説明

マルチカメラのキャリブレーション用全周フィールド

【課題】マルチカメラをキャリブレーションする場合の被写体であって、カメラごとに被写体を移動させることなく、高精度なマルチカメラのキャリブレーションが可能な全周フィールドおよびその撮影方法を提供する。
【解決手段】全周フィールドは、基準方向に光軸を有する基準カメラ11と、基準方向とは異なる方向に光軸を有する他のカメラ12とを有するマルチカメラ10aで撮影し、キャリブレーションするための全周フィールド1であって、マルチカメラ10aの内部パラメータまたは外部パラメータを測定するために撮影される、全周フィールド1内に配置された、三次元座標が既知の複数のターゲットを備える。基準方向から所定の角度範囲においては、ターゲットが第1の密度で配置され、基準方向から所定の角度範囲の範囲外においては、ターゲットが第1の密度よりも高い第2の密度で配置される。また、全周フィールド1の法線は、少なくとも2方向を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチカメラをキャリブレーションする際の被写体であって、内部パラメータおよび外部パラメータを正確に測定するための、マルチカメラのキャリブレーション用全周フィールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収差の少ない画像を得るために、精密に計測され三次元上に配置された多数の点を複数方向から撮影し計測することにより、カメラの内部パラメータおよび外部パラメータを解析的に求めている。
【0003】
従来のカメラのキャリブレーション用被写体としては、焦点距離が可変であるズームレンズの場合でも比較的狭い空間で使用可能な校正用三次元フィールドがある(例えば、特許文献1参照。)。校正用三次元フィールドは、例えば地下室のような温度変化の少ない環境において、コンクリート壁のような壁面やパネルに、広角用の基準マークと望遠用の基準マークを、相対的な位置関係が変動しないように配置させたものである(段落0022、図1〜図4)。この校正用三次元フィールドを、校正対象である単一のキャリブレーションチャート撮影用カメラで複数方向から撮影し、キャリブレーションチャート画像を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−347544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数のカメラを外向きに配置し、複数方向の画像を取得可能なマルチカメラ(図7参照)をキャリブレーションする場合、校正用三次元フィールドのようなキャリブレーション用被写体を用いると、カメラの方向ごとにキャリブレーション用被写体を移動させ撮影しなければならない。
そこで本発明は、マルチカメラをキャリブレーションする場合に用いる被写体であって、カメラの方向ごとに被写体を移動させることなく、高精度なマルチカメラのキャリブレーションが可能となるキャリブレーション用被写体(全周フィールド)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る全周フィールドは、例えば図1に示すように、基準方向に光軸11’を有する基準カメラ11と、前記基準方向とは異なる方向に光軸12’を有する他のカメラ12とを有するマルチカメラ10aで撮影し、マルチカメラ10aをキャリブレーションするための全周フィールド1であって、マルチカメラ10aの内部パラメータまたは外部パラメータを測定するために撮影される、全周フィールド1内に配置された、三次元座標が既知の複数のターゲットを備え;前記基準方向から所定の角度範囲においては、前記ターゲットが第1の密度で配置され、前記基準方向から所定の角度範囲の範囲外においては、前記ターゲットが前記第1の密度よりも高い第2の密度で配置され、前記全周フィールド1の法線は、少なくとも2方向を有する。
なお、マルチカメラとは、光軸方向が異なる複数のカメラが外向きに配置され、複数方向の視野の画像を同期して取得することができるカメラシステムをいう。したがって、マルチカメラには、純粋の全周、例えば水平方向360度を複数のカメラで撮影できるものほか、任意の方向の360度を複数のカメラで撮影できるものを含み、さらに、360度までいかなくとも、180度を超える相当広範囲を複数のカメラで撮影できるもの(超広範囲を撮影するカメラ)も含まれる。「全周フィールド」の「全周」とは、360度に限られず、マルチカメラの各カメラがターゲットを撮影できるように、各カメラを覆う空間が形成できればよい。すなわち、撮影対象となるターゲットが各カメラの撮影領域に存在するように配置可能なフィールドであればよい。全周フィールドを構成するものとしては、上記の壁面に限られず、パネル等を用いてもよい。既知の「三次元座標」とは、絶対基準点としての世界座標系における既知の三次元座標をいう。「世界座標系」とは、マルチカメラの有する全てのカメラについて統一した座標系をいう。
【0007】
このように構成すると、画像中心部と比べてレンズ歪みの大きい画像周辺部であっても、高精度なキャリブレーションが可能となる。一般的にマルチカメラは、それぞれのカメラに広角レンズが用いられ、広い視野の画像を取得する。そのため、得られた画像はレンズによる歪みが大きい。本願発明では、基準方向からの所定の角度範囲の範囲外において、より高い密度でターゲットを配置することにより、歪みの大きい場所でのキャリブレーションの精度を高めることができる。さらに、基準方向からの所定の角度範囲においては、より低い密度とすることで、キャリブレーション時の計算量を減らすことができる。さらに、全周フィールドを移動させることなく、マルチカメラが有する各カメラを同期させてターゲットを撮影することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第1の態様に係る全周フィールド1において、例えば図5に示すように、前記第1の密度で配置されたターゲットは、第1の大きさであり、前記第2の密度で配置されたターゲットは、第1の大きさよりも大きな第2の大きさであり、撮影されたターゲットの大きさが揃うように、前記第1の大きさのターゲットと前記第2の大きさのターゲットは構成されている。
なお、「ターゲットの大きさが揃う」とは、完全に同一の大きさとなる場合に限られず、撮影精度が保証できる大きさでターゲットを撮影できるのであれば、大きさが多少異なる場合も含まれる。
【0009】
このように構成すると、ターゲットの大きさが画像周辺部と比べて中心部では小さくなるが、撮影精度が保証できる大きさとすることができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係る全周フィールド1において、例えば図1に示すように、基準カメラ11と他のカメラ12は、互いにオーバーラップ領域14を設けて撮影するように配置され、前記第2の密度で配置されたターゲットは、オーバーラップ領域14に撮影されるように前記ターゲットを配置する。
なお、本発明の第3の態様に係る全周フィールドは、所望のキャリブレーションの精度が担保できる範囲内であれば、ターゲットが、オーバーラップ領域よりもより広範囲に密に配置される場合、およびオーバーラップ領域よりもより狭範囲に密に配置される場合をも含むものとする。すなわち、ターゲットを密に配置する領域は、オーバーラップ領域と完全に重なる場合に限られず、密に配置する領域とオーバーラップ領域に多少のずれが生じている場合も含むものとする。
【0011】
このように構成すると、オーバーラップ領域にはより高い密度で配置されたターゲットが撮影されるため、画像歪み(レンズ歪み)の大きい部分でのキャリブレーションの精度が高くなり、マルチカメラで撮影された画像間の繋ぎの精度を高めることができる。よって、パノラマ画像の作成において、つなぎ部分の違和感のより少ない画像を得ることができる。すなわち、パノラマ画像を取得するためのより正確なカメラ間のキャリブレーションが可能となる。なお「パノラマ画像」とは、パノラマ動画像をも含む。
【0012】
本発明の第4の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第3の態様に係る全周フィールド1において、例えば図1に示すように、他のカメラ12の光軸方向から所定の角度範囲は、オーバーラップ領域14以外の領域であり、他のカメラ12の光軸方向から所定の角度範囲においては、前記ターゲットが第3の密度で配置され、前記第2の密度は、前記第3の密度よりも高い。
【0013】
