説明

ミシン、縫目データ作成装置、及び縫目データ作成プログラム

【課題】縫目データに基づいて、上布を下布に縫付ける作業を自動で行うと共に、上布の縫付ける領域を決定することができるミシンを提供する。
【解決手段】ミシン頭部に設けたカメラで、刺繍枠に保持された下布に仮止めされたポケット布の外形を撮影する。撮影された画像データから、ポケット布の外形及び特徴点を算出する。算出された特徴点に基づいて、ポケット布のポケット口以外を縫目形成領域として決定する。決定した縫目形成領域について、ポケット布の外形に沿った縫目データを作成する。作成された縫目データに基づいてミシンで縫製を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシン、縫目データを作成する縫目データ作成装置、及び縫目データ作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、縫針を含む縫目形成機構と、被縫製物である加工布を保持する刺繍枠をミシンベッド上でX,Yの二方向に移動させる移送機構と、前記縫目形成機構及び前記移送機構を制御する制御装置とを備えた刺繍縫製が可能なミシンが知られている。このミシンにおいては、制御装置が、一針毎の刺繍枠のX,Y方向の移動量を示す刺繍データに基づいて、縫目形成機構及び移送機構を駆動制御することにより、加工布に対し、前記刺繍データに応じたパターンの刺繍縫製動作を実行する。
【0003】
ここで、例えば特許文献1には、上記のようなミシンを用いて、ラベルやパッチ等の上布を下布に縫付ける縫製装置が開示されている。特許文献1の縫製装置では、下布の上に仮止めされた上布を撮影するためのCCDカメラを設け、CCDカメラの撮影画像から上布の外形を識別し、その外形に沿って縫目を形成する縫目データを作成する。そして、ミシンの制御装置は、その縫目データに従って縫目形成機構及び移送機構を駆動制御して、上布を下布に縫付ける動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−41198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ミシンで洋服を縫製するとき、洋服の例えば前身頃にポケットを付けたい場合がある。この場合、洋服の前身頃(下布)にポケット布(上布)を仮止めした後、ポケット布の外形に沿って縫目を形成するように縫製を行う。このとき、ユーザは、ポケット布を仮止めした前身頃を、ミシンの針棒(縫針)に対して回転や移動させながら縫い方向を変えつつ縫製を行う。しかしながら、ミシンに不慣れなユーザにとっては、このようなポケット布の縫付け作業を上手く行うことが困難であった。
【0006】
そこで、特許文献1の縫製装置を、ポケット布の縫付けにも利用することが考えられる。この場合、ポケット布の縫付けは、ポケット口となる部分を除いて行われる必要がある。ところが、特許文献1の縫製装置を利用した場合、ポケット口となる部分も縫付けてしまうので、ポケット布の縫付けには適用することができない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、縫目データに基づいて、上布を下布に縫付ける作業を自動で行うと共に、上布の縫付ける領域を決定することができるミシンを提供するにことある。また、本発明の他の目的は、前記ミシンのための縫目データを作成する縫目データ作成装置、及び前記縫目データ作成装置用の縫目データ作成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のミシンは、縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシンであって、被縫製物としての下布に縫付けられる被縫製物としての上布の外形を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像データから前記上布の外形を算出する外形算出手段と、前記外形算出手段により算出された前記上布の外形に基づいて、該上布を前記下布に縫付けるための縫目形成領域を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された縫目形成領域に対する縫目データを作成する縫目データ作成手段とを具備するところに特徴を有する。
【0009】
上記構成によれば、撮影手段により下布に縫付けられる上布の外形が撮影されると、その画像データから、外形算出手段により上布の外形が算出される。そして、外形算出手段により算出された前記上布の外形に基づいて、決定手段により縫目形成領域が決定され、その縫目形成領域に対する縫目データが、縫目データ作成手段により作成される。このとき、決定手段により、縫目を形成する必要がある縫目形成領域が決定されるので、上布の外形のうち、下布に縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。
【0010】
請求項2のミシンは、請求項1の発明において、前記上布はポケット布であり、前記決定手段は、前記ポケット布の外形のうち、ポケット口以外の領域を縫目形成領域として決定し、前記縫目データ作成手段は、前記決定手段が決定した縫目形成領域における前記ポケット布の外形に沿った縫目データを作成するところに特徴を有する。
【0011】
請求項3のミシンは、請求項2の発明において、前記縫目データ作成手段は、前記ポケット口の端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段を含んでいるところに特徴を有する。
【0012】
請求項4のミシンは、請求項3の発明において、前記補強縫目データは、前記ミシンが有する記憶手段に複数種類のパターンが予め記憶されており、前記補強縫目データ作成手段は、前記記憶手段に記憶されている複数種類の補強縫目のパターンの中からユーザが所望するパターンを設定する設定手段を含んでいるところに特徴を有する。
