説明

マスク検査装置及び露光用マスク製造装置

【課題】吸収体パターンを被着させる前のマスクブランクの段階で位相欠陥を検出することが可能な装置を提供する。
【解決手段】マスク検査装置100は、EUV光を反射する多層膜が形成されたマスクブランクの表面に照明光を照明する照明光学系と、マスクブランク表面から反射された同じ位置の像について、異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像するセンサ105,305と、異なるデフォーカス量で撮像されたマスクブランク表面の同じ位置での第1と第2の光学画像を用いて、マスクブランクの欠陥の有無を判定する判定部176と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査装置及び露光用マスク製造装置に係り、例えば、極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)露光に用いるマスクのマスクブランクの欠陥を検査する検査装置、および、さらに検査されたマスクブランクにパターンを描画する露光用マスク製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、高精度の原画パターン(レチクル或いはマスクともいう。)が必要となる。
【0003】
ここで、半導体デバイスの微細化に伴い、露光波長そのものを従来よりもさらに短波長化することが検討されている。157nmの光は、縮小転写するためのレンズ材料の制限から断念されている。そのため、現時点で最も可能性があると考えられているのは、波長が13.4nmのEUV光である。EUV光は、軟X線領域に区分される光で多くの物体で透過吸収されるために、もはや投影光学系を形成することが出来ない。そのため、EUV光を用いた露光手法については反射光学系が提案されている。このように、EUVリソグラフィにおいては、EUV光を反射する多層膜ミラーから構成される反射光学系が使用される。EUV露光用のEUVマスクは光学系の一部として介在する。そのため、同様に、基板上に多層膜が形成された反射型のマスクが用いられる。多層膜は、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)の層が交互に積層されたものが使用される。この積層膜が形成されたマスクブランク上に吸収体パターンを形成してEUVリソグラフィ(EUVL)用のマスクを構成する。
【0004】
ここで、かかる積層膜の各層の厚さの規則性が崩れると、反射される光の位相がずれることになる。その結果、ウェハ上には位相欠陥として露光されてしまう。従来の光リソグラフィ用の透過型マスクブランクでは表面の数nm程度の凹凸は無視しても差し支えなかった。しかしながら、EUVマスクでは、かかる多層膜が形成されたマスクブランク上にわずか数nm程度の高さの異常が発生した場合でも、その高さ異常によりEUV反射光に大きな位相変化を与え、吸収体パターンのウェハ上への転写の際に欠陥を生じさせる。したがって、EUVマスクは、従来の透過マスクと比較して欠陥転写に関して質的に大きな差があり、位相差を与えるマスクブランク欠陥の発生を回避しなければならない。
【0005】
そのため、吸収体パターンを被着させる前のマスクブランクの段階で位相欠陥を検出することが必要となる。検査方法として、レーザ光をマスクブランクに照射し、乱反射する光から異物を検出する方法(例えば、特許文献1参照)や、露光に用いるEUV光と同じ波長の検出光を用いて欠陥を検出する方法(例えば、特許文献2参照)が検討されている。しかし、レーザ光を用いて乱反射する光から異物を検出する検査法では、検出すべき位相欠陥の高さが検査波長に対して2桁以上小さいので、微小な位相欠陥の検出が困難になるといった問題がある。他方、EUV光を用いる検査方法では、EUV光源と多層膜反射面を採用した真空チャンバ内の検査光学系の取り扱いが難しく、更に光学ミラーへのダメージも充分に小さいとはいえないといった問題がある。
【0006】
さらに、検査した結果、マスクブランクの欠陥を全くゼロにすることは困難であり、製造されたマスクを全数検査して欠陥がゼロ或いは仕様を満足するものだけを選別するとなるとEUVマスクが非常に高価なものとなってしまう。
【0007】
そのため、欠陥が露光処理により転写されないように、吸収体パターンを移動させて位相欠陥が吸収体パターンの領域内に包含されるように形成することで多層膜マスク上の位相欠陥が転写されないようにするといった技術が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−174415号公報
【特許文献2】特開2003−114200号公報
【特許文献3】特開2004−193269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、吸収体パターンを被着させる前のマスクブランクの段階で位相欠陥を検出することが必要となる。しかしながら、従来、かかる問題を解決する十分な手法が確立されていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、かかる問題を克服し、吸収体パターンを被着させる前のマスクブランクの段階で位相欠陥を検出することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様のマスク検査装置は、
極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を反射する多層膜が形成されたマスクブランクの表面に照明光を照明する照明光学系と、
マスクブランク表面から反射された同じ位置の像について、異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像する第1と第2のセンサと、
異なるデフォーカス量で撮像されたマスクブランク表面の同じ位置での第1と第2の光学画像を用いて、マスクブランクの欠陥の有無を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
