説明

メタボリックシンドロームの予防、改善または治療組成物

【課題】メタボリックシンドローム、脂質代謝異常(例えば脂肪肝、高脂血症)または肥満(例えば内臓脂肪蓄積、皮下脂肪蓄積)の予防、改善または治療作用を有する組成物を提供すること。
【解決手段】グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体内における脂肪の合成を抑制する働き、および脂肪の分解を促進する働き、さらには効果的に脂肪を燃焼する働きのある組成物であって、メタボリックシンドローム、脂質代謝異常(例えば脂肪肝、高脂血症)または肥満(例えば内臓脂肪蓄積、皮下脂肪蓄積)の予防、改善または治療作用を有する組成物およびそれらを含有してなる飲食品または医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満は増加の一途を辿っており、WHO、世界保健機関は肥満に関わる糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、脂肪肝などの生活習慣病のリスクの増大に対して世界各国に警告を発している。内臓脂肪の蓄積をベースに、糖代謝異常(耐糖能異常、糖尿病)、脂質代謝異常(高中性脂肪血症、高コレステロール血症または低HDLコレステロール血症などの高脂血症)、高血圧などの動脈硬化のリスクファクター(危険因子)が複数重なった状態をメタボリックシンドローム(代謝症候群)という。健康診断などで血糖値や血圧が「要注意」程度の軽度な異常でも重複すると心血管病になりやすく、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症、または高コレステロール血症の危険因子を全く持たないヒトに比べて、2つ持つヒトは心臓病のリスクが10倍に、3〜4つ持つヒトはリスクが31倍になると言われている。肥満・糖尿病・高血圧・高脂血症を全て発症すると心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率が高くなるので「死の四重奏」とも呼ばれている。最終的に心筋梗塞や脳梗塞など心血管病に至るのは、内臓脂肪の蓄積が根本的な原因と考えられており、内臓脂肪の蓄積を減少させることがメタボリックシンドローム、脂質代謝異常(例えば脂肪肝、高脂血症)、並びに心血管病の予防・改善のために重要である。肥満はエネルギーの出納バランスが崩れることによって起こるため、肥満の抑制には摂取エネルギーを減少させるだけではなく、基礎代謝や活動代謝の消費エネルギーを増加させることが重要である。摂取エネルギーを減少させるためには、脂肪や糖質をよりエネルギーの少ない代替品に代えるといった工夫がなされてはいるが、食品としての味や加工性の点で必ずしも十分な成果が得られていない。
【0003】
肥満を解消するには余分なカロリーを摂取しないで、運動エネルギー源として体脂肪をできるだけ多く消費すればよい。しかし、一般に肥満気味の人は正常の人に比べて脂肪の分解が遅く且つ少ない傾向にあり、同じ運動を行っても糖質の分解が先行して体脂肪はあまり消費されない。そこで、より効果的に脂肪を分解し、その脂肪を消費するような組成物およびそれを含む飲食品、医薬品の開発が望まれていた。
【0004】
肥満予防の方策はいろいろ提唱されているが、近年、我々が日常的に摂取する様々な食品中に脂質代謝の改善、肥満の予防あるいは改善作用をもつ成分が見出され、肥満予防に役立つのではないかと期待されている。本発明者らは、その様な作用をもつ食品成分の中で、アルギニン、カフェイン、イソフラボンおよびカルニチンの作用メカニズムが異なる素材の生理作用に着目した。アルギニンはグルカゴンや成長ホルモンの分泌促進作用を介して脂質代謝を促進し、肝臓の脂肪合成を抑制して肥満改善作用を示す。カフェインはアデノシンレセプターへのアンタゴニスト作用、血中カテコールアミンレベルの増加作用およびホスホジエステラーゼ活性の阻害作用を介して脂質代謝を促進し、肝臓の脂肪合成を抑制し、さらに、安静時代謝率やエネルギー消費量を増加することにより、体脂肪量や体重を減少させることが知られている。イソフラボンはエストロゲン作用を介して脂肪細胞の分化や脂質代謝を促進し、脂肪酸酸化酵素カルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ1型を活性化して抗肥満作用を示す。カルニチンはミトコンドリアへの脂肪酸の取り込みを促進し、脂肪酸代謝(β酸化)を促進することにより抗肥満作用を示す。
【0005】