【0013】
本発明の請求項5の縫目データ作成装置は、縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシンのための縫目データを作成する縫目データ作成装置であって、被縫製物としての下布に縫付けられる被縫製物としての上布の外形を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像データから前記上布の外形を算出する外形算出手段と、前記外形算出手段により算出された前記上布の外形に基づいて、該上布を前記下布に縫付けるための縫目形成領域を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された縫目形成領域に対する縫目データを作成する縫目データ作成手段とを具備するところに特徴を有する。
【0014】
上記構成によれば、撮影手段により下布に縫付けられる上布の外形が撮影されると、その画像データから、外形算出手段により上布の外形が算出される。そして、外形算出手段により算出された前記上布の外形に基づいて、決定手段により縫目形成領域が決定され、その縫目形成領域に対する縫目データが、縫目データ作成手段により作成される。このとき、決定手段により、縫目を形成する必要がある縫目形成領域、が決定されるので、上布の外形のうち、下布に縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。
【0015】
請求項6の縫目データ作成装置は、請求項5の発明において、前記上布はポケット布であり、前記決定手段は、前記ポケット布の外形のうち、ポケット口以外の領域を縫目形成領域として決定し、前記縫目データ作成手段は、前記決定手段が決定した縫目形成領域における前記ポケット布の外形に沿った縫目データを作成するところに特徴を有する。
【0016】
請求項7の縫目データ作成装置は、請求項6の発明において、前記縫目データ作成手段は、前記ポケット口の端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段を含んでいるところに特徴を有する。
【0017】
請求項8の縫目データ作成装置は、請求項7の発明において、前記補強縫目データは、前記ミシンが有する記憶手段に複数種類のパターンが予め記憶されており、前記補強縫目データ作成手段は、前記記憶手段に記憶されている複数種類の補強縫目のパターンの中からユーザが所望するパターンを設定する設定手段を含んでいるところに特徴を有する。
【0018】
本発明の請求項9の縫目データ作成プログラムは、縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシンのための縫目データを、コンピュータによって作成する処理を実行させるための縫目データ作成プログラムであって、前記縫目データ作成プログラムは、前記コンピュータに、撮影手段により、被縫製物としての下布に縫付けられる被縫製物としての上布の外形を撮影させる撮影ルーチンと、前記撮影ルーチンにおいて撮影された画像データから前記上布の外形を算出する外形算出ルーチンと、前記外形算出ルーチンにおいて算出された前記上布の外形に基づいて、該上布を前記下布に縫付けるための縫目形成領域を決定する決定ルーチンと、前記決定ルーチンにおいて決定された縫目形成領域に対する縫目データを作成する縫目データ作成ルーチンとを実行させるところに特徴を有する。
【0019】
上記縫目データ作成プログラムを実行するコンピュータは、撮影ルーチンにおいて撮影手段により下布に縫付けられる上布の外形が撮影されると、外形算出ルーチンにおいて、その画像データから上布の外形を算出する。そして、決定ルーチンにおいて、前記算出された上布の外形に基づいて縫目形成領域を決定し、縫目データ作成ルーチンにおいて、その縫目形成領域に対する縫目データを作成する。このとき、決定ルーチンにおいて、縫目を形成する必要がある縫目形成領域が決定されるので、上布の外形のうち、下布に縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1のミシンによれば、縫目データに基づいて、上布を下布に縫付ける作業を自動で行うことを可能としたものにあって、撮影手段と、外形算出手段と、決定手段と、縫目データ作成手段とを備えるので、上布の外形のうち、下布に縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。逆に言えば、上布の外形のうち、縫目を形成しなくてもよい領域には縫目データが作成されないので、上布を下布に縫付ける作業を良好に行うことができるという優れた効果を奏する。
【0021】
請求項2のミシンによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、前記上布はポケット布であり、前記決定手段は、前記ポケット布の外形のうち、ポケット口以外の領域を縫目形成領域として決定し、前記縫目データ作成手段は、前記決定手段が決定した縫目形成領域における前記ポケット布の外形に沿った縫目データを作成するので、縫目データに基づいて、ポケット口以外の領域に縫目が形成される。よって、ポケット口が縫付けられることはなく、ポケット布の縫付けの作業を良好に行うことができる。
【0022】
請求項3のミシンによれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、前記縫目データ作成手段は、前記ポケット口の端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段を含んでいるので、縫目データに基づいて、ポケット口の端部に補強縫目を自動で形成することも可能となり、ポケット布の縫付けの作業をより一層良好に行うことができる。