かかる構成により、後述するようにマスクブランクの欠陥を検出できる。
【0013】
また、画素毎に、前記第1と第2の光学画像の差分を演算する差分演算部をさらに備え、
判定部は、画素毎に、差分が閾値を超えた場合に欠陥と判定すると好適である。
【0014】
また、第1のセンサは、第1の光学画像を第1の光学画像の結像点の前側で撮像し、
第2のセンサは、第2の光学画像を第2の光学画像の結像点の後側で撮像すると好適である。
【0015】
また、照明光として、波長が180〜210nmの深紫外(DUV:Deep Ultra Violet)光を用いると好適である。
【0016】
本発明の一態様の露光用マスク製造装置は、
極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を反射する多層膜が形成されたマスクブランクの表面に照明光を照明する照明光学系と、
マスクブランク表面から反射された同じ位置の像について、異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像する第1と第2のセンサと、
異なるデフォーカス量で撮像されたマスクブランク表面の同じ位置での第1と第2の光学画像を用いて、マスクブランクの欠陥の有無を判定する判定部と、
欠陥有と判定された位置がEUV露光を行う場合にEUV光の反射面からはずれるように、荷電粒子ビームを用いて、他の膜がさらに形成されたマスクブランクにパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、吸収体パターンを被着させる前のマスクブランクの段階で位相欠陥を検出できる。また、本発明の他の態様によれば、さらに、製造されたマスクでウェハを露光する場合に、マスクに存在する位相欠陥がウェハ上に転写されないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1におけるマスク検査装置の構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1におけるEUVマスクの一例を示す図である。
【図3】実施の形態1における欠陥が存在するマスクブランク及びEUVマスクの一例を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるマスクブランク上の位置と撮像された像の光強度の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1におけるマスクブランク上の位置と撮像された像の光強度の一例を示す。
【図6】実施の形態1における光学画像の取得方法を説明するための概念図である。
【図7】実施の形態1における2つの領域の画像の取得方法を説明するための概念図である。
【図8】実施の形態1における測定データのメモリへの取り込みと読出しのフローを説明するためのタイムチャート図である。
【図9】実施の形態1におけるマスク検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【図10】実施の形態2における欠陥位置と吸収体パターンとの位置関係の一例を示す図である。
【図11】実施の形態2におけるマスク製造装置の構成を示す概念図である。
【図12】実施の形態2におけるマスク製造装置内の描画部の構成を示す概念図である。
【図13】実施の形態2における欠陥が存在するEUVマスクの一例を示す上面概念図である。
【図14】図13のEUVマスクの断面を示す断面概念図である。
【図15】実施の形態2における欠陥が存在するマスクブランクにパターンを描画する場合の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるマスク検査装置の構成を示す概念図である。図1において、マスク検査装置100は、光学画像取得部と制御部とを備えている。光学画像取得部は、光源103、レンズ122,124、スリット板123、ビームスプリッタ126、対物レンズ104、XYθテーブル102、反射ミラー128、レンズ132,332、及び撮像用センサ105,305を有している。レンズ122,124、スリット板123、ビームスプリッタ126、及び対物レンズ104により照明光学系を構成する。XYθテーブル102上には、極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を反射する多層膜が形成されたマスクブランク101が、多層膜面を下にして載置されている。マスクブランク101として、多層膜が形成された段階のものであって、まだ、吸収体膜が形成される前の状態のものが用いられる。実施の形態1では、かかる多層膜が形成された段階のマスクブランク101が検査対象となる。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。
【0020】
制御部は、センサ回路106,306、メモリ107,307、比較回路108、制御計算機110、磁気ディスク装置等の記憶装置109、テーブル制御回路111、モニタ118、及びプリンタ119を有している。メモリ107,307、比較回路108、制御計算機110、磁気ディスク装置等の記憶装置109、テーブル制御回路111、モニタ118、及びプリンタ119は、バス120を介して互いに接続されている。比較回路108内には、アライメント処理部172、差分演算部174、及び判定部176が配置される。アライメント処理部172、差分演算部174、及び判定部176の各機能は、コンピュータを実行させるプログラム等のソフトウェアで構成しても構わない。或いは、電気機器若しくは電子機器等のハードウェアで構成しても構わない。或いは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成しても構わない。或いは、ファームウェアとハードウェアの組み合わせで構成しても構わない。また、テーブル制御回路111は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータを制御して、XYθテーブル102を移動させる。
