メタリック塗装数値化方法および数値化装置
【課題】メタリック塗装の外観を数値化する。
【解決手段】メタリック塗装数値化装置は、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡、拡大されたミクロ画像を撮像する顕微鏡デジタルカメラ、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段41、標準的試料の第1の特徴量を記憶するデータベース(記憶手段40)、データベースに記憶された第1の特徴量と評価対象の試料から抽出された第1の特徴量とを比較して、評価対象の試料を判別する判別手段43を備える。第1の特徴量としては、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、フレークの密度、フレークの浮き沈みの度合いを示す評価値、及びフレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つが採用される。
【解決手段】メタリック塗装数値化装置は、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡、拡大されたミクロ画像を撮像する顕微鏡デジタルカメラ、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段41、標準的試料の第1の特徴量を記憶するデータベース(記憶手段40)、データベースに記憶された第1の特徴量と評価対象の試料から抽出された第1の特徴量とを比較して、評価対象の試料を判別する判別手段43を備える。第1の特徴量としては、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、フレークの密度、フレークの浮き沈みの度合いを示す評価値、及びフレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つが採用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック塗装の外観を数値化し、メタリック塗装を客観的に判別するメタリック塗装数値化方法および数値化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車外板塗装においては、塗料に様々な光輝材を混ぜるメタリック塗装が主流になってきている。メタリック塗装とは、図32に示す従来のソリッド塗装に対して、図33に示すようにカラー塗装73中にキラキラと輝いた金属光沢のフレーク(微小片)74を混ぜ込んだ塗装である。メタリック塗装は、従来のソリッド塗装に比べて独特の光輝感や粒子感を生むが、フレークの影響により、色相や彩度、明度で表される単なる「色」で表現することができないため、評価が難しいという問題がある。フレークは金属反射(一定の方向への強い反射)をするため、観察方向が異なると異なった反射の様子を示す。つまり、統計的な粗さなどの考え方でメタリック塗装の強さを表現することはできるが、詳細なメタリック塗装の判別は難しい。
【0003】
従来、メタリック塗装を評価する技術としては、特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置がある。このメタリック塗装面評価装置は、評価対象となるメタリック塗装を撮影し、撮影した画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行い、画像処理後の画像から特徴量を抽出して、この特徴量に基づいてメタリック塗装を評価するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−208333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置では、人間の目の解像度に合わせる画像処理を行った後の画像を所定の輝度閾値で二値化して二値化画像を生成し、この二値化画像における高輝度部分について、下記の(a)〜(c)のような特徴量を抽出している。
(a)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさ
(b)高輝度部分の面積
(c)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさと高輝度部分の面積との積分値
【0006】
しかしながら、上記の(a)〜(c)のような特徴量では、メタリック塗装の外観を数値化するための特徴量として不十分で、メタリック塗装の外観を適切に表現することができないという問題点があった。したがって、特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置では、得られた特徴量を使って同様なメタリック塗装を再現するのは困難である。
【0007】
同様の理由により、特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置では、メタリック塗装の外観を評価しようとする際に、異なるメタリック塗装を同じものとして判断してしまう可能性があり、メタリック塗装を適切に判別することができないので、現実の様々なメタリック塗装に適用することが難しい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来よりも優れたメタリック塗装の外観、とりわけ光輝感や粒子感の数値化を実現するメタリック塗装数値化方法および数値化装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、メタリック塗装の判別精度を向上させることができるメタリック塗装数値化方法および数値化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のメタリック塗装数値化方法は、標準的試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の標準的試料撮像手順と、この第1の標準的試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する標準的試料のミクロ画像解析手順と、前記第1の特徴量を第1のデータベースに登録する第1のデータベース登録手順とを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例は、さらに、評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の評価対象試料撮像手順と、この第1の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する評価対象試料のミクロ画像解析手順と、前記第1のデータベースに登録された第1の特徴量と前記評価対象試料のミクロ画像解析手順によって抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する判別手順とを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例は、さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の標準的試料撮像手順と、この第2の標準的試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する標準的試料のマクロ画像解析手順と、前記第2の特徴量を第2のデータベースに登録する第2のデータベース登録手順とを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例は、さらに、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の評価対象試料撮像手順と、この第2の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する評価対象試料のマクロ画像解析手順とを備え、前記判別手順は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに登録された第2の特徴量と前記評価対象試料のマクロ画像解析手順によって抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する手順を含むものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例において、前記第1の特徴量は、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、前記フレークの密度、前記フレークの浮き沈みの度合い、及び前記フレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例において、前記第2の特徴量は、コントラスト値である。
【0010】
また、本発明のメタリック塗装数値化装置は、標準的試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡と、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の撮像手段と、この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段と、前記第1の特徴量を記憶する第1のデータベースとを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化装置の1構成例は、さらに、評価対象の試料を判別する判別手段を備え、前記顕微鏡は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大し、前記第1の撮像手段は、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像し、前記ミクロ画像解析手段は、この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出し、前記判別手段は、前記第1のデータベースに記憶された第1の特徴量と前記評価対象の試料のミクロ画像から抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別するものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化装置の1構成例は、さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像する第2の撮像手段と、この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析手段と、前記第2の特徴量を記憶する第2のデータベースとを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化装置の1構成例において、前記第2の撮像手段は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像し、前記マクロ画像解析手段は、この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出し、前記判別手段は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに記憶された第2の特徴量と前記評価対象の試料のマクロ画像から抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、標準的試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、顕微鏡によって拡大されたミクロ画像を撮像し、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出して、この第1の特徴量を第1のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観の適切な数値化を実現することができる。その結果、本発明では、例えば自動車や自動二輪などのデザイン開発に際してメタリック塗装を指定する際に、所望の外観のメタリック塗装を数値で指定することができる。そして、塗料メーカは、その数値から所望のメタリック塗装を調合、再現することも可能となる。また、解像度の優れた表示装置や印刷装置を使用すれば、メタリック塗装をパソコン上でデジタル合成して、それら装置に再現することも可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、顕微鏡によって拡大されたミクロ画像を撮像し、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出して、この第1の特徴量と第1のデータベースに登録された第1の特徴量とを比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を向上させることができる。その結果、本発明では、メタリック塗装を開発する際に人間にとって同じに見えるメタリック塗装を従来よりも安いコストで製造可能にすることができ、デザイン開発に際して異なる人間がメタリック塗装を評価するときの同一の判断基準を提供することができ、製造ラインにおけるメタリック塗装の判定技術を標準化することができる、といった効果が期待できる。
【0013】
