説明

ポリウレタン層の製造法、これにより得られたポリウレタン層、及びその人工革としての使用法

本発明は方法、特に溶剤なしでポリウレタン層を製造する方法及び人工革としてのそれの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン層の製造方法、特に溶剤を用いない方法及び人工革としての利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工革の製造のためにポリウレタン樹脂を使用することは、例えば特許文献1で知られている。そこには最適な樹脂が記載されている。人工革(合成皮革)を製造するために、当該技術分野では2つの方法が習慣的であり、それぞれドライ方法及びウエット方法として知られている。ドライプロセスでは典型的にポリウレタン樹脂を用いるのに対して、ウエットプロセスではポリウレタン懸濁液が用いられる。図1にドライプロセスを、図2にウエットプロセスを図示している。
【0003】
図1及び2において、符号は以下のものを意味している。
1 リリース層(剥離層)
2 ポリウレタン樹脂の溶剤での適用
3 ナイフコータ
4 オーブン(炉)
5 冷却ロール
6 基板層
7 積層ローラ
8 冷却ドラム
9 製品スピンドル
10 ポリウレタン懸濁液の適用
11 凝固浴室
12 洗浄浴室
13 圧搾ローラ
14 人工革(合成皮革)
【0004】
上記2つの方法は共通して、コスト高であり、且つ不便な点がある。特に、方法内でポリウレタン樹脂、ポリウレタン懸濁液をそれぞれ溶解するために多量の溶剤を用いなければならない。
【0005】
【特許文献1】欧州特許公開 EP1143063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の方法よりも低コストで不便な点がない、特に人工革として有用なポリウレタン層を製造する方法を提供することにある。本発明の目的は、特に、人工革として有用なポリウレタン層を溶剤なしで製造する方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、例えば略20〜40mの短い製造ラインで実現される、人工革として有用なポリウレタン層を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の目的は、溶剤の中でポリウレタンを塗布するのではなく、ポリウレタンを形成するために、塗布された後に硬化されるポリウレタン組成成分により達成されることが解った。更に、本願発明の目的は、特別に開発されたポリウレタン組成成分を塗布することにより達成されることが解った。
【0008】
従って、本願発明は以下の工程から成るポリウレタン層の製造方法を提供する。
i)リリース層(剥離層)を設ける工程
ii)リリース層の上にポリウレタン組成成分を塗布する工程
iii)適切であるならばポリウレタン組成成分の上に基板層を塗布する工程
iv)ポリウレタン層を形成するためにポリウレタン組成成分を硬化する工程
v)ポリウレタン層からリリース層を分離する工程。
【0009】
本願発明の方法は、本願発明に一致するポリウレタン層を製造するのに役立つ。ポリウレタン層の厚さは、典型的に0.01〜20mmの範囲、好ましくは0.1〜10mmの範囲、より好ましくは0.5〜5mmの範囲である。
【0010】
本願発明は、同様に、本願発明の方法により得ることが可能なポリウレタン層を供給する。
【0011】
本願発明の方法は、工程i)でリリース層を含む。原理的に、リリース層は上部にポリウレタン組成成分が塗布でき、それがポリウレタンを形成するために反応し、結果として生じるポリウレタンがリリース層から再び剥離されればどんな層でも良い。
【0012】
リリース層の厚さは、典型的に0.001〜10mm、好ましくは0.01〜5mm、特に好ましくは0.1〜2mmの範囲である。
【0013】
有用なリリース層は、当該技術分野では代表的に剥離紙として知られている。有用なリリース層の例として、例えば、金属、プラスチック又は紙から成る箔である。
【0014】
実施の形態で使用されているリリース層は、プラスチック被覆を有する又は有しない紙の層である。望ましくは、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンを被覆した紙の層である。紙の層に対して好ましい代案は、シリコーンを被覆することである。
【0015】
