説明

マイクロ波用途におけるLTCCテープ用厚膜導体ペースト組成物

【課題】所望の厚膜導体特性が保持されており、同時に、ワイヤーボンディング性能を満足させるために厚膜を基板上に1回塗布すればよい、無鉛・無カドミウム導体を提供すること。
【解決手段】本発明は、導電性金粉末、1種または複数のガラスフリットまたはセラミック酸化物組成物、および有機ベヒクルを含む厚膜導体組成物に関する。本発明は、LTCC(低温共焼成セラミック)テープに使用される組成物であり、かつ多層電子回路の製作のための組成物と、高周波マイクロエレクトロニクス用途に使用される組成物をさらに対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LTCC(低温共焼成セラミック)テープに用いられ、かつ、多層電子回路の製作に用いられる厚膜導体組成物に関するものである。本発明は、さらに、高周波マイクロエレクトロニクス用途に使用される組成物を対象とするものである。
【背景技術】
【0002】
LTCC設計の相互接続回路基板は、電気的・機械的に相互接続された多くのきわめて小さい回路素子からなる電子回路またはサブシステムを物理的に実現したものである。多くの場合、これらの多様な電子部品は、これを1つの高密度パッケージに物理的に分離しかつ隣接して実装することができ、かつ相互におよび/またはこのパッケージから延在する共通結線に電気的に接続することができるような配置で結合することが望ましい。
【0003】
一般に、複雑な電子回路は、絶縁誘電体層で分離された数層の導体で回路を構成することが必要である。導電層は、誘電体層を貫通するビアと呼ばれる導電経路によって各層間が相互接続されている。低温共焼成セラミック(LTCC)多層構造を使用する場合には、垂直な集積化を可能にしたことにより、従来のアルミナ基板より回路を高密度化することができる。
【0004】
LTCCテープは、その多層、共焼成および柔軟設計能力により、電気通信、自動車またはレーダーを含めた軍事用途などの従来技術の中で高周波数マイクロ波用途に用いられてきた。マイクロ波用の多層回路の製造に用いられる導体には、所望の抵抗率、はんだ付け特性、耐はんだ浸出性、ワイヤーボンディング性、接着性、移行抵抗性、および長期安定性を含めて、多くの特性が要求される。さらに、製造業では、現在、環境上の懸念に対処するために、鉛およびカドミウムの含有量をできるだけ減らした、高周波マイクロ波用の厚膜導体組成物を求めている。
【0005】
Baileyの特許文献1には、金薄膜の値に相当する非常に低いマイクロ波挿入損失を示す、LTCCと適合性がある厚膜メタライゼーションが開示されている。このメタライゼーションの電気的性能は、厚膜ペーストに球形金属粒子および均一粒度分布を用いることにより実現される。無鉛・無カドミウム厚膜導体の使用はそこには開示されていない。
【0006】
さらに、高周波用途において使用されるいくつかの先行技術厚膜導体組成物には、この系の所望の特性を満足させるために、特に十分なワイヤーボンドアクセプタンスおよび接着特性を満足させるために、「ダブルプリント」(即ち、導体組成物を基板上に2回以上塗布すること)が必要であることが知られている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,744,232号明細書
【特許文献2】米国特許第4,654,095号明細書
【特許文献3】米国特許第5,254,191号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鉛とカドミウムを最少化または除去しながら所望の厚膜導体特性を保持することは特に困難である。本発明者等は、所望の厚膜導体特性が保持されており、同時に、ワイヤーボンディング性能を満足させるために厚膜を基板上に1回塗布すればよい、無鉛・無カドミウム導体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)導電性金粉末と、(b)1種または複数のガラスフリットまたはセラミック酸化物組成物であって、前記ガラスフリットおよび酸化物は鉛またはカドミウムを含有していない組成物と、(c)有機ベヒクルとを含む厚膜組成物を対象とする。
【0010】
