説明

ミスト・粉塵類の捕集装置

【課題】 ミストの捕集・回収と、ディーゼルエンジンから排出されるカーボン粉塵の除去に対応可能とし、低コストにて製造可能なミスト・粉塵類の捕集装置を提供すること。
【解決手段】 捕集部1から吸引される空気中のミスト・粉塵類を分離させる分離タンク10は、モータ装置22により駆動回転される主軸21をタンク本体11内の中心部上方に鉛直状に設け、円盤型回転ブラシ25と振り切り部材30とを該主軸に順に取付けて固定を施し、タンク本体内に設けた隔壁板17に入口側の円盤型回転ブラシ25を近接させるように配置し、タンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成されたサイクロン32を設けてなり、吸引される空気中のミスト・粉塵類を分離タンク10内で分離させ、その分離されたミスト・粉塵類を分離タンクの下部に貯留して回収させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品等の洗浄機において発生するミスト、金属加工機・研磨機において発生する水溶性オイルミスト、鉱物性軽質オイルミスト、ディーゼルエンジン発電機から排出される燃焼ガス中のカーボン粉塵等を分離・除去する捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミスト類の捕集・回収装置については、フィルター方式、デミスター方式、サイクロン方式、衝突板方式、電気集塵方式等の各種構造のものが知られている。具体的には、特開平11−179122号公報には、オイルミストで汚れた気体を吸引する吸気部と、その吸気部から吸引された気体からオイルミストを多孔体フィルタで捕捉する捕捉部と、その捕捉部によって捕捉されたオイルミストの凝集体を貯留するオイル貯留部と、オイルミストが除去された気体を排出する排気部を備えたオイルミスト捕集装置が開示されている。
【0003】
特開2000−296305号公報には、ミスト発生部の上方に配置されたフードの入り口に透過部材を設け、フードの吸引管に接続された吸引装置の作動によりミストを透過部材に付着させその液化物を吸引して回収するミスト回収装置が開示されている。
【0004】
特開平9−47617号公報には、ミストが衝突する側の表面に多孔質材料層を設けた捕集板を捕集室に設け、捕集室に導いたミスト含有空気を捕集板に衝突させてミストを捕集するミスト除去装置が開示されている。
【0005】
また、特許第28881684号公報には、高温の排気ガスを外気に排出する経路において、密閉したチャンバー内で排気ガスを循環する水に接触させ、その気化熱により排気ガスの温度が下がることにより排気ガス中のカーボン粉末等の固形粒子及び一酸化炭素等の有害成分を分解し水に吸着させる燃焼排気ガスの冷却及び浄化方法が開示されている。
【0006】
前記特許公報にも記載されているように、ミストには、ウォーターミスト、オイルミストなど様々な性状のものがあり、また、粗大なミスト(粒径:約20μm以上)や微細なミスト(粒径:約1〜0.01μm以下)がある。このため、ミストの種類に対応して上述したような捕集・回収方式が採用されている。何れにしても、発生したミスト類を効率的に処理しなければ、作業環境の快適化や作業者の健康面での安全、ミストを発生する加工機械・設備の正常な稼動、周囲の建物の汚染を防止すること等を図ることが困難であると言えよう。
【特許文献1】特開平11−179122号公報
【特許文献2】特開2000−296305号公報
【特許文献3】特開平11−19775号公報
【特許文献4】特開平9−47617号公報
【特許文献5】特許第28881684号公報
【特許文献6】実用新案登録第3093342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、様々な性状のミストの捕集・回収と、ディーゼルエンジンの排出ガス中のカーボン粉塵の除去に対応可能であって、低コストにて製造可能なミスト・粉塵類の捕集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、ミスト・粉塵類を捕集する捕集部と、その捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を分離させる分離タンクと、その分離タンクの排気側に連結された吸入手段とから構成されたミスト・粉塵類の捕集装置において、
その分離タンクについては、駆動手段により駆動回転される主軸をタンク本体内の中心部上方に鉛直状に設け、多数のブラシ片が固定部に放射状に突設された少なくとも一つの円盤型回転ブラシと下向き椀形状の振り切り部材とを該主軸に順に取付けて固定を施し、中心に開口部が形成された環状の隔壁板をタンク本体内に設けると共に当該隔壁板に入口側の円盤型回転ブラシを近接させるように配置し、そのタンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成されたサイクロンを設けてなり、前記サイクロンの排気側に連結された前記吸入手段の運転によって前記捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を前記分離タンク内で分離させ、その分離されたミスト・粉塵類を前記分離タンクの下部に貯留させるように構成したことを特徴とする。