また、本発明によれば、標準的試料のメタリック塗装面をより低い倍率で撮像したマクロ画像を取り込み、マクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出して、この第2の特徴量を第2のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観のさらに適切な数値化を実現することができる。
【0014】
また、本発明では、評価対象の試料のメタリック塗装面をより低い倍率で撮像したマクロ画像を取り込み、マクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出し、この第2の特徴量と第2のデータベースに登録された第2の特徴量とを比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を更に向上させることができ、第1の特徴量に基づく判別が不可能な場合でも、試料を判別することができる。
【0015】
また、本発明では、第1の特徴量として、フレークのサイズ、フレークの密度、フレークの浮き沈みの度合いを示す各評価値、及びフレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つを採用することにより、メタリック塗装面の外観の適切な数値化を実現することができる。
【0016】
また、本発明では、第2の特徴量としてコントラスト値を採用することにより、フレークによる光の乱雑性を感知しやすくすることができ、標準的試料の外観の適切な数値化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置(メタリック塗装評価装置)の構成を示すブロック図である。
メタリック塗装数値化装置は、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡1と、この顕微鏡1によって拡大された画像を撮像する第1の撮像手段となる顕微鏡デジタルカメラ2と、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2による倍率よりも低い倍率でより広大な領域にわたって撮像する第2の撮像手段となるデジタルカメラ3と、顕微鏡デジタルカメラ2によって取り込まれた画像とデジタルカメラ3によって取り込まれた画像とを処理して、標準的試料又は評価対象の試料の外観を数値化し、評価対象の試料を判別する画像処理装置4と、画像処理装置4の判別結果を表示する表示装置5とを有する。なお、デジタルカメラ3として、スキャナを使用してもよい。
【0018】
図2は画像処理装置4の構成例を示すブロック図である。画像処理装置4は、装置のプログラムと顕微鏡デジタルカメラ2及びデジタルカメラ3によって取り込まれた画像と標準的試料の特徴量のデータベースとを記憶する記憶手段40と、顕微鏡デジタルカメラ2によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段41と、デジタルカメラ3によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析手段42と、評価対象の試料を判別する判別手段43とを有する。
【0019】
ミクロ画像解析手段41は、第1の特徴量としてフレークのサイズを抽出するフレークサイズ抽出手段410と、第1の特徴量としてフレークの密度を抽出するフレーク密度抽出手段411と、第1の特徴量としてフレークの浮き沈みの評価値を抽出するフレーク浮き沈み抽出手段412と、第1の特徴量としてフレークの表面状態の評価値を抽出するフレーク表面状態抽出手段413とを有する。
【0020】
図3は本実施の形態のメタリック塗装数値化装置の動作を示すフローチャートである。まず、メタリック塗装数値化装置は、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面の画像を取り込む(図3ステップS1)。
本実施の形態では、画像取込処理として、顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2とを用いてメタリック塗装面の微小領域を拡大撮影してミクロ画像として取り込む処理と、デジタルカメラ3を用いてメタリック塗装面のより広大な領域を撮影してマクロ画像として取り込む処理の2つを行う。
【0021】
顕微鏡1は、試料のメタリック塗装面を拡大し、顕微鏡デジタルカメラ2は、顕微鏡1によって拡大された画像を撮影して、ミクロ画像データを画像処理装置4に出力する。本実施の形態では、顕微鏡1の拡大倍率として100倍と1000倍を用いる。顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2とは、100倍のミクロ画像と1000倍のミクロ画像の2枚の画像を取り込む。また、倍率1000倍のミクロ画像については、同じ場所で手前のフレークに焦点を合わせた浅焦点ミクロ画像と、奥のフレークに焦点を合わせた深焦点ミクロ画像の2枚を別に取り込んでおく。顕微鏡1の焦点深度は倍率1000倍の場合、0.67μmである。
【0022】
以上の顕微鏡画像は通常の透過照明画像であるが、さらに、顕微鏡1は、照明光学系と結像光学系(顕微鏡)の両方に、偏光子とノマルスキープリズムを挿入することにより、ノマルスキー透過型微分干渉顕微鏡として機能する。これにより、顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2とは、例えば倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像を取り込むことができる。ノマルスキー透過型微分干渉顕微鏡で試料を観察すると、無染色試料や、生きた細胞の内部構造や微細な凹凸を、黄色、紫、青などの干渉色のもとで立体的に観察することができる。
【0023】
一方、デジタルカメラ3は、試料のメタリック塗装面を撮影して、マクロ画像データを画像処理装置4に出力する。
画像処理装置4の記憶手段40は、顕微鏡デジタルカメラ2から出力されたミクロ画像データとデジタルカメラ3から出力されたマクロ画像データを記憶する。以上で、画像取込処理が終了する。
【0024】
次に、画像処理装置4は、メタリック塗装面の画像から特徴量を抽出する画像解析処理を行う(図3ステップS2)。
本実施の形態では、画像解析処理として、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析と、マクロ画像から第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析を行う。
【0025】
まず、ステップS2の画像解析処理のうちのミクロ画像解析から説明する。図4は画像処理装置4のミクロ画像解析手段41の動作を示すフローチャートである。
図2におけるミクロ画像解析手段41のフレークサイズ抽出手段410は、ミクロ画像からフレーク1個のサイズ(正確にはフレーク1個に近いと考えられる領域の画素数)を特徴量として抽出する(図4ステップS10)。図5はフレークサイズ抽出手段410の動作を示すフローチャートである。
【0026】
最初に、フレークサイズ抽出手段410は、記憶手段40に記憶されている倍率1000倍のミクロ画像からメディアン(median)フィルタを用いてノイズを除去し(図5ステップS100)、ノイズ除去後のミクロ画像を複製して、ノイズ除去後のミクロ画像を2枚作成する(ステップS101)。続いて、フレークサイズ抽出手段410は、ステップS101で作成した2枚のミクロ画像のうちの1枚をフルカラー(1677万7216色)から8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS102)、変換後の画像の所定の閾値以上の画素に対してラベリング処理を行う(ステップS103)。
【0027】
ラベリング処理は、閾値以上の画素のうち、連結した画素の集まりを1つの連結成分とみなし、同一の連結成分内の各画素に同一のラベル(番号又は名前)を与えることにより、連結成分(ラベリング領域)を抽出する処理である。
また、フレークサイズ抽出手段410は、ステップS101で作成した2枚のミクロ画像のうちの他の1枚からエッジを検出する(ステップS104)。ここでは、8ビットの画像に対してエッジ検出閾値として例えば75を設定し、ソーベル(Sobel)フィルタを用いてエッジを検出した。
【0028】
次に、フレークサイズ抽出手段410は、ステップS103で検出されたラベリング領域の中から、ステップS104のエッジ検出結果に基づいてエッジの輝度値が上記のエッジ検出閾値以上であるラベリング領域を検出し、さらに検出したラベリング領域の中から領域画素数が例えば1000画素以上の領域を検出する(ステップS105)。
フレークサイズ抽出手段410は、倍率1000倍のミクロ画像から複数箇所(例えば20箇所)の領域をランダムに選択し、各選択領域についてステップS100〜S105の処理をそれぞれ行う。
【0029】
フレークサイズ抽出手段410は、20箇所の選択領域についてそれぞれステップS100〜S105の処理が終了した後(ステップS106においてYES)、各選択領域からステップS105の処理で検出したラベリング領域の画素数の平均値をフレークサイズとする(ステップS107)。以上で、フレークサイズ抽出手段410の処理が終了する。
【0030】
ここで、フレークサイズ抽出手段410の処理の妥当性について検証する。本実施の形態では、評価対象として表1に示すような8個の試料を用いた。この試料は長方形状の鋼板にメタリック塗装を施したもので、表1の試料名は出願人におけるメタリック色の社内呼称である。
【0031】
【表1】
【0032】
図6(A)〜図6(H)に8個の試料の倍率1000倍のミクロ画像を示し、図7(A)〜図7(H)にフレークサイズ抽出手段410の処理結果の画像を示す。図7(A)〜図7(H)中の白地の部分が検出されたフレークの領域である。表2に各試料のフレークサイズ(画素数)を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
図6(A)〜図6(H)に示す処理前の画像と図7(A)〜図7(H)に示す処理後の画像とを比較すると、試料番号1、試料番号3、試料番号5、試料番号6及び試料番号8の試料については、多少のフレークの重なりや、フレークが欠けている領域もあるが、ほぼフレーク一つの大きさといえる領域を検出できていることが分かる。その理由は、これらの試料ではフレークのエッジを検出しやすいためであると考えられる。図6(F)で試料番号6の試料の画像を見ると、黒い下地の色がはっきり見えるわけではないが、フレークが大きく、フレーク1個のエッジがはっきりしているため、検出できたものと考えられる。
【0035】
また、表2のフレークサイズを見てみると、試料番号6のフレークサイズが大きく、試料番号1のフレークサイズが小さくなっている。このことは、図6(F)、図6(A)の画像から考えても妥当な結果であると言える。また、試料番号2、試料番号4及び試料番号7の試料では、フレークの密度が高すぎるために、明らかにフレーク1個とは考えられない領域が検出されており、フレークサイズの値としては不正確であると考えられる。表2の結果から、少なくとも一部の試料については、妥当なフレークサイズを抽出できていることが分かる。
【0036】
次に、ミクロ画像解析手段41のフレーク密度抽出手段411は、ミクロ画像からフレーク密度を特徴量として抽出する(図4ステップS11)。図8はフレーク密度抽出手段411の動作を示すフローチャートである。
最初に、フレーク密度抽出手段411は、記憶手段40に記憶されている倍率100倍のミクロ画像をフルカラーから8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS200)、変換後の画像から所定の閾値(例えば75)以上の画素を検出する(ステップS201)。
【0037】
そして、フレーク密度抽出手段411は、ステップS200で変換した画像の全画素数に対してステップS201で検出した画素の数が占める割合をフレーク密度とする(ステップS202)。以上で、フレーク密度抽出手段411の処理が終了する。なお、ステップS202で求める割合はフレークと考えられる領域の割合であるので、厳密な意味では密度とは言えないが、本実施の形態では便宜上、密度の評価値とした。
【0038】
次に、フレーク密度抽出手段411の処理の妥当性について検証する。図9(A)〜図9(H)に表1の8個の試料の倍率100倍のミクロ画像を示し、図10(A)〜図10(H)にフレーク密度抽出手段411の処理結果の画像を示す。図10(A)〜図10(H)中の白地の部分が検出されたフレークの領域である。表3に各試料のフレーク密度を示す。フレーク密度の単位は%である。
【0039】
【表3】
【0040】
図9(A)〜図9(H)のミクロ画像では、試料番号2、試料番号4及び試料番号6のフレーク密度が高いと感じる。これに対して、表3においても、試料番号2、試料番号4及び試料番号6のフレーク密度が高くなっており、妥当な結果であるといえる。ただし、試料番号6は次に述べるフレークの浮き沈みが激しく、奥にあるフレークが検出されにくいために、少しだけ密度が低く評価されてしまった。表3の結果から、少なくとも一部の試料については、妥当なフレーク密度を抽出できていることが分かる。
【0041】
次に、ミクロ画像解析手段41のフレーク浮き沈み抽出手段412は、ミクロ画像からフレークの浮き沈みの評価値を特徴量として抽出する(図4ステップS12)。顕微鏡で観察すると、メタリック塗装中に、浅く浮いているフレークと深く沈んでいるフレークを観察することができる。このようなフレークの浮き沈みの度合いを特徴量として抽出する。図11はフレーク浮き沈み抽出手段412の動作を示すフローチャートである。
