説明

マルチ・チャンバ・ツールのためのオゾン・システム

【課題】マルチ・チャンバ・ツールとの関係でオゾン濃度を制御する改良されたシステム及び方法を提供する。
【解決手段】オゾン発生器20と組み合わされた第1及び第2の濃度コントローラ25、35を含む。第1の濃度コントローラ25は、イベントを検出し、それに応答して、予測制御アルゴリズムに従いオゾン発生器20に電力指示を提供する。第1の濃度コントローラ25は、高速(すなわち、約1秒)の応答時間を有する。第2の濃度コントローラ35は、イベントの間はオゾン発生器20からマスクされているが、それ以外の場合には、イベントの発生からある時間間隔が経過した後で発生器20を制御する。第2の濃度コントローラ35は、第1の濃度コントローラ25よりも低速の応答時間を有するが、システムに長期的な安定性を提供し、予測制御アルゴリズムに更新されたデータを提供するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、例えばオゾン搬送システムなどの希薄気体搬送システムに関する。更に詳しくは、本発明は、マルチ・チャンバ・ツールのための希薄気体搬送システムにおいて搬送される気体の濃度を所望のレベルに維持することに関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、様々な半導体処理システムにおいて用いられる。例えば、オゾンは、ウエハの上に絶縁膜を成長させる又は薄膜を酸化することによって、半導体ウエハの上に絶縁膜を形成する際に用いられる。オゾンは、デバイス素子を積層する前の半導体ウエハの表面処理に用いられる。半導体処理におけるオゾンの別の応用としては、半導体ウエハと半導体機器の処理チャンバの洗浄のための利用である。オゾンは、半導体ウエハの表面や処理チャンバから炭化水素を除去するのに有用である。
【0003】
半導体処理におけるオゾンの利用は、オゾン発生装置に対する要求を増加させている。半導体処理への応用では、オゾンや処理チャンバまで搬送されるそれ以外の気体は、搬送される気体がプロセスに汚染物を持ち込まないように、非常に高い純度が要求される。いくつかのオゾン発生器では、例えば窒素や二酸化炭素などの不活性なドーパント気体の使用が必要となり、それにより、オゾン濃度を受入可能なレベルまで増加することになる。
【0004】
一般的に、生産性を向上させるに、半導体処理ツールは、複数のチャンバを用いる。単一のオゾン発生器を用いてオゾンをツールの複数のチャンバに送り機器及び動作コストを下げることには効果があるが、従来型のシステムでは、チャンバの始動や停止の間に生じる困難のため、それぞれの処理チャンバに対して1つの専用のオゾン発生器を用いる。例えば、20秒又はそれよりも長い時間間隔にわたる半導体処理において、所望の濃度レベルからの大きな上昇又は低下があると、半導体デバイスの品質は致命的な影響をうけることになる。1つのオゾン発生器を用いて複数のチャンバに供給するときには、従来型の制御システムは、一般に、30秒又はそれよりも長い反応又は安定化時間(settling time)を有する。例えば、PIDコントローラの場合の典型的な応答時間を示している図1を参照すると、10slmの流率に対して所望の300g/m3の濃度を達成するための安定化時間は約70秒である。その結果、30秒の安定化時間の間のチャンバにおける濃度レベルは、所望のレベルとは異なっており、半導体製品を損なうことになる。
【発明の概要】
【0005】
一般的に、本発明は、処理ツールの1又は複数のチャンバに搬送されるオゾンなどの気体を、チャンバへのフローが開始又は中断されるときに、実質的に一定の濃度に維持する方法及びシステムをその特徴とする。チャンバをオンラインにする又はチャンバへのフローを中断することを、イベントと称する。従って、マルチ・チャンバ・ツールを含むシステムでは、イベントは、(1)チャンバが付勢されるとき、又は、(2)チャンバへのフローが中断されるとき、に発生する。ここでは、オゾンを代表的な核種として用いるが、それ以外の気体や、他の希薄気体の製造も、この出願において説明する本発明による方法及びシステムを用いて制御することができる。様々な実施例において、本発明による方法及びシステムは、システム設計を単純化し、主要な設備コストを削減し、製造された製品の信頼性及び品質を向上させ、オゾン濃度を維持する際の動的応答性及び精度を改善し、オゾンの過剰製造を最小化することができる。
【0006】
