説明

ポンプ装置の制御装置及びその方法

【課題】バルブの開閉状態に応じてポンプのモータの制御を適切に行なうことができるポンプ装置の制御装置を提供する。
【解決手段】送水側圧力が停止圧力値より低い状態で一定圧力が継続した場合にモータ14の回転速度を記憶し、この記憶した時間から設定時間T2の間はモータ14を減速させ、その設定時間T2の経過後の送水側圧力を検出し、その状態からバルブ18の開閉状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸ポンプ等に用いられるポンプ装置の制御装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、井戸から水を汲み上げるためのポンプ装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のポンプ装置は、井戸の水中にポンプを入れて水を汲み上げるものであり、特許文献は地上部分にポンプを設置して、井戸から水を汲み上げるものである。
【特許文献1】特開2001−311183公報
【特許文献2】特開2001−12342公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のポンプ装置においては、バルブを開閉することによりポンプを起動して井戸から水を汲み上げ、それをポンプから送水している。この場合に、ポンプからの送水側圧力を圧力センサによって検出し、送水側圧力が停止設定圧力よりも大きくなればモータを停止し、また、送水側圧力が起動設定圧力よりも小さくなればモータを起動する。
【0005】
しかしながら、このような制御方法であるとバルブが閉まり切った状態で、モータを運転しても送水側圧力が停止設定圧力に到達せず、モータがいつまでも停止せずに発熱や消費電力が大きくなるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、バルブの開閉状態に応じてポンプのモータの制御を適切に行なうことができるポンプ装置の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポンプからの水の出力流量を調整するバルブと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータの回転速度を制御する速度制御部と、前記ポンプからの送水側圧力を検出する検出部と、前記検出した圧力が、前記モータを停止させるための停止圧力より低く、かつ、一定圧力であるか否かを判断する一定圧力判断部と、前記停止圧力より低く、かつ、前記一定圧力であると判断した時の前記モータの回転速度を記憶する記憶部と、前記記憶した時から減速設定時間の間、前記回転速度の減速を続ける減速部と、前記減速設定時間後において検出した圧力と、前記記憶時の圧力との差分を求める演算部と、前記差分が閾値より大きいときは前記バルブが開状態であると判断し、また、前記差分が前記閾値より小さいときは前記バルブが閉状態であると判断する判断部と、を有するポンプ装置の制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のによればバルブを閉状態にすると、その閉状態を判定してモータを停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のポンプ装置10について図1〜図6に基づいて説明する。
【0010】
このポンプ装置10は、井戸100から水を汲み上げる井戸ポンプである。
【0011】
(1)ポンプ装置10の構成
ポンプ装置10の構成について図1に基づいて説明する。
【0012】
ポンプ12は、井戸30に挿入された吸水管28から水を揚水するものであり、モータ14によって駆動する。
【0013】
ポンプ12によって吸水され、吐出された水は送水管16を通じて送水される。この送水管16の先には、水の出力流量を調整するための蛇口等のバルブ18が設けられている。
【0014】
また、送水管16の途中には、アキュムレータの役割をするタンク20と、送水管16内部の水の圧力を検出する圧力センサ22が設けられている。
【0015】
モータ14は、ブラシレス直流モータであって、モータ駆動回路24からのPWM制御によってON/OFF及び回転速度が制御される。
【0016】
また、ポンプ12の羽根車の回転軸付近には温度センサ26が設けられている。
【0017】
(2)モータ駆動回路24の構成
モータ駆動回路24は、上記したようにモータ14を制御するものである。モータ14は、上記したようにブラシレス直流モータであって、モータ駆動回路24は、このモータ14を、圧力センサ22からの圧力信号と温度センサ26からの検出温度に基づいてON/OFF及び回転速度をPWM制御する。
【0018】
また、モータ駆動回路24は、温度センサ26の検出した温度が例えば3度以下になると、不図示のヒータを作動させ、ポンプ12の羽根車の回転軸の凍結防止を行なう。
【0019】
圧力センサ22に基づくモータ14の制御については後から説明する。
【0020】
(3)一定圧力の検出方法
まず、図2に基づいてモータ駆動回路24が、送水管16から吐出される水の圧力が一定か否かを検出する場合について説明する
圧力センサ22は、送水管16内部の送水側圧力を、一定周期(数10m秒から数100m秒単位)で検出している。その検出状態の時間的変化を図2(a)に示す。
【0021】
この検出した送水側圧力から、送水側圧力が増加または減少したかを示す圧力変化量を求める。その圧力変化量の時間的変化を示したものが図2(b)に示す。