【0023】
請求項4のミシンによれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、前記補強縫目データは、前記ミシンが有する記憶手段に複数種類のパターンが予め記憶されており、前記補強縫目データ作成手段は、前記記憶手段に記憶されている複数種類の補強縫目のパターンの中からユーザが所望するパターンを設定する設定手段を含んでいるので、ユーザが所望する補強縫目のパターンを容易に設定して、ポケット口の端部に所望のパターンの補強縫目を自動で形成することが可能となり、ユーザの好みに合わせた補強縫目を形成することができる。
【0024】
本発明の請求項5の縫目データ作成装置によれば、縫目データに基づいて上布を下布に縫付ける作業を自動で行うことを可能としたミシンのための、縫目データを作成するものにあって、撮影手段と、外形算出手段と、決定手段と、縫目データ作成手段とを備えるので、上布の外形のうち、下布に縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。逆に言えば、上布の外形のうち、縫目を形成しなくてもよい領域には縫目データが作成されないので、上布を下布に縫付ける作業を良好に行うことが可能な縫目データを作成することができるという優れた効果を奏する。
【0025】
請求項6の縫目データ作成装置によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、前記上布はポケット布であり、前記決定手段は、前記ポケット布の外形のうち、ポケット口以外の領域を縫目形成領域として決定し、前記縫目データ作成手段は、前記決定手段が決定した縫目形成領域における前記ポケット布の外形に沿った縫目データを作成するので、ポケット口以外の領域に縫目が形成される。よって、ポケット口が縫付けられることがなく、ポケット布の縫付けの作業を良好に行うことが可能な縫目データを作成することができる。
【0026】
請求項7の縫目データ作成装置によれば、請求項6に記載の発明の効果に加え、前記縫目データ作成手段は、前記ポケット口の端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段を含んでいるので、ポケット口の端部に補強縫目を自動で形成することができて、ポケット布の縫付けの作業をより一層良好に行うことが可能な縫目データを作成することができる。
【0027】
請求項8の縫目データ作成装置によれば、請求項7に記載の発明の効果に加え、前記補強縫目データは、前記ミシンが有する記憶手段に複数種類のパターンが予め記憶されており、前記補強縫目データ作成手段は、前記記憶手段に記憶されている複数種類の補強縫目のパターンの中からユーザが所望するパターンを設定する設定手段を含んでいるので、ユーザが所望する補強縫目のパターンを容易に設定して、ポケット口の端部に所望のパターンの補強縫目を自動で形成することが可能な縫目データを作成することができ、ユーザの好みに合わせた補強縫目を形成することができる。
【0028】
本発明の請求項9の縫目データ作成プログラムによれば、コンピュータに、縫目データに基づいて下布に上布を縫付ける作業を自動で行うことを可能としたミシンのための縫目データを作成させるものにあって、撮影ルーチンと、外形算出ルーチンと、決定ルーチンと、縫目データ作成ルーチンとを実行させるので、上布の外形のうち、下布に縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。逆に言えば、上布の外形のうち、縫目を形成しなくてもよい領域には縫目データが作成されないので、上布を下布に縫付ける作業を良好に行うことが可能な縫目データを作成することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、ミシンの外観構成を示す斜視図
【図2】ミシン頭部におけるカメラの配置状態を示す左側面図
【図3】ミシンの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】ポケット布の形状を3種類について示す図
【図5】補強縫目のパターンを3種類について示す図
【図6】制御装置が実行する縫目データ作成の処理手順を示すフローチャート
【図7】本発明の第2の実施形態を示すもので、縫目データ作成装置の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
(1)第1の実施形態
以下、本発明を、例えば家庭用の刺繍ミシンに適用した第1の実施形態について、図1から図6を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るミシン1の全体の外観を、正面(ユーザ側)から見た様子を示している。尚、ミシン1を操作するユーザが位置する側を前方、その反対側を後方とし、それら前後方向をY方向とする。また、脚柱部3が位置する側を右側、その反対側を左側とし、それら左右方向をX方向として説明する。
【0031】
本実施形態に係るミシン1は、図1で左右方向(X方向)に延びるミシンベッド2と、ミシンベッド2の右端部から上方に延びる脚柱部3と、脚柱部3の上端から左方に延びるアーム部4とを一体的に有して構成されている。アーム部4の先端部が、ミシン頭部5とされている。図2にも示すように、前記ミシン頭部5には、針棒6が上下動及び左右方向への揺動可能に設けられている。針棒6の下端部には、縫針7が装着されている。また、図2に示すように、前記ミシン頭部5には、針棒6の後側に位置して、押え棒8が設けられ、下端部に押え足9が取付けられている。
【0032】
