説明

ポンプ装置

【課題】液圧ポンプから洩れた液体を量の規制を受けずに取り込むことができ、その取り込みを行なう大気圧リザーバの仕様変更や設置点の変更、連通路のレイアウト変更と言った設計変更についても自由度を確保した液圧装置を実現すること課題としている。
【解決手段】液圧ポンプ2を内蔵したポンプハウジング1と、液体を大気圧状態で貯留する大気圧リザーバ8と、ポンプ駆動用の回転軸3と、ポンプハウジング1の内部に配置された洩液流入室4を有する。大気圧リザーバ8はポンプハウジング1とは別体に形成されてポンプハウジングの外部に設けられ、パイプ又はホースからなる接続路9を介して洩液流入室4を大気圧リザーバ8に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用液圧ブレーキ装置などに動力駆動の液圧源として採用するポンプ装置、詳しくは、ポンプ室から洩れた液体(圧力媒体)を量的な規制を受けずにリザーバに取り込むことを可能にし、リザーバの仕様や設置点の変更、ポンプとリザーバを繋ぐ接続路のレイアウトなどに関する設計面での自由度も確保できるようにしたポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力駆動の液圧ポンプやそれを備えた車両用液圧制御装置、あるいはブレーキ装置の従来例として、例えば、下記特許文献1〜3に開示されるものがある。
【0003】
特許文献1に開示されたブレーキアクチュエータ用のポンプは、ポンプハウジングに挿入されたポンプ駆動用回転軸の周りを高圧用シールと低圧用シールで2重にシールし、高圧用シールと低圧用シールとの間に形成したオイルシール室に、オイルと空気を封じ込めている。
【0004】
また、特許文献2に開示された液圧制御装置は、ピストンポンプから洩れたブレーキ液(作動油)を、ポンプハウジングに形成した油路に通してバルブ格納用ケースに設けた液溜め室に取り込むようにしている。
【0005】
さらに、特許文献3の液圧アクチュエータは、アクチュエータボディの底面を、その底面に取り付けたポットプレートで閉鎖し、そのポットプレートに設けた窪みを液溜めにしてそこにピストンポンプから洩れたブレーキ液を溜め込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−52988号公報
【特許文献2】特開2009−114874号公報
【特許文献3】特開2004−338565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポンプから吐出される高圧オイルはその駆動時に高圧シール部を通って閉鎖空間のオイルシール室に微少に洩れる。ところが、特許文献1に開示されたポンプは、オイルシール室の容積が限られており、そのオイルシール室に取り込めるオイルの量に限界がある。
【0008】
これに対し特許文献2の液圧装置は、洩れた液が流入するカム室とは別箇所に第2の液溜め室と言える部屋を別途設けているので、特許文献1のポンプに比べると洩れた液の導入量を多くすることが可能である。しかしながら、この液圧装置は、上記液溜め室をバルブ格納用ケースに形成しているため、液溜め室の容積に限界があり、液溜め室の大きさや設置点の変更、カム室から液溜め室に至る連通路のレイアウト変更と言った設計変更に関する自由度も少ない。
【0009】
特許文献3の液圧アクチュエータも、液溜めをアクチュエータボディの底面を閉鎖したポットプレートに設けるため、特許文献2の液圧装置と同様の問題を有している。
【0010】
このほかに、特許文献1のポンプは、前記オイルシール室に空気を封入して洩れたオイルによってオイルシール室の圧力が高まることを緩和するようにしているが、それでも洩れたオイルが蓄積されるとオイルシール室が高圧になることを避けられない。そのために、低圧用シールの耐久性を維持するための工夫や対応も要求される。
【0011】
この発明は、液圧ポンプから洩れた液体を量の規制を受けずに取り込むことができ、その取り込みを行なうリザーバの仕様変更や設置点の変更、連通路のレイアウト変更と言った設計変更についても自由度を確保した液圧装置を実現すること課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明においては、ポンプ装置を以下のように構成する。すなわち、液圧ポンプを内蔵したポンプハウジングと、液体を大気圧状態で貯留する大気圧リザーバと、前記ポンプハウジングに挿通されるポンプ駆動用の回転軸と、前記液圧ポンプから洩れ出た液体を受け入れる前記ポンプハウジングの内部に配置された洩液流入室と、前記洩液流入室を前記大気圧リザーバに連通させる接続路を有し、
