説明

マイクロデバイスのパッケージング

【課題】アンチスティクション材料をマイクロデバイスに適用するための方法、ならびにアンチスティクション材料を適用されたマイクロメカニカルデバイスを提供すること。
【解決手段】マイクロデバイスにアンチスティクション材料を適用する方法であって、マイクロデバイスをチャンバ内に封じ込めることと、コンテナ内でアンチスティクション材料を蒸発させ、蒸発したアンチスティクション材料を形成することと、該チャンバと流体連通する入口を介することにより、該コンテナから該封じ込められたチャンバの中に、該蒸発したアンチスティクション材料を移送することと、該蒸発したアンチスティクション材料を該マイクロデバイスの表面上に堆積させることとを包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロデバイスのパッケージングに関する。
【背景技術】
【0002】
信頼性および生産性を保証することは、マイクロデバイス、例えば、集積回路およびマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)の製造に対する2つの主要な課題である。典型的に、マイクロデバイスを製造する際、複数のマイクロデバイスが半導体ウェハ上に製造される。その後、半導体ウェハは、1つ以上の個別のデバイスを含む個別のダイに分離される。マイクロデバイスの電気的および光学的な性能が、周辺環境における個別のデバイスに関する品質保証のために、しばしばテストされる。テスト目的のために、電気的および光学的な信号が、各マイクロデバイス内の回路に適切に入力される必要がある。マイクロデバイスから出力された電気的および光学的な信号は、マイクロデバイスの機能的性能を解析するために、適切に検出および測定される必要がある。マイクロデバイスは、マイクロデバイスのテストおよび出荷の間に、周辺環境における塵および汚染物質によって汚染されてはならない。マイクロデバイスのパッケージングを設計するときに、電気的および光学的な入力および出力、ならびに環境からデバイスを保護することの全てが、考慮されなければならない。したがって、所望の、かつ耐久性のあるデバイス性能を保証するために、マイクロデバイスのための改良されたパッケージングが必要とされる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(概要)
1つの一般的な局面において、本発明は、アンチスティクション材料(anti−stiction material)をマイクロデバイスに適用する方法に関する。上記方法は、マイクロデバイスをチャンバ内に封じ込めることと、コンテナ内でアンチスティクション材料を蒸発させ、蒸発したアンチスティクション材料を形成することと、蒸発したアンチスティクション材料をコンテナからチャンバに移送することと、蒸発したアンチスティクション材料をマイクロデバイスの表面上に堆積させることとを含んでいる。
【0004】
別の一般的な局面において、本発明は、マイクロメカニカルシステムに関し、上記マイクロメカニカルシステムは、入口を含んだチャンバであって、上記入口は、蒸発したアンチスティクション材料がチャンバの中に入ることを可能にする、チャンバと、チャンバ内に封じ込められたマイクロデバイスであって、上記マイクロデバイスは、第1のコンポーネントと、第1のコンポーネントに接触するように構成された第2の可動コンポーネントとを含んでいる、マイクロデバイスと、アンチスティクション材料であって、上記アンチスティクション材料は、第1のコンポーネントと第2の可動コンポーネントとの間のスティクションを防止するために、第1のコンポーネントの表面上および第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている、アンチスティクション材料とを含んでいる。
【0005】
システムの実装は、以下の1つ以上を含み得る。上記方法は、移送するステップの前に、チャンバの中身を排出することをさらに含んでいる。移送するステップは、蒸発したアンチスティクション材料をチャンバの中に拡散させることを含み得る。移送するステップは、コンテナの出口とチャンバの入口とを接続することにより、コンテナとチャンバとの間の流体連通を可能にすることを含み得る。移送するステップは、コンテナの出口におけるバルブを開くことを含み得る。上記方法は、移送するステップの後に、チャンバの入口を封止することをさらに含み得る。蒸発させるステップは、アンチスティクション材料を加熱することを含み得る。蒸発させるステップは、アンチスティクション材料を蒸発させることを含み得る。蒸発させるステップは、アンチスティクション材料を昇華させることを含み得る。マイクロデバイスは、第1のコンポーネントと、第1のコンポーネントに接触するように構成された第2の可動コンポーネントとを含み得る。上記方法は、第1のコンポーネントの表面上または第2の可動コンポーネントの表面上に蒸発したアンチスティクション材料を堆積させることにより、第1のコンポーネントと第2の可動コンポーネントとの間のスティクションを防止することをさらに含み得る。第2の可動コンポーネントは、傾斜するように構成されたマイクロミラープレートであり得る。チャンバは、可視光、UV光、またはIR光のうちの少なくとも1つを透過させる窓を含み得る。アンチスティクション材料は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)またはヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FDTS)を含み得る。