上記のように、これらの各成分が単独で脂質代謝に作用があることは公知である。さらには、これら2成分を併用すると抗肥満作用を示すことが知られている。たとえば、アルギニンとカフェインの混合物は脂肪分解を促進して脂肪代謝改善作用を有することや(特許文献1)、大豆イソフラボンの1種であるゲニステインを含有する組成物にカルニチンを加えるとカルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ1型遺伝子の発現が相乗的に増加すること(特許文献2)が明らかにされている。
【0006】
しかし、これら4成分(すなわち、アルギニン、カフェイン、イソフラボン、カルニチン)を組み合わせた報告はない。
【特許文献1】特開平5−252905号公報
【特許文献2】特表2006−514674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肥満を予防・解消するため、摂取カロリーを制限する食事療法、運動療法、食欲抑制剤による薬物療法などが行われている。しかし、食事療法は過度な制限食であることが多く、煩雑なカロリー計算と強固な意志を必要とし、個人で長期間管理するには困難が伴う。また、運動療法は精神的にも肉体的にも苦痛を伴い、多忙な現代社会においては長期間継続するのは非常に困難である。運動エネルギー源として体脂肪をできるだけ多く消費することは有効であるが、肥満傾向にあるものは脂肪代謝が緩慢であり、運動によっても体脂肪を減少させることが難しい。したがって、肝臓中での脂肪合成を抑制し、脂肪細胞中に蓄積する脂肪の分解を促進し、また、脂肪を効果的に燃焼することにより、肥満の予防、改善または治療に寄与し得る組成物およびそれを含有する飲食品、医薬品の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的はメタボリックシンドローム、脂質代謝異常(例えば脂肪肝、高脂血症)または肥満(例えば内臓脂肪蓄積、皮下脂肪蓄積)の予防、改善または治療組成物およびそれらを含有する飲食品または医薬品などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、アルギニン・カフェイン・イソフラボン類・カルニチンの4成分を含有する組成物が糖尿病モデル動物において意外にも強い脂質代謝異常の改善作用、抗肥満作用を有することを見いだし、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は
(1)グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療組成物、
(2)グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなる脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物、
(3)脂質代謝異常が脂肪肝である前記(2)に記載の脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物、
(4)脂質代謝異常が高コレステロール血症である前記(2)に記載の脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物、
(5)脂質代謝異常が高中性脂肪血症である前記(2)に記載の脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物、
(6)グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなる肥満の予防、改善または治療組成物、
(7)肥満が内臓脂肪および/または皮下脂肪に起因するものである前記(6)記載の肥満の予防、改善または治療組成物、
(8)グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類が、アルギニン、アラニン、ロイシンまたはそれらの医薬もしくは食品として許容される塩である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物、
(9)キサンチン誘導体が、カフェイン、テオフィリンまたはテオブロミンである前記(1)〜(8)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物、
(10)イソフラボン類が、大豆イソフラボンである前記(1)〜(9)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物、
(11)大豆イソフラボンが、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニスチン、ダイジンまたはグリシチンである前記(10)に記載の予防、改善または治療組成物、