前記大気圧リザーバが前記ポンプハウジングとは別体に形成されて前記ポンプハウジングの外部に設けられ、さらに、前記接続路がパイプ又はホースで構成され、そのパイプ又はホースを介して、前記洩液流入室に通じた接続ポートと前記大気圧リザーバとが互いに接続されるものにした。
【0013】
このポンプ装置は、実用的な形態として以下に列挙するものが考えられる。
(1)液圧ブレーキ装置のマスタシリンダにブレーキ液を供給するマスタシリンダリザーバを前記大気圧リザーバとして併用し、前記接続路をマスタシリンダの吐出経路から独立した経路として前記ポンプハウジングと大気圧リザーバとの間に設けるもの。
(2)前記大気圧リザーバを前記ポンプハウジングの下方に配置し、前記洩液流入室に流入した液体を重力で前記大気圧リザーバに流入させるようにしたもの。
【0014】
上記(1)の形態のポンプ装置は、前記回転軸の外周に、前記洩液流入室と外部との間の連通空間を遮断する第1シール部材と、前記洩液流入室と前記液圧ポンプとの間の連通空間を遮断する第2シール部材がそれぞれ設けられ、前記第1シール部材と第2シール部材に挟まれて前記回転軸の外周に前記洩液流入室となるオイルシール室が配置されるポンプに好適に利用することができる。
【0015】
そのタイプのポンプ装置は、前記接続ポートの前記洩液流入室への接続が、前記回転軸と前記第1シール部材の接触部よりも上方でなされるようにしておくと好ましい。また、前記接続路の前記大気圧リザーバ(マスタシリンダリザーバ)に対する接続が前記大気圧リザーバに収容された液体の液面下でなされるようにしておくのも好ましい。
【0016】
一方、上記(2)の形態のポンプ装置は、定位置に固定されるブラケットを含ませてそのブラケットで前記大気圧リザーバを支持することができる。この場合のブラケットは、ポンプハウジング用の支持ブラケットを利用すると無駄がないが、専用のブラケットを使用しても構わないし、装置周辺の配管などに取り付けても構わない。車両に搭載するポンプ装置なら、車体の適当な部分に前記大気圧リザーバを固定することも可能である。
【0017】
また、前記大気圧リザーバをブラケットに設ける場合には、そのリザーバの液室をブラケット自体に形成することもできる。
【0018】
ポンプハウジングの下方に設ける大気圧リザーバは、流入した液体をポンプに還流させる機能を有していないものでよい。そのような大気圧リザーバについては、流入した液体を排出するドレンポートと、そのドレンポートを開閉するコック又は止栓(所謂盲栓)を設けておくと好ましい。
【0019】
なお、ポンプハウジングの下方に設ける大気圧リザーバは、ポンプハウジングに接続する接続路(パイプ又はホース)の路内空間の容積を所要量確保して当該リザーバの液室を、その路内空間で形成することも可能である。この形態のリザーバも、パイプやホースの内径を大きくしたり、そのパイプやホースを螺旋状に巻き重ねたりする手法で液室の容積を不足なく確保することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
この発明のポンプ装置は、ポンプハウジングの外部にそのポンプハウジングとは別体の大気圧リザーバを設け、ポンプハウジングと大気圧リザーバとの間をパイプ又はホースで接続してポンプハウジングの内部に設けられた洩液流入室をその大気圧リザーバに連通させたので、大気圧リザーバの仕様変更、設置点の変更、配管のレイアウト変更などの設計変更が自由に行なえる。
【0021】
また、大気圧リザーバの容積を自由に設定できるので、ポンプから洩れた液体の取り込み量の規制も取り払われ、取り込み量規制に起因した洩液流入室の昇圧、洩液流入室を外部から隔離するシールの耐久性低下などの不具合が生じない。
【0022】
なお、好ましい形態として挙げたポンプ装置の作用・効果は、後に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明のポンプ装置の第1形態を示す断面図