【0009】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、ミスト・粉塵類を捕集する捕集部と、その捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を分離させる分離タンクと、その分離タンクの排気側に連結された吸入手段とから構成されたミスト・粉塵類の捕集装置において、
その分離タンクについては、駆動手段により駆動回転される主軸をタンク本体内の中心部上方に鉛直状に設け、多数のブラシ片が固定部に放射状に突設された少なくとも一つの円盤型回転ブラシと下向き椀形状の振り切り部材とを該主軸に順に取付けて固定を施し、中心に開口部が形成された環状の隔壁板をタンク本体内に設けると共に当該隔壁板に入口側の円盤型回転ブラシを近接させるように配置し、そのタンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成された外周部に沿うように螺旋形フィンが設けられたサイクロンを設け、さらに、そのサイクロンと前記円盤型回転ブラシとの間に螺旋形フィンを前記タンク本体の内周に沿うように設けてなり、前記サイクロンの排気側に連結された吸入手段の運転によって前記捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を前記分離タンク内で分離させ、その分離されたミスト・粉塵類を前記分離タンクの下部に貯留させるように構成したことを特徴とする。
【0010】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1に記載のミスト・粉塵類の捕集装置において、前記分離タンクが前記タンク本体の上方部分を横向きに配置してほぼ逆L字形に形成され、水平方向に設けられた前記主軸に前記円盤型回転ブラシと前記振り切り部材とを順に取付けて固定を施し、タンク本体の縦向き部分に前記サイクロンを設けたことを特徴とする。
【0011】
同様の目的を達成するために請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3の何れかに記載のミスト・粉塵類の捕集装置において、前記分離タンク内に注水装置のノズルを配置し、その注水装置を自動又は手動により作動させて該ノズルから噴出する冷却水又は洗浄液を前記円盤型回転ブラシに吹き付けるように構成したことを特徴とする。
【0012】
同様の目的を達成するために請求項5に記載した発明は、請求項1、請求項3又は請求項4の何れかに記載のミスト・粉塵類の捕集装置において、前記円盤型回転ブラシが前記主軸に所定間隔をおいて取付けられる場合には、それら円盤型回転ブラシと円盤型回転ブラシとの空間部に前記隔壁板が介入するように配設されていることを特徴とする。
【0013】
同様の目的を達成するために請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項5の何れかに記載のミスト・粉塵類の捕集装置において、前記タンク本体の底部に、前記サイクロンの吸込口に対向させて局部真空の発生を抑制する干渉板を設けたことを特徴とする。
【0014】
同様の目的を達成するために請求項7に記載した発明は、ディーゼルエンジンの排出ガス中のカーボン粉塵を除去するための粉塵類の捕集装置であって、
前記排出ガスの流入口を備えた分離タンクには、駆動手段により駆動回転される主軸をタンク本体内の中心部上方に鉛直状に設け、多数のブラシ片が固定部に放射状に突設された少なくとも一つの円盤型回転ブラシと下向き椀形状の振り切り部材とを該主軸に順に取付けて固定を施し、中心に開口部が形成された環状の隔壁板をタンク本体内に設けると共に当該隔壁板に入口側の円盤型回転ブラシを近接させるように配置し、ノズルから微細ミストを噴出させるミスト発生手段を該円盤型回転ブラシの入口側に設け、そのタンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成されたサイクロンを設けてなり、前記分離タンク内に流入する前記排出ガス中のカーボン粉塵を除去すると共に当該排出ガスを弱酸性化させ、その除去されたカーボン粉塵を前記分離タンクの下部に貯留させ、その弱酸性化された排出ガスを前記サイクロンの排気側から大気に放出させるように構成したことを特徴とする。
【0015】