【0021】
光源103は、波長が180〜210nmの深紫外(DUV:Deep Ultra Violet)光を発生させる。ここでは、波長が199nmのDUV光を照明光として用いる。光源103から発生したDUV光は、照明光学系により多層膜が形成されたマスクブランク101の表面に照明光を照明する。具体的には、光源103から発生したDUV光は、レンズ122を通過した後、スリット板123に形成された2つのスリット開口部で2つの光束に絞られる。このように、2つのスリット開口部を通過した2つの光束10は、レンズ124を通って、ビームスプリッタ126で光路が曲げられ、対物レンズ104で集光されてマスクブランク101の表面に照射される。2つの光束は、マスクブランク101の表面の領域1LA内の隣り合う領域11,12を照明する。マスクブランク101表面から反射された領域11,12の2つの像の光束13は、対物レンズ104及びビームスプリッタ126を通過する。そして、ビームスプリッタ126を通過した2つの像の光束13は、投影領域PRAに集光する。このようにして、マスクブランク101上の領域11,12は、投影領域PRA内に、像14,15を分離して形成する。
【0022】
像14(第1の光学画像)を形成する光束は、投影領域PRAの直下に配置された反射ミラー128で光路が曲げられ、レンズ332を通って、かかる光束の結像点17の前側に配置されたセンサ305によって撮像される。すなわち、センサ305の受光面上に像14を形成する。また、像15(第2の光学画像)を形成する光束は、レンズ132を通って、かかる光束の結像点18の後側に配置されたセンサ105によって撮像される。すなわち、センサ105の受光面上に像15を形成する。このように、撮像用センサ105,305は、マスクブランク101表面から反射された2つの像について、異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像する。図1の例では、センサ305は、レンズ332の結像点17より光路長がXL1だけ短い位置に配置され、センサ105は、レンズ132の結像点18より光路長がXL2だけ長い位置に配置された場合を示している。かかる配置により、2個のセンサ105,305は、マスクブランク上の隣接する領域11,12の検査画像を、互いに異符号のデフォーカス状態で収集することができる。これらのデフォーカス量は、マスクブランク面上のデフォーカス量に換算すると、XL1/(倍率)、XL2/(倍率)となる。
【0023】
センサ105上に結像された像は、センサ105によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。センサ105には、TDI(タイムディレイインテグレータ)センサのようなラインセンサ(或いは2次元領域センサ)が設置されている。同様に、センサ305上に結像された像は、センサ305によって光電変換され、更にセンサ回路306によってA/D変換される。センサ305には、TDIセンサのようなラインセンサ(或いは2次元領域センサ)が設置されている。ステージとなるXYθテーブル102を例えばX軸方向に連続的に移動させることにより、2つのTDIセンサはマスクブランク101表面の像を連続的に撮像する。これにより、マスクブランク101表面の照明される領域11,12が連続的に移動しながら撮像されていく。よって、マスクブランク101表面の同じ位置の像が、撮像用センサ105,305によって時間差をおいて異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像されることになる。
【0024】
図2は、実施の形態1におけるEUVマスクの一例を示す図である。図2(a)には、EUV用マスク301をパターン面から見た一例であり、中央部には半導体集積回路装置のパターンを有するデバイスパターンエリア2を有する。また、EUV用マスク301の周辺部にはマスクの位置合せのためのマークやウェハアライメントマークなどを含むアライメントマークエリアMA1、MA2,MA3,MA4が配置される。図2(a)には、EUV用マスク301の断面の一例を示している。石英ガラスや低熱膨張材などの基板MSの上に多層膜MLが被着され、その上にキャッピング層CAPが被着されている。その上に、バッファ層BUFを介して吸収体パターンABSが設けられている。また、基板MSの裏面側には、マスクを静電チャックするためのメタル膜CFがコーティングされている。実施の形態1で検査対象となるマスクブランク101は、石英ガラスや低熱膨張材などの基板MSの上に多層膜MLが被着された段階のものとなる。或いは、基板MSの上に多層膜MLとキャッピング層CAPが被着された段階のものとなる。
【0025】
図3は、実施の形態1における欠陥が存在するマスクブランク及びEUVマスクの一例を示す図である。図3(a)には、基板MSの上に多層膜MLを被着させる際に、基板MSの上に微小な窪みが存在したまま多層膜MLを被着させた結果、凹形状の位相欠陥PDが発生した例を示す。この欠陥を残したままバッファ層BUFと吸収体パターンABSを形成すると、例えば、図3(b)に示すように、隣接する吸収体パターンABS間の開口部の底面(反射面)に位相欠陥PDを残存させてしまう場合がある。この位相欠陥が存在すると、ウェハ上に転写するパターン投影像が乱れて転写パターンの欠陥が発生する。
【0026】