【0006】
実装はさらに、以下の利点のうちの1つ以上を含み得る。開示されているシステムおよび方法の潜在的な利点は、マイクロデバイスの製造プロセスの単純化であるという点。マイクロデバイスが半導体ウェハ上のマイクロチャンバ内に封じ込められた後に、複数のマイクロデバイスに(すなわち、インサイチュで)アンチスティクション材料が適用され得るという点。アンチスティクション材料は、コンテナ内で蒸発され得るという点。気相のアンチスティクション材料は、マイクロチャンバへの入口を介することにより、マイクロデバイスを含んでいるマイクロチャンバに移送され得るという点。マイクロデバイスの動作中に互いに接触し得るコンポーネントの間のスティクションを防止するために、マイクロデバイスの表面上に蒸発したアンチスティクション材料が堆積され得るという点。マイクロチャンバへの入口が、その後に封止され得るという点。対照的に、従来では、アンチスティクション材料は、マイクロデバイスの製造の間に、コンポーネントの表面上に堆積されていた。本発明において開示されているアンチスティクション材料のインサイチュでの適用は、デバイスの開発時間およびテスト時間を低減させ得る。
【0007】
さらに、マイクロデバイスを封じ込めているチャンバは、中身が排出され得、同じ真空環境内に蒸発した形態のアンチスティクション材料を受容し得、全てが同じ真空環境内で封止され得る。チャンバの入り口においてバルブは一切必要とされない。このこともまた、封じ込めチャンバの設計および製造を単純化する。
【0008】
開示されているシステムおよび方法の別の潜在的な利点は、アンチスティクション材料は、チャンバから分離されたコンテナ内で加熱および蒸発され得るという点である。したがって、マイクロデバイスおよびチャンバ内の関連する制御回路、ならびにチャンバに対する封止部材は、加熱プロセスによって影響を受け得ない。
【0009】
開示されているシステムおよび方法の別の潜在的な利点は、マイクロデバイス内に隠されている接触エリアにアンチスティクション材料が適用され得るという点である。例えば、傾斜可能なミラープレートと基板上の着地チップとの間の接触表面は、ミラープレートの下に隠され得る。接触表面は、しばしばデバイス製造の最終段階に形成される。開示された方法およびシステムは、マイクロデバイスのその他のコンポーネントによって隠されている接触表面上にアンチスティクション材料を等方的に堆積させる方法を提供し得る。
【0010】
本明細書に記載されているシステムおよび方法のなおもさらなる潜在的な利点は、マイクロミラーの表面に粒子が付着することを防止する点である。粒子がミラー上に着地することを防止することが防止されるときに、製造の生産性が、増大され得る。
【0011】
本発明は、複数の実施形態に関連して、特に示され、記載されているが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸れることなしに、形態および詳細に関する様々な変更が、本明細書になされ得ることを理解し得る。
【0012】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
【0013】
(項目1)
マイクロデバイスにアンチスティクション材料を適用する方法であって、
マイクロデバイスをチャンバ内に封じ込めることと、
コンテナ内でアンチスティクション材料を蒸発させ、蒸発したアンチスティクション材料を形成することと、
該チャンバと流体連通する入口を介することにより、該コンテナから該封じ込められたチャンバの中に、該蒸発したアンチスティクション材料を移送することと、
該蒸発したアンチスティクション材料を該マイクロデバイスの表面上に堆積させることと
を包含する、方法。
【0014】
(項目2)
上記移送するステップの前に、上記チャンバの中身を排出すること
をさらに包含する、項目1に記載の方法。
【0015】
(項目3)
上記移送するステップは、上記コンテナの出口と上記チャンバの入口とを接続することにより、該コンテナと該チャンバとの間の流体連通を可能にすることを包含している、項目1に記載の方法。
【0016】
(項目4)
上記移送するステップは、上記コンテナの上記出口におけるバルブを開くことを包含している、項目3に記載の方法。
【0017】
(項目5)
上記移送するステップの後に、上記チャンバの上記入口を封止すること
をさらに包含する、項目3に記載の方法。
【0018】
(項目6)
上記蒸発させるステップは、上記アンチスティクション材料を加熱することを包含している、項目1に記載の方法。
【0019】
(項目7)
