説明

ポリマーの吸収性を高めるためのフェニルエステル側鎖

本発明は、その吸収性を高めるように改変したポリマーに関する。具体的には、本発明のポリマーは、良好な脱離基であり、かつそれによって、例えば同等量のアルキルエステル側鎖を有する同じポリマーに対して、そのポリマーの吸収速度を増大させるフェニルエステル側鎖を有する。そうしたポリマーは一般に水に不溶性であるが、改変されると薬物を可溶化することができ、分解および吸収されると、その薬物を、制御および/または持続した形で生理学的環境中に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、都合のいい(facile)脱離基で保護されたカルボン酸側鎖を有する医学関連の生分解性ポリマーに関する。具体的には、これらの脱離基は、その場で切断されて、ポリマー上に遊離カルボン酸基を生じさせ、それによってポリマーの分解性および吸収性(resorbability)を高めるフェニルエステルである。本発明は、本発明のポリマーおよび1つまたは複数の薬物を含む医薬組成物、ならびに本発明のポリマーで作られるかまたはそれでコーティングされ、かつ、任意選択により1つまたは複数の薬物を備えた医療用デバイスも対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002] 生体適合性のある生分解性ポリマーは、様々な医学的用途を有しており、医薬組成物から、医療用デバイスとして、または医療用デバイスと共に用いられる場合であっても、しばしば制御的または持続的な薬物送達を提供する。すべてが分かっていないにしても、生体適合性ポリマーを用いて、医薬組成物を経口、筋肉内、皮下、関節内、鼻腔内、局所または他の送達経路を含む多くの医薬品の送達経路用に設計することができる。そうしたポリマーは、医療用デバイスや人工装具と合わせて制御薬物送達のためにも用いられる。例えば、生体適合性ポリマーおよび薬物は、コーティングとして埋め込み型医療用デバイスに塗布されて、制御的または持続的薬物送達を提供する。ポリマーコーティングを施すことによって、下にあるデバイスの物理機械的特性を変えるための1つの方策が提供され、外科的処置の際の取り扱いを改善することができる。さらに、医療用デバイス、例えば外科用メッシュ、人工骨および外科用縫合デバイスは、生体適合性ポリマーを用いた構成要素から形成するか、またはそれを含むことができる。そうしたデバイスに、薬物を製造時に組み込むか、あるいは製造後にそれをコーティングするかまたは含浸させることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003] 薬物送達のプロファイルは、ポリマー特性、薬物特性、送達経路、送達方式、個々の代謝、酵素作用、血管新生の程度その他などの、存在し得るかまたは関連する他の成分を含む多くの要素に依存する。さらに、厄介な副作用を対象にもたらすことなく生体適合性を保持しながら、所望の放出プロファイル提供するポリマー−薬物の系または製剤を選択する際に生じる、薬物の溶解性または温度感受性などの製造や適合性の課題がしばしば存在する。ポリマー、薬物および医学的用途の多様性を考えると、医学的な条件または必要性に適合するように操作できるポリマー−薬物の組合せを提供するための新規なポリマーの必要性が常に存在する。本発明は、臨床医に、制御もしくは持続薬物送達、または指定期間の薬物送達のためを含む薬物送達のためのより広い選択肢を提供するために、医療用デバイスの中、その上またはその一部において、医薬もたらすことができるか、またはそれと一緒に用いて使用できる生体適合性のある生分解性および吸収性のポリマーの必要性に対処するものである。
【0004】
[0004] 最後に、本発明のポリマーの使用によって、インビボでの使用の際に遊離カルボン酸基を生成させ(ポリマー合成の時点ではなく、これはある種の合成上の利点を有する)、したがって、より広範な化学的特性ならびにより大きな薬物送達能を有するポリマーを提供する新規な方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005] 本発明は、生理学的条件下で吸収可能な生体適合性のある生分解性ポリマーである吸収性ポリマーを対象とする。一実施形態では、本発明のポリマーは、次の式I
【0006】
【化1】

(式中、Monomerは、生理学的条件下で吸収可能な生体適合性のある生分解性ポリマーの繰り返し単位を表し、R’がフェニル−Rであるフェニルエステル側鎖を有する)
で表される1つまたは複数のMonomer単位を含む。
【0007】
[0006] 具体的には、「Monomer」は、生理学的条件下で吸収可能な生体適合性のある生分解性ポリマーの繰り返し単位を表す。
R’はフェニル−Rであり、ここで、0〜5個のR置換基はフェニル環上の任意の位置にあり、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
YはOまたはNHであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
各Rは水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリールであるか、または(RO((CRO)−Rであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である。
【0008】
[0007] 好ましい実施形態では、本発明のポリマーは、少なくとも約0.1%〜100%のMonomerを含み、したがって、コポリマーおよびホモポリマーを含む。
【0009】
[0008] 他の実施形態では、本発明のポリマーは式II:
【0010】
【化2】

で表される1つまたは複数のジフェノールモノマー単位を含む。これらのジフェノールモノマー単位は、そのポリマーが生理学的条件下で吸収可能である、ペンダントフェニルエステル側鎖を備えた生体適合性のある生分解性ポリマーを提供する。
【0011】
[0009] 具体的には、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=NH)、C(O)−NH−R−NH−C(O)またはC(S)であり、
Bは、1〜20個の炭素原子を有する三価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリール部分であるか、あるいは、
【0012】
【化3】

であり、
各骨格芳香環は0〜4個のZまたはZ置換基を有しており、そのそれぞれは、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護ヒドロキシル基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群から独立に選択され、
ペンダントフェニル環は、フェニル環上の任意の位置に0〜5個のR置換基を有しており、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
は独立に、1〜30個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキレンオキシドまたはアリーレンオキシド部分;(RO((CRO)(R;または(RCO((CRO)CO(Rであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状もしくは分岐状低級アルキルであり、
は独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
は水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、その置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、その置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基あるいはアミノ保護基であり、
10は、直鎖状または分岐状のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、
Xはハロゲンであり、
YはOまたはNHであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である。
【0013】
[0010] いくつかの実施形態では、本発明のポリマーは、少なくとも約0.1%〜100%のこれらのジフェノールモノマー単位を含む。
【0014】
[0011] 他の実施形態では、ポリマーは、AをC(O)−R−C(O)として有し、Bを
【0015】
【化4】

として有する。ここで、Rは、メチレン、エチレンまたはn−プロピレンであり、RおよびRは、好ましくは結合、メチレンまたはエチレンである。
【0016】
[0012] 本発明のポリマーが、Monomerまたは式IIのジフェノールモノマー単位を含むコポリマーである場合、フェニルエステル部分を、水素(遊離COOH基を生成する)によって、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、またはアルキレンオキシド鎖もしくはエーテル鎖を有するエステルなどの別の部類のエステルによって、アミドによって、あるいは、別の適切な官能基によって置き換えることができること以外は、これらのコポリマーの他のMonomer単位は、Monomerまたは式IIのジフェノールモノマー単位とほとんど同じものであってよい。さらに、上記変更に加えるか、または上記変更の代わりに、他のMonomer単位は、Monomerまたは式IIのジフェノールモノマー単位と同様であってよいが、それは、異なる置換基間で可変性を有する、すなわち、式IおよびIIのA、B、R〜R10、X、Yまたは他の可変部(variable)のいずれかで差異があってよい。最後に、そうした部分がポリマーの特性を保持しており、かつ、Monomerまたは式IIのジフェノールモノマー単位と共重合することが可能であれば、コポリマー中の他のMonomer単位は実質的に異なっていてもよい。
【0017】
[0013] 本発明の他の態様は、1つまたは複数の第2のポリマーとブレンドされた本発明のポリマーを対象とする。第2のポリマーはやはり生体適合性のあるものであるが、デバイス中に形成されるか、デバイス上に形成されるか(コーティング、膜などによる)、薬物溶出プロファイルを操作するための医薬組成物としてなどの具体的な用途に応じて、生分解性であっても、吸収性であっても、また安定であってもよい。特に有用な第2のポリマー(特に完全に吸収性の製品のため)には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)および他のジフェノール誘導またはチロシン誘導ポリアリレートが含まれる。本発明のポリマーブレンドはさらに1つまたは複数の薬物を含むことができる。
【0018】
[0014] 本発明の他の態様では、本発明のポリマーおよびブレンドは、1つまたは複数の薬物、および任意選択により1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に製剤される。そうした薬物には、これらに限定されないが、抗菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤(anti-scarring agent)、成長因子および抗線維化薬が含まれる。
【0019】
[0015] 他の態様では、本発明は、1つまたは複数の薬物を含むかまたは含まない、本発明のポリマーまたはブレンドの1つまたは複数を含む医療用デバイスを対象とする。さらに、その医療用デバイスは、本発明のポリマーまたはブレンドの1つまたは複数でコーティングされていてよい。そうしたデバイスには、これらに限定されないが、ステントなどの埋め込み型または挿入型デバイス;外科用メッシュ;デバイス用のカバリング、ポーチ、ポケット、バッグなど;創傷縫合補助材および任意のタイプのカテーテルが含まれる。存在する場合、コーティングは、部分コーティングとして、または全面コーティングとしてデバイスの表面上のどこであってもよく、また、本発明のポリマーおよびブレンドを用いるかまたは他の生体適合性ポリマーで作製した層のコーティングを用いた単層または多層であってもよい。
【0020】
[0016] 本発明のさらに他の態様は、以下の式IIIまたはIVで表されるモノマー化合物を提供する。
【0021】
【化5】

これらのモノマー化合物は、フェニルエステル部分を備えており、本発明のポリマー、すなわち生理学的条件下で吸収可能な生体適合性のある生分解性ポリマーの合成に使用することができる。式IIIの化合物は遊離ヒドロキシルを有し、式IVの化合物はヒドロキシル保護基(P)を有する。他の置換基は、式IIのジフェノールモノマー単位について上記したものと同様である。好ましい実施形態では、本発明のモノマー化合物は、Bが
【0022】
【化6】