本発明は、さらに、多層回路を形成する方法であって、(a)グリーンテープの複数の層にビアのパターン化アレイを形成するステップと、(b)ステップ(a)の1つまたは複数のグリーンテープ層のビアに厚膜組成物を充填するステップと、(c)それだけに限らないが、本発明の使用を含めて、ステップ(b)のビア充填グリーンテープ層の表面上に、任意のいくつかの厚膜機能性組成物を印刷するステップと、(d)ステップ(c)のグリーンテープの最も外側の表面上に、それだけに限らないが、本発明を含めて、任意の厚膜組成物の少なくとも1つのパターン化層を印刷するステップと、(e)ステップ(d)の印刷グリーンテープ層および必要と思われる任意のブランク層を積層して、未焼成グリーンテープで分離された複数の未焼成機能性層および非機能性層を含む集合体を形成するステップと、(f)ステップ(e)の集合体を共焼成するステップとを含む方法を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の1種または複数の組成物および1種または複数の多層回路はマイクロ波用途において特に有用である。「マイクロ波用途」は、本明細書においては300MHzから300GHz(3×10から3×1011Hz)の範囲の周波数を必要とする用途として定義される。さらに、本発明は、送受信モジュールやレーダー用途などの高周波用途で有用である。さらに、本発明の1種または複数の組成物は、それだけに限らないが、アンテナ、フィルター、バルン、ビームフォーマー、I/O、結合器、フィードスルー(ビアまたはEM結合)、ワイヤボンド接続、および伝送路を含めたマイクロ波回路部品の形成において有用である。
【0012】
本発明の1種または複数の厚膜導体組成物の主成分は、導電性金属粉末、ならびに、(1)ガラスフリット、(2)遷移金属酸化物、(3)遷移金属酸化物の前駆体、および(4)これらの混合物から選択される1種または複数の無機バインダーであり、これらが有機媒体に分散されている。これらの成分は以下に論じる。
【0013】
I.無機成分
本発明の無機成分は、(1)導電性金属粉末、ならびに(2)1種または複数のガラスフリット、遷移金属酸化物、遷移金属酸化物の前駆体、およびこれらの混合物から選択される無機バインダーを包含する。特定用途での所望の特性を満足させるために、必要に応じてその他の任意選択の無機相をこの組成物に添加することができる。
【0014】
A.電気的機能性粉末−導電性金粉末
一般に、厚膜組成物は、適切な電気的機能特性をこの組成物に付与する機能性相を含む。この機能性相は、この組成物を形成する機能性相の坦体としての役割を果たす有機媒体に分散した電気的機能性粉末を含む。この組成物を焼成して、有機相をバーンアウトさせ、無機バインダー相を活性化させ、電気的機能特性を付与する。焼成前に、印刷部分を乾燥して揮発性溶媒を除去する。「有機物」、「有機媒体」または「有機ベヒクル」は、厚膜組成物のポリマーまたは樹脂成分、ならびに溶媒および界面活性剤など少量のその他の有機成分を記述するために用いられる用語である。
【0015】
本発明の厚膜組成物の電気的機能性粉末は、1種または複数の導電性の金粉末である。電気的機能性粉末としては、元素の金、金と少量のその他の金属粉末(例えば、全厚膜組成物の3重量パーセントまでの銀)との混合物、ならびに金粉末、合金、またはいくつかの元素の化合物の混合物を挙げることができる。本発明の金粉末は、全厚膜組成物の50〜95重量パーセント存在する。
【0016】
金属粉末の径および形状は、その適用方法に対して適切であれば特に重要ではない。本発明の導電性金粉末は、典型的なD50の大きさが約10ミクロン未満である。
【0017】
上記のように、導体用途の所望の特性を満足させるために、金粉末以外の金属を厚膜組成物に加えることができる。例えば、一実施形態においては、全厚膜組成物に対して2重量パーセント未満の銀(Ag)が使用される。いくつかの実施形態では、通常、全組成物の0〜3重量パーセントの範囲の、少量のAgが含まれる。
【0018】
金属粉末は、当技術分野で周知の界面活性剤と共に被覆することができる。
【0019】
B.無機バインダー
従来、導電性組成物は鉛またはカドミウム含有フリットをベースにしていた。ガラス組成物から鉛を除去して現在の毒性および環境規制に適合させると、所望の軟化および流れ特性を実現し、同時に濡れ性、熱膨張、外観および性能の要求基準を満足させるために使用できるバインダーの種類が限定される恐れがある。
【0020】
本発明の無機バインダーは、(1)無鉛・無カドミウムガラスフリット、(2)遷移金属酸化物、(3)遷移金属酸化物の前駆体、および(4)これらの混合物の1種または複数から選択される。
【0021】
フリットおよび酸化物の粒径は厳密な臨界的なものではなく、本発明において有用な材料の平均粒径は、通常(それだけに限らないが)、約0.5μm〜約6.0μm、好ましくは約1μm〜約4μmである。
【0022】
無機バインダーは、組成物を所望の温度(通常、750〜900℃、特に850℃)で焼成して、適切な焼結、濡れ、および基板、特にLTCC基板への接着をもたらすことができるように、約350〜800℃の軟化点を有するガラスフリットであることが好ましい。高融点および低融点フリットの混合物を使用して、導電性粒子の焼結特性を制御することができることが知られている。本発明では、1種または複数の異なるガラスフリット組成物を使用することができる。