ミシン頭部5内には、押え駆動モータ10(図3参照)の駆動源として、押え足9つまり押え棒8を上昇位置と下降位置とに亙って移動させる図示しない周知の押え駆動機構が設けられている。また、詳しく図示はしないが、前記アーム部4内には、ミシンモータ11(図3参照)により回転駆動される主軸や、主軸の回転角度を検出する主軸角度検出器12(図3参照)が設けられている。ミシン頭部5内には、前記ミシンモータ11ひいては主軸の駆動により、前記針棒6を上下動させる針棒駆動機構が設けられている。さらに、針振りパルスモータ13(図3参照)を駆動源として針棒6を左右方向(X方向)に揺動させる針棒揺動機構等が設けられている。
【0033】
前記アーム部4の上部には、カバー4aが開閉可能に設けられている。アーム部4内には、カバー4aの内側に位置して、上糸を供給する上糸駒14が着脱可能にセットされる。前記アーム部4の前面側下部には、複数個の操作スイッチ15が設けられている。詳しい説明は省略するが、操作スイッチ15は、起動・停止キー、返し縫いキー、針上下キー、糸切りキー、押え上下キー、速度調整つまみ等を含んでいる。
【0034】
前記脚柱部3の前面には、大型で縦長形状をなしフルカラー表示が可能な表示手段たる液晶ディスプレイ16が設けられている。液晶ディスプレイ16の表面にはタッチパネル17が設けられている。ユーザは、タッチパネル17を押圧操作することによって、所望の実用模様や刺繍模様等を選択したり、縫製に関する各種の機能を実行させたりすることができる。また、後述するように、タッチパネル17で補強縫目のパターンを選択することができる。つまり、タッチパネル17が、補強縫目のパターンを設定する設定手段として機能する。
【0035】
前記ミシンベッド2の上面には、前記針棒6に対応して図示しない針板が設けられている。図示はしないが、ミシンベッド2内には、針板の下側に位置して、下糸ボビンを収容し縫針7と協働して被縫製物である布に縫目を形成するための釜機構や、送り歯駆動機構等が設けられている。釜機構、送り歯駆動機構は、前記ミシンモータ11を駆動源として駆動される。これにて、前記ミシンモータ11、針棒駆動機構、釜機構等から、被縫製物に縫目を形成するための縫目形成手段が構成されている。
【0036】
そして、前記ミシンベッド2の左側部分には、周知の刺繍機18が着脱可能に装着されている。刺繍機18がミシンベッド2に装着された状態では、ミシンベッド2に設けられたコネクタ24(図3参照)を介して、後述するミシン1の制御装置25に電気的に接続される。刺繍機18は、被縫製物である布を保持した保持部材としての刺繍枠19を、ミシンベッド2上において、所定の2方向、この場合X方向(左右方向)及びそれとは直交するY方向(前後方向)に自在に移動させる移送手段を備える。
【0037】
即ち、前記刺繍機18は、ミシンベッド2に装着される本体部20の上面に、前後方向に長い移動体21を左右方向(X方向)に移動可能に備えている。詳しく図示はしないが、移動体21の右側面部にキャリッジが前後方向(Y方向)に移動可能に設けられており、前記刺繍枠19は、前記キャリッジに対して着脱可能に取付けられる。刺繍機18は、本体部20内に設けられたX軸モータ22(図3参照)により移動体21を左右方向(X方向)に自在に移動させる。また、移動体21に内蔵されたY軸モータ23(図3参照)により、前記キャリッジつまり刺繍枠19を前後方向(Y方向)に自在に移動させるように構成されている。尚、図示はしないが、前記ミシンベッド2には、前記刺繍機18を取外した状態で、補助テーブルが着脱可能に装着される。
【0038】
上記構成により、ミシン1においては、被縫製物を保持した刺繍枠19を、X方向及びY方向に自在に移動させながら、上記縫目形成手段である針棒6等を駆動させることによって、被縫製物に対する刺繍縫製動作の実行が可能となっている。そして、本実施形態では、ミシン1は、刺繍機18を用いることによって、図1に示すように、被縫製物である下布Cに対し、被縫製物である上布としてのポケット布Pを縫付けるポケット縫いの縫製作業を自動で行う機能を備えている。ここで、下布Cは、例えば前身頃の布であるとする。
【0039】
ポケット縫いの縫製作業は、刺繍枠19に保持された下布C上にポケット布Pを待ち針(図示せず)で仮止めした状態で、刺繍枠19を刺繍機18のキャリッジに装着する。そして、ポケット布Pを縫製するための縫目データに基づいて、針棒6等や刺繍機18を駆動制御して、刺繍枠19を自在に移動させながらポケット布Pの外形に沿って縫目Sを形成する。このとき、前記縫目データは、一針毎の刺繍枠19の移動量、つまり刺繍枠19に保持されている下布CのX,Y方向の移動量を示すデータを主体として構成される。
【0040】
さて、本実施形態では、詳しくは後述するように、前記ミシン1は、ポケット縫いの縫製作業を実行させるのに必要な縫目データを作成する機能も備えている。図2に示すように、前記ミシン1には、縫目データを作成するために、撮影手段としてのカメラ26が設けられる。このカメラ26は、例えばCMOS型のイメージセンサからなり、前記ミシン頭部5内に下向きに設けられ、刺繍枠19に保持されている下布Cに仮止めされたポケット布Pを撮影する。
【0041】
図3は、上記ミシン1の電気的構成を概略的に示している。ここで、ミシン1の全体を制御する制御装置25は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU27、ROM28、RAM29、EEPROM30、入力インターフェイス31、出力インターフェイス32をバス33により相互に接続して構成されている。前記ROM26には、縫製動作を制御するための制御プログラムや後述する縫目データ作成プログラムが記憶されていると共に、縫製動作に必要な各種のデータ等が記憶されている。
【0042】