このように構成すると、基準カメラと他のカメラの光軸方向から所定の角度範囲においては、ターゲットがより粗く配置されるため、各カメラのキャリブレーション時の計算量を減らすことができる。一方で、各カメラの光軸方向から所定の角度範囲の範囲外(オーバーラップ領域)においては、ターゲットがより密に配置されるため、各カメラのキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1の態様に係る全周フィールド1において、基準カメラ11の前記基準方向から所定の角度範囲は、カメラが有するレンズの所定の歪み量以下の範囲である。
【0015】
このように構成すると、レンズの所定の歪み量に基づいて、所定の角度範囲およびその角度範囲外を決定できる。したがって、より効率的に、歪み量のより少ない範囲においてはキャリブレーション時の計算量を減らすことができ、歪み量のより多い範囲においてはキャリブレーションの精度を高めることができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1の態様に係る全周フィールド1において、例えば図3(a)に示すように、全周フィールドが、マルチカメラの周囲を囲むように構成される。
【0017】
このように構成すると、水平方向360度の視野を撮影することができるマルチカメラのキャリブレーションが可能となる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1の態様に係る全周フィールドにおいて、例えば図7に示すように、基準カメラが天頂方向に向けられ、前記基準方向とは異なる方向に光軸を有する複数の他のカメラが前記基準カメラの周囲に配置されたマルチカメラ10b、10c、10dにより撮影される全周フィールドであって、前記全周フィールドは、マルチカメラ10b、10c、10dの周囲を囲む側面と、マルチカメラ10b、10c、10dを覆う上面から構成される。
なお、「天頂方向」とは、天頂に限られず、天底方向、水平方向、および、任意の方向をも含み、基準カメラがこれらの方向に向けて設置される場合をも含む。
【0019】
このように構成すると、各カメラが全周および天頂方向に配置されたマルチカメラであっても全周フィールドを撮影でき、全天球パノラマ画像を生成可能なマルチカメラのキャリブレーションが可能となる。なお、基準カメラが水平方向に向けられた場合は、全天球パノラマ画像は90度反転し、天底に向けられた場合は180度反転する。
【0020】
本発明の第8の態様に係る全周フィールドは、上記本発明の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1の態様に係る全周フィールドにおいて、例えば図16に示すように、前記ターゲットは、カラーコード付きターゲットである。
【0021】
このように構成すると、ターゲットにカラーコード付きターゲットを使用しているため、各ターゲットを容易に識別でき、特にオーバーラップ領域における画像間の対応点の特定を容易にすることができる。さらに、カラーコード付きターゲットを使用して、公知の方法を用いて各カメラの明度低下現象の補正や複数カメラ間の相対的な色調補正が可能となる。
【0022】
本発明の第9の態様に係る全周フィールドの撮影方法は、例えば図13に示すように、基準方向に光軸11’を有する基準カメラ11と、前記基準方向とは異なる方向に光軸12’を有する他のカメラ12とを有するマルチカメラ10aで撮影する、キャリブレーション用全周フィールド1の撮影方法であって、マルチカメラ10aを配置する工程(S01)と;前記基準方向から所定の角度範囲においては、三次元座標が既知のターゲットを第1の密度で配置し、前記基準方向から所定の角度範囲の範囲外においては、三次元座標が既知のターゲットを前記第1の密度よりも高い第2の密度で配置して、全周フィールド1の法線方向が少なくとも2方向になるように全周フィールド1を構成する工程(S02)と;基準カメラ11の光軸11’を、前記第1の密度で配置されたターゲットに向けてセットする工程(S03)と;マルチカメラ10aの内部パラメータまたは外部パラメータを測定するために、複数の前記ターゲットをマルチカメラ10aで撮影する工程(S04)とを備える。なお、ターゲットに向けてセットする工程(S03)は、全周フィールドの法線方向に向けてセットすることが好ましい。
なお、マルチカメラ10aを配置する工程(S01)と全周フィールド1を構成する工程(S02)は、順序を問わない。
【0023】
このように構成すると、基準方向からの所定の角度範囲の範囲外において、より高い密度でターゲットを配置することにより、レンズ歪みの大きい場所でのキャリブレーションの精度を高めることができ、基準方向からの所定の角度範囲においては、より低い密度で配置することで、キャリブレーション時の計算量を減らすことができる全周フィールドの撮影方法となる。
【0024】
本発明の第10の態様に係る全周フィールドの撮影方法は、上記本発明の第9の態様に係る全周フィールドの撮影方法において、例えば図13に示すように、全周フィールド1を構成する工程(S02)は、基準カメラ11と他のカメラ12が互いにオーバーラップ領域を設けて撮影するように、かつ、前記オーバーラップ領域には、前記第2の密度で配置されたターゲットが撮影されるように、全周フィールド1を構成する。
【0025】
このように構成すると、オーバーラップ領域にはより高い密度で配置されたターゲットが撮影されるため、画像歪み(レンズ歪み)の大きい部分でのキャリブレーションの精度が高くなり、特に画像間の繋ぎの精度を高めることができる全周フィールドの撮影方法となる。よって、パノラマ画像の作成において、つなぎ部分の違和感のより少ない画像を得ることができる。すなわち、パノラマ画像を取得するためのより正確なカメラ間のキャリブレーションが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の全周フィールドは、マルチカメラをキャリブレーションする場合の被写体であって、カメラごとに被写体を移動させることなく、高精度なマルチカメラのキャリブレーションが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】3つのカメラを有するマルチカメラ10aと、全周フィールド1の位置関係およびターゲットを粗くおよび密に配置する例を説明する図である。
【図2】壁面(マルチカメラの、天頂、前後、左右)にターゲットを貼り付け、全周フィールドを構成した場合の図である。
【図3】全周フィールドの形状を例示する図である。
【図4】オーバーラップ領域および、撮影画像とキャリブレーション画像を示す図(その1)である。
【図5】撮影画像とキャリブレーション画像を示す図(その2)である。
【図6】撮影画像とキャリブレーション画像を示す図(その3)である。
【図7】マルチカメラの例を示す図である。
【図8】天頂カメラを基準カメラとしてターゲットを撮影した場合を示す図である。
【図9】側面カメラを基準カメラとしてターゲットを撮影した場合を示す図である。
【図10】オリエンテーション接続を説明する図(その1)である。
【図11】オリエンテーション接続を説明する図(その2)である。
【図12】機械座標系への変換を説明する図である。
【図13】全周フィールドの撮影方法の処理フローを示す図である。
【図14】単写真標定を説明する図である。
【図15】外部パラメータ(オリエンテーションパラメータ)、内部パラメータ(カメラキャリブレーションパラメータ)を説明する図である。
【図16】カラーコード付きターゲットCT1を示す図である。
【図17】カラーコード抽出手段の構成例を示す図である。
【図18】カラーコード付きターゲットの抽出のフロー例を示す図である。
【図19】レトロターゲットを用いた重心位置検出の説明図である。
【図20】カラーコード付きターゲット領域方向検出処理部の処理フロー例を示す図である。
【図21】カラーコード付きターゲット領域方向検出処理部の処理フロー例(続)を示す図である。
【図22】レトロターゲットのコード読み込みを説明するための図(その1)である。
【図23】レトロターゲットのコード読み込みを説明するための図(その2)である。
【図24】複数の画像で撮影されるカラーコード付きターゲットの例を示す図である。
【図25】カラーコード付きターゲットCT2を示す図である。
【図26】カラーコード付きターゲットCT3を示す図である。
【図27】カラーコード付きターゲットCT4を示す図である。
【図28】カラーコード付きターゲットCT5を示す図である。
【図29】カラーコード付きターゲットCT6を示す図である。
【図30】カラーコード付きターゲットCT7を示す図である。
【図31】カラーコード付きターゲットCT8を示す図である。
【図32】カラーコード付きターゲットCT9を示す図である。
【図33】カラーコード付きターゲットCT10を示す図である。
【図34】カラーコード付きターゲットCT11を示す図である。
【図35】複数のカラーレトロターゲットを組み合わせたカラーコード付きターゲットCT12を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0029】