【0023】
本明細書で用いる「軟化点」という用語は、ASTM C338−57の繊維延伸法によって得られる軟化温度のことである。
【0024】
いくつかの有用なガラス組成物(組成物AからG)の例を以下の表1に示した。酸化物成分は、全ガラス組成物の重量パーセントで示した。
【0025】
【表1】

【0026】
表1に示したように、本発明において有用ないくつかのガラス組成物は、以下の組成物によって表される(全ガラス組成物に対する重量パーセント):B:5〜20、SiO:1〜44、Al:3〜20、NaO:0〜10、LiO:0〜4、P:2〜41、NaF:5〜16、CaO:0〜9、ZrO:0〜3、ZnO:0〜19、BaO:0〜2、およびZnF:0〜11。一実施形態においては、上記組成物のガラスフリットは、全厚膜組成物に対して0〜3.0重量パーセントの範囲で厚膜組成物中に存在する。
【0027】
本発明において有用なその他の無鉛・無カドミウムガラスフリットには、アルカリほうけい酸ベースおよびビスマスほうけい酸ベースのフリットを含むものがある。
【0028】
それらのガラスバインダー(ガラスフリット)は、所望の成分(またはその前駆体、例えば、Bに対するHBO)を所望の割合で混合し、混合物を加熱して溶融物を形成することによって、通常のガラス製造技術で調製される。当技術分野で周知のように、ピーク温度まで加熱し、溶融物が全体に液状になり、ガスの発生が終わるまで加熱を行う。ピーク温度は、一般に1100℃〜1500℃、通常1200℃〜1400℃の範囲である。次いで、典型的には溶融物を冷ベルト上または冷たい流水中に注ぐことによって溶融物を急冷する。次いで、必要に応じ粉砕することによって粒径を小さくすることができる。
【0029】
他の遷移金属酸化物も、無機バインダーのすべてまたはその一部として使用することができる。亜鉛、コバルト、銅、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、チタン、マンガンおよび鉄の酸化物または酸化物前駆体は本発明において有用である。これらの添加剤は、ワイヤーボンディング、または、はんだ付けによって接着性の改善が評価される。
【0030】
遷移金属酸化物は、前駆体化合物を加えることにより、その場で形成することもできる。これらの前駆体は、有機金属化合物、炭酸塩、またはフリットの形態とすることができる。焼成時に行われる酸化物、フリットおよび任意の前駆体材料間の反応は、機能的金属層の基板への結合を促進するガラスまたは酸化物を形成することができる。一実施形態においては、本発明の厚膜組成物は酸化銅または酸化銅の前駆体を含む。上記のように、厚膜組成物中に存在する金属酸化物は、すでに酸化物の状態にあるか、あるいは焼成条件下で金属含有化合物から変換される。例えば、酸化銅が存在してもよく、あるいは、元素の銅、有機銅、またはフリットからの結晶生成物が酸化銅を形成することもできる。その他の遷移金属酸化物およびその前駆体も本発明において有用である。例えば、以下の酸化物およびその前駆体は本発明において有用である:TiO、Co、RuO、Fe、SnO、ZrO、Sb、MnO、CuO、ならびにその他の酸化物。
【0031】
遷移金属酸化物、その前駆体またはこれらの混合物は、全厚膜組成物の0〜3重量パーセントの範囲で存在する。ガラスフリット、遷移金属酸化物、遷移金属酸化物の前駆体、およびこれらの混合物は、全厚膜組成物中に3重量パーセントまで存在する。一実施形態においては、酸化銅は全組成物中に2.0重量%未満存在する。別の実施形態においては、酸化銅は全厚膜組成物の約0.1〜1.0重量パーセントの範囲で存在する。別の実施形態においては、酸化銅は全厚膜組成物の約0.2〜0.6重量パーセントの量が存在する。
【0032】
酸化物は、基板またはペースト(厚膜)のガラスおよびセラミック化合物と反応することによって接着を促進する。即ち、金属導体層を基板に結合させる反応生成物をその場で形成する。
【0033】
C.有機媒体