前記入力インターフェイス31には、前記主軸角度検出器12、タッチパネル17、操作スイッチ15が接続されており、それらの操作信号等が制御装置25に入力される。また、前記カメラ26の撮影画像データは、画像処理部34によって二値化処理等の画像処理がなされて、入力インターフェイス31を介して制御装置25に入力される。前記出力インターフェイス32には、駆動回路35を介して前記液晶ディスプレイ21が接続されていると共に、駆動回路36、37、38を夫々介してミシンモータ11、針振りパルスモータ13、押え駆動モータ10が接続されている。制御装置25は、それらを制御して縫製動作を実行する。出力インターフェイス32には前記コネクタ24も接続されている。これにて、制御装置25は、ミシン1の各機構を制御して縫製動作を実行する。
【0043】
そして、後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、本実施形態では、制御装置25は、ソフトウエア的構成、即ち、縫目データ作成プログラムの実行により、前記カメラ26と共に、ポケット布Pを下布Cに縫付けるために必要な縫目データを自動で作成する縫目データ作成装置としての機能を実現する。このとき、前記カメラ26が撮影手段として機能し、制御装置25が外形算出手段、決定手段、縫目データ作成手段として機能する。さらに、制御装置25は、作成した縫目データに基づいて、自動でポケット縫い動作を実行する。尚、縫目データ作成プログラムは、外部記憶媒体、例えば、光ディスク、磁気ディスク、フラッシュメモリ、USBメモリ等に記憶されており、これらの記憶媒体から制御装置25に読込むようにしても良い。
【0044】
具体的には、ユーザは、予め、ポケット布Pを例えば待ち針にて仮止めした下布Cを、刺繍枠19に保持させ、刺繍枠19を刺繍機18のキャリッジに装着しておく。そして、縫目データ作成プログラムが実行されると、まず、制御装置25は、刺繍枠19を所定の撮影位置に移動させた後で、カメラ26により、下布Cに仮止めされたポケット布Pの外形を撮影する撮影ルーチンを実行する。
【0045】
次に、制御装置25は、カメラ26により撮影されたポケット布Pの画像データから、ポケット布Pの外形を算出する外形算出ルーチンを実行する。この外形算出の処理は、画像データから下布Cとポケット布Pとの境界であるポケット布Pのエッジ部分を求め、ポケット布Pの外形輪郭における特徴点の位置を抽出することによりなされる。特徴点とは、この場合、2本の直線の交点(頂点)、直線と曲線との接点、又は複数の曲線が連続しているときの接点又は変曲点を含む。
【0046】
ここで、図4(a)〜(c)は、ポケット布Pの形状の代表的な3種類について例示している。即ち、図4(a)のポケット布Pは、下辺部が下向きにやや尖った五角形形状をなしている。この場合、F1〜F5の5点が特徴点として求められる。図4(b)のポケット布Pは、四角形を基本として、下辺部の左右のコーナー部が曲線(円弧)をなす形状である。この場合、F1〜F6の6点が特徴点として求められる。図4(c)のポケット布Pは、四角形を基本として、下辺部の左右のコーナー部が直線で斜めに切欠かれた六角形形状をなしている。この場合、F1〜F6の6点が特徴点として求められる。尚、本実施形態では、これら3種類の特徴点F1〜F5(F6)の配置パターンが、予め、テンプレートデータとしてROM28に記憶されている。
【0047】
上記のような外形算出(特徴点抽出)のルーチンの次には、制御装置25は、算出されたポケット布Pの外形に基づいて、ポケット布Pを下布Cに縫付けるための縫目形成領域を決定する決定ルーチンを実行する。決定ルーチンは、ポケット布Pの外形のうち、縫目を形成する領域(縫製する領域)と、縫目を形成しない領域(縫製しない領域)を決定するものであり、ポケット口以外の領域を縫目形成領域とし、ポケット口を縫製しないように決定される。具体的には、上記抽出された特徴点を、ROM28に記憶されているテンプレートと比較して、ポケット布Pのポケット口を判別し、ポケット口以外の外形に沿った縫目形成領域が決定される。
【0048】
図4(a)の例では、ポケット布Pの外形のうち、特徴点F5と特徴点F1とを結ぶ直線部分が、縫目を形成しないポケット口と判断され、特徴点F1、F2、F3、F4、F5を順に結ぶ4本の直線部分が、縫目形成領域に決定される。図4(b)の例では、特徴点F6と特徴点F1とを結ぶ直線部分が、縫目を形成しないポケット口と判断され、特徴点F1、F2、F3、F4、F5、F6を順に結ぶ直線及び曲線部分が、縫目形成領域に決定される。同様に、図4(c)の例では、特徴点F6と特徴点F1とを結ぶ直線部分が、縫目を形成しないポケット口と判断され、特徴点F1、F2、F3、F4、F5、F6を順に結ぶ直線部分が、縫目形成領域に決定される。
【0049】
縫目形成領域が決定されると、次いで、制御装置25は、決定された縫目形成領域、つまりポケット布Pの外形に沿う領域を、下布Cに対して所定のパターンの縫目S(図5参照)で順に縫付けていくような縫目データを作成する縫目データ作成ルーチンを実行する。作成された縫目データは、EEPROM30等に記憶される。更に、本実施形態では、制御装置25は、前記ポケット布Pのうちポケット口の両端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段としての機能をも備えている。
【0050】
図5(a)〜(c)には、ポケット布Pのポケット口の端部に形成される補強縫目のパターンの例を3種類について示している。図5(a)は、ポケット布Pに直角三角形の補強縫目R1を形成した様子を示している。補強縫目R1は、縫目Sの端部から連続して、ポケット布Pの上辺部を直角に曲って内側に延び、その後斜め方向に戻るように延び、更に縫目Sに一部重なるように形成される。図5(b)は、ポケット布Pにコ字形の補強縫目R2を形成した様子を示している。補強縫目R2は、縫目Sの端部から連続して、ポケット布Pの上辺部を直角に曲って内側に延び、その後下方に延びるように形成される。図5(c)は、ポケット布Pにかん止めの補強縫目R3を形成した様子を示しており、補強縫目R3は、縫目Sの端部部分において千鳥縫いを重ねるように形成される。ここで、補強縫目のパターンは、図5(a)〜(c)に例示する以外のパターンであっても良いことは言うまでもない。
