説明

マフラーサポート

【課題】ゴム材料自体の低ばね化やゴムボリュームの減少による耐久性の低下の問題および振動入力方向のばね特性の高ばね化による防振性能の低下の問題を伴うことなく、装着時における排気管側と車体側との各取付位置の相対的な寸法ばらつきに起因する装着作業の困難さを効果的に軽減せしめ得る、新規なマフラーサポートを提供すること。
【解決手段】インナ取付部材12とアウタ取付部材14を連結するゴム弾性体16の対向板部としての側板部32への固着部分に、断面積の大きな基端部分44を形成し、且つ該基端部分44に肉抜穴46を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排気管を車体に対して防振支持せしめるマフラーサポートに係り、特にマフラーサポートの防振性能や耐久性を損なうことなく装着作業を容易に行うことを可能にした新規構造のマフラーサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気管の車体への支持部位には、マフラーサポートが用いられている。マフラーサポートとしてゴム単品で形成された吊り下げタイプもあるが、かかるゴム単品のマフラーサポートでは、排気管の他部品への干渉を避けるために排気管の変位量を確実に制限することが難しい。そこで、例えば、特開2005−2963号公報(特許文献1)に示されているように、車体に取り付けられる溝形取付金具の溝内に、排気管に取り付けられる取付軸金具を挿通配置させて、取付軸金具を溝形取付金具の両側壁に対して一対のゴム弾性体で連結せしめた構造のマフラーサポートが提案されている。
【0003】
ところで、マフラーサポートには、充分な耐久性を確保しつつ、排気管の振動絶縁のために一般の防振マウント等に比して柔らかいばね特性を確保することが要求される。そこで、上記特許文献1にも示されているように、ゴムボリュームを確保して耐久性を維持しつつ、排気管の振動入力方向となる上下方向で柔らかいばね特性を実現するために、取付軸金具を挟んだ両側で溝形取付金具の両側壁に向かって略水平方向に延びる一対のゴム弾性体が採用されており、このゴム弾性体における排気管の振動入力方向の主たる変形が剪断変形となるようにされている。
【0004】
一方、排気管は長尺で車体のフロントからリヤまで延びていることから、自動車の各部品や組付けのばらつきに起因して、マフラーサポートにおける排気管側の取付位置と車体側の取付位置とが相互に位置ずれし易い。それ故、マフラーサポートには、このような取付位置にずれが生じた場合でも、大きな支障なく良好な作業性をもって装着できることが要求される。
【0005】
ところが、上述の特許文献1に記載の如き従来構造のマフラーサポートでは、柔らかいばね特性を実現するために採用された略水平方向に延びる本体ゴム弾性体が、取付軸金具の溝形取付金具に対する両側壁への接近/離隔方向の相対変位に際して圧縮/引張変形することになる。そのために、取付軸金具の排気管側への取付位置と溝形取付金具の車体側への取付位置とにずれが生じた場合に、取付軸金具を溝形取付金具に対して相対変位させて排気管側と車体側との各取付位置に取り付けるに際して、それら取付軸金具と溝形取付金具との間でゴム弾性体が圧縮/引張変形することとなって大きな変形剛性のために装着作業が非常に困難になっていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−2963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、ゴム材料自体の低ばね化やゴムボリュームの減少による耐久性の低下の問題および振動入力方向のばね特性の高ばね化による防振性能の低下の問題を伴うことなく、装着時における排気管側と車体側との各取付位置の相対的な寸法ばらつきに起因する装着作業の困難さを効果的に軽減せしめ得る、新規な構造のマフラーサポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、排気管に取り付けられるインナ取付部材を、車体に取り付けられるアウタ取付部材に設けられた一対の対向板部間に配設して、該インナ取付部材から該一対の対向板部に向かって両側に延びる一対のゴム弾性体を設けたマフラーサポートにおいて、前記一対のゴム弾性体における前記インナ取付部材から前記対向板部への延び方向に対する直交断面積を、該対向板部への固着側端部において大きくして肉厚の基端部分を形成すると共に、該基端部分において該対向板部に沿って延びる肉抜穴を設けたマフラーサポートを、特徴とする。
【0009】