通常、無機成分を機械的な混合によって有機媒体に分散させて、印刷のために適切な粘度およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれる粘稠な組成物を形成する。有機媒体として多種多様な不活性液体を使うことができる。この媒体のレオロジー特性は、固形分の安定な分散、スクリーン印刷のための適当な粘度およびチキソトロピー、許容しうる未焼成「グリーン」強度、基板とペースト固形分との適当な濡れ性、良好な乾燥速度、ならびに良好な焼成およびバーンアウト特性を含めて、組成物に良好な適用性を付与するものでなければならない。通常、有機媒体は、1種または複数のポリマーを1種または複数の溶媒に溶解した溶液である。さらに、少量の界面活性剤などの添加剤を有機媒体の一部とすることもできる。この目的で最も頻繁に用いられるポリマーはエチルセルロースである。ポリマーのその他の例としては、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリレートが挙げられ、エチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルも使用することができる。厚膜組成物において最も広く使用されている溶媒は、エステルアルコールおよびα−もしくはβ−テルピネオールなどのテルペン、またはこれらとケロセン、フタル酸ジブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアテタート、ヘキシレングリコール、ならびに高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどの他の溶媒との混合物である。さらに、基板上に塗布された後に急速硬化を促進するための揮発性液体をビヒクルに含有させることもできる。所望の粘度および揮発性の要求性能を得るために、これらおよび他の溶媒を様々に組み合わせて配合する。
【0034】
厚膜組成物中の有機媒体と懸濁液中の無機化合物の比は、ペーストの塗布方法および使用される有機媒体の種類で左右されるので、変わる可能性がある。通常、懸濁液は、良好なコーティングを得るために、50〜95重量%の無機化合物、および5〜50重量%の有機媒体(ベヒクル)を含有している。
【0035】
応用例
本発明の導体組成物を、グリーンテープ(商標)低温共焼成セラミック(LTCC)などの未硬化のセラミック材料および他の様々なペースト成分と併せて使用して、多層電子回路を形成することができる。グリーンテープ(商標)は、通常、多層電子回路用の誘電体または絶縁材料として使用される。グリーンテープ(商標)のシートの各コーナーに、実際の回路寸法よりやや大きいサイズに位置決め孔を打ち抜く。多層回路の様々な層を電気的に接続するために、ビアホールをグリーンテープ(商標)に形成する。通常これは機械パンチングで行うが、任意の適切な方法を用いることができる。例えば、鋭く焦点を合わせたレーザを用いて蒸発させて、グリーンテープ(商標)にビアホールを形成することができる。
【0036】
厚膜導電性組成物(ビア充填組成物)をビアに充填することによって、各層間の相互接続が形成される。本発明の場合、典型的には、本明細書に開示されたものとは異なる厚膜導電性組成物をビア充填組成物として利用する。この導電性ビア充填組成物は、一般には標準的なスクリーン印刷技術によって塗布されるが、任意の適切な塗布技術を用いることもできる。回路の各層は、通常、導電トラックをスクリーン印刷することによって完成する。これらのトラックは、本発明の組成物、または他の適切な導体組成物、またはこれらの混合物であることができる。また、1つまたは複数の選択された層に抵抗体インクまたは高誘電率インクを印刷して、抵抗性または容量性回路素子を形成することができる。導体、抵抗体、コンデンサー、および任意の他の部品は、一般に通常のスクリーン印刷技術によって形成される。
【0037】
本発明の導体組成物は、ラミネーションの前または後に、回路の最も外側の層に印刷することができる。さらに、本発明の導体組成物は、回路の1つまたは複数の内層にも使用することができる。通常、本発明の導体組成物はビア充填組成物として使用することができない。当分野の技術者なら分かるように、回路は、機能的な導電性、抵抗性、または容量性の層が堆積されていない「ブランク層」または誘電体もしくは絶縁材料の層を含むことができる。回路の最も外側の層は、部品を取り付けるために使用される。部品は、通常、焼成されたパーツの表面に、ワイヤーボンディング、接着、またははんだ付けによって取り付ける。ワイヤーボンディングされた部品の場合、本発明の導体組成物は、先行技術の組成物より優れたワイヤーボンディング特性を有するので特に有用である。
【0038】
回路の各層が完成した後、個々の層を順序正しく揃えて積層する。一般に、密閉一軸または等方加圧成形ダイを用いて、各層間の正確な位置合わせを確実に行う。集合体は、ラミネーションまたは焼成後、適当なサイズにトリムする。焼成は、通常、コンベアベルト炉またはボックス炉において、プログラム化された熱サイクルを用いて行われる。テープは、焼成プロセス中、拘束して焼結しても、または自由な状態で焼結してもよい。例えば、特許に開示されている方法を使うこともでき(例えば、Steinbergの特許文献2およびMikeskaの特許文献3参照)、当分野の技術者に知られたその他の方法を使うこともできる。