最初に、フレーク浮き沈み抽出手段412は、記憶手段40に記憶されている倍率1000倍の浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像の2枚の画像から、ソーベルフィルタを用いてそれぞれエッジを検出する(図11ステップS300)。
【0042】
ソーベルフィルタによって検出したエッジの強さは、0〜255の256段階で表されている。そこで、フレーク浮き沈み抽出手段412は、エッジの強さの各段階毎に、エッジを構成している画素を数える(ステップS301)。ただし、エッジの強さが0(すなわち、エッジ無し)の場合は数えない。フレーク浮き沈み抽出手段412は、このような画素数の計測を浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像のそれぞれについて行う。
【0043】
続いて、フレーク浮き沈み抽出手段412は、浅焦点ミクロ画像のエッジの画素数と深焦点ミクロ画像のエッジの画素数との差の絶対値をエッジの強さの各段階毎に求めた後に、差の絶対値の総和を求める(ステップS302)。
フレーク浮き沈み抽出手段412は、浅焦点ミクロ画像から複数箇所(例えば5箇所)の領域をランダムに選択すると共に、この選択領域と同じ位置の領域を深焦点ミクロ画像から複数箇所選択し、浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像の同じ位置の選択領域毎にステップS300〜S302の処理を行う。
【0044】
フレーク浮き沈み抽出手段412は、5箇所の選択領域についてそれぞれステップS300〜S302の処理が終了した後に(ステップS303においてYES)、各選択領域からステップS302で求めた画素数の差の絶対値の平均値をフレークの浮き沈みの評価値とする(ステップS304)。以上で、フレーク浮き沈み抽出手段412の処理が終了する。
【0045】
次に、フレーク浮き沈み抽出手段412の処理の妥当性について検証する。図12(A)、図12(C)、図12(E)、図12(G)、図13(A)、図13(C)、図13(E)、図13(G)に試料番号1〜8の試料の浅焦点ミクロ画像を示し、図12(B)、図12(D)、図12(F)、図12(H)、図13(B)、図13(D)、図13(F)、図13(H)に試料番号1〜8の試料の深焦点ミクロ画像を示す。また、図14(A)、図14(C)、図14(E)、図14(G)、図15(A)、図15(C)、図15(E)、図15(G)に浅焦点ミクロ画像に対するエッジ検出処理後の画像を示し、図14(B)、図14(D)、図14(F)、図14(H)、図15(B)、図15(D)、図15(F)、図15(H)に深焦点ミクロ画像に対するエッジ検出処理後の画像を示す。図14(A)〜図14(H)及び図15(A)〜図15(H)の白い部分が検出されたエッジである。表4に各試料のフレークの浮き沈みの評価値を示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表4では、試料番号5、試料番号6及び試料番号8の試料の評価値が大きくなった。これらの試料の原画像を見ると、浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像の両方共にはっきりとしたエッジが検出され、フレークの浮き沈みの度合いが大きくなったものと考えられる。試料番号2もフレークの浮き沈みが大きいが、フレークの浮き沈みによるエッジの変化に加えて、試料番号2はフレーク密度が高く、フレークの浮き沈みによる変化以外のエッジの影響が大きくなり、表4の値が高くなったと考えられる。
【0048】
顕微鏡1の焦点深度は0.67μmである。つまり、0.67μm以上の深さの違いがあると、同時に焦点を合わすことはできないことになる。顕微鏡1の焦点をフレークの1個に完全に合わせることができるということは、フレークが深さ0.67μmの範囲でベース塗装面に対して平行であると考えられる。この場合は、エッジが強く出る。逆に、浅焦点ミクロ画像で焦点を合わせることができないフレークは、手前のフレークから少なくとも0.67μm以上奥にあるということになり、エッジは強く出ない。表4の値は、そのエッジの違いを数値化したもので、フレークの浮き沈みの度合いを表していると言える。表4の結果から、少なくとも一部の試料については、妥当なフレークの浮き沈みを抽出できていることが分かる。
【0049】
次に、ミクロ画像解析手段41のフレーク表面状態抽出手段413は、ノマルスキー微分干渉画像からフレークの表面状態の評価値を特徴量として抽出する(図4ステップS13)。ノマルスキー微分干渉観察により撮影された画像を処理することにより、フレークの配向特性や反射特性による各試料の表面状態を評価する。図16はフレーク表面状態抽出手段413の動作を示すフローチャートである。
【0050】
最初に、フレーク表面状態抽出手段413は、記憶手段40に記憶されている倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像をフルカラーから8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS400)、変換後の画像から所定の閾値(例えば100)以下の画素を検出し(ステップS401)、フルカラーのノマルスキー微分干渉画像からステップS401で検出した画素と同じ位置の画素を除去する(ステップS402)。こうして、メタリック塗装の下地となっている色を除去することができる。
【0051】
続いて、フレーク表面状態抽出手段413は、ステップS402の処理後のノマルスキー微分干渉画像をフルカラーからWebセーフカラー(216色)へ減色する(ステップS403)。フレーク表面状態抽出手段413は、減色後の画像をRGB表色系からCIE(Commission Internationale de l'Eclairage)表色系に変換し(ステップS404)、変換後の画像の216色に対してx値(色相値)の小さいものから順に1〜216の番号を付ける(ステップS405)。
【0052】
次に、フレーク表面状態抽出手段413は、ステップS404で変換した画像において1〜216までの番号の色毎に画素の頻度を数える(ステップS406)。そして、フレーク表面状態抽出手段413は、1〜216までの番号の各色について画像中における画素の頻度分布を変えずに、画素数の総和を規定値(例えば27736画素)にする処理を行う(ステップS407)。この規定値は、予め定められた値でもよいし、複数の試料を比較する場合には、複数の試料の中で画素数の総和が最大のものを選び、この画素数の総和を規定値としてもよい。画素数の総和を規定値にするには、規定値をステップS407で求めた画素数の総和で割り、この割り算の結果をステップS406で求めた色毎の画素の頻度に乗算すればよい。
【0053】
フレーク表面状態抽出手段413は、ステップS407の処理後の画素の頻度分布において所定値(例えば1000画素)以上の画素数となった色の数を、フレーク表面状態の評価値の候補値とする(ステップS408)。
フレーク表面状態抽出手段413は、倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像から複数箇所(例えば5箇所)の領域をランダムに選択し、各選択領域についてステップS400〜S408の処理をそれぞれ行う。
【0054】
フレーク表面状態抽出手段413は、5箇所の選択領域についてそれぞれステップS400〜S408の処理が終了した後に(ステップS409においてYES)、各選択領域からステップS408で求めた評価値の各候補の平均値を最終的なフレーク表面状態の評価値とする(ステップS410)。以上で、フレーク表面状態抽出手段413の処理が終了する。
【0055】
次に、フレーク表面状態抽出手段413の処理の妥当性について検証する。図17(A)〜図17(H)に表1の8個の試料の倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像を示し、図18(A)〜図18(H)に図17(A)〜図17(H)の画像中における色の画素頻度の分布を示す。表5に各試料のフレーク表面状態の評価値を示す。
【0056】
【表5】
【0057】
表5を見ると、試料番号1と試料番号3の評価値が高くなった。図17(A)、図17(C)に示す試料番号1と試料番号3の画像を見ると、比較的密度が低く、様々な方向のフレークや、奥の方のフレークまで観察しやすくなっている。そのため、様々な位相の光が観察され、ノマルスキー微分干渉観察を行うと様々な色が観察される。その結果、評価値の値が高くなったと考えられる。試料番号7の試料はフレークの向きや、奥行きがほとんど一定であり、図18(G)のように少ない種類の色が高い頻度で出現している状態(すなわち、反射光の位相がそろっている状態)のために、評価値は小さくなった。
【0058】
試料番号5と試料番号8の試料も密度が低いが、試料番号1、試料番号3の試料に比べて評価値は小さくなっている。図17(A)、図17(C)、図17(E)、図17(H)を見ると、試料番号1及び試料番号3と比べて、試料番号5及び試料番号8はノマルスキー微分干渉観察を行った際の、フレーク1個あたりに観察される色が多くなっていて、フレーク1個の中で位相が揃いにくくなっている。そのため、1000画素以上同じ色が検出されにくくなり、評価値が下がったと考えられる。フレークの中で位相が揃いにくくなった原因として、フレークの種類が違うということが考えられる。ノマルスキー微分干渉観察を行わない顕微鏡画像をみると、試料番号5や試料番号8のフレークは表面が凹凸な印象を受ける。このように、フレーク表面状態の評価値は、フレークの種類による影響を受けていると考えられる。
【0059】
次に、ステップS2の画像解析処理のうちのマクロ画像解析について説明する。図19は画像処理装置4のマクロ画像解析手段42の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態では、マクロ画像から第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析として、GLCM(Gray Level Co-occurrence Matrix)法を用いたテキスチャ解析を行う。なお、以下の説明では単に「GLCM」と表記する場合は行列を指し、「GLCM法」と表記する場合は手法全体のことを指すものとする。
【0060】
最初に、マクロ画像解析手段42は、記憶手段40に記憶されているマクロ画像をフルカラーから8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS500)、変換後の画像から所定のサイズ(本実施の形態では16画素×16画素)の部分画を抜き出す(ステップS501)。さらに、マクロ画像解析手段42は、図20(A)に示すように部分画の階調数を落とす(ステップS502)。図20(A)の例では、16画素×16画素の部分画で、0から3の4階調で表されたグレイレベルを持つ。
【0061】
続いて、マクロ画像解析手段42は、図20(A)の部分画についてGLCMを算出する(ステップS503)。GLCMの要素は、部分画内の画素間距離dと図20(B)に示す方位θで定まる2つの画素が持つグレイレベルを、図20(C)に示すように部分画内の行と列に対応付けて、その出現頻度を部分画全体について求めたものである。GLCMの行と列はそれぞれグレイレベルに対応するので、本実施の形態の場合、GLCMは4次の正方行列になる。ここでは、4方位(θ=0°、45°、90°、135°)の隣接画素について考える。
【0062】
したがって、図21(A)〜図21(D)に示すように、GLCMは4つ求めることができる。具体的に説明すると、部分画内において、距離が1で、かつθ=0°方向に並ぶ隣接画素間のうちグレイベルが「0」から「1」に変化するのは合計2回であるので、0°方位のGLCMの(0,1)要素は2となる。
【0063】
次に、マクロ画像解析手段42は、ステップS503で算出したGLCMからテキスチャ特徴量を算出する(ステップS504)。まず、マクロ画像解析手段42は、以下の式(1)により確率Pδ(i,j,δ)を計算する。
【0064】
【数1】
【0065】
式(2)において、iはGLCM中の列番号、jはGLCM中の行番号、δは隣接画素間の変位で、図21(A)の方位θ=0°の場合はδ=(1,0)、図21(B)の方位θ=45°の場合はδ=(1,1)、図21(C)の方位θ=90°の場合はδ=(0,1)、図21(D)の方位θ=135°の場合はδ=(1,0)である。また、P(i,j,δ)は変位δのGLCM中のj行i列の要素の値である。マクロ画像解析手段42は、式(1)のような確率化を方位毎に行う。
そして、マクロ画像解析手段42は、以下の式(2)により特徴量を算出する。
【0066】
【数2】
【0067】
マクロ画像解析の第2の特徴量としては、部分画のグレイレベルの一様性を表すASM(Angular SecondMoment)、部分画のグレイレベルの変化の激しさを表すコントラスト(Contrast)、部分画内での方向性の強さを表す相関係数(Correlation)などが挙げられるが、本実施の形態では、メタリック塗装の画像を解析するのにフレークによる光の乱雑性を感知しやすいという理由で、第2の特徴量としてコントラストを抽出した。マクロ画像解析手段42は、式(2)のような特徴量の算出を方位毎に行う。これで、ステップS504の処理が終了する。
【0068】
