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−3)を得た。
(a)層に半芳香族ポリアミド(A−1)を、(b)層に脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−3)を、(d)層にポリオレフィン(D−1)を使用して、円形5層ダイを備えた40mmφの押出機にて、(a)層の樹脂成分を押出温度280℃、(b)層の樹脂成分を押出温度250℃、(d)層の樹脂成分を押出温度190℃にて別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(b)/(d)/(a)/(d)/(b)の実質的に無定形で配向していない5層の接着層を有するポリアミド積層未延伸フィルムを得た。引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度170℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、180℃にて熱固定処理を行なった。フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、(b)/(d)/(a)/(d)/(b)=3μm/2μm/5μm/2μm/3μm(全体厚み15μm)のポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0078】
(実施例4)
(a)層に半芳香族ポリアミド(A−1)を、(b)層に脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B−1)を、(c)層に混合物(C−1)を使用して、円形3層ダイを備えた40mmφの押出機にて、(a)層の樹脂成分を押出温度280℃、(b)層の樹脂成分を押出温度260℃、(c)層の樹脂成分を押出温度280℃にて別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(b)/(a)/(c)の実質的に無定形で配向していない(b)層、(a)層及び(c)層の順に直接3層に積層したポリアミド積層未延伸フィルムを得た。引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、(b)/(a)/(c)=6μm/4μm/5μmのポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0079】
(実施例5)
(a)層に半芳香族ポリアミド(A−1)を、(c)層に混合物(C−2)を使用して、円形3層ダイを備えた40mmφの押出機にて、(a)層の樹脂成分を押出温度280℃、(c)層の樹脂成分を押出温度270℃にて別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(c)/(a)/(c)の実質的に無定形で配向していない(c)層と(a)層とを直接3層に積層したポリアミド積層未延伸フィルムを得た。引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、(b)/(a)/(c)=5.5μm/4μm/5.5μmのポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1)
実施例1において(b)層の樹脂成分としてポリアミド樹脂組成物(B−1)の代わりにポリアミド(B1−1)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にてポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において(b)層の樹脂成分としてポリアミド樹脂組成物(B−1)の代わり、ポリアミド樹脂組成物(B−4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にてポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
但し、ポリアミド樹脂組成物(B−4)は、脂肪族ポリアミド(B1−1)99重量部及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)1重量部を配合したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒、乾燥して得た。
【0082】
(比較例3)
実施例1において(b)層の樹脂成分としてポリアミド樹脂組成物(B−1)の代わり、ポリアミド樹脂組成物(B−5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にてポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
但し、ポリアミド樹脂組成物(B−5)は、脂肪族ポリアミド(B1−1)60重量部及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−1)40重量部を配合したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒、乾燥して得た。
【0083】
(比較例4)
実施例1において(b)層の樹脂成分としてポリアミド樹脂組成物(B−1)の代わり、ポリアミド樹脂組成物(B−6)を用いた以外は、実施例1と同様にポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
但し、ポリアミド樹脂組成物(B−6)は、脂肪族ポリアミド(B1−1)90重量部及びポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2−3)10重量部を配合したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒、乾燥して得た。
【0084】
(比較例5)
実施例1において(b)層の樹脂成分としてポリアミド樹脂組成物(B−1)の代わり、ポリアミド樹脂組成物(B−7)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にてポリアミド積層二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド積層二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
但し、ポリアミド樹脂組成物(B−7)は、脂肪族ポリアミド(B1−1)97重量部及びポリオレフィン(D−2)3重量部を配合したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒、乾燥して得た。
【0085】
【表1】

【0086】
本発明のポリアミド積層二軸延伸フィルムは、ガスバリア性、耐屈曲疲労性、透明性、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与され、それぞれの性能バランスの適正化が図られている。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)層と、下記の(b)層及び下記の(c)層から選択される少なくとも1層とを積層した少なくとも2層の積層フィルムを二軸延伸したことを特徴とするポリアミド積層二軸延伸フィルム。
(a)層: m−キシリレンジアミン及びp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有する半芳香族ポリアミド(A)を含む層。
(b)層: 脂肪族ポリアミド(B1)70〜98重量%と、下記のポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)30〜2重量%よりなる脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)からなる層。
(b)層のポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2):脂肪族ポリアミド(B1)と同一のポリアミド形成単位を60重量%以上含み、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなるポリアミドハードセグメント(b1)と、
数平均分子量300〜5000の下記一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイドよりなるソフトセグメント(b2)と、
電解質塩化合物(b3)とを含むポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、
(b1)及び(b2)の合計重量(100重量%)に対して、(b3)が0.01〜10重量%含まれているポリエーテルエステルアミドエラストマー。
【化1】

(式中、Qは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
(c)層: 半芳香族ポリアミド(A)と脂肪族ポリアミド樹脂組成物(B)とを含む層。
【請求項2】
脂肪族ポリアミド(B1)は、カプロラクタム、ドデカンラクタム、12−アミノドデカン酸及びヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩の群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成単位からなる単独重合体或いはこれらの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド積層二軸延伸フィルム。
【請求項3】
ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B2)のポリアミドハードセグメント(b1)のジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸であり、
ソフトセグメント(b2)のポリアルキレンオキサイドが、一般式(1)のQが2及び/又は3のアルキレン基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリアミド積層二軸延伸フィルム。
【請求項4】
ポリアミド積層二軸延伸フィルムは、両外層が(b)層及び(c)層から選択される層であり、少なくとも3層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド積層二軸延伸フィルム。




【公開番号】特開2006−297894(P2006−297894A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279299(P2005−279299)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】