説明

ミシン

【課題】騒音及び摩耗が少なく、且つ設計及び製造が簡単な運動変換装置を提供し、ミシンの駆動機構に組み込む。
【解決手段】本発明のミシン9は、駆動機構に、次に示す運動変換機構が組み込まれている。すなわち、該運動連動機構は、回転軸47とともに回転する回転板41と、該回転板41が回転した際に揺動する揺動リンク51とを備え、該回転板41の一面及び他面には、それぞれカムフォロア53、55の中心軌道pが回転板41に対し反転対称で同一である外周カム面43及び内周カム面45が形成されている。また、揺動リンク51は、外周カム面43を転動するコロ状カムフォロア53を回転可能に取着した外周カムレバー52と、内周カム面45を転動するコロ状カムフォロア55を回転可能に取着した内周カムレバー54とを含み構成され、両レバー52、54は、両コロ状カムフォロア53、55の軸芯cが一致するように連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動から直線往復運動を取り出すための運動変換機構が、駆動機構に組み込まれたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ミシンは、針棒、布押え棒、天秤、又は下糸用シャトル等の往復作用部を、各種駆動機構で駆動している。そして、それら各種駆動機構の中には、図7(a)に示す従来例1のような運動変換機構185を備えたものがある(特許文献1)。この運動変換機構185は、回転駆動されるカム186と、該カム186に当接するカムフォロア188を備えたレバー187とを含み構成されている。そして、レバー187には、該レバー187がカム186の動きに追従できるように、カムフォロア188をカム面186aに押圧するスプリング189が取着されている。
【0003】
ところが、このようにスプリング189の押圧力によって、カムフォロア188をカム面186aに押圧した場合、該押圧力によって、該カム186に余計な抵抗が加わってしまう。
【0004】
そのため、各種の運動変換機構の中には、スプリング等による押圧なしに該レバー等をカムの動きに追従させる確動カム等を備えたものもあり、これら各種確動カムを備えた運動変換機構の中には、図7(b)に示す従来例2の運動変換機構190や、図8に示す従来例3の運動変換機構194等がある。
【0005】
従来例2の運動変換機構190は、側面に溝192が凹設された板溝カム191を備え、その溝192の中を、カムフォロア193が、該溝192の両側壁に形成された両カム面192a、192bのうちのいずれか一方に交代で沿って転がりスライドする仕組みとなっている。
【0006】
一方、従来例3の運動変換機構194は、断面形状の異なる2つのカム196、197が軸方向に並べて相対移動不能に固定された構造の共役カム195を備え、該共益カム195における一方のカム196のカム面196aには、揺動リンク198に取着された2つのカムフォロア199のうちの一方199aが当接し、他方のカム197のカム面197aには、該カムフォロア199の他方199bが当接している。そして、これら2つのカムフォロア199a、199bが、それぞれ交代で該共益カム195に押圧されることにより、揺動リンク198が該共益カム195の動きに追従する仕組みとなっている。
【特許文献1】特許2752482号公報
【特許文献2】特開平9−192371号公報
【特許文献3】特開2004−100735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来例2の運動変換機構190においては、両カム面192a、192bにカムフォロア193が当接すると該カムフォロア193は回転できなくなるため、カム面192a、192bとカムフォロア193との間に、クリアランスgを設けなければならず、ガタや騒音が発生する。また、該カムフォロア193が転がるカム面192a、192bが一方から他方に変わる際に、カムフォロア193の回転方向が変わり、そこで滑り対偶となってしまう。そのため、該回転方向が変わる部分で局所的に摩耗が進行してしまう。
【0008】
また、従来例3の共役カム195においては、上記従来例2での摩耗やガタ等の問題点は改善されるが、断面形状の異なった2つのカム196、197を使用するため、及びカムフォロア199a、199b間のピッチを精度よく調整しなければならないため、該共益カム195、揺動リンク198共に設計、製造、保守性が高度で難しくなってしまう。
【0009】