マクロ画像解析手段42は、マクロ画像から複数箇所(例えば3箇所)の領域をランダムに選択し、各選択領域についてステップS500〜S504の処理をそれぞれ行う。
マクロ画像解析手段42は、3箇所の選択領域についてそれぞれステップS500〜S504の処理が終了した後(ステップS505においてYES)、各選択領域からステップS504の処理で算出した特徴量の平均値を最終的な特徴量とする(ステップS506)。以上で、マクロ画像解析手段42の処理が終了する。
【0069】
次に、マクロ画像解析手段42の処理の妥当性について検証する。図22(A)〜図22(H)に表1の8個の試料のマクロ画像を示し、図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)にマクロ画像解析手段42の処理結果を示す。本実施の形態では、隣接画素間距離dを1画素、5画素、10画素、15画素の4種類とし、d=1、5、10、15画素の場合の処理結果をそれぞれ図23(A)、図23(B)、図24(A)、図24(B)に示す。
【0070】
なお、計算されたコントラスト値に方位性は見られなかったので、図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)では方位θ=0°の場合のみ記載している。また、図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)の例では、1個の試料について図19の処理を別の場所で複数回行った。図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)の横軸は各回のデータを示している。
【0071】
図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)に示すコントラストの値から、図25に示すように試料番号1〜8の8個の試料を3つのグループに分類することができた。分別グループとしては、試料番号4と試料番号6のグループG1、試料番号1と試料番号2と試料番号3と試料番号5と試料番号8のグループG2、試料番号7のみのグループG3となった。これらのグループG1,G2,G3の例として、図22(F)の試料番号6、図22(B)の試料番号2、図22(G)の試料番号7のマクロ画像を見比べてみると、大きく異なった画像であり、テキスチャ解析を用いたことで、これらの違いを分類できたことが分かる。
【0072】
GLCM法の計算パラメータについては、部分画16画素×16画素、隣接画素間距離d=15の場合が、メタリック塗装の画像を分類するという点において他のパラメータの場合より良好であった。デジタルカメラ3で4800dpiで取り込んだ場合、部分画の大きさ16画素は実際のスケールでは、約80μmに相当する。フレークの大きさは平均すると、20〜40μmであるので、部分画内にフレーク1個が十分に入る。特徴量値コントラストの計算過程では、式(2)に示すようにグレイレベルの差(i−j)の2乗の乗算が行われる。部分画内にフレーク1個が十分に入る場合の方が、フレークから下地塗装、明るいフレークから暗いフレークへ変化するときのグレイレベルの差をより捉えやすくなり、フレークによる画像の乱雑性を捉えることができたと考えられる。そのため、分類しやすい結果になったと考えられる。
【0073】
図25に示したグループの内容を考えると、試料番号4と試料番号6のグループG1は両方とも画像の中で、フレークが強く光っている部分が多く存在し、下地の低いグレイレベルの中に、グレイレベルが高いフレークが多数存在することにより、コントラストの計算における(i−j)の2乗の値が大きくなり、コントラストの値が高くなったと考えられる。試料番号2の試料も明るいフレークは存在しているが、試料のフレークの密度が高く、全体的に明るいため、(i−j)の値が試料番号4及び試料番号6ほどには高くならないために、試料番号4及び試料番号6よりもコントラストの値が小さくなったと考えられる。試料番号7の試料は、全体的に暗く、明るく光るフレークが存在していないことから、(i−j)の2乗の値が小さくなるため、コントラストの値が低くなったと考えられる。
【0074】
次に、画像処理装置4の判別手段43の動作を説明する前に、人間がメタリック塗装の試料をどのように見ているか、「メタリック度」、「フリップフロップ度」、「一様度」、「粒状度」などの主観評価基準を設けて、アンケート形式でメタリック塗装を主観評価した結果を説明する。
【0075】
ここでは、合計2回主観評価を行った。1回目の主観評価では、16名の人間が表1の8個の試料の主観評価を行った。この1回目の主観評価では、メタリック度を金属感(キラキラした感じ)の度合い、フリップフロップ度(偏光性)を見る角度によって色が違って見える度合い、一様度をサンプルの一様性、粒状度を粒(アルミフレーク)が見える度合いと定義し、それぞれの主観評価基準について5段階評価した。5段階の評価値は、とても弱いを1、弱いを2、中程度を3、強いを4、とても強いを5とした。
【0076】
2回目の主観評価では、ミクロ的解析を考慮し、的確に主観評価の基準を表現できるように主観評価基準の定義を修正した上で、5名の人間が主観評価を行った。2回目の主観評価の概略を図26に示す。1回目の主観評価の結果を表6に示し、2回目の主観評価の結果を表7に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
表6、表7の値は、1〜5の各評価値にそれぞれの度数(集計数)をかけた値を加算した総和である。表6の結果をグラフにしたものを図27に示し、表7の結果をグラフにしたものを図28に示す。
【0080】
メタリック塗装の試料と主観評価との相関性については後述する。図27、図28を見ると、メタリック度、一様度、粒状度については、試料間の主観評価の強弱は、ほぼ同じであると言える(すなわち、グラフの形状が似ている)。フリップフロップ度は、質問内容を変えた影響で、1回目と2回目で主観評価の強弱が違う結果になった。その理由は、1回目の主観評価の質問形式として、「フリップフロップ度とは、見る角度によって色が変わる度合い」としたために、下地色が濃い試料番号1、試料番号3及び試料番号5をフリップフロップ度が強いと感じてしまったためと考えられる。
【0081】
次に、ミクロ画像解析及びマクロ画像解析の結果と人間の主観評価の相関関係について説明する。人間の主観評価とミクロ画像解析手段41が抽出した特徴量との相関値を求めた結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
表8に示す値は、表7に示した2回目の主観評価の評価値とミクロ画像解析結果の特徴量との相関値である。表9は、表8の結果から主観評価の各評価値について正負に関わらず相関値が大きかった順にミクロ画像解析結果の特徴量を順位付けした結果である。
【0084】
【表9】
【0085】
図29(A)〜図29(D)、図30は、表9の結果から主観評価の各評価値について順位が1位であるミクロ画像解析結果の特徴量との相関関係をグラフにしたものである。すなわち、図29(A)はメタリック度とフレークサイズとの相関関係、図29(B)はキラキラ度とフレークサイズとの相関関係、図29(C)は一様度とフレーク表面状態との相関関係、図29(D)はフリップフロップ度とフレーク表面状態との相関関係、図30は粒状度とフレーク表面状態との相関関係を示している。表10はミクロ画像解析結果の特徴量をまとめたものである。
【0086】
【表10】
【0087】
以上の結果から、主観評価のキラキラ度、メタリック度とミクロ画像解析結果との相関性について考察する。表8、表9を見ると、主観評価のキラキラ度及びメタリック度は、ミクロ画像解析結果のフレークサイズ及びフレーク密度と相関関係が強いと言える。図28の主観評価のアンケート結果を見ると、キラキラ度については試料番号2、試料番号4及び試料番号6の評価値が高くなっている。表10のミクロ画像解析結果の特徴量を見ると、フレークサイズについては試料番号6が最も高く、またフレーク密度については試料番号2及び試料番号4も高い。このことから考えると、試料番号6では1つ1つの大きなフレークが強く光り、試料番号2及び試料番号4ではフレークが多数集まって、人間にキラキラした印象を与えるのではないかと考えられる。
【0088】
また、図28の主観評価のアンケート結果を見ると、メタリック度については試料番号7、試料番号2及び試料番号4が高くなっている。試料番号7のptという試料は、他の7つの試料に比べて特殊なもので、クロムメッキのような金属調塗装物である。そのため、他の試料に比べて、メタリック度が高くなったのではないかと考えられる。試料番号2及び試料番号4はキラキラ度が高く、それが金属的という印象に結びついたため、メタリック度が高くなったと考えられる。
【0089】
次に、主観評価の一様度、粒状度とミクロ画像解析結果との相関性について考察する。表8、表9を見ると、主観評価の粒状度及び一様度は、ミクロ画像解析結果のフレーク表面状態及びフレーク密度と相関関係が強いと考えられる。フレーク表面状態の評価値が大きいということは、フレークの配向特性や、フレークの種類などにより、反射光が様々な位相を持ち、塗装物の表面が複雑に光っていると考えることができる。反射光が複雑な様子が「つぶつぶ感」(きらきら感)という印象に結びつき、フレーク表面状態の評価値が大きいほど粒状度が大きくなり、正の相関関係になったのではないかと考えられる。逆に一様度については、反射光が複雑であるがために、一様ではないという印象を与えたため、負の相関関係になったと考えられる。
【0090】
粒状度とフレーク密度との相関値は負の値になっている。フレークの密度が低いと、下地塗装の中にフレークがきらりと光っているような状態になり、フレーク1つ1つの光がより強調される場合がある。そのため、密度が低いほうがより粒状度が強いという印象になり、負の相関関係になったと考えられる。一様度とフレークサイズとの相関値は負になっている。人間の眼の分解能は約20μmと言われており、塗装中のフレークは平均すると約20〜40μmの大きさがあるため、人間はフレークの一粒一粒を無意識的な印象の中で見ている。そのため、フレーク1つ1つが大きくなればなるほど、塗装表面の一様さの印象は小さくなり、負の相関関係になったと考えられる。
【0091】
次に、主観評価のフリップフロップ度とミクロ画像解析結果との相関性について考察する。表8、表9を見ると、フリップフロップ度は、メタリック度、キラキラ度、一様度及び粒状度に比べて、ミクロ画像解析結果との明確な相関関係はみられなかった。その理由としては、フリップフロップ度が多くの原因に影響を受ける特徴量であることが考えられる。つまり、他の主観評価に比べて、フレークサイズやフレーク密度、フレーク浮き沈み、フレーク表面状態などが同時に影響するからと考えられる。また、他の主観評価に比べて、はっきりと評価しにくいものなので、個人差による影響もあると考えられる。
【0092】
次に、ミクロ画像解析結果とマクロ画像解析結果を併用した試料の分類結果について説明する。図25に示したマクロ画像解析結果に基づく試料の分類を、ミクロ画像解析結果を基にさらに細かく分類した結果を図31に示す。グループG1,G2,G3がマクロ画像解析結果に基づく分類で、グループG10,G11,G20,G21,G22がミクロ画像解析結果に基づく分類である。
【0093】
グループG1において、試料番号4に比べて、試料番号6はフレークサイズとフレーク浮き沈みの評価値が高いため、試料番号4と試料番号6を分けて、それぞれグループG10,G11とした。また、グループG1は、メタリック度及びキラキラ度との相関性が強いテキスチャ分類グループになっている。メタリック度の主観評価の順位は、試料番号4が1位で、試料番号6が2位、キラキラ度の主観評価の順位は、試料番号4と試料番号6が共に2位であった。図25の結果でも述べたが、試料番号4と試料番号6の試料は共に強く光るフレークが存在しており、そのためコントラスト値が高くなった。メタリック度とキラキラ度は両方とも試料の光り方に関係した主観評価であるので、この主観評価を考慮しても、グループG1の分類結果は妥当な結果であると言える。
【0094】
グループG2においては、フレークサイズ、フレーク密度及びフレーク浮き沈みの評価値が全て最も小さくなったため、試料番号1の試料をグループG2の中で他の試料と区別した。また、マクロ画像解析結果では、試料番号1のコントラスト値がグループG2の中で最も高い値になっている。その理由は、密度が小さく、フレークがあまり詰まっていない中に、1つのフレークが光っている状態でコントラスト計算の(i−j)の2乗が大きくなったため、グループG2の中では、コントラスト値が最も大きくなったと考えられる。また、試料番号5の試料は、グループG2の中で、最もフレークサイズが大きく、フレーク浮き沈みによる変化が最も大きくなったため、グループG2の中で他の試料と区別した。残りの試料番号3、試料番号8及び試料番号2は、はっきりとした評価値の違いがみられなかったので、同一グループにした。
【0095】
図31に示すように、ミクロ画像解析結果とマクロ画像解析結果を併用することで、メタリック塗装の試料を6グループまで分類することができた。
次に、図31の結果を踏まえて、本実施の形態の画像処理装置4の判別手段43の動作を説明する。判別手段43は、記憶手段40に予め記憶されているデータベースを参照して、評価対象となる試料を判別する(図3ステップS3)。
【0096】
記憶手段40に記憶されているデータベースとしては、ミクロ画像解析手段41の処理結果との比較用の第1のデータベースと、マクロ画像解析手段42の処理結果との比較用の第2のデータベースがある。