(12)カルニチン類が、L−カルニチン、N−アセチル−L−カルニチン、またはそれらの医薬もしくは食品として許容される塩である前記(1)〜(11)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物、
(13)カルニチン前駆体が、リジンまたはそれらの医薬もしくは食品として許容される塩、およびメチオニンである前記(1)〜(12)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物、
(14)アルギニン、カフェイン、イソフラボン類およびカルニチンを含有する前記(1)〜(7)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物、
(15)前記(1)〜(14)のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物を含有してなる飲食品または医薬品、および
(16)グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなる組成物を含有する飲食品であって、脂質代謝を改善する旨の表示、基礎代謝を促進する旨の表示、体重を減少させる旨の表示、内臓脂肪または皮下脂肪を減少させる旨の表示、ダイエット効果を有する旨の表示、脂肪肝および/または肝機能を改善する旨の表示、血中中性脂肪濃度を減少させる旨の表示、血中総コレステロール濃度を減少させる旨の表示、血中HDLコレステロール濃度を増加させる旨の表示、血中アディポネクチン濃度を増加させる旨の表示、アディポサイトカインの分泌を正常化する作用を有する旨の表示、肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、メタボリックシンドロームの予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、からなる群から選択される少なくとも1種の表示が付されたものである飲食品、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、脂肪肝、高脂血症(例えば、高中性脂肪血症、高コレステロール血症)などの脂質代謝異常や、内臓脂肪や皮下脂肪に起因する肥満を予防、改善、治療することができると共に、これらの症状を伴うメタボリックシンドロームを予防、改善または治療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の組成物は、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の組成物の第1の成分である“グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類”としては、例えば、アルギニン、アラニン、ロイシンなどが挙げられ、なかでもアルギニンが最も好ましい。これらのアミノ酸は、遊離のアミノ酸でもよいし、生理学的に許容される塩(すなわち、医薬品または飲食品として許容される塩)の形態でもよい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩などの金属塩、塩酸塩、炭酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。本発明の組成物は、上記したグルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類を1種または2種以上(例、2種または3種)含んでいてもよい。
【0014】
本発明の組成物の第2の成分である“キサンチン誘導体”としては、天然由来のキサンチン誘導体がより好ましく、具体的にはカフェイン、テオフィリン、テオブロミンなどが挙げられる。なかでもカフェインが最も好ましい。
【0015】
本発明の組成物の第3の成分である“イソフラボン類”としては、大豆イソフラボンなどが挙げられ、大豆イソフラボンとしては、ゲニステイン、ダイゼインまたはグリシテインの非配糖体であってもよく、ゲニスチン、ダイジンまたはグリシチンの配糖体であってもよいが、なかでもゲニステインが最も好ましい。また、本発明の組成物は、これらを1種または2種以上(例、2種または3種)含んでいてもよい。
【0016】