上記蒸発させるステップは、上記アンチスティクション材料を蒸発させることを包含している、項目6に記載の方法。
【0020】
(項目8)
上記蒸発させるステップは、上記アンチスティクション材料を昇華させることを包含している、項目6に記載の方法。
【0021】
(項目9)
上記マイクロデバイスは、第1のコンポーネントと、該第1のコンポーネントに接触するように構成された第2の可動コンポーネントとを含んでおり、
上記方法は、該第1のコンポーネントの表面上または該第2の可動コンポーネントの表面上に上記蒸発したアンチスティクション材料を堆積させることにより、該第1のコンポーネントと該第2の可動コンポーネントとの間のスティクションを防止することをさらに包含している、項目1に記載の方法。
【0022】
(項目10)
上記第2の可動コンポーネントは、傾斜するように構成されたマイクロミラープレートである、項目9に記載の方法。
【0023】
(項目11)
上記アンチスティクション材料は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)またはヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FDTS)を含んでいる、項目1に記載の方法。
【0024】
(項目12)
入口を含んだチャンバであって、該入口は、蒸発したアンチスティクション材料が該チャンバの中に入ることを可能にする、チャンバと、
該チャンバ内に封じ込められたマイクロデバイスであって、該マイクロデバイスは、第1のコンポーネントと、該第1のコンポーネントに接触するように構成された第2の可動コンポーネントとを含んでいる、マイクロデバイスと、
アンチスティクション材料であって、該アンチスティクション材料は、該第1のコンポーネントと該第2の可動コンポーネントとの間のスティクションを防止するために、該第1のコンポーネントの表面上または該第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている、アンチスティクション材料と
を備えている、マイクロメカニカルシステム。
【0025】
(項目13)
上記アンチスティクション材料は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)またはヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FDTS)を含んでいる、項目12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0026】
(項目14)
上記第1のコンポーネントの表面上または上記第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている上記アンチスティクション材料は、0.3ナノメートルよりも厚い、項目12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0027】
(項目15)
上記第1のコンポーネントの表面上または上記第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている上記アンチスティクション材料は、1.0ナノメートルよりも厚い、項目14に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0028】
(項目16)
上記チャンバは、少なくとも部分的に中身が排出されている、項目12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0029】
(項目17)
上記チャンバの上記入口は、封止されている、項目16に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0030】
(項目18)
上記第2の可動コンポーネントは、外部からの信号に応答して、上記第1のコンポーネントに接触するように動くように構成されている、項目12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0031】
(項目19)
上記第2の可動コンポーネントは、外部からの信号に応答して傾斜するように構成されたマイクロミラープレートである、項目12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0032】
(項目20)
上記チャンバは、可視光、UV光、またはIR光のうちの少なくとも1つを透過させる窓を含んでいる、項目12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【0033】
(摘要)
アンチスティクション材料をマイクロデバイスに適用するための方法は、マイクロデバイスをチャンバ内に封じ込めることと、コンテナ内のアンチスティクション材料を蒸発させて蒸発したアンチスティクション材料を形成することと、蒸発したアンチスティクション材料をコンテナからチャンバへと移送することと、蒸発したアンチスティクション材料をマイクロデバイスの表面上に堆積させることとを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(詳細な説明)