第1のデータベースの構造は、表10に示した構造と同様である。すなわち、予めメタリック塗装の代表的な標準的試料を顕微鏡デジタルカメラ2で撮像して、この顕微鏡デジタルカメラ2によって取り込まれたミクロ画像からミクロ画像解析手段41の処理結果を求めておき、このミクロ画像解析手段41の処理結果を判別用の判断基準として第1のデータベースに標準的試料毎に登録しておく。
【0097】
判別手段43は、第1のデータベースに登録されている特徴量と評価対象の試料のミクロ画像に対するミクロ画像解析手段41の処理結果の特徴量とを同種の特徴量毎に比較して、第1のデータベースに登録されている試料の中から比較結果が最も近いものを選択する。特徴量の比較は同種の特徴量毎、すなわちフレークサイズ毎、フレーク密度毎、フレーク浮き沈みの評価値毎、フレーク表面状態の評価値毎に行われるため、特徴量毎の比較結果の多数決によって最も近い標準的試料を選択する。第1のデータベースに登録されているデータ数が豊富なほど判別の精度が高まる。
【0098】
例えば、判別手段43は、ミクロ画像解析手段41で得られたフレーク密度が第1のデータベースに登録された試料αのフレーク密度に近いが、ミクロ画像解析手段41で得られたフレークサイズ、フレーク浮き沈みの評価値及びフレーク表面状態の評価値が第1のデータベースに登録された別の試料βの同種の特徴量に近いといった場合、ミクロ画像解析手段41で解析した評価対象の試料が試料βであると判定する。このとき、判別手段43は、特徴量の比較に際して、第1のデータベースに登録された特徴量を中心値として、ミクロ画像解析手段41の処理結果の特徴量が中心値から所定の誤差範囲内にある場合、値が近いと判定する。中心値からの誤差範囲は特徴量毎に予め定められている。以上のような特徴量の比較によって、評価対象の試料を判別することができる。
【0099】
ただし、ミクロ画像解析手段41の処理結果のみでは試料を十分判別できない場合がある。そこで、判別手段43は、第2のデータベースに予め登録されている試料毎のコントラスト値と評価対象の試料のマクロ画像に対するマクロ画像解析手段42の処理結果のコントラスト値とを比較して、データベースに登録されている試料の中から比較結果が最も近いものを選択する。
第2のデータベースには、予めコントラスト値を試料毎に登録しておけばよい。すなわち、予めメタリック塗装の代表的な標準的試料をデジタルカメラ3で撮像して、このデジタルカメラ3によって取り込まれたマクロ画像からマクロ画像解析手段42の処理結果を求めておき、このマクロ画像解析手段42の処理結果を判別用の判断基準として第2のデータベースに標準的試料毎に登録しておく。なお、デジタルカメラ3として、スキャナを使用してもよい。
【0100】
第1のデータベースの場合と同様に、判別手段43は、第2のデータベースに登録されたコントラスト値を中心値として、マクロ画像解析手段42の処理結果のコントラスト値が中心値から所定の誤差範囲内にある場合、値が近いと判定する。コントラスト値についても中心値からの誤差範囲は予め定められている。
【0101】
判別手段43は、ミクロ画像解析手段41の処理結果に基づく試料の判別結果を優先し、この判別で断定不可能なものやグループ単位の判別しかできないものをマクロ画像解析手段42の処理結果に基づいて判別する。
そして、判別手段43は、試料の判別結果(試料番号や試料名)を表示装置5に表示させる(図3ステップS4)。
【0102】
以上のように、本実施の形態では、標準的試料のミクロ画像から第1の特徴量としてフレークサイズ、フレーク密度、フレーク浮き沈みの評価値、及びフレークの表面状態の評価値を抽出して、この第1の特徴量を第1のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観の適切な数値化を実現することができる。また、本実施の形態では、標準的試料のマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量としてコントラスト値を抽出して、この第2の特徴量を第2のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観のさらに適切な数値化を実現することができる。データベースに登録されている標準的試料数が豊富になるほどメタリック塗装の外観の適切な数値化が可能となる。
【0103】
さらに、本実施の形態では、評価対象の試料のミクロ画像から第1の特徴量としてフレークサイズ、フレーク密度、フレーク浮き沈みの評価値、及びフレークの表面状態の評価値を抽出して、第1のデータベースに登録された第1の特徴量と比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を向上させることができる。また、本実施の形態では、評価対象の試料のマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量としてコントラスト値を抽出して、第2のデータベースに登録された第2の特徴量と比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を更に向上させることができ、第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合でも、試料を判別することができる。
【0104】
なお、本実施の形態の画像処理装置4は、CPU、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータにおいて、本発明のメタリック塗装数値化方法を実現させるためのメタリック塗装評価プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、記録媒体から読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、プログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【0105】
また、本実施の形態が対象とするメタリック塗装のフレークは、金属材料に限るものではなく、金属光沢が得られるものであれば他の材料でもよい。他の材料としては、例えばガラスが考えられる。
また、本実施の形態では、メタリック塗装の光輝感や粒子感の数値化について説明しているが、メタリック塗装の色についても色相や彩度、明度あるいはそれ以外のパラメータを用いて数値化することができる。この色の数値化については、既存の測色手法により数値化できるので、説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、メタリック塗装を評価する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図2の画像処理装置のミクロ画像解析手段の動作を示すフローチャートである。
【図5】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレークサイズ抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍のミクロ画像を示す図である。
【図7】ミクロ画像解析手段のフレークサイズ抽出手段の処理結果の画像を示す図である。
【図8】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレーク密度抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率100倍のミクロ画像を示す図である。
【図10】ミクロ画像解析手段のフレーク密度抽出手段の処理結果の画像を示す図である。
【図11】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレーク浮き沈み抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍の浅焦点ミクロ画像及び深焦点ミクロ画像を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍の浅焦点ミクロ画像及び深焦点ミクロ画像を示す図である。
【図14】ミクロ画像解析手段のフレーク浮き沈み抽出手段によるエッジ検出処理後の画像を示す図である。
【図15】ミクロ画像解析手段のフレーク浮き沈み抽出手段によるエッジ検出処理後の画像を示す図である。
【図16】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレーク表面状態抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像を示す図である。
【図18】図17の画像中における色の画素頻度の分布を示す図である。
【図19】図2の画像処理装置のマクロ画像解析手段の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態で用いるGLCM法を説明するための図である。
【図21】図20の部分画から算出されたGLCMを示す図である。
【図22】本発明の実施の形態で用いる試料のマクロ画像を示す図である。
【図23】マクロ画像解析手段の処理結果を示す図である。
【図24】マクロ画像解析手段の処理結果を示す図である。
【図25】マクロ画像解析手段の処理結果に基づく試料の分類結果を示す図である。
【図26】主観評価のアンケートの概略を示す図である。
【図27】1回目の主観評価の結果を示す図である。
【図28】2回目の主観評価の結果を示す図である。
【図29】主観評価の評価値とミクロ画像解析結果の特徴量との相関関係を示す図である。
【図30】主観評価の評価値とミクロ画像解析結果の特徴量との相関関係を示す図である。
【図31】マクロ画像解析手段とミクロ画像解析手段の処理結果に基づく試料の分類結果を示す図である。
【図32】ソリッド塗装の構造を示す断面図である。
【図33】メタリック塗装の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1…顕微鏡、2…顕微鏡デジタルカメラ、3…デジタルカメラ、4…画像処理装置、5…表示装置、40…記憶手段、41…ミクロ画像解析手段、42…マクロ画像解析手段、43…判別手段、410…フレークサイズ抽出手段、411…フレーク密度抽出手段、412…フレーク浮き沈み抽出手段、413…フレーク表面状態抽出手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック塗装の外観を数値化し、メタリック塗装を客観的に判別するメタリック塗装数値化方法および数値化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車外板塗装においては、塗料に様々な光輝材を混ぜるメタリック塗装が主流になってきている。メタリック塗装とは、図32に示す従来のソリッド塗装に対して、図33に示すようにカラー塗装73中にキラキラと輝いた金属光沢のフレーク(微小片)74を混ぜ込んだ塗装である。メタリック塗装は、従来のソリッド塗装に比べて独特の光輝感や粒子感を生むが、フレークの影響により、色相や彩度、明度で表される単なる「色」で表現することができないため、評価が難しいという問題がある。フレークは金属反射(一定の方向への強い反射)をするため、観察方向が異なると異なった反射の様子を示す。つまり、統計的な粗さなどの考え方でメタリック塗装の強さを表現することはできるが、詳細なメタリック塗装の判別は難しい。
【0003】
従来、メタリック塗装を評価する技術としては、特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置がある。このメタリック塗装面評価装置は、評価対象となるメタリック塗装を撮影し、撮影した画像の解像度を人間の目の解像度に合わせる画像処理を行い、画像処理後の画像から特徴量を抽出して、この特徴量に基づいてメタリック塗装を評価するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−208333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置では、人間の目の解像度に合わせる画像処理を行った後の画像を所定の輝度閾値で二値化して二値化画像を生成し、この二値化画像における高輝度部分について、下記の(a)〜(c)のような特徴量を抽出している。
(a)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさ
(b)高輝度部分の面積
(c)高輝度部分の前記閾値以上の領域における明るさと高輝度部分の面積との積分値
【0006】
しかしながら、上記の(a)〜(c)のような特徴量では、メタリック塗装の外観を数値化するための特徴量として不十分で、メタリック塗装の外観を適切に表現することができないという問題点があった。したがって、特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置では、得られた特徴量を使って同様なメタリック塗装を再現するのは困難である。
【0007】
