説明

ポリイミド系多層フィルムの製造方法およびその利用

【課題】 ポリイミド系多層フィルムを製造する場合に、各層の幅方向における膜厚のバラツキを低減する
【解決手段】 少なくとも2種以上のポリイミド層を有する多層フィルムを製造する場合であって、共押出−流延塗布法と化学キュア法とを採用する場合、ポリイミド系ワニス(ポリイミド樹脂の前駆体またはポリイミド樹脂を含有する溶液)を支持体上に押し出すときに、押出ダイの先端部分(リップ部)から支持体表面まで距離を、2mmを超え25mm以下に設定する。これにより、多層液膜を支持体上に形成するときに、ネックイン現象の発生を抑制し、各層の膜厚のバラツキを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドを含有する層を複数備えており、フレキシブルプリント配線板等の製造に好適に用いることができるポリイミド系多層フィルムの製造方法およびその利用に関するものであり、特に、多層フィルムが、高い耐熱性を示す耐熱性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド層を形成した接着フィルムである場合に好適に用いることができるポリイミド系多層フィルムの製造方法とその利用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化にともない、各種プリント基板の需要が伸びている。これらのプリント基板の中でも、フレキシブル配線板の需要が特に伸びている。フレキシブル配線板はフレキシブルプリント配線板(FPC)等とも称する。フレキシブル配線板は、絶縁性フィルム上に金属層からなる回路が形成された構造を有している。
【0003】
上記フレキシブル配線板は、一般に、各種絶縁材料により形成され、柔軟性を有する絶縁性フィルムを基板とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔を加熱・圧着することにより貼り合わせる方法により製造される。上記絶縁性フィルムとしては、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられており、上記接着材料としては、エポキシ系、アクリル系等の熱硬化性接着剤が一般的に用いられている。このような熱硬化性接着剤を用いたフレキシブル配線板は、基板/接着材料/金属箔の三層構造を有しているので、以下、説明の便宜上、「三層FPC」と称する。
【0004】
上記三層FPCに用いられる熱硬化性接着剤は、比較的低温での接着が可能であるという利点があるが、相対的に耐熱性が低く電気特性に劣る。そのため、今後、フレキシブル配線板に対して耐熱性、屈曲性、電気的信頼性といった各種特性に対する要求が厳しくなることが想定されているが、熱硬化性接着剤を用いた三層FPCでは、このような要求に十分対応することが困難になると考えられている。
【0005】
これに対して、絶縁性フィルムに直接金属層を設けたフレキシブル配線板や、接着層に熱可塑性ポリイミドを使用したフレキシブル配線板が提案されている。これらフレキシブル配線板は絶縁性の基板に直接金属層を形成している状態にあるため、以下、説明の便宜上、「二層FPC」と称する。この二層FPCは、接着剤として、耐熱性、屈曲性、電気的信頼性等に優れるポリイミド系の樹脂を用いるため、あるいは接着剤を用いないため、三層FPCより優れた特性を有する。それゆえ、上記各種特性に対する要求にも十分対応可能であるため産業上有用であり、今後需要が伸びていくことが期待される。
【0006】
上記二層FPCは、基板に金属箔を積層した構造を有するフレキシブル金属張積層板を用いて製造される。このフレキシブル金属張積層板の製造方法としては、キャスト法、メタライジング法、ラミネート法等が挙げられる。キャスト法は、金属箔上に、ポリイミドまたはその前駆体であるポリアミド酸の有機溶媒溶液(便宜上、「ポリイミド系ワニス」と称する)を流延、塗布した後、加熱乾燥および/またはイミド化する方法である。メタライジング法は、スパッタ、蒸着、および/または金属メッキによりポリイミドフィルム上に直接金属層を設ける方法である。ラミネート法は、熱可塑性ポリイミド層を介してポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせる方法である。
【0007】
これらのうち、ラミネート法は、対応できる金属箔の厚み範囲がキャスト法よりも広く、装置に要するコストがメタライジング法よりも低いという点で優れている。ラミネート法を行う装置としては、ロール状の材料を繰り出しながら連続的にラミネートする熱ロールラミネート装置またはダブルベルトプレス装置等が用いられている。これらの中でも、生産性の点から見れば、熱ロールラミネート法をより好ましく用いることができる。
【0008】
上記ラミネート法により製造されるフレキシブル金属張積層板においては、基板として、耐熱性ポリイミドを主成分とするポリイミドフィルム(耐熱性ポリイミド層)の少なくとも一方の表面に熱可塑性ポリイミドを含む樹脂組成物の層(熱可塑性ポリイミド層)を設けてなる接着フィルムが広く用いられている。この接着フィルムにおいては、耐熱性ポリイミド層が絶縁性フィルムとなり、熱可塑性ポリイミド層が接着層となる。この接着フィルムは、言い換えれば、多層構造のポリイミド系フィルム(ポリイミド系多層フィルム)ということができる。
【0009】
上記ポリイミド系多層フィルムの製造方法としては、代表的なものとして塗工法、熱ラミネート法、流延製膜法等が挙げられる。塗工法は、耐熱性ポリイミド層となるポリイミドフィルムの片面または両面に、熱可塑性ポリイミドまたはその前駆体を含有する樹脂組成物の溶液を塗工し乾燥させて製造する方法である。また、熱ラミネート法は、耐熱性ポリイミド層となるポリイミドフィルムの片面または両面に、熱可塑性ポリイミドを主成分とするポリイミドフィルムを加熱して貼り合わせ加工し製造する方法である。
【0010】
上記流延製膜法としては、逐次法(逐次コーティング法)と共押出法(共押出−流延塗布法)とが挙げられる。逐次法は、耐熱性ポリイミドまたはその前駆体を含有する樹脂組成物の溶液(便宜上、「耐熱性ポリイミド系ワニス」と称する)と、熱可塑性ポリイミドまたはその前駆体を含有する樹脂組成物の溶液(便宜上、「熱可塑性ポリイミド系ワニス」と称する)とを、支持体上に順次コーティングして行く方法である。共押出−流延塗布法は、支持体上に、耐熱性ポリイミド系ワニスおよび熱可塑性ポリイミド系ワニスの双方を同時に共押出ダイを用いて押し出し成膜する方法である(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0011】
ここで、上記各製造方法の中でも、共押出−流延塗布法は、一度に多層構造の液膜(多層液膜)を形成できる等、必要となる工程数が少なくて済むこと、工程が少ないことから異物混入などの欠陥要因が少ないこと等から、他の方法と比較して生産性および製品歩留まりが高いという利点がある。それゆえ、一般的には、最も優れた製造方法であると言うことができる。
【特許文献1】第2946416号公報(平成11年(1999)7月2日登録、公開番号:特開平11−99554、公開日:平成11年(1999)4月13日)