である化合物である。
【0023】
[0017] さらに他の態様では、薬物を用いるか用いないで、患者に本発明の医療用デバイスを埋め込むことによって、患者の障害または状態を治療する方法を提供する。本発明の埋め込み型医療用デバイスは、心血管障害、神経障害、ヘルニアまたはヘルニア関連疾患、眼疾患を治療または改善するか、あるいは、患者の体の一部、肢、組織または器官の解剖学的修復、復元、置換または増大をもたらすために使用することができる。例えば、これらの方法は、比較できる非処理医療用デバイスの埋め込みに伴う病的状態を改善することができる。そうした病的状態は瘢痕化、疼痛および感染症を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】[0018](◆)ポリ(DTM−15−DTグルタレート)、(◇)ポリ(DTPBグルタレート)、(●)ポリ(DTMBスクシネート)、(□)ポリ(DTMBグルタレート)、(▲)ポリ(DT(DATE)グルタレート)および(○)ポリ(DTMB−10−DTスクシネート)について、インビボでのポリマー分子量の変化を時間の関数として示すグラフである。
【0025】
【図2】[0019](◆)ポリ(DTM−15−DTグルタレート)、(◇)ポリ(DTPBグルタレート)、(●)ポリ(DTMBスクシネート)、(□)ポリ(DTMBグルタレート)、(▲)ポリ(DT(DATE)グルタレート)および(○)ポリ(DTMB−10−DTスクシネート)について、ポリマーコーティングしたメッシュのインビボでの質量損失を時間の関数として示すグラフである。
【0026】
【図3】[0020]ポリ(DTMBグルタレート)を噴霧コーティングしたポリプロピレンメッシュからのリファンピンの放出プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義と略語:
[0021] 本明細書に記載する化合物は不斉中心を有することができる。すべてのキラル形態、ジアステレオマー形態およびラセミ体が本発明に包含される。オレフィンなど幾何異性体も本明細書に記載する化合物において存在することができ、そうしたすべての安定な異性体は本発明に含まれるものとする。
【0028】
[0022] 明細書では「安定化合物」または「安定構造物」とは、反応混合物から有用な程度の純度に単離し、有効な治療薬に製剤するかまたはそれに使用するのに十分堅牢である化合物または分子を意味する。
【0029】
[0023] 文脈から別途明らかでない限り、本明細書で用いる「アルキル」は、指定された数の炭素原子を有する分岐状と直鎖状の両方の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。直鎖状という用語と線状という用語は互換的に用いられる。本明細書で用いる「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。置換されている場合、その置換基は、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載する他の置換基、および本発明の分子の特性および合成に適合するものなどを含むことができる。
【0030】
[0024] 本明細書で用いる「アルケニル」は、直鎖状かまたは分岐状の配置と1つまたは複数の不飽和炭素−炭素二重結合からなる炭化水素鎖、例えばエテニル、プロペニルなどを意味する。「低級アルケニル」は2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基である。本明細書で用いる「アルキニル」は、直鎖状かまたは分岐状の配置と1つまたは複数の炭素−炭素三重結合からなる炭化水素鎖、例えばエチニル、プロピニルなどを意味する。「低級アルキニル」は2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基である。炭素原子の数が指定されていない場合、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、1〜20個の炭素原子を有することを意味する。アルキレンおよびアルケニレン基は、それぞれ、二価のアルキル基およびアルケニル基である。置換されている場合、その置換基は、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載する他の置換基、および本発明の分子の特性および合成に適合するものなどを含むことができる。
【0031】
[0025] 本明細書で用いる「飽和または不飽和アルキル」は、任意の程度の飽和度、すなわち、完全に飽和しているか(アルキル)、1つもしくは複数の二重結合(アルケニル)または1つもしくは複数の三重結合(アルキニル)を有するアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基のいずれかを指す。
【0032】
[0026] アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、ノニル、デシルなどが含まれ、アルキレンおよびアルケニレン基の例には、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、プロペニレン、ブチレン、ブタジエン、ペンテン、n−ヘキセン、イソヘキセン、n−ヘプテン、n−オクテン、イソオクテン、ノネン、デセンなどが含まれる。当業者は、多くの直鎖状または分岐状炭化水素基を周知であろう。アルキニル基にはエチニルおよびプロピニル基が含まれる。
【0033】
[0027] 本明細書で用いる「アリール」は、少なくとも1つの芳香族炭素環を含む任意の安定な6〜14員の単環、二環または三環、例えば、フェニル、ナフチル、インダニル、テトラヒドロナフチル(テトラリニル)などを意味する。置換されている場合、その置換基は、ハライド、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、本明細書に記載する他の置換基、および本発明の分子の特性および合成に適合するものなどを含むことができる。
【0034】
[0028] 本明細書で用いる「ヘテロアリール」という用語は、芳香族であり、かつ、炭素原子、ならびにN、OおよびSからなる群から選択される1〜3ヘテロ原子からなる安定な5〜10員の単環式または二環式複素環であって、その窒素は任意選択により四級化されていてよく、上記定義のヘテロアリール環のいずれかがベンゼン環と縮合している任意の二環基を含む複素環を意味する。ヘテロアリール環は、安定構造をもたらす、任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基と結合していてよい。ヘテロアリール基上での置換の存在は任意選択であり、得られる化合物が安定であり、その原子のすべての原子価が充足されていれば炭素原子、窒素原子または他のヘテロ原子上であってよい。存在する場合、置換されたヘテロアリール基の置換基は、置換されたアリール基の場合と同じであり、その置換基がヘテロアリール環の窒素原子と結合したアルキル基である場合、アルキルアンモニウム塩も含む。これらの四級アンモニウム塩には、ハライド、ハイドロハライド、硫酸塩、メトサルフェート、メタンサルフェート、トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、乳酸塩または任意の他の薬学的に許容される塩が含まれる。ヘテロアリール基の例には、これらに限定されないが、ピリジル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニルおよびベンズイミダゾリルが含まれる。
【0035】
[0029] 本明細書で用いる「アルキルアリール」は、それが次の置換基の結合点となる、アルキル基と結合したアリール基を指す。この部分(moiety)のアリール基は、本明細書の定義にしたがって、任意選択により置換されていてよい。例えば、ベンジルエステルは、フェニル環上に結合しているメチレンが、エステルの酸素と結合しているアルキルアリール部分を表す。その一方、フェニルエステルでは、フェニル環は、エステルの酸素と直接結合している。
【0036】
[0030] 本明細書で用いる「置換(された)」という用語は、指定された原子上の1つまたは複数の水素が、指定された基から選択されたもので置き換えられていることを意味する。ここで、指定された原子の正規の原子価を超えることはなく、かつその置換によって安定化合物がもたらされるものとする。置換基が示されていない場合、原子価は水素で充足されている。本発明の置換基は、示されているように、ハライド(ハロとも称される)、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロアリール、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウムおよびその塩、カルバモイル、アシルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、ホルムアミド、グアニジノ、ウレイド、スルファミルおよびアルキルスルホンアミドを含むことができる。本発明によって示されているように、これらの基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキル基に代わる置換基であってよい。ここで、その置換基の存在は本発明の分子の特性および合成に適合しているものとする。
【0037】
[0031] 「ラジカル」、「基」、「官能基」および「置換基」という用語は、いくつかの文脈において互換的に用いることができ、合わせて用いて化学的構造をさらに説明することができる。例えば、「官能基」という用語は、化学的構造の鎖中にあっても、それに懸垂(ペンダントとして存在)していても、かつ/またはその末端にあってもよい化学構造可変部である化学的な「基」または「ラジカル」を指すことができる。官能基は置換されていてよい。
【0038】
[0032] 「ハライド」または「ハロ」基は、ハロゲン原子であり、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード基を含む。「アルコキシ」という用語は、R−O−で表される少なくとも1つの酸素置換基を有するアルキル基を指す。
【0039】
[0033] ポリ(アルキレングリコール)の例には、これらに限定されないが、ポリ(エチレンオキシド)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(テトラメチレングリコール)ならびにその任意の誘導体、類似体、相同物、同族体、塩、コポリマーおよび組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、そのポリ(アルキレングリコール)はPEGである。
【0040】
[0034] 本明細書で用いる「治療有効量」は、疾患または状態の治療、改善または防止において、所望の治療効果を達成するために宿主に投与するのに必要な薬物または生物活性剤のその量を指す。例えば、治療有効量は、使われている具体的な薬物または生物剤に関連する、抗菌活性、鎮痛、抗炎症活性、抗線維化活性、抗腫瘍または抗癌活性などを提供するその量であってよい。既知の薬物のための治療有効量は文献で入手することができる。また、新規または既知の薬物のための治療有効量は、既知の方法、技術および基準を用いて決定することができる。
【0041】
[0035] 本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」は、酸性塩または塩基性塩を作ることによって改変された開示化合物の誘導体を指す。その例には、これらに限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、これらに限定されないが、ハイドロハライド、硫酸塩、メトサルフェート、メタンサルフェート、トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、乳酸塩などが含まれる。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、当業者に知られている方法で調製することができる。
【0042】
[0036] ポリマーおよびその下位単位を称するために本明細書で使用する略語は、B、4−ヒドロキシ安息香酸;BnまたはBz、ベンジル;DまたはDAT、デスアミノチロシンまたはデスアミノチロシル;DATE、デスアミノチロシンエチルエステル;dig、ジグリコレート;EまたはEt、エチル;glu、グルタレート;MまたはMe、メチル;MB、メチルパラベン;PB、プロピルパラベン;PEG、ポリエチレングリコール;succ、スクシネート;およびT、チロシンを含む。
【0043】
[0037] ジフェノールモノマー単位をベースとしたポリマーについての命名法は2つの部分の名前からなる。第1の部分はジフェノール部分を指し、第2の部分(A基)はジフェノール部分がそれと共重合している基を指す。その名称は、ポリ(ジフェノール二塩基酸)、ポリ(ジフェノールカーボネート)、ポリ(ジフェノールイミノカーボネート)等の形で表記される。
【0044】
[0038] ジフェノール部分は一般にその3つの成分、すなわち2つの芳香環部分とチロシンエステル部分によって称される。例えば、DTEはデスアミノチロシル−チロシンエチルエステル;DTBnはデスアミノチロシル−チロシンベンジルエステルである。遊離酸が存在する場合(エステルではなく)、第3の成分の名称は省かれる。したがって、DTは、対応する遊離酸形態、すなわち、デスアミノチロシル−チロシンである。また、例えば、DT(DATE)は、DTのチロシン上のエステルとしてのデスアミノチロシンエチルエステル(DATE)である。パラベンについては、ジフェノールモノマーデスアミノチロシル−チロシンメチルパラベンはDTMBと略され、対応するプロピルパラベンはDTPBである。
【0045】
[0039] その名称の第2の部分は、二塩基酸、カーボネート、イミノカーボネートなどの、それでジフェノール部分が重合される基を指す。したがって、具体的な例には、ポリ(DTEグルタレート)、ポリ(DTPBスクシネート)ポリ(DTBnカーボネート)などが含まれる。
【0046】
[0040] ジフェノール部分または共重合した基(2つの二塩基酸など)の混合体がポリマーの中に存在する場合、その部分の名称は、2つの部分のうちの1つの割合の表示と合わせて「コ(co)」という表示を含むか、またはハイフンを有することができる。例えば、ポリ(DTE−コ−10−DTスクシネート)およびポリ(DTE−10−DTスクシネート)は互換的に使用されて、90%のデスアミノチロシル−チロシンエチルエステルと10%のデスアミノチロシル−チロシンの混合物を、二塩基酸スクシネートと共重合させて得られるポリマーを意味する。混合二塩基酸の例はポリ(DTMB PEG−ビス−スクシネート−50−アジペート)である。
【0047】
ポリマーの説明
[0041] 本発明は、ペンダントフェニルエステル(PE)基、すなわち、ポリマー骨格に対するPE側鎖を備えたモノマー単位を含む生体適合性のある生分解性ポリマーに関する。それらのPE基が、インビトロで、インビボで、その場で(すなわち、生理学的条件下で)、切断または除去されるか、分解するか、あるいはそのポリマーから放出されると、ポリマーの遊離酸含量の増大、親水性の著しい増大、およびポリマー骨格の分解速度の増進がもたらされる。機構に拘泥するわけではないが、ポリマーが、より水溶性の構成要素に速く分解する方向へ推進されると、結果として吸収は速くなる。したがって、本発明は、ペンダントフェニルエステルを備えた吸収性ポリマーを対象とする。
【0048】
[0042] 生体適合性ポリマーは、生体組織または生体系に適合し、かつ、動物またはヒトに使用するのに許容されるポリマーである。したがって、生体適合性ポリマーは、生理学的危害を有意にまたは許容されない程度には引き起こさず、炎症または免疫反応をまったくまたは有意な量で引き起こさず、かつ、生体組織または生体系に対して毒性がないかまたは有害でない。例えば、生体適合性ポリマーは、悪影響を伴うことなく、生体または生体組織に、取り込むか、埋め込むかまたは取り付けるか、あるいは、その中で使用することができる。
【0049】
[0043] 本明細書で用いる「生分解性ポリマー」は、加水分解を受けやすいか、酸化を受けやすいか、または酵素作用の影響を受けやすいか、あるいはそれを組み合わせた影響を受けやすく、その作用が、部分的にしろ全体的にしろ、そのポリマーの分解をもたらす生体適合性ポリマーである。生分解性のポリマーは、可変の吸収時間を有しており、これは、例えば、分解生成物の特性や大きさに依存する可能性があることを理解すべきである。
【0050】
[0044] 本明細書で用いる「吸収性ポリマー」は、(1)生理学的条件下、すなわち、水、酵素の存在下、または他の細胞過程で化学的に不安定な繰り返し骨格単位を有する、すなわち、そのポリマーは生分解性であり、(2)対象における任意の機構(吸収作用、可溶化、毛細管作用、浸透作用、化学的作用、酵素作用、細胞作用、溶解、浸食などまたはこれらの過程の任意の組合せによるものを含む)により、インビボまたは生理学的条件下で、ポリマーの使用目的と一致する生理学的に関係する時間スケールで、その分解生成物を、取り込み、かつ/または同化することができ、(3)ペンダントPE基をもつように改変された場合、それらのPE基が、取り外されたとき、ポリマーの遊離酸含量が増加し、それによってその親水性を増大させ、ポリマー骨格の分解速度を増大させ、ペンダント脂肪族エステルとして存在する同等量のペンダントPE基を有する同じポリマーに対してポリマーの吸収時間を増大させる都合のいい脱離基である、生体適合性のある生分解性ポリマーである。
【0051】
[0045] 吸収性ポリマーは、分解したとき、それ自体ポリマーであってもモノマーであってもよい、より小さな水溶性断片をもたらす切断可能な骨格結合を含む。これらのより小さい断片は、マクロファージが飲み込むことができるか、細胞が処理することができるか、あるいは、生理学的な使用部位で細胞環境または細胞組織から除去することができるサイズにさらに分解されるか、または分解させることができ(必要に応じて)、それによって、規定時間内でのポリマーの完全かまたはほぼ完全な吸収がもたらされる。
【0052】
[0046] 吸収性ポリマーが完全かまたはほぼ完全に吸収されると、そのポリマー(しかし、必ずしもそのモノマー繰り返し単位またはより小さいそのポリマー断片ではない)は、対象中にもはや存在しないかまたは検出されない。例えば、そのポリマーが埋め込まれた医療用デバイス上のコーティング物である場合、吸収された後、ポリマーは、そのデバイス上にもはや存在しないかまたはそこでは検出されない。同様に、ポリマーが医療用デバイス中に組み込まれた場合(例えば、縫合材料、ステープル、デバイスカバリング、インプラント、プラグ、薬物またはワクチン担体)、そのデバイスは生理学的使用部位にはもはや存在しないかまたは検出されない。拘泥するわけではないが、この過程は、同時的な排除または排出を伴ってその成分へ分解することによって、水不溶性ポリマーが水溶性成分またはサブユニットに転換すると説明することができる。
【0053】
[0047] 吸収の時間スケールはその使用目的によって変わり、本発明のポリマーを操作して、生理学的条件下で、迅速な吸収、例えば数日以内からより長い期間、例えば数週間または数カ月の迅速な吸収を提供することができる。医学的に関係する期間には、例えば、1〜30日間、1〜24カ月間、ならびに、5日間、1〜6週間、2、3、4、6カ月または数カ月などのその間のすべての時間が含まれる。
【0054】
[0048] したがって、本発明の吸収性ポリマーには、これらに限定されないが、ペンダントフェニルエステル基を備えたポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリホスホエステル、ポリイミノカーボネート、ポリ尿素、ポリホスフェート、ポリヒドラジド、ポリ酸無水物およびポリホスファゼンが含まれる。
【0055】
[0049] 加水分解的に分解する生体適合性ポリマーの例には、これらに限定されないが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリホスホエステル、ポリイミノカーボネート、ポリリン酸塩およびポリ酸無水物が含まれる。酵素的に分解可能な生体適合性ポリマーには、これらに限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミドおよびポリリン酸塩が含まれる。
【0056】
[0050] したがって、本発明の具体的な実施形態は、式(I)で表されるモノマー、
【0057】
【化7】