[全周フィールド]
本発明の第1の実施の形態に係る全周フィールドについて説明する。マルチカメラをキャリブレーションするために撮影する全周フィールドは、基本的にマルチカメラを覆う空間において、三次元座標が既知の複数のターゲットを空間的に張り巡らして配置させたものである。なお、ターゲットの世界座標系における正確な三次元座標は、トータルステーション等で計測し、または、デジタル写真測量若しくはフリーネットワーク調整等の手法を用いて既知とする。
【0030】
例えば図1には、3つのカメラを有するマルチカメラ10aを用いて、全周フィールド1を撮影する場合のターゲットの配置例(粗くまたは密に)を示す。なお便宜的にマルチカメラ10aの有するカメラのうちから任意の1つを基準カメラとする。図1では、カメラ11を基準カメラとし、カメラ11の光軸11’を中心とする所定の角度範囲においては、第1の密度でターゲットを配置する。他のカメラ12、13の光軸12’、13’を中心とする所定の角度範囲においては、第3の密度でターゲットを配置する。このとき、第1の密度と第3の密度は、同一でもよく異なってもよい。また、光軸12’、13’を中心とする所定の角度範囲における第3の密度がそれぞれ異なってもよい。さらに、カメラ11の撮影領域とカメラ12の撮影領域が重なる領域(オーバーラップ領域14)およびカメラ11の撮影領域とカメラ13の撮影領域が重なる領域(オーバーラップ領域15)においては、ターゲットを第2の密度で配置し、第1の密度<第2の密度、第3の密度<第2の密度となるようにする。すなわち、図1に示すように、ターゲットは、光軸11’、12’、13’を中心とする特定の領域よりも、オーバーラップ領域においてより密に配置される。
【0031】
ターゲットを配置する第1〜第3の密度は、それぞれの領域において密度が均一となるように配置してもよく、または、不均一であってもよい。第1の密度および第3の密度については、光軸11’、12’、13’の中心から離れるにつれて高密度となるように配置してもよい。要するに、第1の密度<第2の密度、第3の密度<第2の密度であればよい。
【0032】
一例として図2には、マルチカメラを覆う空間として一部屋を用意し、その壁面(マルチカメラに対し、天頂、前後、左右)にターゲットを貼り付け、全周フィールドを構成した例を示す。ターゲットには、カラーコード付きターゲットを用いている。カラーコード付きターゲットについては後述する。
なお、「ターゲット」とは、世界座標系における三次元座標が既知のマークであればよく、その形状は特に限定されない。例えば、図19に示す円形のレトロターゲットであってもよい。
【0033】
また、図3に示すように、マルチカメラを覆う空間としては、一部屋(立方体)に限られず、斜方立方八面体、コの字型、L字型等の他の形状であってもよい。すなわち、全周フィールドは、全周(水平方向360度)に配置される場合に限られず、マルチカメラが有する各カメラがターゲットを撮影できるように、マルチカメラを覆う空間が形成できればよい。さらに、ターゲットを配置するものとしては、上記の壁面に限られず、パネル等を用いて全周フィールドを構成してもよい。
【0034】
図4(a)に、マルチカメラ10aのカメラ11、12で撮影した画像間のオーバーラップ領域14(斜線部)を示す。図4(b)は、カメラ11で撮影した撮影画像のイラストであり、図4(c)は、キャリブレーション後の補正画像のイラストである。撮影画像の周辺部約10%(図では横幅の10%に相当する両端の領域)がオーバーラップ領域14、15となる。そこで、オーバーラップ領域14、15に配置されるターゲットを密に配置し、オーバーラップ領域14、15のキャリブレーション時の精度をより高くする。それにより、マルチカメラで撮影された画像間のつなぎをより自然なものとすることができる。
【0035】
なお、上記の例は、オーバーラップ領域か否かでターゲットを配置する密度を決定している。しかし、カメラのレンズの特定の歪み量を基準にして、ターゲットを密に配置する領域と粗く配置する領域を決定してもよい。このようにすると、をより効果的にキャリブレーションすることができる。具体的には、後述の[キャリブレーション]に示す式(3)(4)からわかるように、レンズ歪みは、係数k1〜k4、p1〜p2で表わされ、式からレンズ歪み量は、例えば主点位置よりの半径rで求められるため、基準光軸から離れた量に応じてその密度を決定し、実際のターゲット配置を求めることができる。例えば、式(3)(4)に示すように、レンズの歪みが画像(画面)中心から画像上での対象物像までの距離rの乗数などに応じて変化することを利用して、画像上において略同じ密度で撮影されるように、例えば、配置するターゲットの密度を光軸付近の中央部分では粗い密度、すなわちターゲットの間隔を空けて配置し、周辺部分では細かい密度、すなわちターゲットの間隔をつめて配置することが望ましい。
すなわち、式(3)(4)を利用して、画像上での画像中心からの距離rに応じて、画像上での歪み量dx、dyが判り、これに応じて画像の中央部分と、周辺部分におけるターゲットを配置する密度を適切にすることができる。実際には、レンズ歪みは、式(3)(4)のkの項に一番依存するため、例えば、粗領域と密領域で半径rが2倍の関係になっていれば、粗領域に対して密領域では4倍の密度でターゲットを配置する、などとしてもよい。
【0036】
さらに、画像上において撮影精度が保証できる大きさで撮影されるように、ターゲットの大きさを、変化させることがより望ましい。図5(a)(b)では、配置するターゲットの大きさを、光軸付近の中央部分では比較的小さくし、周辺部分では大きくして配置している。図5(a)は撮影画像のイラストであり、図5(b)はキャリブレーション補正画像である。具体的には、画像上の10画素以上の大きさ(x、y)となるように式(1)(2)を利用してターゲットの大きさ(X,Y)を設定することができる。なお、ターゲットの大きさは、撮影されたターゲットの大きさが揃うように、中央部分に配置するターゲットと周辺部分に配置するターゲットの大きさを構成することが特に望ましい。
【0037】
上記では、ターゲットがカラーコード付きターゲットのみの例を示しているが、図6(a)(b)に示すように、カラーコード付きターゲットと円形一色の色ターゲット(図6では円形のレトロターゲット)とを混ぜて配置してもよい。カラーコード付きターゲットで認識したコードと位置に基づき、円形一色の色ターゲットの位置と配置が特定できる。さらに、円形一色の色ターゲットの大きさを画像上10画素以上となるように設定することが容易となり、高い測定精度を保証することができる。
【0038】
図7に、マルチカメラの例を示す。マルチカメラは、複数のカメラが外向きに例えば放射状に配置され、複数方向の視野の画像を同期して取得することができるカメラシステムである。(a)は、3つのカメラを有するマルチカメラ10aの側面図である。(b)は、天頂方向に向けられた1つのカメラと、それを囲むように周辺方向に向けられた4つのカメラを有するマルチカメラ10bの上面図である。(c)は、天頂方向に向けられた1つのカメラと、周辺方向に向けられた5つのカメラを有するマルチカメラ10cの上面図である。(d)は、天頂方向に向けられた1つのカメラと、周辺方向に向けられた6つのカメラを有するマルチカメラ10dの上面図である。なお、天頂方向に向けられたカメラを水平方向や天底方向等に向けて上記のマルチカメラを配置してもよい。
【0039】
図8に、6つのカメラを有するマルチカメラ10c’であって、天頂カメラを基準カメラ(Cam6)とし、その周囲に配置されたカメラ(Cam1〜4)とで全周フィールドを撮影した場合の例(イラスト)を示す。Cam5については、Cam2、3の裏側にあるため図示されていない。
なお、図8のマルチカメラ10c’において、天頂カメラを使用せず、5つの側面カメラで全周フィールドを撮影した場合、5つのカメラはそれぞれ隣同士のカメラとのオーバーラップ領域を有し、画像どうしを接続できる。よって、側面カメラの1つを基準カメラとし、基準カメラの画像とオーバーラップ領域を有さない画像を含む場合であっても、キャリブレーションは可能である。
【0040】
本発明の第2の実施の形態に係る全周フィールドについて説明する。
図9に、6つのカメラを有するマルチカメラ10c’であって、側面カメラのうちの1つを基準カメラ(Cam0)とし、その左右に配置されたカメラ(Cam1、4)とで全周フィールドを撮影した場合の例を示す。このように、全周フィールドは、マルチカメラが有するカメラの一部を覆う空間において、ターゲットを空間的に配置させたものであってもよい。例えば水平方向(360度)撮影可能なマルチカメラに対し、全周フィールドは、部屋一個ではなく、例えば半面または三分の一であってもよい。
【0041】