【0051】
本実施形態では、例えばユーザがタッチパネル17を操作することにより、補強縫目を形成するかどうかを選択することができる。これと共に、前記ROM28には上記した3種類の補強縫目R1〜R3のパターンが予め記憶されており、補強縫目を形成する場合に、ユーザがタッチパネル17を操作して所望のパターン、即ち補強縫目R1〜R3のいずれかを設定この場合選択できるようになっている。従って、ROM28が記憶手段として機能し、タッチパネル17が設定手段として機能する。
【0052】
次に、上記構成を備える本実施形態のミシン1の作用について、図6も参照して述べる。ミシン1において、下布Cに対するポケット布Pの縫付けの作業を行うための縫目データの作成の処理を行う、つまりポケット縫いの縫製作業を行うにあたっては、上記のように、ユーザは、予め、ポケット布Pを待ち針にて仮保持した下布Cを、刺繍枠19に保持させ、その刺繍枠19を刺繍機18のキャリッジにセットしておく。そして、縫目データ作成のプログラムを実行させる。
【0053】
図6のフローチャートは、上記した縫目データ作成プログラムにより制御装置25が実行する縫目データ作成処理の手順を示している。即ち、まず、まずステップS1では、刺繍枠19が所定の撮影位置にある状態で、刺繍枠19内の下布C及びポケット布Pがカメラ26により撮影される(撮影ルーチン)。カメラ26により撮影された画像データは、画像処理部34により二値化処理等の処理がなされて制御装置25に入力される。そして、ステップS2にて、パケット布Pの外形が算出され、ステップS3で、ポケット布Pの外形における特徴点が抽出される(外形算出ルーチン)。
【0054】
次のステップS4では、抽出したポケット布Pの外形形状つまり特徴点が、テンプレートと比較照合される。この場合、例えば図4(a)〜(c)に示すように、特徴点F1〜F5(F6)の3種類の配置パターンがテンプレートデータとして記憶されており、ステップS3にて抽出された特徴点の配置パターンが、いずれのパターンに一致するかが判断される。ステップS5では、いずれかのテンプレートに一致しているかどうかが判断され、一致した場合には(ステップS5にてYes)、ステップS6にて、縫目形成領域が決定される(決定ルーチン)。
【0055】
縫目形成領域の決定は、上記したように、図4(a)のパターンでは、特徴点F5と特徴点F1とを結ぶ直線部分のポケット口を除く、特徴点F1、F2、F3、F4、F5を順に結ぶ4本の直線部分が、縫目形成領域に決定される。図4(b)のパターンでは、特徴点F6と特徴点F1とを結ぶ直線部分のポケット口を除く、特徴点F1、F2、F3、F4、F5、F6を順に結ぶ直線及び曲線部分が、縫目形成領域に決定される。図4(c)のパターンでは、特徴点F6と特徴点F1とを結ぶ直線部分のポケット口を除く、特徴点F1、F2、F3、F4、F5、F6を順に結ぶ直線部分が、縫目形成領域に決定される。
【0056】
これに対し、抽出した特徴点即ちポケット布Pの外形形状がいずれのテンプレートとも一致しない場合には(ステップS5にてNo)、ステップS7にて、液晶ディスプレイ16に、縫目形成領域を自動では決定することができない旨のメッセージが表示される。この場合、ステップS8にて、ユーザが例えばタッチパネル17を操作して、縫目形成領域を指定する入力を行うことにより、縫目形成領域がユーザの手動操作により決定される(ステップS8にてYes)。この場合には、次のステップS9に進むことができる。
【0057】
縫目形成領域が決定されると、次のステップS9にて、縫目データの作成がなされる(縫目データ作成ルーチン)。この処理により、図5に示すように、ポケット布Pのポケット口部分を除く部分を、外形輪郭に沿った縫目Sで下布Cに縫付けるような縫目データが作成される。次のステップS10では、補強縫目を形成するかどうかの判断がなされる。この判断は、例えば液晶ディスプレイ16に補強縫目を形成するかどうかの選択画面を表示させ、ユーザにタッチパネル17の操作によって選択させることに基づいて行われる。補強縫目を形成しない場合には(ステップS10にてNo)、処理を終了する。
【0058】
補強縫目を形成する場合には(ステップS10にてYes)、ステップS11にて、ユーザに、補強縫目のパターンを設定させる処理が行われる。この場合、ユーザがタッチパネル17の操作によって、図5に示した3種類、即ち、直角三角形R1、コの字形R2、かん止めR3のいずれかの補強縫目のパターンの中から所望のものを選択する(ステップS11にてYes)。すると、次のステップS12にて、ポケット口の両端部である上記縫目Sの端部に、選択されたパターンの補強縫目を形成するための補強縫目データが、上記縫目データに追加され、処理が終了する。
【0059】
尚、この後、作成された縫目データに基づいてミシン1に縫製動作を実行させることにより、下布Cに対するポケット布Pの縫付け作業を行うことができる。この場合、縫目データに基づいて刺繍枠18がX、Y方向に移動しながら縫製が実行され、ポケット布Pを外形に沿って下布Cに縫付けることができる。このとき、ポケット口には縫目は形成されない。また、作成された縫目データを、例えばEEPROM30や外部記憶媒体に記憶させるようにしても良い。例えば、同じ形状のポケット布Pを他の下布(前身頃)に縫製したい場合や、以前製作した洋服と同じ洋服を再び製作したい場合には、EEPROM30や外部記憶媒体に記憶した縫目データを読込むことで縫製作業を簡単に実行させることができる。
【0060】