他の実施の形態では、用いられているリリース層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり、それには適切であればプラスチックが被覆されている。望ましくは、ここでPET層にはポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンが被覆されている。PET層に対して好ましい代案は、シリコーンを被覆することである。
【0016】
有用なリリース層の幾つかは商業的に入手可能である。この分野で有名な製造元は、サッピ(Sappi)、米国のWarren、イタリアのBinda、英国/米国のArjoWiggins、及び日本のLintecである。
【0017】
用いられるリリース層は、滑らかか平でない表面を持つ。ここで、リリース層のアイデンティティは、本発明の方法で生じる重合体層の望ましい表面に依存する。結果として得られるポリウレタン層に滑らかな表面を望むなら、リリース層も同様に滑らかな表面を持たせる。結果として得られるポリウレタン層に平でない又はパターン化された表面を望むなら、リリース層も同様に平でない又はパターン化された表面を持たせる。
【0018】
リリース層は、製品が革目を有するように模様を施されると好ましい。
【0019】
ポリウレタン組成成分は、本発明の方法の(ii)工程で、リリース層の上部に塗布される。それらはリリース層の一方の上にのみ塗布される。
【0020】
ポリウレタン組成成分は、好ましくは均一に塗布される。即ち、ポリウレタン組成成分はリリース層の全表面がポリウレタン組成成分で覆われるように塗布される。
【0021】
ポリウレタン組成成分は、一般に、適当な厚さのポリウレタン層を形成するために重合可能なポリウレタン組成成分の層を塗布する全ての方法を用いて塗布可能である。好ましくは注型(casting)又は吹き付け(spraying)により塗布される。
【0022】
注型は、混合ヘッドによる液体原料(ポリウレタン組成成分)の塗布に適用される。通常、高い又は低い圧力下で操作される混合ヘッド、例えば、計測ユニットとして使用されるKraus MaffeiのPuromatsを使用することが好ましい。原料は原料の層流の中で塗布される。
【0023】
吹きつけは、スプレイヘッドによる液体原料の塗布に適用される。スプレイヘッドは、原料に霧を吹いて小滴、特に細かい小滴にする。スプレイの扇形の噴射が方法で形成される。ここで、ポリウレタン組成成分が、直径1〜500μm、より好ましくは10〜100μmの粒子(粒子は小滴の形で存在する)の形でスプレイ塗布されるのが好ましい。
【0024】
ポリウレタン組成成分は、代表的に本発明の方法では、結果として得られるポリウレタン層0.01〜20mm、好ましくは0.1〜10mm、特に好ましくは0.5〜5mmの範囲となるように塗布される。
【0025】
ポリウレタン組成成分は、代表的にイソシアネート成分(a)とポリオール成分(b)を含む。
【0026】
イソシアネート成分(a)は、ポリイソシアネートを含む。使用するポリイソシアネートは、通例の脂肪族、環化脂肪族及び、特に芳香族のジ−ポリイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを含む。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びジフェニルメタンジイソシアネートとポニフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(重合体MDI)との混合物、特にジフェニルメタンジイソシアネート(単量体MDI)の使用に対して選択が与えられる。
【0027】
イソシアネート又は他の下記に記すイソシアネートプレポリマーは、例えば、ウレトジオン、カーバメート、イソシアニュレート、カーボジイミド、又はアロファネート基の混入により調整することができる。更に様々なイソシアネート混合を使うことが可能である。カーボジイミドで調整したイソシアネートが好ましく用いられる。それらは、イソシアネート成分(a)の総重量を基礎として、1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%の量が用いられる。
【0028】
ポリイソシアネート(a)は、ポリイソシアネートプレポリマーの形で用いることもできる。これらのプレポリマーは当該技術分野では周知である。これらは、上述のポリイソシアネート(a)を、下記に記載した、プレポリマーを形成するためにイソシアネート反応性水素原子を有する成分(b)と通常の方法で反応させることで準備される。反応は、例えば約80℃で行うことができる。ポリオール/ポリイソシアネートの比率は、プレポリマーのNCO内容物が8〜25質量%、好ましくは10〜24質量%、より好ましくは13〜23質量%の範囲であるように選ばれる。
【0029】