ある側面では、本発明は、オゾンのフロー及び濃度を制御するシステムに関する。このシステムは、オゾン発生器と、フロー・センサと、第1のコントローラと、濃度センサと、第2のコントローラとを含む。このシステムのオゾン発生器は、気体源に接続可能である調節可能な気体入力(例えば、酸素や、酸素とドーパント気体との混合物)と、調整可能な電力入力と、複数の処理チャンバに接続可能な気体出力と、を含む。複数の処理チャンバは、それぞれが、付勢されると、当該処理チャンバを通過する所定の流率を許容するように設定されている。このシステムのフロー・センサは、前記複数の処理チャンバを通過する全流率を測定するのに用いられる。第1のコントローラは、前記フロー・センサ及び前記オゾン発生器と通信する。第1のコントローラは、前記全流率と前記所定の流率とを比較することによりイベントの発生を決定するのに用いられる。次に、第1のコントローラは、ルックアップテーブルに記憶されているデータに従って前記イベントの発生時に前記オゾン発生器の前記調整可能な電力入力を調整する。濃度センサは、前記オゾン発生器の気体出力におけるオゾンの濃度レベルを測定するのに用いられる。第2のコントローラは、前記濃度センサ及び前記オゾン発生器と通信する。また、第2のコントローラは、前記イベントの発生から所与の時間が経過した時点で、前記調整可能な電力入力を調整する。
【0007】
第1及び第2のコントローラを用いることの結果として、本発明のある実施例のシステムは、1又は複数のイベントの発生の間及びその後で、複数のチャンバに所望のレベルのオゾンを搬送するのに用いられる。実際には、第1のコントローラは、イベントの発生を検出することができ、ルックアップテーブルに記憶された値に従って電力を増加又は減少する旨の命令をオゾン発生器に与えることができる。この命令は、イベントの検出のほぼ直後にオゾン発生器に送られ、9秒の安定化時間(settling time)を有するオゾン発生器を用いて、適切な濃度を、イベントの検出後約10秒で1又は複数のチャンバに搬送することができる。本発明の第2のコントローラは、ルックアップテーブルにおけるデータを定期的に更新し、イベントの後で所望の濃度値を維持するための提供される。一般に、第2のコントローラは、第1のコントローラのようなより単純なアルゴリズム・コントローラよりも、時間経過に伴ってオゾンの濃度をより正確でより安定的な制御を提供することができるPIDコントローラである。しかし、第2のコントローラは、30秒程度のオーダーのより長い安定化時間を有しており、その結果としてイベント発生の間はシステムからマスクされることにより、第1のコントローラは処理条件の必要な高速な変化を提供することができる。
【0008】
本発明のこの側面は、以下の特徴の中の1つ又は複数を含むことができる。システムのある実施例では、第2のコントローラが調節可能な電力入力を調節するのに用いられるイベント発生から後の所与の時間は、第2のコントローラ(例えば、PIDコントローラ)の安定化時間と等しい又はそれよりも長い。ある実施例では、第2のコントローラは、前記ルックアップテーブルに記憶されたデータを更新し、オゾン発生器の現在の状態を反映させる。このシステムは、また、前記オゾン発生器に接続された閉ループ圧力コントローラを更に備えており、チャンバが循環されるときに極端なフローの揺らぎを回避することに役立てる。本発明のこの側面のある実施例では、前記調整可能な気体入力は、少なくとも1つの質量流量(mass flow)コントローラを備えている。他の実施例では、前記調整可能な気体入力は、少なくとも1つの質量流量計を備えている。前記調節可能な気体入力は、更に、酸素源気体とドーパント搬送気体との間の濃度比率を制御する比率制御装置を備えている。ある実施例では、前記第1のコントローラは、所定の流率の50パーセントよりも大きな読み出し範囲を有する。すなわち、第1のコントローラは、ある1つのチャンバに対する所定の流率の50%を超える値だけ全体の流率が上昇又は下降するのを見た場合にイベントを検出することができる。
【0009】
別の側面では、本発明は、オゾン発生器における酸素の反応によって形成されるオゾンや、遠隔プラズマ源を用いた電離を介したアルゴン/窒素の気相混合物など、希薄気体のフロー及び濃度を制御する方法に関する。この方法は、(a)希薄気体のフローをある濃度で第1のチャンバに導入するステップと、(b)前記希薄気体の前記フローを第2のチャンバに導入するステップと、(c)所定の値を用いて前記希薄気体の製造を調節することにより、前記第1のチャンバにおける前記希薄気体の濃度が実質的に変化せずに維持され、約15秒未満の時間間隔の後で前記第1のチャンバに搬送される濃度と実質的に同一の前記希薄気体の濃度を前記第2のチャンバが受け取るようにするステップと、を含む。ある実施例では、前記時間間隔は約10秒未満である。