図10に、全周フィールドが半面の場合にマルチカメラを回転させて、各カメラで全周フィールドを撮影しキャリブレーションする際の、対応するカメラ間でのオリエンテーション接続の接続方法を示す。なお、「オリエンテーション接続」とは、マルチカメラを回転または移動等(図3(a)〜(c)参照)させて撮影した場合に対応するカメラ間のオリエンテーション(位置、傾き)を統一させることを言う。
図10のマルチカメラは6つのカメラを有し、図10に示す丸はカメラを示しT字はカメラの方向を示す。また、側面に配置されたカメラをCam0〜4とし、天頂カメラをCam5とする。(1)まず、Cam4‐0‐1で全周フィールドを撮影する。(2)次に、マルチカメラを回転させ、Cam0‐1‐2で全周フィールドを撮影する。(3)〜(5)同様に、マルチカメラを回転させ、側面カメラを1つずつずらして全周フィールドを撮影する。(6)最後に、天頂カメラCam5と側面カメラとの位置関係を得るため、Cam5と側面カメラ(図10では、Cam1‐2‐3‐4)とで、全周フィールドを撮影する。
【0042】
各カメラで撮影された画像には、絶対基準点としての三次元座標を有するターゲットが撮影される。したがって、図11に示すように、撮影された画像において、対応するカメラ像面をフィッティングさせ、3軸回転(ω、φ、κ)と平行移動(dx、dy、dz)を求める。次に、マルチカメラの機械座標系(カメラ座標系)にて、各カメラのオリエンテーションを再定義する。すなわち、図12に示すように、機械座標系の、原点:側面カメラ位置の平均、鉛直軸:側面カメラ位置を水平面にフィッティング、Y軸:カメラ(Cam0)の方向(水平0度)、X軸:水平面上でY軸に直交する方向、とする。このように、対応するカメラ間でオリエンテーション接続をすることにより、全周フィールドが半面または三分の一等であっても、水平方向(360度)撮影可能なマルチカメラ(天頂方向含む)のキャリブレーションが可能となる。
【0043】
本発明の第3の実施の形態に係る全周フィールドの撮影方法について説明する。図13に、全周フィールドの撮影方法の処理フローを示す。まず、キャリブレーションするマルチカメラを例えば部屋の中央に配置させる(S01)。次に、撮影画像の中央部分には粗く配置されたターゲットが撮影されるように、部屋の壁面にターゲットを配置させる。さらに、撮影画像の周辺部分には中央部分よりも密に配置されたターゲットが撮影されるように、壁面にターゲットを配置させて、全周フィールドを構成する(S02)。次に、各カメラの光軸を粗く配置されたターゲットに向けてセットする(S03)。次に、マルチカメラの各カメラでターゲットを撮影する(S04)。なお、全周フィールドの構成(S02)では、隣接するカメラどうしが互いにオーバーラップ領域を有し、かつ、オーバーラップ領域にはより密に配置されたターゲットが撮影されるようにしてもよい。
【0044】
[キャリブレーション]
カメラをキャリブレーションする場合、カメラの内部パラメータ(カメラキャリブレーションパラメータ)および外部パラメータ(オリエンテーションパラメータ)を求める必要がある。これらのパラメータを求める場合、あらかじめ三次元座標が測定されているターゲットを異なる方向から複数枚撮影し、各画像間のターゲットの対応づけを行ない、このターゲットの対応づけと予め測定されている結果とから、カメラの内部パラメータおよび外部パラメータを求める。
【0045】
このキャリブレーションには、各種の方法があるが、一例として写真測量分野で使用される「セルフキャリブレーション付きバンドル調整法」を説明する。
「バンドル調整法」とは、被写体、レンズ、CCD撮像面を結ぶ光束は、同一線上になければならないという共線条件(図14参照)に基づき、各画像の光束の1本毎に観測方程式をたて、最小2乗法によりカメラの外部パラメータ(位置、傾き)とターゲットの座標を同時調整する方法であり、「セルフキャリブレーション付き」とは、カメラの内部パラメータ(画像距離、画像中心、歪み補正係数)を求める方式である(図15参照)。
【0046】
このセルフキャリブレーション付きバンドル調整法の共線条件基本式は、下記の(1)および(2)に示す式で表される。内部パラメータの補正モデル式は、下記の(3)および(4)に示す式で表される。これらの式と多数の既知点と画像上の像点(最低6点)から、単写真標定によるセルフキャリブレーション(バンドル調整)にて解き、外部パラメータである位置(投影中心:(X、Y、Z))と傾き(ω、φ、κ)、および内部パラメータである画像距離(f)、画像中心(x、y)、歪み補正係数k〜k、p、p)を求める。なお、カメラのキャリブレーションを行なう場合、ターゲットの数または撮影された画像の枚数が多ければ多いほど(数枚から数十枚)、キャリブレーションの精度が向上する。一般に、三次元座標が既知の点数(基準点数)と撮影枚数には相関関係があり、精度を考慮すると、例えば、基準点数が100点以上であれば枚数5枚以上、基準点数が25点程度であれば枚数10枚以上が望ましい。







〜a:回転行列
=cosφcosκ
=−cosφsinκ
=sinφ
=cosωsinκ+sinωsinφcosκ
=cosωcosκ−sinωsinφsinκ
=−sinωcosφ
=sinωsinκ−cosωsinφcosκ
=sinωcosκ+cosωsinφsinκ
=cosωcosφ
X,Y,Z:ターゲット座標
,Y,Z:投影中心(主点)
x,y:画像座標
dx、dy:画像上での歪み量
【0047】
[カラーコード付きターゲット]
本発明の実施の形態でターゲットとして用いたカラーコード付きターゲットについて説明する。カラーコード付きターゲットは、すでに本出願人により特願2005−289334として出願されている。
図16にカラーコード付きターゲットの例を示す。図16はカラーコードの単位パターンが3個のカラーコード付きターゲットCT1である。カラーコード付きターゲットCT1は、レトロターゲット部(位置検出用パターン)P1、基準色部(基準色パターン)P2、カラーコード部(カラーコードパターン)P3、白色部(空パターン)P4で構成されている。これら、レトロターゲット部P1、基準色部P2、カラーコード部P3、白色部P4は、カラーコード付きターゲットCT1内の所定の位置に配置される。すなわち、基準色部P2、カラーコード部P3、白色部P4は、レトロターゲット部P1に対して所定の位置関係に配置される。
【0048】
レトロターゲット部P1は、ターゲット自体の検出用、その重心検出用、ターゲットの方向(傾斜方向)検出用、ターゲット領域検出用として使用される。図16ではレトロターゲット部P1としてレトロターゲットが使用されている。すなわち、カラーコード付きターゲットCT1は、三次元座標が既知のマーク(位置検出用パターン)を3つ有している。
【0049】
基準色部P2は、照明やカメラ等の撮影条件による色のズレに対応するために、相対比較時の参照用、色ズレを補正するためのカラーキャリブレーション用として使用される。さらに、基準色部P2は、簡易な方法で作成されたカラーコード付きターゲットCTの色彩補正用として使用できる。例えば、色管理がなされていないカラープリンタ(インクジェット・レーザー・昇華型等のプリンタ)で印刷したカラーコード付きターゲットCTを使用する場合は、使用プリンタ等で色彩に個体差が出るが、基準色部P2とカラーコード部P3の色を相対比較し補正することで、個体差の影響を押さえることができる。
【0050】
カラーコード部P3は、その各単位パターンへの配色の組み合わせによってコードを表現する。コードに使用するコード色の数により表現可能なコード数が変化する。例えば、コード色数がnの場合、図16のカラーコード付きターゲットCT1では、カラーコード部P3の単位パターンが3個のため、n×n×n通りのコードを表せる。信頼度を上げるため、他の単位パターンに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも、n×(n−1)×(n−2)通りのコードを表せる。そして、コード色数を増やせばコード数を増加できる。さらに、カラーコード部P3の単位パターンの数とカラーコード数を等しくするという条件を課すと、全てのコード色がカラーコード部P3に使用されるため、基準色部P2との比較のみで無く、カラーコード部P3の各単位パターン間で色を相対比較することにより、各単位パターンの色彩を確認して識別コードを決定することができ、信頼性を上げることができる。さらに、各単位パターンの面積を全て同じにする条件を追加すると、カラーコード付きターゲットCTを画像中から検出する際にも使用できる。これは、異なる識別コードをもつカラーコード付きターゲットCT間でも各色の占有する面積が同じになるため、カラーコード部全体からの検出光からはほぼ同様な分散値が得られるからである。また、単位パターン間の境界は等間隔に繰り返され、明確な色彩差が検出されるので、このような検出光の繰り返しパターンからもターゲットCTを画像中から検出することが可能である。