同様の理由により、特許文献1に開示されたメタリック塗装面評価装置では、メタリック塗装の外観を評価しようとする際に、異なるメタリック塗装を同じものとして判断してしまう可能性があり、メタリック塗装を適切に判別することができないので、現実の様々なメタリック塗装に適用することが難しい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来よりも優れたメタリック塗装の外観、とりわけ光輝感や粒子感の数値化を実現するメタリック塗装数値化方法および数値化装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、メタリック塗装の判別精度を向上させることができるメタリック塗装数値化方法および数値化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のメタリック塗装数値化方法は、標準的試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の標準的試料撮像手順と、この第1の標準的試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する標準的試料のミクロ画像解析手順と、前記第1の特徴量を第1のデータベースに登録する第1のデータベース登録手順とを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例は、さらに、評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の評価対象試料撮像手順と、この第1の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する評価対象試料のミクロ画像解析手順と、前記第1のデータベースに登録された第1の特徴量と前記評価対象試料のミクロ画像解析手順によって抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する判別手順とを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例は、さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の標準的試料撮像手順と、この第2の標準的試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する標準的試料のマクロ画像解析手順と、前記第2の特徴量を第2のデータベースに登録する第2のデータベース登録手順とを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例は、さらに、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の評価対象試料撮像手順と、この第2の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する評価対象試料のマクロ画像解析手順とを備え、前記判別手順は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに登録された第2の特徴量と前記評価対象試料のマクロ画像解析手順によって抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する手順を含むものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例において、前記第1の特徴量は、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、前記フレークの密度、前記フレークの浮き沈みの度合い、及び前記フレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つである。
また、本発明のメタリック塗装数値化方法の1構成例において、前記第2の特徴量は、コントラスト値である。
【0010】
また、本発明のメタリック塗装数値化装置は、標準的試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡と、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の撮像手段と、この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段と、前記第1の特徴量を記憶する第1のデータベースとを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化装置の1構成例は、さらに、評価対象の試料を判別する判別手段を備え、前記顕微鏡は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大し、前記第1の撮像手段は、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像し、前記ミクロ画像解析手段は、この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出し、前記判別手段は、前記第1のデータベースに記憶された第1の特徴量と前記評価対象の試料のミクロ画像から抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別するものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化装置の1構成例は、さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像する第2の撮像手段と、この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析手段と、前記第2の特徴量を記憶する第2のデータベースとを備えるものである。
また、本発明のメタリック塗装数値化装置の1構成例において、前記第2の撮像手段は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像し、前記マクロ画像解析手段は、この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出し、前記判別手段は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに記憶された第2の特徴量と前記評価対象の試料のマクロ画像から抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、標準的試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、顕微鏡によって拡大されたミクロ画像を撮像し、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出して、この第1の特徴量を第1のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観の適切な数値化を実現することができる。その結果、本発明では、例えば自動車や自動二輪などのデザイン開発に際してメタリック塗装を指定する際に、所望の外観のメタリック塗装を数値で指定することができる。そして、塗料メーカは、その数値から所望のメタリック塗装を調合、再現することも可能となる。また、解像度の優れた表示装置や印刷装置を使用すれば、メタリック塗装をパソコン上でデジタル合成して、それら装置に再現することも可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、顕微鏡によって拡大されたミクロ画像を撮像し、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出して、この第1の特徴量と第1のデータベースに登録された第1の特徴量とを比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を向上させることができる。その結果、本発明では、メタリック塗装を開発する際に人間にとって同じに見えるメタリック塗装を従来よりも安いコストで製造可能にすることができ、デザイン開発に際して異なる人間がメタリック塗装を評価するときの同一の判断基準を提供することができ、製造ラインにおけるメタリック塗装の判定技術を標準化することができる、といった効果が期待できる。
【0013】
また、本発明によれば、標準的試料のメタリック塗装面をより低い倍率で撮像したマクロ画像を取り込み、マクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出して、この第2の特徴量を第2のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観のさらに適切な数値化を実現することができる。
【0014】
また、本発明では、評価対象の試料のメタリック塗装面をより低い倍率で撮像したマクロ画像を取り込み、マクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出し、この第2の特徴量と第2のデータベースに登録された第2の特徴量とを比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を更に向上させることができ、第1の特徴量に基づく判別が不可能な場合でも、試料を判別することができる。
【0015】
また、本発明では、第1の特徴量として、フレークのサイズ、フレークの密度、フレークの浮き沈みの度合いを示す各評価値、及びフレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つを採用することにより、メタリック塗装面の外観の適切な数値化を実現することができる。
【0016】
また、本発明では、第2の特徴量としてコントラスト値を採用することにより、フレークによる光の乱雑性を感知しやすくすることができ、標準的試料の外観の適切な数値化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置(メタリック塗装評価装置)の構成を示すブロック図である。
メタリック塗装数値化装置は、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡1と、この顕微鏡1によって拡大された画像を撮像する第1の撮像手段となる顕微鏡デジタルカメラ2と、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2による倍率よりも低い倍率でより広大な領域にわたって撮像する第2の撮像手段となるデジタルカメラ3と、顕微鏡デジタルカメラ2によって取り込まれた画像とデジタルカメラ3によって取り込まれた画像とを処理して、標準的試料又は評価対象の試料の外観を数値化し、評価対象の試料を判別する画像処理装置4と、画像処理装置4の判別結果を表示する表示装置5とを有する。なお、デジタルカメラ3として、スキャナを使用してもよい。
【0018】
図2は画像処理装置4の構成例を示すブロック図である。画像処理装置4は、装置のプログラムと顕微鏡デジタルカメラ2及びデジタルカメラ3によって取り込まれた画像と標準的試料の特徴量のデータベースとを記憶する記憶手段40と、顕微鏡デジタルカメラ2によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段41と、デジタルカメラ3によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析手段42と、評価対象の試料を判別する判別手段43とを有する。
【0019】
ミクロ画像解析手段41は、第1の特徴量としてフレークのサイズを抽出するフレークサイズ抽出手段410と、第1の特徴量としてフレークの密度を抽出するフレーク密度抽出手段411と、第1の特徴量としてフレークの浮き沈みの評価値を抽出するフレーク浮き沈み抽出手段412と、第1の特徴量としてフレークの表面状態の評価値を抽出するフレーク表面状態抽出手段413とを有する。
【0020】
図3は本実施の形態のメタリック塗装数値化装置の動作を示すフローチャートである。まず、メタリック塗装数値化装置は、標準的試料又は評価対象の試料のメタリック塗装面の画像を取り込む(図3ステップS1)。
本実施の形態では、画像取込処理として、顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2とを用いてメタリック塗装面の微小領域を拡大撮影してミクロ画像として取り込む処理と、デジタルカメラ3を用いてメタリック塗装面のより広大な領域を撮影してマクロ画像として取り込む処理の2つを行う。
【0021】
顕微鏡1は、試料のメタリック塗装面を拡大し、顕微鏡デジタルカメラ2は、顕微鏡1によって拡大された画像を撮影して、ミクロ画像データを画像処理装置4に出力する。本実施の形態では、顕微鏡1の拡大倍率として100倍と1000倍を用いる。顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2とは、100倍のミクロ画像と1000倍のミクロ画像の2枚の画像を取り込む。また、倍率1000倍のミクロ画像については、同じ場所で手前のフレークに焦点を合わせた浅焦点ミクロ画像と、奥のフレークに焦点を合わせた深焦点ミクロ画像の2枚を別に取り込んでおく。顕微鏡1の焦点深度は倍率1000倍の場合、0.67μmである。
【0022】
以上の顕微鏡画像は通常の透過照明画像であるが、さらに、顕微鏡1は、照明光学系と結像光学系(顕微鏡)の両方に、偏光子とノマルスキープリズムを挿入することにより、ノマルスキー透過型微分干渉顕微鏡として機能する。これにより、顕微鏡1と顕微鏡デジタルカメラ2とは、例えば倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像を取り込むことができる。ノマルスキー透過型微分干渉顕微鏡で試料を観察すると、無染色試料や、生きた細胞の内部構造や微細な凹凸を、黄色、紫、青などの干渉色のもとで立体的に観察することができる。