【0010】
本発明のこの側面のある実施例では、所定の値は、予測制御アルゴリズムを用いて決定される。例えば、この方法がオゾン発生器からのオゾン製造を制御するのに用いられるときには、予測制御アルゴリズムは、特定のオゾン濃度に対する所望のオゾン流率に対応する既知の電力設定のルックアップテーブルを用いることを含む。
【0011】
ある側面では、本発明は、オゾンのフロー及び濃度を制御する方法を特徴とする。この方法は、(a)オゾンのフローをある濃度で第1のチャンバに導入するステップと、(b)オゾンの前記フローを第2のチャンバに導入するステップと、(c)オゾン発生器に搬送される電力レベルを調節してオゾンの製造速度を変更し、ある時間間隔の後では前記第2のチャンバにおけるオゾン濃度を前記第1のチャンバにおけるオゾン濃度と実質的に同一になるように維持するステップと、(d)前記搬送された電力レベルをメモリに記憶するステップと、(e)前記電力レベルを以後の調節の間の基準として用いるステップと、を含む。ある実施例では、濃度レベルがいったん安定化すると、システム・コントローラは、搬送された電力の値をそのメモリに記憶し、気体フローの以後の変化のために自己学習した基準を提供する。この特徴により、本発明による方法は、その寿命にわたりオゾン発生器の性能のどのような変化も補償できることになる。例えば、オゾン発生器の性能は、オゾン発生器の冷却、電力の揺らぎ、システム温度の上昇、時間経過に伴う劣化などの不均一性に起因して変動しうる。その結果、ルックアップテーブルに記憶されている値をオゾン発生器の最近の性能に基づいて更新することができるコントローラを組み入れることにより、システムは、オゾン発生器の性能の変化を補償することができる。
【0012】
別の側面では、本発明は、複数の処理チャンバを含むシステムにおけるオゾンのフロー及び濃度を制御する方法を特徴とする。この方法は、(a)予測制御アルゴリズムを用いてイベントの発生の間のオゾン発生器におけるオゾンの製造を制御するステップと、(b)PIDコントローラを用いて、前記イベントの発生の後でのオゾン発生器におけるオゾンの製造を制御し、前記予測制御アルゴリズムにおいて用いられたデータを更新するステップと、を含む。本発明のこの側面では、前記予測制御アルゴリズムは、(a)前記複数のチャンバの中の1つの付勢イベントを、オゾンの全フローの測定値から決定するステップと、(b)前記付勢イベントに対応する電力出力設定を選択するステップと、(c)オゾン発生器における電力を前記選択された電力出力設定に調節するステップと、を含む。
【0013】
別の側面では、本発明は、オゾン発生器において製造されたオゾンのフロー及び濃度を制御するシステムを特徴とする。このシステムは、調節可能な気体入力と、フロー・センサと、第1のコントローラと、濃度センサと、第2のコントローラとを含む。調節可能な気体入力は、気体源に接続可能である。調節可能な電力入力は、複数の処理チャンバにおいて用いられるために製造されるオゾンの濃度を規制するのに用いられる。複数の処理チャンバは、それぞれが付勢されると、所定の流率の通過を許容する。フロー・センサは、前記複数の処理チャンバを通過する全流率を測定するのに用いられる。第1のコントローラは、前記フロー・センサ及び前記調節可能な電力入力と通信する。更に、第1のコントローラは、イベントの発生を、前記全流率と前記所定の流率とを比較し前記調節可能な電力入力を前記イベントの発生時にルックアップテーブルに記憶されたデータに従って調節することによって決定する。濃度センサは、製造されたオゾンの濃度レベルを測定するのに用いられる。第2のコントローラは、前記濃度センサ及び前記調節電力入力と通信する。更に、第2のコントローラは、前記イベントの発生からある所与の時間が経過した後で、前記調節可能な電力入力を調節する。ある実施例では、前記イベントの発生からの前記所与の時間は、前記第2のコントローラの安定化時間と等しいか又はそれよりも長い。更にある実施例では、前記イベントの発生からの前記所与の時間は、約5秒ないし15秒である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添附の図面では、異なる複数の図面を通じて同一の構成要素には同一の参照番号が付されている。また、これらの図面は、寸法通りではなく、むしろ、本発明の原理を説明することに重点がおかれている。