【0051】
白色部P4は、カラーコード付きターゲットCTの方向検出用と色ズレのキャリブレーション用として使用する。カラーコード付きターゲットCTの四隅の内、一カ所だけレトロターゲット部P1(レトロターゲット)が配置されない箇所があり、これをカラーコード付きターゲットCTの方向検出用に使用できる。このように白色部P4はレトロターゲット部P1(レトロターゲット)と異なるパターンであれば良い。したがって、白色部には目視でコードを確認するための番号などの文字列を印刷しても良く、また、バーコード等のコード領域としても使用しても良い。さらに、検出精度を上げるために、テンプレートマッチング用のテンプレートパターンとして使用することも可能である。
【0052】
(カラーコード抽出手段)
以下に、カラーコード付きターゲットCTを撮影後、カラーコード抽出手段100を用いてカラーコードを抽出する手順を説明する。
図17にカラーコード抽出手段100の構成例を示す。カラーコード抽出手段100は、カラーコード付きターゲットを抽出する抽出部41およびそのカラーコードを判別する識別コード判別部46により構成される。抽出部41は、探索処理部110、レトロターゲットグループ化処理部120、カラーコード付きターゲット検出処理部130、画像・カラーパターン記憶部140を有する。また、識別コード判別部46はカラーコード付きターゲット検出処理部130で検出されたカラーコードを判別しコード番号を付与する。
【0053】
また、20はカラーコート付きターゲットを含む測定対象物を撮影する撮像部で、ステレオカメラ等が使用される。23は撮像部20で撮影されたステレオ画像を記憶する画像データ記憶部である。また、150は、抽出部41で抽出されたレトロターゲット部P1の位置座標と、識別コード判別部46で判別された識別コードとを関連付けて記憶する標識情報記憶部であり、標識情報記憶部150に記憶されたデータは、標定部44で標定に用いられ、または三次元位置計測部50で、測定対象物の三次元座標または三次元形状の測定に用いられる。
【0054】
探索処理部110は、撮像部20で撮影されたまたは画像データ記憶部23に記憶されたカラー画像(撮影画像)から、レトロターゲットパターン等の位置検出用パターン(レトロターゲット部P1)を検出する。位置検出用のターゲットとして、レトロターゲットパターンの代わりにテンプレートパターンが用いられた場合は、テンプレートパターン検出をする。
【0055】
レトロターゲットグループ化処理部120は、探索処理部110で検出したレトロターゲットが同じカラーコード付きターゲットCTに属すると判断されたもの(例えば位置座標が同じカラーコード付きターゲットCTの領域に入るもの)を同一グループに属する候補としてグループ化する。
【0056】
カラーコード付きターゲット検出処理部130は、同じカラーコード付きターゲットに属すると判断されたレトロターゲットのグループ(候補)から、当該カラーコード付きターゲットCTの領域と方向を検出するカラーコード付きターゲット領域方向検出処理部131と、カラーコード付きターゲットCTの基準色部P2、カラーコード部P3における色彩の配列、画像中の色彩を検出する色彩検出処理部311と、基準色パターンP2を参照してカラーコード部P3および画像中の色彩を補正する色彩補正部312と、グループ化が適正になされたかを確認する確認処理部313で構成されている。
【0057】
画像・カラーパターン記憶部140は、抽出部41に読み込んだ画像を記憶する読込画像記憶部141と、使用が予定される複数種類のカラーコード付きターゲットCTについて、カラーコード付きターゲットCTの種別を示す種別コード番号を記録し、さらに、各種のカラーコード付きターゲットCTについて、パターン配置とコード番号の対応関係を記録するカラーコード付きターゲット対応表142で構成されている。
【0058】
識別コード判別部46は、カラーコード部P3における色彩の配列から識別コードを判別し、識別コードに変換するもので、カラーコード付きターゲット検出処理部130で検出されたカラーコード付きターゲットCTの領域と方向のデータに基づいて、カラーコード付きターゲットCTの座標を変換する座標変換処理部321と、座標変換されたカラーコード付きターゲットCTのカラーコード部P3における色彩の配列から識別コードを判別し、識別コードに変換するコード変換処理部322で構成されている。
【0059】
(カラーコード抽出フロー)
図18にカラーコード付きターゲットの抽出フローの例を示す。
まず、処理対象のカラー画像(撮影画像)を、撮像部20または画像データ記憶部23から抽出部41の読込画像記憶部141に読み込む(S500)。次に、読込まれた各画像よりレトロターゲットを検出する(S510)。
【0060】
探索方法は、(1)カラーコード付きターゲットCT中の位置検出用パターンであるレトロターゲット部P1(レトロターゲット)を探索する方法、(2)カラーコード部P3の色分散を検出する方法、あるいは(4)彩色された位置検出用パターンを用いる方法など種々の方法がある。ここでは(1)、(2)およびこれらを組み合わせる例(3)を説明する。(4)については、(カラーコード付きターゲットCT11)で説明する。
【0061】
(1)カラーコード付きターゲットCTにレトロターゲットが含まれている場合は、明度差が鮮明なパターンを使用するので、カメラの絞りを絞りフラッシュ撮影することにより、レトロターゲットのみが光った画像を取得でき、この像を2値化することにより簡単にレトロターゲットを検出できる。
【0062】
図19はレトロターゲットを用いた重心位置検出の説明図で、(A1)は内円部204の明度が明るく、外円部206の明度が暗いレトロターゲット、(A2)は(A1)のレトロターゲットの直径方向の明度分布図、(B1)は内円部204の明度が暗く、外円部206の明度が明るいレトロターゲット、(B2)は(B1)のレトロターゲットの直径方向の明度分布図を示している。レトロターゲットが図19(A1)のように内円部204の明度が明るい場合は、測定対象物1の撮影画像において重心位置での反射光量が多く明るい部分になっているため、画像の光量分布が図4(A2)のようになり、光量分布の閾値Toからレトロターゲットの内円部204や中心位置を求めることが可能となる。
【0063】
ターゲットの存在範囲が決定されると、例えばモーメント法によって重心位置を算出する。例えば、図19(A1)に表記されたレトロターゲット200の平面座標を(x、y)とする。そして、レトロターゲット200の明度が、しきい値To以上のx、y方向の点について、(式1)、(式2)を演算する(*は乗算演算子)。
xg={Σx*f(x、y)}/Σf(x、y) −−−−(式1)
yg={Σy*f(x、y)}/Σf(x、y) −−−−(式2)
(xg、yg):重心位置の座標、f(x、y):(x、y)座標上の濃度値
なお、図19(B1)に表記されたレトロターゲット200の場合は、明度がしきい値To以下のx、y方向の点について、(式1)、(式2)を演算する。
これにより、レトロターゲット200の重心位置が求まる。
【0064】
(2)通常、カラーコード付きターゲットCTのカラーコード部には多数のコード色が使用され、色の分散値が大であるという特徴がある。このため、分散値の大きい箇所を画像中から見出すことにより、カラーコード付きターゲットCTを検出できる。
(3)カラーコード付きターゲットCTにレトロターゲットが含まれている場合では、まず明度の高い箇所(レトロターゲット部P1があり得る)を画像全体に対してスキャンして検出し、次に、検出した明度の高い箇所の周囲における色の分散値の高い箇所(カラーコード部P3があり得る)を見出すことにより効率よく検出できる。
【0065】
(1)の例について説明する。図18に戻り、レトロターゲット検出処理部111は、カラー画像中から検出した複数のレトロターゲットの座標を読込画像記憶部141に保存する。
次に、レトロターゲットグループ化処理部120は、読込画像記憶部141に保存されたレトロターゲットの座標から、同じカラーコード付きターゲットCTに属するレトロターゲットのグループの候補を検出して(例えば座標がカラーコード付きターゲットCT内にあるものを検出して)、読込画像記憶部141にその組み合わせをグループとして保存する(S520)。確認は、例えば、検出したカラーコード付きターゲットCT内の3個のレトロターゲット間の距離および3個のレトロターゲットを結ぶ三角形の頂角を計測することにより可能である(S530参照)。
さらに、検出したカラーコード付きターゲットのパターンをカラーコード付きターゲット対応表142と照合することにより、どの種別のカラーコード付きターゲットであるかを確認する。
【0066】