を含むポリマーを対象とする。
ここで、
「Monomer」は、生理学的条件下で吸収可能な生体適合性のある生分解性ポリマーの繰り返し単位を表し、
R’はフェニル−Rであり、0〜5個のR置換基はフェニル環上の任意の位置にあり、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
YはOまたはNHであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
各Rは水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である。
【0058】
[0051] ポリマーのMonomer単位の置換基は、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリホスホエステル、ポリイミノカーボネート、ポリ尿素、ポリリン酸塩、ポリヒドラジド、ポリ酸無水物、ポリホスファゼンなどの骨格を構成する。
【0059】
[0052] 一般にこれらのポリマーは、少なくとも約0.1%〜100%の上記定義のフェニルエステル基を備えたモノマー単位を含む。
【0060】
[0053] 他の実施形態では、本発明は、式(II)で表される1つまたは複数のジフェノールモノマー単位を含むポリマーを対象とする。
【0061】
【化8】

ここで、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=NH)、C(O)−NH−R−NH−C(O)またはC(S)であり、
Bは、1〜20個の炭素原子を有する三価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリール部分であるか、あるいは、
【0062】
【化9】

であり、
各骨格芳香環は0〜4個のZまたはZ置換基を有しており、そのそれぞれは、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護ヒドロキシル基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群から独立に選択され、
ペンダントフェニル環は、フェニル環上の任意の位置に0〜5個のR置換基を有しており、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
は独立に、1〜30個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキレンオキシドまたはアリーレンオキシド部分;(RO((CRO)(R;または(RCO((CRO)CO(Rであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
は独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
は水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、その置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、その置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基あるいはアミノ保護基であり、
10は、直鎖状または分岐状のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、
Xはハロゲンであり、
YはOまたはNHであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である。
【0063】
[0054] 本発明のこれらのポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。ポリマーがコポリマーである場合、それらは、少なくとも約0.1%〜100%のジフェノールモノマー単位を、少なくとも約1、2、3、4、5、6、8、10、12%から約30、40、50、60、75、90、95または99%の任意の範囲の組合せで含む。特定の実施形態では、ポリマー中における、フェニルエステルを備えたジフェノールモノマー単位(すなわち、式IIで表されるもの)の範囲は約5〜約50%である。さらに、そのポリマーは、2つ以上の異なるペンダントフェニルエステル基を備えたジフェノールモノマー単位の組合せを有することができ、その異なる基は、ジフェノール部分にあっても、フェニルエステル部分にあっても、また分子のA部分にあってもよい。さらに、コポリマーは、適用可能であれば、異なる比のA部分(例えば、2つの異なる二塩基酸または2つの異なるウレタン)を有することができる。
【0064】
[0055] 二塩基酸としてのAおよび混合R基を有する本発明のポリマーの例は、全体としてRの約10%〜約50%の範囲がビス−カルボキシポリエチレングリコールであり、残りのRがアルキレンであるか、あるいは、全体としてRの約10%〜約50%の範囲がPEG−ビス−スクシネートまたはPEG−ビス−グルタレートであり、残りのRがアルキレンであるポリマーである。これらのポリマーに好ましいアルキレン基は二塩基酸のコハク酸、グルタル酸、アジピン酸またはスベリン酸を形成する。
【0065】
[0056] ポリマーが、本発明によるフェニルエステルを備えた1つまたは複数のジフェノールモノマー単位と他のモノマー単位のコポリマーである場合、そうした他のモノマー単位は、ジフェノール部分のジオールおよびA部分と重合することができる適合する任意の他のモノマー単位である。
【0066】
[0057] したがって、式IIのMonomerまたはジフェノールモノマー単位を含むコポリマーである本発明のそうしたポリマーは、フェニルエステル部分を、水素によって(遊離COOH基を生成する)、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、またはアルキレンオキシド鎖もしくはエーテル鎖を有するエステルなどの別の部類のエステルによって、アミドによって、あるいは、別の適切な官能基によって置き換えることができること以外は、式IIのMonomerまたはジフェノールモノマー単位とほとんど同じ他のモノマー単位を有することができる。あるいは、これらの若干の変更を、その他のモノマー単位が式IIのMonomerまたはジフェノールモノマー単位と類似した他のものと組み合わせることができるが、ここでは、可変性は異なる置換基間に存在する、すなわち、変更は、式IおよびIIのA、B、R〜R10、X、Yまたは他の可変部のいずれかにある。最後に、そうした部分がポリマーの特性を保持しており、かつ、式IIのMonomerまたはジフェノールモノマー単位と共重合することができれば、コポリマー中の他のモノマー単位は実質的に異なっていてもよい。
【0067】
[0058] したがって、いくつかの実施形態では、他のモノマー単位は、フェニルエステル部分が、例えば、遊離カルボン酸、アルキルエステル、アルキルアリールエステル、アミド、エーテル含有エステル、アルキレンオキシド鎖を有するエステルなどで置き換えられた同じジフェノールモノマーである。上記および他のジフェノールモノマーの例は、米国特許第4980449号、同第5099060号、同第5216115号、同第5317077号、同第5587507号、同第5658995号、同第5670602号、同第6048521号、同第6120491号、同第6319492号、同第6475477号、同第6602497号、同第6852308号、同第7056493号、米国再発行特許第37160E号、および同37795E号;ならびに、米国特許出願公開第2002/0151668号、同第2003/0138488号、同第2003/0216307号、同第2004/0254334号、同第2005/0165203号、PCT公開番号WO99/52962;WO01/49249;WO01/49311;WO03/091337および2005年11月3日出願の米国特許第60/733988号に記載されている。
【0068】
[0059] 本発明によれば、式IIのジフェノールモノマーのA部分は、様々なポリマー部類を提供するように、多くの異なる基から選択することができる。
【0069】
[0060] Aがカルボニル基、−C(O)−である場合、そのポリマーはポリカーボネートである。これらのポリマーは、米国特許第5099060号に記載されているものを含む当業者に周知の方法で、ホスゲンとの反応により調製することができる。
【0070】
[0061] Aが−C(O)−R−C(O)−である場合、骨格中の酸素と一緒にAは二塩基酸を形成する(すなわち、骨格中に存在するこれらの二塩基酸をベースとしたエステル基は加水分解されて二塩基酸を生成する)。簡単にするために、本明細書ではAを二塩基酸と称することがある(これは、特許請求の範囲で用いるAの実際の定義と厳密には一致していないのは明らかであるが、文脈から明らかである)。
【0071】
[0062] Aが二塩基酸である場合、そのポリマーはポリアリレートである。これらのポリアリレート(ならびに本発明の他のポリマー)については、Rは二価炭化水素基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また置換されていても置換されていなくてもよい。そうした基には、1〜30個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール部分、ならびにより大きなアルキレンオキシドまたはアリーレンオキシド部分(これらの基の中の繰り返し単位の数をもとにして)が含まれる。一例としては、Rは式(RO((CRO)(R、(a、r、s、R、RおよびRは上記定義通りである)で表すことができるアルキレンオキシドであり、これらには−CHO(CHCHO)CH−または−CHCHO(CHCHO)CHCH−などのポリエチレングリコール鎖(PEG)、および−CHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などのポリプロピレングリコール鎖が含まれる。同様に、Rは、式(RCO((CRO)CO(Rで表すことができる。特定の実施形態では、この式は、AとしてPEGビス−スクシネート基を有するポリマーを提供する。PEGビス−スクシネートについては、Aは次式、
−C(O)CHCHC(O)O(CHCHO)C(O)CHCHC(O)−
で表される。ここで、2つのRはどちらもエチレンであり、RとRは一緒にエチレン基を形成する。両方のRがn−プロピレンであること以外は式が同じである場合、A部分はPEGビス−グルタレートとなる。
【0072】
[0063] Aで形成される好ましい二塩基酸には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、ならびにジグリコール酸(Rが−CHOCH−である)、ジオキサオクタン酸(Rが−CHOCHCHOCH−である)、PEG、PEGビス−スクシネートなどのアルキレンオキシド誘導体が含まれる。
【0073】
[0064] ポリアリレートの製造方法は当業界で周知である。そうした方法は、例えば、米国特許第5216115号、同第5317077号、同第5587507号、同第5670602号、同第6120491号、米国再発行特許第37160E号および同第RE37795E号、ならびに文献、他の特許および特許出願に見ることができる。当業者は、これらの手順を本発明のポリマーの合成に容易に適合させることができる。
【0074】
[0065] Aがイミノ基、−C(=NH)−である場合、そのポリマーはポリイミノカーボネートである。ポリイミノカーボネート全般およびその合成方法は、例えば、米国特許第4980449号および同第5099060号に記載されている。
【0075】
[0066] Aが−C(O)−NH−R−NH−C(O)−である場合、本発明のポリマーはポリウレタンである。ポリウレタンは、当業界で知られているように、例えば、ジオールと式O=C=N−R−N=C=Oのジイソシアネートを縮合反応して本発明のポリウレタンを生成させることによって調製することができる。Rは上記定義通りである。
【0076】
[0067] Aがチオニル基、−C(S)−である場合、本発明のポリマーはポリチオカーボネートである。これらのポリマーは、例えば、当業者に周知の方法によりチオホスゲンと反応させることによって調製することができる。
【0077】
[0068] 本発明によれば、式IIのジフェノールモノマーのB部分は、1〜20個の炭素原子を有する三価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリール部分である。上記基のどれも、炭化水素鎖または基の中にO、NまたはSなどの1つもしくは複数のヘテロ原子を含むことができる。さらに、炭化水素鎖または基の置換基は、置換基の一部としてCF、CHF、NOなどで提供されるものなどのヘテロ原子を含むことができる。本発明の一実施形態では、Bは、
【0078】
【化10】

