説明

ポリヒドロキシフェノール及びP−セレクチン結合におけるそれらの使用

ガロイルペプチドの非ペプチド模倣体であるポリヒドロキシフェノール、及び没食子酸提供成分を用いて没食子酸誘導体を製造する方法とともにポリヒドロキシフェノール含有医薬組成物及び栄養薬組成物が提供される。医薬としてのポリヒドロキシフェノールの使用、及び特に、P-セレクチンが中心的に関与する疾患若しくは症状の予防、治療又は診断のための医薬の製造のためのポリヒドロキシフェノールの使用が提供される。同化合物はまた、P-セレクチン発現細胞又は発現組織を狙い撃ちするツールとして、組成物(前記組成物は賦形剤中に更なる活性化合物を含む)中で用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシフェノール、前記の製造方法、前記を含む組成物、及び医薬、特にP-セレクチンが必要とされる疾患又は異常の予防、治療又は診断のための医薬としての前記ポリヒドロキシフェノールの使用に関する。上記の他に、本発明は、P-セレクチン発現細胞を標的として狙い撃ちする物質としてポリヒドロキシフェノールを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冠状動脈疾患(CAD)は西欧では主要な死因となった。高脂血症及びアテローム性硬化症は冠状動脈疾患の主要なリスクメカニズムとみなされ、一方、高血圧、糖尿病及び体重過多は以前に考えられていたものよりも冠状動脈疾患に対して負の影響が少ないかもしれないことを示すいくらかの証拠が存在する。
アテローム性硬化症は、血管壁への単球の付着プロセスによって動脈系の発症部位で始まり、内皮表面の活発な機能的変化の出現によって維持されると考えられる(M.A. Gimbrone et al., Thromb. Haemost. 82(2):722-6 (1999))。
血小板は冠状動脈疾患で主要な役割を演じる(B.A. Osterud, Thromb. Res. 85:1-22 (1997))。血小板は初期アテローム性硬化症病巣部位で見出される。活性化されたとき、血小板は、強力な有糸分裂促進因子(例えば血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子β及び上皮性増殖因子)を分泌し、前記は平滑筋の増殖及びアテローム性硬化症の進行をもたらす。血小板の反応性強化及び偶発的血小板凝集は再発性冠状動脈疾患のより高いリスクを伴う。生理学的な抗血小板代謝物、例えば酸化窒素は血小板グラニュレートシクラーゼを活性化し、環状グアノシン-3',5'-一リン酸を上昇させ、それによってアゴニスト媒介性カルシウム流束の抑制を介して糖タンパク質IIb-IIIa(GPIIb-IIIa)レセプターへのフィブリノゲン結合を低下させる。
いくつかの介入、例えば治療的用量のアスピリンの投与(R. Collins et al., N. Eng. J. Med. 336:847-60 (1997))及び抗酸化剤の補充(C.H. Hennekens, Am. Heart J. 128:1333-6 (1994))による介入は心脈管系疾患のリスクを低下させることが示された。抗血小板薬剤、例えばアスピリン及びクロピドグレルによる治療は、原発性及び二次性冠状動脈発作の発生を顕著に低下させる(C.H. Hennekens, Annu. Rev. Public Health 18:37-49 (1997))。活性化血小板糖タンパク質IIb-IIIaへのフィブリノゲンの結合を阻止する抗体及びペプチドは、冠状動脈の再血管形成処置の結果を改善した。活性化依存血小板抗原もまた、運動、生理学的負荷(D. Rajasekhar, Thromb. Haemost. 77:1002-7 (1997))及び食事療法(M.A. Allman-Farinelli et al., Thromb. Res. 90:163-9 (1998))後の血小板機能における変化を示唆している。
【0003】
近年では、ある種の食事性成分、特に不飽和脂肪酸及びポリフェノールが、多くの細胞性プロセスにおける重要な仲介物質として特定された。De Caterinaら(Atherioscler. Thromb. 14:1829-36 (1994);Prostaglandins Leukot. Essent. Fatty Acids 52:191-5 (1995))の観察によれば、ω-3脂肪酸(総コレステロール及びLDLコレステロールに対して影響を与え、しかもアテローム性硬化症の予防と関連があるようである)は、単球の内皮細胞への粘着に関連する初期のアテローム発生を抑制することによって機能することができる。このプロセスは、内皮の活性化の抑制、すなわちサイトカイン誘発性内皮性白血球粘着分子及び単球粘着に影響する白血球化学誘引物質の協調的発現を介して生じる。したがって、転写因子、核内因子κΒ(NF-κΒ)を含む一般的なシグナルトランスダクション経路が提唱された。
核内因子κΒ(NF-κΒ)の中心的関与はM.A. Carluccioら(Atherioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23(4):622-29(2003))によって確立された。彼らは、オレウロペイン及びヒドロキシチロゾール(オリーブの葉の抽出物の主要成分)が栄養的に対応する濃度で内皮粘着分子の転写発現を阻害し、したがってアテローム予防特性を有することを示した。
いくつかの疫学的及び実験室的研究によって、適度のアルコール消費はアテローム性硬化症及び高脂血症のリスクを低下させ、したがって冠状動脈疾患の発生を低下させることができることが示された(E.B. Rimm et al., BMJ 312:731-36 (1996);D.M. Goldberg et al., Clin. Chim. Acta 237:155-187 (1995))。フランス(北欧の国々および米国と比較して赤ワイン消費が比較的高いが、飽和脂肪の摂取パターンは類似している)では、CADの死亡率はほぼ50%低い。このいわゆる“フレンチパラドックス”(S. Renaud et al., Lancet 339:1523-26 (1992))は、“ワインのタンニン”であるポリフェノールアルコールの主要構成成分が原因であると考えられた。前記は例えば、没食子酸及びカテキン類のフラボノイド((+)-カテキン、(-)-エピカテキン及びプロシアニジンB2を含む)であり、赤ワインに豊富に存在する(S. Rosenkranz et al., Faseb J. 16:1958-76 (2002);P.M. Kris-Etherton et al., Am. J. Med. 113, Suppl.9B:71-88 (2002))。
【0004】
赤ワインに含まれるフェノール物質はヒトのLDLの酸化を阻害することが発見され、したがってアテローム予防特性を有すると説明された。しかしながら、アテローム性硬化症プロセスの減少及びその結果の冠状動脈疾患の予防をLDL酸化の阻害にのみ帰することは困難である。なぜならば、抗酸化剤の多くの血管作用はLDL酸化耐性と関連性がないからである(M.N. Diaz et al., N. Eng. J. Med. 337:408-16 (1997))。
ヒトと動物で実施されたいくつかの実験で、ワインのフェノール化合物は、アラキドネートからプロスタノイドの合成を低下させることによってその作用を発揮することができることが示された。さらにまた、ワインのフェノール分画は酸化窒素によって仲介される血小板の活性を低下させることができることが提唱された。さらにまた、ワインのフェノール成分はビタミンEレベルを増加させ、一方、酸化的ストレスにさらされた血小板の酸化を減少させる。
M.E. Ferrero et al.(Am. J. Clin. Nutr. 68:1208-14 (1998))は、内皮細胞粘着分子-1の発現調節におけるレスベラトロール(resveratrol)(赤ワインに存在するポリフェノール)の役割を示し、したがってレスバラトロールの抗アテローム形成活性は、M.N. Diaz et al.(上掲書)が説明したようなLDLの酸化防止に直接関連するものではないことを示した。
S. Rotondo et al.(Br. J. Pharmacol. 123(8):1691-99 (1998))は、多形核白血球(PMN)の機能的及び生化学的反応に対するtrans-レスベラトロールの作用を調べた(多形核白血球は急性心冠状動脈疾患の病理発生に中心的に関与するといわれている)。彼らの研究結果は、trans-レスベラトロールは活性化されたPMNによる炎症媒介物質の遊離を妨げ、粘着依存トロンボゲン形成PMN機能をダウンレギュレートすることを示した。
最近M.A. Carluccio et al.(Atherioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23(4):622-29 (2003))は、内皮細胞粘着分子-1発現のための転写因子としての核内因子-κΒの中心的関与を確立してFerrero et al.及びS. Rotondo et al.の結論を確認した。
【0005】
D. Rein et al.(Am. J. Cli. Nutrition 72(1):30-35 (2000);J. Nutrition 130(8S):2120S-2126S (2000))は、血小板の活性化に対するココアのプロシアニジン(三量体及び五量体)、エピカテキン及び脱アルコールワイン(DRW)の作用における一連のin vitro及びin vivo実験を実施した。GPIIb-IIIa(PAC-1結合)及び活性化依存血小板エピトープCD62P(P-セレクチン)のフィブリノゲン結合立体配座を認識する蛍光標識モノクローナル抗体を血小板活性化のためのマーカーとして選択した。in vitroで全血に添加された両被検成分はともに、PAC-1結合及び非刺激血小板上でのP-セレクチン発現を増加させたが、エピネフリンに対する反応で血小板の活性化を抑制した。対照的にココアのプロシアニジンは全血中の刺激血小板の活性化を抑制し、一方脱アルコールワインの作用はそれほど重大ではなかった。一般的には、血小板の反応性で観察されたこの抑制的作用は、ワイン及び他の栄養調製物(例えばココア飲料及びチョコレート)中に存在するポリフェノールの心臓保護作用を説明することができる。
さらにまた、P. Russo et al.(Nutr. Metab. Cardiovasc. Dis. 11(1):25-9 (2001))は赤ワインのポリフェノール及び血小板凝集におけるそれらの影響を調べた。彼らは以下の4種類のワインポリフェノール化合物を単離した:フェノール酸(分画1)、プロシアニジン、カテキン及びアントシアニジンモノマー(分画2)、フラボノール及びレスベラトロール(分画3)及びアントシアニジンポリマー(分画4)。ラットでのADP誘発血小板凝集及びc-AMP含有量に対する各分画の影響を脱アルコール赤ワイン(DRW)及び純粋なフェノール化合物(ケルセチン、カテキン、レスベラトロール、カフェー酸)のみのそれと比較した。DRW及びフェノール分画2は両者ともADP誘発凝集を顕著に阻害したが、一方、分画3及び4並びに純粋なフェノール化合物の作用は顕著ではなかった。血小板c-AMP含有量における顕著な増加がDRW及び分画2の添加後に最初に観察された。
【0006】
赤ワイン中のポリフェノールの血小板活性化への影響とそれにより生じるポリフェノールのアテローム予防特性を明らかにするためのまた別のアプローチとして、A.D. Blann et al.(Blood Coagul. Fibrinolysis 13(7):647-651 (2002))は、in vivoで赤ワイン摂取前及び摂取時の血小板活性のマーカー(ベータ-トロンボグロビン及び可溶性P-セレクチン)及び内皮細胞機能のマーカー(フォン-ウィルブランド因子及び可溶性トロンボモジュリン)を調べた。ベータ-トロンボグロビンについてのみ顕著な増加が認められた。前記の実験結果で、赤ワインは内皮に何らの実質的影響を与えることなく血小板を活性化させるという結論が得られた。