【特許文献2】特開平7−214637公報(平成7年(1995)8月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、従来の共押出−流延塗布法では、実質的に加熱によってのみイミド化を行う、いわゆる熱キュア法を前提にして製造条件等が検討されてきた。ここで、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を用いてフィルムを製造する場合、加熱により溶媒を揮散および除去して自己指示性を有するゲルフィルムを形成してからイミド化することが一般的であるが、上記熱キュア法では、ゲルフィルム化の過程やイミド化の過程が極めて長時間となるため、生産性が低いという問題点があった。このような生産性の低さは、トータルコストの増大につながることになる。
【0013】
そこで、本発明者らは上記の生産性の課題を解決するために検討した結果、イミド化に際して化学脱水剤および触媒を用いる方法、いわゆる化学キュア法の採用が効果的であることを見出した。しかしながら、得られる多層フィルムの品質には未だ向上の余地があることが本発明者らの検討により明らかとなっている。
【0014】
具体的には、化学キュア法を採用すると生産性の低下という課題は解決することができるが、それぞれの層において、幅方向の膜厚に有意なバラツキが生じやすく、しかもそのバラツキが増大する場合があることが本発明者らによって独自に見出された。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリイミド系多層フィルムを製造する場合に、各層の幅方向における膜厚のバラツキを低減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、共押出−流延塗布法において化学キュア法を採用した場合に、化学脱水剤および触媒を含有するポリイミド系ワニスの粘度が著しく低減するため、当該ポリイミド系ワニスを押し出した際に形成される液膜の幅方向の長さが小さくなるという現象(いわゆるネックイン現象)の発生が顕著になることを見出した。そこで、このネックイン現象の発生を抑制することによって各層の膜厚のバラツキを抑制または回避することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明にかかるポリイミド系多層フィルムの製造方法は、上記の課題を解決するために、少なくとも2種以上のポリイミド層を有する多層フィルムの製造方法であって、ポリイミド樹脂の前駆体またはポリイミド樹脂を含有する溶液を、少なくとも2種以上、押出手段から同時に支持体上に押し出して流延することにより複数層が積層された多層液膜を形成する多層液膜形成工程を含んでおり、上記押出手段の先端部分から支持体表面まで距離を、2mmを超え25mm以下に設定することを特徴としている。
【0018】
上記製造方法においては、上記押出手段として、共押出多層ダイが用いられることが好ましい。また、上記溶液の少なくとも1種には、化学脱水剤および触媒が添加されていることが特に好ましい。
【0019】
上記化学脱水剤は、添加対象となる溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.5〜4.0モルの範囲内となるように、当該溶液に添加されることが好ましく、1.0〜3.0モルの範囲内となっているがより好ましい。また、上記触媒は、添加対象となる溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.05〜2.0モルの範囲内となるように、当該溶液に添加されることが好ましく、0.05〜1.0モルの範囲内となっているがより好ましい。
【0020】
上記製造方法においては、例えば、上記ポリイミド系多層フィルムとして、耐熱性ポリイミドを含有する基盤層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を積層してなる接着フィルムを挙げることができ、このとき、上記基盤層の形成には、耐熱性ポリイミドの前駆体を含有する溶液が用いられるとともに、上記接着層の形成には、熱可塑性ポリイミドの前駆体および/または熱可塑性ポリイミドを含有する溶液が用いられる。
【0021】
また、本発明には、上記製造方法を用いて製造されるポリイミド系多層フィルム、並びに、当該ポリイミド系多層フィルムを絶縁層として用いてなるフレキシブルプリント配線板も含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、ポリイミド樹脂の前駆体またはポリイミド樹脂を含有する溶液、すなわちポリイミド系ワニスを支持体上に押し出す際に、押出手段と支持体表面との間隔を規定している。これにより、支持体上に形成される液膜において、ネックイン現象の発生を抑制することが可能となる。それゆえ、各層の幅方向における膜厚のバラツキをより一層小さくし、有意な膜厚のバラツキの発生を事実上防止することが可能となる。
【0023】
しかも、共押出−流延塗布法に化学キュア法を採用しているため、イミド化の時間を短縮することができるとともに、各層間の接着強度の低下、製造過程での層間の剥離、さらには支持体からのゲルフィルムの引き剥がしの困難さを抑制または回避することができる。その結果、ポリイミド系多層フィルムの品質低下を回避することができるだけでなく、高品質のポリイミド系多層フィルムをより高い生産性かつより低いコストで提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態について説明すると、以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
本発明は、少なくとも2種以上のポリイミド層を有するポリイミド系多層フィルムの製造方法であり、複数のポリイミド層を有するポリイミド系多層フィルムを共押出−流延塗布法により製造する際に、イミド化法として化学キュア法を採用する。ここで、ポリイミドの前駆体を含有する溶液および/またはポリイミドを含有する溶液(説明の便宜上、これらをまとめてポリイミド系ワニスと称する)から選択される少なくとも2種以上の溶液を共押出多層ダイ等の押出手段から支持体上に流延して2層以上の多層液膜を形成する工程を含んでおり、この工程において、上記押出手段の先端部分と支持体表面までの距離を規定する。これによって、ネックイン現象を抑制して各層の膜厚のバラツキを低減する。
【0026】
以下、本発明にかかるポリイミド系多層フィルムの製造方法と、当該製造方法において、上記ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の好ましい合成方法と、本発明の具体的な利用の一例について順に説明する。
【0027】
(I)多層フィルムの製造方法
上記のように、本発明にかかるポリイミド系多層フィルムの製造方法は、共押出−流延塗布法において化学キュア法を採用する方法であるが、この製造方法を具体的な工程として区分するとすれば、複数種のポリイミド系ワニスを調製する工程(ワニス調製工程)、調製した複数種のポリイミド系ワニスの少なくとも1種に化学脱水剤および触媒を添加する工程(硬化剤添加工程)、複数種のポリイミド系ワニスを支持体上に同時に流延塗布し、多層液膜を形成する工程(多層液膜形成工程)、形成した多層液膜を、自己支持性を有する多層ゲルフィルムに転化する工程(ゲルフィルム形成工程)、多層ゲルフィルムをイミド化する工程(イミド化工程)に区分することができる。以下、各工程について具体的に説明する。
【0028】
<ワニス調製工程>