このように本実施形態によれば、縫目データに基づいて、上布としてのポケット布Pを下布Cに縫付ける作業を自動で行うことを可能としたミシン1にあって、抽出されたポケット布Pの外形に基づいて、縫目形成領域、つまりポケット布Pの外形のうち、下布Cに縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。つまり、ポケット布Pの外形に沿った縫目データが作成されるが、ポケット口には縫目データが作成されない。この縫目データに基づいて、縫製が実行されることで、ポケット口以外の領域に縫目Sが形成される。このように、ポケット口が縫付けられることなく、ポケット布Pの縫付けの作業を良好に行うことができる。
【0061】
また、特に本実施形態では、上記縫目データに補強縫目R1〜R3を形成するための補強縫目データを自動で追加して、ポケット口の端部に補強縫目R1〜R3を自動で形成することも可能となり、ポケット布の縫付けの作業をより一層良好に行うことができる。さらに、ユーザが所望する補強縫目R1〜R3のパターンを容易に設定してその補強縫目R1〜R3を自動で形成することが可能となるので、ユーザの好みに合わせた補強縫目を形成することができる。
【0062】
(2)第2の実施形態、その他の実施形態
図7は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、縫目データ作成装置41の外観構成を示している。第2の実施形態では、縫目データ作成装置41は、ミシンとは独立した縫目データを作成する装置として構成されている。つまり、上記第1の実施形態のミシン1のように、カメラ26を含む縫目データ作成装置としての機能を備えていないミシンであって、刺繍縫製が可能な一般的なミシンで用いる為の縫目データを作成する縫目データ作成装置41を示す。縫目データ作成装置41で作成された縫目データは、外部記憶媒体を介してミシンで読取るようにしても良いし、縫目データ作成装置41をミシンと有線又は無線で接続し、縫目データを受け渡すようにしても良い。
【0063】
本実施形態に係る縫目データ作成装置41は、コンピュータを含んで構成され、具体的には、例えば汎用のパーソナルコンピュータからなる作成装置本体42に、撮影手段としてのカメラ43を接続して構成されている。この場合、縫目データ作成装置41は、上布としてのポケット布Pを待ち針(図示せず)にて仮止めした下布Cを、刺繍枠19に保持させ、それをカメラ43で撮影し、撮影された画像に基づいて縫目データを作成する。
【0064】
詳しく図示はしないが、前記作成装置本体42は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェイス等からなり、外形算出手段、決定手段、縫目データ作成手段として機能する演算処理回路を備える。これと共に、前記演算処理回路に接続された、設定手段として機能するキーボード44やマウス、表示装置45、記憶手段として機能するハードディスク装置を備えている。また、例えばCD−ROMやDVD等に対するデータの読込み及び書込みを行うディスクドライブ装置、フラッシュメモリやUSBメモリを接続するコネクタ(ポート)も備えている。尚、縫目データ作成プログラムは、例えばハードディスク装置に予め記憶されていてもよいし、或いは、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ、USBメモリ等の外部記憶媒体に記録されており、それらの外部記憶媒体から読み出すようにしてもよい。
【0065】
そして、前記カメラ43は、例えば、USBカメラと称される、ドライバが不要で作成装置本体42のUSBコネクタに直接的に接続可能なカメラであって、CMOS型のカメラから構成される。この場合、図7に示すように、カメラ43は、図示しない支柱部材によって、刺繍枠19の上方に位置して下向きに設けられ、下布Cに仮止めされたポケット布Pを撮影する。カメラ43の撮影画像データは、作成装置本体42の演算処理回路に入力される。
【0066】
前記作成装置本体42の演算処理回路は、縫目データ作成プログラムの実行により、上記第1の実施形態と同様に、カメラ43によりポケット布Pの外形を撮影する撮影ルーチンを実行させる。次いで、カメラ43の撮影画像データから、ポケット布Pの外形を算出する外形算出ルーチンを実行し、ポケット布Pの外形に基づいて、ポケット布Pを下布Cに縫付けるための縫目形成領域を決定する。つまりポケット口以外の領域を縫目形成領域とする決定ルーチンを実行する。そして、ポケット布Pの外形に沿う決定された縫目形成領域を、下布Cに対して所定のパターンの縫目Sで順に縫付ける縫目データを作成する縫目データ作成ルーチンを実行する。更には、ユーザの指定により、補強縫目データの追加のルーチンも実行する。
【0067】
従って、この第2の実施形態の縫目データ作成装置41においても、上記第1の実施形態と同様に、縫目データに基づいて上布としてのポケット布Pを下布Cに縫付ける作業を自動で行うことを可能としたミシンのための縫目データを作成するものであって、ポケット布Pの外形のうち、下布Cに縫付ける領域についてのみ縫目データを作成することができる。この縫目データに基づいて前記ミシンで縫製が実行されることで、ポケット口が縫付けられることなく、ポケット布Pの縫付けの作業を良好に行うことができるという優れた効果を奏する。
また、前記縫目データ作成プログラムを外部記憶媒体に記憶させておき、外部記憶媒体に記憶させた縫目データ作成プログラムを、前記縫目データ作成装置41に実行させることで、上記と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0068】
尚、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、様々な拡張・変更が可能である。例えば、上記各実施形態では、補強縫目データを作成し、縫目データに追加する構成としたが、必ずしも補強縫目データ作成手段(ルーチン)を設けなくても良い。補強縫目データを作成する場合でも、補強縫目のパターンとしては、図5に示した3種類に限定されず、それら以外の各種パターンを採用しても良いし、1種類に固定されていても良い。