Rosenkranz et al.(Faseb J. 16:1958-76 (2002))は、マッシュ発酵時に蓄積する赤ワインの非アルコール性構成成分が、血管平滑筋細胞(VSMC)内の血小板由来増殖因子β(βPDGFR)シグナリング及びPDGF-依存細胞性反応の強力な阻害物質として機能することを観察した。βPDGFRによって開始するシグナルは、血管の発達及びアテローム性硬化症の病理に重要な役割を演じる。VSMCのPDGF依存遊走及び増殖はアテローム形成における決定的な段階である。同じ実験で前記研究者らは、カテキン類の主としてフラボノイドがβPDGFRのPDGF依存チロシンリン酸化を阻害し、一方、没食子酸だけは顕著な影響を仲介しないことを示した。
さらにまた、米国特許第6,133,311号から没食子酸は3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-補酵素A(HMG-CoAレダクターゼ)の活性を阻害することが分かる。HMG-CoAレダクターゼはメバロン酸(ステロール、例えばコレステロール又はイソプレノイドの生合成における中間体)の合成を仲介する(William W. Parmley and Kanu Chatterjee (Eds), Cardiovascular Pharmacology, Wolfe Publishing, 1994)。したがって、前記はコレステロールの生合成速度を低下させ、したがって動脈硬化症及び高コレステロール血症(前記はCADと密接に関係することが知られている)を予防する。
【0007】
米国特許第6,133,311号では、増加した血中コレステロールレベルの制御に利用されるときの没食子酸についてさらに別の作用メカニズムが提唱されている。研究者らは、没食子酸とアシル補酵素-コレステロール-o-アシルトランスフェラーゼ(ACAT)との相互作用に言及している。ACTAは血中コレステロールのエステル化を促進する。泡沫細胞はACATの作用によって形成され、血中で低密度リポタンパク質(LDL)によって運ばれる大量のコレステロールエステルを含有する(D.T. Witiak and D.R. Feller (Eds), Anti-Lipidemic Drugs: Medicinal, Chemical and Biochemical Aspects, Elsevier, pp159-195 (1991))。動脈血管壁での泡沫細胞の形成はACAT活性とともに増加する。したがって、没食子酸はACATの作用を阻害するので、前記はまたアテローム性硬化症及び高脂血症の予防につながるかもしれない。
P-セレクチンは種々の炎症性プロセスで重要な仲介物質であり、例えばアテローム性硬化症及び血栓症に関与する。したがって、P-セレクチンの遮断はこれら重要な疾患の治療に魅力的な戦術である。以前に、親和性が低マイクロモルである多数のオリゴペプチド(Trp-Val-Asp-Valのコンセンサス配列を有する)が、P-セレクチンの選択的アンタゴニストとして特定された(WO03/020753)。さらにまた、ナノモル範囲の阻害物質が、前記配列及び類似配列のN-末端をガロイル(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル)基で官能基化することによって得られた(未公開国際特許出願PCT/EP03/07260)。
冠状動脈疾患及びアテローム性硬化症を含む主要な疾患のいくつかについての理解が増しているにもかかわらず、さらに上述の疾患及び症状をある程度制御することができる新規な化合物及び方法が利用可能であるにもかかわらず、ヒトでP-セレクチン活性化の作用の制御又は拮抗のための強力な化合物及び方法の両者に関して更なる改善が希求されており、さらに経費効率がよく、人口の大部分に許容される安全で許容性がある、P-セレクチン活性に関連する疾患の進行リスクを軽減する方法に関する更なる改善が希求されている。最後に、P-セレクチン関連疾患をもたらす症状の初期診断に用いることができる改善された方法が希求されている。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
本発明の目的は、ポリヒドロキシフェノール(前記はガロイルペプチドの非ペプチド模倣体である)、及び没食子酸提供成分を用いて前記ポリヒドロキシフェノールを製造する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、ポリヒドロキシフェノール含有医薬組成物及び栄養薬組成物を提供することである。
さらにまた、医薬としてのポリヒドロキシフェノールの使用、及び特に、P-セレクチンが中心的に関与する疾患若しくは症状の予防、治療又は診断のための医薬の製造のためのポリヒドロキシフェノールの使用が提供される。
最後に、P-セレクチン発現細胞又は組織を狙い撃ちするツールとして、組成物(前記はさらに賦形剤中に活性化合物を含む)におけるポリヒドロキシフェノールの使用が提供される。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明者らは下記構造式のポリヒドロキシフェノールを見出した:
【0010】
【化1】

【0011】
式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基又は芳香族基であり、前記は場合によってそれぞれヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基又は直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基で置換されてある。好ましくは、R1はエチル、フェニルメチル、インドリルメチル又は4-ヒドロキシフェニルメチルである。
R2は随意の基であって、直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基である。好ましくは、R2は直鎖(C1-C4)脂肪族アルキル基であり、より好ましくは、R2は水素、エチル、プロピル又はイソプロピルである。
R3は、直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基であって場合によって1つ若しくは2つ以上のカルボン酸基、又は直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキルアミド基で置換されてあるか、又は(C3-C8)シクロアルキル基であって場合によって直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基又は1つ若しくは2つ以上のカルボン酸基で置換されてある。好ましくは、R3は直鎖(C1-C4)脂肪族アルキル基であって1つ又は2つのカルボン酸基で置換されてあり、前記カルボン酸基は場合によって直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基で置換されてある。より好ましくは、R3はエチルカルボン酸又はプロピルジカルボン酸である。
本発明で上記に提供した説明の他に、直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基の具体例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルなどである。芳香族基は、6から14個の炭素原子を有するものであり、さらに炭素環式アリール基及び複素環式アリール基を含む。前記炭素環式アリール基は単環式から三環式であり、好ましくはフェニル、ナフチル、アントリル又はフェナントリルなどである。
【0012】
複素環式アリール基は単環式から三環式基であり、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子からなる群から選択される1つから4つのヘテロ原子を有する。前記複素環式基はピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、1,3,5-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,5-チアジアゾリル、1,3,5-オキサジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、クロメニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル又はキノキサリニルなどである。
(C3-C8)シクロアルキル基はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルを表す。さらにまた、(C3-C8)シクロアルキル基は、場合によって直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基、又は1つ若しくは2つ以上のカルボン酸基で置換される。
本発明のポリヒドロキシフェノールは多様な方法で製造することができる。好ましい製造方法は、ポリヒドロキシフェノール中の置換基、出発物質の利用可能性、効率およびコストに応じて選択されるであろう。
本発明にしたがえば、化合物の偏向ライブラリーの構築の場合、実施例で詳細に記載したように固相Ugi4成分反応(Ugi-4CR)を用いるのが非常に便利なようであった。固相Ugi反応は既に当業界では公知である。更なる情報については例えば以下を参照されたい:S.W. Kim, S.M. Bauer and R.W. Armstrong (1998) Tetrahedron Lett. 39:6993-96;S.W. Kim, Y.S. Shin and S. Ro (1998) Bioorg. Med. Chem. Lett. 8:1665-68;P.A. Tempest, S.D. Brown and R.W. Armstrong (1996) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35:640-643。
【0013】
第一の事例では、反応成分は、今日までに見出されたもっとも強力なアンタゴニスト、ガロイル-Trp-Val-Asp-Val-OHの1つに存在する官能性を基準にして偏った態様で選択された。前記成分は、アミノ酸(固相に結合)、脂肪族アルデヒド及びカルボキシル含有ニトリルから選択された。
没食子酸は、Ugi4成分反応を実施し、さらに高収量で生成物を得るために適切な形態を有しているようには見えなかった。このプロセスの収量を改善するために新規な没食子酸提供物質を開発した。すなわち極めて簡便に保護された没食子酸構築ブロック、3,4,5-トリ-O-(tert-ブトキシカルボニル)-没食子酸である。




【0014】
【化2】

【0015】
Ugi4成分反応を用いて、一連の没食子酸含有ペプチド様構造物を合成し、それらのP-セレクチン遮断効力を判定した。GaWVDVアンタゴニスト(構造式については下記の図を参照されたい)の高い効力に示唆されて、Ugi生成物が前記アンタゴニストに存在する官能性を反映するように前記反応成分を選択することにした(下記参照)。
【0016】
【化3】

【0017】
没食子酸提供成分、3,4,5-トリ-O-(tert-ブトキシカルボニル)−没食子酸は、上記に示したような構造を有するポリヒドロキシフェノール、より具体的にはガロイルペプチド又はその機能的等価物、又はガロイルペプチドの非ペプチド模倣体(例えば本発明のポリヒドロキシフェノール)の製造のための極めて便利な構築ブロックであることを示した。
上述のUgi4成分反応時に、アミノ酸、脂肪族アルデヒド、ニトリル及び没食子酸提供成分が一緒にされる。このプロセスでは、任意のアミノ酸が用いられる。アミノ酸という用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成により調製された化合物の両方を含むと解されるべきである。アミノ酸は一般式HOOC-C-(NH2)-R1(式中R1は上述の意味を有する)によって表される。脂肪族アルデヒドとして、直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルデヒド、例えばプロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドが用いられる。しかしながら、この反応のための出発化合物の全てが市場で入手できるとはかぎらず、又は最適の形態で入手できるとはかぎらないので、本発明の方法のニトリルは本発明者らによって調製されねばならなかった。調製方法は実施例で述べる。