図1および図2を参照すると、マイクロデバイス200が、基板210上に形成されている(ステップ210)。基板210は、半導体ウェハであり得、上記半導体ウェハは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)層のアドレッシング回路および制御回路を含んでいる。マイクロデバイス200は、マイクロ構造を含み得、上記マイクロ構造は、入力信号に応答して、機械的運動を生成したり、あるいは電磁気的信号、音響的信号、または光学的信号を生成したりし得る。マイクロデバイスは、マイクロメカニカルエレクトリカルシステム(MEMS)、例えば、傾斜可能なミラー、集積回路、マイクロセンサ、マイクロアクチュエータ、および発光素子のアレイを含み得る。複数のマイクロデバイス200が、基板210上に形成され得る。
【0035】
MEMSマイクロデバイスの一実施形態において、マイクロデバイス200は、ヒンジコンポーネント206の回りで傾斜可能なミラープレート202を含んでいる。ヒンジコンポーネント206は、支柱205によって支持されており、上記支柱は、基板210に接続されている。ミラープレート202は、ヒンジ層203c、スペーサ層203b、および反射性の層203aを含み得る。反射性の層は、方向230の入射光線を方向240に反射し得る。一対の電極221aおよび221bが、基板210上のヒンジ支持フレーム208上に形成され得る。ミラープレート202の傾斜運動を停止し、ミラープレート202の正確な傾斜角を規定するために、一対の機械的停止部222aおよび222bもまた、基板210上に形成され得る。ヒンジ層203cは、導電性の材料から構成され得る。ヒンジ層203cと機械的停止部222aおよび222bとは、共通の電極233によって電気的に接続され得る。電極221aおよび221bは、電極231および232に別々に接続され得る。基板210は、電極231〜233に接続された電気回路を含み得る。
【0036】
ヒンジ層203cと電極221aまたは221bとの間の電位差を生成するために、電極231〜233に電気的信号が加えられ得る。適切に設計された電圧信号は、マイクロミラープレート202のアレイを無傾斜方向(これは、通常は基板210の上表面に平行である)から傾斜させ得る静電気的トルクを生成し得る。ミラープレート202のアレイの傾斜は、ヒンジコンポーネント206に接続されたヒンジ(図示されず)における歪みと、歪みに関連した弾性復元力とを生成する。弾性復元力は、傾斜されたミラープレート202を無傾斜位置に引き戻す。静電気的トルクは、弾性復元力を克服し、ミラープレート202を傾斜させることにより、機械的停止部222aおよび222bのうちの1つに接触させる。機械的停止部222aまたは222bと接触するときに、ミラープレート202の位置は、ミラープレートの「オン」位置または「オフ」位置を決定し得、反射された光の方向240を決定する。オプションとして、基板210上に形成されたマイクロデバイス200は、マイクロデバイス200に外部からの信号を印加し、マイクロデバイス200の機械的運動を測定することによって、あるいはマイクロデバイス200によって生成された出力信号を測定することによって、テストされる。
【0037】
その後、マイクロデバイス200は、封じ込めカバーを基板210に結合することによって、封じ込められ得る(ステップ120)。本明細書に記載されているような封じ込めは、単にデバイスをカバーするだけではなく、例えば複数の層を互いに接着するか、あるいは(切断または破断されない限り、デバイスを囲い込んでいるその他の層または部分から封じ込めが引き離され得ないような方法で)複数の層が接続されるようにすることにより、1つ以上の層の内部にマイクロデバイスを永続的に囲い込むことを言う。以下で記載されるように、封じ込めは、マイクロデバイスのパッケージングプロセスにおいて封じ込めの内部と外部との間の流体連通を可能にする入口を含み得る。入口は、封じ込めの際にマイクロデバイスを完全に囲い込むように封止され得る。その後、マイクロデバイス200および封じ込めカバーは、個別のダイ300にダイシングおよび切断され得、各ダイは、チャンバ260内に1つ以上のマイクロデバイス200を含んでいる(ステップ130)。マイクロデバイスの封じ込めおよびダイシングに関する詳細は、2006年4月24日に出願され、「Micro device encapsulation」と題された、米国特許出願第11/379,932号に開示されており、上記米国特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0038】