次に、カラーコード付きターゲット検出処理部130は、領域方向検出処理部131において読込画像記憶部141に保存された、レトロターゲットのグループ単位にレトロターゲットの重心位置からカラーコード付きターゲットCTの領域と方向を求める(S530)。この領域と方向を求める前または後に、色彩検出処理部311で、基準色部P2、カラーコード部P3、画像中の測定対象物の色彩を検出する。必要であれば、色彩補正部312で基準色部P2の色を基準にしてカラーコード部P3や画像中の測定対象物1の色彩を補正する。また、基準にならない印刷色のカラーコード付きターゲットを使用した場合には、その基準色部を併せて補正する。そして確認処理部313において、グループ化が適正に行なわれたか、すなわち、一旦グループ化されたレトロターゲットの重心位置が同じカラーコード付きターゲットCTに属するか否かを確認する。同じグループに属すると判別された場合は次の識別コード識別処理(S535)に進み、同じグループに属さないと判別された場合には、再度グループ化処理(S520)に戻る。
【0067】
図20、図21にカラーコード付きターゲット領域方向検出処理部131の処理フロー例を示す。また、図22、図23を用いてレトロターゲットのコード読み込みを説明する。ここでは、図16のカラーコード付きターゲットCT1からコードを読み込む手続きについて説明する。
カラーコード付きターゲットCT1からコードを読み込むには、カラーコード付きターゲットCT1の領域と方向を知る必要があるため、3つの位置検出用レトロターゲットの重心点をR1,R2,R3にラベリングする(図22(a)参照)。
【0068】
ラベリング方法は、対象の3つのレトロターゲットの重心点R1〜R3を通る三角形を作成する(S600)。3つのレトロターゲットの重心点R1〜R3の中から適当に1つを選んでT1と仮にラベリングし(S610)、残りの2つの重心点を時計回りにT2,T3と仮にラベリングをする(S612、図22(b)参照)。
次に、それぞれの重心点を通る辺をラベリングする。T1とT2を通る辺をL12、T2とT3を通る辺をL23、T3とT1を通る辺をL31とする(S614、図23(a)参照)。
【0069】
次に、三角形の内側を各頂点(重心点)から半径R離れた画素値を弧状にスキャンをして、スキャンした範囲で色の変化みる(図23(b)参照)。
重心点T1では、L12からL31を時計回りに、重心点T2では、L23からL12を時計回りに、重心点T3では、L31からL23を時計回りにスキャンをする(S620〜S625)。
半径の決め方は、スキャンをする角度に応じて画像上でレトロターゲットのサイズに倍率をかけて決める。レトロターゲットを斜め方向から撮影された場合は楕円になるため、スキャン範囲も楕円形状になる。倍率は、レトロターゲットのサイズと、レトロターゲット重心位置と基準色部P2の距離によって決められる。
【0070】
さらにノイズなどの影響を少なくするため、スキャンする範囲に幅を持たせて、半径R−ΔrからR+Δrの間で平均値等の代表値を決める方法も考えられる。
この例では、スキャンは弧状にスキャンをしたが、重心点でつくられた三角形の辺に垂直な直線上をスキャンする方法も考えられる(図23(c)参照)。
【0071】
図16のカラーコード付きターゲットCT1の例では、重心点T2の周りをスキャンした結果では色の変化があり、R(赤)・G(緑)・B(青)の値に変化が見られ、変化のピークがR・G・Bの順にあらわれる。T1とT3の周りのスキャン結果では、色の変化はなく、R・G・Bの値はほぼ一定でピークがあらわれない(図23(b)参照)。このように、1つの重心点T2の周りには色の変化が見られ、残りの2つの重心点T1、T3の周りには色の変化がないという特徴により、カラーコード付きターゲットCT1の方向を判断できる。
【0072】
ラベリングの確認処理は、確認処理部313により行なわれる。スキャンの結果に色の変化があった重心点をR1とし、残りの2つの重心点は、色の変化があった重心点から時計回りにラベリングしてR2、R3とする(S630〜S632)。この例では、重心点T2をR1、重心点T3をR2、重心点T1をR3とする。色の変化があった重心点が1つ、色の変化がない重心点が2つ検出されなかった場合は、レトロターゲットの組み合わせエラーとなり(S633)、3組のレトロターゲットを新たに選出して(S634)、S600に戻る。このように、処理の結果から、選ばれた3つレトロターゲットが、同じカラーコード付きターゲットCT1に属するか否かも確認できる。このようにしてレトロターゲットのグループ化が確定する。
上記のラベリング方法は、図16のカラーコード付きターゲットCT1を例に説明したが、後述する各種カラーコード付きターゲットCTについても、一部の処理を変えることにより同様の処理ができる。
【0073】
(コードの識別)
図18に戻り、識別コード判別部46は、抽出部41で抽出されたカラーコード付きターゲットCT1について、座標変換処理部321においてグループ化されたレトロターゲットの重心位置に基づいて、カラーコード付きターゲットCT1の設計値に合うように座標変換し、次に、コード変換処理部322において、カラーコードを識別し(S535)、コード変換してカラーコード付きターゲットCT1の識別コードを求め(S540)、読込画像記憶部141に保存する(S545)。
【0074】
図21でこの処理フローを説明する。曲面に貼付された、斜め方向から撮影された等により、形に歪のあるカラーコード付きターゲットの撮影画像を、ラベルR1,R2,R3を用いて、歪のない正面図に座標変換する(S640)。座標変換することより、カラーコード付きターゲットの設計値を参照して、レトロターゲット部P1、基準色部P2、カラーコード部P3、白色部P4を判別しやすくなり、後の処理が進め易くなる。
【0075】
次に、座標変換されたカラーコード付きターゲットCT1上で、設計値どおりに白色部P4があるか確認をする(S650)。設計値どおりでない場合は検出エラーとなる(S633)。設計値どおりに白色部P4がある場合は、カラーコード付きターゲットCT1が検出されたと判断される(S655)。
【0076】
次に、色彩補正され、領域と方向がわかったカラーコード付きターゲットCT1のカラーコードの判別をする。
カラーコード部P3は、その各単位パターンへの配色の組み合わせによってコードを表現する。例えば、コード色数がnで単位パターンが3個の場合、n×n×nのコードを表せ、他の単位パターンに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合は、n×(n−1)×(n−2)のコードを表せる。コード色数がn、単位パターンがn個で、色を重複して使用しないという条件を課した場合は、nの階乗通りのコードを表現できる。
識別コード判別部46は、コード変換処理部322において、カラーコード部P3における単位パターンの配色の組み合わせを、カラーコード付きターゲット対応表142の配色の組み合わせと比較・照合して識別コードを判別する(図18のS535)。
【0077】
色彩の判別方法は、(1)基準色部P2の色とカラーコード部P3の色を比較して決める相対比較方法と、(2)基準色部P2の色と白色部P4の色を使ってカラーコード付きターゲットCT1の色補正を行ない、その補正された色でカラーコード部P3のコードの判別をする絶対比較方法の、二つの方法がある。例えば、カラーコード部P3に使用する色数が少ない場合は基準色を相対比較の比較色として使用し、カラーコード部P3に使用する色数が多い場合は、色を補正するためにキャリブレーション用の色として絶対比較の比較色として使用する。前述のように、色彩の検出は色彩検出処理部311で、色補正は色彩補正部312で行なう。画像による3次元計測では複数の画像を撮るため、ほとんどの場合、各画像間で撮影条件などにより色ズレがおきる。カラーコード付きターゲットを使用することにより、複数の画像間での色の差を補正することが可能である。
【0078】
識別コード判別部46は、コード変換処理部322において、(1)、(2)どちらかの方法を使用して、基準色部P2とカラーコード部P3を検出し(S660、S670)、カラーコード部P3の各色を判別し、色をコードに変換して、対象のカラーコード付きターゲットCT1の識別コードを求める(S680、図18のS540)。
そして画像ごとに、当該画像に含まれるカラーコード付きターゲットCT1の番号を読込画像記憶部141に登録する(図18のS545)。読込画像記憶部141に登録されたデータは、多数のカラーコード付き標識CTの検出位置座標に基づいて、標定部44で標定に用いられ、または、三次元位置計測部50で測定対象物の三次元座標、三次元形状を測定するのに用いられる。
【0079】
(画像間の対応付け)