本発明の組成物の第4の成分である“カルニチン類もしくはカルニチン前駆体”におけるカルニチン類としては、L−カルニチン、N−アセチル−L−カルニチン、DL−カルニチン、塩化カルニチン(=DL−カルニチン塩酸塩)、L−カルニチン塩酸塩、L−カルニチンフマル酸塩、L−カルニチン酒石酸塩、L−カルニチンマグネシウムクエン酸塩、N−アセチル−L−カルニチン塩酸塩などが挙げられる。その中でも、L−カルニチン、N−アセチル−L−カルニチン、L−カルニチンの塩が好ましく、特に好ましいものとしては、L−カルニチン、N−アセチル−L−カルニチン、L−カルニチン塩酸塩、L−カルニチンフマル酸塩、L−カルニチン酒石酸塩が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物の第4の成分である“カルニチン類もしくはカルニチン前駆体”におけるカルニチン前駆体としては、リジンまたはその医薬もしくは食品として許容される塩、およびメチオニンなどが挙げられる。
【0018】
本発明の組成物の成分の組み合わせとして、特にアルギニン、カフェイン、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチンの組み合わせが好ましい。
【0019】
上記“グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類”に対する“キサンチン誘導体”、“イソフラボン類”および“カルニチン類もしくはカルニチン前駆体”(カルニチン類とカルニチン前駆体の両方を用いるときはその合計)の配合比(重量比)としては、それぞれ通常1:約0.01〜5:約0.005〜5:約0.01〜50、好ましくは1:約0.02〜1:約0.01〜1:約0.02〜10、最も好ましくは1:約0.05〜0.5:約0.02〜0.5:約0.03〜5である。
【0020】
本発明の組成物は更に所望に応じて飲食品、医薬品として許容される各種の担体および/または添加剤を添加配合することができる。このような担体の例としては、各種のキャリアー担体、イクステンダー剤、希釈剤、増量剤、分散剤、賦形剤、結合剤、溶媒(例えば、水、エタノール、植物油など)、溶解補助剤、緩衝剤、溶解促進剤、ゲル化剤(例えば、ナトリウムCMC、HPMCなど)、懸濁化剤(例えば、ナトリウムCMC、ナトリウムアルギネートなど)などが挙げられ、添加剤の例としては、ビタミン類(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、ニコチン酸、ビタミンC、ビタミンEなど)、甘味料、有機酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸など)、着色剤、香料(例えば、バニリン、リナロール、天然香料など)、湿気防止剤、ファイバー、電解質、ミネラル、栄養素、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、湿潤剤、天然の植物抽出物(例えば、茶抽出物、コーヒー抽出物、ココア抽出物、オレンジ、グレープ、アップル、モモ、パイナップル、ナシ、プラム、サクランボ、パパイヤ、トマト、メロン、イチゴ、ラズベリーなどのフルーツ抽出物など)などが挙げられる。
【0021】
本発明の組成物は、飲食品、医薬品に適した各種の形態に調製することができる。飲食品としては、例えばダイエット食品、缶詰食品、ジュース、シロップなどを含めた飲食品製造に通常用いられる方法で調合したり、製造したりすることができる。例えば飲料は、本発明組成物の必須成分および所望に応じて上記の添加剤の所定量を適当な希釈剤(通常は水)に溶解して調製される。飲料全量に対する必須成分の配合量は特に制限はないが、全量100gあたり必須成分の配合量は0.01〜15g、好ましくは0.05〜10g、最も好ましくは0.1〜4gである。また、本発明の飲料は炭酸飲料の形態に調製してもよい。本発明の飲料は、飲む直前にすぐに調製しうるに適した粉末形態のものであってもよい。非飲料食品形態としては例えば、アメ、ドロップ、チョコレート、ゼリー、ビスケット、ヨーグルトおよび菓子などの各種の形態をとることができる。これらの非飲料食品形態への調製は、本発明の必須成分および所望に応じて上記の添加剤の所定量を適宜混合して賦形するか、またはさらに適当な担体を適宜混合して賦形することにより行われる。
【0022】
担体としては例えば、小麦粉、米粉、澱粉、コーンスターチ、ポリサッカライド、ミルクタンパク質、コラーゲン、米油、レシチンなどが挙げられる。非飲料食品全量に対する必須成分と添加剤の配合量は特に制限はないが、全量100gあたり必須成分の配合量は0.01〜20g、好ましくは0.05〜10g、最も好ましくは0.1〜4gである。医薬品としては錠剤、カプセル剤、液剤、散剤、注射剤などの中から常法に従って任意の剤形に製剤化することができる。成人1日あたりの投与量は、経口投与の場合、アミノ酸が100mg以上、好ましくは200mg〜20g、特に好ましくは300mg〜5g、キサンチン誘導体が通常1〜200mg、好ましくは5〜100mg、特に好ましくは20〜80mg程度、イソフラボン類が1mg以上、好ましくは10〜100mg、特に好ましくは25〜40mg程度、カルニチン類もしくはカルニチン前駆体(カルニチン類とカルニチン前駆体の両方を用いるときはその合計)が通常10mg〜2g、好ましくは30mg〜1g、特に好ましくは50mg〜500mgである。