したがって、アミノ酸(R1のために提供される)、脂肪族アルデヒド(R2のために提供される)及びニトリル(R3のために提供される)は、コントロールニトリルとしてのシクロヘキシルニトリルと同様に選択された。化合物ライブラリーは、固相で構築された(
フェニルアラニン(Phe)シリーズのため、トリプトファン(Trp)シリーズのため、チロシン(Tyr)シリーズのため、及び他のアミノ酸のため、下記を参照されたい)。全ての生成物(ジアステレオマー混合物)が35%から75%の範囲の純度で得られた。
【0018】
粗混合物は、strep-APを用いて競合ELISAで10及び100μMで判定した。予備的スクリーニングによって多くの傾向が明らかになった:1)Pheシリーズ及びTyrシリーズは、Trpシリーズ及び他のアミノ酸で構築された化合物よりもいくぶん活性が高いようである;2)分枝アルキル鎖を含む生成物は直鎖をもつ他のものよりも常に活性が低く;さらに3)R3置換基としてのC-1結合カルボン酸はC-2結合と比較して好ましさは劣る。
次に、もっとも有望な化合物を精製し、さらに異性体を分離してIC50値を確立した。最初のテストでML72Aはこの選別物のうちでもっとも活性が高く、種々の異性体についてIC50値が12及び5μMであることが示された。ML75Aはわずかに活性が低かった(18及び8μM)。Trpシリーズの化合物は明らかに活性を有するが、それらは常に不規則な阻害曲線を示し、信頼性のあるIC50値の確立を困難にした。本アッセイはこれまでのところTrp化合物のために最適化されている。
最後に、もっとも有望な構造を基にして、さらに別のいくつかの化合物を種々の置換基の影響を確立するために調製し、これらをテストした。
種々のテストで示された有望な作用により、本発明はさらに上述の構造式を有するポリヒドロキシフェノールを医薬として提供する。
また別の実施態様では、ヒトP-セレクチンに対する親和性を有するポリヒドロキシフェノールは原則としてP-セレクチンアンタゴニストとしては用いられないが、標的照準物質として若しくは帰巣装置としてドラッグデリバリーシステムと併用するか、又は、場合によってリンカーを介して薬剤若しくは活性化合物に共役させて用いられる。より具体的には、ドラッグデリバリーシステムの好ましい実施態様は、ドラッグキャリア、標的照準組成物及び結合阻害物質である。これらの実施態様は下記で述べるような実際的な範例である。P-セレクチンが中心的に関与する疾患又は症状のためのドラッグキャリアはポリヒドロキシフェノールを含む。P-セレクチンが中心的に関与する病巣(すなわちP-セレクチン発現細胞)に薬剤をデリバリーする標的照準組成物は、薬剤、上述の構造式のポリヒドロキシフェノール及び医薬的に許容できる賦形剤を含む。
【0019】
また別の実施態様では、P-セレクチンが中心的に関与する病巣へ薬剤をデリバリーする方法が提供される。前記方法は、薬剤及びポリヒドロキシフェノール及び/又は標的照準物質としてのポリフェノールを含む組成物が経口的又は非経口的に投与されることを特徴とする。前記共役物のまた別の実施態様は、エステラーゼ感受性リンカーを介して本発明のポリヒドロキシフェノールの残基にカップリングした活性化合物から成る構築物である。
さらにまた画像化ツールとして上述のシステムを用いることもできる。その場合活性化合物はコントラスト物質又は放射性核種に置き換えられる。
ポリヒドロキシフェノールはまた前記のような標的にデリバーされるべき活性化合物に直接カップリングさせることもできる。また別には、それらをより大きなベヒクル若しくは実体物中に取り込むか、又は前記の表面に固定し、P-セレクチン発現細胞又は組織へデリバーされる薬剤又は遺伝物質のための標的へ誘導されるベヒクルを得ることができる。前記ベヒクル又は実体物は、リポソーム若しくは他の脂質小胞、乳濁液滴、ポリマー、ナノ粒子若しくはミクロ粒子(ナノ粒子、ナノカプセル、ミクロ粒子、ミクロカプセルなどを含む)、ヒドロゲル、複合体又はヴィロソームなどである。
P-セレクチン発現細胞を標的とする物質として、又はP-セレクチン関連疾患若しくは症状の予防、治療又は診断のための医薬の製造に有用なさらに別のポリヒドロキシフェノールには没食子酸、没食子酸誘導体、及び没食子酸と化学的に関連するか又は1つ若しくは2つ以上の没食子酸成分を含む化合物が含まれる。さらにまた、投与後に化学的若しくは酵素的分解を受けてin situで没食子酸、没食子酸誘導体、又は没食子酸と化学的に関連するか又は1つ若しくは2つ以上の没食子酸含有成分を含む化合物を生成する(前駆体)化合物が含まれる。本発明の没食子酸誘導体には没食子酸に由来する化学的構造物、例えば共役物、ダイマー、マルチマー、塩、エステル、エーテル、アミドなどが含まれる。さらにまた、前記誘導体には、例えばフェノールヒドロキシル基の数及び/又は位置又は1つ若しくは2つ以上の追加置換基の存在によって没食子酸と化学的にある程度異なるが、P-セレクチンと親和性を有する化合物も含まれる。
【0020】
没食子酸(又は3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)は果実、野菜及びハーブ、例えばゴールナッツ、クルミ、マンゴーの種子、赤ブドウ、緑茶及びオリーブ油に見出される天然のポリヒドロキシフェノールである。多くの植物生成物に没食子酸が前駆体、例えばタンニン酸(タンニン又はガロタンニンとも称される)の形で含まれ、前記は複雑で不均一な化学構造を有する化合物クラスを表す。タンニンは以下の2つの群に分けられる:(a)フラバノールの誘導体、いわゆる縮合タンニン、及び(b)加水分解できるタンニン(より重要な群)で、前記は糖(通常はグルコース)と1つ又は2つ以上のトリヒドロキシベンゼンカルボン酸とのエステルである。没食子酸はタンニンの主要な加水分解性生物である。
没食子酸は非常に毒性が低く、このことは、新規なP-セレクチン阻害物質の利用で他の使用(低用量で毒性を示すか、又はその生理学的許容性が未だ確立されていない)と比較して本発明の顕著な利点である。
他のポリヒドロキシフェノールの例は、n-ドデシルガレート、カフェー酸及び3,4,5-トリヒドロキシ桂皮酸である。
同様に、ポリフェノールは、ポリヒドロキシフェノール(没食子酸及びその誘導体)と多少とも同程度に有用であることを示した。ポリフェノールは、2つ以上の6炭素含有芳香環を含み、前記環に1つ又は2つ以上のヒドロキシル基が結合している化合物と定義される。そのようなポリフェノールの例は、(-)-エピガロカテキンガレート、(エピ)カテキン、m-ガロイル没食子酸及びエラグ酸である。
これらのポリヒドロキシフェノール及びポリフェノールはしかしながらマイクロモルの範囲の親和性を有する(例えばIC50値で表せば100μM未満、好ましくは300μM未満)。中等度又は低マイクロモルの範囲の親和性、例えばIC50が200μM未満から100μMである誘導体がより好ましい。また別の好ましい親和性の範囲は、より低いマイクロモルの範囲又はマイクロモルより下の領域にあるもの、例えばIC50で表せば100μM未満から50μM、又は10μM未満から1μMの範囲である。それらは単独又はポリヒドロキシフェノール(上述のとおり)と併用して、P-セレクチンが中心的に関与する疾患又は症状の予防、治療又は診断のために標的照準組成物又は医薬組成物において用いることができる。
【0021】
本発明はまた、P-セレクチンイ親和性を有するポリヒドロキシフェノールを含む医薬組成物又は栄養薬組成物に関する。
本明細書で用いられるように、医薬組成物という用語は、治療用及び診断用組成物の他にそのような組成物を含む医薬及び診断薬を指す。治療用組成物及び医薬は、疾患及び個体の他の状態(前記の状態の改善が所望されるもの)の予防又は治療に用いられる。診断薬及び診断用組成物は前記のような疾患のin vivo及びin vitroでの診断に用いられる。P-セレクチンが中心的に関与する疾患及び症状を予防又は改善する治療用組成物又は医薬が好ましい。前記組成物はまた、P-セレクチン介在細胞内シグナリングの阻害が所望される疾患の治療に用いることができる。
栄養薬組成物には典型的に機能食品又は機能食品添加物と考えられる全ての組成物が含まれる。栄養薬はまた、食物から単離又は精製された生成物、及び一般的には医薬剤形と類似の態様で製剤化されたもので通常は食物に付随していない生成物であって、生理学的な利点が明らかにされたか、又は慢性疾患に対する防御を提供するものも含む。
栄養薬組成物は、典型的には経口的使用のために製剤化又は加工され、一方、没食子酸又はP-セレクチンに対し親和性を有する没食子酸誘導体を含む医薬組成物は多様な投与ルート、例えば経口、非経口、経粘膜、経鼻又は肺投与のために適応させることができる。非経口及び経口使用のために組成物が好ましく、経口投与に適した製剤が特に好ましい。本明細書では、製剤という用語は前記のような栄養薬組成物及び医薬組成物のために用いられ、口を経由(per oral)及び経口(oral)という用語は互換的に用いられる。
医薬組成物は好ましくは、上記で定義した1つ又は2つ以上の活性化合物及び少なくとも1つの賦形剤を含む。本明細書で用いられるように、医薬賦形剤は、実質的な薬理活性をもたない医薬的に許容できる任意の物質又は物質の混合物で、前記は、安定で投与が容易な剤形に化合物を製剤化するためにベヒクル又は補助物質として用いることができる。医薬的に許容できる賦形剤の例は、いずれの主要な調剤書の論文においても見出される。
【0022】
経口投与のために適した剤形には固形剤形、例えば錠剤、硬質カプセル、軟カプセル、散剤、顆粒、経口崩壊剤形(発泡性錠剤)、咀嚼錠剤、経口フィルム又は凍結乾燥剤形が含まれる。固形剤形は活性化合物の迅速、徐放性、又は制御放出を提供することができる。前記実施態様の1つでは、経口用剤形は、胃の酸性環境から前記化合物を保護するために腸溶皮で被覆された固形剤形である。固形剤形は、通常の製造アプローチ、例えば活性化合物及び賦形剤の湿潤顆粒化、直接圧縮又は単純な混合にしたがって製造することができる。さらにまた、液体剤形、例えばシロップ、液滴、及び分散液も本発明の目的に適していると考えられる(前記剤形では活性化合物はそれぞれ溶解又は分散される)。前記はさらに、薬剤の標的照準物質、生体利用性強化物質又は本発明の化合物以外の活性成分を含むことができる。
経口投与用の固形剤形の製造に一般的に用いられる賦形剤は、結合剤、例えばゼラチン、天然ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカント);デンプン、アルギン酸ナトリウム、砂糖、ポリビニルピロリドン;セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルオキサゾリドン;(医薬用)充填剤、例えばラクトース、微晶質セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、デキストロース、マンニトール、シュクロース;必要ならば滑沢剤、例えばステアリン酸カルシウム及びマグネシウム、ステアリン酸、タルク、ステロテックス(ステアリン酸アルカリ);崩壊剤、例えばデンプン、デンプン誘導体及び架橋ポリマーである。
液体剤形の製造に必須の賦形剤は、溶媒、補助溶媒、及び他の流動担体、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール;ベヒクルの粘度を高める物質、例えば糖類(特にグルコース)、水に膨潤性のポリマー、例えばセルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)又はポリビニルピロリドン;分散液の凝固及び固形化を防止する安定化剤;保存料、例えばパラベン;甘味料及び香料のような味の隠蔽及び味の改善のための他の賦形剤である。
【0023】