【図2】この発明のポンプ装置の第2形態を示す断面図
【図3】この発明のポンプ装置の第3形態を示す断面図
【図4】この発明のポンプ装置の第4形態を示す断面図
【図5】この発明のポンプ装置の第5形態を示す断面図
【図6】この発明のポンプ装置の第6形態を示す断面図
【図7】この発明のポンプ装置の第7形態を示す断面図
【図8】この発明のポンプ装置の第8形態を示す断面図
【図9】この発明のポンプ装置の第9形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面の図1〜図9に基づいて、この発明のポンプ装置の実施の形態を説明する。
図1は、車両用ブレーキ液圧制御装置に採用される歯車ポンプを内蔵したポンプ装置に、この発明を適用したものである。歯車ポンプは、歯数差のあるインナーロータとアウターロータを組み合わせたポンプロータ2aを有しており、両ロータの歯間に形成されたポンピングチャンバのロータ回転に伴う容積変化を利用して液体を吸入・吐出する。
【0025】
図中1は、ポンプハウジングであり、その内部に液圧ポンプ(図のそれは歯車ポンプ)2が内蔵されている。また、ポンプハウジング1には、モータ(図示せず)によって駆動される回転軸3が挿通され、その回転軸3が液圧ポンプ2のインナーロータに連結されてインナーロータを回転させる。例示した歯車ポンプは、インナーロータが回転駆動されるとそれと噛み合ったアウターロータが従動回転してポンプが作動する。
【0026】
図1のポンプ装置は、ポンプハウジング1の内部に洩液流入室4を有し(図のそれはオイルシール室と称されている)、その洩液流入室4は、回転軸3の外周に、洩液流入室4と外部との間の連通空間を遮断する第1シール部材5と、洩液流入室4と液圧ポンプ2との間の連通空間を遮断する第2シール部材6をそれぞれ設けてその第1、第2シール部材5,6で周囲から区画した部屋である。
【0027】
洩液流入室4と外部との間を連通させる空間及び洩液流入室4と液圧ポンプ2との間の連通させる空間は、いずれも回転軸3とポンプハウジングとの間に存在し、それらの空間を第1、第2シール部材5,6で封止することで、液圧ポンプ2からの液洩れ及び洩液流入室4から外部への液洩れを防止している。
【0028】
しかしながら、液圧ポンプ2から洩液流入室4への微量の液洩れは不可避であり、洩れた液が洩液流入室4に蓄積される。その蓄積が進行するといつかは洩液流入室4の取り込み能力を超えて洩液の取り込みができなくなる。
【0029】
その不具合を無くするために、図1のポンプ装置は、ポンプハウジング1に洩液流入室4に連通した接続ポート7を設け、その接続ポート7を、ポンプハウジング1の外部に設置される大気圧リザーバ8に接続路9を介して接続している。接続路9はパイプ、例えば鋼管などの金属管や硬質樹脂製の管又はホース(軟質樹脂やゴムからなる柔軟な管)から成る。
【0030】
図示の大気圧リザーバ8は、マスタシリンダ10にブレーキ液を供給するマスタシリンダリザーバである。このマスタシリンダリザーバは、車両用液圧ブレーキ装置に必須の要素として含められるものであり、それを利用することで、コストの上昇を抑えることができる。
【0031】
また、洩液流入室4を大気圧リザーバ8に連通させることでその洩液流入室4の洩液流入による昇圧がなくなる。そのために、第1シール部材5の圧力による疲労が起こらなくなり、第1シール部材5を耐圧仕様にする必要がなくなる。
【0032】
なお、接続路(パイプ又はホース)9の大気圧リザーバ8に対する接続は、リザーバに収容されたブレーキ液の液面下でなされるようにしておくのがよい。液面上での接続でも洩液流入室4から溢れたブレーキ液を大気圧リザーバ8に取り込むことができるが、液面下で接続したものは、洩液流入室4が常時ブレーキ液で満たされ、第1シール部材5の潤滑が安定してなされる。
【0033】
接続ポート7の洩液流入室4への接続は、回転軸3と第1シール部材5の接触部よりも上方でなされており、このことも、第1シール部材5の潤滑の安定化に寄与する。
【0034】