同様の目的を達成するために請求項8に記載した発明は、請求項7に記載の粉塵類の捕集装置において、前記円盤型回転ブラシが前記主軸に所定間隔をおいて取付けられる場合には、それら円盤型回転ブラシと円盤型回転ブラシとの空間部に前記隔壁板が介入するように配設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
(請求項1の発明)
このミスト・粉塵類の捕集装置は、機械部品等の洗浄機において発生するウォーターミスト・洗浄液ミストの捕集・回収に対応した構造としており、円盤型回転ブラシの遠心力による叩き落し作用、振り切り部材の遠心力による振り切り作用、サイクロンによる空気流速の低下作用及び吸入手段による吸引作用との相乗作用により、ミスト類を効率的に分離・捕集することができ、低コストにて製造可能である。
【0017】
(請求項2の発明)
このミスト・粉塵類の捕集装置は、請求項1の発明に準ずるものであり、機械部品等の洗浄機において大量に発生するミスト類の捕集・回収に適する構造としており、螺旋形フィンにより生ずる空気流の回転作用によりミスト類をタンク本体の内面に付着しやすくするので、ミスト類の分離・捕集効率が向上する。
【0018】
(請求項3の発明)
このミスト・粉塵類の捕集装置は、分離タンクの上方部分を横向きに配置してほぼ逆L字形に形成することにより全体の高さを低く構成しているので、設置スペースが小さい場合に好適である。
【0019】
(請求項4の発明)
このミスト・粉塵類の捕集装置は、注水装置によって円盤型回転ブラシの入口側から冷却水又は洗浄液を吹き付ける構造としており、その冷却水又は洗浄液によって回転ブラシに付着するミスト・粉塵類が除去されると共に分離タンクに流入する空気の温度が低下するので、ミスト・粉塵類の捕集効率が向上する。
【0020】
(請求項5の発明)
このミスト・粉塵類の捕集装置は、捕集部から吸引された空気を複数段に設けた隔壁板によって円盤型回転ブラシの中心部に向けて誘導させることにより、ミスト・粉塵類の分離・捕集効率が向上する。
【0021】
(請求項6の発明)
このミスト・粉塵類の捕集装置は、タンク本体の底部に渦流による局部真空の発生を抑制するための干渉板を設けており、底部に溜まる分離されたミスト・粉塵類が局部真空により巻き込まれてサイクロンに流入する現象を可及的に防止することができる。
【0022】
(請求項7の発明)
この粉塵類の捕集装置は、吸入手段の変わりにディーゼルエンジンの排気圧力を利用する構造とし、分離タンクに流入する排出ガスに対してミスト発生手段から微細ミストを噴射させることによる排出ガスの温度冷却作用と、円盤型回転ブラシの遠心力による叩き落し作用、サイクロンによる空気流速の低下作用との相乗作用により、排出ガスに含まれるカーボン粉塵を効率的に除去することができると共に排出ガスの弱酸性化を図ることができる。
【0023】
(請求項8の発明)
この粉塵類の捕集装置は、分離タンクに流入する排出ガスを複数段に設けた隔壁板によって円盤型回転ブラシの中心部に向けて誘導させることにより、カーボン粉塵の分離・捕集効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。図1は第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aの概要図、図2は円盤型回転ブラシの平面図、図3はミスト・粉塵類の捕集装置Aを適用する洗浄機の説明図、図4は第2実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Bの概要図、図5はミスト・粉塵類の捕集装置Bを適用する金属加工機の説明図、図6は第3実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Cの概要図、図7は第4実施例の粉塵類の捕集装置Dの概要図、図8は粉塵類の捕集装置Dを適用するディーゼルエンジン式発電機の説明図である。
【0025】
(実施例1)
図1に示す第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aは、機械部品等の洗浄機・加工機において発生する水溶性オイルミスト、ウォーターミスト、洗浄液ミストの捕集・回収に対応する構造とされている。この捕集装置Aの概要構成は、ミスト類を捕集する捕集部1、分離タンク10及び吸入手段としてのターボファン33からなる。その捕集部1は、下方を開放したフード形状とされた捕集口2にホース3を一体状に設けられている。
【0026】
分離タンク10の円筒形状のタンク本体11は、支持脚12により縦向きに設けられ、内部を上方の導入室13と下方の分離室15とに区画されている。その導入室13と分離室15とは、中間胴16を介して連結されていて、セットボルト18を外すことにより両者を分離可能に設けている。その中間胴16の内部には、導入室13に吸い込まれる空気を中心部に向かって流入させるために、後記円盤型回転ブラシ25の外径寸法よりもやや小さい寸法の開口部17aが中心に形成された環状の隔壁板17を所定間隔を置いて三箇所に配設している。そのの胴部には吸込口14を設け、導入室13の上口に蓋19を取り付けている。その吸込口14には、ホース3が接続される。