界面活性剤を用いて活性化合物の湿潤化及び溶解を高めることができる。有用な界面活性剤の例はラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタン一ラウリン酸、ソルビタン一ステアリン酸、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポロキサマー407、ポロキサマー188(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマー)、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート、ジオクチルカルシウムスルホスクシネート、ノンオキシノール、塩化ベンザルコニウム、ソルビタンモノオレエートである。
安定化剤を取り入れて、貯蔵時の没食子酸又は没食子酸誘導体の酸化を防ぎ、したがって組成物の保存期間を延長することができる。
ある実施態様では、前記組成物は非経口的投与のために(好ましくは血管内注射(例えば静脈内又は動脈内)であるが、筋肉内、皮下、病巣内、腹腔内又は他の非経口投与ルートも可能である)製剤化及び加工される。製剤化及びそのような組成物の製造は、これら具体的な投与ルート用の他の薬剤物質の製剤化に適用される法則と同じ法則にしたがう。例として、無菌性は非経口剤形製造の必須の要件の1つである。他の要件、例えばpH値及び浸透圧は、いずれの主要な調剤書においても記載されている(例えば以下に記載されている:USP24、“General Requirements for Tests and Assays. 1. Injections”)。非経口製剤の安定性の改善のために乾燥剤形を提供する必要があるであろう。前記は投与前に再構成されねばならない。そのような剤形の例はフリーズドライ製剤又は凍結乾燥製剤である。
頻繁な注射の回避及び患者のコンプライアンス改善のため、及び治療を簡単にするために、本発明の化合物を非経口制御放出剤形として投与することが望ましいであろう。そのようなデポット製剤のための多様な方法が広範囲に文献に記載されている。長期放出は固形移植物、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロ粒子、マイクロカプセル、乳濁液、分散液、油性溶液、リポソーム又は類似の構造物によって提供されるであろう。
【0024】
耐性の問題のために、非経口製剤における賦形剤の使用は幾分限定される。にもかかわらず、非経口製剤の製造に特に有用な賦形剤は、溶媒、補助溶媒、及び液体若しくは半固形担体、例えば滅菌水、エタノール、グリセロール、プロプレングリコール、ポリエチレングリコールブタンジオール、脂肪油、短鎖及び中等度鎖のトリグリセリド、レシチン、ポリオキシエチレン、ヒマシ油誘導体;浸透圧及びpHを調節する物質、例えば糖類(特にグルコース)、糖アルコール(特にマンニトール)、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、酢酸塩、リン酸塩、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど;安定化剤、抗酸化剤及び保存料、例えばアスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム、EDTA、ベンジルアルコールなど;他の賦形剤及び凍結乾燥助剤、例えばアルブミン、デキストランなどである。
活性化合物、例えば上述のP-セレクチン親和性ポリヒドロキシフェノールが(例えば消化系の液体中で)化学的な不安定性を示す場合、又はその分子量が大きすぎて腸から効率的に吸収されない場合は、経粘膜投与によって本化合物の生体利用性を経口投与と比較して改善することができる。この投与ルートは同時に非侵襲性で患者に優しい。経粘膜投与は鼻内、頬側、舌下、歯肉及び膣内投薬形を含む。これらの剤形は確立された技術によって製造することができる。それらは、点鼻薬又はスプレー、挿入物、フィルム、パッチ、ゲル、軟膏又は錠剤として製剤化することができる。好ましくは、経粘膜剤形のために用いられる賦形剤には、粘膜付着を提供し、したがって前記剤形と吸収部位との接触時間を延長し、それによって吸収の度合いを潜在的に増加させる1つ又は2つ以上の物質が含まれる。
さらに別の実施態様では、化合物は、計測用量吸入装置、ネブライザー、エーロゾルスプレー又は乾燥粉末吸入装置を用いて肺ルートで投与される。適切な製剤は公知の方法及び技術によって製造することができる。経皮、直腸又は眼球投与もまたいくつかの事例では適切であろう。
【0025】
本発明の組成物で先進的なドラッグデリバリー又は標的照準方法をより効果的に用いることは有利であろう。例えば、非経口ルートの投与が選択される場合、適切な剤形は、生体利用性強化物質(前記化合物の生体利用性を高める任意の物質又は物質の混合物であろう)を含むことができる。これは、例えば化合物を(例えば酵素阻害剤又は抗酸化剤により)分解から護ることによって達成することができる。より好ましくは、前記強化物質は、吸収障壁(典型的には粘膜)の浸透性を増加させることによって前記化合物の生体利用性を高める。浸透強化物質は種々のメカニズムを介して機能することができる。あるものは粘膜の流動性を高め、一方、他のものは粘膜細胞間のギャップ接合点を開放または拡大する。さらに他のものは粘膜細胞層を被覆している粘液の粘度を低下させる。とりわけ好ましい生体利用性強化物質は、両親媒性物質、例えばコール酸誘導体、リン脂質、エタノール、脂肪酸、オレイン酸、脂肪酸誘導体、EDTA、カルボマー、ポリカルボフィル及びキトサンである。
上述のように、没食子酸又はその誘導体を含む組成物はまた、栄養薬組成物、すなわち本発明のP-セレクチン活性連関疾患及び異常の治療又は予防を支援する目的の食品及び飲料として製剤化することができる。前記飲料は、ジュース、例えば野菜ジュース(例えばニンジン及びトマトジュース)及びフルーツジュース(例えばオレンジ、リンゴ、ブドウ及びパイナップルジュース);アルコール飲料、例えば赤ワイン、ロゼ又は白ワインをベースにした飲料;茶、例えば緑茶;及び栄養補助飲料(例えばビタミン及びビタミン複合体を含む)を含むであろう。本発明の範囲内に包含される他の栄養薬組成物はスィーツ(例えばチョコレート及びクッキー);菓子類;オリーブ油;パン、クラッカー及び麺類のように穀類の粉から作られた食品である。
【0026】
本発明の組成物に取り入れられるべき活性成分の量はいくつかの要因に左右される。前記要因には具体的な使用目的、使用標的、及び実際に選択される活性化合物(すなわち前記がポリヒドロキシフェノールであるか否か)が含まれる。ほとんどの事例で、1マイクログラム又はそれより多い没食子酸を含む組成物で所望の効果が達成できるであろう。別の実施態様では、前記組成物は少なくとも10mgを含み、別の実施態様では少なくとも100又は500mgを含む。もちろん、没食子酸よりもはるかに高い抗P-セレクチン活性を有する誘導体を用いるときは、したがって前記用量は、例えば100mg未満、10mg未満、又は場合によっては1mg未満に調節される必要がある。
前記活性成分は、医薬生成物では典型的であるように純粋な形態で取り込むことができる。また別に、没食子酸又は没食子酸誘導体を活性成分として用いる場合は、前記活性化合物は植物抽出物の形態で取り込むことができる。前記植物抽出物は液体でも固体状態でもよく、そのような抽出物の調製のために多数の技術が公知である、十分に確立されている。好ましい実施態様の1つでは植物抽出物が用いられ、前記抽出物は、没食子酸、又はP-セレクチンに親和性を有する少なくとも1つの没食子酸誘導体が濃縮されてある。これは、特に高い含有量で問題の化合物を得るために抽出物の調製プロセスが工夫され、改変され、最適化されたことを意味する。例えば、前記抽出物は、オリーブ、赤若しくは白ブドウ又は緑茶から直接的に又は間接的に調製することができる。好ましい実施態様では、赤ワイン又は赤ブドウから調製される。
【0027】
さらに別の特徴では、本発明は、P-セレクチンが中心的に関与する疾患又は症状が発生した対象者、又は前記のような疾患又は症状が発生するリスクがある対象者で、P-セレクチンの活性を阻害する医薬の製造のために上記に示した構造式を有するポリヒドロキシフェノールを使用することに関する。
本明細書で用いられるように、阻害とは、P-セレクチンの生物学的活性の調節を直接的又は間接的にもたらす任意のタイプの相互作用を指す。阻害の一般的タイプには競合的、反競合的及び非競合的阻害が含まれる。さらにまた、阻害は可逆性又は不可逆性として表すことができる。実際には、多くの阻害プロセスが競合的であり、可逆性の性質を有する。本明細書で用いられる広い定義では阻害はまた、活性化の初期相が観察され、続いて生物活性の抑制が観察される反応タイプが含まれる。典型的には阻害作用は、結合が天然の基質(すなわち模倣体)と同じ分子領域で生じるか否かにかかわらず、阻害物質が標的分子に高い親和性で結合するときに観察することができる。P-セレクチンの場合には、種々の結合部位が種々の基質について存在する。例えば、P-セレクチン糖タンパク質リガンド-1(PSGL-1)の結合は、シアリルルイスX(sLeX)の結合とは異なるポケット又は部位を必要とする。本発明の範囲内のポリヒドロキシフェノール間の他の相互作用を排除しようとするものではないが、没食子酸はP-セレクチンとPSGL-1との間の動的な相互作用を遮断することを本発明者らは見出した。
【0028】
ポリヒドロキシフェノールが投与されるべき対象者は、好ましくはヒトである。しかしながら、本発明の化合物は、原則として他の対象、例えば哺乳動物に適用することができる。その有効性は、P-セレクチンの配列が種の間で相違するので個々の種で見出されるP-セレクチンに対するポリヒドロキシフェノールの親和性に左右される。しかしながら、本発明者らは、例えば没食子酸及び他のヒドロキシフェノールはヒトのP-セレクチンに対して高い親和性を有し、それらを用いて、特にアンタゴニスト又は部分的アンタゴニストとしてP-セレクチンの活性を効果的に調節することができることを示した。
本発明のポリヒドロキシフェノールの使用は、P-セレクチンに対して親和性を有するそのような化合物が有効量で投与されることを必要とする。P-セレクチンに対して親和性を有するポリヒドロキシフェノールを特定する方法に関して、有用な例がWO03/020753に提供されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。P-セレクチンの活性を低下させるために投与しなければならない正確な量又は用量は多様なパラメーターに左右されるが、当業者には公知の方法によって決定することができる。WO03/020753及びその中に引用されている文献がまた参考文献として引用される(前記はP-セレクチンの活性を生物体で分析する方法に関していくらかの情報を含んでいる)。さらにまた、いずれの個体の場合でも、投与されるべき用量は複数の要因、例えば前記活性物質が投与されるべき個体の例えば体重及び年齢、緩和されるべき症状、徴候又はリスクの重篤度、用いられる活性化合物又は化合物の混合物の具体的な抗P-セレクチン活性などに左右される。
【0029】
例えば没食子酸自体の場合、好ましくは少なくともマイクロモル範囲(すなわち少なくとも1μM)である活性化合物レベルを作用部位で達成することが所望される。より高い濃度、例えば少なくとも10μMが好ましい。現在利用可能な証拠から、作用部位で10μMレベルの没食子酸がP-セレクチンの実質的遮断に極めて有効であるということができ、したがって本発明によれば作用部位で前記のようなレベルをもたらす用量が好ましい。他方、長期実験によって、ある種の有益な作用は、作用部位での前記より幾分低いレベルによって達成することができることを示す証拠、又は特に有益な作用が、作用部位で10μM以上のレベルによってより強度のP-セレクチンに対してさらに良好に達成できるということを示す更なる証拠が将来提供されるかもしれない。
P-セレクチンに対して親和性を有する他のポリヒドロキシフェノールが没食子酸の代わりに用いられる場合、ある没食子酸の濃度と同じ生理学的作用を有するこれら化合物についての等価の用量を決定又は算出することは当業者には容易であろう。