【0023】
一方、デジタルカメラ3は、試料のメタリック塗装面を撮影して、マクロ画像データを画像処理装置4に出力する。
画像処理装置4の記憶手段40は、顕微鏡デジタルカメラ2から出力されたミクロ画像データとデジタルカメラ3から出力されたマクロ画像データを記憶する。以上で、画像取込処理が終了する。
【0024】
次に、画像処理装置4は、メタリック塗装面の画像から特徴量を抽出する画像解析処理を行う(図3ステップS2)。
本実施の形態では、画像解析処理として、ミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析と、マクロ画像から第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析を行う。
【0025】
まず、ステップS2の画像解析処理のうちのミクロ画像解析から説明する。図4は画像処理装置4のミクロ画像解析手段41の動作を示すフローチャートである。
図2におけるミクロ画像解析手段41のフレークサイズ抽出手段410は、ミクロ画像からフレーク1個のサイズ(正確にはフレーク1個に近いと考えられる領域の画素数)を特徴量として抽出する(図4ステップS10)。図5はフレークサイズ抽出手段410の動作を示すフローチャートである。
【0026】
最初に、フレークサイズ抽出手段410は、記憶手段40に記憶されている倍率1000倍のミクロ画像からメディアン(median)フィルタを用いてノイズを除去し(図5ステップS100)、ノイズ除去後のミクロ画像を複製して、ノイズ除去後のミクロ画像を2枚作成する(ステップS101)。続いて、フレークサイズ抽出手段410は、ステップS101で作成した2枚のミクロ画像のうちの1枚をフルカラー(1677万7216色)から8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS102)、変換後の画像の所定の閾値以上の画素に対してラベリング処理を行う(ステップS103)。
【0027】
ラベリング処理は、閾値以上の画素のうち、連結した画素の集まりを1つの連結成分とみなし、同一の連結成分内の各画素に同一のラベル(番号又は名前)を与えることにより、連結成分(ラベリング領域)を抽出する処理である。
また、フレークサイズ抽出手段410は、ステップS101で作成した2枚のミクロ画像のうちの他の1枚からエッジを検出する(ステップS104)。ここでは、8ビットの画像に対してエッジ検出閾値として例えば75を設定し、ソーベル(Sobel)フィルタを用いてエッジを検出した。
【0028】
次に、フレークサイズ抽出手段410は、ステップS103で検出されたラベリング領域の中から、ステップS104のエッジ検出結果に基づいてエッジの輝度値が上記のエッジ検出閾値以上であるラベリング領域を検出し、さらに検出したラベリング領域の中から領域画素数が例えば1000画素以上の領域を検出する(ステップS105)。
フレークサイズ抽出手段410は、倍率1000倍のミクロ画像から複数箇所(例えば20箇所)の領域をランダムに選択し、各選択領域についてステップS100〜S105の処理をそれぞれ行う。
【0029】
フレークサイズ抽出手段410は、20箇所の選択領域についてそれぞれステップS100〜S105の処理が終了した後(ステップS106においてYES)、各選択領域からステップS105の処理で検出したラベリング領域の画素数の平均値をフレークサイズとする(ステップS107)。以上で、フレークサイズ抽出手段410の処理が終了する。
【0030】
ここで、フレークサイズ抽出手段410の処理の妥当性について検証する。本実施の形態では、評価対象として表1に示すような8個の試料を用いた。この試料は長方形状の鋼板にメタリック塗装を施したもので、表1の試料名は出願人におけるメタリック色の社内呼称である。
【0031】
【表1】
【0032】
図6(A)〜図6(H)に8個の試料の倍率1000倍のミクロ画像を示し、図7(A)〜図7(H)にフレークサイズ抽出手段410の処理結果の画像を示す。図7(A)〜図7(H)中の白地の部分が検出されたフレークの領域である。表2に各試料のフレークサイズ(画素数)を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
図6(A)〜図6(H)に示す処理前の画像と図7(A)〜図7(H)に示す処理後の画像とを比較すると、試料番号1、試料番号3、試料番号5、試料番号6及び試料番号8の試料については、多少のフレークの重なりや、フレークが欠けている領域もあるが、ほぼフレーク一つの大きさといえる領域を検出できていることが分かる。その理由は、これらの試料ではフレークのエッジを検出しやすいためであると考えられる。図6(F)で試料番号6の試料の画像を見ると、黒い下地の色がはっきり見えるわけではないが、フレークが大きく、フレーク1個のエッジがはっきりしているため、検出できたものと考えられる。
【0035】
また、表2のフレークサイズを見てみると、試料番号6のフレークサイズが大きく、試料番号1のフレークサイズが小さくなっている。このことは、図6(F)、図6(A)の画像から考えても妥当な結果であると言える。また、試料番号2、試料番号4及び試料番号7の試料では、フレークの密度が高すぎるために、明らかにフレーク1個とは考えられない領域が検出されており、フレークサイズの値としては不正確であると考えられる。表2の結果から、少なくとも一部の試料については、妥当なフレークサイズを抽出できていることが分かる。
【0036】
次に、ミクロ画像解析手段41のフレーク密度抽出手段411は、ミクロ画像からフレーク密度を特徴量として抽出する(図4ステップS11)。図8はフレーク密度抽出手段411の動作を示すフローチャートである。
最初に、フレーク密度抽出手段411は、記憶手段40に記憶されている倍率100倍のミクロ画像をフルカラーから8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS200)、変換後の画像から所定の閾値(例えば75)以上の画素を検出する(ステップS201)。
【0037】
そして、フレーク密度抽出手段411は、ステップS200で変換した画像の全画素数に対してステップS201で検出した画素の数が占める割合をフレーク密度とする(ステップS202)。以上で、フレーク密度抽出手段411の処理が終了する。なお、ステップS202で求める割合はフレークと考えられる領域の割合であるので、厳密な意味では密度とは言えないが、本実施の形態では便宜上、密度の評価値とした。
【0038】
次に、フレーク密度抽出手段411の処理の妥当性について検証する。図9(A)〜図9(H)に表1の8個の試料の倍率100倍のミクロ画像を示し、図10(A)〜図10(H)にフレーク密度抽出手段411の処理結果の画像を示す。図10(A)〜図10(H)中の白地の部分が検出されたフレークの領域である。表3に各試料のフレーク密度を示す。フレーク密度の単位は%である。
【0039】
【表3】
【0040】
図9(A)〜図9(H)のミクロ画像では、試料番号2、試料番号4及び試料番号6のフレーク密度が高いと感じる。これに対して、表3においても、試料番号2、試料番号4及び試料番号6のフレーク密度が高くなっており、妥当な結果であるといえる。ただし、試料番号6は次に述べるフレークの浮き沈みが激しく、奥にあるフレークが検出されにくいために、少しだけ密度が低く評価されてしまった。表3の結果から、少なくとも一部の試料については、妥当なフレーク密度を抽出できていることが分かる。
【0041】
次に、ミクロ画像解析手段41のフレーク浮き沈み抽出手段412は、ミクロ画像からフレークの浮き沈みの評価値を特徴量として抽出する(図4ステップS12)。顕微鏡で観察すると、メタリック塗装中に、浅く浮いているフレークと深く沈んでいるフレークを観察することができる。このようなフレークの浮き沈みの度合いを特徴量として抽出する。図11はフレーク浮き沈み抽出手段412の動作を示すフローチャートである。
最初に、フレーク浮き沈み抽出手段412は、記憶手段40に記憶されている倍率1000倍の浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像の2枚の画像から、ソーベルフィルタを用いてそれぞれエッジを検出する(図11ステップS300)。
【0042】
ソーベルフィルタによって検出したエッジの強さは、0〜255の256段階で表されている。そこで、フレーク浮き沈み抽出手段412は、エッジの強さの各段階毎に、エッジを構成している画素を数える(ステップS301)。ただし、エッジの強さが0(すなわち、エッジ無し)の場合は数えない。フレーク浮き沈み抽出手段412は、このような画素数の計測を浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像のそれぞれについて行う。
【0043】
続いて、フレーク浮き沈み抽出手段412は、浅焦点ミクロ画像のエッジの画素数と深焦点ミクロ画像のエッジの画素数との差の絶対値をエッジの強さの各段階毎に求めた後に、差の絶対値の総和を求める(ステップS302)。
フレーク浮き沈み抽出手段412は、浅焦点ミクロ画像から複数箇所(例えば5箇所)の領域をランダムに選択すると共に、この選択領域と同じ位置の領域を深焦点ミクロ画像から複数箇所選択し、浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像の同じ位置の選択領域毎にステップS300〜S302の処理を行う。
【0044】
フレーク浮き沈み抽出手段412は、5箇所の選択領域についてそれぞれステップS300〜S302の処理が終了した後に(ステップS303においてYES)、各選択領域からステップS302で求めた画素数の差の絶対値の平均値をフレークの浮き沈みの評価値とする(ステップS304)。以上で、フレーク浮き沈み抽出手段412の処理が終了する。
【0045】
次に、フレーク浮き沈み抽出手段412の処理の妥当性について検証する。図12(A)、図12(C)、図12(E)、図12(G)、図13(A)、図13(C)、図13(E)、図13(G)に試料番号1〜8の試料の浅焦点ミクロ画像を示し、図12(B)、図12(D)、図12(F)、図12(H)、図13(B)、図13(D)、図13(F)、図13(H)に試料番号1〜8の試料の深焦点ミクロ画像を示す。また、図14(A)、図14(C)、図14(E)、図14(G)、図15(A)、図15(C)、図15(E)、図15(G)に浅焦点ミクロ画像に対するエッジ検出処理後の画像を示し、図14(B)、図14(D)、図14(F)、図14(H)、図15(B)、図15(D)、図15(F)、図15(H)に深焦点ミクロ画像に対するエッジ検出処理後の画像を示す。図14(A)〜図14(H)及び図15(A)〜図15(H)の白い部分が検出されたエッジである。表4に各試料のフレークの浮き沈みの評価値を示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表4では、試料番号5、試料番号6及び試料番号8の試料の評価値が大きくなった。これらの試料の原画像を見ると、浅焦点ミクロ画像と深焦点ミクロ画像の両方共にはっきりとしたエッジが検出され、フレークの浮き沈みの度合いが大きくなったものと考えられる。試料番号2もフレークの浮き沈みが大きいが、フレークの浮き沈みによるエッジの変化に加えて、試料番号2はフレーク密度が高く、フレークの浮き沈みによる変化以外のエッジの影響が大きくなり、表4の値が高くなったと考えられる。
【0048】
顕微鏡1の焦点深度は0.67μmである。つまり、0.67μm以上の深さの違いがあると、同時に焦点を合わすことはできないことになる。顕微鏡1の焦点をフレークの1個に完全に合わせることができるということは、フレークが深さ0.67μmの範囲でベース塗装面に対して平行であると考えられる。この場合は、エッジが強く出る。逆に、浅焦点ミクロ画像で焦点を合わせることができないフレークは、手前のフレークから少なくとも0.67μm以上奥にあるということになり、エッジは強く出ない。表4の値は、そのエッジの違いを数値化したもので、フレークの浮き沈みの度合いを表していると言える。表4の結果から、少なくとも一部の試料については、妥当なフレークの浮き沈みを抽出できていることが分かる。
【0049】
次に、ミクロ画像解析手段41のフレーク表面状態抽出手段413は、ノマルスキー微分干渉画像からフレークの表面状態の評価値を特徴量として抽出する(図4ステップS13)。ノマルスキー微分干渉観察により撮影された画像を処理することにより、フレークの配向特性や反射特性による各試料の表面状態を評価する。図16はフレーク表面状態抽出手段413の動作を示すフローチャートである。
【0050】
最初に、フレーク表面状態抽出手段413は、記憶手段40に記憶されている倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像をフルカラーから8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS400)、変換後の画像から所定の閾値(例えば100)以下の画素を検出し(ステップS401)、フルカラーのノマルスキー微分干渉画像からステップS401で検出した画素と同じ位置の画素を除去する(ステップS402)。こうして、メタリック塗装の下地となっている色を除去することができる。
【0051】