ジフェニルメタンジイソシアネートとポリテトラヒドロフラン(PTHF)の混合物は、特にPTHFが1000〜2500の範囲の平均分子量を有するときは、イソシアネート成分(a)としてより好ましい。この混合物のNCO内容物は、好ましくは14〜22%、より好ましくは16〜20%である。
【0030】
ポリオール成分(b)は、原理的にイソシアネート反応性水素原子を有する化合物を含む。これらの化合物は、OH基、SH基、NH基、NH2基、及び酸性CH基から選ばれた2つかそれ以上の反応性基を生み出すもの、例えば分子中でβ−ジケト(diketo)基である。成分(b)の選択に依存して、“ポリウレタン”という語は、本発明の範囲では例えば、ポリウレアを含み、一般にポリイソシアネート重付加生成物を意味する。
【0031】
ポリオール成分(b)は、好ましくはポリエーテルオール(polyetherols)及びポリエステルオール(polyseterols)を含む。これらは周知であり、例えば「“Kunststoffhandbuch Polyurethane”, Guenter Oertel, Carl-Hanser-Verlag, 2nd edition 1983, chapter 3.3.3」に記載されている。当該技術分野で慣用的な他の呼称は、一方はポリエーテルポリオール又はポリエーテルアルコール、他方はポリエステルポリオール又はポリエステルアルコールである。
【0032】
ポリエステルオールを用いた場合、これらは代表的に2〜12の炭素原子、好ましくは2〜6の炭素原子を持つ多官能性アルコールと2〜12の炭素原子を持つ多官能性カルボン酸との縮合により調製される。多官能性カルボン酸は、例えば、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、そして好ましくはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸各異性体である。
【0033】
ポリエーテルオールを用いた場合、これらは一般的に周知の方法で調製される。例えば、触媒としてのアルカリ金属水酸化物を用い、酸化プロピレン(PO)及び酸化エチレン(PO)、酸化ブチレン及びテトラヒドロフランから選ばれた一つかそれ以上の酸化アルキレンから複数の反応性水素原子を含む開始剤分子を添加して、イオン重合により準備される。
【0034】
有用なポリエーテルオール(b)は、更に周知の低不飽和ポリエーテルオールを含む。本発明における低不飽和ポリオールとは、特に不飽和化合物を0.02meq/g未満、好ましくは0.01meq/g未満含むポリエーテルアルコールである。この種のポリエーテルアルコールは、酸化エチレン及び/又は酸化プロピレン及びこれらの混合物を所謂2重金属シアン化促進物の存在下で、少なくとも二官能性のアルコールに添加することにより調製される。
【0035】
酸化アルキレンは、個々に、連続して交互に、又は混合物として使用することができる。EO−PO混合物の使用は、ランダムに分布したPO/EOユニットを有するポリエーテルポリオールを与える。PO−EOの混合物から始めて、重合が終了する前に、PO又はEOを使用することが可能である。すると生産物は、それぞれPOエンドキャップ又はEOエンドキャップを有するポリエーテルポリオールとなる。
【0036】
使用する開始剤分子は、典型的には水、アミン又はアルコール等のNH又はOH基化合物である。六価のアルコール類にジ(di-)を使うことに選択が与えられている。それらは、エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、及び/又はソルビトールである。
【0037】
テトラヒドロフランの開環重合により得られるポリエーテルオールを使用することが好ましい。これらのポリテトラヒドロフランは約2の官能性を有すると好ましい。それらは、更に、500〜4000g/mol、好ましくは700〜3000g/mol、より好ましくは900〜2500g/molの範囲の平均分子量を持つと更に好ましい。ポリテトラヒドロフラン(=PTHF)は、当該技術分野では、テトラメチレングリコール(=PTMG)、ポリテトラメチレングリコールエーテル(=PTMEG)又は酸化ポリテトラメチレン(=PTMO)の呼称で知られている。
【0038】
後述するポリエーテルポリオールと同様に、ポリオール成分(b)もまた慣習的な連鎖延長剤を有する。
【0039】
一つの実施の形態では、ポリオール成分は、下記から選ばれた一つ又はそれ以上の成分を含む。
(b−1)500以上3000g/mol以下の平均数分子量を有するポリオール、好ましくはポリエーテルポリオール。