である。ここで、RおよびRは本明細書での定義通りであり、CH結合は式IIのカルボキシルと結合している。RとRがどちらもエチレンである場合、B部分はジフェノール環と一緒に、デスアミノチロシルチロシンの骨格部分を形成しており、これは、CH基と結合したカルボキシル基(−C(O)OH)を備えるとデスアミノチロシルチロシンの遊離酸形態である。好ましい実施形態では、Rは独立に、結合、メチレンまたはエチレン基であり、Rは独立に、結合、メチレンまたはエチレン基である。
【0079】
[0069] 本発明によれば、式IIの各骨格芳香環は0〜4個のZまたはZ置換基を有することができる。芳香環上のある位置の原子価が満たされていない場合、その位置は水素原子を有する。ZまたはZはそれぞれ独立に、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護ヒドロキシル、保護アミノおよび保護カルボン酸基からなる群から選択される。
【0080】
[0070] ZまたはZの少なくとも1つが存在し、それが臭素またはヨウ素である場合、ポリマーは放射線不透過性となり、米国特許第6475477号に記載されている用途を有する。例えば、放射線不透過性の医療用デバイスを使用することによって、デバイスの生分解および吸収を含むデバイスの存在および/または消失を監視するための非侵襲性の手法が可能になる。同様に、本発明のポリマーから得られる放射線不透過性のミクロスフェアは、造影剤として、また薬物送達に有用であり、x線、catスキャンなどの非侵襲性の手法で監視することができる。
【0081】
[0071] そうしたポリマーは、標準的なハロゲン化反応を用いて、重合前にハロゲン化されたジフェノールモノマー単位から調製することができる。そうした反応は、芳香環上のハロゲン原子に好ましい位置をとる傾向があるが(例えば、オルト)、ハロゲン原子は利用可能な任意の位置であってよいと考えられる。
【0082】
[0072] 本発明によれば、式IおよびIIのペンダントフェニル環はフェニル環上に0〜5個のR置換を有し、その置換基はどの位置であってもよい。R基が存在しない場合、そのポリマーのエステルは非置換フェニルエステルである。1つのR基が存在する場合、そのR基は、2位または4位(オルトまたはパラ)により容易に付加される。2つのR基が存在する場合、それらのR基は一般に2位および4位であるが、3位および5位も可能である。
【0083】
[0073] したがって、ペンダントフェニル環上に存在する場合、各R部分は独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基である。
【0084】
[0074] Rが置換アルキル基である場合、定義の部で先に言及した他の基に加えて、その置換基は、−CX、−CHX、−CHX、−RCX、−RCHXおよび−RCHXからも選択される。ここで、Xはハロゲン(F、Cl、IまたはBr)であり、Rは本明細書で定義の低級アルキレンまたはアルケニレン基である。したがって、これらの基には、トリフルオロメチル、トリフルオロエチルなどが含まれる。例えば、Rが−RCXであり、RがCHであり、XがFである場合、R基はトリフルオロエチルである。これらの置換基のためには、好ましいXはFまたはClであり、好ましいRはメチレンまたはエチレンである。
【0085】
[0075] Rがアルキルアリール基である場合、定義の部で先に言及した他の基に加えて、そのアルキルアリール基はトリチル基であってもよい。
【0086】
[0076] Rがヘテロ原子含有アルキル基である場合、定義の部で先に言及した他の基に加えて、その基はトリメチルシランまたはN−ヒドロキシスクシンイミドであってもよい。
【0087】
[0077] Rがアルコキシである場合、好ましいアルコキシ基は−OCHである。
【0088】
[0078] Rは、式(RC(O)−YRで表すこともできる。ここで、bは0または1であり、Yは酸素または窒素(すなわち、OまたはN)であり、RおよびRは本明細書で上記に定義した通りである。YがOである場合、R基は全体として、安息香酸、フェニル酢酸、デスアミノチロシンなどの遊離酸またはエステルであってよい。好ましいR基は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(t−ブチルを含む)およびベンジルである。例として、bが0であり、Rが水素でない場合、置換基は、パラベン、すなわち安息香酸エステルである。他の例では、bが1であり、Rがメチレンである場合、置換基はフェニル酢酸誘導体である。bが1であり、Rがエチレンである場合、置換基はデスアミノチロシン誘導体であり、Rがエテニレンである場合、置換基は桂皮酸誘導体である。
【0089】
[0079] パラベンは特に有用なフェニルエステル基であり、メチルパラベン(MB)、エチルパラベン(EB)およびプロピルパラベン(PB)が特に有用である。他の有用な基は、デスアミノチロシン(DATE)のエチルエステル、ならびにデスアミノチロシンの対応する遊離酸ならびにメチル、プロピル、t−ブチルおよびベンジルエステルである。
【0090】
[0080] YがNHである場合、R基は、全体として、遊離アミン、または安息香酸、フェニル酢酸、デスアミノチロシンなどのアミドであってよい。好ましいR基は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(t−ブチルを含む)およびベンジルである。例としては、bが0であり、Rが水素でない場合、置換基はベンズアミドである。他の例では、bが1であり、Rがメチレンである場合、置換基はフェニルアセトアミドである。bが1であり、Rがエチレンである場合、置換基はデスアミノチロシンに関連するアミドであり、Rがエテニレンである場合、置換基はシンナミドである。
【0091】
[0081] Rがアルキレンオキシドである場合、その基は、式(RO((CRO)(R、(a、r、s、R、RおよびRは上記定義通りである)で表すことができ、これらには、−CHO(CHCHO)CH−または−CHCHO(CHCHO)CHCH−などのポリエチレングリコール鎖(PEG)および−CHCHCHO(CHCHCHO)CHCHCH−などのポリプロピレングリコール鎖が含まれる。同様に、Rは、式(RCO((CRO)CO(Rで表すことができる。特定の実施形態では、この式は、AとしてPEGビス−スクシネート基を有するポリマーを提供する。すなわち、Aは、次式、
−C(O)CHCHC(O)O(CHCHO)C(O)CHCHC(O)−
で表すことができる。ここで、両方のRはエチレンであり、RとR一緒にエチレン基を形成する。両方のRがn−プロピレンであること以外はその式が同じである場合、A部分はPEGビス−グルタレートとなる。
【0092】
[0082] Rは、保護ヒドロキシル、保護アミンまたは保護カルボン酸基であってもよい。本発明の使用に加えて、いくつかの場合、そうした保護置換基を有するポリマーは、本発明の他のポリマーを作製するための中間体として用いることができる。OH、NHおよびCOOH基のための保護基は当業界でよく知られており、それらが安定であり、かつ、本発明のポリマーを作製するのに用いる合成方法に適している限り、それらはどれも本発明による使用に適している。
【0093】
[0083] Rは式IIのA部分の一部であり、上記に定義されている。具体的には、RはAの二塩基酸部分の一部として、すなわち、C(O)−R−C(O)として出現するか、ウレタン部分の一部として、すなわち、C(O)−NH−R−NH−C(O)として出現する。
【0094】
[0084] Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたはアルキレニレン基である。好ましい実施形態では、Rはメチレン、エチレンまたはプロピレンである。
【0095】
[0085] 基(RO((CRO)(Rの中に存在する場合、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキル基である。例えば、RとRがどちらも水素であり、aが2である場合、その部分はエチレンである。したがって、a、RおよびRの値と一緒に組み合わせて、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどを含む二価アルキル基を形成する。
【0096】
[0086] 本発明によれば、Rは独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルである。好ましいアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル(t−ブチル、n−ブチル、イソブチル)などが含まれる。
【0097】
[0087] Rは上記した通りであり、式−(RC(O)−YRの一部である。好ましいR基は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル(t−ブチルを含む)およびベンジルである。
【0098】
[0088] RおよびRは上記した通りであり、それぞれ独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである。置換されている場合、その置換基は、本明細書で記載するいずれのものであっても、また、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってもよい。ここで、それらは、そのポリマーを合成するのに必要なケミストリーに適合するものであるとする。
【0099】
[0089] Rがアミノ基の一部を形成して存在する場合、それは、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基またはアミノ保護基である。
【0100】
[0090] R10がアミド結合の一部を形成して存在する場合、それは、直鎖状または分岐状のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基である。
【0101】
[0091] 各aの値は独立に、整数1、2、3または4のうちの1つである。各bの値は独立に0または1である。Bが0である場合、対応する基は除かれ、単一の炭素結合が存在する。各Rの値は独立に、整数1、2、3または4のうちの1つである。
【0102】
[0092] 各sの値は独立に、約1〜約5000であり、アルキレンオキシド鎖の繰り返し単位を決定する。したがって、sは、1〜約10、〜約15、〜約20、〜約30、〜約40、〜約50、〜約75、〜約100、〜約200、〜約300、〜約500、〜約1000、〜約1500、〜約2000、〜約2500、〜約3000、〜約4000および〜約5000の範囲であってよい。さらに、アルキレンオキシド鎖の長さが、PEG200、PEG400、PEG600などのように分子量と関連している場合、sは整数である必要はなく、示された(または測定された)分子量に基づくアルキレンオキシド繰り返し単位の平均数を代表する小数値で表すこともできる。
【0103】
[0093] 本発明の好ましいポリマーの1つのグループは、式IIのジフェノールモノマー単位が以下の通り、すなわち、
AがC(O)−R−C(O)であり、
Bが、
【0104】
【化11】

であり、
が独立に、1〜30個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル;(RO((CRO)(R;または(RCO((CRO)CO(Rであり、
各Rが独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンであり、
各RおよびRが独立に、水素または直鎖状低級アルキルであり、
およびRがそれぞれ独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルであるように選択されるポリアリレートである。
【0105】
[0094] 本発明のポリマーの例には、これらに限定されないが、
ポリ(DTMBグルタレート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステルグルタレート);
ポリ(BTMBグルタレート)とも称されるポリ(4−ヒドロキシ−安息香酸チロシンメチルパラベンエステルグルタレート);
ポリ(DTMBスクシネート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステルスクシネート);
ポリ(BTMBスクシネート)とも称されるポリ(4−ヒドロキシ−安息香酸チロシンメチルパラベンエステルスクシネート);
ポリ(DTPBグルタレート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンプロピルパラベンエステルスクシネート);
ポリ(BTPBグルタレート)とも称されるポリ(4−ヒドロキシ−安息香酸チロシンプロピルパラベンエステルスクシネート);
ポリ(DTPBスクシネート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンプロピルパラベンエステルグルタレート);
ポリ(DTMB−コ−10DTグルタレート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステル−コ−10%デスアミノチロシルチロシングルタレート);
ポリ(DTMB−コ−10DTスクシネート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステル−コ−10%デスアミノチロシルチロシンスクシネート);
ポリ(BTMB−コ−10BTグルタレート)とも称されるポリ((4−ヒドロキシ−安息香酸チロシンメチルパラベンエステル−コ−15%(4−ヒドロキシ−安息香酸チロシングルタレート);
ポリ(BTMB−コ−10BTスクシネート)とも称されるポリ((4−ヒドロキシ−安息香酸チロシンメチルパラベンエステル−コ−15%(4−ヒドロキシ−安息香酸チロシンスクシネート);
ポリ(DT(DATE)グルタレート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンDATEエステルグルタレート);
ポリ(DT(DATE)グルタレート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンDATEエステルグルタレート);および、
ポリ(DT(DATE)スクシネート)とも称されるポリ(デスアミノチロシルチロシンDATEエステルスクシネート)が含まれる。
【0106】
[0095] ポリ(DT(DATE)スクシネート)の構造を以下に示す。
【0107】
【化12】

【0108】
合成:
[0096] 本発明の化合物は、重合化学の技術分野で知られている技術を用いた様々な方法により合成することができる。1つの方法では、第1の工程は、所望のペンダントフェニルエステルを備えたモノマー単位の作製であり、続く工程は、そのモノマー単位を重合させて本発明のポリマーを生成させる工程である。
【0109】
[0097] 例えば、重合工程で用いるモノマー単位がジオール(例えば、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリアリレートまたは他のそうしたポリマーを生成させる)である場合、ヒドロキシル基は保護され、フェニルエステル誘導体が調製される。これを実施するために、比較的安定なエステル基(例えば、メチルまたはエチルなどのアルキル基)で誘導化されたペンダントカルボキシル基を備えたジオールモノマーで開始することができる。次いで、エステルが安定な条件下で、ジオールを保護基で保護する。ジオール保護基を加水分解して、そのエステルを遊離酸に転換させる。遊離酸をヒドロキシアリール化合物と反応させて、フェニルエステルを有するモノマー単位を生成することができる。フェニルエステルの安定性に影響を及ぼさない条件下で、ジオール保護基を取り外し、得られたモノマーを重合させることができる。同様の考え方を、遊離アミンまたは他の反応性重合基を備えた他のポリマーで用いることができる。
【0110】
[0098] 例を挙げると、デスアミノチロシルチロシンメチルエステル(DTM)を、臭化ベンジルと反応させてビス−ベンジル−DTMを生成し、これを遊離酸の形態のビス−ベンジル−DTに転換させる。その遊離酸をメチルパラベンと反応させてビス−ベンジル−DTMBを得る。脱ベンジル化した後、DTMBが得られ、次いで当業界で知られている方法でこれを重合させることができる。
【0111】
[0099] 代替の方法では、ペンダントフェニルエステルを含むポリマーを、3段階の工程過程で調製することができる。第1の工程で、保護懸垂(保護ペンダント)基を含む前駆体ポリマーを調製する。次の工程では、ポリマー骨格を分解させることなく、懸垂保護(ペンダント保護)基を取り外す。最終工程で、保護されていない官能基を介して、フェニルエステルをポリマー骨格と結合させる。一般に、ペンダント遊離カルボン酸基を備えたポリマーは、カルボン酸上に保護基、例えばアルキルエステル、ベンジルエステル、またはペプチド化学で用いられるものなどの任意の他の保護基を有するモノマー単位を重合させ、続いて、骨格を分解させることなく保護基を取り外すことによって遊離酸含有前駆体ポリマーを得る、2段階の工程過程で合成する。次いでそのポリマーを、フェノール化合物(すなわち、所望のヒドロキシアリール化合物)で誘導化して本発明のポリマーを得る。
【0112】
[00100] 例えば、フェニルエステル側鎖を備えたチロシン誘導ポリアリレートは、有機溶媒(例えば、塩化メチレンなどの塩素化溶媒)中、触媒のジメチルアミノピリジニウム−パラ−トルエンスルホネート(DPTS)の存在下で、ベンジルエステル側鎖(例えば、デスアミノチロシルチロシンベンジルエステル)と所望の二塩基酸(例えば、コハク酸)を備えた等モル量の所望ジフェノールモノマーを反応させることによって調製することができる。化合物が溶媒中に分散されたら、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)などのカップリング剤を過剰モルで加え、通常室温で混合物が粘性になるまで反応を進行させる。ベンジル保護されたポリマーを、非溶媒からの沈殿を繰り返して単離し、乾燥することができる。
【0113】
[00101] ベンジル保護基を除去するための1つの方法は、ポリマーを有機溶媒中に溶解し、すべての酸素を除去するのに十分な時間、その溶液を通して窒素をバブリングさせる方法である。窒素を停止させた後、Pd/BaSOなどのパラジウム触媒を加える。次いで水素ガスを反応混合物に通過させ、これを、終夜かまたはポリマー上に残るベンジルがなくなるまで攪拌する。水素化反応の完了は、NMR、HPLCまたは気相クロマトグラフィーなどの当業者に周知の手法で監視することができる。その反応条件下でポリマーの骨格が損なわれない、すなわち、それが分解しないかまたはほとんど分解しないという条件で、微分的酸性加水分解などの他の加水分解法を用いてペンダントカルボキシル基の保護基を取り除くことができる。遊離カルボン酸含有ポリマーは、既知の技術、好ましくは、例えば沈殿させ、恒量になるまで乾燥することによって単離することができる。
【0114】
[00102] 遊離酸ポリマーを有機溶媒に溶解し、どの位置も、誘導化してフェニルエステルにしようとする場合、若干過剰モルの所望フェノール化合物を加える。特定の割合の遊離酸を有するポリマーを得るためには、所望の割合の遊離酸でフェノール化合物の量を減少させる。例えば、80%メチルパラベンおよび20%遊離酸(すなわち、DTMB−20−DTグルタレート)を有するポリマーを調製するためには、反応で、0.8モル当量をやや超える4−ヒドロキシメチルパラベンを使用する。最終ポリマー調製物中の所望の割合での置換が得られるように、若干の過剰モルを実験的に決定することができる。一般に約5〜10%過剰モルで十分である。反応物を混合した後、混合物を冷却し、DIPCなどの適切なカップリング剤を加え、反応が完了するまで攪拌を続行する。最終ポリマーを水系での沈殿およびろ過により単離し、恒量になるまで乾燥する。
【0115】
[00103] 本発明のポリマーは沈殿法、クロマトグラフィーなどの当業者によく知られている方法で精製することができる。
【0116】
モノマー:
[00104] 本発明は、ペンダントフェニルエステル基を有するジフェノールモノマーも対象とする。本発明のモノマーは、本発明のポリマーを作製するための中間体として有用であり、式IIIまたはIVで表される。
【0117】
【化13】