【0022】
この圧力変化量の変化が±P1の範囲に所定時間T1の間収まる場合には、想定される送水側圧力が一定であるとして、一定圧検出フラグを立てる。その状態の時間的変化を図2(c)に示す。
【0023】
検出した一定圧力か否かは、下記で説明するバルブ18の開閉状態における処理とは別のルーチンで一定周期毎に行っており、その利用方法については後から説明する。
【0024】
(4)停止圧力P2に到達時の制御方法
まず、送水側圧力が、予め設定された停止圧力値P2に到達した場合には、従来通りモータ14を停止させる。
【0025】
(5)停止圧力値P2に未到達時の制御方法
次に、図3〜図5に基づいて、停止圧力値P2に未到達時の制御方法について説明する。
【0026】
図3(a)は、バルブ18の時間的な開閉状態を示し、(b)は送水側圧力の時間的変化を示し、(c)はモータ14の回転速度の時間的な変化状態を示している。
【0027】
(5−1)第1状態
時刻t0において、ユーザがバルブ18を開放状態にする。なお、開放状態とはバルブ18を全開にした状態である。すると、送水側圧力は、開放前には停止圧力P2よりやや低い圧力で保持されているが、バルブ18が開放状態になったため次第に下がり起動圧力P3よりも下がる。すると、起動圧力P3よりも下がったため、モータ駆動回路24はモータ14を起動させ、回転速度が次第に上昇してポンプ12は送水する。
【0028】
(5−2)第2状態
時刻t1において、ユーザがバルブ18を閉め切る。すると、送水側圧力は、次第に上昇し、また、回転速度は一定に保持されてポンプ12は送水する。
【0029】
(5−3)第3状態
時刻t2において、ユーザがバルブ18を閉め切け状態から再び開き状態にする。但し、全開状態までは至っていないとする。この状態で、送水側圧力は、停止圧力値P2までは至っていないため、モータ14の回転が停止することなく、その送水側圧力が次第に下がりながら、ポンプ12は一定の回転速度で送水を続ける。
【0030】
(5−4)第4状態
時刻t3において、ユーザがバルブ18を閉め切る。すると、再び送水側圧力は上昇を始める。しかし、停止圧力P2までは上昇せず、その手前の圧力で一定となる。この時刻をt4とする。また、ポンプ12は一定の回転速度で送水を続ける。
【0031】
(5−5)第5状態
時刻t4において、送水側圧力が一定となる。ここで上記で説明したように、(5−1)〜(5−5)とは別のルーチンで、一定周期毎に一定圧力であるか否かを測定しているので、この時刻t4から一定圧力であるかの測定を開始し、時刻t4から所定時間T1継続した場合に一定圧力であると判断する。
【0032】
(5−6)第6状態
時刻t5において、一定圧力であると判断して、その時刻t5の回転速度V0を記憶する。そして、回転速度をV0からV1に減速する。例えば、−200min−1程度減速させ、この減速した回転速度V1を、予め設定した減速設定時間T2(例えば約2秒)継続する。この減速設定時間T2の間において、送水側圧力は回転速度が減速されたため次第に下がってくる。
【0033】
(5−7)第7状態
時刻t5から減速設定時間T2後の時刻t6において、時刻t5の送水側圧力と、時刻t6の送水側圧力の圧力差分Sを計算する。これ以降の説明は、図4及び図5を用いて説明する。
【0034】
(5−7−1)バルブ18が開かれた場合
まず、バルブ18がユーザによって開かれた場合について、図4に基づいて説明する。
【0035】
ユーザによってバルブ18が開かれると、送水側圧力が急激に下がるため、時刻t5における送水側圧力と、時刻t6における送水側圧力との差が大きくなる。この圧力差分Sが、閾値0.1kg/cm以上であると、バルブ18が開いていると判断し、回転速度V1からV0に復帰させる。
【0036】
(5−7−2)バルブ18が閉め切られた場合
次に、バルブ18がユーザによって閉め切られた場合について、図5に基づいて説明する。
【0037】
バルブ18がユーザによって閉め切られた状態が続くと、時刻t5における送水側圧力と時刻t6における送水側圧力の圧力差分Sが、閾値0.1kg/cm以下であるため、バルブ18が閉じていると判断し、回転速度V1をさらに減速させ、モータ14を停止させる。そのため、従来のようにバルブ18が閉まり切った状態で、モータ14がいつまでも停止せずに発熱や消費電力が大きくなるという問題点が発生しない。
【0038】
(6)処理内容
図6のフローチャートに基づいて、上記で説明した処理内容を順番に説明する。
【0039】
まず、ステップ1において、ローカル変数宣言を行ない、送水側圧力の開始や、終了圧、モータの開始速度を記憶させる。
【0040】
次に、ステップ2において、所定の経過時間毎に場合分けを行なう。すなわち、一定周期(数10m秒から数100m秒単位)で送水側圧力を測定し、次の処理を行なう。
【0041】
ステップ3において、初期値を記憶する。減速前の送水側圧力、すなわち、時刻t5における送水側圧力と、減速前の回転速度、すなわち、時刻t5におけるモータ14の回転速度V0を記憶する。
【0042】
ステップ4において、時刻t5から時刻t6における減速処理を行なう。
【0043】
ステップ5において、時刻t6における送水側圧力を記憶する。
【0044】
ステップ6において、時刻t5と時刻t6における送水側圧力の圧力差分Sを求める。
【0045】