マイクロデバイスに対する共通の問題は、動作の間に互いに接触するコンポーネントの間のスティクションである。例えば、ミラープレート202は、「オン」位置(マイクロミラープレートは、入射光を表示デバイスに配向する)および「オフ」位置(マイクロミラープレートは、入射光を表示デバイスから離れるように配向する)に傾斜し得る。ミラープレート202は、機械的停止部222aおよび222bによって、「オン」位置または「オフ」位置に停止され、これら2つの位置の間でミラープレート202の傾斜角を正確に規定し得る。「オン」位置または「オフ」位置に停止されたミラープレート202は、ミラープレート202と機械的停止部222aおよび222bとの間のスティクションを克服することが可能でなければならない。ミラープレート202の応答における遅延は、マイクロミラー202の適切な動作に影響を与え得る。
【0039】
図3および図4を参照すると、各ダイ300は、チャンバ260内に封じ込められた1つ以上のマイクロデバイス200を含んでいる。チャンバ260は、カバー310およびスペーサ壁320によって規定されている。カバー310は、光学的信号がカバー310を介してマイクロデバイス200に送信されること、あるいは光学的信号がカバー310を介してマイクロデバイス200から受信されることを可能にするように、可視光、UV光、またはIR光を透過させ得る。1つ以上の電気的接触340が、チャンバ260の外側の基板210上に形成され得る。電気的接触340は、マイクロデバイス200に電気的信号を送信するために、あるいはマイクロデバイス200から電気的信号を受信するために提供されている。入口350は、チャンバ260と流体連通しており、一部の実施形態では、チャンバに対して直接的に隣接している。オプションとして、ダイ300は、チャンバ260内の空気またはガスを排出するために、真空環境に配置される(ステップ140)。デバイスは、チャンバ260の中身が排出された後に、例えばドライクリーンプロセスにより、掃除され得る(ステップ150)。
【0040】
チャンバ260への入口350は、コンテナ360の出口365と連通するように構成されている。コンテナ360の出口365は、バルブ370によって開かれたり、あるいは閉じられたりし得る。コンテナ360は、アンチスティクション材料を含んでいる。開示されているシステムおよび方法に適合するアンチスティクション材料の例は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)またはヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FDTS)を含み得る。
【0041】
アンチスティクション材料が蒸気ではない形態の場合、アンチスティクション材料は、バルブ370が閉位置にある間、熱源380によって加熱される。蒸発したアンチスティクション材料は、コンテナ360内に存在する(ステップ160)。加熱する前に、アンチスティクション材料は、固体状態、液体状態、または融解した重合体であり得る。このように、蒸発プロセスは、アンチスティクション材料の蒸発または昇華を含み得る。その後、コンテナ360の出口365は、チャンバ260の入口350に結合されるような方向355に動かされ、これにより、チャンバ260とコンテナ360との間の流体連通を可能にする。
【0042】
蒸発したアンチスティクション材料は、コンテナ360からチャンバ260に移送される(ステップ170)。例えば、蒸発したアンチスティクション材料は、コンテナ360からチャンバ260に拡散され得る。このことは、チャンバ260内の低圧力のガス抜きされた環境と比べて高いコンテナ260内の蒸気濃度によって引き起こされ得る。蒸発したアンチスティクション材料は、冷却され、マイクロデバイス200の表面に堆積する。例えば、図6に示されているように、アンチスティクション材料250は、ヒンジ層203cの下表面上に堆積され得る。アンチスティクション材料251aおよび251bは、それぞれ機械的停止部222aおよび222bの上表面上に堆積され得る。ミラープレート202と機械的停止部222aおよび222bとの接触表面上にコートされた、アンチスティクション材料250、251a、および251bは、ミラープレート202が接触表面におけるスティクションを克服することの役に立ち得、ミラープレート202によるタイミングの良い傾斜応答を保証する。アンチスティクション材料はまた、反射性の層203aの表面上に堆積され得る。一部の実施形態において、堆積は、アンチスティクション材料の層の厚さが光(可視光、UV光、またはIR光)の波長よりも遥かに短く維持されるように制御され得る。例えば、反射性の層203a上に堆積されたアンチスティクション材料の層の厚さは、1〜50ナノメートル(すなわち、1個または数個の単層)に制御され得る。層の厚さは、例えば、コンテナ360が蒸気の移送の間に加熱され、バルブ370が開かれる時間および温度によって、制御され得る。
【0043】
開示されたプロセスの利点は、アンチスティクション材料の蒸発がマイクロデバイスの加熱を必要としないという点である。したがって、マイクロデバイス、(CMOS)基板上の電気回路、ならびにチャンバ260の封じ込め封止部材は、加熱プロセスによって影響を受けない。
【0044】