ほとんどの事例で、作用部位での活性化合物の所望の濃度は、目標とされるP-セレクチン阻害の程度と同様に、1日当り1μgを超える用量で達成されるであろう。没食子酸の場合、好ましい用量範囲は1日1μgから10gである。別の実施態様では、1日の用量は少なくとも10mgであり、また別の実施態様では少なくとも100から500mgである。もちろん、没食子酸よりもはるかに強い抗P-セレクチン活性を有する誘導体が使用されるときは、有益な作用を達成するために投与しなければならない1日当りの用量ははるかに少なく、例えば100mg未満、10mg未満又は場合によっては1mg未満であろう。
【0030】
所望のP-セレクチン阻害度に付随する重要な要因は、本発明の化合物を使用する目的がP-セレクチン活性に関連する症状、徴候又は疾患の予防のためであるか又は治療のためであるかである。ここ数年間の間に、P-セレクチンが、炎症及び癌、特に心脈管系の主要な疾患をもたらす炎症プロセスに関連する多数の病理学的プロセスに付随していることを示す証拠群が実際に増加している。現在のところP-セレクチンに関連する疾患はとりわけ、冠状動脈疾患、血栓症、癌、慢性炎症性疾患、慢性関節リウマチ、炎症性大腸疾患、多発性硬化症、アテローム性硬化症、再狭窄、虚血、腎不全を含む再灌流損傷、腫瘍転移、細菌性敗血症、汎発性血管内凝固症候群、成人呼吸器ストレス症候群、卒中、血管形成、移植拒絶、深部血管血栓症、心筋梗塞及び循環系ショックである。
P-セレクチンがこれらの症状に影響を及ぼすメカニズムのいくつかがより詳細に以下に記載されている:D.J. Lefer, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 40:283-294 (2000);R.W. McMurray, Semin. Arthritis Rheum. 25(4):215-233 (1996)。
好ましい実施態様では、前記使用は、既にそのようなP-セレクチン関連疾患、症状又は徴候を発症した個体へのポリヒドロキシフェノールの投与を必要とする。
また別の好ましい実施態様では、本発明の使用は、既にそのようなP-セレクチン活性関連疾患、症状又は徴候を発症した個体、又は発症していないが発症リスクがある個体へのポリヒドロキシフェノールの投与が実施される。最も広い意味では、心脈管系疾患、炎症性疾患または新形成疾患(前記はともに西欧社会のもっとも重要な死因である)に一般的に関連するリスクカテゴリー及び因子から排除されないいずれの対象者もリスクを有し、したがって本発明の使用により利益を受けることができる。この意味では、前記の対象者はヒト、典型的には西欧社会の1つのメンバーであり、好ましくはかなりの量の天然のP-セレクチン阻害物質を未だ消費していない(任意の食習慣のために)メンバーであろう。
【0031】
別の好ましい実施態様では、前記個体は、P-セレクチン活性関連疾患、症状又は徴候を発症するリスクが高まった個体である。高リスクは、典型的にはリファレンス群の平均リスクを実質的に超えるリスクと定義される。高リスクは個体又は集団の特性であろう。例えば、ある種の個人的食習慣(例えば高い動物性脂肪消費)をもつ個体又はヘビースモーカーは、平均的対応者よりも心脈管系疾患(例えば冠状動脈疾患)を発症するリスクが増加するであろう。他方、心脈管系疾患リスクに影響を与える食事因子は、しばしば国民性の特徴(例えば不飽和植物油が伝統的に一般的ではないいくつかの国における飽和脂肪及び油の消費)に影響されるであろう。
本発明でいう特に高リスクは、既にいくつかの徴候、例えば高血圧、高脂血症又は糖尿病(これらはしばしば上記に挙げたP-セレクチン関連疾患の前駆症状と考えられる)を発症している個体である。ポリヒドロキシフェノールの投与によるP-セレクチンの阻害は前記のような個体で実施されることが好ましい。
ポリヒドロキシフェノールの投与は、摂取(経口ルート投与とも称される)によるか、又は任意の他のルート(例えば粘膜、頬側、舌下、舌上、鼻腔、直腸、膣内、肺、皮下、皮膚、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内または動脈内投与)によるかにかかわらず、そのような化合物を個体に提供する任意の方法を指す。もっとも一般的な投与方法は、典型的には消費者又は患者の高度の嗜好及びコンプライアンスを伴うものである。したがって、もっとも好ましい本発明の投与方法は摂取による。多数の生成物タイプ、製剤技術及び剤形が、ほぼ任意の目的及び活性成分(経口ルートを介して生体が利用できるようにすることができる)にも適するように利用可能である。別の好ましい実施態様では、ポリヒドロキシフェノールは非経口的に、好ましくは注射によって、特に静脈内注射によって投与される。
【0032】
本発明はまた上記に示した構造式を有するポリヒドロキシフェノールの医薬としての使用に関する。より具体的には、本発明は、P-セレクチンに親和性を有するポリヒドロキシフェノールを含有する医薬組成物及び栄養薬組成物の使用を提供する。前記使用は、上述のようにP-セレクチンと結合する方法又はP-セレクチン活性を阻害する方法と一致し、冠状動脈疾患、血栓症、癌、慢性炎症性疾患、慢性関節リウマチ、炎症性大腸疾患、多発性硬化症、アテローム性硬化症、再狭窄、虚血、腎不全を含む再灌流損傷、腫瘍転移、細菌性敗血症、汎発性血管内凝固症候群、成人呼吸器ストレス症候群、卒中、血管形成、移植拒絶、深部血管血栓症、心筋梗塞又は循環系ショックから選択される疾患または症状の診断、予防又は治療を含む。
診断的使用にしたがえば、前記組成物をin vitro試験に用い、P-セレクチン関連疾患及び症状のためにマーカーとして体液及び組織(動脈病巣)中のP-セレクチン濃度を定量することができる。また前記をin vivoで画像診断術で用い、P-セレクチン介在アテローム性硬化症、再狭窄、及びP-セレクチンが動員される疾患から選択されるその他の症状をモニターすることができる。本使用のためのオプションとして没食子酸又は本発明の誘導体をキレート物質に共役させ、前記を続いて選択してモニター系によって検出することができる等方性標識とともに複合体を生成するか、又はコントラスト物質(DTPAキレートガドリニウム又はUSPIO)と結合させることができる。
【0033】
ドラッグデリバリーに関しては、好ましい実施態様は標的照準組成物である。本発明の標的照準組成物は、例えば脂肪性乳濁液、リポソーム、ミセルなどの形態を有する種々の医薬組成物として調製し、これらの調製物を血管内、筋肉内又は皮下注射として、又は器官への注射として、又は移植物として、又は口腔、鼻腔、直腸、子宮、膣、肺などを通過する経粘膜調製物として投与することができる。本発明の組成物はまた、経口調製物の形態(例えば錠剤、カプセル、顆粒又は散剤のような個体調製物;乳濁液又は懸濁液のような液体調製物)で投与することもできる。
組成物で注射液を調製する場合、必要かつ所望されるならば前記組成物は公知の保存料、安定化剤、乳化剤、油性基剤、分散剤、pH調節剤または等張剤を含むことができる。保存料の例はグリセリン、プロピレングリコール、フェノール、ベンジルアルコールなどである。安定化剤の例はデキストラン、ゼラチン、酢酸トコフェロール、アルファ-チオグリセリンなどである。乳化剤の例はDPPC、HSPC、DMPC、DSPC、DPPG、DMPG、精製卵黄レシチン、精製大豆レシチン、PEG-脂質(例えばPEG-DSPE)などである。油性基剤の例は精製大豆油、精製ゴマ油などである。分散剤の例にはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(トウィーン(Tween(登録商標)80))、ソルビタンセスクィオレート(スパン(Span(登録商標)30))、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニック(Pluronic(登録商標)F68))、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油60などが含まれる。pH制御物質の例には塩酸、水酸化ナトリウムなどが含まれる。等張剤の例はグルコース、D-ソルビトール、D-マンニトール、グリセリンなどである。
この実施態様では、活性化合物はP-セレクチン阻害物質であってもなくてもよい。より典型的には、前記活性化合物は、標的細胞又は標的組織で種々のメカニズムを介して作用する化合物であろう。さらに本方法は典型的には、P-セレクチンの阻害だけでは所望の作用を生じるために十分ではないときに適用されるであろう。化学的には、前記活性化合物は任意のクラスの化合物、例えば天然、半合成又は合成小有機分子、無機物質、ペプチドタンパク質、多糖類、又は核酸(例えばオリゴヌクレオチド、DNA又はRNA)であろう。好ましくは、活性化合物は標的細胞又は組織に対して阻害作用をもつ核酸であるか、又は化合物である。
P-セレクチンを発現する標的細胞は血小板及び活性化された内皮細胞である。以下の実施例は本発明のある種の特徴及び実施態様を示すことを目的とするが、前記は以下の特許請求の範囲を制限するものと解されるべきではない。
【実施例1】
【0034】
実施例1:3,4,5-トリ-O-(tert-ブトキシカルボニル)-没食子酸
無水DCM(60mL)を没食子酸(5.0g、29.4mmol)に添加した。窒素ガスで前記不均質混合物を5分間泡立てた。続いて、前記混合物をその後ピリジン(88.2mmol、7.1mL)、ジ-tert-ブチルジカルボネート(88.2mmol、19.2g)及び4-ジメチルアミノピリジン(0.3mmol、37mg)で処理した。ガス発生が観察され、1時間後に混合物は均質になった。2時間後にTLC分析(溶離液:酢酸エチル)によって反応の完了が示された。前記反応混合物をDCM(200mL)で希釈し、1MのHCl及び水で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、続いてろ過し、in vacuoで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムに適用し、トルエン中の10%酢酸エチルで溶出させた。適切な分画を採集することによって表題の化合物(9.26g、19.7mmol、67%)を白色個体として得た。
13C-NMR(50MHz, CDCl3)δ169.9, 149.9, 148.6, 143.8, 139.7, 126.9, 122.2, 84.6, 84.5, 22.4;1H-NMR(200MHz, CDCl3, TMS)δ7.91(s, 1H), 1.55(s, 27H).MS(ESI) m/z 493.2(M+Na), 963.4(M+M+Na).
【実施例2】
【0035】
リファレンス実施例2:酸感受性保護を有するニトリルの合成
tert-ブチルイソシアノアセテートを先行文献(B.H. Novak and T.D. Lash, J. Org. Chem. (1998) 63:3998-4010)にしたがって合成した。
tert-ブチルイソシアノアセテートは、市販のβ-アラニンtert-ブチルエステルヒドロクロリド(NavaBiochem)から以下のように2段階で合成した。テトラヒドロフラン(5mL)及びギ酸エチル(5mL)中のβ-アラニンtert-ブチルエステルヒドロクロリド(2g、11mmol)の溶液にトリエチルアミン(12mmol、1.7mL)を添加した。前記フラスコに還流濃縮装置をはめ込み、混合物を4時間加熱し、その後さらにまたギ酸エチル(1mL)を添加した。1時間後に、前記混合物をシリカゲルでろ過した。シリカゲルを酢酸エチルで洗浄した。揮発物をろ液から除去し、N-ホルミルβ-アラニンtert-ブチルエステル(1.4g、11mmol)を得た。13C-NMR(50MHz, CDCl3)δ171.2, 163.4, 80.8, 34.7, 33.4, 22.7;1H-NMR(200MHz, CDCl3, TMS)δ8.15(s, 1H), 6.31(broad s, 1H), 3.52(q, 2H, J=6.1 Hz), 2.47(t, 2H, J=6.2 Hz), 1.46(s, 9H).この化合物(0.65g、3.8mmol)を上記のニトリルについて記載したように脱水条件に付し、tert-ブチルイソシアノプロピオネート(0.50g、3.2mmol、85%)を黄色がかった液体として得た。色は4℃で保存中(2ヶ月まで)に濃くなったが、このことは生成物の品質に大きな影響をあたえなかった。1H-NMR(200MHz, CDCl3, TMS)δ3.64(m, 2H), 1.48(s, 9H).