【0039】
本明細書で用いる用語「焼成」とは、空気などの酸化性雰囲気で、集合体の各層の有機材料を揮発(バーンアウト)させ、テープと導体両方の無機成分を反応かつ焼結させるのに十分な温度まで、かつこれに十分な時間、集合体を加熱することを意味する。「焼成」により各層の無機成分が反応または焼結し、集合体全体が高密度化され焼成品が形成される。この焼成品は、電気通信、軍事または自動車用途(自動車位置センサー、レーダー、送受信モジュール、アンテナなど)で使用される多層回路とすることができる。
【0040】
用語「機能性層」とは、導電性、抵抗性、容量性または誘電性機能を有する、印刷されたグリーンテープ(商標)のことである。したがって、上記のように、代表的なグリーンテープ(商標)層は、1つまたは複数の導電性トレース、導電性ビア、抵抗体および/またはコンデンサーを有することができる。
【実施例】
【0041】
次に、実際的な例(実施例A〜G)を用いて本発明を詳細に説明する。これらの実施例について、厚膜ペースト組成物およびその割合を表2に示した。
【0042】
実施例A〜Gの厚膜ペーストは、以下の方法に従って形成した。
【0043】
すべての成分は、適切な分散を行うために、ミキサーまたは3本ロールミル、あるいは、その両方で十分にかき混ぜた。金属および酸化物が適切に分散された後、溶媒または樹脂含有有機ベヒクルを加えて、適切な固形分および粘度レベルにペーストを配合した。粘度は、標準のスクリーン印刷装置および技術を用いて導体ラインを印刷できるように選択された(ここでは150〜500PaS)。固形分レベルは、良好なスクリーン印刷性を得るだけでなく、機能性(接着、抵抗率、電気接触など)が最適化されるように選択された。
【0044】
実施例において用いられた試験手順
ワイヤーボンディング
部品は、150および300μmのボンディングフィンガーと、より大きなボンディングパッドが得られるようにパターン化した。これらのパターン化部品を共焼成し、それぞれHughes2460またはK&S4124ボンダーを使用して、25および50μmの金ワイヤーでボンディングした。試験中、ボンドは、ボンドフィンガーの中央ならびにボンドフィンガーの縁部に近いところに置いた。これは、メタライゼーションがボンディングまたはボンドプルテスト中に浮き上がる傾向が無いかどうかを観察するために行ったものである。
【0045】
ボンドは、Dage Series4000ボンドテスターを用いて引っ張った。ボンドの強さと引張りの故障モードの両方に関して観察を行った。故障モードは6通りに分類される:
0 ボールの下での金属−基板分離
1 ボールでのボンド−金属分離
2 ボールのトップでの破断
3 ワイヤーの破断
4 ボンドのヒールでの破断
5 ヒールでのボンド−金属分離
6 ヒールの下での金属−基板分離
場合により、タイプ2、3または4のボンド故障のみが観察される。金属の基板からの分離(タイプ0、6)は、接着の問題であることを示唆するものである。ボンドのメタライゼーションからの分離は、ボンディング性またはボンドアクセプタンスの問題であることを示唆するものである。実施例A〜Fでは、タイプ0、1、5または6の故障モードは観察されなかった。
【0046】
ボンドアクセプタンスの別の試験には、メタライゼーションへの複数の25μmボンディングワイヤーが含まれていた。良好なボンドアクセプタンスとは、ボンディング中にミスまたはその他のエラーが無いことと定義される。ここに挙げた実施例においては、ほぼ1920本のボンドが形成され、75〜100本を引っ張って接着値を求めた。
【0047】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波用途で使用する厚膜導電性組成物であって、
a)金粉末と、
b)(1)ガラスフリット、(2)遷移金属酸化物および(3)遷移金属酸化物の前駆体、ならびに(4)これらの混合物から選択される1種または複数の無機バインダーと、
c)有機媒体と
を含み、
前記無機バインダーが無鉛・無カドミウムであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記無機バインダーが、全厚膜組成物に対して、3重量パーセントまでの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
全厚膜組成物に対して0〜2.0重量パーセントの範囲の前記ガラスフリットを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物が、全厚膜組成物の0.2〜0.6重量パーセントの範囲で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記金粉末が、全厚膜組成物に対して60〜90重量パーセントの範囲で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