【0023】
本発明の組成物を飲食品の形態に調製した場合、該飲食品には、当該組成物の作用に鑑みて、脂質代謝を改善する旨の表示、基礎代謝を促進する旨の表示、体重を減少させる旨の表示、内臓脂肪または皮下脂肪を減少させる旨の表示、ダイエット効果を有する旨の表示、脂肪肝および/または肝機能を改善する旨の表示、血中中性脂肪濃度を減少させる旨の表示、血中総コレステロール濃度を減少させる旨の表示、血中HDLコレステロール濃度を増加させる旨の表示、血中アディポネクチン濃度を増加させる旨の表示、アディポサイトカインの分泌を正常化する作用を有する旨の表示、肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、および/またはメタボリックシンドロームの予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示をすることができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例および試験例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例および試験例において、イソフラボン類は用途に応じて成分や組成比が異なる数種の食品素材を用いた。そのような食品素材として、例えば、大豆イソフラボンアグリコンであるゲニステイン、ダイゼインおよびグリシテインの混合物や大豆イソフラボン配糖体であるゲニスチン、ダイジンおよびグリシチンの混合物が挙げられる。また、以下の実施例および試験例において、カルニチンおよびアルギニンはL−体を用いた。
【0025】
[実施例1]
(散剤)
イソフラボン類(大豆イソフラボンを30重量%以上含有する大豆発酵抽出物であって、該大豆イソフラボンの組成比がゲニステイン約50重量%、ダイゼイン約40重量%、グリシテイン約10重量%である食品素材)0.015g、カルニチン0.1g、アルギニン0.5g、カフェイン0.02g、ビタミンC0.015g、合成ケイ酸アルミニウム10g、リン酸水素カリウム5g、乳糖84.5g、これら粉末状の成分を均一に混合して、散剤とする。
【0026】
[実施例2]
(顆粒剤)
イソフラボン類(大豆イソフラボンを30重量%以上含有する大豆発酵抽出物であって、該大豆イソフラボンの組成比がゲニステイン約50重量%、ダイゼイン約40重量%、グリシテイン約10重量%である食品素材)0.015g、カルニチン0.1g、アルギニン0.5g、カフェイン0.02g、ビタミンC0.015g、結晶セルロース40.0g、乳糖35.0g、澱粉19.5g、ポリビニルアルコール5.0g、水30.0g、これらの上記成分を均一に混練し、破砕造粒した後、乾燥して顆粒剤とする。
【0027】
[実施例3]
(錠剤)
実施例2で得られた顆粒剤99gにステアリン酸カルシウム1gを混合し、打錠機で圧縮成形して直径6.0mmの錠剤とする。
【0028】
[実施例4]
(配合茶)
緑茶、ハト麦、大麦、玄米、ウーロン茶、ドクダミおよび杜仲茶の7種類を原料とする乾燥茶葉1gを100mlの水で抽出し、この抽出液にイソフラボン類(大豆イソフラボンを10重量%含有する大豆胚芽抽出物であって、該大豆イソフラボンの組成比がゲニスチン約10重量%、ダイジン約50重量%、グリシチン約40重量%である食品素材)8mg、カルニチン60mg、アルギニン240mg、カフェイン10mg、およびビタミンC 15mgを配合し、配合茶を得た。(原料由来のカフェインが2mg入っている。)
【0029】
[実施例5]
(粉末茶)
玄米茶エキス1800mg、乳糖500mg、クエン酸500mg、イソフラボン類(大豆イソフラボンを10重量%含有する大豆胚芽抽出物であって、該大豆イソフラボンの組成比がゲニスチン約10重量%、ダイジン約50重量%、グリシチン約40重量%である食品素材)40mg、カルニチン300mg、アルギニン1300mgおよびカフェイン55mgを配合し、粉末茶を得た。(原料由来のカフェインが20mg入っている。)
【0030】
[実施例6]
(キャンディー)
イソフラボン類(大豆イソフラボンを10重量%含有する大豆胚芽抽出物であって、該大豆イソフラボンの組成比がゲニスチン約10重量%、ダイジン約50重量%、グリシチン約40重量%である食品素材)15mg、カルニチン100mg、アルギニン400mg、カフェイン20mg、クエン酸100mg、ビタミンC15mg、水飴65g、蔗糖10g、マレイン酸300mg、コハク酸200mg、リンゴ酸150mg、香料0.3gおよび水少量を混合し、常法により加熱冷却し、キャンディーを製造した。