図4は、実施の形態1におけるマスクブランク上の位置と撮像された像の光強度の一例を示す図である。図4では、マスクブランク101の多層膜ML上に凹型の位相欠陥PD1が存在する場合に、センサ105,305の受光面に形成される拡大像の光強度分布をシミュレーション解析により求めた結果を示している。位相欠陥の深さを2.2nm、半値全幅を60nmとし、対物レンズの開口数NAを0.75とした。ここで、マスクブランク101の位置が所定の位置から対物レンズ104の光軸方向に沿ってシフトする量、すなわちデフォーカス量を−400nm、−200nm、0nm、+200nm、+400nmに設定したときに得られる拡大投影像光強度分布を、それぞれ、曲線1−1、1−2、1−3、1−4、1−5で示した。この図から、デフォーカス量を0とした場合は、欠陥部に対応する投影像光強度は、欠陥部ではない周囲の光強度と比べてわずかに暗いことが分かる。同時に、−200nm、−400nmといった負のデフォーカスに対しては欠陥部の光強度が周辺部の光強度と比べて高くなる。一方、+200nm、+400nmといった正のデフォーカスに対しては欠陥部の光強度が周辺部の光強度と比べて低くなることが分かる。また、欠陥部では、周辺部に比べて、デフォーカスさせることで光強度が大きく変化することがわかる。
【0027】
図5は、実施の形態1におけるマスクブランク上の位置と撮像された像の光強度の一例を示す。図5では、マスクブランク101の多層膜ML上に凸型の位相欠陥PD2が存在する場合に、センサ105,305の受光面に形成される拡大像の光強度分布をシミュレーション解析により求めた結果を示している。ここでは、凸型位相欠陥PD2の高さを2.2nm、半値全幅を60nmとし、対物レンズの開口数NAを0.75とした。ここで、拡大投影像光強度分布を表す曲線2−1、2−2、2−3、2−4、2−5は、図4のデフォーカス量、+400nm、+200nm、0nm、−200nm、−400nmに対応する。図5に示すように、デフォーカス量を0とした場合、欠陥部に対応する投影像光強度は周囲の光強度と比べて暗くなること、欠陥部に対応する光強度の明暗のデフォーカス依存性は、凹型位相欠陥の場合と比較して符号が反転していることが分かる。ここでも、欠陥部では、周辺部に比べて、デフォーカスさせることで光強度が大きく変化することがわかる。
【0028】
実施の形態1では、以上の事実を利用して欠陥検出を行う。言い換えれば、実施の形態1では、異なるデフォーカス量で撮像されたマスクブランク101表面の同じ位置での2つの光学画像を用いて、マスクブランク101の欠陥を検出する。
【0029】
図6は、実施の形態1における光学画像の取得方法を説明するための概念図である。図6において、マスクブランク101上の検査領域21は、例えばy方向に向かって所定の幅で短冊状の複数の検査ストライプ22に仮想分割される。検査ストライプ22の幅は、センサ105,305で1度に撮像可能なライン幅(画素幅)に設定される。例えば、2048画素分の長さに設定されると好適である。ここでは、一例として、センサ105,305は、共に画素幅方向(ライン幅方向)に2048画素の受光素子が配置され、積算方向(画素列方向)に画素数が512段の受光素子が配置されたTDIセンサを用いる。このTDIセンサは、XYθテーブル102の走査と同期してXYθテーブル102の移動方向に各列の受光素子が受光した電荷を1段ずつ後方の列へと転送することで、電荷を蓄積段数分だけ蓄積して出力することができる。XYθテーブル102が例えば−x方向に移動することで、センサ105,305は、矢印23で示すx方向に向かって画像を連続的に撮像していく。その際、同時期のマスクブランク101からの反射像は、2個の領域IMA1、IMA2に分割されている。そして、センサ105は、例えば領域IMA2の像を、センサ305は、例えば領域IMA1の像を、同時期に撮像する。隣り合う2個の領域IMA1、IMA2の画像は、それぞれ、複数の画素24の強度(或いは画素値)として撮像される。
【0030】
図7は、実施の形態1における2つの領域の画像の取得方法を説明するための概念図である。図7では、様々な時刻におけるセンサ105,305によって、取り込まれる領域IMA1、IMA2の位置関係を示す図である。T1で示される状態は、XYθテーブル102の走査が開始し、検査ストライプ22の先端がセンサ305に取り込まれる領域IMA1にさしかかる直前の状態である。T2で示される状態は、XYθテーブル102の走査が進み、検査ストライプ22の先端がセンサ105に取り込まれる領域IMA2にさしかかる直前の状態である。T3で示される状態は、XYθテーブル102の走査が終了する状態であり、検査ストライプ22の最終端がセンサ105に取り込まれる領域IMA2を越えた状態を示す。
【0031】
図8は、実施の形態1における測定データのメモリへの取り込みと読出しのフローを説明するためのタイムチャート図である。ここでは、1つの検査ストライプ22の測定データの処理について説明する。時刻t1でマスクブランク101を載置したXYθテーブル102の走査を開始する。時刻t2でセンサ305の1列目の受光素子が検査ストライプ22に差し掛かると、XYθテーブル102位置とセンサ305で捉える画像との位置関係を記憶すると同時に検査画像データの取り込みを開始し、以後メモリ307にデータを順次格納する。時刻t3でセンサ105の1列目の受光素子が検査ストライプ22に差し掛かると、XYθテーブル102位置とセンサ105で捉える画像との位置関係を記憶すると同時に検査画像データの取り込みを開始し、以後メモリ107にデータを順次格納する。時刻t4でセンサ305による検査画像データの取り込みを終了し、時刻t5でセンサ105による検査画像データの取り込みを終了する。時刻t6ではマスクブランク101の走査を終了し、次の検査ストライプへの移行に備える。
【0032】
ここで、時刻t3から時刻t5の間では、センサ105で捉える検査画像データをメモリ107に取り込むと同時に、メモリ307から、先に記録してあるセンサ305で撮像された測定データを順次読み出して、マスクブランク101上の同一箇所における検査画像データの比較を行なう。両画像は異符号のデフォーカス状態で収集されたデータなので、もし、位相欠陥が存在すれば図4、図5に示したように欠陥部の検査画像強度は一方が暗い信号、他方が明るい信号となる。
【0033】