ステップ7において、上記で説明したように圧力差分Sによって場合分けを行ない、圧力差分Sが閾値以上であればステップ8において、モータ14の起動を継続し、閾値以内であればバルブ18が閉め切りであると判断しモータ14を停止させる。
【0046】
(7)効果
本実施形態のポンプ装置10は、一定周期で送水側圧力を測定し、圧力変化が一定圧力かどうかを判定する。そして、送水側圧力が停止圧力値に到達しない状態で一定圧力であると判断した場合には回転速度を低下させる。そして、速度低下状態で減速設定時間T2を経過した後、回転速度の低下前の送水側圧力と設定時間T2経過後の送水側圧力とを比較し、その圧力差分が閾値以上であればモータ14の回転を継続し、閾値以下であればモータ14を停止させる。
【0047】
このようにすることで、バルブ18の閉め切り状態で送水側圧力が停止圧力に到達しない場合でも、バルブ18の閉め切りを判定し、モータ14を停止させることができる。
【0048】
また、モータ14を起動及び停止を繰り返さない方法で閉め切りを判定することができるので、判断中に急激な圧力低下が生じることがなく、モータ14の回転数の変化による音が小さい、
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態を示すポンプ装置のブロック図である。
【図2】一定圧力値を測定するときのグラフである。
【図3】(a)はバルブの開閉状態の時間的変化、(b)は送水側圧力の時間的変化、(c)は回転速度の時間的変化を示すグラフである。
【図4】同じくバルブが開いた状態のグラフである。
【図5】同じくバルブが閉め切られた状態のグラフである。
【図6】ポンプ装置の動作状態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 ポンプ装置
12 ポンプ
14 モータ
16 送水管
18 バルブ
20 タンク
22 圧力センサ
24 モータ駆動回路
26 温度センサ
100 井戸
102 吸水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプからの水の出力流量を調整するバルブと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータの回転速度を制御する速度制御部と、
前記ポンプからの送水側圧力を検出する検出部と、
前記検出した圧力が、前記モータを停止させるための停止圧力より低く、かつ、一定圧力であるか否かを判断する一定圧力判断部と、
前記停止圧力より低く、かつ、前記一定圧力であると判断した時の前記モータの回転速度を記憶する記憶部と、
前記記憶した時から減速設定時間の間、前記回転速度の減速を続ける減速部と、
前記減速設定時間後において検出した圧力と、前記記憶時の圧力との差分を求める演算部と、
前記差分が閾値より大きいときは前記バルブが開状態であると判断し、また、前記差分が前記閾値より小さいときは前記バルブが閉状態であると判断する判断部と、
を有するポンプ装置の制御装置。
【請求項2】
前記判断部が、前記バルブが開状態であると判断したときに、前記回転速度を前記記憶時の回転速度に復帰させる、
請求項1記載のポンプ装置の制御装置。
【請求項3】
前記判断部が、前記バルブが閉状態であると判断したときに、前記モータを停止させる、
請求項1記載のポンプ装置の制御装置。
【請求項4】
前記一定圧力判断部は、前記検出した圧力の変化量が、任意時間の間、任意の圧力範囲にある場合に一定圧力であると判断する、
請求項1記載のポンプ装置の制御装置。
【請求項5】
ポンプからの水の出力流量を調整するバルブと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータの回転速度を制御する速度制御部と、
を有するポンプ装置の制御方法において、
前記ポンプからの送水側圧力を検出する検出ステップと、
前記検出した圧力が、前記モータを停止させるための停止圧力より低く、かつ、一定圧力であるか否かを判断する一定圧力判断ステップと、
前記停止圧力より低く、かつ、前記一定圧力であると判断した時の前記モータの回転速度を記憶する記憶ステップと、
前記記憶した時から減速設定時間の間、前記回転速度の減速を続ける減速ステップと、
前記減速設定時間後において検出した圧力と、前記記憶時の圧力との差分を求める演算ステップと、
前記差分が閾値より大きいときは前記バルブが開状態であると判断し、また、前記差分が前記閾値より小さいときは前記バルブが閉状態であると判断する判断ステップと、
を有するポンプ装置の制御方法。
【請求項6】
前記判断ステップが、前記バルブが開状態であると判断したときに、前記回転速度を前記記憶時の回転速度に復帰させる、
請求項5記載のポンプ装置の制御方法。
【請求項7】
前記判断ステップが、前記バルブが閉状態であると判断したときに、前記モータを停止させる、
請求項5記載のポンプ装置の制御方法。
【請求項8】
前記一定圧力ステップは、前記検出した圧力の変化量が、任意時間の間、任意の圧力範囲にある場合に一定圧力であると判断する、
請求項5記載のポンプ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52403(P2009−52403A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216936(P2007−216936)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(398061810)日本電産シバウラ株式会社 (197)
【Fターム(参考)】