ジ-tert-ブチル2-Sイソシアノペンタノエートは、市販のL-グルタミン酸ジ-tert-ブチルエステルヒドロクロリド(NavaBiochem)からtert-ブチルイソシアノプロピオネートについて記載した態様と同じ態様を用い2段階で合成した。ジ-tert-N-ホルミル-L-グルタメート(白色個体、0.96g、3.33mmol、L-グルタミン酸ジ-tert-ブチルエステルヒドロクロリドから99%):13C-NMR(50MHz, CDCl3)δ171.5, 170.3,160.8, 81.7, 80.0, 50.3, 30.9, 27.5, 27.4, 27.1;1H-NMR(200MHz, CDCl3, TMS)δ8.21(s, 1H), 6.37(broad d, 1H), 4.64-4.54(m, 1H), 2.41-1.76(m, 4H), 1.48(s, 9H), 1.44(s, 9H).ジ-tert-ブチル2-Sイソシアノペンタノエート(0.41g、1.53mmol、ホルムアミドから90%)は黄色がかった油(保存中に凝固した)として上述のようにして得られた。13C-NMR(50MHz, CDCl3)δ170.3, 164.7, 159.8, 83.1, 80.4, 55.8, 30.1, 27.5, 27.2;1H-NMR(200MHz, CDCl3, TMS)δ4.29(dd, 1H, J1=5.1Hz, J2=8.8Hz), 2.50-2.42(m, 2H), 2.32-2.02(m, 2H), 1.50(s, 9H), 1.46(s, 9H).
【実施例3】
【0036】
実施例3:Ugi反応のための実験方法
Fmoc-保護アミノ酸を、ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸(HMPA)リンカーを付与したテンタゲル(Tentagel)に標準的な方法(DCM/NMP中のDIC/DMAP)によりカップリングした。樹脂のローディングは標準的なFmoc-測定(典型的には0.16から0.22mmol/g)により確定した。
全てのUgi反応は10μmolの規模で実施した。のアミノ基のFmoc基はDMF中の20%ピペリジンによる処理で除去した。樹脂をNMP(2x)及びDCM(2x)で洗浄した後、アルデヒド(100μmol)及び無水DCM(0.2mL)を添加した。前記樹脂を1時間攪拌した。続いて、無水メタノール(0.2mL)中のトリ-Boc-没食子酸(、100μmol、47mg)及びニトリル(100μmol)を前記混合物に添加した。前記樹脂の攪拌をさらに15時間継続した。続いて樹脂をろ過し、NMP、MeOH及びDCM(各々2x)で洗浄した。固相からの切断及び生成物の脱保護は、トリイソプロピルシラン(25μL)を含有するTFA/DCM(0.5/0.5mL)で樹脂を2時間処理することによって実施した。前記樹脂をろ過し、DCM、MeOH及びDCM(各々2x)で洗浄し、ろ液を室温で蒸発させて粗Ugi生成物を得た。
生成物の実体及び純度はLCMSで確認した(Alltima C18カラム、0.05%TFA/H2O中の10−90%アセトニトリル使用、ESI-MS)。活性を有する混合物の精製はAlltima C-18半調製用カラム(250x10mm)で実施し(典型的には0.1%TFA/H2O中の30−50%グラディエントを使用)、続いて適切な分画を凍結乾燥した。
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
DMPA:4-ジメチルアミノピリジン
DCM:ジクロロメタン
NMP:N-メチルピロリドン
TFA:トリフルオロ酢酸

【0037】
【化4】

【実施例4】
【0038】
実施例4:フェニルアラニンから調製される没食子酸誘導体
構造式については図1を参照されたい。
ML65A:(C26H33N2O7)、MS(FT-ESI)m/z 485.22861[M+H]+
ML65B
ML65C
ML65A:(C23H27N2O9
ジアステレオマー1MS(FT-ESI)m/z 475.17123[M+H]+
ジアステレオマー2MS(FT-ESI)m/z 475.17108[M+H]+
ML75A:(C25H29N2O11
ジアステレオマー1MS(FT-ESI)m/z 533.17649[M+H]+
ML65D
ML72B
ML75B:(C26H31N2O11)、MS(FT-ESI)m/z 547.19244[M+H]+
ML76
ML72C:(C24H29N2O9)、MS(FT-ESI)m/z 489.18694[M+H]+
ML75C
ML89A
ML93
ML94
【実施例5】
【0039】
実施例5:トリプトファンから調製される没食子酸誘導体
構造式については図1を参照されたい。
ML78A
ML78B
ML78C:(C27H30N3O11
ジアステレオマー1MS(FT-ESI)m/z 572.18754[M+H]+
ジアステレオマー2MS(FT-ESI)m/z 572.18759[M+H]+
ML78D
ML78E:(C26H30N3O9
ジアステレオマー1MS(FT-ESI)m/z 528.19769[M+H]+
ジアステレオマー2MS(FT-ESI)m/z 528.19780[M+H]+
ML78F
ML78G:(C25H28N3O9)、MS(FT-ESI)m/z 514.18246[M+H]+
ML78H:
ジアステレオマー1MS(FT-ESI)m/z 528.19773[M+H]+
ジアステレオマー2MS(FT-ESI)m/z 528.19752[M+H]+
ML78I:(C28H32N3O11)、MS(FT-ESI)m/z 586.20339[M+H]+
ML89B
【実施例6】
【0040】
実施例6:チロシンから調製される没食子酸誘導体
構造式については図1を参照されたい。
ML111E:(C23H27N2O10)、MS(FT-ESI)m/z 491.16629
ML126
Tyr7
Tyr6
【実施例7】
【0041】
実施例7:他の没食子酸誘導体
構造式については図1を参照されたい。
ML95A
ML95B
ML97
ML111A
ML111B
ML111C
ML111D
ML89A
ML93
ML94
【実施例8】
【0042】
実施例8:阻害性ポリヒドロキシフェノールの存在下又は非存在下でのSH31-とP-セレクチンとの結合
SH31-アルカリ性ホスファターゼ(SH31-AP)とヒトP-セレクチンとの結合を阻害する能力について、Ugi生成物の粗混合物をアッセイした。SH31-AP(SH31/strepAPテトラマー複合体)(前記はヒトP-セレクチンと高親和性及び特異性で結合することが以前に示されていた:T.J.M. Molennar et al., Blood (2002) 100(10):3570-3577)を、ストレプトアビジン-AP(Amersham Life Science, Little Chalfont, UK; 5.0μL、2.0μM)及びSH31-ビオチン(ビオチン-VGLDPRDWVDVSDYA、1.5μL、190μM)を室温で2時間アッセイ緩衝液(20mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのCaCl2、pH7.4)中でインキュベートすることによって新しく調製した。競合実験のために、96ウェルのマイクロタイタープレート(高結合、平底)(Costar, Corning, USA)を、コーティング緩衝液(50mMのNaHCO3、pH9.6)中の10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, Netherlands)で4℃で一晩被覆した。続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄し、ブロッキング緩衝液(アッセイ緩衝液に3%BSA)とともに37℃で1時間インキュベートした。アッセイ緩衝液で洗浄した後、ウェルをヒトP-セレクチンIgG-Fcキメラ(R&D Systems Europe Ltd., Abingdon, United Kingdom; 0.3μg/mL)とともに37℃で2時間インキュベートした。続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄し、さらにSH31-AP複合体とともにUgi生成物(10又は100μM)の存在下又は非存在下で4℃で1時間インキュベートした。前記ウェルをアッセイ緩衝液で6回洗浄し、基質(0.6mgのp-ニトロフェニルホスフェート(PNP;Merck, Whitehouse Station, USA)/mLジエタノールアミン緩衝液(9.6%ジエタノールアミン/0.35mMのMgCl2、pH9.8))を添加し、ウェルを室温で15分インキュベートした。2.4MのNaOHを添加して反応を停止させ、405nmで吸収を測定した。結果は図2に示されている。テストした全ての化合物がSH31とP-セレクチンとの結合を用量依存的に阻害した。
【0043】
精製したUgi生成物をSH31-ペルオキシダーゼ(SH31-PO)とヒトP-セレクチンとの結合を阻害するその能力についてアッセイした。SH31-PO、SH31/strepPOテトラマー複合体を、ストレプトアビジン-PO(Amersham Life Science, Little Chalfont, UK; 5.0μL、2.0μM)及びSH31-ビオチン(ビオチン-VGLDPRDWVDVSDYA、1.5μL、190μM)を室温で2時間アッセイ緩衝液(20mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのCaCl2、pH7.4)中でインキュベートすることによって新しく調製した。競合実験のために、96ウェルのマイクロタイタープレート(高結合、平底)(Costar, Corning, USA)を、コーティング緩衝液(50mMのNaHCO3、pH9.6)中の10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, Netherlands)で4℃で一晩被覆した。続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄し、ブロッキング緩衝液(アッセイ緩衝液に3%BSA)とともに37℃で1時間インキュベートした。アッセイ緩衝液で洗浄した後、ウェルをヒトP-セレクチンIgG-Fcキメラ(R&D Systems Europe Ltd., Abingdon, United Kingdom; 0.3μg/mL)とともに37℃で2時間インキュベートした。続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄し、さらにSH31-PO複合体とともにUgi生成物(0.4−100μMの範囲)の存在下又は非存在下で4℃で1時間インキュベートした。前記ウェルをアッセイ緩衝液で6回洗浄し、基質(3,3',5,5'-テトラメチルベンジン(TMB)/H2O2;Pierce, Rochford, USA)を添加し、ウェルを室温で15分インキュベートした。2MのH2SO4を添加して反応を停止させ、450nmで吸収を測定した。結果は図3に示されている。被検化合物のIC50は、それらの化学構造とともに図3に挙げられている。
【実施例9】
【0044】
実施例9:没食子酸とTM11-POとの競合アッセイ