ワニス調製工程は、ポリイミドの前駆体(ポリアミド酸)を含有する溶液および/またはポリイミドを含有する溶液(ポリイミド系ワニス)を調製する工程であればよく、その具体的な方法は特に限定されるものではない。用いる溶媒としては、ポリアミド酸(あるいはポリアミック酸)またはポリイミドを溶解可能とする有機溶媒であれば特に限定されるものではない。また、溶媒にポリアミド酸またはポリイミドを溶解または分散させる方法も特に限定されるものではなく、公知の方法を好適に用いることができる。なお、本明細書における溶解には、溶媒への樹脂の「溶解」だけでなく「分散」も含まれるものとする。
【0029】
特に、ポリイミド系ワニスとしてポリアミド酸溶液を調製する場合には、後述するように、モノマー成分を合成用溶媒中でポリアミド酸に合成することにより得られる、ポリアミド酸の合成用溶媒の溶液をそのままポリイミド系ワニスとして用いることができる。なお、本発明において用いるポリイミド系ワニスの固形分濃度(樹脂成分の濃度)や粘度等の諸条件は特に限定されるものではなく、後段の各工程での条件や、製造しようとするポリイミド系多層フィルムの種類等により適宜設定することができる。
【0030】
また、本発明にかかる製造方法を実施する場合に毎回ポリイミド系ワニスを調製する必要性はなく、あらかじめ調製しておき貯蔵しておいたポリイミド系ワニスを使う等してもよい。したがって、本発明にかかる製造方法では、ワニス調製工程は必須ではない。
【0031】
<硬化剤添加工程>
硬化剤添加工程は、上記ポリイミド系ワニスに硬化剤(化学硬化剤)として化学添加剤および触媒を添加する工程である。つまり、本発明にかかる製造方法では、化学キュア法を採用するため、用いる複数種のポリイミド系ワニスのうち、少なくとも1種には、上記硬化剤を添加する必要がある。
【0032】
一般に、ポリイミドの製造においては、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を脱水転化する反応(イミド化反応)により得ることができる。当該イミド化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、上記硬化剤(特に化学脱水剤)を用いる化学キュア法の2法が最も広く知られている。このうち化学キュア法は生産性に優れているため、本発明では、少なくとも1種のポリイミド層のイミド化には化学キュア法を採用する。
【0033】
上記硬化剤として用いられる化学脱水剤は、硬化剤の主成分であり、ポリアミド酸のアミド基に対する脱水閉環剤であればよく、具体的には、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物を主成分として挙げることができるが、これら化合物に特に限定されるものではない。これら化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせた混合物として用いてもよい。これらの中でも、特に、酢酸等の脂肪族酸無水物、および/または、芳香族酸無水物をより好ましく用いることができる。
【0034】
上記硬化剤として用いられる触媒は、アミド基に対する化学脱水剤の脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であればよく、具体的には、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等を挙げることができるが、これら化合物に特に限定されるものではない。これら化合物のうち、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリン等の含窒素複素環化合物をより好ましく用いることができる。
【0035】
上記硬化剤をポリイミド系ワニスに添加する方法は特に限定されるものではないが、効率的な添加および分散を図るために、上記硬化剤を溶液に調製してからポリイミド系ワニスに添加することが好ましい。このとき用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、ポリイミド系ワニスに用いられている溶媒を好適に用いることができる。
【0036】
上記硬化剤の添加量は特に限定されるものではないが、多すぎたり少なすぎたりすると製造過程において好ましくない問題が生じる場合があるため、好ましい添加量の範囲が存在する。具体的には、化学脱水剤の添加量は、添加対象となるポリイミド系ワニスに含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.5〜4.0モルの範囲内となる量であることが好ましく、1.0〜3.0モルの範囲内となる量であることがより好ましく、1.2〜2.5モルの範囲内となる量であることが特に好ましい。また、触媒の添加量は、添加対象となるポリイミド系ワニスに含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.05〜2.0モルの範囲内となる量であることが好ましく、1.05〜1.0モルの範囲内となる量であることがより好ましく、0.3〜0.8モルの範囲内となる量であることがより好ましい。
【0037】
上記化学脱水剤および触媒の添加量すなわちポリイミド系ワニス中の含有量は、上記上限を超えると、押出手段から押し出されて形成される多層液膜を乾燥させる際に、これら硬化剤を添加した層から溶媒が滲出して、隣接する各層の間に当該溶媒が蓄積するおそれがある。この場合、各層間の接着強度が低下したり、得られるポリイミド系多層フィルムにおいて層間が剥離したりする等の問題を引き起こすことがある。一方、上記下限を未満であると、上記多層液膜を平滑な支持体上で乾燥して多層ゲルフィルムとした後に、当該多層ゲルフィルムを支持体から引き剥がすことが困難になるおそれがある。
【0038】
<多層液膜形成工程>
多層液膜形成工程は、押出手段により、少なくとも2種以上のポリイミド系ワニスを同時に支持体上に押し出して流延塗布し、複数層が積層された多層液膜を形成する工程であり、特に本発明では、上記押出手段の先端部分から支持体表面まで距離を、2mmを超え25mm以下に設定している。つまり、本発明では、共押出−流延塗布法により多層液膜を形成することが必須であり、このとき、押出手段の先端部分から支持体の表面まで距離を所定の範囲内に設定することが必須となる。
【0039】
上記押出手段(押出部材)としては、上記ポリイミド系ワニスを支持体上に押し出して流延塗布できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、各種押出ダイを好適に用いることができ、より好ましくは、例えば、公知の複数層フィルムを製造するために用いられるTダイス等の共押出多層ダイを好適に用いることができる。共押出多層ダイは、一つの押出ダイにより複数のポリイミド系ワニスを押し出すことができるので、多層液膜を効率的かつ高品位に形成しやすくなる。共押出多層ダイの具体的な構造は特に限定されるものではなく、従来公知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であり、製造しようとするポリイミド系多層フィルムの多層構造や、具体的な製造条件等に応じて適切なものを選択して用いればよい。本発明で特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイやマルチマニホールドTダイを挙げることができる。
【0040】