なお、上記タンク本体11の導入室13、分離室15及び中間胴16については、半割り型構造とすることもできる。
【0027】
導入室13の中心部には、蓋19の下面に取り付けた軸受け部材20に主軸21を挿入して当該主軸21を鉛直状に支持するように設けている。その主軸21は、蓋19の上に設置した駆動手段としてのモータ装置22の出力軸を兼用する構造とされている。その主軸21の先端側21aには、2個の円盤型回転ブラシ25とスペーサー28を奥から順に挿入し、6個目の円盤型回転ブラシ25から後のネジ軸21bに座金29を介して下向き椀形状の振り切り部材30を嵌め、そのネジ軸21bに螺合したナット31を締付けることによりそれらの固定を施す。その振り切り部材30は、ミスト・粉塵類をタンク本体11の内面に付着させ易くするために設けられている。
【0028】
図2において、円盤型回転ブラシ25は、前記主軸21に装着するための軸穴25aを形成した固定部26の外周に多数のブラシ片27が放射状に突設されており、外径寸法:約250mm、厚さ寸法:約30mmに設けられている。そのブラシ片27については、線径:約0.3mm、長さ:約60mmの硬質スチール又はステンレスを用いる。
【0029】
分離室15の中心部には、下方に向かってラッパ形状に拡がるように形成されたサイクロン32を設けている。
【0030】
また、タンク本体11内の底部には、サイクロン32の吸込口32aの近くに発生する渦流による局部真空を抑制するために、その吸込口32aに対向させて円形の干渉板11cを設けている。その干渉板11cは、脚片11dにより底部から少し上方に配設されている。
【0031】
そのサイクロン32の排気口32bには、図1に示すように、ターボファン33の吸込管33aが連結されている。34はターボファン33の駆動モータである。35はターボファン33の排気管33bに取付けられたデミスター装置である。このデミスター装置35により最終的に除去されるミスト・粉塵類は、ドレンパイプ36から外部へ適時に排出することができるように設けられている。
【0032】
また、前記導入室13の内部上方には、注水装置38の放出パイプ39のノズル40を配置する。そして、その注水装置38を自動又は手動により作動させてノズル40から噴出する冷却水又は洗浄液を円盤型回転ブラシ25のブラシ片27に吹き付けることにより、回転ブラシ25にミスト・粉塵類を付着させて分離・除去を促進させると共に導入室13に流入する空気の温度を低下させるように設けられている。
【0033】
41は分離室15の下部に貯留するミスト類の分離液を外部に排出するための排出管、42はその排出管41に設けたドレンコックである。
以上により、第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aが構成される。
【0034】
つぎに、第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aを図3に示す洗浄機fに適用した場合の作動について説明する。
(1)洗浄機fのシャワー室において、洗浄液タンクg内の洗浄液がヒータを備えたポンプhにより吸い込まれてシャワーノズルiからワークwに噴射される。ついで、洗浄機fの乾燥室において、エアブロー手段のノズルjからワークwに圧縮空気を吹き付けることにより、ワークwの乾燥が施される。このときに、ワークwに付着した洗浄液がミストとなって周囲に飛散する。
(2)捕集装置Aの運転による負圧作用によって、(1)で発生したミストは、捕集部1から周囲の空気と一緒に分離タンク10の導入室13に吸い込まれる。
(3)分離タンク10では、モータ装置22により円盤型回転ブラシ25が毎分100〜1000回転の範囲内の回転数で回転作動している。導入室13に吸い込まれた空気は隔壁板17によって円盤型回転ブラシ25の中心部に向かって流入し、回転ブラシ25及び振り切り部材30の遠心力作用によってタンク本体11の内面に叩きつけられるようにしてミストが分離されて降下する。
(4)ついで、分離室15に流入した空気は、サイクロン32によって一旦流速を低下させて排気口32bから流出する。このサイクロン32の吸込口32a付近では渦流による局部真空が発生するが、干渉板11cによりそこの真空圧力は低下するため、分離室15の底部に溜まるミスト・粉塵類のサイクロン32への流入現象が可及的に防止される。
(5)吸入された空気から分離されたミストは分離室15の下部に溜まり、ドレンコック42を適時に開放して洗浄液タンクgに還流される。
(6)分離室15から流出する乾燥した空気は、ターボファン33からデミスター装置35を通って大気側へ排出される。
【0035】
(実施例2)
図4に示す第2実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Bは、機械部品等の洗浄機、切削加工機等において発生するウォーターミスト、水溶性オイルミスト、軟質オイルミスト、粉塵等の捕集・回収に対応する構造とされている。