なお、この第1シール部材5の潤滑の安定化については、接続ポート7の上記接続が上記接触部の最下位置よりも上方でなされていればよく(その構造では、洩液流入室4に流入したブレーキ液の液面が上記接触部に至り易くなり、第1シール部材5と回転軸3との接触部の潤滑の安定化が図られる)、必ずしも上記接触部の最上位置よりも上方でなされなくてもよい。但し、接続ポート7の上記接続が上記接触部の最上位置よりも上方でなされる構造では、洩液流入室4に流入したブレーキ液の液面が上記接触部の最上位置に至り易くなるため当該接触部が全周に亘ってブレーキ液に浸され易くなり、その結果、第1シール部材5によるシール部の更なる潤滑の安定化が図られる。また、回転軸3と第2シール部材6との接触部に関しては、その両者の接触部が全周に亘ってブレーキ液に浸されれば、仮に液圧ポンプ2側が洩液流入室4側よりも低圧になったとしても、この接触部を介した洩液流入室4から液圧ポンプ2への空気の流入が完全に阻止される。
【0035】
図2は、車両用ブレーキ液圧制御装置に採用されるピストンポンプを内蔵したポンプ装置に、この発明を適用したものである。ポンプハウジング1に、ピストン2bを往復運動させてブレーキ液を吸入・圧縮して吐出する液圧ポンプ2が内蔵されている。
【0036】
ポンプハウジング1にはカム室11が形成され、そのカム室11に収納したカム12がポンプハウジング1に挿入した回転軸(図のそれはモータ13の出力軸)3によって回転駆動され、カム12に接したピストン2bが作動する。
【0037】
カム室11に挿入した回転軸3の外周は、環状シール部材14によってシールされ、その環状シール部材14によってモータ側から画されたカム室11の一部が洩液流入室4を構成している。ポンプハウジング1にはその洩液流入室4に連通する接続ポート7が設けられ、その接続ポート7に繋ぐ接続路9を介して洩液流入室4が、図1と同様、マスタシリンダリザーバを併用した大気圧リザーバ8に接続されている。この実施例の接続路9もパイプ又はホースで構成されている。
【0038】
ポンプから洩れたブレーキ液をマスタシリンダリザーバに取り込む図1、図2のポンプ装置は、ポンプの形式は異なるが、発明の要旨部分の構成が共通している。この形式のポンプ装置は、パイプやホースからなる接続路9を図のように、マスタシリンダ10の吐出経路15から独立した経路として設けることで、洩液流入室4の圧力を常時大気圧に保ち、配管のレイアウトの自由度も得ることができる。
【0039】
図3〜図9は、マスタシリンダリザーバとは別体の専用の大気圧リザーバ8を設けてそこにポンプから洩れた液体を取り込むものを示している。
【0040】
これらのポンプ装置は、いずれも大気圧リザーバ8をポンプハウジング1よりも下側に配置し、その大気圧リザーバ8とポンプハウジング1に設けた接続ポート7を、パイプ又はホースからなる接続路9で接続することで、洩液流入室4に流入した液体を重力で大気圧リザーバ8に流入させるものになっている。
【0041】
ポンプハウジング1に内蔵された液圧ポンプ2は、ピストンポンプを採用したもの(図3及び図5〜図9)、歯車ポンプを採用したもの(図4)を問わない。接続ポート7は、洩液流入室4の下部に連通させてポンプハウジング1の底面に開口させており、洩液流入室4に流入したブレーキ液はその接続ポート7を通って重力で流れ出し、パイプ又はホースで形成された接続路9を通って大気圧リザーバ8に流入する。
【0042】
これらの実施例で採用した大気圧リザーバ8は、単なる容器であり、流入したブレーキ液を押し出す機能は無い。
【0043】
図3及び図5〜図9のポンプ装置の洩液流入室4は、カム室11の一部で形成されており、この構成は図2の装置と変わるところがない。
【0044】
一方、図4のポンプ装置は、回転軸3の外周において第2シール部材6よりも反ポンプ側(ポンプから遠く離れた側)に設けられる第1シール部材5とポンプハウジング1の一面に固定した回転軸駆動用のモータ13との間に洩液流入室4を形成し、その洩液流入室4に流入したブレーキ液を接続路9に通して大気圧リザーバ8に導入するようにしている。
【0045】
この図4のポンプ装置は、回転軸3の外周をシールする第1シール部材5と第2シール部材6との間にブレーキ液を貯留したオイルシール室16を有する。図1のポンプ装置では、その部分を洩液流入室4としたが、図4のポンプ装置の場合、オイルシール室16の下端部を大気圧リザーバ8に直接繋ぐと、オイルシール室16内のブレーキ液が漏れ出して第1シール部材5の潤滑がなされない。