一般に、押出ダイは、供給された溶液を塗布対象物に塗布するため、先端にはリップ部と呼ばれる一対の平板状の部位が存在しており、このリップ部の間から溶液が押し出されることになる。本発明は、押出手段として押出ダイを用いる場合、このリップ部の先端から支持体表面までの距離を、少なくとも2mmを超え25mm以下に設定すればよく、より好ましくは、3〜20mmの範囲内に設定すればよい。
【0041】
上記押出手段の先端部分から支持体表面までの距離(便宜上、押出距離と称する)が上記範囲を超えると、ネックイン現象、すなわち、ポリイミド系ワニスを押し出した際に形成される多層液膜の幅方向の長さが小さくなるという現象が顕著になり、得られるポリイミド系多層フィルムにおいて、各層の幅方向における膜厚のバラツキが増大することがある。一方、上記押出距離が上記範囲を下回る場合、支持体からの熱の影響を受けて押出手段の先端近傍が加熱されるため、当該押出手段中を通過しているポリイミド系ワニスに含有されるポリアミド酸がイミド化反応を起こすことがある。このイミド化反応は、押出手段の先端近傍でのポリイミド系ワニスの流動性に悪影響を与え、結果として、膜厚のバラツキをより増大したり、多層ゲルフィルムの欠陥点を誘起したりするため好ましくない。
【0042】
上記支持体としては、押出手段から押し出されたポリイミド系ワニスを表面上で流延して多層液膜を形成できるように表面が平滑となっており、さらに、多層液膜を加熱して自己支持性を有する多層ゲルフィルムにできるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ドラム状またはベルト状の形状を有していることが好ましい。このような形状であれば、連続的に多層液膜(および多層ゲルフィルム)を形成することができる。
【0043】
上記支持体の材質としては特に限定されるものではなく、金属、プラスチック、ガラス、磁器等を挙げることができるが、多層ゲルフィルムを引き剥がしやすいものであることが好ましい。具体的には、金属が好ましく、より具体的には耐腐食性に優れるステンレス材(SUS材)が好ましい。また、金属の表面にCr、Ni、Snなどの金属メッキをしたものであってもよい。
【0044】
<ゲルフィルム形成工程>
ゲルフィルム形成工程は、支持体上に形成された多層液膜を乾燥して自己支持性を有する多層ゲルフィルムを形成する工程である。具体的には、形成された多層液膜の少なくとも一部の溶媒を揮散(蒸発)させればよい。
【0045】
多層液膜中の溶媒の揮散方法、すなわち多層液膜の多層ゲルフィルムへの転化方法に関しては特に限定されるものではないが、加熱および/または送風による方法が最も簡易である。加熱方法を採用する場合は、加熱温度が高すぎると溶媒が急激に揮散するため、当該揮散の痕跡が最終的に得られるポリイミド系多層フィルム中に微笑欠陥を形成することになる。それゆえ、加熱温度は、用いる溶媒の沸点+50℃未満であることが好ましい。
【0046】
<イミド化工程>
イミド化工程は、上記多層ゲルフィルムをイミド化することでポリイミド系多層フィルムとする工程である。本工程では、上記多層ゲルフィルムは支持体から引き剥がし、高温で加熱することによりイミド化を行う。この加熱により溶媒が実質的に除去されるとともに、アミド基の脱水閉環が生じることによりイミド化が進行する。
【0047】
本工程における加熱温度は特に限定されるものではなく、イミド化を十分に実現できる程度の温度であればよいが、具体的には、250〜600℃の範囲内が好ましく、300〜550℃の範囲内がより好ましい。この温度範囲内であれば、イミド化を効率的かつ確実に実現することができるとともに、溶媒も確実に除去することができる。なお、加熱温度は、後述する実施例に示すように、段階的に上昇することが好ましい。これによりイミド化および溶媒の除去をより効率的に行うことができる。
【0048】
本工程における加熱時間も特に限定されるものではなく、実質的にイミド化および乾燥が完結することが可能な時間であればよいが、一般的には1〜600秒程度の範囲内で適宜設定することができる。
【0049】
ここで、イミド化時には、多層ゲルフィルムに張力をかけることが好ましい。これにより、得られるポリイミド系多層フィルムの品質の低下や製造効率の低下を抑制することができる。張力をかける方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述する実施例に示すように、テンタークリップで端部を固定化する方法を挙げることができる。また、多層ゲルフィルムにかける張力は、9.8〜147N/m(1〜15kg/m)の範囲内とすることが好ましく、49〜98N/m(5〜10kg/m)の範囲内とすることが特に好ましい。張力が上記範囲を下回る場合、フィルム搬送時にたるみや蛇行が生じるため、巻取り時にシワが入ったり、均一に巻き取れなかったりする等の問題が生じる可能性がある。一方、上記範囲を超える場合、強い張力がかかった状態で高温加熱されるため、得られるポリイミド系多層フィルムの寸法特性が悪化することがある。
【0050】
なお、本発明は、後述するように、接着層(表面層または外層)を熱可塑性ポリイミド層とし、基盤層(内層)を耐熱性ポリイミド層とした接着フィルムの製造に好適に用いることができるが、特に接着層である熱可塑性ポリイミド層の熔融流動性を改善する目的で、当該接着層において、意図的にイミド化率を低くする、および/または、溶媒を残留させることも可能である。
【0051】
また、本発明にかかる製造方法は、上記ワニス調製工程、多層液膜形成工程、硬化剤添加工程、ゲルフィルム形成工程、イミド化工程の全てを含んでいる必要はなく、適宜、各工程を省略したり、他の工程を追加したりすることができる。
【0052】
(II)ポリアミド酸の合成
本発明にかかる製造方法は、あらゆるポリイミド系多層フィルムの製造に好適に用いることができる。ここで、ポリイミド系多層フィルムとは、ポリイミドを含有するポリイミド層を複数層有しており、少なくともポリイミド層として2種以上の異なる層を含んでいる多層フィルムを指す。
【0053】
本発明において、上記ポリイミド系多層フィルムとして特に具体的に用いることができるものとしては、ポリイミド系の接着フィルムを挙げることができる。この接着フィルムは、少なくとも、基盤層(内層)として、耐熱性ポリイミドを含有する層(耐熱性ポリイミド層)と、表面層(外層)として、熱可塑性ポリイミドを含有する層(熱可塑性ポリイミド層)を有している。より具体的な構成としては、例えば、耐熱性ポリイミド層の少なくとも一方の表面(好ましくは両方の表面)に熱可塑性ポリイミド層が積層された構成を挙げることができる。このような接着フィルムは、例えば、フレキシブル配線板の絶縁層等として好適に用いることができる。
【0054】
以下の説明では、上記耐熱性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層とを備える接着フィルムを例に挙げて、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の合成およびポリイミド系ワニスとしてのポリアミド酸溶液の調製について、詳細に説明する。
【0055】
<ポリアミド酸の合成方法>