この捕集装置Bは、第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aと基本的に同様の構造とされているので、同一構成部分については捕集装置Aの説明に用いた符号をそのまま流用して図面に記載し、当該捕集装置Bの特有な構成部分について説明をする。
【0036】
前記分離タンク10の中間胴体16の上口には、前記円盤型回転ブラシ25の外径寸法よりもやや小さい寸法の開口部17aが中心に形成された隔壁板17を設けている。
【0037】
主軸21の先端側21aには、10個の円盤型回転ブラシ25を順に挿入してから座金29を介して下向き椀形状の振り切り部材30を嵌め、そのネジ軸21bに螺合したナット31を締付けることによりそれらの固定を施している。
【0038】
45は前記サイクロン32の拡径された外周部に沿うように2箇所に対称的に設けられた螺旋形フィンである。このフィン45は、分離室15に流入する空気の回転作用によりミスト・粉塵類をタンク本体11の内面に付着させ易くするために設けられている。
【0039】
上記円盤型回転ブラシ25の中の最下部に位置する円盤型回転ブラシ25とサイクロン32との間には、タンク本体11の内側に沿うように螺旋形フィン46を設けている。このフィン46は、タンク本体11の内周長さの半分程度の長さに設けられている。
【0040】
タンク本体11の下部に設けられる排出管については、排出端から空気が分離タンク10内に逆流することを防止するために、図4に示すトラップ形の配管47とすることもできる。その配管47には、ドレンコック48を介して排出管49を接続する。
以上により、第2実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Bが構成される。
【0041】
第2実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Bは図5に示す金属加工機等に適用される。この捕集装置Bは、金属加工機mにおいて発生する水溶性オイルミストの捕集・回収のために設置され、その捕集口2は金属加工機mの加工部上方に配置される。
【0042】
金属加工機mでは、ワークwが切削工具nによって切削加工されるときに、フラッシングノズルoからオイル混合切削液がワークwに向けて噴霧される。これにより、オイル混合切削液が水溶性オイルミストとなって周囲に飛散する。その水溶性オイルミストは、この捕集装置Bによって捕集・回収されるが、捕集装置Bの作動については、上述した第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aの場合に準ずるので説明を省略する。
【0043】
(実施例3)
図6に示す第3実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Cは、機械部品等の洗浄機、切削加工機等において発生するウォーターミスト、水溶性オイルミスト、軟質オイルミストの捕集・回収、粉塵等の捕集・回収に対応する構造とされている。
この捕集装置Cは、第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aと基本的に同一構造とされているので、同一構成部分については捕集装置Aの説明に用いた符号をそのまま流用して図面に記載し、当該捕集装置Cの特有な構成部分について説明する。
【0044】
図6に示すように、前記分離タンク10は、前記タンク本体11の上方部分である導入室13と中間胴16を横向きに配置してほぼ逆L字形に形成されている。また、水平方向に設けられた前記主軸21には、第1実施例と同様に、円盤型回転ブラシ25と振り切り部材30とを順に取付けている。
【0045】
タンク本体11の縦向き部分11aには前記サイクロン32を設け、そのサイクロン32の上方に延びる直線形の排気口32bにターボファン33の吸込管33aが連結されている。
【0046】
タンク本体11の下部には、第2実施例と同様に、トラップ形の配管51にドレンコック52を介して排出管53を接続している。
以上により、第3実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Cが構成される。
【0047】
なお、この捕集装置Cの作動については、上述した第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aの場合に準ずるので説明を省略する。
【0048】
(実施例4)
図7に示す第4実施例の粉塵類の捕集装置Dは、ディーゼルエンジンから排出される燃焼ガスに含まれるカーボン粉塵の除去及び排出ガスの弱酸性化を図るものである。