そこで、カムフォロアがカム面へ余計な押圧力を与えることがなく、且つ騒音及び摩耗が少なく、且つ設計及び製造が簡単な運動変換機構を提供し、ミシンの駆動機構に組み込むことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のミシンは、回転軸とともに回転する回転板の一面側及び他面側にそれぞれカムフォロアの中心軌道が前記回転板に対し反転対称で同一である外周カム面及び内周カム面を形成し、前記外周カム面を転動するコロ状カムフォロアを回転可能に取着したレバーと、前記内周カム面を転動するコロ状カムフォロアを回転可能に取着したレバーとを、両コロ状カムフォロアの軸芯が一致するように連結した揺動リンクを設け、前記揺動リンクの揺動から往復運動を取り出すように構成した運動変換機構を、ミシンの往復作用部を駆動する駆動機構に組み込んでなるものである。但し、ここで、外周カム面とは、外周面からなるカム面のことをいい、内周カム面とは、内周面からなるカム面のことをいう。
【0011】
前記ミシンの往復作用部は、特に限定されないが、針棒、布押え棒、天秤、下糸用シャトル等を例示する。また、前記往復運動は、特に限定されないが、揺動運動、直線往復運動等を例示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運動変換機構に従来例1のようなスプリング等が存在しないため、カム面に余計な押圧力が加わらない。
【0013】
また、外周カム面を転動するコロ状カムフォロアと、内周カム面を転動するコロ状カムフォロアとが別なため、両カム面に各カムフォロアを同時に当接させることができ、また、各カムフォロアの回転方向を一定にすることができる。そのため、従来例2に比べ、ガタや騒音を少なくでき、また、摩耗を減らすことができる。
【0014】
また、外周カム面と内周カム面とは反転対称であるため、両カム面の設計は加工データを反転させるだけでよく、カム面の設計及び製造が容易である。また、両コロ状カムフォロアの軸芯は一致するため、従来例3の共役カムのように両カムフォロア間のピッチを精度よく調節する必要がなく、揺動リンクの設計及び製造も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のミシン9は、往復作用部22を駆動する駆動機構29に、次に示す運動変換機構40が組み込まれている。すなわち、該運動変換機構40は、回転軸47とともに回転する回転板41と、該回転板41が回転した際に揺動する揺動リンク51と、該揺動から往復運動を取り出す往復リンク71とを備えている。そして、該回転板41の一面及び他面には、それぞれカムフォロア53、55の中心軌道pが回転板41に対し反転対称で同一である外周カム面43及び内周カム面45が形成されている。また、揺動リンク51は、外周カム面43を転動するコロ状カムフォロア53を回転可能に取着した外周カムレバー52と、内周カム面45を転動するコロ状カムフォロア55を回転可能に取着した内周カムレバー54とを含み構成され、両レバー52、54は、両コロ状カムフォロア53、55の軸芯cが一致するように連結されている。
【実施例1】
【0016】
本実施例1の図1〜図5に示す多頭ミシン9は、下糸を供給するベッド20と、上糸を供給する上糸供給部(図示略)と、被縫製物を上糸と下糸とで縫いつけるミシンヘッド10とを含み構成されている。そして、これらミシンヘッド10とベット20と上糸供給部(図示略)とは、多頭ミシン9のミシンフレーム(図示略)に取着されている。
【0017】
ミシンヘッド10は、複数台が一列に並んで併設されており、各ミシンヘッド10には、縫製を行うための針棒11と、被縫製物(図示略)を押さえつけるための布押え棒13とが取着されている。針棒11は、針棒駆動機構(図示略)によって昇降自在になっており、その下端には刺繍を行うための刺繍針12が取着されている。また、布押え棒13は、その下端に布押え足14が取着されている。
【0018】
ベッド20は、ミシンヘッド10の下方に設けられており、刺繍針12が降下し貫通する針板21と、下糸の供給源となる複数個の下糸用シャトル22と、各下糸用シャトル22の駆動方向を案内する複数個のシャトルガイド23と、全ての下糸用シャトル22を一斉に駆動するシャトル駆動機構29とを含み構成されている。
【0019】
シャトル駆動機構29は、下糸用シャトル22に直線往復運動をさせるための機構であって、動力源となる駆動用モータ30と、該駆動用モータ30の回転運動を直線往復運動に変換し該下糸用シャトル22に伝える運動変換機構40とを含み構成されている。
【0020】
駆動用モータ30は、運動変換機構40の回転板41を回転駆動する動力源であって、回転駆動される駆動シャフト31を備え、該駆動シャフト31の先端には、回転板41に動力を伝えるための駆動ギア38が取着されている。
【0021】
運動変換機構40は、駆動用モータ30により供給される回転運動を揺動運動に変換した後、該揺動運動を直線往復運動に変換する機構であって、駆動シャフト31から動力が伝えられ回転駆動する回転板41と、該回転板41の回転運動が伝えられ揺動する揺動リンク51と、該揺動リンク51の揺動運動をミシンヘッド10の併設方向へ伝える水平シャフト60と、水平シャフト60の揺動運動を次の往復リンク71へ伝える伝達リンク61と、該伝えられた揺動運動から直線往復運動を取り出す往復リンク71とを含み構成されている。