没食子酸(Acros, Geel, Belgium)を、TM11-POとヒトP-セレクチンとの結合を阻害するその能力についてアッセイした。TM11-PO、TM11/strepPOテトラマー複合体(前記はヒトP-セレクチンと高親和性及び特異性で結合することが以前に示された:T.J.M. Molennar et al., Blood (2002) 100(10):3570-3577)を、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(strep-PO(Amersham Life Science, Little Chalfont, UK)8.4μL、2.0μM)及びTM11-ビオチン(ビオチン-CDVEWNDVSSLEWDLPC(Dr. Van der Zee(Department of Immunology, University of Utrecht, Utrecht, Netherlands)によって合成された)1.5μL、190mM)を室温で2時間アッセイ緩衝液(20mMのHEPES、150mMのNaCl、1mMのCaCl2、pH7.4)中でインキュベートすることによって新しく調製した。競合実験のために、96ウェルのマイクロタイタープレート(高結合、平底)(Costar, Corning, USA)を、コーティング緩衝液(50mMのNaHCO3、pH9.6)中の10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, Netherlands)で4℃で一晩被覆した。続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄し、ブロッキング緩衝液(アッセイ緩衝液に3%BSA)とともに37℃で1時間インキュベートした。アッセイ緩衝液で洗浄した後、ウェルをヒトP-セレクチンIgG-Fcキメラ(R&D Systems Europe Ltd., Abingdon, United Kingdom; 0.3μg/mL)とともに37℃で2時間インキュベートした。続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄し、さらにTM11-PO複合体とともに4℃で1時間インキュベートした。前記ウェルを洗浄緩衝液(アッセイ緩衝液中に0.1%トゥイーン20)で6回洗浄した。3,3',5,5'-テトラメチルベンゾアミド(TMB)/過酸化水素(H2O2)(Pierce, Rochford, USA)を添加し、ウェルを室温で15分インキュベートした。2MのH2SO4を添加して反応を停止させ、450nmで吸収を測定した。結果は図4Aに示されている。結果から、没食子酸は、TM11-POとヒトP-セレクチンとの結合の強力な阻害剤であることが判明した。IC50値は7.2μMであった。
【実施例10】
【0045】
実施例10:没食子酸(誘導体)とPAA-Lea-SO3Hとの競合アッセイ
没食子酸とセレクチンファミリーの他のメンバー(すなわちE-及びL-セレクチン)との結合もテストすることができるように、TM11-POの代わりにビオチン-PAA-Lea-SO3H(Synthesone, Munich, Germany)を競合アッセイでリガンドとして用いた。スルホ-ルイスA基が結合したこのポリアクリルアミド(PAA)系ポリマーは確立されたセレクチンリガンドである。
実験的に実施例7と同じ方法を用いたが、以下の相違があった:アッセイ緩衝液で洗浄した後、ウェルを37℃で2時間、それぞれヒトP-セレクチンIgG-Fcキメラ、マウスP-セレクチンIgG-Fcキメラ、ヒトL-セレクチンIgG-Fcキメラ及びヒトE-セレクチンIgG-Fcキメラとともにインキュベートした(全ては以下から入手:R&D Systems Europe Ltd., Abingdon, United Kingdom)(0.3μg/mL)。続いて、マイクロタイターのウェルをTM11-PO-複合体の代わりにビオチン-PAA-Lea-SO3H(0.33μg/mL)と37℃で2時間インキュベートした。
このテストで没食子酸はヒトP-セレクチンを阻害することが見出された(IC50は約85μM)。さらにまた、没食子酸はE-セレクチン結合を阻害できないことが判明し(1mMまでの濃度では20%未満の阻害を示す)、一方でL-セレクチンの中等度の阻害物質のようであった(IC50は241μM)。没食子酸のP-セレクチンとの結合は種に非依存性のようであった。
ヒトP-セレクチンを阻害する能力について、没食子酸それ自体以外にいくつかの没食子酸誘導体(n-ドデシルガレート(Lancaster, Morecambe, United Kingdom)及び(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, the Netherlands))、抗酸化剤特性を有するポリフェノール(カフェー酸)(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, the Netherlands)及び4-ヒドロキシ安息香酸(Acros, Geel, Belgium)をテストした。結果は図4Bに示されている。これらの化合物のうちで、EGCGはヒトP-セレクチンとのビオチン-PAA-Lea-SO3H結合を阻害することができた(IC50は114μM)。他の全ての化合物は300μMを超えるIC50を示した。
【実施例11】
【0046】
実施例11:HL60細胞とヒトP-セレクチン発現チャイニーズハムスター卵巣細胞間の動的相互作用の阻害
ヒトP-セレクチンを安定的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO-P)はDr. Modderman(University of Amsterdam, Amsterdam, The Netherlands)から寄贈された。細胞はDMEM(BioWhittaker Europe, Verviers, Belgium)中で増殖させた。前記DMEMは10%ウシ胎児血清(FCS)(BioWhittaker)、5mMのL-グルタミン、20,000単位のペニシリン/ストレプトマイシン(BioWhittaker)及び5mMの非必須アミノ酸(Gibco, Paisley, United Kingdom)を含んでいた。細胞を含むフラスコを、細胞がほぼコンフルエントに増殖するまで5%CO2下で37℃で3から4日間インキュベートした。
HL60細胞はATCCから入手し、10%FCS、5mMのL-グルタミン及び20,000単位のペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培養液(BioWhittaker)中で増殖させた。
マクロファージ由来HL60細胞(天然のP-セレクチンリガンドであるPSGL-1の高発現を示す)、及び、30μg/mLコラーゲンS(I型)(Roche Diagnosis, Brussels, Belgium)被覆ガラスカバースリップ上で増殖させたP-セレクチン発現チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-P細胞)単層との間の動的相互作用を、文献(G. Theilmeier, Blood, 1999, 94:2725-34)から応用した方法を用い、パラレル-プレート灌流チャンバーで分析した。前記カバースリップはチャンバーの底を構成し実際のチャンバーは、円錐形の流路を持つようにデザインされた254μmの高さのシリコンゴムのガスケットによって形成され、したがってチャンバーの入口から出口までの壁面せん断速度は3倍増加する。カルセイン-AM標識HL60細胞(RPMIに0.5x106/1mLに懸濁)を37℃、1mL/分の流速で逆注射筒ポンプ(Harvard Instruments, South Natick, MA, USA)により灌流させた。前記フローチャンバーをコーフ(Cohu)CCDビデオカメラ(COHU Inc., San Diego, CA, USA)を取り付けたエピフルオレセンス倒立顕微鏡(Diaphot; Nicon, Melville, NY, USA)の標本台に載せ、CHO-P単層培養上のHL60細胞のローリングを300及び600s-lの壁面せん断速度で測定した。没食子酸はHL60細胞懸濁液に灌流開始2分前に添加した。酸化を防ぐために、没食子酸溶液は新しく調製した。選択した壁面せん断速度に対応する流路の予め定めた位置で記録される12秒間のリアルタイムムービー(毎秒10画像)を保存し、サイオン(Scion)LG3フレームグラッバー(Scion Corp, Frederick, ML, USA)でデジタル化した。NIHイメージプログラムヴァージョン6.1を用い、CHO-P細胞上をローリングするHL60細胞の平均速度を1秒の時間枠におけるHL60細胞のローリング距離から算出した。粘着HL60細胞の数を同じ実験中に撮影した写真から数えた。
結果は図5A及び5Bに示されている。結果として、没食子酸は、未処理のコントロールと比較して、CHO-P単層培養へのHL60細胞の粘着を50μMで既に壁面せん断速度にかかわりなく顕著に低下させた(300及び600s-lでそれぞれ-34%及び-43%)。250μMでは、没食子酸の作用はいっそう顕著であった(それぞれ-41%及び-54%)。
CHO-P単層培養上をローリングするHL60細胞のローリング速度は同じ実験設定で測定した。HL60細胞のローリング速度は50及び250μMの没食子酸の存在下で2倍であった。
【実施例12】
【0047】
実施例12:血小板の単離、単層血小板の標識及び調製、コラーゲン結合単層血小板上の白血球のローリング
1:6の酸-クエン酸塩-デキストロース(ACD:93mMクエン酸三ナトリウム、7mMクエン酸、140mMデキストロース、pH6.5)及び1μMチロフィバン上にヒト血液を採集した。150gで15分遠心してヒト血小板濃厚血漿(PRP)を調製した。ネズミ血液を20μg/mLのヒルジン上に採取し、800gで30秒遠心し、直ちに150gで5分の第二の遠心を実施してPRPを調製した。続いて前記単離PRP(ヒト及びネズミ)を2容積のACDと混合し、800gで5分再度遠心した。続いて洗浄血小板を1%(v/v)ヒト血清アルブミン(HAS)を含むHEPES-タイロード緩衝液(5mMのHEPES、137mMのNaCl、2.7mMのNaHCO3、0.36mMのNaH2PO4、1%(w/v)グルコース、pH7.3)に106血小板/μLで再懸濁した。続いて前記を5μMのカルセイン-AM(アセトキシメチルエステル)とともに37℃で20分インキュベートした(蛍光は細胞内で非特異的エステラーゼでいったん切断され、我々の灌流実験では血小板機能に検出可能な作用は認められなかった)。続いて血小板懸濁液を700g25分遠心し、蛍光血小板をHEPES-タイロード緩衝液に再懸濁し、そのようなネズミ血小板をマウスに注射した。
その後の灌流実験のためのヒト血小板カーペットは、ガラスのカバースリップをウシ皮膚コラーゲン(50mMの酢酸に1mg/mLで溶解)で一晩被覆することによって作製した。続いてカバースリップを完全タイロード緩衝液(2mMのCaCl2、1mMのMgCl2及び1%のヒトアルブミンを含むタイロード緩衝液)中ですすいだ。続いて、ヒト全血(20μg/mLのヒルジンで凝固防止)をパラレルフローチャンバーのコラーゲン被覆表面にせん断速度300 s-lで、1mMのチロフィバン(Merck)の存在下で再灌流させた。これらの条件下では、血小板の凝集物を形成することなく、活性化した血小板スプレッドの均質なカーペットがカバースリップ上に形成される。
20μg/mLのヒルジンで凝固防止した全血をせん断速度300 s-lで37℃で5分間フローチャンバー内を灌流させてコラーゲン結合血小板単層カーペットを形成させた後、前記血液を1%ヒトアルブミンを含有する完全タイロード緩衝液で漸次洗い流す。灌流は150 s-lの定常的せん断速度で500μMの没食子酸又は25μg/mLの抗P-セレクチン抗体WAPS12.2の存在下又は非存在下で継続させた。3分の洗浄後、血小板カーペットに移動した残留白血球を倒立顕微鏡で可視化し、搭載したコンピュータのメモリーでムービーを取り込み、上述のようにローリング速度を算出した。結果は図6及び7に示されている。
【実施例13】
【0048】
実施例13:内皮細胞の炎症のin vivo阻害
全ての動物実験は、学内審査委員会(Institutional Review Board of the University of Leuven)の精査を受けて承認され、国際血栓及び止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis, Giles, AR)のガイドラインにしたがって実施された。in vivoでの血管内皮表面上の血小板支援白血球のローリング実験のために、オンラインビデオ顕微鏡法をマウスで実施した。C57/B16マウス(6−12週齢)をネンブタールの腹腔内注射(70mg/kg)により麻酔し、頚静脈にカテーテルを挿入した。大腿静脈を露出させ、前記大腿静脈の血液循環をコーフCCDビデオカメラで見ることができるように、マウスを倒立エピフルオレセンス顕微鏡の台上に置いた。続いて蛍光標識ネズミ血小板をカテーテル挿入頚静脈に注入し(200μL中に500x106血小板)、標識血小板について基準ローリングを記録した。10分後、抗αIIb3アンタゴニストG4120(前記は活性化血小板が凝集するのを防止するためにコラーゲンとともに1mg/kgで注射された)の存在下で50μg/kgのコラーゲンを注射して循環血小板を活性化させた。続いて5分後に、コラーゲンによって誘発される白血球-血小板結合物のローリング及びタンブリングを10分間記録した。ローリングしているロゼットを数え、それらの平均タンブリング速度を記録されたムービーから算出した。ロゼットのローリングに対する没食子酸の影響を知るために、前記をコラーゲン投与の5分前に輸液し、ロゼットローリングをコントロールのように分析した。ロゼット-血管壁相互作用もまた高齢のアテローム性硬化症ApoE-/-マウス(>1年)の大腿静脈で調べた。0.75から7.5mg/kg.h.の没食子酸輸液の前後で、タンブリングロゼットをコラーゲンの注射後10分で数えた。ロゼットタンブリングの1/2最大阻害を与える用量(ED50)を計算し1.5±0.4mg/kg.hを得た。前記の値は有効血漿濃度の40μMと一致した。結果は図8A、8B及び9に示されている。