(b−2)3000〜8000g/molの範囲の平均数分子量を有するポリオール、好ましくはポリエーテルポリオール。
(b−3)400g/mol以下の分子量を持つ連鎖延長剤。
【0040】
一実施の好ましい形態では、成分(b−1)は、数平均分子量が500以上300g/mol未満、好ましくは800〜2500g/molの範囲、より好ましくは1000〜2200g/molの範囲であるポリエーテルオール、又はポリエステルオール、より好ましくはポリエーテルポリオールを成分(b1)として含む。
【0041】
成分(b−1)は、典型的に1.8〜3、より好ましくは1.9〜2.1、特別には2.0の平均官能性を有する。ここで、官能性は用いた開始剤分子の官能性から計算した“理論的なOH官能性”に言及している。
【0042】
ポリテトラヒドロフランが成分(b−1)としてより好ましく用いられる。より特別に、1000〜2000g/molの数平均分子量を有するポリテトラヒドロフランが用いられる。
【0043】
成分(b−1)は、典型的に成分(b)の総重量に対して、成分(b)に30〜100質量%、好ましくは50〜90質量%、存在する。
【0044】
一実施の好ましい形態では、成分(b−2)は、数平均分子量が3000〜8000g/mol、好ましくは3500〜7000g/molの範囲、より好ましくは4000〜6000g/molの範囲であるポリエーテルオール、又はポリエステルオール、より好ましくはポリエーテルポリオールを成分(b1)として利用する。
【0045】
成分(b−2)は、典型的に1.9〜6、より好ましくは2.3〜4、特別には3.0の平均官能性を有する。ここで、官能性は用いた開始剤分子の官能性から計算した“理論的なOH官能性”を意味する。
【0046】
成分(b−2)は、より好ましくは、グリセロール又はトリメチロールプロパンのプロポキル化及び/又はエトキシル化により得られる、特別にEOエンドブロックを有するポリエーテルポリオールである。このポリエーテルポリオールは、好ましく4500〜6000g/molの範囲の数平均分子量を有している。
【0047】
成分(b−2)は、典型的に成分(b)の総重量に対して、成分(b)に5〜80質量%、好ましくは10〜30質量%、存在する。
【0048】
ポリオール成分(b)は、更に成分(b−3)として連鎖延長剤を有する。有用な連鎖延長剤は、当該技術分野では周知である。分子量400g/mol以下、特に60〜150g/molの範囲の2−アルコール類を使うことに対して選択が与えられている。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールである。1,4-ブタンジオールが好ましい。
【0049】
連鎖延長剤は、典型的に成分(b)の総重量に対して、5〜20質量%、好ましくは7〜16質量%、より好ましくは9〜15質量%用いられる。
【0050】
一実施の好ましい形態では、ポリウレタン組成成分(a)と(b)の反応は、発泡剤の存在下で行われる。結果として得られるポリウレタン層は、質の密な(compact)ポリウレタンである。本発明の範囲内では、質の密なポリウレタンは、発泡剤を添加することなしに生産されたポリウレタンを指す。本実施の形態で得られるポリウレタン層は、密度が通常は0.6〜1.2kg/literの範囲、好ましくは0.8〜1.1kg/literの範囲である。
【0051】
しかしながら場合に応じ、ポリオール成分(b)は、技術的な理由から少量の残留水を含むことがある。これは、特に成分(e)として水トラップを用いなかった場合である。残留水の含有量は、用いた成分(b)の総重量に対して0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下である。
【0052】
他の実施の形態では、成分(a)と(b)の反応に発泡剤(c)を添加しても良い。発泡剤を添加することで、結果として得られるポリウレタン層の通気性(breathability)に改良がもたらされる。
【0053】
有用な発泡剤は、通常、周知の化学的に又は物理的に作用する化合物を含む。水は、化学的な発泡剤として使用することができる。物理的な発泡剤の例は、4〜8炭素原子を有し、好ましくは60℃未満の沸点を有する不活性(環化)脂肪族炭化水素である。
【0054】
使用した発泡剤は、一般に成分(b)〜(f)の総質量に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。本実施の形態で得られるポリウレタン層は、一般的に0.5〜1.1kg/liter、好ましくは0.7〜0.9kg/literの密度を持つ。
【0055】