【図1】標準的なPIDコントローラに関する時間を横軸にとったオゾン濃度のグラフである。
【図2】本発明のある実施例によるオゾンのフローを制御するシステムを図解するブロック図である。このシステムは、気体源及びマルチチャンバ型の処理ツールと共に示されている。
【図3】図2のシステムで用いられる予測制御アルゴリズムを図解するブロック図である。
【図4】様々な流率に対する典型的なオゾン発生器に関し、発生器の電力を横軸にとったオゾン濃度のグラフである。
【図5】時間を横軸にとった、図2のシステムを用いる間に測定されるオゾン濃度のグラフである。
【図6】図5のグラフの一部の拡大図である。
【図7】質量流量コントローラを通過してマルチチャンバ・ツールの中の1つのチャンバまでのフローを制御するシステムに関して測定された、時間を横軸にとったオゾンのフローのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、マルチチャンバ装置半導体処理ツール15と共に使用される例示的なオゾン搬送システム10を示す。マルチチャンバ装置処理ツール15は、それぞれが専用のフロー・コントローラ18と流体的に接続されている6つのチャンバ17を含む。しかし、任意の数のチャンバ(例えば、2、3、4、5、7など)を、マルチチャンバ装置ツール15は含むことができる。マルチチャンバ装置処理ツール15は、更にオゾン破壊ユニット19を含み、このオゾン破壊ユニットは、搬送システム10のウォームアップ又はシャットダウンの間などの非処理期間の間は、オゾンを受け取るように開くことができる。
【0016】
オゾン搬送システム10は、第1の濃度コントローラ25と第2の濃度コントローラ30とを備えたオゾン発生器20を含んでいる。第1及び第2の濃度コントローラ25及び30は、オゾン搬送システム10に、ツール15のチャンバへのオゾンのフローの活性化及び停止の間及び後に、複数のチャンバ17において所望のオゾン濃度を維持する能力を提供する。第1のコントローラ25と第2のコントローラ30との組合せを用いる結果として、6つのチャンバ17のそれぞれのために専用のオゾン発生器を用いることなく、高品質の半導体製品をマルチチャンバ型の処理ツール15の中で処理できる。
【0017】
いくつかの実施例では、搬送システム10の中で使用されるオゾン発生器20は、MKSインスツルメンツ社(米国マサチューセッツ州ウィルミントン所在)から市販されているAX8550のオゾン発生器である。別の実施例では、オゾン発生器20は、セモゾン(SEMOZON(登録商標))AX8550シリーズのオゾン発生器であり、共通型又は独立型のデュアル・チャネル気体フロー制御を選択できる。更に、ある実施例(図示せず)では、オゾン搬送システム10は、共同して動作してイン・サイトゥでオゾンガスを発生する2つ以上のオゾン発生器20を含んでいる。オゾン発生器20が付属するマルチ・チャンバ・ツール15の中の複数のチャンバ17に気体を搬送する限り、本発明のオゾン搬送システム10は、1又は複数のオゾン発生器20を含みうる。すなわち、オゾン搬送システム10は、付属のマルチチャンバ半導体処理ツール15のそれぞれのチャンバ17のための専用のオゾン発生器を含まない。
【0018】
一般に、オゾンは、無声放電プロセスを用いて、オゾン発生器20において製造することができる。簡潔には、無声放電プロセスは、少量のドーパント気体を用いて又は用いないで、高純度の酸素ガスを放電に露出することを含む。この放電が、酸素分子を励起し、原子状態に破壊する。原子が再結合によりオゾン(O3)と酸素(O2)との混合物である希薄気体となる。酸素に対するオゾンの比率は、結合に用いられた酸素の量に依存し、発生器に搬送され放電現象を生じさせた電力量にも依存する。結果的に、オゾン発生器30は、気体と電力との両方の調節可能な入力を許容し、それによって、オゾンの製造を変動させ制御することが可能になる。一般に、既知のオゾン発生器は、約25重量パーセントまでのオゾン濃度とを生産することができ、毎分50標準リットルの流率を達成することができる。
【0019】
図2を参照すると、搬送システム10は、フロー・コントローラ41及び42を介してガス発生源35及び40に接続される。フロー・コントローラは、質量流量コントローラ又は質量流量計のどちらかでありうる。気体源35は、高純度の酸素をオゾン発生器に搬送する。しかし、実施例によっては、気体源40と対応するフロー・コントローラ42は取り除かれ、オゾン製造にドーパント気体が用いられないこともある。ある実施例では、酸素ガス及び/又はドーパント・ガスは、上述したMKSインスツルメンツ社から市販されている640の圧力コントローラなどの圧力コントローラを介して、オゾン発生器へ導入することができる。