【0031】
以下の試験例で用いたマウスは、2型糖尿病モデル動物のKKマウスである。KKマウスは遺伝性糖尿病動物であるが、自然に糖尿病を発症するわけではなく、食餌を主とした飼育条件の規制が必要である。すなわち、市販の固型飼料で飼育しても高血糖は発症しにくいが、高カロリー飼料で飼育すると容易に食餌性肥満を起こし高血糖を発症する。さらに、食餌性肥満および高血糖を発症したKKマウスをそのまま高カロリー飼料で飼育すると体重の増加、高血糖、高インスリン血症および高コレステロール血症がみられ、肝臓中性脂肪量の増加(脂肪肝)と皮下脂肪や内臓脂肪の組織重量が増加して病態が悪化する。このように、KKマウスはヒト肥満の成因や病態をよく反映したモデル動物であり、内臓脂肪蓄積に伴うインスリン抵抗性、さらには高血糖、高インスリン血症、高脂血症、高コレステロール血症など、メタボリックシンドロームのモデル動物として用いることができる。
また、以下の試験例に用いたイソフラボン類は、食品素材の大豆イソフラボン(大豆イソフラボンを10重量%含有する大豆胚芽抽出物であって、該大豆イソフラボンの組成比がゲニスチン約10重量%、ダイジン約50重量%、グリシチン約40重量%である食品素材)である。
【0032】
[試験例1]
本発明のイソフラボン類、カルニチン、アルギニンおよびカフェインを含有する組成物の肝臓における中性脂肪合成抑制作用を、肝臓における中性脂肪の合成が亢進する絶食−再給餌評価系で調べた。
16−20週齢の雄性KKマウスを使用し、2日間絶食させた後、4群(対照群、アルギニン・カフェイン混合物投与群、イソフラボン類・カルニチン混合物投与群、およびイソフラボン類・カルニチン・アルギニン・カフェインの組成物(本発明品)投与群、1群6匹)に分けた。下記表1に示す組成からなる高炭水化物飼料を摂取させた群を対照群とし、高炭水化物食に試験サンプルを加えたものを摂取させた群を試験群として3日間再給餌した。各試験群の飼料は次のとおりである。
(1)対照群:高炭水化物飼料
(2)アルギニン・カフェイン混合物投与群:高炭水化物飼料+(アルギニン0.6重量%+カフェイン0.025重量%の混合物)
(3)イソフラボン・カルニチン混合物投与群:高炭水化物飼料+(大豆イソフラボン0.02重量%+カルニチン0.15重量%の混合物)
(4)本発明品投与群:高炭水化物飼料+(大豆イソフラボン0.02重量%+カルニチン0.15重量%+アルギニン0.6重量%+カフェイン0.025重量%の混合物)。
【0033】
【表1】

【0034】
飼育試験終了後、解剖して各群マウスの肝臓組織の重量を測定し、また肝臓の中性脂肪濃度を常法により分析した。その結果を図1に示す。なお、図1では中性脂肪濃度(mg/g肝臓)を平均値±標準偏差で示した。p<0.01は危険率1%未満で対照群と有意な差があることを意味する。
【0035】
図1から次のことが分かる。すなわち、対照群では肝臓での中性脂肪の合成が亢進し、中性脂肪濃度が増加しているのに対し、アルギニン・カフェイン混合物投与群および本発明品投与群では、中性脂肪濃度は増加が抑えられており、対照群と比べて有意(p<0.01)に低値を示した。一方、イソフラボン類・カルニチン混合物投与群は対照群と比較して差はみられなかった。また、イソフラボン類・カルニチン・アルギニン・カフェイン組成物(本発明品)投与群はアルギニン・カフェイン混合物投与群と同程度の値を示しており、イソフラボン類・カルニチン混合物摂取による脂肪合成抑制作用はみられなかった。イソフラボン類は脂肪分解を促進させることおよび脂肪酸酸化酵素カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1を活性化することにより、また、カルニチンはエネルギー代謝に関与することにより抗肥満作用を示す。そのため、絶食−再給餌による一過性の脂肪合成においてはイソフラボン類・カルニチン混合物摂取による効果がみられなかったと考えられる。
【0036】
[試験例2]
食餌性肥満マウスのカロリー摂取を制限し、体脂肪の分解・利用を必要とする状態にすると、体脂肪の分解・利用の促進が肥満を改善する。このような条件下で、本発明のイソフラボン類、カルニチン、アルギニンおよびカフェインを含有する組成物の作用を調べた。すなわち、5週齢の雄性KKマウスを、水と飼育用粉末飼料(CE−2、商品名、日本クレア株式会社製)で1週間飼育した後、下記表2に記載の高カロリー飼料(4.66kcal/g)で3週間飼育して肥満を誘導した。4群(対照群、アルギニン・カフェイン混合物投与群、イソフラボン類・カルニチン混合物投与群、およびイソフラボン類・カルニチン・アルギニン・カフェインの組成物(本発明品)投与群、1群6匹)に分け、下記表2に記載の低カロリー飼料(3.08kcal/g)、あるいは、低カロリー飼料に試験サンプルを加えた飼料で2週間飼育して体脂肪を利用させた。各試験群の飼料は次のとおりである。