一実施の形態では、ポリオール成分(b)は成分(d)を含む。成分(d)は、フィラーを含む。ポリウレタン化学の分野で通例のフィラーは一般に適切である。適切なフィラーの例としては、ガラス繊維、無機物繊維、亜麻、黄麻、シサル麻等の天然繊維、ガラス小片、マイカやグリマー(glimmer)等の珪酸塩、炭酸カルシウム、チョーク、石こう等の塩である。
【0056】
配向を受けている時に、ポリウレタン層にクラックを生成するフィラーを使用することは好ましい。一般に、これらのクラックは通気性を高める。フィラーとして炭酸カルシウムがより好ましい。
【0057】
成分(b)〜(f)の総重量に対して、成分(d)は一般的に0.5〜60質量%、好ましくは3〜10質量%が用いられる。
【0058】
一実施の好ましい形態では、ポリオール成分(b)は成分(e)を含む。成分(e)は水トラップを含む。ポリウレタン化学の分野で知られている通常の水トラップは、一般に適切である。適切な水トラップの例はゼオライトである。特に、ゼオライトペーストの形が良い(例に挙げたものはBaylith(登録商標)のLPaste3Aである)。
【0059】
成分(e)は代表的に、成分(b)〜(f)の総質量に対して一般的に1〜10質量%、好ましくは3〜8質量%、用いられる。
【0060】
一実施の形態では、成分(a)と(b)の反応は、触媒(f)の存在下で行われる。通常の知られているポリウレタン形成触媒が、本発明のポリウレタンフォームを生産するために任意に触媒として使用される。例えば、錫ジアセテート、錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、及び/又はジアザビシクロオクタン、トリエチルアミン、又は好ましくはトリエチレンジアミン等の基礎的なアミン、又はビス(N、N−ジメチルアミノエチル)エーテルである。
【0061】
成分(f)は、成分(b)〜(f)の総質量に対して、一般的に0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%、使用される。
【0062】
必要に応じて、成分(a)と(b)の反応は、更に補助的及び/又は付加的な材料の存在下で行われる。その材料は、例えば、気泡調整剤、剥離剤、顔料、表面活性化合物、及び/又は酸化、熱、加水分解、微生物による劣化又はエージングに対して作用する安定剤である。
【0063】
成分(c)、(d)、(e)、(f)は、イソシアネート(a)とポリオール成分(b)との反応に直接に添加しても良いし、反応の前に2つの成分(a)及び/又は(b)に添加しても良い。好ましくは、反応の前に、ポリオール成分(b)に、成分(c)、(d)、(e)、(f)を添加するのが良い。
【0064】
本発明の方法は、反応してNCO基の反応性水素原子の総和に対する当量比が、1:0.8〜1:1.25の範囲、好ましくは1:0.9〜1:1.15の範囲であるような量の成分(a)と(b)を有する。1:1の比率はNCOの指数が100に対応する。
【0065】
一実施の好ましい形態は、ポリウレタン組成成分は本質的に溶剤を含んでいない。換言すれば、成分(a)と(b)だけでなく、成分(c)、(d)、(e)、(f)も本質的に溶剤を含んでいない。“本質的に溶剤を含んでいない”とは、製造による不純物は別として、それらは溶剤を含んでいない、またそれらの成分には溶剤は加えられていないという意味に理解される。このように、溶剤性成分は、成分(a)〜(f)の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満である。
【0066】
“溶剤”という語は当該技術分野で常識である。本発明の範囲の溶剤は、物理的な仕方で他の固体原料を溶解することが可能な有機及び無機液体を包含するような最も広い意味で理解されるべきである。溶剤として有用な材料に必要なことは、溶解している原料も溶解した原料も、溶解の方法中に化学変化を受けないことである。このように、溶解した成分は、例えば蒸留、結晶化、昇華、蒸発及び/又は吸着等の分離の物理的な方法により取り戻され得る。
【0067】
本発明では、ポリウレタン組成成分は本質的に有機溶剤を含んでいない。更に詳しくは、ポリウレタン組成成分は、本質的にエーテル又はグリコールエーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、単量体テトラヒドロフラン等)、ケトン(アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン等)、エステル(エチルアセテート等)、窒素化合物(ジメチルフォルムアミド、ピリジン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等)、ニトロ化合物(ニトロベンゼン等)、(ハイドロ)ハロカーボン(ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1、2−ジクロロエタン、クロロフルオロカーボン等)、好ましくは沸点が60℃を超過であるハイドロカーボン(オクタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)を含んでいない。