【0020】
オゾン発生器20からの出力は、一定の圧力でオゾン発生器からの気体出力を保持するように設計された圧力コントローラ50と電気的に通信する圧力センサ45に導くことができる。例えば20ないし30psigの定圧で気体出力を保持することの結果として、、EVENT(つまり、複数のチャンバの中の1つの付勢又は停止)の間の極端なフローの揺らぎが最小化される。圧力コントローラ50は真空源55に接続され、圧力コントローラ50のインピーダンスを用いて、オゾン発生器20への入力と流体接続された真空55の開口のサイズが調節される。したがって、オゾン発生器20で製造され搬送されたオゾンの圧力は、図2に示されるようなジェネレータの上流の可変インピーダンスによる閉ループ圧力制御を用いて維持される。閉ループ圧力制御システムを含むことの結果、背面圧力(back pressure)を維持して、チャンバが開閉されるときの過剰な揺らぎを回避するのを助ける。これは、値を測定するような単純で安価なフロー制御要素を用いることを可能にし、質量流量コントローラなど高価な装置に典型的なフローの振動を最小化するのに役立つ。
【0021】
フロー・センサ60は、第1の濃度コントローラ25へのフィードバックを提供するのに用いられる。フロー・センサ60は、チャンバ17に付属するフロー・コントローラ18のそれぞれを通過するオゾンの全流率を検出する。全流率データは、第1の濃度コントローラ25に電子的に送られ、第1の濃度コントローラはこのデータを用いて、任意の所与の時点で開いている処理チャンバの総数を判断する。すなわち、第1の濃度コントローラ25は、このデータを用いて、イベント(つまり、マルチ・チャンバ・ツール15のチャンバ17の中の1つの付勢又は中断)の発生を判断する。イベントの発生を検出すると、第1のコントローラ25は、予測制御アルゴリズムを用いて、フロー検出器60によって検出された全流率に対する所望のオゾン濃度に対応する記憶されているデータ設定を調べることにより、オゾン発生器20のための適切な電力(パワー)設定を決定する。この電力設定は、オゾン発生器20に直ちに伝えられる。なお、オゾン発生器20は、典型的には、約9秒の応答時間を有する。オゾン発生器20にデータが伝えられる結果、オゾン発生器からのオゾンのフローは、約10秒ないし5秒の範囲内の所望の濃度レベルを有する。
【0022】
オゾン搬送システム10は、更に、第2の濃度コントローラ30にフィードバックを提供するのに用いることができる濃度センサ65を含む。濃度センサ65は、オゾン発生器20を出るオゾンのフロー(つまり、気体出力)におけるオゾン濃度を検出する。この濃度データは、第2の濃度コントローラ30に電子的に送られる。第2の濃度コントローラは、比例積分微分(PID)コントローラであるか、又は、第1のコントローラ25のようなより単純なアルゴリズム・コントローラよりも時間経過に伴うオゾン濃度のより正確でより安定的な制御を提供する他のタイプのコントローラである。しかし、第2のコントローラ30は、30秒程度のオーダーのより長い安定化時間を有し、結果的に、イベント発生の間はシステムからマスクされており、よって、第1のコントローラ25は処理条件における迅速な変化(つまり、ステップの変化)を提供することができる。第2の濃度コントローラ30は、イベントの間と、予測制御アルゴリズムを用いて第1の濃度コントローラ25によって決定される電力設定に第2のコントローラが追いつくまで、オゾン発生器20からマスクされる。典型的には、第2の濃度コントローラ30がオゾン発生器20からマスクされる時間間隔は、第2の濃度コントローラ30の安定化時間(例えば約30秒)とほぼ等しい。
【0023】
イベントの発生後に第2の濃度コントローラ30が第1の濃度コントローラ25に追いつく時間が経過すると、第2の濃度コントローラ30が、オゾン発生器20の制御を行うようになり、濃度センサ65からのフィードバックを介してオゾン濃度のより正確で安定的な制御を提供する。更に、第2の濃度コントローラ30は、第1の濃度コントローラ25によって用いられるデータ設定を更新し、搬送システム10に自己学習アルゴリズムを提供する。自己学習により、システム10は、時間経過に伴うオゾン発生器20の性能の変動を補償することが可能になる。例えば、一般的に、搬送システム10の中で使用されるもののような一般的なオゾン発生器は、時間経過に伴って劣化し、最初の時点よりも、特定の流率で同一のオゾン濃度を生じるためにより多くの電力を必要とする。更に、冷却条件の変更や長期間の使用により、オゾン発生器の性能は影響を受ける場合がある。第2の濃度コントローラ30の使用を介して第1の濃度コントローラ25に自己学習能力を組み込むことにより、搬送システム10は、オゾン発生器20の性能の変化を補償することが可能になる。