この捕集装置Dは、ディーゼルエンジンの排気圧力を利用して吸入手段を用いない構造とすることを除いて第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aと基本的に同一構造とされている。このため、第1実施例と同一構成部分については捕集装置Aの説明に用いた符号をそのまま流用して図面に記載し、当該捕集装置Dの特有な構成部分について説明する。
【0049】
60はノズル61から微細ミストを噴出させるミスト発生手段である。このミスト発生手段60は、第1実施例における注水装置38に対応する装置であり、約300〜400kPaの圧力でノズル61から噴出する微細ミストを導入室13の中心部に向けて噴霧させることにより、導入室13に流入する排出ガスの温度を冷却させると共にカーボン粉塵を回転ブラシ25に付着させ易くしてカーボン粉塵を除去することができるように設けられている。
【0050】
前記サイクロン32の排気口32bには、排出ガスを大気に放出するための排気口65が接続されている。また、前記分離タンク10の吸込口14には、中間排気管66を介して図8に示すディーゼルエンジン式発電機sの排気管tが接続される。
以上により、第4実施例の粉塵類の捕集装置Dが構成される。
【0051】
(実験)
この粉塵類の捕集装置Dをディーゼルエンジン式発電機に設置してカーボン粉塵、排出ガスの酸性度(pH)の変化等について、下記の条件の下に測定を行なった。その結果を表1に示す。
ディーゼルエンジン・・・出力:85kW
排出ガス量:4.6m/min
負荷率:35%
ミスト発生手段・・・ 圧力:350kPa
水量:300cc/min
カーボン粉塵の測定器・・・デジタル粉塵計P−5L(柴田科学器械工業)
酸性度(pH)の測定・・・リトマス試験紙
【0052】
【表1】

【0053】
実験の結果、ディーゼルエンジン式発電機の排出ガスに含まれるカーボン粉塵については約75〜80%の除去を行なうことが可能であり、酸性度(pH)については約3.5pHを示すものが約5〜5.3pHに変化し弱酸性化することが確認された。
【0054】
以上に述べた通り、このミスト・粉塵類の捕集装置は、ウォーターミスト、洗浄液ミスト、水溶性オイルミスト等の様々な性状のミスト及び粉塵の捕集・回収に対応可能な構造とされており、円盤型回転ブラシの遠心力作用とサイクロン作用との相乗効果によりミストや粉塵類を効率的に分離・捕集することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Aの概要図
【図2】円盤型回転ブラシの平面図
【図3】ミスト・粉塵類の捕集装置Aを適用する洗浄機の説明図
【図4】第2実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Bの概要図
【図5】ミスト・粉塵類の捕集装置Bを適用する金属加工機の説明図
【図6】第3実施例のミスト・粉塵類の捕集装置Cの概要図
【図7】第4実施例の粉塵類の捕集装置Dの概要図
【図8】粉塵類の捕集装置Dを適用するディーゼルエンジン式発電機の説明図
【符号の説明】
【0056】
A・・・ミスト・粉塵類の捕集装置(第1実施例)
1・・・捕集部
10・・・分離タンク
11・・・タンク本体
11c・・・干渉板
17・・・隔壁板
21・・・主軸
22・・・モータ装置(駆動手段)
25・・・円盤型回転ブラシ
27・・・ブラシ片
30・・・振り切り部材
32・・・サイクロン
33・・・ターボファン(吸入手段)
38・・・注水装置
40・・・ノズル
B・・・ミスト・粉塵類の捕集装置(第2実施例)
45,46・・・螺旋形フィン
C・・・ミスト・粉塵類の捕集装置(第3実施例)
D・・・粉塵類の捕集装置(第4実施例)
60・・・ミスト発生手段
61・・・ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスト・粉塵類を捕集する捕集部と、その捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を分離させる分離タンクと、その分離タンクの排気側に連結された吸入手段とから構成されたミスト・粉塵類の捕集装置において、
その分離タンクについては、駆動手段により駆動回転される主軸をタンク本体内の中心部上方に鉛直状に設け、多数のブラシ片が固定部に放射状に突設された少なくとも一つの円盤型回転ブラシと下向き椀形状の振り切り部材とを該主軸に順に取付けて固定を施し、中心に開口部が形成された環状の隔壁板をタンク本体内に設けると共に当該隔壁板に入口側の円盤型回転ブラシを近接させるように配置し、そのタンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成されたサイクロンを設けてなり、
前記サイクロンの排気側に連結された前記吸入手段の運転によって前記捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を前記分離タンク内で分離させ、その分離されたミスト・粉塵類を前記分離タンクの下部に貯留させるように構成したことを特徴とするミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項2】