図24に複数の画像で撮影されるカラーコード付きターゲットの例を示す。図24(a)にステレオ画像のオーバーラップの様子を示す。計測される基本範囲は、2枚(一対)のステレオ撮影画像のオーバーラップ範囲である。このとき、4個のカラーコード付きターゲットCTがオーバーラップ範囲に入るように撮影するのが好ましい。このようにするとステレオ画像を用いて三次元測定が可能である。また、図24(b)に隣接し合うステレオ画像間のオーバーラップのさせ方の例を示す。この様に、上下左右方向に2個のカラーコード付きターゲットCTを含んでオーバーラップするように一連の画像を撮影するのが好ましい。このようにすると広域にわたる非接触三次元測定の自動化が可能になる。なお、ブレークラインは画像の有効領域を示すラインであり、4個のカラーコード付きターゲットCTの最も外側にあるレトロターゲットを結ぶライン内が有効領域である。
【0080】
図24(c)はステレオマッチングエリア設定を説明するための図である。図24(c)はカラーコード付きターゲットCTが位置検出用の3つのレトロターゲットを有する例である。カラーコード付きターゲットCTを画面の4隅の近くに配置し、常にこれらのカラーコード付きターゲットCTの最も外側にあるレトロターゲットを結ぶ領域をマッチングエリアとすることで、ステレオマッチングエリアが自動的に決められると同時に、各モデル画像間のオーバーラップを確実にすることができる。このように、マッチング領域を決定することで、図24(b)に示すように、各モデル画像間のオーバーラップも確実にとれるようになる。なお、各カラーコード付きターゲットCTに位置検出用パターン(レトロターゲット部)P1を最低2点以上配置(2点の場合は対角に配置)すれば、マッチングエリアの自動設定処理が可能となる。
【0081】
以下にカラーコード付きターゲットの他の例を示す。
(カラーコード付きターゲットCT2)
図25にカラーコード付きターゲットCT2の例を示す。図25はカラーコード部P3が6箇所のカラーコード付きターゲットCT2である。図16におけるカラーコード付きターゲットCT1のカラーコードパターンP3の3つの単位パターンを対角線で分離して、単位パターンを6箇所としているので、カラーコード付きターゲットCTの領域と方向の検出方法は、図16の場合と同様に、各重心点でできた三角形の内側をスキャンした場合の色に変化でレトロターゲットのラベリング処理が可能である。すなわち、R1の周りでは2回の色変化が生じ、R2とR3の周りでは色の変化は生じない。また、カラーコード部P3の読み込み処理は6箇所に増加する。カラーコードに使用する色を6色にするとコード数は、6×5×4×3×2×1=720コードを表現できる。最後のカラーコード部(最後の×1の部分)はコード数に影響は無いが相対比較のため必要であり、更に色コード部を認識した際に誤認識のチェック用としても利用できる。
【0082】
(カラーコード付きターゲットCT3)
図26にカラーコード付きターゲットCT3の例を示す。図26のカラーコード付きターゲットCT3は、図25のカラーコード付きターゲットCT2の基準色部P2を無くし、レトロターゲット部P1の一つを大きくしたものである。
図26のカラーコード付きターゲットCT3は、R1にあたる部分のレトロターゲットが大きくなっているので、各レトロターゲット部のR1,R2,R3へ対応させるラベリング処理は、レトロターゲットのサイズを検出すればできる。ただし、R1にあたる部分のレトロターゲットが大きくなった分、基準色部P2が無いのでカラーコードの判別は難しくなる。
【0083】
この場合の対策として、例えば、カラーコードに使用する色を6色にし、同じ色を重複使用しないという制限をもうけると、カラーコード部P3に全てのコード色が現れる。これにより、各カラーコード部P3の色を6色のコード色に対応させるだけで良くなり、しかも、カラーコード部P3相互の色を相対比較により行なう事ができる。コード数は、図25のカラーコード付きターゲットCT2と同様に720コードを表現できる。
【0084】
(カラーコード付きターゲットCT4)
図27にカラーコード付きターゲットCT4の例を示す。図27のカラーコード付きターゲットCT4は、図16のカラーコード付きターゲットCT1の外側に黒色の黒領域部P5を追加したパターンである。黒領域部P5により、ターゲット周囲の色や模様の影響を抑制できる。
図27のカラーコード付きターゲットCT4は、図16のカラーコード付きターゲットCT1の外側に黒領域部P5を形成したのみなので処理は図16のカラーコード付きターゲットCT1と変わらない。図16以外のカラーコード付きターゲットにも黒領域部P5の形成が可能である。
【0085】
(カラーコード付きターゲットCT5)
図28にカラーコード付きターゲットCT5の例を示す。図28のカラーコード付きターゲットCT5は、カラーコード部P3の単位パターンを小さくし、カラーコード部P3の単位パターンを9箇所にしたものである。
このため、カラーコード付きターゲットCT5の領域と方向の検出の際、R1の周りでは2回の色変化が、R2とR3の周りでは1回の色変化があらわれるので、これにより識別できる。また、白色部P4との位置関係を検出することにより、R1、R2、R3を確認できる。また、カラーコード部P3の読み込み処理は9箇所に増加する。カラーコードに使用する色を9色にするとコード数は、9の階乗=362880コードを表現できる。それ以外は、図16と同様に処理ができる。
【0086】
(カラーコード付きターゲットCT6)
図29にカラーコード付きターゲットCT6の例を示す。図29のカラーコード付きターゲットCT6は、図16のカラーコード付きターゲットCT1の、レトロターゲット部P1のR2、R3の部分と白色部P4に基準色部P2を配置し、カラーコード付きターゲットの領域と方向の検出用としても使用するものである。レトロターゲット部P1はR1の部分一箇所である。図16のカラーコード付きターゲットCT1の基準色部P2の部分にはカラーコードパターンP3を配置でき、カラーコードパターンを一つ増やせる。
基準色部P2を領域と方向の検出用として使用する場合、四角のパターンの重心を求めること、基準色光で明度差を検出することにより、レトロターゲットより精度は劣るが、レトロターゲットと同様に重心点の検出が可能である。
【0087】
(カラーコード付きターゲットCT7)
図30にカラーコード付きターゲットCT7の例を示す。図30のカラーコード付きターゲットCT7は、図16のカラーコード付きターゲットCT1のカラーコード部P3の領域を小さくし、さらに、レトロターゲット部P1のパターンをR1の部分1箇所、カラーコードパターンを4箇所にした、小型タイプである。このカラーコード付きターゲットCT7においても基準色部P2が領域と方向の検出用として使用される。
【0088】
(カラーコード付きターゲットCT8)
図31にカラーコード付きターゲットCT8の例を示す。図31のカラーコード付きターゲットCT8は、図30のカラーコード付きターゲットCT7の白色部P4をカラーコード部P3に置換してカラーコードパターンを5カ所にした、小型タイプのものである。
【0089】
(カラーコード付きターゲットCT9)
図32にカラーコード付きターゲットCT9の例を示す。図32のカラーコード付きターゲットCT9は、図16のカラーコード付きターゲットCT1の単位パターンの間に黒色の分離領域部P6を形成したものである。これにより、領域やカラーの判別時にエラーを減らす事ができる。
【0090】
(カラーコード付きターゲットCT10)
図33にカラーコード付きターゲットCT10の例を示す。図33のカラーコード付きターゲットCT10は、図16のカラーコード付きターゲットCT1のレトロターゲットP1の代わりに、テンプレートマッチング検出に対応できるように、テンプレートパターンP7に置換したものである。レトロターゲットと同様に重心点の検出を高精度にできる。
【0091】
(カラーコード付きターゲットCT11)
図34にカラーコード付きターゲットCT11の例を示す。図34のカラーコード付きターゲットCT11は、図16のカラーコード付きターゲットCT1のレトロターゲットP1をカラーレトロターゲットP8としたものである。
カラーコード付きターゲットCT11は、ターゲットの位置抽出の探索方法として、(4)彩色された位置検出用パターンを用いる方法を採用するものである。
【0092】
(4)カラーコード付きターゲットCTに使用している3隅のレトロターゲットに異なる色を配し、それぞれのレトロターゲットが反射する色を異なるものにする。3隅のレトロターゲットに異なる色を配しているため、1つのカラーコード付きターゲットCTに属する各レトロターゲットを判別しやすい。レトロターゲットグループ化処理において、多数のレトロターゲットを使用する場合にも、異なる色のレトロターゲットで一番距離が近いものを同一グループの候補として選択することにより、処理が簡単になる。
【0093】