【0024】
ある実施例では、ドーパント搬送気体に対する分子状酸素の比率は、第2の濃度コントローラ30を用いたフィードバック・ループによって制御できる。第2の濃度コントローラは、濃度センサ65を介して、オゾン発生器20から搬送されたオゾン濃度を検出する。所望のレベルよりも高いレベルのドーパントが検出されるか、予想されるよりも低いオゾン濃度が検出される場合には、第2のコントローラ30は、電子的にオゾン発生器に搬送されたドーパント搬送気体に対する酸素の比率を変更するように流率を増減するようにフロー・コントローラ41及び42の一方に命じる。その結果、オゾン発生器20に、調整可能なガス入力が提供される。
【0025】
オゾン発生器20に送られる電力は、参照番号100で示された予測制御アルゴリズムを使用して制御される。予測制御アルゴリズム100は、質量流量変化に応答して変化する。質量流量の変化は、追加的なチャンバ17にフローを導入することの結果であり、又は、チャンバ17へのフローを中断することの結果である。オゾン発生器への電力の変更は、オゾン又はそれ以外の希薄気体の製造速度を変化させ、よって、マルチ・チャンバ・ツール15の中の1つ又は複数のチャンバ17にへ提供されるオゾン(又はそれ以外の希薄気体)の濃度が維持される。更に、第1及び第2のチャンバの間のオゾン濃度は、高速で効率的なプロセス(例えば、第2のチャンバをオン・ライン又はオフ・ラインしてから15秒未満)において同一化することができる。フローを制御するこの方法を用いる結果として、半導体ツールのスループットの向上を、搬送システム10がステップ処理条件を迅速に変更できることにより、達成できる。
【0026】
図3を参照すると、予測制御アルゴリズム100は、現在のステップ(n)のレベル、すなわち、現時点で用いられているチャンバ17の数を識別する計算を含む。計算105は、それぞれのフロー・コントローラ18に対して設定された設定点流率107を用いてフロー検出器60に測定されるように、全流率106との比較を通じて、第1の濃度コントローラ25の中でなされる。すなわち、チャンバ17の中の1つに付属するフロー・コントローラ18は、それぞれが、使用に先立って、共通の流率設定点(例えば、5slm)に設定される。計算105は、全流率106とフロー設定点107とを比較する、すなわち、全流率106をフロー設定点107で除算するし、現在のステップ(n)のレベルを決定することによって、なされる。現在のステップ(n)を決定した後で、第1の濃度コントローラ25は、ルックアップテーブル110を調べることにより、適切な電力レベルを決定する。現在のステップ(つまり、開いているチャンバ、すなわち、要求される全フロー)を入力することによって、最初のコントローラ25は、現在のステップに対応する電力設定を検索することができる。例えば、様々な流率に対して所望の濃度を達成するのに要求される発生器の電力については、図4に示されている。図3のグラフの結果に対応するデータは、特定のオゾン発生器のためのルックアップテーブルを作成するために用いることができる。したがって、図4のデータを用いる例としては、最初の第1のコントローラ25が活性化されたそれぞれのチャンバ17について5slmのフロー設定点を有するプロセスに対して現在のステップである3を計算し、それぞれのチャンバにおいて所望の濃度レベルが19重量パーセントのオゾンである場合には、第1のコントローラ25は、ルックアップテーブルにおいて、約40パーセントの電力レベル値を見つけることになる。そして、第1の濃度コントローラ25は、信号を送信し(112)、オゾン発生器の電力設定を調節する。
【0027】