ミスト・粉塵類を捕集する捕集部と、その捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を分離させる分離タンクと、その分離タンクの排気側に連結された吸入手段とから構成されたミスト・粉塵類の捕集装置において、
その分離タンクについては、駆動手段により駆動回転される主軸をタンク本体内の中心部上方に鉛直状に設け、多数のブラシ片が固定部に放射状に突設された少なくとも一つの円盤型回転ブラシと下向き椀形状の振り切り部材とを該主軸に順に取付けて固定を施し、中心に開口部が形成された環状の隔壁板をタンク本体内に設けると共に当該隔壁板に入口側の円盤型回転ブラシを近接させるように配置し、そのタンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成された外周部に沿うように螺旋形フィンが設けられたサイクロンを設け、さらに、そのサイクロンと前記円盤型回転ブラシとの間に螺旋形フィンを前記タンク本体の内周に沿うように設けてなり、
前記サイクロンの排気側に連結された吸入手段の運転によって前記捕集部から吸引される空気中のミスト・粉塵類を前記分離タンク内で分離させ、その分離されたミスト・粉塵類を前記分離タンクの下部に貯留させるように構成したことを特徴とするミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項3】
前記分離タンクが前記タンク本体の上方部分を横向きに配置してほぼ逆L字形に形成され、水平方向に設けられた前記主軸に前記円盤型回転ブラシと前記振り切り部材とを順に取付けて固定を施し、タンク本体の縦向き部分に前記サイクロンを設けたことを特徴とする請求項1に記載のミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項4】
前記分離タンク内に注水装置のノズルを配置し、その注水装置を自動又は手動により作動させて該ノズルから噴出する冷却水又は洗浄液を前記円盤型回転ブラシに吹き付けるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項5】
前記円盤型回転ブラシが前記主軸に所定間隔をおいて取付けられる場合には、それら円盤型回転ブラシと円盤型回転ブラシとの空間部に前記隔壁板が介入するように配設されていることを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項4の何れかに記載のミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項6】
前記タンク本体の底部に、前記サイクロンの吸込口に対向させて局部真空の発生を抑制する干渉板を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のミスト・粉塵類の捕集装置。
【請求項7】
ディーゼルエンジンの排出ガス中のカーボン粉塵を除去するための粉塵類の捕集装置であって、
前記排出ガスの流入口を備えた分離タンクには、駆動手段により駆動回転される主軸をタンク本体内の中心部上方に鉛直状に設け、多数のブラシ片が固定部に放射状に突設された少なくとも一つの円盤型回転ブラシと下向き椀形状の振り切り部材とを該主軸に順に取付けて固定を施し、中心に開口部が形成された環状の隔壁板をタンク本体内に設けると共に当該隔壁板に入口側の円盤型回転ブラシを近接させるように配置し、ノズルから微細ミストを噴出させるミスト発生手段を該円盤型回転ブラシの入口側に設け、そのタンク本体内の下方に、底部に向かってラッパ形状に拡がるように形成されたサイクロンを設けてなり、
前記分離タンク内に流入する前記排出ガス中のカーボン粉塵を除去すると共に当該排出ガスを弱酸性化させ、その除去されたカーボン粉塵を前記分離タンクの下部に貯留させ、その弱酸性化された排出ガスを前記サイクロンの排気側から大気に放出させるように構成したことを特徴とする粉塵類の捕集装置。
【請求項8】
前記円盤型回転ブラシが前記主軸に所定間隔をおいて取付けられる場合には、それら円盤型回転ブラシと円盤型回転ブラシとの空間部に前記隔壁板が介入するように配設されていることを特徴とする請求項7に記載の粉塵類の捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75688(P2006−75688A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260608(P2004−260608)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000127123)株式会社アンレット (41)
【Fターム(参考)】