そこで、比較回路108は、メモリ107,307からセンサ105,305で撮像されたそれぞれの測定データ(第1と第2の光学画像)を順次読み出し、時間差を持って撮像されたマスクブランク101上の同一位置の画像同士を比較する。まず、アライメント処理部172は、同一位置の画像同士の位置合わせ(アライメント)を行う。ここでは、画素単位で合わせた後サブ画素単位でさらに合わせると好適である。例えば、最小2乗法を用いてアライメントを行う。
【0034】
次に、差分演算部174が、画素毎に、両画像の差分を演算する。言い換えれば、同じ位置の画素同士について、差分(差分の絶対値)を演算する。判定部176は、画素毎に、差分(差信号強度)が閾値を超えた場合に欠陥と判定する。これにより、位相欠陥を検出したことになる。以上のようにして、判定部176は、異なるデフォーカス量で撮像されたマスクブランク101表面の同じ位置での2つの光学画像を用いて、マスクブランク101の欠陥の有無を判定する。判定結果は、記憶装置109に記憶される。そして、モニタ118に表示される。或いは、プリンタ119によって紙媒体に出力されてもよい。
【0035】
図9は、実施の形態1におけるマスク検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。まず、S(ステップ)101において、マスクブランク上の検査すべき領域において最初の検査ストライプを指定する。
【0036】
その後、S102において、マスクブランク101を載置したステージ(XYθテーブル102)の連続移動を開始し、検査画像の取り込みを開始する。
【0037】
S103において、センサ305の受光素子が検査ストライプ22の領域に入ったら、DUV光による検査画像データを取り込むと同時に、検査画像のメモリ307への取り込みを行なう。
【0038】
S104において、マスクブランク101の継続的走査によりセンサ105の受光素子が検査ストライプ22の領域に入ったら、検査画像データを取り込むと同時に、検査画像のメモリ107への取り込みを行なう。更に、メモリ307から、センサ305で収集した検査画像を順次読み出す。
【0039】
S105において、マスクブランク101上の同一領域における対応する画素ごとに差画像を演算する。
【0040】
S106において、差画像の強度と予め指定した閾値とを比較し、差画像の強度が閾値を超えた画素が存在する場合は位相欠陥が存在すると判断する。
【0041】
S107において、位相欠陥と判断されたら必要に応じて欠陥情報の表示や記録を行なう。複数の画素にわたって閾値を超える場合は、欠陥のサイズや輪郭を把握できる。差画像を演算する際に、センサ305で収集した検査画像とセンサ105で収集した検査画像との強度の大小関係から、欠陥部の凹凸の判断も可能である。
【0042】
S108において、1つのストライプ上での処理がすべて終了したかを判断し、未終了であればS103に戻り検査を継続する。1つのストライプ上での処理がすべて終了したらS109に進む。
【0043】
S109において、マスクブランク101上の検査領域全ての欠陥検査が終了したかを判定する。未終了の場合はS110へ進む。
【0044】
S110において、新たな検査ストライプを指定して、マスクブランク101を次のストライプのスタート位置に位置決めし、ステップS102に戻る。
【0045】
以上のようにして、S102からS110を繰り返し、マスク上の所定領域のすべてのストライプ上の処理が終了した時点で、欠陥検査を終了する。
【0046】
ここで、実施の形態1では、マスクブランク101の位相欠陥検査の手法を示したが、これに限るものではない。吸収体が部分的に形成されたEUVマスクにおいても、吸収体パターンが除去されて多層膜反射面が露出している領域で同様の位相欠陥検査が可能である。
【0047】
また、検査光の波長を199nmとした例を示したが、この波長領域に限られることなく、異なるデフォーカス状態での検査画像の差画像を演算して、位相欠陥検出信号を強調して検査を行なうことができる。
【0048】
また、検出された位相欠陥の座標は、適宜マスクブランク101に設けたマークや、吸収体付きEUVマスクの場合は所定の吸収体パターンの位置を基準として定めることができる。
【0049】
また、実施の形態1では、異なるデフォーカス量で撮像されたマスクブランク101表面の同じ位置での2つの光学画像を用いたが、これに限るものではない。一方の画像についてはフォーカスされた画像でもよい。すなわち、一方の画像についてはデフォーカス量が0でもよい。また、2つの画像のデフォーカス量は異符号に限るものではなく、場合によっては同符号であっても良い。同符号であっても欠陥の無い位置と比較して2つの画像の画素値の差が大きくなるように設定すればよい。
【0050】
また、実施の形態1では、スリット板123により、2つの照明光に分けてからマスクブランク101を照明したが、これに限るものではない。1つの照明光をマスクブランク101に照射して、ビームスプリッタを用いてマスクブランク101からの反射光を途中で分岐してもよい。そして、分岐された2つの光束を異なるデフォーカス量のデフォーカス位置で撮像してもよい。分岐することで光量が1/2となってしまうが、分岐されても検査可能な程度に照明光の光量自体を大きくすればよい。分岐することで同時期に同じ位置の画像を取得できる。
【0051】
以上のように、実施の形態1によれば、DUV光を検査光とするマスクパターン欠陥検査装置を用いて位相欠陥の検出信号を強調することができ、マスクあるいはマスクブランク上に残存する位相欠陥を感度良く検出することができる効果がある。よって、吸収体パターンを被着させる前のマスクブランク101の段階で位相欠陥を検出できる。さらに、照明光にDUV光を用いるため、EUV光を用いる場合に比べて検査光学系の取り扱いが簡易になる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態1では、マスクブランク101の欠陥を検査する検査装置およびその検査手法について説明したが、実施の形態2では、さらに進んで、EUVマスクを製造するためのパターン描画を加えた構成について説明する。