本態様のマフラーサポートでは、ゴム弾性体の基端部分に肉抜穴を設けたことにより、アウタ取付部材における一対の対向板部に対してインナ取付部材が接近/離隔方向に相対変位せしめられた際、それに伴って及ぼされる荷重方向での基端部分のばね特性が柔らかくされて弾性変形が容易に許容され得る。また、アウタ取付部材に対してインナ取付部材が、一対の対向板部と平行な方向に相対変位せしめられた際には、本体ゴム弾性体自体の弾性変形が主として剪断変形とされることで容易に許容され得る。それ故、インナ取付部材とアウタ取付部材とにおける排気管側と車体側への取付位置の相対的な位置調節を、基端部分やゴム弾性体自体の柔らかいばね剛性に基づいて、容易に行うことが可能となる。従って、部品寸法誤差や組付誤差等による車両毎の個体差により、マフラーサポートの排気管側への取付位置と車体側への取付位置とが相対的にずれている場合でも、マフラーサポートのインナ取付部材とアウタ取付部材をそれら各取付位置に対して容易に取り付けることができて、優れた作業性をもってマフラーサポートを車両に対して装着することが可能となる。
【0010】
しかも、肉抜穴を設けた基端部分は、ゴム弾性体の端部だけに設けられていることに加えて、その端部の全面が対向板部に固着されて拘束されており、更に基端部分の断面積がゴム弾性体の本体部分よりも大きくされている。これらにより、排気管の支持荷重や主たる振動の入力方向となる鉛直上下方向では、基端部分によるばね特性の著しい低下や、基端部分への応力や変形の集中が軽減乃至は回避され得る。その結果、排気管の支持特性や防振性能、更にゴム弾性体の耐久性に関して、何れも、優れた性能が確保され得るのである。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るマフラーサポートにおいて、更に、前記基端部分における前記肉抜穴が、該基端部分の内部を貫通して形成された構造を、採用したものである。
【0012】
本態様のマフラーサポートでは、アウタ取付部材における一対の対向板部に対してインナ取付部材が接近/離隔方向に相対変位せしめられた際にゴム弾性体に及ぼされる入力方向での基端部分におけるばね剛性の低下が一層効果的に図られる。これにより、マフラーサポートの排気管側への取付位置と車体側への取付位置とが相対的にずれている場合に、インナ取付部材とアウタ取付部材をそれら各取付位置に対して取り付けるための作業を一層容易に行うことが可能となる。
【0013】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係るマフラーサポートであって、更に、前記肉抜穴が、振動の主たる入力方向となる装着状態での上下方向に貫通して形成されているものである。
【0014】
本態様のマフラーサポートでは、肉抜穴が上下方向に延びて形成されていることにより、かかる肉抜部を設けたことに起因する排気管支持荷重や振動の入力方向となる鉛直上下方向のばね特性や耐久性への悪影響を回避しつつ、一対の対向板部に対するインナ取付部材の接近/離隔方向への相対変位に際してのゴム弾性体のばね特性を低ばね化することが、一層効果的に実現可能となる。
【0015】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に係るマフラーサポートであって、更に、前記肉抜穴の幅寸法が、前記ゴム弾性体の延び方向の中間部分における幅寸法よりも大きくされているものである。
【0016】
本態様のマフラーサポートでは、一対の対向板部に対するインナ取付部材の接近/離隔方向への相対変位に際して、基端部分に対してゴム弾性体の本体部分から及ぼされる力が、該基端部分における肉抜穴を押しつぶす方向に一層効率的に作用せしめられる。その結果、一対の対向板部に対するインナ取付部材の接近/離隔方向への相対変位に際してゴム弾性体によって発揮されるばね特性を、かかる基端部分において、一層低ばね化することが可能となる。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第一〜四の何れか一の態様に係るマフラーサポートにおいて、更に、前記インナ取付部材が直線的に延びる軸形状とされている一方、前記アウタ取付部材が底板部の両側に一対の側板部が一体形成された溝形状とされており、該アウタ取付部材の溝部内を溝方向に延びる状態で該インナ取付部材が配設されて、該インナ取付部材から前記一対の対向板部としての該一対の側板部に向かって両側に延びる前記一対のゴム弾性体により該インナ取付部材と該アウタ取付部材とが弾性連結されていると共に、振動の主たる入力方向となる装着状態での上下方向で該一対のゴム弾性体が該インナ取付部材から該アウタ取付部材における該一対の側板部に向かって斜め下方に傾斜して延びている構造を、採用したものである。