ポリアミド酸の合成方法(重合方法)は、上記耐熱性ポリイミドまたは熱可塑性ポリイミド等、具体的なポリイミドの種類に限定されるものではなく、あらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の合成方法では、モノマー成分の添加順序に大きな特徴があり、このモノマー成分の添加順序を制御することにより、得られるポリイミドの諸物性を制御することが可能となる。したがって、本発明においても、得ようとするポリイミド層に求められる物性に応じて、公知のモノマー成分の添加方法を適宜採用することができる。
【0056】
上記ポリアミド酸の合成方法、すなわちモノマー成分の添加方法としては、具体的には、次の各方法を挙げることができる。なお、モノマー成分としては、少なくとも1種類のジアミン化合物からなるジアミン成分と、少なくとも1種類の酸二無水物からなる酸二無水物時成分とが挙げられ、特に、本発明では、ジアミン成分として芳香族ジアミンを、酸二無水物成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
1)ジアミン成分を有機溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの酸二無水物を添加して反応させて重合する。
2)酸二無水物成分と、これに対して過小モル量となるジアミン成分とを有機溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において酸二無水物とジアミン成分とが実質的に等モルとなるようにジアミン成分を添加して重合させる。
3)酸二無水物成分と、これに対して過剰モル量となるジアミン成分とを有機溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いて、ジアミン成分を追加添加した後に、全工程において酸二無水物成分とジアミン成分とが実質的に等モルとなるように酸二無水物成分を添加して重合する。
4)酸二無水物成分を有機溶媒中に溶解させた後、実質的に等モルとなるようにジアミン成分を添加して重合する。
5)実質的に等モルの酸二無水物成分とジアミン成分との混合物を有機溶媒中で反応させて重合する。
【0057】
上記各合成方法は単独で用いてもよいし、部分的に組み合わせて用いることもできる。本発明では、これらいかなる合成方法を用いて得られたポリアミド酸をもちいてもよく、具体的な重合方法は特に限定されるものではない。
【0058】
上記合成方法により得られるポリアミド酸溶液は、通常、5〜35重量%の範囲内、好ましくは10〜30重量%の範囲内の濃度となっている。濃度がこの範囲内であれば適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。このようにして得られたポリアミド酸溶液は、本発明において、そのままポリイミド系ワニスとして用いることができる。
【0059】
上記ポリアミド酸の合成に用いる合成用溶媒としては、重合されるポリアミド酸を溶解する溶媒であればどのようなものを用いてもよいが、具体的には、有機極性溶媒を用いることが好ましく、より具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒を特に好ましく用いることができる。このような溶媒を用いることにより得られるポリアミド酸溶液をそのままポリイミド系ワニスに用いることができる。
【0060】
<耐熱性ポリイミド>
本発明において製造されるポリイミド系多層フィルムが接着フィルムである場合、基盤層(内層)として好適に用いられる耐熱性ポリイミド層(あるいは高耐熱性ポリイミド層)は、樹脂成分として非熱可塑性ポリイミドを90重量%以上含有するものであれば、その分子構造や層の厚みは特に限定されるものではない。
【0061】
上記耐熱性ポリイミド層として好適に用いられる非熱可塑性ポリイミドは、ポリアミド酸を前駆体として製造されるが、その具体的な製造方法は特に限定されるものではなく、上記のように、通常、酸二無水物成分とジアミン成分とを、実質的に等モル量となるように有機溶媒中に溶解させて、制御された条件下で、これらモノマー成分の重合が完了するまで攪拌することにより製造される。なお、耐熱性ポリイミド層の形成に用いられるポリアミド酸溶液(ポリイミド系ワニス)を、便宜上、耐熱性ポリアミド酸溶液(耐熱性ポリイミド系ワニス)と称する。
【0062】
また、本発明では、後述する剛直構造を有するジアミン成分(便宜上、剛直ジアミン成分と称する)を用いる場合には、当該ジアミン成分によりプレポリマーを得る合成方法も好適に用いることができる。剛直ジアミン成分によりプレポリマーを得れば、弾性率が高く、吸湿膨張係数が小さいポリイミド層を得やすくなる傾向にある。プレポリマーを得る場合には、剛直ジアミン成分と酸二無水物成分とのモル比は、100:70〜100:99または70:100〜99:100の範囲内が好ましく、100:75〜100:90または75:100〜90:100の範囲内がより好ましい。
【0063】
剛直ジアミン成分と酸二無水物成分とのモル比が上記の範囲を下回ると、得られるポリイミド層において弾性率および吸湿膨張係数の改善効果が得られにくくなることがある。また、上記モノマー成分のモル比が上記の範囲を超えると、得られるポリイミド層における線膨張係数が小さくなりすぎたり、引張伸びが小さくなりすぎたりするなどの弊害が生じることがある。
【0064】
上記耐熱性ポリイミド層を合成するために用いられるモノマー成分としては特に限定されるものではないが、酸二無水物成分としては、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)およびこれら化合物の類似物を挙げることができる。これら化合物は単独で用いてもよいし、複数種類を任意の割合で組み合わせた混合物として用いることができる。
【0065】
上記化合物の中でも、特に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも一種を用いることがより好ましい。
【0066】
このうち、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される少なくとも1種を用いる場合、これら化合物は、全ての酸二無水物成分に対して、60モル%以下であればよく、55モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。これら化合物の少なくとも1種を用いる場合、その使用量が上記の範囲を上回ると得られるポリイミド層のガラス転移温度(Tg)が低くなりすぎたり、熱時の貯蔵弾性率が低くなりすぎて製膜そのものが困難になったりすることがあるため好ましくない。
【0067】
また、ピロメリット酸二無水物を用いる場合、好ましい使用量は、全ての酸二無水物成分に対して、40〜100モル%の範囲内であればよく、45〜100モル%の範囲内であることが好ましく、50〜100モル%の範囲内であることがより好ましい。ピロメリット酸二無水物をこの範囲で用いれば、得られるポリイミド層においてTgおよび熱時の貯蔵弾性率を、使用または製膜に好適な範囲に保ちやすくなる。
【0068】
上記耐熱性ポリイミドを合成するために用いられるジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3‘−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンおよびこれら化合物の類似物を挙げることができる。これら化合物は単独で用いてもよいし、複数種類を任意の割合で組み合わせた混合物として用いることができる。