開示されたプロセスの別の利点は、マイクロデバイスが完全に形成された後に、接触エリア(これは、マイクロデバイス内に隠されている)に、アンチスティクション材料が適用され得るという点である。アンチスティクション材料を適用するための開示されている方法は、マイクロデバイスの製造において、追加的なステップを必要としない。例えば、ヒンジ層203cの下表面ならびに機械的停止部222aおよび222bの上表面は、ミラープレート202の下に隠されているので、アンチスティクション材料がミラープレート202の上から適用される場合は、容易にアクセスすることができない。したがって、ミラープレート202の上からアンチスティクション材料を適用することは、困難であり得る。開示された方法を用いると、蒸発したアンチスティクション材料は、マイクロデバイスのその他のコンポーネントによって隠されている接触表面上に等方的に堆積され得る。
【0045】
その後、入口350は、封止される(ステップ180)。一部の実施形態において、入口350は、エポキシの封止部材を用いて封止され得る。堆積されたアンチスティクション材料を有するマイクロデバイス200は、電気的接触340に電気的信号を印加するか電気的接触340から電気的信号を受信することにより、あるいは透明なカバー310を介した光通信を用いることにより、チャンバ260内の封じ込められた環境においてさらにテストされ得る(ステップ190)。開示されているシステムおよび方法に関する利点は、アンチスティクション材料の適用ならびにその後の入口350の封止のために、チャンバ260が同じ真空環境に留まり続け得るという点である。
【0046】
一部の実施形態において、図5に示されているように、コンテナ360は、複数のダイ300、300a、および300b上の複数のチャンバ260、260a、260bに接続され得る。各ダイ300、300a、および300bは、チャンバ260、260a、および260bの外部からの電気的通信のために、電気的接触340、340a、および340bを含み得る。コンテナ360は、導管390を含んでおり、上記導管は、複数の出口365、365a、および365bに多重化され得る。出口365、365a、および365bは、チャンバ260、260a、および260bにおける入口350、350a、および350bに接続され得、チャンバ260、260a、および260bとコンテナ360との間の流体連通を可能にする。その後、コンテナ360において生成された蒸発したアンチスティクション材料は、複数のチャンバ260、260a、および260bに同時に移送され得る。
【0047】
一部の実施形態において、蒸発したアンチスティクション材料の移送は、複数のチャンバ(各チャンバは、1つ以上のマイクロデバイスを含んでいる)を含む単一の基板上で行われる。複数の出口365、365a、および365bは、共通の基板上の複数のチャンバの入口に合わせて整列され、共通の基板上の複数のチャンバの入口に係合され得る。蒸発したアンチスティクション材料は、チャンバならびにそれぞれの封じ込められたマイクロデバイスに移送され得る。その後、チャンバは、封止され、個別のダイ(各ダイは、1つ以上の封じ込められたマイクロデバイスを含んでいる)に切断され得る。本明細書に記載されているプロセスは、ダイレベルまたはウェハレベルのいずれかにおいて、アンチスティクション材料を適用することを可能にする。開示されたシステムおよび方法は、様々なアンチスティクション材料に適合することに留意されたい。開示されたシステムおよび方法はまた、デバイス封じ込めチャンバ、ならびに蒸発したアンチスティクション材料を保持するためのコンテナの異なる構成にも適合する。マイクロデバイスは、概して、マイクロメカニカルエレクトリカルデバイス(MEMS)、例えば、傾斜可能なミラー、集積回路、マイクロセンサ、マイクロアクチュエータ、および発光素子を含み得る。
【0048】
一部の実施形態において、図7および図8を参照すると、複数のチャンバ260a〜260fが、ウェハ700上に形成されている。各チャンバ260a〜260fは、スペーサ壁320a〜320fと、マイクロデバイス200a〜200fを封じ込めているカバー310a〜310fとを含んでいる。各チャンバ260a〜260fはまた、入口350a〜350fをも含み得る。各マイクロデバイス200a〜200fは、電気的接触340a〜340fに接続されており、上記電気的接触は、チャンバ260a〜260fの外部からの電気的通信を提供する。チャンバ260a〜260fは、複数のスペーサ壁を有しているカバーを、ウェハ700に結合させることによって形成され得る。その後、カバーは、ウェハ700上のエリア710および電気的接触340a〜340fを露出させるために、選択的に切断され得る。
【0049】