【0018】
本態様のマフラーサポートでは、インナ取付部材が軸形状とされて軸方向長さが確保されることにより、インナ取付部材と一対の対向板部との対向面間を弾性連結するゴム弾性体のゴムボリュームを、基端部分を含めて大きく設定することが可能となる。その結果、耐久性を確保しつつばね特性のチューニング自由度が大きくされ得る。また、一対のゴム弾性体が斜め下方に傾斜して延びていることにより、装着状態下でゴム弾性体に対して排気管の支持荷重が及ぼされた場合でも、基端部分を含むゴム弾性体に生ぜしめられる引張応力が軽減されて、耐久性の更なる向上が図られ得る。
【0019】
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れか一の態様に係るマフラーサポートであって、更に、前記インナ取付部材と前記アウタ取付部材との間に前記排気管の支持荷重が及ぼされる装着状態において、前記基端部分における前記肉抜穴が少なくとも一部において潰れる構造を、採用したものである。
【0020】
本態様のマフラーサポートにおいては、自動車への装着作業時に、基端部分の肉抜穴の作用によりインナ取付部材とアウタ取付部材を相対的に変位させて排気管と車体の各取付位置に対して取り付ける作業を容易に行うことが出来る。一方、自動車への装着後には、基端部分の肉抜穴が少なくとも一部で潰れることで、肉抜穴を設けたことに起因するゴム弾性体の防振特性や耐久性への悪影響が一層効果的に回避され得て目的とする性能が一層安定して発揮され得ることとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従う構造とされたマフラーサポートでは、インナ取付部材とアウタ取付部材を連結するゴム弾性体の対向板部への固着部分に、断面積の大きな基端部分を形成し、且つ該基端部分に肉抜穴を設けたことにより、ゴム弾性体によって発揮される防振性能や耐久性の低下を可及的に回避しつつ、アウタ取付部材の対向板部に対するインナ取付部材の接近/離隔方向の相対変位を低ばね剛性下で容易に許容させ、排気管側と車体側との各取付位置の相対的な寸法ばらつきに対応した装着作業性の向上を効果的に達成せしめ得たのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態としてのマフラーサポートの正面図。
【図2】図1に示されたマフラーサポートの平面図。
【図3】図1の右側面図。
【図4】図1のIV−IV断面図
【図5】図1に示されたマフラーサポートの装着状態を例示する参考図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1〜4には、本発明の第一実施形態としてのマフラーサポート10が示されている。このマフラーサポート10は、インナ取付部材12とアウタ取付部材14とが、一対のゴム弾性体16,16で弾性連結された構造を有している。そして、図5に示されているように、インナ取付部材12が排気管18に対して固定的に取り付けられる一方、アウタ取付部材14が車両の車体20に対して固定的に取り付けられることにより、排気管18の長さ方向中間部分を車体20に対して防振支持するようになっている。
【0025】
なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、車両装着状態において略鉛直上下方向となる図1中の上下方向を言う。また、車両装着状態で何れも略水平方向となる、図1中の左右方向を左右方向と言うと共に、図1の紙面に垂直な方向を前後方向という。実際の車両装着状態では、かかる説明中の左右方向と前後方向の何れが、車両左右方向または車両前後方向であっても良いし、更に排気管18の支持位置や装着スペース等によって、車両左右方向や前後方向に対して傾斜した斜め方向であっても良い。
【0026】
また、自動車への装着状態では、インナ取付部材12とアウタ取付部材14との間に、排気管18の分担支持荷重が及ぼされる。それにより、ゴム弾性体16,16が弾性変形せしめられて、インナ取付部材12がアウタ取付部材14に対して下方に所定量だけ相対変位して位置せしめられることとなる。
【0027】
より詳細には、インナ取付部材12は、装着状態で前後方向に向かって一定断面形状で直線的に延びる軸形状の金具であり、中心軸上には軸方向に貫通して延びる取付孔22が形成されている。インナ取付部材12の外周面のうち、左右両側面24,24は、上側部分が略平行に上下方向に延びる平行面とされ且つ下側部分が下方に向かって次第に幅寸法が小さくなる下向きの傾斜面とされている。また、インナ取付部材12の取付孔22には、軸方向に延びる凹凸が付されており、全体として花びら型の断面形状とされている。