ここで、
Bは、1〜20個の炭素原子を有する三価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリール部分であるか、あるいは、
【0118】
【化14】

であり、
各骨格芳香環は0〜4個のZまたはZ置換基を有しており、そのそれぞれは、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護ヒドロキシル基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群から独立に選択され、
ペンダントフェニル環は、フェニル環上の任意の位置に0〜5個のR置換基を有しており、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
は独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
は、水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、その置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、その置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基あるいはアミノ保護基であり、
10は、直鎖状または分岐状のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、
PはOH保護基であり、
Xはハロゲンであり、
YはOまたはNHであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である。
【0119】
[00105] B、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、XおよびYの実施形態、およびそのための好ましい実施形態は、ポリマーの節で上記した通りである。a、b、rおよびsのための、好ましい値を含む値は、ポリマーの節で上記した通りである。
【0120】
[00106] 本明細書で用いる、Pはモノマーのジフェノール(骨格)環上のヒドロキシルのための保護基である。そうした保護基は、フェニルエステルで占有されている位置から、アルキルエステル(または他のカルボン酸保護基)を取り外す(したがって、これらの分子と同等な遊離酸を生成する)のに必要な化学的条件下で安定である。そうした保護基は、ヒドロキシアリール化合物を保護されたモノマーと反応させるのに必要な化学的条件下で安定であり、それによって示したようなフェニルエステル部分を有する保護されたモノマーが生成される。最後に、フェニルエステルの加水分解を引き起こさない条件下で、保護基をそのモノマーから取り外すことができる。ベンジルは適切な保護基であるが、多くの他の保護基が当業界で知られている。例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、3rd ed.、John Wiley & Sons,Iinc、New York、1999を参照されたい。
【0121】
使用
[00107] 本発明のポリマーは、ペンダントフェニルエステル(PE)基、すなわち、ポリマー骨格に対するPE側鎖を備えたモノマー単位を含む生体適合性のある生分解性ポリマーである。PE基は生理学的条件下で良好な脱離基であり、したがって、ポリマーの急速な分解および吸収をもたらす遊離懸垂(遊離ペンダント)カルボン酸部分をインビボで生成する手段を提供する。ポリマーがより急速に分解するように促進され、より水溶性の構成要素になると、特に同等量のフェニルエステルをアルキルエステルで置き換えた類似のポリマーと比較したとき、使用の際により速く吸収される結果となる。
【0122】
[00108] 例えば、デスアミノチロシルチロシンエチルエステルスクシネートは約1年で吸収されるが、エチルエステルをパラベンエステルで置き換えられると、その吸収時間は3カ月未満となる。
【0123】
[00109] ポリマーの分解は様々な方法で測定することができる。インビボでの分解過程は、いくつかの方法でインビトロで模倣することができる。ポリマーコーティングしたデバイス(または主として本発明のポリマーから形成された組成物もしくはデバイス)を、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中、37℃でエージングすることによって、加水分解過程を再現することができる。酸化的機構が関係する場合、同じ溶液に、過酸化水素または超酸化物塩などの酸化剤を補うことができる。さらに、酵素的分解過程が重要である場合、代表的な酵素をその溶液に加えることができる。そうしたインビトロでの試験はインビボで作用する化学的過程を模倣することができるが、それは、動力学や速度を正確に予測するものではないことを理解されたい。さらに、必要に応じて、インビボで動物モデルを用いて、インビボでの分解挙動やインビトロでの分解挙動を相関づけることができる。
【0124】
[00110] ポリマーの分解および吸収の測定に加えて、当業者は、同じ技術ならびに他の技術を用いて薬物送達を監視することができる。例えば、抗生物質活性は、阻害アッセイの領域で測定することができ、鎮痛は、疼痛やその他については、動物モデルで測定することができる。
【0125】
[00111] 本発明のポリマーは、分解前は比較的疎水性であり、これによって、薬物送達プロファイルを操作できることに加えて、薬物を可溶化させるか、または多種多様な薬物のためのリザーバとして作用する有用な能力が提供される。PEG、疎水性基および他の多くのものなどの様々な置換基をポリマー上で用いることができるので、薬物製剤と制御放出または持続放出の両方のために、ポリマーを容易に操作することができる。したがって、当業者は、より速い吸収時間が、本発明のポリマーにより提供されることの関連で、ポリマーの化学的構成要素を操作して、組成物、コーティングされたデバイス、または吸収性デバイス(完全に吸収性であっても部分的に吸収性であっても)のための特定の放出プロファイルを実現することができる。
【0126】
[00112] したがって、完全にまたは部分的に吸収性の医療用デバイスを形成させ、特定の仕方で薬物を送達するようにする(そうしたデバイスとともにか、またはポリマー、薬物および他の薬剤を含む医薬組成物の一部として)、医療用デバイスをコーティングするための生体適合性のある生分解性ポリマーが必要な場合、本発明のポリマーは無数の生物学的用途を有している。このポリマーは薬物が存在しない場合でも有用であることを理解すべきである。例えば、外科用メッシュにポリマーをコーティングすると、メッシュの剛性を増大させ、それによって、埋め込みの際の取り扱いを容易にするが、それでいて、長期にわたって柔軟性があり、かつ患者に快適なメッシュを提供することができる。さらに、ポリマーコーティングした平らなメッシュは、三次元の形状にすることができ、これは外科的修復に有用である可能性がある。完全に吸収性のデバイスは、大腿部用プラグなどの一時的な創縫合材として、溶ける前に、ある期間強度を付与することを目的とした縫合糸として使用することができる。
【0127】
[00113] 本発明のポリマーの他の使用は、2007年2月8日出願の米国特許第11/672929号(これは、様々な用途のためのコーティングされた外科用メッシュを記載);2006年11月6日出願の米国特許第60/864597号(これは、心律動管理デバイス、神経刺激装置および他の埋め込み型医療用デバイスのための完全に吸収性かまたは部分的に吸収性のカバリング、ポーチ、バッグおよびコーティングしたメッシュを記載);ならびに2007年3月29日出願の米国特許第60/908960号および2008年3月28日出願のPCT/US08/58652(これらは、胸部インプラント用の吸収性カバリングを記載)に詳細に記載されている。
【0128】
[00114] 本発明の組成物は、(i)生分解性ポリマーから恩恵が受けられる用途に対して十分な機械的特性を有し、(ii)ポリマー担体からもたらされる追加的な分子を実質的に含まない薬剤を放出することができ、(iii)所定の放出速度と吸収速度をもつように設計することができ、かつ、(iv)生物活性がありかつ/または生物有益性(biobeneficial)があるだけでなく、かつまたそのポリマーで形成された医療用物品またはコーティングの物理的特性および/または機械的特性を制御する薬物と併用できる医療用物品およびコーティング物を形成させるのに使用することができる。
【0129】
ブレンド:
[00115] 薬物の送達および吸収特性を操作する他の方法は、ポリマーをブレンドすることである。したがって、本発明は、他の生体適合性ポリマー、好ましくは他の生分解性ポリマーとの本発明のポリマーのブレンドを提供する。これらの他のポリマーには、これらに限定されないが、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−カプロラクトン)(PLA/PCL)およびポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(PGA/PCL)などのポリ乳酸、ポリグリコール酸ならびにそのコポリマーおよび混合物;ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−コ−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン−コ−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)およびポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(リン酸塩エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、無水マレイン酸コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−コ−(2.5%トリメチレンカーボネート)]、ポリ(オルトエステル)、他のチロシン誘導ポリアリレート、他のチロシン誘導ポリカーボネート、他のチロシン誘導ポリイミノカーボネート、他のチロシン誘導ポリホスフェート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、キトサンおよび再生セルロースなどの多糖、ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質ならびにその混合物およびコポリマーなどが含まれ、とりわけ、PEG誘導体または上記のいずれかのブレンドが含まれる。
【0130】
[00116] ブレンドを用いると、そのデバイスの一部または全体について様々な吸収時間を有する部分的に吸収性のデバイスや完全に吸収性のデバイスを作製する能力を含む多くの利点が提供される。例えば、部分的に吸収性のデバイスは、時間とともに空隙率を増大させ、したがって、組織が成長できるようになる。当業者は、特定の生成物を作製するかまたは特定の結果を実現するために、ブレンドするポリマーの組合せを容易にピックアップすることができ、かつ、ブレンドに必要な各ポリマーの量を決定することができる。
【0131】
薬物:
[00117] 本発明のポリマー、モノマーおよびブレンドと適合する1つまたは複数の任意の薬物、生物剤または活性成分は、医薬組成物、または本発明のポリマー、モノマーおよびブレンドでコーティングされるかもしくはそれで形成された医療用デバイスの中に混ぜ込むか、その中に形成させるか、あるいはそれを合わせるかまたは組み合わせて用いることができる。そうした薬物および薬剤のための用量は当業界で周知である。したがって、当業者は、デバイスのサイズ、コーティングの厚さ、有効な用量などに基づいて、送達するのに望ましい薬物および薬剤の量を決定し、所望の施用に必要な量を算出することができる。
【0132】
[00118] 本発明によれば、薬物および生物学的に活性な薬剤には、これらに限定されないが、麻酔剤、抗菌剤(抗生物質、抗真菌薬および抗細菌剤を含む)、抗炎症剤、線維症阻害剤、抗瘢痕化剤、細胞増殖阻害剤、成長因子などが含まれる。
【0133】
[00119] 本明細書で用いる「薬物」という用語は、すべての種類の治療薬を含んで用いられる。それらは、小分子であってもタンパク質、核酸などの巨大分子であってもよい。本発明の薬物は単独でもまた組み合わせても使用することができる。
【0134】
[00120] 非ステロイド系抗炎症剤の例には、これらに限定されないが、アセトアミノフェン、アスピリン、セレコクシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メロキシカム、メチルサリチル酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチンおよびトロラミンが含まれる。
【0135】
[00121] 麻酔剤の例には、これらに限定されないが、リドカイン、ブピバカイン、メピバカインおよびキシロカインが含まれる。局所麻酔剤は弱い抗菌特性を有しており、急性疼痛と感染症の両方の防止において二元的役割を果たすことができる。
【0136】
[00122] 抗菌剤薬物の例には、これらに限定されないが、
アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシ、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンなどのアミノグリコシド;
バシトラシン、クリンダマイシン、ダプトマイシン、リンコマイシン、リネゾリド、メトロニド(metronid)、ポリミキシン、リファキシミン、バンコマイシンなどの抗生物質;
セファゾリンなどのセファロスポリン;
エリスロマイシン、アジスロマイシンなどのマクロライド抗生物質;
ペニシリンなどのβ−ラクタム抗生物質;
シプロフロキサシンなどのキノロン;
スルファジアジンなどのスルホンアミド;
ミノサイクリンおよびテトラサイクリンなどのテトラサイクリン;ならびに
リファンピン、トリクロサン、クロルヘキシジン、シロリムスおよびエベロリムスなどの他の抗生物質が含まれる。
【0137】
[00123] 使用できる他の薬物には、これらに限定されないが、ケフレックス、アシクロビル、セフラジン、マルファレン(malphalen)、プロカイン、エフェドリン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、プルンバギン、アトロピン、キニーネ、ジゴキシン、キニジン、生物学的に活性なペプチド、セフラジン、セファロチン、シス−ヒドロキシ−L−プロリン、メルファラン、ペニシリンV、ニコチン酸、ケノデオキシコール酸、クロラムブシルおよびパクリタキセル、シロリムス、5−フルオロウラシルなどの抗腫瘍薬が含まれる。有用なタンパク質の例には、上皮成長因子アンタゴニストなどの細胞増殖阻害剤が含まれる。