(1)対照群:低カロリー飼料
(2)アルギニン・カフェイン混合物投与群:低カロリー飼料+(アルギニン0.6重量%+カフェイン0.025重量%の混合物)
(3)イソフラボン類・カルニチン混合物投与群:低カロリー飼料+(大豆イソフラボン0.02重量%+カルニチン0.15重量%の混合物)
(4)本発明品投与群:低カロリー飼料+(大豆イソフラボン0.02重量%+カルニチン0.15重量%+アルギニン0.6重量%+カフェイン0.025重量%の混合物)。
【0037】
【表2】

【0038】
試験期間中は体重測定を定期的に実施し、試験終了後に解剖して各群マウスの皮下および腸間膜周囲(内臓)脂肪組織重量を測定した。また、試験サンプル投与前および試験終了後に採血を行い、血漿中脂質含量を常法により分析した。また、試験終了後に肝臓を摘出して、肝臓中の脂質含量を常法により分析した。
【0039】
結果を図2〜図7に示す。これらの図中、体重の増減量(g)、皮下脂肪組織重量(mg/100g体重)、腸間膜周囲(内臓)脂肪組織重量(mg/100g体重)、血漿中性脂肪量(mg/dl)、血漿総コレステロール量(mg/dl)、および肝臓中性脂肪量(mg/g肝臓)は平均値±標準偏差で示した。また、p<0.01およびp<0.05は、それぞれ危険率1%未満および5%未満で対照群と有意な差があることを示す。
【0040】
これらの結果から次のことが分かる。すなわち、体重の増減量および肝臓中性脂肪量は、対照群と比較してイソフラボン類・カルニチン混合物投与群とアルギニン・カフェイン混合物投与群は大差ないが、本発明品投与群が有意に低値を示し、明確な相乗作用がみられた。また、皮下脂肪および腸間膜周囲(内臓)脂肪組織重量は、対照群と比較してイソフラボン類・カルニチン混合物投与群は大差なく、アルギニン・カフェイン混合物投与群は低値を示したが有意差はなかった。一方、本発明品投与群は有意に低値を示し、明確な相乗作用がみられた。血漿の中性脂肪量は、高カロリー飼料から低カロリー飼料に切り替えると肝臓で脂肪合成が亢進して、試験サンプル投与前に比べて試験終了後に対照群で顕著に増加したが、イソフラボン類・カルニチン混合物投与群とアルギニン・カフェイン混合物投与群は上昇が抑制され、さらに本発明品投与群は上昇が強く抑制され、相加的な作用がみられた。試験終了後の血漿の総コレステロール量は、対照群と比較してイソフラボン類・カルニチン混合物投与群とアルギニン・カフェイン混合物投与群は大差ないが、本発明品投与群は有意に低値を示し、相乗作用がみられた。これらの結果から、本発明のイソフラボン類、カルニチン、アルギニンおよびカフェインを含有する組成物は、明確な相乗作用があり、内臓脂肪・皮下脂肪の蓄積、脂肪合成の亢進に伴う高中性脂肪血症、肥満に伴う高コレステロール血症、およびメタボリックシンドロームなどの各症状の予防、改善または治療に有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の組成物は、脂肪肝、高脂血症(例えば、高中性脂肪血症、高コレステロール血症)などの脂質代謝異常や、内臓脂肪や皮下脂肪に起因する肥満を予防、改善、治療を目的とした、あるいはこれらの症状を伴うメタボリックシンドロームの予防、改善、治療を目的とした飲食品、医薬品、医薬部外品などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】試験例1における肝臓の中性脂肪量を示すグラフである。
【図2】試験例2における体重の増減量を示すグラフである。
【図3】試験例2における皮下脂肪組織重量を示すグラフである。
【図4】試験例2における腸間膜周囲脂肪組織重量を示すグラフである。
【図5】試験例2におけるサンプル投与前と試験終了後の血漿中性脂肪量の変化を示すグラフである。
【図6】試験例2におけるサンプル投与前と試験終了後の血漿総コレステロール量の変化を示すグラフである。
【図7】試験例2における肝臓の中性脂肪量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療組成物。
【請求項2】
グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなる脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物。