【0028】
そして、自動車への装着状態を表す図5中に仮想線で示されているように、排気管18に固着された鉤形(逆L字形)の取付軸28が、インナ取付部材12の取付孔22に嵌め入れられ、必要に応じてボルト等で固定されることによって取り付けられている。なお、取付軸28の外周面には、取付孔22の内周面に対応した凹凸が付されており、インナ取付部材12に対する取付軸28の中心軸回りの回転が阻止されるようになっている。
【0029】
一方、アウタ取付部材14は、帯板形状の金具をプレス加工すること等によって形成されたものであり、左右方向に延びる平坦な底板部30の長さ方向両側にそれぞれ上方に向かって立ち上がる一対の対向板部としての左右一対の側板部32,32が一体形成された溝形状とされている。なお、底板部30と側板部32,32は、インナ取付部材12の軸方向長さと略同じ略一定の幅寸法を有している。また、底板部30および両側板部32,32には、幅方向中央部分を略全長に亘って延びる補強リブ34が設けられている。
【0030】
また、アウタ取付部材14には、両側板部32,32の各上端縁部から相互に離隔する外方に向かって水平に広がる取付板部36,36が一体形成されている。これら取付板部36,36には、各中央部分にボルト孔38,38が設けられており、図示しない固定ボルトがボルト孔38に挿通されて車体20に螺合されることにより、両側板部32,32が車体20に対してボルト固定されて取り付けられるようになっている。なお、各側板部32と取付板部36との間には、幅方向両側縁部間に跨がって延びる補強片40,40が一体形成されている。
【0031】
そして、前後方向に延びる溝形状とされたアウタ取付部材14に対して、かかる溝部内の幅方向中央部分で底部から所定距離だけ上方に離れた位置を前後方向に延びる状態でインナ取付部材12が配設されている。更に、インナ取付部材12を軸直角方向に挟んだ左右両側には、一対のゴム弾性体16,16が配設されており、インナ取付部材12の左右両側面24,24とアウタ取付部材14の左右両側板部32,32との各対向面が、かかる一対のゴム弾性体16,16で弾性連結されている。
【0032】
一対のゴム弾性体16,16は、インナ取付部材12の左右両側で斜め下方に傾斜して延びており、図1の正面図に示されているように全体として「ハ」字状とされている。そして、マフラーサポート10の装着状態下、インナ取付部材12とアウタ取付部材14との間へ、排気管18の分担支持荷重が上下方向に及ぼされると、図5に示されているように、かかる分担支持荷重でゴム弾性体16,16が弾性変形する。その結果、インナ取付部材12がアウタ取付部材14に対して下方に所定量だけ相対変位して位置せしめられることとなり、インナ取付部材12が、アウタ取付部材14の凹溝内の略中央に位置するようにされる。これにより、振動入力に伴うゴム弾性体16,16への引張応力の発生が軽減されて、耐久性の向上が図られている。
【0033】
また、一対のゴム弾性体16,16は、それぞれ、インナ取付部材12から延び出してアウタ取付部材14の側板部32の近くまで至る本体部分42と、アウタ取付部材14の側板部32側の端部に位置して該側板部32に固着された基端部分44とを含んで一体成形されている。即ち、本実施形態のマフラーサポート10は、インナ取付部材12とアウタ取付部材14に加硫接着されて一対のゴム弾性体16,16が一体成形された一体加硫成形品として構成されている。
【0034】
一対のゴム弾性体16,16の本体部分42,42は、略矩形とされた一定の断面形状で、インナ取付部材12から左右の両側板部32,32に向かって斜め下方に「ハ」字状に傾斜して(図1参照)且つ平面視では一直線上に(図2参照)延びている。
【0035】
一方、各基端部分44は、肉厚の略矩形ブロック形状とされており、その一方の面(インナ取付部材12側の面)の中央部分に対して、本体部分42の外側端面が一体的に連結されている。また、基端部分44の他方の面(アウタ取付部材14側の面)は、その全面において、アウタ取付部材14の側板部32の略中央に対して加硫接着されている。
【0036】
ここにおいて、ゴム弾性体16の延び方向である図1,2中の左右方向に対して直交する断面を見ると、図4に示されているとおり、本体部分42に比して基端部分44の方が一回り大きな断面形状とされ、その断面積が大きくされている。そして、インナ取付部材12とアウタ取付部材14との間でゴム弾性体16に入力される外力が、本体部分42から基端部分44の略中央部分に対して及ぼされるようになっている。