【0053】
図10は、実施の形態2における欠陥位置と吸収体パターンとの位置関係の一例を示す図である。図10(a)に示すように、吸収体パターンABSがマスクブランク上に残存する位相欠陥PDを覆い隠すように、吸収体パターンが配置されれば、位相欠陥PDがウェハに転写されずに済む。また、マスクブランク上の欠陥PDが単独では転写に影響を与えないような小さなものである場合、その近傍に吸収体パターンが存在しなければ、投影露光されるパターンの寸法変動の要因にはならない。そのため、例えば図10(b)に示すように、欠陥PDが微細な場合に限り、多層膜表面31上に形成する吸収体パターンABSを位相欠陥PDから充分に離すように吸収体パターンの位置決めを行なえばよい。
【0054】
図11は、実施の形態2におけるマスク製造装置の構成を示す概念図である。図11において、実施の形態2におけるマスク製造装置500は、検査部300と描画部400とを備えている。検査部300の構成は図1で示したマスク検査装置100と同様である。また、その検査手法も実施の形態1と同様である。また、以下、特に説明しない内容は実施の形態1と同様である。まず、検査部300でマスクブランク101の欠陥検査が行われる。検査手法は実施の形態1と同様である。そして、検査されたマスクブランク101には、既に形成されている多層膜(及びキャッピング層)上に吸収体膜を形成し、その上に電子ビームで露光可能なレジストを塗布しておく。
【0055】
図12は、実施の形態2におけるマスク製造装置内の描画部の構成を示す概念図である。図12において、描画部400は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。ここでは、特に、可変成形型の電子ビーム描画装置の一例を示している。描画部400は、描画処理部450、制御部460を備えている。そして、描画部400は、電子ビーム200を用いて、多層膜(キャッピング層)上に吸収体膜が形成され、さらにその上にレジストが塗布されたマスクブランク101に所望するパターンを描画する。
【0056】
描画処理部450は、電子鏡筒402と描画室403を有している。電子鏡筒402内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、及び偏向器208が配置されている。また、描画室403内には、移動可能に配置されたXYステージ405が配置されている。パターンを描画する際には、XYステージ405上に複数の支持ピン406(保持部の一例)が昇降可能に配置され、支持ピン406上に描画対象となるマスクブランク101が載置される。
【0057】
制御部460は、計算機ユニット410、制御回路462、及び磁気ディスク装置等の記憶装置440,442を有している。計算機ユニット410、制御回路462、及び磁気ディスク装置等の記憶装置440,442は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0058】
制御回路462は、描画データ処理部76によって制御され、制御回路462は、描画処理部450内の各機器を制御および駆動させる。
【0059】
制御計算機ユニット410内には、欠陥座標・サイズ取得部62、部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部64、描画データ処理部、及びメモリ78が配置される。欠陥座標・サイズ取得部62、部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部64、及び描画データ処理部76の各機能は、コンピュータを実行させるプログラム等のソフトウェアで構成しても構わない。或いは、電気機器若しくは電子機器等のハードウェアで構成しても構わない。或いは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成しても構わない。或いは、ファームウェアとハードウェアの組み合わせで構成しても構わない。欠陥座標・サイズ取得部62、部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部64、及び描画データ処理部76の各機能で処理される入力情報および演算処理情報はその都度メモリ78に記憶される。
【0060】
まず、検査部300で検査された結果得られた欠陥位置とサイズは、記憶装置440に格納される。例えば、描画されるマスクブランク101に識別子(ID)を設定し、IDに対応するように格納すればよい。欠陥位置を示す座標は、マスクブランク101上に予め設けられている段差パターンなどのマークを基準として利用すればよく、これにより、欠陥の位置座標を正確に把握することができる。例えば、欠陥位置は、マークの位置の座標を基準にした欠陥の中央部位置の座標(x,y)で示される。また、欠陥サイズは、欠陥位置座標を中心として欠陥の最大外形まで広げた円の直径(D)で示されると好適である。また、レイアウトパターンデータとなる描画データが外部から入力され、記憶装置442に格納される。
【0061】
まず、欠陥座標・サイズ取得部62は、記憶装置440に格納された欠陥位置とサイズを参照し、マスクブランク101の欠陥の位置を示す欠陥位置情報と、欠陥のサイズを示す欠陥サイズ情報を読み出す。
【0062】
次に、部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部64は、記憶装置442に格納された描画データのうちの少なくとも欠陥が含まれる領域分の部分パターンデータを入力する。また、部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部64は、同時に、吸収体パターンの下に欠陥が隠れるように、パターンレイアウトをずらしたずらし量およびずらし方向を演算する。