【0069】
また、縫目データ作成装置が縫目データ作成プログラムを読込む場合、フラッシュメモリやメモリカード等の他の記憶媒体から供給されるようにしても良く、あるいは、記憶媒体を介さずに、外部からネットワーク等を介して縫目データ作成装置に対して直接的にダウンロードする構成としても良い。更には、カメラを設ける位置としてもアーム部の外部等の変更が可能である等、ミシンや縫目データ作成装置の機械的構成等についても、種々の変更が可能である。その他、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0070】
1 ミシン
17 タッチパネル(設定手段)
19 刺繍枠
25 制御装置(外形算出手段、決定手段、縫目データ作成手段)
26 カメラ(撮影手段)
28 ROM(記憶手段)
41 縫目データ作成装置
42 作成装置本体(外形算出手段、決定手段、縫目データ作成手段)
43 カメラ(撮影手段)
C 下布
P ポケット布(上布)
S 縫目
R1〜R3 補強縫目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシンであって、
被縫製物としての下布に縫付けられる被縫製物としての上布の外形を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像データから前記上布の外形を算出する外形算出手段と、
前記外形算出手段により算出された前記上布の外形に基づいて、該上布を前記下布に縫付けるための縫目形成領域を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された縫目形成領域に対する縫目データを作成する縫目データ作成手段と
を具備することを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記上布はポケット布であり、
前記決定手段は、前記ポケット布の外形のうち、ポケット口以外の領域を縫目形成領域として決定し、
前記縫目データ作成手段は、前記決定手段が決定した縫目形成領域における前記ポケット布の外形に沿った縫目データを作成することを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記縫目データ作成手段は、前記ポケット口の端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段を含んでいることを特徴とする請求項2記載のミシン。
【請求項4】
前記補強縫目データは、前記ミシンが有する記憶手段に複数種類のパターンが予め記憶されており、
前記補強縫目データ作成手段は、前記記憶手段に記憶されている複数種類の補強縫目のパターンの中からユーザが所望するパターンを設定する設定手段を含んでいることを特徴とする請求項3記載のミシン。
【請求項5】
縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシンのための縫目データを作成する縫目データ作成装置であって、
被縫製物としての下布に縫付けられる被縫製物としての上布の外形を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像データから前記上布の外形を算出する外形算出手段と、
前記外形算出手段により算出された前記上布の外形に基づいて、該上布を前記下布に縫付けるための縫目形成領域を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された縫目形成領域に対する縫目データを作成する縫目データ作成手段と
を具備することを特徴とする縫目データ作成装置。
【請求項6】
前記上布はポケット布であり、
前記決定手段は、前記ポケット布の外形のうち、ポケット口以外の領域を縫目形成領域として決定し、
前記縫目データ作成手段は、前記決定手段が決定した縫目形成領域における前記ポケット布の外形に沿った縫目データを作成することを特徴とする請求項5記載の縫目データ作成装置。
【請求項7】
前記縫目データ作成手段は、前記ポケット口の端部に補強縫目を形成するための補強縫目データを作成する補強縫目データ作成手段を含んでいることを特徴とする請求項6記載の縫目データ作成装置。
【請求項8】
前記補強縫目データは、前記縫目データ作成装置が有する記憶手段に複数種類にパターンが予め記憶されており、
前記補強縫目データ作成手段は、前記記憶手段に記憶されている複数種類の補強縫目のパターンの中からユーザが所望するパターンを設定する設定手段を含んでいることを特徴とする請求項7記載の縫目データ作成装置。
【請求項9】
縫目データに基づいて被縫製物に縫目を形成するミシンのための縫目データを、コンピュータによって作成する処理を実行させるための縫目データ作成プログラムであって、
前記縫目データ作成プログラムは、前記コンピュータに、
撮影手段により、被縫製物としての下布に縫付けられる被縫製物としての上布の外形を撮影させる撮影ルーチンと、
前記撮影ルーチンにおいて撮影された画像データから前記上布の外形を算出する外形算出ルーチンと、
前記外形算出ルーチンにおいて算出された前記上布の外形に基づいて、該上布を前記下布に縫付けるための縫目形成領域を決定する決定ルーチンと、
前記決定ルーチンにおいて決定された縫目形成領域に対する縫目データを作成する縫目データ作成ルーチンと
を実行させることを特徴とする縫目データ作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179229(P2012−179229A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43953(P2011−43953)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】