【0069】
また、上記のように、ジアミン成分としては、剛直ジアミン成分と柔構造を有するジアミン(便宜上、柔ジアミン成分と称する)とを併用することができる。この場合、剛直ジアミン成分と柔ジアミン成分との使用比率は、モル比で、80:20〜20:80の範囲内であればよく、70:30〜30:70の範囲内であることが好ましく、60:40〜30:70の範囲内であることがより好ましい。剛直ジアミン成分の使用比率が上記範囲を上回ると得られるポリイミド層の引張伸びが小さくなる傾向にあり、またこの範囲を下回るとTgが低くなりすぎたり、熱時の貯蔵弾性率が低くなりすぎたりして製膜が困難になるなどの弊害を伴う場合がある。
【0070】
本発明における剛直ジアミン成分として用いることのできる化合物とは、次に示す一般式(1)
【0071】
【化1】

【0072】
(ただし、式中のR2 は、次に示す群(2)
【0073】
【化2】

【0074】
で表される2価の芳香族基から選択される基であり、群(2)中のR3 は同一であっても異なっていてもよく、−H、−CH3、−OH、−CF3、−SO4、−COOH、−CO-NH2、−Cl、−Br、−F、および−CH3Oからなる群より選択される何れかの1種の基である。)
で表される化合物を指す。
【0075】
また、柔ジアミン成分として用いることのできる化合物とは、エーテル基、スルホン基、ケトン基、スルフィド基等の柔構造を有するジアミン化合物であり、好ましくは、下記一般式(3)で表されるものである。
【0076】
【化3】

【0077】
(ただし、式中のR4 は、次に示す群(4)
【0078】
【化4】

【0079】
で表される2価の有機基から選択される基であり、群(4)中のR5 は同一であっても異なっていてもよく、−H、−CH3、−OH、−CF3、−SO4、−COOH、−CO-NH2、−Cl、−Br、−F、および−CH3Oからなる群より選択される1種の基である。)
<熱可塑性ポリイミド>
本発明において製造されるポリイミド系多層フィルムが接着フィルムである場合、表面層(外層)として好適に用いられる熱可塑性ポリイミド層は、ラミネート法により有為な接着力が発現される層であれば、当該層に含まれる熱可塑性ポリイミドの含有量、分子構造、厚み等の諸条件は特に限定されるものではない。しかしながら、有為な接着力を発現させるためには、実質的には熱可塑性ポリイミドを50重量%以上含有することが好ましい。なお、上記耐熱性ポリイミド層と同様、熱可塑性ポリイミド層の形成に用いられるポリアミド酸溶液(ポリイミド系ワニス)を、便宜上、熱可塑性ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド系ワニス)と称する。
【0080】
上記熱可塑性ポリイミド層に含有される熱可塑性ポリイミド(広義)としては、熱可塑性ポリイミド(狭義)、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。中でも、低吸湿特性の点から、熱可塑性ポリエステルイミドが特に好適に用いられる。なお、上記熱可塑性ポリイミド(広義)は、上記耐熱性ポリイミド層と同様に、前駆体のポリアミド酸からの転化反応により得ることができ、当該ポリアミド酸の合成方法や用いるモノマー成分としても、前記と同様に公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0081】
なお、上記熱可塑性ポリイミド(広義)は、使用するモノマー成分を種々組み合わせることにより、諸特性を調節することができるが、一般に剛直ジアミン成分の使用比率が大きくなるとTgが高くなったり熱時の貯蔵弾性率が大きくなったりして、接着性・加工性が低減するため好ましくない。全ジアミン成分中の剛直ジアミン成分の比率は、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。上記熱可塑性ポリイミドの好ましい具体例としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物類を含む酸二無水物成分とアミノフェノキシ基を有するジアミン成分とを重合させたものを挙げることができる。
【0082】
また、既存の装置でラミネートが可能であり、かつ得られるポリイミド系多層フィルムの耐熱性を損なわない点から考えると、上記熱可塑性ポリイミド(広義)は、ガラス転移温度(Tg)を150〜300℃の範囲内に有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
【0083】
このように、本発明では、製造しようとするポリイミド系多層フィルム(例えば、接着フィルム等)に要求される物性を実現できるように、上記の範囲内で、適宜、酸二無水物成分およびジアミン成分の種類や配合比等を決定して用いればよい。
【0084】
<フィラー>
本発明にかかる製造方法では、上記のようにして得られるポリイミド系ワニスに対して、ポリイミドおよび溶媒以外の成分を適宜添加してもよい。添加される他の成分としては、特に限定されるものではなく、得られるポリイミド層やポリイミド系多層フィルムに要求される物性等に応じて適宜好ましい成分を好ましい範囲内で選択して用いればよい。
【0085】
具体的な成分としては、例えば、フィラーを挙げることができる。フィラーは、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等の諸特性を改善する目的で添加することができる。フィラーとしては具体的には特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母等の無機化合物を挙げることができる。また、必要に応じて有機化合物のフィラーを添加してもよい。
【0086】
上記フィラーの粒子径は、改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類とによって決定されるため特に限定されるものではないが、一般的には、平均粒径が0.05〜100μmの範囲内であればよく、0.1〜75μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜50μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜25μmの範囲内であることがさらに好ましい。粒子径が上記範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。
【0087】
また、フィラーの添加量についても特に限定されるものではなく、改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などにより決定される。一般的には、フィラーの添加量は、ポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜90重量部の範囲内であることがより好ましく、0.02〜80重量部の範囲内であることがさらに好ましい。フィラー添加量が上記の範囲を下回るとフィラーによる改質効果が現れにくく、上記の範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。
【0088】