【0063】
図13は、実施の形態2における欠陥が存在するEUVマスクの一例を示す上面概念図である。図14は、図13のEUVマスクの断面を示す断面概念図である。EUVマスクは、ガラス基板510上に2.9nmの膜厚のモリブデン(Mo)と4.1nmの膜厚のシリコン(Si)が交互に例えば40層積層された多層膜512がガラス基板510表面全面に形成されている。そして、多層膜512上の全面にルテニウム(Ru)等のキャップ膜514が形成される。そして、EUV光を反射する領域では、かかるキャップ膜514が露出している。一方、EUV光を反射しない領域では、キャップ膜514上にEUV光を吸収する吸収体膜516と反射防止膜518が順に形成されている。ここで、図13(a)及び図14(a)に示すように吸収体膜516が存在しない領域542内に多層膜512の欠陥540が存在すると上述したように反射されるEUV光の位相がずれてしまう。その結果、製造されたEUVマスクで半導体ウェハ上にパターンを転写するとパターンの位置がずれてしまうことになる。そのため、実施の形態2では、図13(b)及び図14(b)に示すように、パターニング後に、欠陥540の位置が、吸収体膜516が存在する領域544内にくるように図13(a)及び図14(a)に示す位置からパターンレイアウトをずらした描画を行う。言い換えれば、レジスト膜が塗布されたEUVマスクブランク101に描画部400で描画し、レジストを現像し、現像後に残ったレジスト膜で形成されるレジストパターンをマスクとして反射防止膜518と吸収体膜516とをエッチングし、残ったレジスト膜をアッシングで除去することでEUVマスクブランク101のパターニングが行なわれる。かかるパターニングによってEUVマスクが製造される。そして、かかるパターニング後に、欠陥540の位置が、吸収体膜516が存在する領域544内にくるように描画部400で描画する際にパターンレイアウトをずらす。
【0064】
図15は、実施の形態2における欠陥が存在するマスクブランクにパターンを描画する場合の一例を示す概念図である。マスクブランク101には、ALN−マーク52,54が形成されている。検査部300は、マスクブランク101上の欠陥540の有無を検査し、かかるALN−マーク52,54を基準にして欠陥位置および欠陥サイズを測定する。その結果、描画前に事前にALN−マーク52,54の位置を基準にした欠陥位置および欠陥サイズの情報を取得できる。
【0065】
例えば、図15の例では、マスクブランク101の描画領域50の一部の部分領域56内に欠陥540が存在する場合を示している。そのままのパターンレイアウトで描画すると吸収体膜516が存在しない領域542に欠陥540が位置しているため位相欠陥を引き起こす。これに対して、実施の形態2では、部分領域56が部分領域58になるようにパターンレイアウトをずらすことで、吸収体膜516が存在する領域544に欠陥540が位置するように描画用のパターンデータを補正する。
【0066】
上述したずらし量およびずらし方向を演算する処理と並列処理にて、描画データ処理部76は、記憶装置442から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のフォーマットとなるショットデータを生成する。或いは、並列処理でなく、直列の順序で処理しても構わない。処理の順序はどちらが先でも構わない。
【0067】
そして、生成されたショットデータと演算されたずらし量およびずらし方向の情報は制御回路462に出力される。そして、制御回路462によって制御された描画処理部450は、欠陥有と判定された位置がEUV露光を行う場合にEUV光の反射面からはずれるように、電子ビーム200を用いて、吸収体膜とレジストといった他の膜が多層膜(キャッピング層)上にさらに形成されたマスクブランク101にパターンを描画する。具体的には、以下の動作を行なう。照射部の一例となる電子銃201から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形例えば長方形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形例えば長方形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。その結果、電子ビーム200は成形される。このように、電子ビーム200は可変成形される。また、制御回路462は、各ショットデータの位置を演算されたずらし方向に演算されたずらし量だけずらすように補正する。これにより、偏向器208により偏向される偏向量が演算されたずらし方向に演算されたずらし量だけ補正されることになる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向器208により偏向される。その結果、例えば連続移動するXYステージ405上のマスクブランク101の補正された位置に照射される。
【0068】
以上のようにして、欠陥が吸収体パターンに隠れるように、マスクブランクの上に吸収体パターンを形成する。得られた反射型露光マスクは、吸収体パターンの下に欠陥が隠れているため、例えばホールパターンの半導体基板への露光投影には全く支障がない。
【0069】
或いは、部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部64は、マスクブランク上の欠陥PDが単独では転写に影響を与えないような小さなものである場合、吸収体パターンが位相欠陥から充分に離れるように、パターンレイアウトをずらしたずらし量およびずらし方向を演算する。かかるずらし量およびずらし方向を用いることで、得られた反射型露光マスクでは、吸収体パターンの近傍には位相欠陥PDが存在しないので、吸収体パターンABSの半導体基板への露光投影に支障をきたすこと無く、パターン転写を行なうことができる。
【0070】