全厚膜組成物に対して0〜3重量パーセントの範囲の銀粉末をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
低温共焼成セラミックテープと相容性であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ガラスフリットが、350〜800℃の範囲の軟化点を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
多層回路を形成する方法であって、
a)グリーンテープの複数の層にビアのパターン化アレイを形成するステップと、
b)ステップ(a)の1つまたは複数の前記グリーンテープ層のビアに、厚膜組成物を充填するステップと、
c)ステップ(b)の任意のまたはすべての前記ビア充填グリーンテープ層の表面上に、パターン化厚膜機能性層を印刷するステップと、
d)ステップ(c)の前記グリーンテープ層の最も外側の表面上に、請求項1の厚膜組成物のパターン化層を印刷するステップと、
e)ステップ(d)の前記印刷グリーンテープ層を積層して、未焼成グリーンテープで分離された複数の未焼成相互接続機能性層を含む集合体を形成するステップと、
f)ステップ(e)の前記集合体を共焼成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
ステップ(c)の前記厚膜機能性層が、マイクロ波用途で使用する厚膜導電性組成物であって、
a)金粉末と、
b)(1)ガラスフリット、(2)遷移金属酸化物および(3)遷移金属酸化物の前駆体、ならびに(4)これらの混合物から選択される1種または複数の無機バインダーと、
c)有機媒体と
を含み、
前記無機バインダーが無鉛・無カドミウムである組成物であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
多層回路を形成する方法であって、
a)グリーンテープの複数の層にビアのパターン化アレイを形成するステップと、
b)ステップ(a)の1つまたは複数の前記グリーンテープ層の前記ビアに、厚膜組成物を充填するステップと、
c)ステップ(b)のいくつかのまたはすべての前記ビア充填グリーンテープ層の表面上に、パターン化厚膜機能性層を印刷するステップと、
d)ステップ(c)の前記印刷グリーンテープ層を積層して、未焼成グリーンテープで分離された複数の未焼成相互接続機能性層を含む集合体を形成するステップと、
e)ステップ(d)の前記集合体上に、請求項1の厚膜組成物の少なくとも1つのパターン化層を印刷するステップと、
f)ステップ(e)の前記集合体および1つまたは複数のパターン化層を共焼成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
ステップ(c)の前記厚膜機能性層が、マイクロ波用途で使用する厚膜導電性組成物であって、
a)金粉末と、
b)(1)ガラスフリット、(2)遷移金属酸化物および(3)遷移金属酸化物の前駆体、ならびに(4)これらの混合物から選択される1種または複数の無機バインダーと、
c)有機媒体と
を含み、
前記無機バインダーが無鉛・無カドミウムである組成物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項9または11のいずれか一項に記載の方法によって形成されたことを特徴とする多層回路。
【請求項14】
請求項1の組成物を含む多層回路であって、前記組成物を処理して、前記有機媒体を除去し、前記無機バインダーを焼結させることを特徴とする多層回路。
【請求項15】
高周波送受信モジュールまたはレーダーを形成することを特徴とする請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項16】
アンテナ、フィルター、バルン、ビームフォーマー、I/O、結合器、ビアフィードスルー、EM結合フィードスルー、ワイヤボンド接続、および伝送路から選択されるマイクロ波回路部品を形成するための使用であることを特徴とする請求項1に記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2006−344582(P2006−344582A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−120785(P2006−120785)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】