さらに、フィラーの添加方法も特に限定されるものではなく、例えば、(1)重合前または途中に重合反応液に添加する方法、(2)重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法、(3)フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸溶液(ポリイミド系ワニス)に混合する方法等のいかなる方法を用いてもよいが、中でも(3)の方法を好ましく用いることができる。上記(3)の方法を選択する場合、特に、支持体上に製膜する直前に混合することが好ましい。これにより、製造ラインがフィラーによる製造ラインの汚染が最も少なくすむ。
【0089】
上記フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリイミド系ワニスの溶媒、またはポリアミド酸の合成用溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために、必要に応じて分散剤や増粘剤等を、フィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
【0090】
さらに、上記フィラー以外にも、ポリイミド層に要求される諸特性を向上させる等の目的で、ポリイミド以外の他の樹脂成分を添加してもよい。
(III)本発明の利用
本発明の利用(用途)は特に限定されるものではないが、フレキシブルプリント配線板(FPC)等のエレクトロニクス分野に好適に用いることができる。さらに、表面に接着剤を塗布した耐熱性の接着テープ、電線被覆用の絶縁テープ等にも用いることができる。すなわち、本発明には、上記ポリイミド系多層フィルムを用いたFPCの絶縁基板や耐熱性接着テープ、絶縁テープやその製造に用いられ、上記ポリイミドフィルムからなる層を含む積層体等を挙げることができる。
【0091】
本発明にかかる積層体は、上記ポリイミド系多層フィルムを含む多層構造を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、ラミネート法により金属層を積層したフレキシブル金属張積層板を挙げることができる。積層される金属層の材質は特に限定されるものではないが、例えば、FPCに用いる場合には、パターン配線となる銅層を挙げることができる。もちろん、本発明にかかる積層体には、上記以外の他の層が含まれていてもよいことは言うまでもない。
【0092】
また、本発明には、上記ポリイミド系多層フィルムをベースフィルムとして製造されるか、上記フレキシブル金属張積層板を用いて製造される上記フレキシブル配線板も含まれる。当該フレキシブル配線板は、金属層すなわちパターン配線と絶縁層との密着性に優れているため、優れた品質を有している。なお、当該フレキシブル配線板の製造方法は特に限定されるものではなく、公知公用で当業者であれば採用し得る種々の方法を用いることができる。
【実施例】
【0093】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における多層フィルムにおける各層の厚み測定は次のようにして評価した。
【0094】
〔多層フィルムの各層の厚み測定〕
赤外線分光法により、各層の膜厚を幅方向2.5cm間隔で測定した。測定装置として、日本分光社製、商品名:FT/IR−4000を用い、積算回数32回、反射および入射角13°の条件で測定を行った。各層の平均厚みに対して、バラツキが±15%以内の場合○、それを超える場合を×として評価した。
【0095】
〔合成例1;耐熱性ポリアミド酸溶液の合成〕
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)239kgに、4,4’−オキシジアニリン(ODA)6.9kg、p−フェニレンジアミン(p−PDA)6.2kg、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)9.4kgを溶解した後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)10.4kgを添加し1時間撹拌して溶解させた。ここに、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)20.3kgを添加し1時間撹拌して溶解させ、反応液とした。
【0096】
別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.9kg:7.0kg)を上記反応液に徐々に添加しながら攪拌し、粘度が3500ポイズ程度に達したところで添加および攪拌を止めた。その後1時間攪拌を行うことにより耐熱性ポリアミド酸溶液(耐熱性ポリイミド系ワニス)を得た。得られた耐熱性ポリアミド酸溶液の固形分濃度は18重量%であり、23℃での回転粘度が3500ポイズであった。
【0097】
〔合成例2;熱可塑性ポリアミド酸溶液の合成〕
300Lの反応槽にDMFを78kg、BAPPを11.56kg仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)7.87kgを徐々に添加した。続いて、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TMEG)を0.38kg添加し、氷浴下で30分間攪拌し、反応液とした。
【0098】
別途調製しておいたTMEGのDMF溶液(TMEG:DMF=0.2kg:4kg)を上記反応液に徐々に添加しながら攪拌し、粘度が3300ポイズに達したところで添加および攪拌を止めた。これにより、熱可塑性ポリアミド酸溶液(熱可塑性ポリイミド系ワニス)を得た。
【0099】
〔実施例1〕
合成例1で得られた耐熱性ポリアミド酸溶液に対して、化学脱水剤として無水酢酸を、触媒としてイソキノリンを添加した。無水酢酸は、当該耐熱性ポリアミド酸溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して2.0モルとなるような添加量とし、イソキノリンは、当該耐熱性ポリアミド酸溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.5モルとなるような添加量とした。
【0100】
押出手段として、リップ幅650mmのマルチマニホールド式の3層共押出多層ダイを用いるとともに、支持体として、SUS製のエンドレスベルトを用いた。上記3層共押出多層ダイとエンドレスベルト表面との間隔は15mmに設定した。
【0101】
上記3層共押出多層ダイに対して、合成例2で得られた熱可塑性ポリアミド酸溶液を外層となるように、上記耐熱性ポリアミド酸溶液を内層となるように供給し、これらポリアミド酸溶液(ポリイミド系ワニス)をエンドレスベルト上に連続的に押し出し、流延することにより、表面から熱可塑性ポリアミド酸溶液の液膜/耐熱性ポリアミド酸溶液の液膜/熱可塑性ポリアミド酸溶液の液膜からなる3層構造の多層液膜を形成した。この多層液膜を130℃、100秒の条件で加熱することにより自己支持性を有する多層ゲルフィルムへ転化させた。
【0102】
得られた多層ゲルフィルムをエンドレスベルトから引き剥がして両端部をテンタークリップに固定し、300℃×16秒、400℃×29秒、450℃×17秒の条件で乾燥およびイミド化させた。これにより、熱可塑性ポリイミド層/耐熱性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層からなる3層構造の多層フィルムを得た。
【0103】