【0068】
本発明の方法は、成分(a)と(b)、及び、場合によりShore A 硬さ(ドイツの標準規格DIN53505に従って測定)が、硬化後に20〜90の範囲、好ましくは50〜75の範囲になるように選択された(c)と(f)を用いて実行される。例えば、ポリイソシアネートプレポリマーに対してNCO成分の適切な選択を通して好ましい硬さが得られる。
【0069】
本発明による方法の付加的な工程(iii)は、ポリウレタン組成成分の上部に基板層を塗布することを含んでいる。基板層は、ポリウレタン組成成分が十分に硬化しない間、即ち、OH基を有するイソシアネート基の反応が続いている間は、塗布される。
【0070】
原理的に基板層は、結果として得られるポリウレタン層との付着結合を形成できるどんな層でもあり得る。
【0071】
基板層の厚さは、一般的に0.01〜20mmの範囲、好ましくは0.1〜10mm、特別には1〜5mmの範囲である。
【0072】
有用なリリース層は、例えば、金属、プラスチック、革及び/又は織物材料から成る箔である。
【0073】
本発明の方法では様々な基板層が使用可能である。例えば、
織物基板層:この場合、基板層は、一つかそれ以上、同一又は異なる堅固に連結した撚りから成り得る。例えば、狭く又は広くかみ合った織物、ニット、打ちひも(braids)、ネットワーク(ネットクロス)である。
【0074】
中綿(batt)基板層:ランダムに配置された繊維(例えば、フェルト、繊維様織物等)から成るシート状構造物である。これは、バインダによって互いに好ましく結合される。突き合わせ基板層は、通常、セルロースの又は織物の中綿で水が溶解しない含浸剤で結合されている。
【0075】
繊維質基板層:バインダとして用いられるプラスチックにより結合され、ルーズに、ランダムに配置された繊維から成る製造物である。それらは、例えば皮繊維(好ましくは皮廃物、例えば植物でなめした革(vegetable-tanned leather))を8−40質量%のバインダと互いに付着することで得られる。
【0076】
箔基板層:例えばゴム、PVC、ポリアミド、インターポリマー等の金属又はプラスチックから成る(好ましくは均一な)箔を含む製造物である。箔基板層は好ましくは編み込んだ(incorporated)繊維を含まない。
【0077】
一実施の好ましい形態では、皮革層を基板層として利用する。皮革層を用いた場合、当該皮革は好ましくはスプリットレザーとされる。
【0078】
織物層を用いる場合、次の原料が織物層を製造するのに特に適している。即ち、木綿、亜麻布、ポリエステル、ポリアミド、及び/又はポリウレタンである。
【0079】
ポリウレタン組成成分の上に基板層を塗布することは、一般にコンタクティング(contacting)及び続くプレッシング(pressing)によりもたらされる。
【0080】
プレッシングの圧力は、好ましくは0.01〜1バール、より好ましくは0.05〜0.5バールである。プレッシング時間は、0.1〜100秒の間、好ましくは5〜30秒の間である。
【0081】
本発明の方法の工程(iv)は、ポリウレタン層を形成するためポリウレタン組成成分の硬化(curing)工程を含む。この硬化工程は、例えば炉内で温度を上昇させることにより促進される。
【0082】
一実施の好ましい形態では、硬化は10〜80℃の温度範囲で、より好ましくは15〜50℃の温度範囲で、特別には20〜40℃の温度範囲で行われる。
【0083】
硬化操作は、イソシアネート基がOH官能基との反応が基本的に完了するまで継続する。硬化操作の継続時間は、好ましくは0.5〜20分、よりましくは1〜10分、特別には2〜5分である。
【0084】
本発明の方法の工程(iv)は、ポリウレタン層からリリース層を分離する工程が含まれている。分離は、当該技術分野で慣習的な方法により為される。例えば、リリース層は、ポリウレタン層から剥がされる。
【0085】
本発明の方法は、連続法又はバッチ法による操作で実行される。連続法による操作として実行することが好ましい。
【0086】
この明細書中で連続法とは、リリース層と場合により基板層が帯の形で存在し、これが本発明の方法に従って進行し、処理されることを意味する。帯は一般に10〜500m、好ましくは20〜200mの長さである。