【0022】
回転板41は、その回転軸47とともに駆動用モータ30によって回転駆動される板であって、回転軸47には、駆動ギア38と噛み合う伝達ギア48が、相対移動不能に取着されている。そして、該回転板41の一面側及び他面側には、揺動リンク51の一方のコロ状カムフォロア53が外周側から当接する外周カム面43を備えた外周カム部42と、該揺動リンク51の他方のコロ状カムフォロア55が内周側から当接する内周カム面45を備えた内周カム部44とがそれぞれ突出形成されている。そして、これら外周カム面43と内周カム面45とは、両コロ状カムフォロア53、55の中心軌道pが、回転板41に対し反転対称で同一となる形状をしている。また、該回転板41は、回転軸47に相対移動不能に取着されるための取着部46を備え、該取着部46は外周カム部42から更に突出する形で形成されている。
【0023】
揺動リンク51は、該回転板41の回転運動を揺動運動に変換した後、該揺動運動を水平シャフト60に伝えるリンクであって、ミシンフレーム(図示略)に回動可能に取着された回動軸57と、一端が該回動軸57に相対移動不能に取着され他端に外周カム面43を転動するコロ状カムフォロア53が回転可能に取着された外周カムレバー52と、一端が回動軸57に相対移動不能に取着され他端に内周カム面45を転動するコロ状カムフォロア55が回転可能に取着された内周カムレバー54と、一端が回動軸57に相対移動不能に取着され他端が水平シャフト60に回動可能に取着された揺動レバー56とからなる。そして、外周カムレバー52と内周カムレバー54とは、これらの両コロ状カムフォロア53、55の軸芯cが一致するように合わせて、回動軸57に固定されている。詳しくは、両レバー52、54は、それぞれの一端に備える止着部52a、54aが回動軸57に止着されることにより該回動軸57に固定されており、両レバー52、54の該回動軸57からの突出長は該止着部52a、54aによる止着位置をシフトさせることによって調整可能となっている。なお、この揺動リンク51は、上記のように全ての構成要素が回動軸57に相対移動不能に取着されているため、外力が加わった際には全体が一体的に回動軸57を中心に回動することとなる。
【0024】
水平シャフト60は、揺動リンク51の揺動運動をミシンヘッド10の併設方向へ伝えるためのシャフトであって、揺動リンク51が一本接続されている他、伝達リンク61が複数本、接続されている。
【0025】
伝達リンク61は、水平シャフト60の揺動運動を往復リンク71に伝えるリンクであって、ミシンフレーム(図示略)に回動可能に取着された回動軸67と、該回動軸67に一端が相対移動不能に取着され他端が水平シャフト60に回動可能に取着された第一伝達レバー62と、該回動軸67に一端が相対移動不能に取着され他端が往復リンク71の変換レバー72に回動可能に取着された第二伝達レバー63とからなる。なお、この伝達リンク61は、上記のように全ての構成要素が回動軸67に相対移動不能に軸着されているため、外力が加わった際には全体が一体的に回動軸67を中心に回動することとなる。
【0026】
往復リンク71は、伝達リンク61によって伝えられた揺動運動から直線往復運動を取り出し下糸用シャトル22に直線往復運動をさせるためのリンクであって、一端に第二伝達レバー63の端が回動可能に取着された変換レバー72と、該変換レバー72の他端が回動可能に取着されたスライド板73と、該スライド板73のスライド方向を案内するLMガイド75とからなる。スライド板73は、ミシンヘッド10の併設方向へ延び、上面には、複数個の下糸用シャトル22を一斉に駆動するためのシャトル駆動ピン74が、各下糸用シャトル22につき2本ずつ取着されている。詳しくは、該シャトル駆動ピン74は、各下糸用シャトル22の駆動方向の両側に1本ずつ取着されている。
【0027】
以上に示した多頭ミシン9が、図1及び図2の矢印に示すように稼動し、被縫製物(図示略)を縫製する際の様子を以下に説明する。
(1)まず、駆動用モータ30が稼動し、その回転運動が駆動シャフト31→駆動ギア38→伝達ギア48→回転軸47の順に伝わり回転板41が回転駆動される。
(2)次に、この回転駆動によって、外周カムレバー52のコロ状カムフォロア53が外周カム面43に、及び内周カムレバー54のコロ状カムフォロア55が内周カム面45に順に交代で押圧され、揺動リンク51が揺動する。
(3)次に、この揺動リンク51の揺動が水平シャフト60に伝わり、水平シャフト60が揺動する。
(4)次に、この水平シャフト60の揺動が伝達リンク61に伝わり、伝達リンク61が揺動する。