予測制御アルゴリズム100は、更に、第2の濃度コントローラ30と相互作用(対話)する。第2の濃度コントローラ30は、濃度センサ65によって測定された濃度117と所望の濃度設定点118(上述した例からの19重量パーセント)とを比較する。測定された濃度が所望の濃度より低い又は高い場合には、第2の濃度コントローラは、オゾン発生器の電力設定をそれに従って調節する信号を送る(119)。しかし、第2の濃度コントローラ30の安定化時間は第1の濃度コントローラ25よりも長いので、第2の濃度コントローラ30による電力設定値は、ステップ変更の間に、第1の濃度コントローラ25と比較して、遅延される。その結果、第2の濃度コントローラ119から送信された電力設定は、電力出力制御移行アルゴリズム125によってマスクされる。一般に、ステップ変化の間、電力出力制御アルゴリズムは、第2の濃度コントローラ30から送られた(119)電力出力信号が第1の濃度コントローラ25から送られた(112)電力設定と実質的に等しくなるまで、信号の送信が第2の濃度コントローラ30からの電力設定を調節するのを防止する。その時点で、第2の濃度コントローラ30が、オゾン発生器20の制御を引き継ぐ。
【0028】
オゾン発生器の電力性能の変化を補償するため、ルックアップテーブル110に格納された値を使用の間に更新することができる。例えば、第2の濃度コントローラ30がオゾン発生器20の電源制御125を引き継いだ後のある時点で、その特定のn−ステップに対する新たな電力値を格納することができ、その結果、その値を以後のイベントの間に用いることができる。結果的に、第2の濃度コントローラ30は、それに従って電力設定を調節することによって、このような変化に応答することができる。特定のn−ステップに対するこれらの調整された出力設定は、そのとき特定のn−レベルへの以後のステップ・アップ又はダウンの間に用いるために、ルックアップテーブルに送信される(130)。
【0029】
図5を参照すると、マルチ・チャンバ・ツール15の中へオゾンを搬送する搬送システム10の性能が示されている。この例で使用されるフロー・コントローラ17は、4slmの流率に予め設定されている計量弁である。フロー結果200のグラフにおけるそれぞれのステップ・アップ(すなわち、それぞれの4slmの増加)はチャンバをオンラインにすることを反映し、他方で、それぞれのステップ・ダウン(すなわち、それぞれの4slmの減少)はチャンバへのフローを中断することを反映している。それぞれのステップは、1つのイベントを表す。第1の濃度コントローラ25は、フロー・コントローラ17を通過する全フローを予め設定された流率(例えば、4slm)によって除算し、ある所与の時点で付勢されているチャンバの数であるnを決定することによって、それぞれのステップを相互から区別することができる。ある実施例では、第1の濃度コントローラ25は、nの値の全体までは流率が上昇又は下降するのを待つことなく、イベントの発生を検出することができる。実際、第1の濃度コントローラ25は、予め設定された流率がステップ当たりで50%以上上昇又は下降することを検出することで、イベントを検出するように設定することができる。すなわち、4slmの予め設定された流率に対し、2slmよりも大きな流率の変化であれば、どのような変化であっても、第1の濃度コントローラ25によるイベントの検出をトリガする。
【0030】
図5は、更に、フロー結果200に対応する濃度結果210のグラフを示す。グラフ210によって図解されるように、オゾンの濃度は、イベントの間ずっと実質的に一定に維持されている。濃度安定性は、それぞれのイベントにおいて、約1から10g/m3までの間にある。濃度におけるスパイクやディップは、それぞれ、イベントの発生時における安定化時間を反映している。本発明の様々な実施例では、安定化時間は、1秒から15秒まの間にある。図6は図5に表わされている時間の最初の5分の拡大図であるが、安定化時間は約5秒である。コールドスタートつまり第1のチャンバへのフローを開始するときからの安定化時間は、オゾン発生器20のそれまでの使用法に応じて、15秒から約100秒までの間にある。図6の場合には、コールドスタートからの安定化時間は、約90秒である。
【0031】
図7を参照すると、別の実施例におけるマルチ・チャンバ・ツール15までオゾンを搬送する搬送システム10の性能が示されている。この実施例で用いられているフロー・コントローラ17は、質量流量(mass flow)コントローラであり、4slmの流率に予め設定されている。上述した実施例の場合の計量弁とは異なり、質量流量コントローラ17は、イベント当たりの安定化時間の長さを増加させる。特に、図7に示されている安定化時間220は、図6での5秒の安定化時間と比較して、約10秒になっている。
【0032】