【0138】
[00124] 本発明の好ましい抗菌剤は、単独かまたは組み合わせて、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサン、シロリムスおよびエベロリムスを含む。リファンピンとミノサイクリンは抗菌剤の好ましい組合せである。
【0139】
[00125] ロイコトリエン阻害剤/アンタゴニストは抗炎症剤であり、それらには、これらに限定されないが、アシタザノラスト、イラルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、ベルルカスト、ザフィルルカストおよびジレウトンなどのロイコトリエン受容体アンタゴニストが含まれる。
【0140】
医薬製剤:
[00126] 本発明のポリマーおよびブレンドは、これらの分子の1つまたは複数、1つまたは複数の薬物(活性成分として)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤することができる。薬学的に許容される担体は、水や、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来のものを含む油などの滅菌性液体を含むことができる。医薬組成物を静脈内で投与する場合、水は好ましい担体である。食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液も、液体担体(特に注射剤用)として使用することができる。適切な薬剤担体はよく知られている。薬理学的に活性な薬剤に加えて、その作用部位に送達するためにその活性化合物を薬剤として使用できる製剤に加工するのを容易にする、賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に許容される担体を含むことができる。非経口投与に適した製剤は、水溶性の形態、例えば水溶性の塩での活性化合物の水性液剤を含む。さらに、注射用懸濁剤に適した活性化合物の懸濁剤を投与することができる。適切な親油性の溶媒または媒体には、脂肪油、例えばゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドが含まれる。注射用水性懸濁剤は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含む懸濁剤の粘度を増大させる物質を含むことができる。任意選択により、懸濁剤は安定剤も含むことができる。細胞中に送達するために、リポソームを用いて薬剤をカプセル化することもできる。
【0141】
[00127] 本発明による全身投与のための医薬製剤は、腸内、非経口または局所投与用に製剤することができる。実際には、この3つのタイプの製剤を同時に使用して活性成分の全身投与を達成することができる。
【0142】
[00128] 経口投与に適した製剤には、硬質または軟質のゼラチンカプセル剤、丸薬、コーティング錠剤を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤または吸入剤およびその制御放出形態物が含まれる。
【0143】
[00129] 本発明のポリマーおよびブレンドは、数日間から少なくとも数週間、数日間から1カ月以上、哺乳動物においてこれらの化合物を持続的に放出できる医薬組成物中に混ぜ込むこともできる。そうした製剤は米国特許第5968895号および同第6180608B1号に記載されている。
【0144】
[00130] 局所投与のためには、液剤、懸濁剤、ゲル剤、軟膏すなわちサルブ(salve)などの一般的な任意の局所投与剤を用いることができる。そうした局所用製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesで例示されるように、医薬製剤の技術分野でよく記載されている。局所投与のためには、本発明のポリマーおよびブレンドを、粉剤または噴霧剤、特にエアロゾルの形態で投与することもできる。活性成分は、全身投与に適合させた医薬組成物で投与することができる。薬物を全身投与しようとする場合、周知のように、経口投与用に、粉剤、丸薬、錠剤もしくは同様のもの、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として調製することができる。静脈内、腹腔内または病巣内投与のためには、活性成分を、注射により投与できる液剤または懸濁剤として調製することができる。特定の場合には、活性成分を、坐剤形態か、または皮下に埋め込むかまたは筋肉注射するための持続放出製剤として製剤するのが有用である。一実施形態では、本発明のポリマーおよびブレンドは吸入治療を容易にさせることができる。吸入治療のためには、ポリマーまたはブレンドは、活性成分と合わせて、定量吸入器投与するのに有用な液剤か、またはドライパウダー吸入器に適した形態であってよい。
【0145】
医療用デバイス:
[00131] 本発明のポリマーおよびブレンドは、任意の軟部組織の欠陥を再構築、補強、ブリッジング、置き換え、修復、支持、安定化、配置または強化するために使用される埋め込み型人工装具をコーティングするかそれを形成させるのに用いることができる。例えば、本発明によって治療できる軟部組織欠陥には、これらに限定されないが、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、へそヘルニア、腹部ヘルニア、解離創ヘルニア、筋ヘルニア、横隔膜ヘルニア、胸腹部ヘルニアおよび胸部ヘルニアを含むヘルニアが含まれる。人工装具は、血管の完全性を提供する筋肉弁の構造補強のため、膀胱スリング、ブレストリフトまたは臓器バッグ/ラップなどで行う靱帯修復/取り換え、および臓器支持/位置決め/再配置のためにも使用することができる。人工装具は、整形外科グラフトサポート/固定化などの軟部組織を含む再建手術において、再建的な外科グラフトのためのサポートとして、また骨折のためのサポートとして用いることができる。
【0146】
[00132] 人工装具は一般にメッシュ、膜またはパッチであり、織ったメッシュまたは不織メッシュなどを含む。
【0147】
[00133] さらに、本発明のポリマーおよびブレンドは、ステープル、縫合糸、タック、リング、ネジなどの創縫合補助材をコーティングするかまたはそれを形成するのに使用することができる。
【0148】
[00134] 本発明のポリマーおよびブレンドは、埋め込み型医療用デバイスのためのポーチ、カバリング、ポケットなどにするかそれを形成するメッシュをコーティングするのに使用することもできる。そうした埋め込み型医療用デバイスには、これらに限定されないが、ペースメーカー、除細動器、パルス発生器などの心律動管理デバイス、ならびに埋め込み型アクセスシステム、神経刺激装置、脊髄刺激装置、胸部インプラントまたは任意の他の埋め込み型医療用デバイスなどの他の埋め込み型デバイスが含まれる。したがって、カバリング、ポーチ、ポケットなどは、それらのデバイスを適切な位置に固定し、鎮痛を提供し、瘢痕化または線維症を抑制し、細菌増殖または感染症を抑制するかまたは防止し、他の薬物を埋め込みの部位に送達する働きをすることができる。
【0149】
[00135] 本発明のポリマーおよびブレンドは、一時的かまたは一定の日限を切った治療が必要な任意の埋め込み型または挿入型医療用デバイス、ならびに恒久的な機能を有するもの(関節置換など)と一緒に使用することもできる。例えば、そうしたポリマーは、十分な治癒期間の後に完全に吸収されるが、血管開存性(patent blood vessel)は保持する、完全に吸収性の血管ステントを形成させるのに使用することができる。完全に吸収性のステントは1つまたは複数の薬物と一緒に用いることができる。
【0150】
[00136] 本発明のポリマーおよびブレンドが有用な医療用デバイスの詳細および他の例は、これらに限定されないが、カテーテル(例えば、腎臓カテーテルまたはバルーンカテーテルなどの血管カテーテル)、ガイドワイヤー、バルーン、フィルター(例えば、大静脈フィルター)、ステント(冠血管ステント、脳、尿道、尿管、胆管、気管、消化管および食道ステントを含む)、ステントグラフト、脳動脈瘤フィラーコイル(Guglilmi離脱型コイルおよび金属コイルを含む)、代用血管、心筋プラグ、大腿部用プラグ、パッチ、ペースメーカーおよびペースメーカーリード線、心臓弁、血管弁、生検デバイス、傷のない皮膚および傷ついた皮膚(創傷を含む)へ治療薬を送達するためのパッチ;軟骨、骨皮膚および他のインビボで組織再生のための再生医療用足場;手術部位での縫合糸、縫合アンカー、吻合用クリップおよびリング、組織ステープルおよび結紮クリップ;足首、ひざおよび手の領域における干渉ネジ、靱帯付着および半月板修復のためのタック、骨折固定のためのロッドおよびピン、頭蓋顎顔面修復(cranio maxillofacial repair)のためのネジおよびプレートなどの整形外科用固定デバイス;抜歯の後の空隙充てん材および歯根膜手術の後の誘導組織再生膜フィルムなどの歯科用デバイス;ならびに体内に埋め込むかまたは挿入する様々なコーティングされた基材が含まれる。
【0151】
[00137] 本明細書で記載の医療用デバイスとのポリマーおよびブレンドの使用は、1つまたは複数の薬物と使用できるものを含むことができる。
【0152】
[00138] したがって、本発明は、特に、心血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連疾患、眼疾患などの障害および状態、あるいは解剖学的な修復、復元、取り換えまたは拡大のために、患者にデバイスを埋め込むことによって、例えば、カバリングと合わせたコーティング物として、または完全かもしくは部分的なデバイスとして、本発明のポリマーまたはブレンドを含む医療用デバイスまたは医療用デバイスアセンブリを埋め込むことを含む、患者の障害または状態を治療する方法を提供する。
【0153】
[00139] いくつかの実施形態では、本方法は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離もしくは穿孔、動脈瘤(vascular aneurism)、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトのための吻合増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞またはその組合せを治療するためにステントを埋め込むのに用いられる。
【0154】
[00140] 他の実施形態では、本方法は、ヘルニアを含む任意の軟部組織欠陥を再構築、補強、ブリッジング、置き換え、修復、支持、安定化、配置または強化するための外科用メッシュを埋め込むのに用いられる。
【0155】
[00141] さらに他の実施形態では、本方法は、カバリングもしくはポーチ中のCRM、ポーチもしくはカバリング中の神経刺激装置、またはポーチもしくはカバリング中の胸部インプラントなどの医療用デバイスアセンブリを埋め込むのに用いられる。
【0156】
[00142] 当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した本発明に、様々な省略、追加および改変を加えることができ、そうしたすべての改変および変更は添付した特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内に包含されることを理解されよう。引用したすべての文献、特許および特許出願または文書のその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0157】
実施例1
ポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステルグルタレート)の合成
A.ポリ(DTBn−グルタレート)の調製
[00143] DTBn(0.5モル、209.66g)、グルタル酸(0.5モル、66.06g)、DPTS(0.2モル、58.84g)を、オーバーヘッドスターラーと凝縮器を備えた3Lフラスコに仕込んだ。塩化メチレン(1.2L)をフラスコに加え、内容物を攪拌してすべての固形物を分散させた。DIPC(1.5モル、189.3g、234.2mL)を加え、20〜22時間攪拌を続行した。その時点で反応混合物は粘性であった。塩化メチレンとイソプロパノール(IPA)からの沈殿を繰り返してポリマーを単離した。固体ポリマーをポリプロピレンのバットに移し、フード中に終夜置いて乾燥させ、50℃の真空乾燥器に移し、恒量になるまで乾燥した。ポリ(DTBn−グルタレート)の収量は203g(76%)であった。ポリマーは100kDaの分子量と66℃のTgを有していた。
【0158】
B.ポリ(DT−グルタレート)を生成するためのペンダントベンジルエステルの取り外し
[00144] ジメチルホルムアミド(DMF)4Lにポリマー200gを溶解してポリ(DTBn−グルタレート)の5%溶液を調製した。澄明溶液に窒素を約30分間バブリングさせた。攪拌しながら、触媒54g(BaSO4に5%Pd担持;ベンジル前駆体ポリマーに対して27重量/重量%)を一度に加えた。その溶液に水素ガスをバブリングさせ、終夜攪拌を続行した。反応混合物をセライト(Celite)層(セライトは珪藻類のろ過助剤である)でろ過し、脱ベンジル化ポリマーを冷水中で沈殿させた。湿潤ポリマーケーキを真空下で恒量になるまで乾燥した。ポリ(DT−グルタレート)の収量は142g(71%)であった。ポリマーは95kDaの分子量と111℃のTgを有していた。
【0159】
C.ポリ(DTMB−グルタレート)を生成するためのメチルパラベンの付加
[00145] ポリ(DT−グルタレート)(0.0564モル、25g)を250mLの丸底フラスコ中のDMF150mLに溶解した。攪拌しながら、p−ヒドロキシメチル安息香酸(0.225モル、34.3g)を加えた(モル比は10%しか過剰でなくてもうまくいく)。次いで、フラスコを氷水浴中で冷却した。ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.55g、0.0045モル)、次いでDIPC(0.062モル、7.83g、9.7mL)をフラスコに逐次加えた。15分後、フラスコを氷水浴から取り外し、終夜反応を進行させた。反応混合物は若干粘性であった。これを氷酢酸4mLで処理した。生成した尿素を焼結漏斗でろ過して透明なろ液を得た。攪拌しながら、ポリマー含有ろ液を溶媒9:1のIPA:メタノール550mLに加えた。沈殿したポリマーをIPA100mLで2回洗浄し、DMF500mLに再溶解させ、20%のNaCl水溶液3Lに注加してポリ(DTMB−グルタレート)を沈殿させた。沈殿したポリマーを真空下、焼結漏斗で集め、ガラス皿に移し、フード中で終夜乾燥し、次いで、真空下で恒量になるまで乾燥させた。ポリ(DTMB−グルタレート)の収量は17g(52%)であった。ポリマーは60kDaの分子量と71℃のTgを有していた。