(5)次に、この伝達リンク61の揺動運動が往復リンク71に伝わり、ここで、該揺動運動はLMガイド75が案内する方向への直線往復運動に変換され、スライド板73が該直線往復運動をする。そして、このとき、該スライド板73に取着された2本のシャトル駆動ピン74が、下糸用シャトル22を両側から順に交代で押圧することにより、該下糸用シャトル22が直線往復運動をする。このとき、ミシンヘッド10側でも、針棒11が下糸用シャトル22と周期を同じくして直線往復運動をし、刺繍針12の先端付近に形成される上糸のループを該下糸用シャトル22が潜り抜けることにより、被縫製物(図示略)が上糸と下糸とで縫製される。
【0028】
本実施例1によれば、外周カム面43を転動するコロ状カムフォロア53と、内周カム面45を転動するコロ状カムフォロア55とが存在するため、該回転板41が回転した際には、両カムフォロア53、55のうちの少なくとも一方は外周カム面43又は内周カム面45に押圧される。そのため、従来例1のようなスプリング189等がなくとも、揺動リンク51を回転板41の動きに追従させることができる。
【0029】
また、外周カム面43を転動するコロ状カムフォロア53と、内周カム面45を転動するコロ状カムフォロア55とがそれぞれ別々なため、両カム面43、45に各カムフォロア53、55を同時に当接させることができ、また、各カムフォロア53、55の回転方向を一定にすることができる。そのため、従来例2に比べガタや騒音を少なくでき、また、摩耗を減らすことができる。そして、更には、高速化の実現も期待される。
【0030】
また、両カム面43、45と各カムフォロア53、55との間に与圧を与え、上記のように、両カム面43、45に各カムフォロア53、55を同時に当接させておく際の方法においても、従来からの共役カムの場合のように、カムと揺動リンクとの軸間距離を詰めるのではなく、外周カムレバー52又は内周カムレバー54のうちの一方の固定を緩めてもう一方のレバーと張り合う様に固定し直すだけでよいため容易である。
【0031】
また、外周カム面43と内周カム面45とは反転対称であるため、両カム面43、45の設計は加工データを反転させるだけでよく、カム面の設計及び製造が容易である。また、両コロ状カムフォロア53、55の軸芯cは一致するため、従来例3の共役カム195のように両カムフォロア間のピッチを精度よく調節する必要がなく、揺動リンク51の設計及び製造も容易である。また、更に、外周カムレバー52と内周カムレバー54とは共通の構造でよいため、この点においても設計及び製造が容易である。
【実施例2】
【0032】
本実施例の図6に示すミシン80は、縫製を行うための針棒81と、上糸を撓ますための天秤82と、該針棒81と天秤82とを同時に駆動させる駆動機構83とを含み構成されている。そして、該駆動機構83は、動力源となる駆動用モータ(図示略)と、該駆動用モータの回転運動を揺動運動又は直線往復運動に変換する運動変換機構84とを含み構成されている。この運動変換機構84は、針棒81を駆動するための針棒用回転板85と、該針棒用回転板85に接続された針棒用揺動リンク90と、該針棒用揺動リンク90と針棒81との間に設けられた針棒用往復リンク95と、天秤82を駆動するための天秤用回転板(図示略)と、該天秤用回転板に接続された天秤用揺動リンク100とからなる。そして、針棒用回転板85と天秤用回転板(図示略)とは、同一の回転軸88に相対移動不能に取着されており、両者は該回転軸88とともに回転駆動される。
【0033】
針棒用回転板85は、回転軸88を介し伝えられる駆動用モータの回転運動を針棒用揺動リンク90に伝える部材であって、実施例1の回転板41と略同様に、外周カム面86、及び内周カム面87を備えている。
【0034】
針棒用揺動リンク90は、該針棒用回転板85の回転運動を揺動運動に変換した後、該揺動運動を針棒用往復リンク95に伝えるリンクであって、実施例1の揺動リンク51と略同様に、回動軸94、外周カムレバー91、内周カムレバー92、及び揺動レバー93を含み構成されている。そして、外周カムレバー91及び内周カムレバー92の先端には、コロ状カムフォロア91a及び92aがそれぞれ取着されている。但し、揺動レバー93の先端には、水平シャフトではなく、針棒用往復リンク95が回動可能に取着されている点で実施例1の揺動リンク51と相違している。なお、図6においては、内周カムレバー92及びそのコロ状カムフォロア92aは、外周カムレバー91及びそのコロ状カムフォロア91aに重なっている。
【0035】
針棒用往復リンク95は、針棒用揺動リンク90の揺動運動を直線往復運動に変換した後、該直線往復運動を針棒81に伝え該針棒81を上下へ駆動する機構であって、一端に揺動レバー93の端が回動可能に取着された変換レバー96と、該変換レバー96の他端が回動可能に取着されたスライド部材97と、該スライド部材97のスライド方向を案内するスライド軸98とからなる。
【0036】