【0037】
また、各基端部分44には、側板部32の面に沿って延びるようにして肉抜穴46が形成されている。本実施形態の肉抜穴46は、防振すべき振動の主たる入力方向となる装着状態での上下方向で、基端部分44を略一定断面形状で直線的に貫通して形成されている。特に、肉抜穴46は基端部分44の幅方向中央部分に形成されていると共に、肉抜穴46の幅寸法(B1)は、本体部分42の断面幅寸法(B2)よりも大きくされている。これにより、図4に示されているとおり、左右方向の投影において、本体部分42が、肉抜穴46に重なるようにされている。
【0038】
上述の如き構造とされた本実施形態のマフラーサポート10においては、その装着状態下、防振すべき主たる振動が上下方向に及ぼされると、一対のゴム弾性体16,16の弾性変形に基づいて、インナ取付部材12がアウタ取付部材14に対して弾性変位せしめられて、目的とする防振効果が発揮されることとなる。かかる振動入力に際して、一対のゴム弾性体16,16は、実質的に剪断変形せしめられることから、柔らかいばね特性が発揮されて、優れた振動絶縁効果を得ることができるのである。
【0039】
さらに、自動車では、排気管18や車体20の各種構成部材における寸法誤差や組付誤差の重畳に起因して、マフラーサポート10の装着部位における排気管18と車体20の固定用ねじ穴との間に相対的な位置ずれが発生し易い。かかる位置ずれには、マフラーサポート10の装着時にインナ取付部材12とアウタ取付部材14を相対変位させて、それらインナ取付部材12とアウタ取付部材14を排気管18と車体20とに各々取り付けることによって対応することとなる。
【0040】
その際、上述の構造とされたマフラーサポート10では、ゴム弾性体16を構成する基端部分44に肉抜穴46が形成されていることから、インナ取付部材12とアウタ取付部材14を水平方向となる左右方向において、かかる肉抜部46の潰れに伴う基端部分44の低ばね剛性(柔らかいばね特性)が発揮されることとなる。それ故、本体部分42の弾性変形が剪断方向となる前後方向だけでなく、左右方向に向けても、インナ取付部材12とアウタ取付部材14を相対変位させることが、ゴム弾性体16,16の低ばね剛性のもとで容易に許容され得ることとなり、排気管18と車体20の固定用ねじ穴との相対的な位置ずれに対処してマフラーサポート10を自動車に対して良好な作業性をもって装着することが可能となるのである。
【0041】
加えて、本実施形態のマフラーサポート10では、ゴム弾性体16の軸直角方向断面において基端部分44の断面積が本体部分42よりも大きくされていること、基端部分44の外側端面が全面に亘ってアウタ取付部材14に固着されていること、および肉抜穴46の荷重作用方向での内法がインナ取付部材12とアウタ取付部材14の対向面間に延びるゴム弾性体16の弾性主軸の長さに比して充分に小さくされていること等から、基端部分44に肉抜穴46が形成されていても、ゴム弾性体16に要求される排気管の支持ばね特性や防振特性、耐久性等に関して、大きな問題となることがない。
【0042】
すなわち、ゴム弾性体16の基端部分44には、上下方向に及ぼされる振動荷重が本体部分42を通じて厚さ方向(図1,2中の左右方向)の圧縮力となる分力が及ぼされることとなる。そして、かかる基端部分44における厚さ方向のばね特性は、肉抜穴46により柔らかくされているが、上述の如き理由(本体部分42に比して基端部分44の断面積の大形化、基端部分44のアウタ取付部材14への全面固着、荷重作用方向での肉抜部46の小寸法化等)により、かかる肉抜穴46によって発現される基端部分44の低ばね特性が、振動の初期荷重に対して一層の低ばね化による防振性能の向上効果として寄与することはあっても、ゴム弾性体16の支持ばね剛性や防振ばねの過度の低下に伴う防振性能、耐久性等に関して問題となることもない。
【0043】