【0087】
本発明の連続法の一形態では、リリース層は疑似リリース帯を形成する。リリース層は連続法の始めではスピンドルから巻きを解かれていることが好ましく、戻されており、本発明の方法でポリウレタン層から取り除かれたリリース層は、再びスピンドルに巻かれる。この巻き上げられたリリース層は、本発明の方法で再び使用することができる。即ち、再利用可能である。巻き上げられたリリース層は2〜5回再利用される。
【0088】
本発明の連続法の一形態では、基板層は疑似基板帯を形成する。基板層は、方法の始めではスピンドルから巻きを解かれている。
【0089】
本発明の連続方法は、帯の形のような製品としてのポリウレタン層、場合により基板層と結合している、を供給する。得られる製品はスピンドルに巻き上げられていると好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
従来の方法よりも低コストで不便な点がない、特に人工革として有用なポリウレタン層を製造する方法が提供される。特に、人工革として有用なポリウレタン層を溶剤なしで製造する方法が提供される。更に、例えば略20〜40mの短い製造ラインで実現される、人工革として有用なポリウレタン層を製造する方法が提供される。
【0091】
本発明の実施の形態を図3、4に基づいて詳述する。ここで、数字は以下のものを意味している。
1 リリース層
2 ポリウレタン組成成分の塗布
3 ナイフコータ(任意)
4 炉(任意)
5 冷却ロール(任意)
6 基板層
7 積層ローラ(任意)
8 冷却ドラム(任意)
9 製品スピンドル(任意)
【0092】
好ましい一実施の形態では、本発明の方法で得られるポリウレタン層は配向されている。“配向されている”とは、本明細書中では、ポリウレタン層が固体状態で一つ又は2つの方位(それぞれ、モノ又は単軸及び2軸方位)にテンション又は圧力を受けているという意味で理解されるべきである。この配向により、ディメンション(尺法)が最大10倍、好ましくは1.1〜5倍、より好ましくは1.2〜2倍拡大される。
【0093】
配向により、好ましくは本発明のポリウレタン層の通気性が改良される。本発明のポリウレタン層の通気性は、DIN EN ISO 14268に準じた測定によると、0.5〜15mg/cm2、より好ましくは3.5〜8.5mg/cm2である。
【0094】
本発明の方法により得られるポリウレタン層は、適切であれば基板層に結合しているが、数多くの応用がある。
【0095】
一実施の形態では、本発明によるポリウレタン層は人工革として使用される。従って、本発明は、本発明によるポリウレタン層の人工革としての使用を提供する。
【0096】
本発明は更に、本発明によるポリウレタン層を含むポリウレタン人工革を提供する。本発明の好ましい面は、4,4’-MDIをポリテトラヒドロフランと反応させることにより得られるポリイソシアネートプレポリマー(a)を、ポリテトラヒドロフラン及び1,4-ブタンジオールを含むポリオール成分と反応させることで得られるポリウレタン人工革である。
【0097】
人工革とは、一般的に、プラスチックを用いて作られ、革のような特性及び/又は意図した使用に適する表面構成(例えば、型押し)を有する可とう性を有するシート状の構造物を言う。
【0098】
本発明の人工革は数多くの用途について有用である。例えば、乗り物のシートカバーや内部装飾、スーツケース、バッグ、履物材料、外着等である。
【0099】
他の実施の形態では、本発明のポリウレタン層は、コーティング織物に用いられる。このように、本発明は、本発明によるポリウレタン層のコーティング織物用の使用を提供する。
【0100】
本発明は更に、本発明に従ってポリウレタン層をコートした織物を提供する。一実施の形態では、織物上でのポリウレタン層の厚さは、0.001〜1
mmの範囲、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。本発明の好ましい面は、4,4’-MDIをポリテトラヒドロフランと反応させることにより得られるポリイソシアネートプレポリマー(a)を、ポリテトラヒドロフラン及び1,4-ブタンジオールを含むポリオール成分(b)と反応させることで得られる本発明のポリウレタン層を被覆した織物である。
【0101】
本発明のポリウレタン層を有利にコートした織物の例として、スイムスーツ、特にダイビングスーツ、サーフィングスーツ、スポーツウエア、傘、テントの材料等である。
【0102】
本発明は、このように、本発明により得られるポリウレタン層を含むスイムスーツ、特にダイビングスーツ、サーフィングスーツ、スポーツウエア、傘、テントの材料を提供する。