【実施例14】
【0049】
実施例14:血小板凝集に対するポリヒドロキシフェノールの作用
GA及びEGCG(リファレンスとして)を血小板凝集に対するそれらの作用について調べた。ミセルを形成しやすいその傾向のためにDGは血小板の溶解を惹起するので、これらの実験では用いることができなかった。
健常な提供者からインフォームドコンセントの下に新しく静脈血を1/10容積の3.2%クエン酸三ナトリウム(w/v)中に採取した。前記の提供者は、採血前の10日間にアスピリン又は他の血小板機能の阻害物質を服用していないと述べた。血小板濃厚血漿(PRP)を遠心により調製した(150g、15分、22℃)。PRPを200,000血小板/μLの最終濃度に血小板希薄血漿(PPP)を用いて調節した(PPPは残留血液のさらなる遠心工程(1100g、15分、22℃)の後に得られた)。PRPを37℃で30分静置し血小板の休止状態を担保した。その後、PRPを種々の濃度の没食子酸、EGCG又は溶媒とともに37℃で5分間インキュベートした。サンプルを凝集測定装置(Kordia BV, Leiden, The Netherlands)に移し、900r.p.m.の開始速度で血小板の凝集を測定した。血小板の凝集は、種々の濃度のGA又はEGCG(0、50、250及び500μM)との予備インキュベーション後にトロンビンレセプター活性化ペプチド(TRAP、6.5μM、37℃)を添加することによって開始した。
最大凝集は、GAについては図10(A)にEGCGについては図10(B)に示されている。GA及びEGCGの両方が、500μMの濃度で血小板凝集を顕著に阻害することが判明した。250μMの濃度では顕著な阻害は測定されず、これは、提供者間での没食子酸に対する反応における大きな個体間変動から生じた。
【実施例15】
【0050】
実施例15:乳濁液の調製
0.5部のML72A(ポリヒドロキシフェノール誘導体)及び0.4部のデキサメタゾンパルミテート及び1.2部の精製卵黄レシチン及び10部の精製大豆油を、2.21部の濃縮グリセリン及び85.69部の水に添加した後、ミクロ流動化装置(室温で12,000psi、室温で10分)を用いて乳濁調製物を生成した。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例4、5、6及び7の化合物の構造式を示す。
【図2−1】種々の濃度の実施例4、5、6及び7のコントロールと比較したP-セレクチン結合のグラフである。
【図2−2】種々の濃度の実施例4、5、6及び7のコントロールと比較したP-セレクチン結合のグラフである。
【図3】実施例4、5及び7のいくつかの化合物の異性体(構造式もまた示されている)のIC50値を示す表である。
【図4】没食子酸(GA)はP-及びL-セレクチンと拮抗するが、E-セレクチンとは拮抗しない。A.TM11-POとヒトP-セレクチンとの結合時におけるGA-EWVDV(黒三角)、EWVDV(+)及び没食子酸(黒四角)の競合結合;B.ビオチン-PAA-Lea-SO3とヒトP-セレクチン(黒四角)、マウスP-セレクチン(白四角)、ヒトL-セレクチン(黒三角)及びヒトE-セレクチン(黒逆三角)との結合の没食子酸による競合。ウェルをセレクチン(0.3μg/mL)で被覆し、没食子酸の存在下及び非存在下で0.33μg/mLのビオチン-PAA-Lea-SO3とインキュベートした。値はトリプリケート実験の平均±SEMを示す。
【図5】CHO-P細胞上のHL60細胞のローリングは没食子酸によって低下する。A.CHO-P細胞で被覆したカバースリップに、表示した濃度の没食子酸の存在下又は非存在下(コントロール)で壁面せん断速度300s-1(白棒線)及び600s-1(黒棒線)のカルセイン-AM標識HL60細胞が付着する数を実験時に撮影した写真から決定した。各々について、2つのそれぞれ別個の灌流アッセイで26−30の写真を解析した(**p<0.0001)。B.CHO-P細胞被覆カバースリップ上を、没食子酸の存在下(50及び250μM)又は非存在下(コントロール)で壁面せん断速度300s-1(白棒線)及び600s-1(黒棒線)のカルセイン-AM標識HL60細胞がローリングする速度(μm/s)をリアルタイムムービーから決定した。各々の条件について、少なくとも20個の個々のHL60細胞のローリング速度を5−9個のそれぞれ別個の灌流アッセイで測定した。値は平均±SEMを示す(*p<0.05)。
【図6】血小板単層上をin vitroでローリングする白血球。ウシ皮膚コラーゲンに粘着させたヒト血小板から成る表面上を、500μMの没食子酸存在下(GA500、分析細胞数=22)又は非存在下(コントロール、分析細胞数=35)でせん断速度300s-1で休止期血液白血球がローリングするときの速度の分布を表すボックスプロットである。両群の平均ローリング速度が表示されている(μm/s、p<0.05)。
【図7】大腿静脈内皮上での白血球-血小板結合のin vivo動的タンブリング。αIIb3アンタゴニストG4120の存在下でマウス白血球と蛍光標識コラーゲン活性化マウス血小板との5つの個々の結合についてのオンライン記録画像のオーバーレイプロット。画像間隔は0.1秒である。移動距離はスケールバーで示されている。白血球は標識されていない。白血球結合血小板は黒い点として標識されている。
【図8】没食子酸は白血球-血小板タンブリングをin vivoで低下させる。単位表面当たりのローリングする結合物の数として表された、没食子酸によるC57/B16マウス(WT)の大腿静脈内皮上の結合物ローリングの用量依存阻害(A)。没食子酸の非存在下でのパーセンテージローリングとして表した、高齢アテローム性硬化症マウス(ApoE-/-)の白血球と血小板との間で予め形成された結合物の没食子酸によるローリング阻害(B)。
【図9】コントロール及びアテローム性硬化症マウスにおける結合物のローリング及び血小板粘着。500μMの没食子酸(GA)の存在下又は非存在下(コントロール)における未処理マウス(コントロール)及びアテローム性硬化症マウス(ApoE-/-)の単一血小板(矢印で特定)の粘着及び結合物のローリング(赤で囲んだ白血球結合血小板によって特定)。
【図10】種々の濃度の没食子酸(A)及びEGCG(B)の存在下での最大血小板凝集。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式のポリヒドロキシフェノール:
【化1】

式中、
R1は、水素、直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基又は芳香族基であり、前記は場合によってそれぞれヒドロキシ基、カルボン酸基、アミノ基又は直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基で置換されてあり;
R2は随意の基であって、直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基であり;
R3は、直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基であって場合によって1つ若しくは2つ以上のカルボン酸基、又は直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキルアミド基で置換されてあるか、又は(C3-C8)シクロアルキル基であって場合によって直鎖若しくは分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基又は1つ若しくは2つ以上のカルボン酸基で置換されてある。
【請求項2】
R1はエチル、フェニルメチル、インドリルメチル又は4-ヒドロキシフェニルメチルであり;R2は直鎖(C1-C4)脂肪族アルキル基であり;R3は直鎖(C1-C4)脂肪族アルキル基であって1つ又は2つのカルボン酸基で置換されてあり、前記カルボン酸基は場合によって直鎖又は分枝(C1-C4)脂肪族アルキル基で置換されてあることを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキシフェノール。
【請求項3】
R1はエチル、フェニルメチル、インドリルメチル又は4-ヒドロキシフェニルメチルであり;R2は水素、エチル、プロピル又はイソプロピルであり;R3はエチルカルボン酸又はプロピルジカルボン酸であることを特徴とする、請求項21に記載の化合物。
【請求項4】
3,4,5-トリ-o-(tert-ブトキシカルボニル)-没食子酸。
【請求項5】
アミノ酸、脂肪族アルデヒド、ニトリル、及び没食子酸提供成分を一緒にすることを含む、請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノールの製造方法であって、請求項4の化合物が没食子酸提供成分として用いられることを特徴とする、前記ポリヒドロキシフェノールの製造方法。
【請求項6】
医薬としての請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノール。
【請求項7】
(a)請求項1から3のいずれかに記載の1つ又は2つ以上のポリヒドロキシフェノール及び(b)少なくとも1つの医薬的に許容できる賦形剤を含む組成物。
【請求項8】
P-セレクチン発現細胞を標的とする物質としての、請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノール。
【請求項9】
(a)請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノール、没食子酸若しくはその誘導体、又はポリフェノールの1つ又は2つ以上、(b)薬剤、コントラスト物質又は放射性核種である活性成分、及び(c)少なくとも1つの医薬的に許容できる賦形剤を含む組成物。
【請求項10】
請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノール、没食子酸若しくはその誘導体、又はポリフェノールの1つ又は2つ以上が活性成分と場合によってリンカーを介して共役又はカップリングされてあることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノール、没食子酸若しくはその誘導体、又はポリフェノールの1つ又は2つ以上が実体物中に取り込まれてあるか、又は実体物上に固定されてあることを特徴とし、前記実体物が脂質小胞、乳濁液滴、ポリマー、タンパク質、ナノ粒子若しくはミクロ粒子、ヒドロゲル、複合体、ヴィロソームなどである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
医薬として使用する請求項1から11のいずれかに記載の化合物又は組成物。
【請求項13】
冠状動脈疾患、血栓症、癌、慢性炎症性疾患、慢性関節リウマチ、炎症性大腸疾患、多発性硬化症、アテローム性硬化症、再狭窄、虚血、腎不全を含む再灌流損傷、腫瘍転移、細菌性敗血症、汎発性血管内凝固症候群、成人呼吸器ストレス症候群、卒中、血管形成、移植拒絶、深部血管血栓症、心筋梗塞又は循環系ショックの予防、治療又は診断のための医薬の製造を目的とする活性化合物の使用であって、前記活性化合物がポリヒドロキシフェノール及び/又はポリフェノールである、前記活性化合物の使用。
【請求項14】
請求項1から3のいずれかに記載のポリヒドロキシフェノール、没食子酸若しくはその誘導体又は(-)-エピガロカテキンガレートの1つ又は2つ以上が前記活性化合物として用いられることを特徴とする、請求項13に記載の使用。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−527169(P2006−527169A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508165(P2006−508165)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004898
【国際公開番号】WO2004/105740
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】