ウェハ700は、チャンバ260a〜260fを含んでおり、それぞれの封じ込められたマイクロデバイス260a〜260fは、アンチスティクション材料をマイクロデバイス200a〜200fに移送するために、チャンバ800内に配置され得る。一部の実施形態において、ウェハは、温度が制御された基板810上に配置される。チャンバ800における出口820は、真空ポンプに接続され得、上記真空ポンプは、バルブ825が開かれているときに、チャンバ800から空気または流体を排出する。バルブ825が閉じられているときに、チャンバ800内における真空状態は維持され得る。蒸発したアンチスティクション材料は、コンテナ360において生成される。バルブ370が開かれているときに、蒸発したアンチスティクション材料は、コンテナ360からチャンバ800に移送され得る。その後、蒸発したアンチスティクション材料は、入口350a〜350fを介し、個別のチャンバ260a〜260fの中に移送され、マイクロデバイス200a〜200fの表面上に堆積される。アンチスティクション材料の移送が終了した後、入口350a〜350fは、エポキシ(これは、例えばディスペンサーによって、入口350a〜350fに適用され得る)によって、真空に封止され得る。
【0050】
本明細書に記載された方法およびシステムは、MEMSデバイスの製造に関する利点を提供し得る。製造の間に、粒子(例えば、塵または空気からのその他のゴミ)がMEMSデバイスに着地するというリスクが典型的に存在する。MEMSデバイスの表面上(特に、マイクロミラーの表面上)の約1ミクロン以上の粒子は、デバイスが使用不能になる程度にまでも、デバイスの機能性を低減させ得る。MEMSデバイスの表面上に粒子が着地する可能性を低減させることは、よりきれいなデバイスを形成し得る。したがって、本明細書に記載された方法およびシステムを用いると、製造の生産性が増大され得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図面は、詳細な説明と共に、本明細書に記載されている原理、デバイス、および方法を説明する役目を担っている。
【図1】図1は、マイクロデバイスにアンチスティクション材料をパッケージングおよび適用するためのフローチャートである。
【図2】図2は、例示的なマイクロデバイスの断面図である。
【図3】図3は、封じ込められたマイクロデバイスへの気相のアンチスティクション材料の移送を示している。
【図4】図4は、図3の直線A−Aに沿った封じ込められたマイクロデバイスの断面図である。
【図5】図5は、いくつかの封じ込められたマイクロデバイスへの気相のアンチスティクション材料の移送を示している。
【図6】図6は、マイクロデバイスがアンチスティクション材料を受容した後のマイクロデバイスの断面図である。
【図7】図7は、複数の封じ込められたマイクロデバイスを有するウェハを示している。
【図8】図8は、複数の封じ込められたマイクロデバイスにアンチスティクション材料を移送するためのシステムを示している。
【符号の説明】
【0052】
200 マイクロデバイス
202 ミラープレート
230、240 方向
203a 反射性の層
203b スペーサ層
203c ヒンジ層
205 支柱
206 ヒンジコンポーネント
208 ヒンジ支持フレーム
210 基板
221a、221b 電極
222a、222b 機械的停止部
231、232、233 電極
260 チャンバ
300 ダイ
320 スペーサ壁
340 電気的接触
350 入口
355 方向
360 コンテナ
365 出口
370 バルブ
380 熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロデバイスにアンチスティクション材料を適用する方法であって、
マイクロデバイスをチャンバ内に封じ込めることと、
コンテナ内でアンチスティクション材料を蒸発させ、蒸発したアンチスティクション材料を形成することと、
該チャンバと流体連通する入口を介することにより、該コンテナから該封じ込められたチャンバの中に、該蒸発したアンチスティクション材料を移送することと、
該蒸発したアンチスティクション材料を該マイクロデバイスの表面上に堆積させることと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記移送するステップの前に、前記チャンバの中身を排出すること
をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移送するステップは、前記コンテナの出口と前記チャンバの入口とを接続することにより、該コンテナと該チャンバとの間の流体連通を可能にすることを包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記移送するステップは、前記コンテナの前記出口におけるバルブを開くことを包含している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記移送するステップの後に、前記チャンバの前記入口を封止すること
をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸発させるステップは、前記アンチスティクション材料を加熱することを包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸発させるステップは、前記アンチスティクション材料を蒸発させることを包含している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸発させるステップは、前記アンチスティクション材料を昇華させることを包含している、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロデバイスは、第1のコンポーネントと、該第1のコンポーネントに接触するように構成された第2の可動コンポーネントとを含んでおり、