リファレンスポイントRFとして多数のレトロターゲットを用いる場合には、カラーコード付きターゲットCTのレトロターゲットと単体のレトロターゲットが混在するので、カラーコード付きターゲットCTのレトロターゲットを彩色したカラーレトロターゲットP8とし、単体のレトロターゲットを白色とすれば、判別し易い。
重心位置の検出については、図19での説明を参照されたい。
【0094】
なお、位置検出用標識としてカラーコード付きターゲットCTに代えて単体又は複数のカラーレトロターゲットを使用することも可能である。例えば、単体の場合、配色の種類を増加したり、カラーの配置をランダムにするなどにより、基準点に対する対応点、ステレオ画像ペアを探索し易くなる。
また、複数のカラーレトロターゲットを組み合わせて使用することも可能である。例えば、図35に示すように、3個のカラーレトロターゲットP8をまとめて1つの標識(カラーコード付き標識CT)とし、その配色の組み合わせを変化させることにより、基準点に対する対応点、ステレオ画像ペアを探索し易くなる。
【0095】
カラーコード付きターゲットの方向決定では、レトロターゲットでできる三角形の内角の色数の違いで方向を決めていたが、カラーコード付きターゲットの3隅のレトロターゲットに色をもたせ、それぞれのレトロターゲットが反射する色を異なるものにする方法も考えられる。例えば、カラーコード付きターゲットに使用されている左上のレトロターゲットは赤、右上のレトロターゲットは青、左下のレトロターゲットは緑の反射光を戻すものに変更すれば、カラーコード付きターゲットの方向決定をその反射光の色を判断する事により簡単に処理する事ができる。
【0096】
以上のカラーコード付きターゲットは、単位パターンが正方形のカラーコード付きターゲットの例を主に説明したが、棒状パターン、円形パターン等他の形状にしても良く、また、バーコード等と色彩を組み合わせてカラーコードとしても良い。
【0097】
また、カラーコード付きターゲットCTの貼付に代えて、またはカラーコード付きターゲットCTの貼付と併用して投影装置により撮影対象物にカラーコード付きターゲットCTを投影して使用しても良い。また、カラーコード抽出手段の構成、カラーコード付きターゲットの抽出のフローも適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 全周フィールド
10a、10b、10c、10d マルチカメラ
11 カメラ、基準カメラ
12 カメラ
13 カメラ
11’ カメラ11の光軸
12’ カメラ12の光軸
13’ カメラ13の光軸
14 オーバーラップ領域
15 オーバーラップ領域
20 撮像部
23 画像データ記憶部
41 抽出部
44 標定部
46 識別コード判別部
50 三次元計測部
100 カラーコード抽出手段
110 探索処理部
111 レトロターゲット検出処理部
120 レトロターゲットグループ化処理部
130 カラーコード付きターゲット検出処理部
131 カラーコード付きターゲット領域方向検出処理部
140 画像・カラーパターン記憶部
141 読込画像記憶部
142 カラーコード付きターゲット対応表
150 標識情報記憶部
200 レトロターゲット
204 内部円
206 外部円
311 色彩検出処理部
312 色彩補正部
313 確認処理部
321 座標変換処理部
322 コード変換処理部
CT、CT1〜CT12 カラーコード付きターゲット
L12、L23、L31 辺
P1 位置検出用パターン(レトロターゲット部)
P2 基準色パターン(基準色部)
P3 カラーコードパターン(カラーコード部)
P4 空パターン(白色部)
P5 黒領域部
P6 分離領域部
P7 テンプレートパターン
P8 カラーレトロターゲット
R1〜R3 重心点
To 閾値
T1〜T3 仮のラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準方向に光軸を有する基準カメラと、前記基準方向とは異なる方向に光軸を有する他のカメラとを有するマルチカメラで撮影し、前記マルチカメラをキャリブレーションするための全周フィールドであって、
前記マルチカメラの内部パラメータまたは外部パラメータを測定するために撮影される、前記全周フィールド内に配置された、三次元座標が既知の複数のターゲットを備え;
前記基準方向から所定の角度範囲においては、前記ターゲットが第1の密度で配置され、
前記基準方向から所定の角度範囲の範囲外においては、前記ターゲットが前記第1の密度よりも高い第2の密度で配置され、
前記全周フィールドの法線は、少なくとも2方向を有する、
全周フィールド。
【請求項2】
前記第1の密度で配置されたターゲットは、第1の大きさであり、
前記第2の密度で配置されたターゲットは、第1の大きさよりも大きな第2の大きさであり、
撮影されたターゲットの大きさが揃うように、前記第1の大きさのターゲットと前記第2の大きさのターゲットは構成されている、
請求項1に記載の全周フィールド。
【請求項3】
前記基準カメラと前記他のカメラは、互いにオーバーラップ領域を設けて撮影するように配置され、
前記第2の密度で配置されたターゲットは、前記オーバーラップ領域に撮影されるように前記ターゲットを配置した、
請求項1または請求項2に記載の全周フィールド。
【請求項4】
前記他のカメラの光軸方向から所定の角度範囲は、前記オーバーラップ領域以外の領域であり、
前記他のカメラの光軸方向から所定の角度範囲においては、前記ターゲットが第3の密度で配置され、
前記第2の密度は、前記第3の密度よりも高い、
請求項3に記載の全周フィールド。
【請求項5】
前記基準カメラの前記基準方向から所定の角度範囲は、カメラが有するレンズの所定の歪み量以下の範囲である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の全周フィールド。
【請求項6】
前記全周フィールドは、前記マルチカメラの周囲を囲むように構成された、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の全周フィールド。
【請求項7】
前記基準カメラが天頂方向に向けられ、前記基準方向とは異なる方向に光軸を有する複数の他のカメラが前記基準カメラの周囲に配置されたマルチカメラにより撮影される全周フィールドであって、
前記全周フィールドは、前記マルチカメラの周囲を囲む側面と、前記マルチカメラを覆う上面から構成される、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の全周フィールド。
【請求項8】
前記ターゲットは、カラーコード付きターゲットである、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の全周フィールド。
【請求項9】
基準方向に光軸を有する基準カメラと、前記基準方向とは異なる方向に光軸を有する他のカメラとを有するマルチカメラで撮影する、キャリブレーション用全周フィールドの撮影方法であって、
前記マルチカメラを配置する工程と;
前記基準方向から所定の角度範囲においては、三次元座標が既知のターゲットを第1の密度で配置し、前記基準方向から所定の角度範囲の範囲外においては、三次元座標が既知のターゲットを前記第1の密度よりも高い第2の密度で配置して、前記全周フィールドの法線方向が少なくとも2方向になるように前記全周フィールドを構成する工程と;
前記基準カメラの光軸を、前記第1の密度で配置されたターゲットに向けてセットする工程と;
前記マルチカメラの内部パラメータまたは外部パラメータを測定するために、複数の前記ターゲットを前記マルチカメラで撮影する工程とを備える;
全周フィールドの撮影方法。
【請求項10】
前記全周フィールドを構成する工程は、前記基準カメラと前記他のカメラが互いにオーバーラップ領域を設けて撮影するように、かつ、前記オーバーラップ領域には、前記第2の密度で配置されたターゲットが撮影されるように、前記全周フィールドを構成する;
請求項9に記載の全周フィールドの撮影方法。

【図1】
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【図3】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図22】
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【図23】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−189551(P2012−189551A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55627(P2011−55627)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】