【実施例】
【0103】
以下の実施例により、本発明を例示する。本発明の方法を図4に示したように実行する。用いたリリース層は表面がざらざらにされた紙(grained paper)である。用いた基板は厚さが1−4mmのスプリットレザーである。
【0104】
以下のポリウレタン組成成分が吹き付けにより塗布される。
イソシアネート成分:
モノマーMDIとPTHFのプレポリマー(分子量2000g/mol):
ポリオール成分:
分子量1000g/molのPTHF69部:
1,4-ブタンジオール15部:
3官能性開始剤のプロポキル化/エトキシル化により得られるポリエーテルオール(分子量5000g/mol)15部:
触媒1部:
【0105】
炉内50℃で硬化させ、リリース層を剥がすことで、非常に視覚上の高い品質を持つ表面がざらざらした人工革を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】従来のドライプロセスの概略構成図である
【図2】従来のウエットプロセスの概略構成図である。
【図3】本発明の方法の概略構成図である。
【図4】本発明の方法の概略構成図である。
【符号の説明】
【0107】
1 リリース層(剥離層)
2 ポリウレタン層の塗布
3 ナイフコータ(任意)
4 炉(任意)
5 冷却ロール(任意)
6 基板層
7 積層ローラ(任意)
8 冷却ドラム(任意)
9 製品スピンドル(任意)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)リリース層を供給する工程
ii)前記リリース層の上にポリウレタン組成成分を塗布する工程
iii)必要に応じて、前記ポリウレタン組成成分の上に基板層を塗布する工程
iv)ポリウレタン層を形成するために前記ポリウレタン組成成分を硬化する工程、及び
v)前記ポリウレタン層から前記リリース層を分離する工程
を含むことを特徴とするポリウレタン層の製造方法。
【請求項2】
前記方法は連続方法であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリウレタン層は0.1〜10mmの厚さであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリウレタン組成成分は、イソシアネート成分(a)とポリオール成分(b)を含み、前記2つの成分には溶剤が含まれていないことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリウレタン組成成分は、発泡剤(c)を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリウレタン組成成分は、フィラー(d)を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(iv)又は(v)で得られるポリウレタン層は、配向されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリウレタン組成成分は、前記リリース層の上に吹き付けられることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の方法により得られることを特徴とするポリウレタン層。
【請求項10】
請求項9に記載のポリウレタン層を人工革用に使用する方法。
【請求項11】
4,4’-MDIをポリテトラヒドロフランと反応させることにより得られるポリイソシアネートプレポリマー(a)を、ポリテトラヒドロフラン及び1、4−ブタンジオールを含むポリオール成分と反応させることで得られることを特徴とするポリウレタン人工革。
【請求項12】
請求項9に記載のポリウレタン層をコーティング織物用に使用する方法。
【請求項13】
4,4’-MDIとポリテトラヒドロフランとの反応により得られるポリウレタン層を、ポリテトラヒドロフラン及び1、4−ブタンジオールを含むポリオール成分で被覆したことを特徴とする織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−532811(P2008−532811A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501316(P2008−501316)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060791
【国際公開番号】WO2006/097508
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】