【0046】
そこで、オイルシール室16から区画された部屋を洩液流入室4とし、オイルシール室16から溢れ出すブレーキ液を、その洩液流入室4を経由して大気圧リザーバ8に流すようにしている。また、一端がオイルシール室16の最上部に開口し、他端が洩液流入室4に開口する連通孔23をポンプハウジング1に設けており、その連通孔23の設置によってオイルシール室16内のブレーキ液の貯留量を増やし、第1シール部材5の潤滑の安定化を図るようにしている。
【0047】
なお、上述した連通孔23は省略してもよい。この場合、オイルシール室16は密封されることになるが、オイルシール室16内のブレーキ液のうち第1シール部材5と回転軸3との接触部を介して洩液流入室4に洩れ出た液が接続路9を通して大気圧リザーバ8に導入される。このとき、第1シール部材5と回転軸3との接触部を介して洩液流入室4に洩れ出るブレーキ液は、第1シール部材5の潤滑に寄与する。
【0048】
図3〜図9のポンプ装置の大気圧リザーバ8は、ブラケットなどを使用して支持する。図5に示すように、車体17に支持されるハウジング用支持ブラケット18がポンプ装置に含まれ、そのブラケット18でポンプハウジング1を支持するものは、ハウジング用支持ブラケット18を兼用して大気圧リザーバ8もそのハウジング用支持ブラケット18で支持することができる。
【0049】
また、図6に示すように、車体17に支持される専用のリザーバ用支持ブラケット19を設けてそのブラケット19で大気圧リザーバ8を支持することもできる。ブラケットを使用すると車両への組み付け性がよくなるが、図7に示すように、車体17に大気圧リザーバ8を直接固定することもできるし、図9に示した剛体のブレーキ配管20が適当な位置にあればそのブレーキ配管20に固定することも可能である。
【0050】
また、図8に示すように、大気圧リザーバ8の液室8aをブラケット18に設けることもできる。図8のポンプ装置は、ブラケット18に凹部を形成し、その凹部の入口に蓋をして大気圧リザーバ8をブラケット18に一体に形成しており、部品の統合によるコスト低減が望める。なお、図6のブラケット19にも同様にして一体の大気圧リザーバを設けることができる。
【0051】
図3以降の実施例に採用した大気圧リザーバ8は、流入した液体を排出するドレンポート21と、そのドレンポート21を開閉するコック22あるいはそれに代わる止栓(盲栓)を設置しておくと好ましい。近年のブレーキ装置は、制御の多様化により、ポンプ装置が稼動する機会が増え、それに伴い、ポンプからのブレーキ液の漏れ量も増える傾向にある。ドレンポート21とコック22(あるいは止栓)を設けることで定期的に溜まったブレーキ液を簡単に抜き取ることが可能になり、メンテナンス性が向上する。
【0052】
なお、パイプやホースで構成される接続路9は、内径を太くしたり、パイプやホースを螺旋状に巻き重ねたりして路内空間の容積を十分に確保すれば、その路内空間で液室を形成して大気圧リザーバ8をパイプやホースのみで形成することも可能である。この構造は、より良いコスト低減の効果を期待できる。
【0053】
以上述べたように、この発明のポンプ装置は、ポンプハウジングの外部にポンプハウジングとは別体の大気圧リザーバを設け、ポンプハウジングと大気圧リザーバ間をパイプ又はホースで接続するので、大気圧リザーバの仕様変更、設置点の変更、配管のレイアウト変更などの設計変更が自由に行なえる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明のポンプ装置は、ABS(アンチロックブレーキシステム)、ESC(Electronic Stability Control)などの電子制御機能を備えた車両用ブレーキ液圧制御装置や液圧ブースタ、蓄圧器などの圧力発生源として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ポンプハウジング
2 液圧ポンプ
2a ポンプロータ
2b ピストン
3 回転軸
4 洩液流入室
5 第1シール部材
6 第2シール部材
7 接続ポート
8 大気圧リザーバ
8a 液室
9 パイプ又はホースからなる接続路
10 マスタシリンダ
11 カム室
12 カム
13 モータ
14 環状シール部材
15 マスタシリンダの吐出経路
16 オイルシール室