【0160】
実施例2
ポリ(デスアミノチロシルチロシンプロピルパラベンエステルグルタレート)の合成
[00146] 工程Cでp−ヒドロキシプロピル安息香酸(0.225モル、40.5g)をDMF中のポリ(DT−グルタレート)の溶液に加えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーポリ(デスアミノチロシルチロシンプロピルパラベンエステルグルタレート)、すなわち、ポリ(DTPBグルタレート)を合成した。ポリマー仕上げの残りは同じようにして、ポリ(DTPB−グルタレート)21g(61%)を得た。ポリマーは70kDaの分子量と66℃のTgを有していた。
【0161】
実施例3
ポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステルスクシネート)の合成
[00147] 工程Cでグルタル酸をコハク酸で置き換えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステルスクシネート)、すなわち、ポリ(DTMBスクシネート)を合成した。ポリマー仕上げおよび合成の残りはほぼ同じようにしてポリ(DTMB−スクシネート)18g(54%)を得た。ポリマーは40kDaの分子量と76℃のTgを有していた。
【0162】
実施例4
ポリ(デスアミノチロシルチロシンメチルパラベンエステル−コ−10%デスアミノチロシルチロシンスクシネート)の合成
[00148] 遊離酸モノマーを有するポリマーを作製するために、工程Aで、グルタル酸をコハク酸で置き換え、工程Cでメチルパラベンをポリ(DT)0.9当量に加えたこと以外は、実施例1の合成に従い、ポリ(DTMB−10−DTスクシネート)を得た。
【0163】
実施例5
ポリ(デスアミノチロシルチロシンDATEエステルグルタレート)の合成
[00149] 実施例1、工程AおよびBのようにして得られたポリ(DTグルタレート)から、ポリマーポリ(デスアミノチロシルチロシンDATEエステルグルタレート)、すなわちポリ(DT(DATE)グルタレート)を作製した。デスアミノチロシルチロシンのエチルエステルを以下の工程Aに記載のようして調製し、以下の工程Bに記載のようしてポリ(DTグルタレート)と反応させて最終生成物、ポリ(DT(DATE)グルタレート)を得た。
【0164】
A.DATEの作製
[00150] DATEを作製するために、4M HCl/ジオキサン47mlを含む200%標準濃度エタノール(proof ethanol)300ml中の3−[4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸(24.2g、0.146モル)の溶液を還流下で4時間攪拌した。溶媒の大部分を留去した後、残留物を、ロータリーエバポレーターを用いて真空下、65℃で蒸発させて、黄色液体(30g)を得た。この液体残留物をトルエン75mLに溶解させ、3%NaHCO/14%NaCl(75ml)で2回抽出し、続いて20%NaCl75mlで1回抽出した。トルエン溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水し、ロータリーエバポレーターにかけて別の液体残留物を得た。これを、トルエン50ml部とさらに共蒸発させた。最終的に蒸発させた後、残留物を真空乾燥器で乾燥して中程度に粘性のある黄色液体25gを得た。トルエンの臭いはほとんどしなかった。紫外線とヨウ素で可視化すると、TLC(9:1の塩化メチレンメタノール溶媒系を用いたシリカゲル)は0.50のRfで単一のスポットを示した。NMR(D6MSO):1.3ppm(t,3H)、2.5〜2.9ppm(a,4H)、4.1ppm(q,3H)、6.7〜7.1ppm(ab,4H)、9.4ppm(s,1H)。
【0165】
B.ポリ(DTグルタレート)へのDATE付加
[00151] 工程Aで調製したDATE(0.125モル、24.3g)とポリ(DTグルタレート)(0.034モル、14.5g)をDMF125mLに溶解し、溶液を氷水浴で冷却した。この溶液にDIPC(0.042モル、6.6mL)を加え、5分間攪拌した後、DMAP(0.0028モル、0.34g)を加え、氷浴中(これはその間に室温となった)で終夜攪拌を続行した。反応混合物を1200mL(9:1のIPA:メタノール)に急速に加えると、エラストマー状の沈殿物が得られた。溶媒をデカントし、氷酢酸0.5mLを含むIPA1200mLで固体を2回洗浄した。洗浄した固体を、氷酢酸1mLを含むDMF150mLに溶解し、ろ過し、蒸留水1800mLを急速に注加して再沈殿させた。この沈殿物を冷蒸留水1L中に2回再懸濁させ、ポリプロピレン膜でろ過し、蒸留水で数回洗浄し、続いて真空乾燥器中、45℃で数日間乾燥した。ポリ(DT(DATE)グルタレート)は、ゲル透過クロマトグラフィー(DMF/0.1%TFA、0.8ml/m、PEG標準品)で測定して82kDaの分子量を有しており、Tgは43.03℃であった。NMR:(D6MSO):1.6ppm(t,3H)、4.1ppm(q,2H)。
【0166】
実施例6
ポリ(DTMBグルタレート)およびポリ(DTMBスクシネート)の代替合成経路
A.モノマー調製
[00152] DTM(18.8g、0.0548モル)、炭酸カリウム(16.6g、0.1205モル)および臭化ベンジル(13.7ml、0.1150モル)の混合物を、アセトン100ml中で16時間還流させた。反応混合物をジクロロメタン260mlに加え、攪拌し、目の細かい焼結漏斗でろ過した。清澄ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮して雪泥状物(slush)を得た。この雪泥状物をヘキサン800mlで希釈し、攪拌して流動性のある(smooth)懸濁液を得た。固体をろ過し、40℃で真空乾燥してビス−ベンジル誘導体25gを得た。これは、シリカゲルTLC(9:1の塩化メチレン:メタノール)を用いて、紫外線とヨウ素で可視化すると、Rf0.77において単一スポットを示した。NMR:3.7ppm(s,1H)、4.4ppm(m,1H)、5.1ppm(s,4H)、6.8〜7.4ppm(m,18H)、8.4ppm(d,1H)。
【0167】
[00153] ビス−ベンジルDTM(25.3g)とNaOH(61.4g)の混合物を、蒸留水600ml中、95〜100℃で20分間攪拌した。混合物を氷浴で冷却し、8M HClを加えてpHを2.5に調節し、焼結ガラス漏斗でろ過した。白色の結晶性固体を真空下、40℃で2日間乾燥し、23.7gを得た。シリカゲルTLC(9:1の塩化メチレン:1%酢酸を含むメタノール)では、紫外線とヨウ素で可視化すると、Rf0.41において単一スポットを示した。融点:201.7℃。NMR:4.4ppm(m,1H)、5.1ppm(s,4H)、6.8〜7.4ppm(m,18H)、8.2ppm(d,1H)、12.7ppm(s,1H)。
【0168】
[00154] ビス−ベンジル−DT(26.6g、0.0522モル)、メチルパラベン(7.g、0.0493モル)およびDPTS(7.8g、0.0265モル)の混合物を、N−メチルピロリジノン117ml中、室温で15分間攪拌し、氷水浴中で温度を2〜5℃に低下させた。この冷却溶液にDIPC(8.8ml、0.0562モル)を加え、混合物を氷浴中(取り替えることなく)で終夜攪拌した。混合物を冷凍庫に3〜4時間保持し、次いでろ過してジイソプロピル尿素の固体を除去した。清澄ろ液を冷蒸留水3200mlに加え、白濁固形物の凝集が完了するまでかまたは終夜攪拌を続行した。白色の固体生成物をろ過により単離し、真空下40℃で乾燥した。乾燥固体(32g)を、氷酢酸90mlを用いてエタノール(200%標準濃度)470mlの溶液から再結晶化させ、30℃で真空乾燥して白色結晶性生成物、ビス−ベンジル−DTMB21gを得た。シリカゲルTLC(9:1の塩化メチレン:1%酢酸を含むメタノール)は、紫外線とヨウ素で可視化すると、0.55のRfで単一スポットを示した。メチルパラベンは検出されなかった。NMR:2.4ppm(m,2H)、2.7ppm(m,2H)、3.1ppm(a,2H)、3.9ppm(s,3H)、4.6ppm(q,1H)、5.1ppm(s 2H)、5.2ppm(s,2H)、6.8〜7.9ppm(m,22H)、8.6ppm(d,1H)。
【0169】
[00155] DMF中のビス−ベンジル−DTMB(21.6g)162mlの溶液を、Pd/C(10%)7.9gを用いて大気圧下で、10〜12時間水素化した。混合物を酢酸エチル400〜500mlで希釈し、触媒をろ紙でろ別し、続いて20%NaCl 600mlで2回、3%NaHCO/14%NaCl 500mlで2回、20%NaCl 300mlで2回それぞれ抽出した。清澄溶液を無水硫酸マグネシウムで脱水し、ロータリーエバポレーターで濃縮して硬いゴム状物を得た。このゴム状物を塩化メチレンと繰り返し混合し、ロータリーエバポレーターにかけてゴム状物を得た。次いでこのゴム状物をヘキサンに数日間浸漬して白色結晶性固体を得た。ろ過し真空乾燥した後、132℃の融点を有するDTMB12.2gを得た。シリカゲルTLC(9:1の塩化メチレン:1%酢酸を含むメタノール)は、紫外線とヨウ素で可視化すると、0.35のRfで主要スポットを示した。NMR:2.4ppm(m,2H)、2.6ppm(m,2H)、2.8ppm(m,2H)、3.7ppm(s,3H)、4.5ppm(m,1H)、6.6〜8.0ppm(m,12H)、8.5ppm(d,2H)、9.1ppm(s,1H)、9.3ppm(s,1H);元素分析:%C、67.71、%H、5.16、%N、3.03:理論値:%C、67.38、%H、5.44、%N、3.02。
【0170】
B.重合
[00156] ポリ(DTMBグルタレート)またはポリ(DTMBスクシネート)を生成させるために、実施例1、工程Aに記載の方法によって、DTMBモノマーを、グルタル酸またはコハク酸とそれぞれ重合させた。
【0171】
実施例7
インビボでの質量損失試験
[00157] 質量損失および分解プロファイルを解析するために、レーザーで小片にカットしたポリプロピレンメッシュを、指定したポリマーでディップコーティングしてメッシュ5mg(平均)上にポリマー3〜5mg(平均)を得た。コーティングしたメッシュを室温で24時間乾燥し、真空乾燥器で3日間乾燥させた。いくつかの場合、大きなメッシュにポリマーを噴霧コーティングし、所望のサイズにカットし、埋め込んだ。重量を計測した後、コーティングしたメッシュを、Nylaflo Nylon薄膜フィルターを備えたPMMAチャンバー(サイズ:d=1cm、h=0.5cm)の中に密封した。
【0172】
[00158] 試料を含む5つのチャンバーと、プレーンメッシュを含む1つの対照チャンバーを、各ウサギの背中の各側部に配置し、密封したチャンバーをウサギの背中の皮下に埋め込んだ。
【0173】
[00159] 指定した時点でチャンバーを外科的に取り出し、メッシュを、ポリマーの質量損失および分子量変化について分析した。0.1%TFAを含むDMF中に浸漬させてメッシュ上のポリマーを溶解する。その溶液を0.45μのTeflon(登録商標)注射器取り付け可能なフィルターでろ過し、分析用バイアルに移し、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で分析してポリマーの分子量の変化を評価した。
【0174】
[00160] 図1は、対照としての(◆)ポリ(DTM−15−DTグルタレート)、(◇)ポリ(DTPBグルタレート)、(●)ポリ(DTMBスクシネート)、(□)ポリ(DTMBグルタレート)、(▲)ポリ(DT(DATE)グルタレート)および(○)ポリ(DTMB−10−DTスクシネート)でコーティングしたメッシュを埋め込まれたウサギにおけるインビボでのポリマーの分子量変化を示す。対照以外は、約50〜約180日間の範囲で、この試験でのポリマーは残留分子量を有していない。
【0175】
[00161] 質量損失プロファイルを評価するために、チャンバーから取り出した後、コーティングしたメッシュを洗浄し、乾燥し、重量計測(最終重量)することができる。コーティングしたメッシュの当初重量から最終重量を減じて質量損失を判定する。図2は、対照としての(◆)ポリ(DTM−15−DTグルタレート)、(◇)ポリ(DTPBグルタレート)、(●)ポリ(DTMBスクシネート)、(□)ポリ(DTMBグルタレート)、(▲)ポリ(DT(DATE)グルタレート)および(○)ポリ(DTMB−10−DTスクシネート)でコーティングしたメッシュを埋め込まれたウサギにおけるインビボでの埋め込みの間における質量損失を示す。対照以外は、この試験でのポリマーは、多くの場合、約75日間で(またはそれ以前に)相当な質量損失を示す。試験の時間的経過の間、対照はその質量を失っていないが、本発明のこれらのポリマーは質量を失っている。
【0176】
実施例8
薬物送達
[00162] ポリプロピレンメッシュをアセトン、続いてイソプロパノールを用いて超音波処理し、50℃で終夜乾燥した。ポリ(DTMB−グルタレート)ポリマーおよび5%ローディングを付与するリファンピンを、適切な溶媒(テトラヒドロフランまたは塩化メチレン)に溶解した。次いでこの溶液を1ミクロンフィルターでろ過し、Sonotek噴霧塗装機を用いてメッシュ上に噴霧コーティングした。メッシュをフード中で1時間乾燥させ、次いで真空下、室温で乾燥してすべての溶媒を除去した。
【0177】
[00163] 薬物送達のために、計算した量のデバイス(高速液体クロマトグラフィー検出感度に基づいて)を20mLシンチレーションバイアルに入れた。PBS(10mL)を加え、バイアルをキャップし、37℃でインキュベーター振とう機にセットした。所定の時間間隔で、その緩衝液をピペットで抜き取り、HPLCで分析した。次いで緩衝液を.新鮮な緩衝液10mLで置き換えた。累積放出薬物の割合と時間をプロットして、薬物送達の動力学的特性が得られた(図3)。
【0178】
[00164] リファンピンを5%ローディングするか、ミノサイクリンを5%ローディングするか、またはその両方をローディングしたポリ(DTMB−グルタレート)フィルムを、2008年3月28日出願の米国特許第12/058060号に記載のキャスティング法に概ねしたがって作製する。乾燥したら、フィルムを小片にカットし、PBSを含むバイアル中に入れる。定期的に一定分量の緩衝液を分析用に取り出し、新鮮な緩衝液で置き換える。試料をHPLCで分析して、放出されたリファンピンまたはミノサイクリンの累積量を測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式で表される1つまたは複数のモノマー単位を含むポリマー
【化15】