特に、図5に示されているように、振動荷重が大きくなると肉抜穴46の少なくとも一部が潰れて実質的に消失することから、防振性能や荷重支持特性に関して、肉抜穴46の影響は、実質的に回避され得る。なお、振動荷重が作用していない静置状態でも、排気管18の分担支持荷重の作用により、図5に示されているように肉抜穴46の少なくとも一部が潰れた状態で装着されるようにすることも可能であり、それによって、肉抜穴46の形成に伴う装着状態下でのばね特性への影響が可及的に回避され得る。そして、このように装着状態下や振動入力下で肉抜穴46が潰れる場合であっても、装着に際しては、かかる肉抜穴46の作用に基づいて、前述のように左右方向の低ばね剛性化に基づく装着作業の容易化という技術的効果は有効に発揮され得るのである。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、かかる実施形態における具体的な記載によって本発明が限定的に解釈されるものでない。例えば、基端部分44に形成される肉抜穴の具体的構成は、要求されるばね特性や耐荷重特性、装着時のインナ取付部材とアウタ取付部材との相対変位特性等を考慮して適宜に変更設定可能であって、何等限定されるものでない。具体的には、かかる肉抜穴を複数に分割して互いに平行に延びる複数本の肉抜穴を形成したり、水平方向に延びる肉抜穴や、鉛直方向と水平方向とに各複数本ずつ格子状に延びる肉抜穴を形成したりすることも可能である。また、基端部分44における肉抜穴46を、基端部分44の上端面から下方に向かって下端面までは達しない長さ(好適には上下方向中央よりも下方にまで延びる長さ)とするなど、非貫通状態の肉抜穴を基端部分44に形成することも可能である。
【0045】
また、左右で対を為すゴム弾性体16,16を、二対以上設けることでばね特性を調節することも可能であり、その場合には、基端部分44を共通化して本体部分42だけを複数本(インナ取付部材12とアウタ取付部材14との間に跨がって延びるようにして)形成することも可能である。
【0046】
また、インナ取付部材12やアウタ取付部材14の具体的形状は、排気管や車体への取付構造等によって適宜に変更されるものであり、例えばインナ取付部材として例示の軸形状の他にブロック形状や筒形状等が採用可能であり、アウタ取付部材における一対の対向板部を相互に独立部材として構成すること等も可能である。
【符号の説明】
【0047】
10:マフラーサポート、12:インナ取付部材、14:アウタ取付部材、16:ゴム弾性体、18:排気管、20:車体、30:底板部、32:側板部(対向板部)、44:基端部分、46:肉抜孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に取り付けられるインナ取付部材を、車体に取り付けられるアウタ取付部材に設けられた一対の対向板部間に配設して、該インナ取付部材から該一対の対向板部に向かって両側に延びる一対のゴム弾性体を設けたマフラーサポートにおいて、
前記一対のゴム弾性体における前記インナ取付部材から前記対向板部への延び方向に対する直交断面積を、該対向板部への固着側端部において大きくして肉厚の基端部分を形成すると共に、該基端部分において該対向板部に沿って延びる肉抜穴を設けたことを特徴とするマフラーサポート。
【請求項2】
前記基端部分における前記肉抜穴が、該基端部分の内部を貫通して形成されている請求項1に記載のマフラーサポート。
【請求項3】
前記肉抜穴が、振動の主たる入力方向となる装着状態での上下方向に貫通して形成されている請求項2に記載のマフラーサポート。
【請求項4】
前記肉抜穴の幅寸法が、前記ゴム弾性体の延び方向の中間部分における幅寸法よりも大きい請求項3に記載のマフラーサポート。
【請求項5】
前記インナ取付部材が直線的に延びる軸形状とされている一方、前記アウタ取付部材が底板部の両側に一対の側板部が一体形成された溝形状とされており、
該アウタ取付部材の溝部内を溝方向に延びる状態で該インナ取付部材が配設されて、該インナ取付部材から前記一対の対向板部としての該一対の側板部に向かって両側に延びる前記一対のゴム弾性体により該インナ取付部材と該アウタ取付部材とが弾性連結されていると共に、
振動の主たる入力方向となる装着状態での上下方向で該一対のゴム弾性体が該インナ取付部材から該アウタ取付部材における該一対の側板部に向かって斜め下方に傾斜して延びている請求項1〜4の何れか1項に記載のマフラーサポート。
【請求項6】
前記インナ取付部材と前記アウタ取付部材との間に前記排気管の支持荷重が及ぼされる装着状態において、前記基端部分における前記肉抜穴が少なくとも一部において潰れる請求項1〜5の何れか1項に記載のマフラーサポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117404(P2012−117404A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266076(P2010−266076)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】