前記方法は、該第1のコンポーネントの表面上または該第2の可動コンポーネントの表面上に前記蒸発したアンチスティクション材料を堆積させることにより、該第1のコンポーネントと該第2の可動コンポーネントとの間のスティクションを防止することをさらに包含している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の可動コンポーネントは、傾斜するように構成されたマイクロミラープレートである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アンチスティクション材料は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)またはヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FDTS)を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
入口を含んだチャンバであって、該入口は、蒸発したアンチスティクション材料が該チャンバの中に入ることを可能にする、チャンバと、
該チャンバ内に封じ込められたマイクロデバイスであって、該マイクロデバイスは、第1のコンポーネントと、該第1のコンポーネントに接触するように構成された第2の可動コンポーネントとを含んでいる、マイクロデバイスと、
アンチスティクション材料であって、該アンチスティクション材料は、該第1のコンポーネントと該第2の可動コンポーネントとの間のスティクションを防止するために、該第1のコンポーネントの表面上または該第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている、アンチスティクション材料と
を備えている、マイクロメカニカルシステム。
【請求項13】
前記アンチスティクション材料は、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FOTS)またはヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリクロロシラン(FDTS)を含んでいる、請求項12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項14】
前記第1のコンポーネントの表面上または前記第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている前記アンチスティクション材料は、0.3ナノメートルよりも厚い、請求項12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項15】
前記第1のコンポーネントの表面上または前記第2の可動コンポーネントの表面上にコートされている前記アンチスティクション材料は、1.0ナノメートルよりも厚い、請求項14に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項16】
前記チャンバは、少なくとも部分的に中身が排出されている、請求項12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項17】
前記チャンバの前記入口は、封止されている、請求項16に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項18】
前記第2の可動コンポーネントは、外部からの信号に応答して、前記第1のコンポーネントに接触するように動くように構成されている、請求項12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項19】
前記第2の可動コンポーネントは、外部からの信号に応答して傾斜するように構成されたマイクロミラープレートである、請求項12に記載のマイクロメカニカルシステム。
【請求項20】
前記チャンバは、可視光、UV光、またはIR光のうちの少なくとも1つを透過させる窓を含んでいる、請求項12に記載のマイクロメカニカルシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−126402(P2008−126402A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296008(P2007−296008)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(506141557)スペイシャル フォトニックス, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】