以上のように実施の形態2によれば、位相欠陥の位置を特定でき、半導体集積回路を定義するための吸収体パターンとマスクブランクの位相欠陥との位置関係を調整することができる。その結果、位相欠陥を有するマスクブランクを良品として使用できる頻度が増大してマスクブランクの歩留まりを大幅に向上させ、製造する反射型マスクのコスト低減に寄与することができる。
【0071】
ここで、実施の形態2では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明したが、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いても構わない。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、実施の形態2において描画部400内でずらし量およびずらし方向を演算したがこれに限るものではない。ユーザによって演算されたずらし量およびずらし方向の情報を入力してもよい。或いは、描画データ自体がユーザによって演算されたずらし量およびずらし方向で補正されたものを描画部400が入力してもよい。
【0073】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、マスク検査装置100、マスク製造装置500、検査部300、及び描画部400を制御する制御部構成については、詳細な記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0074】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0075】
2 デバイスパターンエリア
10,13 光束
11,12,21 領域
14,15 像
17,18 結像点
22 検査ストライプ
23 矢印
50 描画領域
52,54 ALN−マーク
56,58 部分領域
62 欠陥座標・サイズ取得部
64 部分パターンデータ/ずらし量および方向演算部
76 描画データ処理部
78 メモリ
100 マスク検査装置
101 マスクブランク
102 XYθテーブル
103 光源
104 対物レンズ
105,305 センサ
106,306センサ回路
107,307 メモリ
108 比較回路
110 制御計算機
109 記憶装置
111 テーブル制御回路
118 モニタ
119 プリンタ
122,124 レンズ
123 スリット板
126 ビームスプリッタ
128 反射ミラー
132,332 レンズ
172 アライメント処理部
174 差分演算部
176 判定部
120 バス
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 第1のアパーチャ
204 投影レンズ
205,208 偏向器
206 第2のアパーチャ
207 対物レンズ
300 検査部
301 EUV用マスク
400 描画部
402 電子鏡筒
403 描画室
405 XYステージ
406 支持ピン
440,442 記憶装置
410 計算機ユニット
450 描画処理部
460 制御部
462 制御回路
500 マスク製造装置
510 ガラス基板
512 多層膜
514 キャップ膜
516 吸収体膜
518 反射防止膜
540 欠陥
542,544 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を反射する多層膜が形成されたマスクブランクの表面に照明光を照明する照明光学系と、
前記マスクブランク表面から反射された同じ位置の像について、異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像する第1と第2のセンサと、
異なるデフォーカス量で撮像された前記マスクブランク表面の同じ位置での第1と第2の光学画像を用いて、前記マスクブランクの欠陥の有無を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
画素毎に、前記第1と第2の光学画像の差分を演算する差分演算部をさらに備え、
前記判定部は、画素毎に、前記差分が閾値を超えた場合に欠陥と判定することを特徴とする請求項1記載のマスク検査装置。
【請求項3】
前記第1のセンサは、前記第1の光学画像を前記第1の光学画像の結像点の前側で撮像し、
前記第2のセンサは、前記第2の光学画像を前記第2の光学画像の結像点の後側で撮像することを特徴とする請求項1又は2記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記照明光として、波長が180〜210nmの深紫外(DUV:Deep Ultra Violet)光を用いることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のマスク検査装置。
【請求項5】
極端紫外(EUV:Extreme Ultra Violet)光を反射する多層膜が形成されたマスクブランクの表面に照明光を照明する照明光学系と、
前記マスクブランク表面から反射された同じ位置の像について、異なるデフォーカス量でデフォーカスさせた位置で撮像する第1と第2のセンサと、
異なるデフォーカス量で撮像された前記マスクブランク表面の同じ位置での第1と第2の光学画像を用いて、前記マスクブランクの欠陥の有無を判定する判定部と、
欠陥有と判定された位置がEUV露光を行う場合に前記EUV光の反射面からはずれるように、荷電粒子ビームを用いて、他の膜がさらに形成された前記マスクブランクにパターンを描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする露光用マスク製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−59984(P2012−59984A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202832(P2010−202832)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】