17 車体
18 ハウジング用支持ブラケット
19 リザーバ用支持ブラケット
20 ブレーキ配管
21 ドレンポート
22 コック
23 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧ポンプ(2)を内蔵したポンプハウジング(1)と、
液体を大気圧状態で貯留する大気圧リザーバ(8)と、
前記ポンプハウジング(1)に挿通されるポンプ駆動用の回転軸(3)と、
前記液圧ポンプ(2)から洩れた液体を受け入れる前記ポンプハウジング(1)の内部に設置された洩液流入室(4)と、
前記洩液流入室(4)を前記大気圧リザーバ(8)に連通させる接続路(9)を有し、
前記大気圧リザーバ(8)が前記ポンプハウジング(1)とは別体に形成されてポンプハウジング(1)の外部に設けられ、さらに、前記接続路(9)がパイプ又はホースで構成され、そのパイプ又はホースを介して、前記ポンプハウジング(1)に設ける前記洩液流入室(4)に通じた接続ポート(7)と前記大気圧リザーバ(8)とが互いに接続されたポンプ装置。
【請求項2】
液圧ブレーキ装置のマスタシリンダ(10)にブレーキ液を供給するマスタシリンダリザーバを前記大気圧リザーバ(8)として併用し、前記接続路(9)を前記マスタシリンダ(10)の吐出経路(15)から独立した経路として前記ポンプハウジング(1)と大気圧リザーバ(8)との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記回転軸(3)の外周に、前記洩液流入室(4)と外部との間の連通空間を遮断する第1シール部材(5)と、前記洩液流入室(4)と前記液圧ポンプ(2)との間の連通空間を遮断する第2シール部材(6)が設けられ、前記洩液流入室(4)が前記第1シール部材(5)と第2シール部材(6)に挟まれて前記回転軸(3)の外周に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記接続ポート(7)の前記洩液流入室(4)への接続が、前記回転軸(3)と前記第1シール部材(5)の接触部よりも上方でなされたことを特徴とする請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
パイプ又はホースで構成される前記接続路(9)の前記大気圧リザーバ(8)に対する接続が前記大気圧リザーバ(8)に収容された液体の液面下でなされたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記大気圧リザーバ(8)を前記ポンプハウジング(1)よりも下側に配置し、前記洩液流入室(4)に流入した液体を重力で前記大気圧リザーバ(8)に流入させるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項7】
定位置に固定されるブラケット(18又は19)が含まれ、そのブラケット(18又は19)に前記大気圧リザーバ(8)が支持されたことを特徴とする請求項6に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記大気圧リザーバ(8)の液室(8a)が前記ブラケット(18又は19)に形成されたことを特徴とする請求項7に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記大気圧リザーバ(8)に、流入した液体を排出するドレンポート(21)と、そのドレンポート(21)を開閉するコック(22)又は止栓が設けられたことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のポンプ装置。
【請求項10】
パイプ又はホースで構成される前記接続路(9)の路内容積を所要量確保し、前記大気圧リザーバ(8)の液室を、その路内空間で形成したことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63129(P2011−63129A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215756(P2009−215756)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】