得られた多層フィルムから、テンタークリップで固定した両端部をトリミング除去して中央500mm幅のサンプルを切り出し、当該サンプルにおいて各層の厚みを測定し、膜厚のバラツキを評価した。その結果を表1に示す。なお、多層フィルムの一方の外層(ステンレスベルトに接していない側の外層)である熱可塑性ポリイミド層を第1層とし、内層の耐熱性ポリイミド層を第2層とし、他方の外層である熱可塑性ポリイミド層を第3層とした。また、膜厚のバラツキは平均膜厚に対するパーセンテージで示した。
【0104】
〔実施例2〕
上記3層共押出多層ダイとエンドレスベルト表面との間隔を23mmに設定した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造し、サンプルを切り出して各層の厚みを測定するとともに膜厚のバラツキを評価した。その結果を表1に示す。
【0105】
〔実施例3〕
上記3層共押出多層ダイとエンドレスベルト表面との間隔を5mmに設定した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造し、サンプルを切り出して各層の厚みを測定するとともに膜厚のバラツキを評価した。その結果を表1に示す。
【0106】
〔比較例1〕
上記3層共押出多層ダイとエンドレスベルト表面との間隔を30mmに設定した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造し、サンプルを切り出して各層の厚みを測定するとともに膜厚のバラツキを評価した。その結果を表1に示す。
【0107】
〔比較例2〕
上記3層共押出多層ダイとエンドレスベルト表面との間隔を2mmに設定した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造しようと試みた。しかしながら、多層ゲルフィルムにおいて欠陥点が多く生じており、結果として良好な外観の多層フィルムを得ることができなかった。
【0108】
【表1】

【0109】
表1の結果から明らかなように、本発明にかかる製造方法であれば、ネックイン現象の発生を事実上防止できるため、各層の膜厚のバラツキが小さい多層フィルムを製造することができるのに対して、押出手段と支持体との距離が本発明において規定されている間隔から外れると、単に、各層の膜厚のバラツキが大きくなりやすいだけでなく、外観の良好なフィルムを得ることも困難となる場合があることが分かった。
【0110】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上のように、本発明では、共押出−流延塗布法において化学キュア法を採用する場合に、押出手段と支持体との間隔を特定の範囲内に規定する。これにより、化学キュア法の採用により生じやすくなるネックイン現象を有効に抑制することができるため、低コストで、膜厚のバラツキが少ない高品質な多層フィルムを製造することが可能となる。そのため、本発明は、ポリイミド系の多層フィルムを製造する分野に利用することができるだけでなく、さらには、これを用いたFPC、TAB、あるいは高密度記録媒体やその利用分野等といった、各種電子部品の製造に関わる分野にも広く応用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種以上のポリイミド層を有する多層フィルムの製造方法であって、
ポリイミド樹脂の前駆体またはポリイミド樹脂を含有する溶液を、少なくとも2種以上、押出手段から同時に支持体上に押し出して流延することにより複数層が積層された多層液膜を形成する多層液膜形成工程を含んでおり、
上記押出手段の先端部分から支持体表面まで距離を、2mmを超え25mm以下に設定することを特徴とするポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項2】
上記押出手段として、共押出多層ダイが用いられることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項3】
上記溶液の少なくとも1種には、化学脱水剤および触媒が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項4】
上記化学脱水剤は、添加対象となる溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.5〜4.0モルの範囲内となるように、当該溶液に添加されることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項5】
上記化学脱水剤の添加量が添加対象となる溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して1.0〜3.0モルの範囲内となっていることを特徴とする請求項4に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項6】
上記触媒は、添加対象となる溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.05〜2.0モルの範囲内となるように、当該溶液に添加されることを特徴とする請求項3に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項7】
上記触媒の添加量が添加対象となる溶液に含有されるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して0.05〜1.0モルの範囲内となっていることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項8】
上記ポリイミド系多層フィルムが、耐熱性ポリイミドを含有する基盤層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドを含有する接着層を積層してなる接着フィルムであることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項9】
上記基盤層の形成には、耐熱性ポリイミドの前駆体を含有する溶液が用いられるとともに、上記接着層の形成には、熱可塑性ポリイミドの前駆体および/または熱可塑性ポリイミドを含有する溶液が用いられることを特徴とする請求項8に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1項に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法を用いて製造されるポリイミド系多層フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載のポリイミド系多層フィルムを絶縁層として備えるとともに、当該絶縁層に直接積層される金属層とを備えることを特徴とするフレキシブル金属張積層板。
【請求項12】
請求項10に記載のポリイミド系多層フィルムを絶縁層として用いてなるフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2006−218767(P2006−218767A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35066(P2005−35066)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】