【請求項3】
脂質代謝異常が脂肪肝である請求項2に記載の脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物。
【請求項4】
脂質代謝異常が高コレステロール血症である請求項2に記載の脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物。
【請求項5】
脂質代謝異常が高中性脂肪血症である請求項2に記載の脂質代謝異常の予防、改善または治療組成物。
【請求項6】
グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなる肥満の予防、改善または治療組成物。
【請求項7】
肥満が内臓脂肪および/または皮下脂肪に起因するものである請求項6記載の肥満の予防、改善または治療組成物。
【請求項8】
グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類が、アルギニン、アラニン、ロイシンまたはそれらの医薬もしくは食品として許容される塩である請求項1〜7のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項9】
キサンチン誘導体が、カフェイン、テオフィリンまたはテオブロミンである請求項1〜8のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項10】
イソフラボン類が、大豆イソフラボンである請求項1〜9のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項11】
大豆イソフラボンが、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニスチン、ダイジンまたはグリシチンである請求項10に記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項12】
カルニチン類が、L−カルニチン、N−アセチル−L−カルニチン、またはそれらの医薬もしくは食品として許容される塩である請求項1〜11のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項13】
カルニチン前駆体が、リジンまたはそれらの医薬もしくは食品として許容される塩、およびメチオニンである請求項1〜12のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項14】
アルギニン、カフェイン、イソフラボン類およびカルニチンを含有する請求項1〜7のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の予防、改善または治療組成物を含有してなる飲食品または医薬品。
【請求項16】
グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、イソフラボン類の少なくとも1種、およびカルニチン類もしくはカルニチン前駆体の少なくとも1種を含有してなる組成物を含有する飲食品であって、脂質代謝を改善する旨の表示、基礎代謝を促進する旨の表示、体重を減少させる旨の表示、内臓脂肪または皮下脂肪を減少させる旨の表示、ダイエット効果を有する旨の表示、脂肪肝および/または肝機能を改善する旨の表示、血中中性脂肪濃度を減少させる旨の表示、血中総コレステロール濃度を減少させる旨の表示、血中HDLコレステロール濃度を増加させる旨の表示、血中アディポネクチン濃度を増加させる旨の表示、アディポサイトカインの分泌を正常化する作用を有する旨の表示、肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、メタボリックシンドロームの予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、からなる群から選択される少なくとも1種の表示が付されたものである飲食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−291002(P2008−291002A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141154(P2007−141154)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(306019030)ハウスウェルネスフーズ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】