以上では、本発明を特定の実施例を参照して示し説明したが、特許請求の範囲によって画定される本発明の精神及び範囲から逸脱せずに形式及び詳細において様々な変更が可能であることは、当業者であれば容易に想到できるはずである。例えば、例えば、この出願ではオゾンを製造する実施例に則して本発明の方法及びシステムを説明したが、他のタイプの希薄気体に即して本発明のシステム及び方法を使用することが可能である。例えば、本発明のシステム及び方法は、アルゴンと窒素の分離した混合物やアルゴンと酸素との分離した混合物をチャンバに搬送するのにも使用できる。更に、上述した実施例では既知のオゾン発生器の特性に対応したデータが予め格納されているルックアップテーブルを用いているが、すべての値について最初はゼロを含むルックアップテーブルを提供することも可能である。すべてがゼロであるルックアップテーブルを、第2の濃度コントローラ30と関連する学習アルゴリズムを用いて埋めることが可能である。すなわち、搬送システム30がすべてのチャンバ17について開閉を循環した後で、第2の濃度コントローラ30によって決定された電力値によってゼロを置き換えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体のフローを制御する方法であって、
前記気体のフローをある濃度で第1のチャンバに導入するステップと、
前記気体の前記フローを第2のチャンバに導入するステップと、
所定の値を用いて前記気体の製造を調節することにより、前記第1のチャンバにおける前記気体の濃度が実質的に変化せずに維持され、15秒未満の時間間隔の後で前記第1のチャンバに搬送される濃度と実質的に同一の前記気体の濃度を前記第2のチャンバが受け取るようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記時間間隔は10秒未満であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記気体はオゾン発生器において製造されたオゾンであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記所定の値を用いて、前記オゾンのフローを製造するのに用いられる前記オゾン発生器に搬送される電力を変化させるステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、予測制御アルゴリズムを用いて前記所定の値を決定するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
オゾンのフローを制御する方法であって、
オゾンのフローをある濃度で第1のチャンバに導入するステップと、
オゾンの前記フローを第2のチャンバに導入するステップと、
オゾン発生器に搬送される電力レベルを調節してオゾンの製造速度を変更し、ある時間間隔の後では前記第2のチャンバにおけるオゾン濃度を前記第1のチャンバにおけるオゾン濃度と実質的に同一になるように維持するステップと、
前記搬送された電力レベルをメモリに記憶するステップと、
前記電力レベルを以後の調節の間の基準として用いるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
複数の処理チャンバを含むシステムにおけるオゾンのフローを制御する方法であって、
予測制御アルゴリズムを用いてイベントの発生の間のオゾン発生器におけるオゾンの製造を制御するステップと、
PIDコントローラを用いて、前記イベントの発生の後でのオゾン発生器におけるオゾンの製造を制御し、前記予測制御アルゴリズムにおいて用いられたデータを更新するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記予測制御アルゴリズムは、
前記複数のチャンバの中の1つの付勢イベントを、オゾンの全フローの測定値から決定するステップと、
前記付勢イベントに対応する電力出力設定を選択するステップと、
オゾン発生器における電力を前記選択された電力出力設定に調節するステップと、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146987(P2012−146987A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16611(P2012−16611)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2008−520378(P2008−520378)の分割
【原出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】