天秤用回転板(図示略)は、回転軸88を介し伝えられる駆動用モータの回転運動を天秤用揺動リンク100に伝える部材であって、実施例1の回転板41と略同様に、外周カム面及び内周カム面を備えている。よって、該天秤用回転板は、その構成及び機能が針棒用回転板85と略同様であるが、そのカムプロフィールが針棒用回転板85と相違している。なお、図6においては、該天秤用回転板は、針棒用回転板85の陰に隠れている。
【0037】
天秤用揺動リンク100は、該天秤揺回転板の回転運動を揺動運動に変換した後、該揺動運動を天秤82に伝え該天秤82を揺動させるリンクであって、実施例1の揺動リンク51と略同様に、回動軸104、外周カムレバー101、内周カムレバー102、及び揺動レバー103を含み構成されている。そして、外周カムレバー101及び内周カムレバー102の先端には、コロ状カムフォロアがそれぞれ取着されている。但し、揺動レバー103の端には、水平シャフト60ではなく、天秤82が回動可能に取着されている点で実施例1の揺動リンク51と相違している。なお、図6においては、内周カムレバー102は、外周カムレバー101に重なっている。
【0038】
本実施例2によれば、実施例1と同様の効果を、針棒及び天秤の駆動機構にも及ぼすことができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもでき、例えば、同様の駆動機構を、下糸用シャトル、針棒、天秤、布押え棒、ボーラー等を駆動する各種駆動機構に採用することもできる。
【0040】
また、回転軸とともに回転する回転板の一面及び他面にそれぞれカムフォロアの中心軌道が前記回転板に対し反転対称で同一である外周カム面及び内周カム面を形成し、前記外周カム面を転動するコロ状カムフォロアを回転可能に取着したレバーと、前記内周カム面を転動するコロ状カムフォロアを回転可能に取着したレバーとを、両コロ状カムフォロアの軸芯が一致するように連結した揺動リンクを設け、前記揺動リンクの揺動から往復運動を取り出すように構成した運動変換機構に係る発明は、汎用でもあり、ミシン以外の各種装置(例えば、各種織機、各種工作機等)の往復作動部を駆動する各種駆動機構にも組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1のミシンのシャトル駆動機構を示す上面図である。
【図2】同実施例のシャトル駆動機構が駆動された際の様子を示す上面図である。
【図3】同実施例のミシンを示す部分断面図である。
【図4】同実施例の回転板及び揺動リンクを示す斜視図である。
【図5】同実施例の回転板及び揺動リンクを示す断面図である。
【図6】実施例2のミシンを示す断面図である。
【図7】(a)は従来例1の運動変換機構を示す、(b)は従来例2の運動変換機構を示す正面図である。
【図8】従来例3の運動変換機構を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
9 ミシン
22 往復作用部としての下糸用シャトル
29 駆動機構(シャトル駆動機構)
40 運動変換機構
41 回転板
43 外周カム面
45 内周カム面
51 揺動リンク
52 レバー(外周カムレバー)
53 コロ状カムフォロア
54 レバー(内周カムレバー)
55 コロ状カムフォロア
80 ミシン
81 往復作用部としての針棒
82 往復作用部としての天秤
83 駆動機構
84 運動変換機構
85 回転板(針棒用回転板)
86 外周カム面
87 内周カム面
91 レバー(外周カムレバー)
92 レバー(内周カムレバー)
101 レバー(外周カムレバー)
102 レバー(内周カムレバー)
c 軸芯
p カムフォロアの中心軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸とともに回転する回転板の一面側及び他面側にそれぞれカムフォロアの中心軌道が前記回転板に対し反転対称で同一である外周カム面及び内周カム面を形成し、前記外周カム面を転動するコロ状カムフォロアを回転可能に取着したレバーと、前記内周カム面を転動するコロ状カムフォロアを回転可能に取着したレバーとを、両コロ状カムフォロアの軸芯が一致するように連結した揺動リンクを設け、前記揺動リンクの揺動から往復運動を取り出すように構成した運動変換機構を、ミシンの往復作用部を駆動する駆動機構に組み込んでなるミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−75299(P2007−75299A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266054(P2005−266054)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000135690)株式会社バルダン (125)
【Fターム(参考)】