(式中、
「Monomer」は、生理学的条件下で吸収可能な生体適合性のある生分解性ポリマーの繰り返し単位であり、
R’はフェニル−Rであり、ここで、0〜5個のR置換基はフェニル環上の任意の位置にあり、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
YはOまたはNHであり、
各Rは直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
各Rは、水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である)。
【請求項2】
ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリホスホエステル、ポリイミノカーボネート、ポリチオカーボネート、ポリホスフェートまたはポリ酸無水物である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
少なくとも約0.1%〜100%の前記モノマー単位を含む請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
次式で表される1つまたは複数のジフェノールモノマー単位を含むポリマー
【化16】

(式中、
Aは、C(O)、C(O)−R−C(O)、C(=NH)、C(O)−NH−R−NH−C(O)またはC(S)であり、
Bは、1〜20個の炭素原子を有する三価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリール部分であるか、あるいは、
【化17】

であり、
各骨格芳香環は0〜4個のZまたはZ置換基を有しており、そのそれぞれは、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護ヒドロキシル基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群から独立に選択され、
ペンダントフェニル環は、フェニル環上の任意の位置に0〜5個のR置換基を有しており、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
は独立に、1〜30個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキレンオキシドまたはアリーレンオキシド部分;(RO((CRO)(R;または(RCO((CRO)CO(Rであり、
各Rは、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
は独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
は、水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、置換基は、X、−CX、−CHX、−CHX、−NHR、−NHC(O)R10からなる群から選択され、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、置換基は、X、−CX、−CHX、−CHX、−NHR、−NHC(O)R10からなる群から選択され、
は、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基あるいはアミノ保護基であり、
10は、直鎖状または分岐状のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、
Xはハロゲンであり、
YはOまたはNHであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である)。
【請求項5】
Rが、−CX、−CHX、−CHX、−RCX、−RCHXおよび−RCHXからなる群から選択される置換アルキル基である請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
Rが−RCX、−RCHXおよび−RCHXであり、RがCHまたはCHCHであり、XがFまたはClである請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
Rがアルキルアリール基である請求項4に記載のポリマー。
【請求項8】
前記アルキルアリール基がトリチル基である請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
Rがヘテロ原子含有アルキル基である請求項4に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ヘテロ原子含有アルキル基がトリメチルシランまたはN−ヒドロキシスクシンイミドである請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
Rがアルコキシである請求項4に記載のポリマー。
【請求項12】
Rが−(RC(O)−YRである請求項4に記載のポリマー。
【請求項13】
YがOである請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
bが0であり、Rが水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはベンジルである請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
bが0であり、Rがメチルまたはプロピルである請求項14に記載のポリマー。
【請求項16】
bが1であり、Rがメチレンまたはエチレンであり、Rが水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはベンジルである請求項13に記載のポリマー。
【請求項17】
bが1であり、Rがエチレンであり、Rがエチルである請求項16に記載のポリマー。
【請求項18】
YがNHである請求項12に記載のポリマー。
【請求項19】
bが0であり、Rが水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはベンジルである請求項18に記載のポリマー。
【請求項20】
bが1であり、Rがメチレンまたはエチレンであり、Rが水素、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはベンジルである請求項18に記載のポリマー。
【請求項21】
R基を有していない請求項4に記載のポリマー。
【請求項22】
1個のR基を有する請求項4に記載のポリマー。
【請求項23】
前記R基が芳香環の2位または4位にある請求項22に記載のポリマー。
【請求項24】
2個のR基を有する請求項4に記載のポリマー。
【請求項25】
一方のR基が芳香環の2位にあり、他方が4位にある請求項24に記載のポリマー。
【請求項26】
AがC(O)−R−C(O)である請求項4から25のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項27】
が、メチレン、エチレン、n−プロピレン、CHOCHまたは(RCO((CRO)CO(Rである請求項26に記載のポリマー。
【請求項28】
Bが、
【化18】

である請求項4から27のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項29】
が結合、メチレンまたはエチレン基であり、Rが結合、メチレンまたはエチレン基である請求項28に記載のポリマー。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に記載のポリマーおよび1つまたは複数の薬物を含む組成物。
【請求項31】
前記1つまたは複数の薬物が、抗菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化薬およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記1つまたは複数の薬物が抗菌剤である請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗菌剤が、単独または組み合わせて、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記薬物がリファンピンおよびミノサイクリンである請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
請求項1から29のいずれか一項に記載のポリマーを1つまたは複数を含む医療用デバイス。
【請求項36】
完全にまたは部分的に吸収性である請求項35に記載の医療用デバイス。
【請求項37】
1つまたは複数の薬物をさらに含む請求項36または37に記載の医療用デバイス。
【請求項38】
ステント、外科用メッシュ、デバイスカバリングまたはカテーテルである請求項35から37のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項39】
前記デバイスカバリングが、心律動管理デバイス、神経刺激装置または胸部インプラント用である請求項38に記載の医療用デバイス。
【請求項40】
前記1つまたは複数の薬物が、抗菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化薬およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される請求項37から39のいずれか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項41】
前記1つまたは複数の薬物が抗菌剤である請求項40に記載の医療用デバイス。
【請求項42】
前記抗菌剤が、単独または組み合わせて、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される請求項41に記載の医療用デバイス。
【請求項43】
前記薬物が、リファンピンおよびミノサイクリンである請求項42に記載の医療用デバイス。
【請求項44】
デバイスの表面上のコーティングかまたはその表面に付着したコーティングを含む医療用デバイスであって、前記コーティングが、請求項1から29のいずれか一項に記載のポリマーの1つまたは複数の層を含む医療用デバイス。
【請求項45】
前記コーティングの1つまたは複数の層が、1つまたは複数の薬物をさらに含む請求項42に記載の医療用デバイス。
【請求項46】
前記1つまたは複数の薬物が、抗菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化薬およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される請求項45に記載の医療用デバイス。
【請求項47】
前記1つまたは複数の薬物が抗菌剤である請求項46に記載の医療用デバイス。
【請求項48】
前記抗菌剤が、単独または組み合わせて、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される請求項47に記載の医療用デバイス。
【請求項49】
前記薬物がリファンピンおよびミノサイクリンである請求項48に記載の医療用デバイス。
【請求項50】
式IIIまたはIVで表されるモノマー化合物
【化19】

(式中、
Bは、1〜20個の炭素原子を有する三価の直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニル、アリールまたはアルキルアリール部分、あるいは、
【化20】

であり、
各骨格芳香環は0〜4個のZまたはZ置換基を有しており、そのそれぞれは、ハライド、低級アルキル、アルコキシ、ニトロ、アルキルエーテル、保護ヒドロキシル基、保護アミノ基および保護カルボン酸基からなる群から独立に選択され、
ペンダントフェニル環は、フェニル環上の任意の位置に0〜5個のR置換基を有しており、各Rは独立に、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリール、アルキルアリール、ヘテロ原子含有アルキルもしくはアリール、アルキルシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシまたはアルキルエーテル;ハライド;ニトロ;(RO((CRO)−R;O((CRO)−R;C(O)−R;(RC(O)−YR;保護ヒドロキシル基;保護アミノ基または保護カルボン酸基であり、
各Rは独立に、直鎖状または分岐状の低級アルキレンまたは低級アルケニレンであり、
各RおよびRは独立に、水素、または直鎖状または分岐状の低級アルキルであり、
は独立に、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキルであり、
は、水素;1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール;または(RO((CRO)−Rであり、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は独立に、結合、または1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の置換または非置換のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、置換されている場合、置換基は、これらに限定されないが、−X、−CX、−CHX、−CHX、−NHRまたは−NHC(O)R10であってよく、
は、直鎖状または分岐状の置換または非置換の飽和または不飽和のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基あるいはアミノ保護基であり、
10は、直鎖状または分岐状のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、
PはOH保護基であり、
Xはハロゲンであり、
YはOまたはNHであり、
各aは独立に1〜4であり、
各bは独立に0または1であり、
各rは独立に1〜4であり、
各sは独立に1〜5000である)。
【請求項51】
1つまたは複数の請求項1から29のいずれか一項に記載のポリマーと1つまたは複数の第2のポリマーを含むポリマーのブレンド。
【請求項52】
前記1つまたは複数の第2のポリマーが、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸[ポリグリコリド(PGA)]、ポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−コ−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−カプロラクトン)(PLA/PCL)およびポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)(PGA/PCL)などのポリ乳酸、ポリグリコール酸ならびにそのコポリマーおよび混合物;ポリ(オキサ)エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレンフマレート、ポリ(エチルグルタメート−コ−グルタミン酸)、ポリ(tert−ブチルオキシ−カルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン−コ−ブチルアクリレート、ポリヒドロキシブチレート(PHBT)およびポリヒドロキシブチレートのコポリマー、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(リン酸塩エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリデプシペプチド、無水マレイン酸コポリマー、ポリイミノカーボネート、ポリ[(97.5%ジメチル−トリメチレンカーボネート)−コ−(2.5%トリメチレンカーボネート)]、ポリ(オルトエステル)、チロシン誘導ポリアリレート、チロシン誘導ポリカーボネート、チロシン誘導ポリイミノカーボネート、チロシン誘導ポリホスホネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、キトサンおよび再生セルロースなどの多糖、ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質ならびにその混合物およびコポリマー、とりわけ、PEG誘導体または上記のいずれかのブレンドからなる群から選択される請求項51に記載のブレンド。
【請求項53】
前記第2のポリマーが、ポリエチレングリコール、PLA、PLG、PLGAまたはPCLである請求項52に記載のブレンド。
【請求項54】
前記第2のポリマーが、請求項1から29のいずれか一項に記載のポリマーのうちの異なるポリマーである請求項51に記載のブレンド。
【請求項55】
1つまたは複数の薬物をさらに含む請求項51から54のいずれか一項に記載のブレンド。
【請求項56】
前記1つまたは複数の薬物が、抗菌剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗瘢痕化剤、抗線維化薬およびロイコトリエン阻害剤からなる群から選択される請求項55に記載のブレンド。
【請求項57】
前記1つまたは複数の薬物が抗菌剤である請求項56に記載のブレンド。
【請求項58】
前記抗菌剤が、単独または組み合わせて、リファンピン、ミノサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トリクロサンからなる群から選択される請求項57に記載のブレンド。
【請求項59】
前記薬物がリファンピンおよびミノサイクリンである請求項58に記載のブレンド。
【請求項60】
前記請求項のいずれかに記載の医療用デバイスを患者に埋め込むことを含む患者の障害または状態を治療する方法であって、前記障害が、心血管障害、神経障害、ヘルニアもしくはヘルニア関連疾患、眼疾患、または解剖学的修復、復元、置換もしくは増大である方法。
【請求項61】
前記デバイスがステントである請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離もしくは穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、静脈および人工グラフトのための吻合増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞およびその組合せからなる群から選択される請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記デバイスが外科用メッシュである請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記メッシュを、任意の軟部組織の欠陥を再構築、補強、ブリッジング、置き換え、修復、支持、安定化、配置または強化するために使用する請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記軟部組織の欠陥がヘルニアである請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記デバイスが、完全に吸収性のデバイスカバリングである請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記カバリングが、心律動管理デバイス、神経刺激装置または胸部インプラントのためである請求項66に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−530921(P2010−530921A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513454(P2010−513454)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/067715
【国際公開番号】WO2008/157777
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508125575)タイレックス・ファーマ・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】TYRX PHARMA INC.
【Fターム(参考)】