続いて、フレーク表面状態抽出手段413は、ステップS402の処理後のノマルスキー微分干渉画像をフルカラーからWebセーフカラー(216色)へ減色する(ステップS403)。フレーク表面状態抽出手段413は、減色後の画像をRGB表色系からCIE(Commission Internationale de l'Eclairage)表色系に変換し(ステップS404)、変換後の画像の216色に対してx値(色相値)の小さいものから順に1〜216の番号を付ける(ステップS405)。
【0052】
次に、フレーク表面状態抽出手段413は、ステップS404で変換した画像において1〜216までの番号の色毎に画素の頻度を数える(ステップS406)。そして、フレーク表面状態抽出手段413は、1〜216までの番号の各色について画像中における画素の頻度分布を変えずに、画素数の総和を規定値(例えば27736画素)にする処理を行う(ステップS407)。この規定値は、予め定められた値でもよいし、複数の試料を比較する場合には、複数の試料の中で画素数の総和が最大のものを選び、この画素数の総和を規定値としてもよい。画素数の総和を規定値にするには、規定値をステップS407で求めた画素数の総和で割り、この割り算の結果をステップS406で求めた色毎の画素の頻度に乗算すればよい。
【0053】
フレーク表面状態抽出手段413は、ステップS407の処理後の画素の頻度分布において所定値(例えば1000画素)以上の画素数となった色の数を、フレーク表面状態の評価値の候補値とする(ステップS408)。
フレーク表面状態抽出手段413は、倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像から複数箇所(例えば5箇所)の領域をランダムに選択し、各選択領域についてステップS400〜S408の処理をそれぞれ行う。
【0054】
フレーク表面状態抽出手段413は、5箇所の選択領域についてそれぞれステップS400〜S408の処理が終了した後に(ステップS409においてYES)、各選択領域からステップS408で求めた評価値の各候補の平均値を最終的なフレーク表面状態の評価値とする(ステップS410)。以上で、フレーク表面状態抽出手段413の処理が終了する。
【0055】
次に、フレーク表面状態抽出手段413の処理の妥当性について検証する。図17(A)〜図17(H)に表1の8個の試料の倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像を示し、図18(A)〜図18(H)に図17(A)〜図17(H)の画像中における色の画素頻度の分布を示す。表5に各試料のフレーク表面状態の評価値を示す。
【0056】
【表5】
【0057】
表5を見ると、試料番号1と試料番号3の評価値が高くなった。図17(A)、図17(C)に示す試料番号1と試料番号3の画像を見ると、比較的密度が低く、様々な方向のフレークや、奥の方のフレークまで観察しやすくなっている。そのため、様々な位相の光が観察され、ノマルスキー微分干渉観察を行うと様々な色が観察される。その結果、評価値の値が高くなったと考えられる。試料番号7の試料はフレークの向きや、奥行きがほとんど一定であり、図18(G)のように少ない種類の色が高い頻度で出現している状態(すなわち、反射光の位相がそろっている状態)のために、評価値は小さくなった。
【0058】
試料番号5と試料番号8の試料も密度が低いが、試料番号1、試料番号3の試料に比べて評価値は小さくなっている。図17(A)、図17(C)、図17(E)、図17(H)を見ると、試料番号1及び試料番号3と比べて、試料番号5及び試料番号8はノマルスキー微分干渉観察を行った際の、フレーク1個あたりに観察される色が多くなっていて、フレーク1個の中で位相が揃いにくくなっている。そのため、1000画素以上同じ色が検出されにくくなり、評価値が下がったと考えられる。フレークの中で位相が揃いにくくなった原因として、フレークの種類が違うということが考えられる。ノマルスキー微分干渉観察を行わない顕微鏡画像をみると、試料番号5や試料番号8のフレークは表面が凹凸な印象を受ける。このように、フレーク表面状態の評価値は、フレークの種類による影響を受けていると考えられる。
【0059】
次に、ステップS2の画像解析処理のうちのマクロ画像解析について説明する。図19は画像処理装置4のマクロ画像解析手段42の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態では、マクロ画像から第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析として、GLCM(Gray Level Co-occurrence Matrix)法を用いたテキスチャ解析を行う。なお、以下の説明では単に「GLCM」と表記する場合は行列を指し、「GLCM法」と表記する場合は手法全体のことを指すものとする。
【0060】
最初に、マクロ画像解析手段42は、記憶手段40に記憶されているマクロ画像をフルカラーから8ビット(0〜255)のグレイレベルに変換し(ステップS500)、変換後の画像から所定のサイズ(本実施の形態では16画素×16画素)の部分画を抜き出す(ステップS501)。さらに、マクロ画像解析手段42は、図20(A)に示すように部分画の階調数を落とす(ステップS502)。図20(A)の例では、16画素×16画素の部分画で、0から3の4階調で表されたグレイレベルを持つ。
【0061】
続いて、マクロ画像解析手段42は、図20(A)の部分画についてGLCMを算出する(ステップS503)。GLCMの要素は、部分画内の画素間距離dと図20(B)に示す方位θで定まる2つの画素が持つグレイレベルを、図20(C)に示すように部分画内の行と列に対応付けて、その出現頻度を部分画全体について求めたものである。GLCMの行と列はそれぞれグレイレベルに対応するので、本実施の形態の場合、GLCMは4次の正方行列になる。ここでは、4方位(θ=0°、45°、90°、135°)の隣接画素について考える。
【0062】
したがって、図21(A)〜図21(D)に示すように、GLCMは4つ求めることができる。具体的に説明すると、部分画内において、距離が1で、かつθ=0°方向に並ぶ隣接画素間のうちグレイベルが「0」から「1」に変化するのは合計2回であるので、0°方位のGLCMの(0,1)要素は2となる。
【0063】
次に、マクロ画像解析手段42は、ステップS503で算出したGLCMからテキスチャ特徴量を算出する(ステップS504)。まず、マクロ画像解析手段42は、以下の式(1)により確率Pδ(i,j,δ)を計算する。
【0064】
【数1】
【0065】
式(2)において、iはGLCM中の列番号、jはGLCM中の行番号、δは隣接画素間の変位で、図21(A)の方位θ=0°の場合はδ=(1,0)、図21(B)の方位θ=45°の場合はδ=(1,1)、図21(C)の方位θ=90°の場合はδ=(0,1)、図21(D)の方位θ=135°の場合はδ=(1,0)である。また、P(i,j,δ)は変位δのGLCM中のj行i列の要素の値である。マクロ画像解析手段42は、式(1)のような確率化を方位毎に行う。
そして、マクロ画像解析手段42は、以下の式(2)により特徴量を算出する。
【0066】
【数2】
【0067】
マクロ画像解析の第2の特徴量としては、部分画のグレイレベルの一様性を表すASM(Angular SecondMoment)、部分画のグレイレベルの変化の激しさを表すコントラスト(Contrast)、部分画内での方向性の強さを表す相関係数(Correlation)などが挙げられるが、本実施の形態では、メタリック塗装の画像を解析するのにフレークによる光の乱雑性を感知しやすいという理由で、第2の特徴量としてコントラストを抽出した。マクロ画像解析手段42は、式(2)のような特徴量の算出を方位毎に行う。これで、ステップS504の処理が終了する。
【0068】
マクロ画像解析手段42は、マクロ画像から複数箇所(例えば3箇所)の領域をランダムに選択し、各選択領域についてステップS500〜S504の処理をそれぞれ行う。
マクロ画像解析手段42は、3箇所の選択領域についてそれぞれステップS500〜S504の処理が終了した後(ステップS505においてYES)、各選択領域からステップS504の処理で算出した特徴量の平均値を最終的な特徴量とする(ステップS506)。以上で、マクロ画像解析手段42の処理が終了する。
【0069】
次に、マクロ画像解析手段42の処理の妥当性について検証する。図22(A)〜図22(H)に表1の8個の試料のマクロ画像を示し、図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)にマクロ画像解析手段42の処理結果を示す。本実施の形態では、隣接画素間距離dを1画素、5画素、10画素、15画素の4種類とし、d=1、5、10、15画素の場合の処理結果をそれぞれ図23(A)、図23(B)、図24(A)、図24(B)に示す。
【0070】
なお、計算されたコントラスト値に方位性は見られなかったので、図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)では方位θ=0°の場合のみ記載している。また、図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)の例では、1個の試料について図19の処理を別の場所で複数回行った。図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)の横軸は各回のデータを示している。
【0071】
図23(A)〜図23(B)、図24(A)〜図24(B)に示すコントラストの値から、図25に示すように試料番号1〜8の8個の試料を3つのグループに分類することができた。分別グループとしては、試料番号4と試料番号6のグループG1、試料番号1と試料番号2と試料番号3と試料番号5と試料番号8のグループG2、試料番号7のみのグループG3となった。これらのグループG1,G2,G3の例として、図22(F)の試料番号6、図22(B)の試料番号2、図22(G)の試料番号7のマクロ画像を見比べてみると、大きく異なった画像であり、テキスチャ解析を用いたことで、これらの違いを分類できたことが分かる。
【0072】
GLCM法の計算パラメータについては、部分画16画素×16画素、隣接画素間距離d=15の場合が、メタリック塗装の画像を分類するという点において他のパラメータの場合より良好であった。デジタルカメラ3で4800dpiで取り込んだ場合、部分画の大きさ16画素は実際のスケールでは、約80μmに相当する。フレークの大きさは平均すると、20〜40μmであるので、部分画内にフレーク1個が十分に入る。特徴量値コントラストの計算過程では、式(2)に示すようにグレイレベルの差(i−j)の2乗の乗算が行われる。部分画内にフレーク1個が十分に入る場合の方が、フレークから下地塗装、明るいフレークから暗いフレークへ変化するときのグレイレベルの差をより捉えやすくなり、フレークによる画像の乱雑性を捉えることができたと考えられる。そのため、分類しやすい結果になったと考えられる。
【0073】
図25に示したグループの内容を考えると、試料番号4と試料番号6のグループG1は両方とも画像の中で、フレークが強く光っている部分が多く存在し、下地の低いグレイレベルの中に、グレイレベルが高いフレークが多数存在することにより、コントラストの計算における(i−j)の2乗の値が大きくなり、コントラストの値が高くなったと考えられる。試料番号2の試料も明るいフレークは存在しているが、試料のフレークの密度が高く、全体的に明るいため、(i−j)の値が試料番号4及び試料番号6ほどには高くならないために、試料番号4及び試料番号6よりもコントラストの値が小さくなったと考えられる。試料番号7の試料は、全体的に暗く、明るく光るフレークが存在していないことから、(i−j)の2乗の値が小さくなるため、コントラストの値が低くなったと考えられる。
【0074】
次に、画像処理装置4の判別手段43の動作を説明する前に、人間がメタリック塗装の試料をどのように見ているか、「メタリック度」、「フリップフロップ度」、「一様度」、「粒状度」などの主観評価基準を設けて、アンケート形式でメタリック塗装を主観評価した結果を説明する。
【0075】
ここでは、合計2回主観評価を行った。1回目の主観評価では、16名の人間が表1の8個の試料の主観評価を行った。この1回目の主観評価では、メタリック度を金属感(キラキラした感じ)の度合い、フリップフロップ度(偏光性)を見る角度によって色が違って見える度合い、一様度をサンプルの一様性、粒状度を粒(アルミフレーク)が見える度合いと定義し、それぞれの主観評価基準について5段階評価した。5段階の評価値は、とても弱いを1、弱いを2、中程度を3、強いを4、とても強いを5とした。
【0076】
2回目の主観評価では、ミクロ的解析を考慮し、的確に主観評価の基準を表現できるように主観評価基準の定義を修正した上で、5名の人間が主観評価を行った。2回目の主観評価の概略を図26に示す。1回目の主観評価の結果を表6に示し、2回目の主観評価の結果を表7に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
表6、表7の値は、1〜5の各評価値にそれぞれの度数(集計数)をかけた値を加算した総和である。表6の結果をグラフにしたものを図27に示し、表7の結果をグラフにしたものを図28に示す。
【0080】
メタリック塗装の試料と主観評価との相関性については後述する。図27、図28を見ると、メタリック度、一様度、粒状度については、試料間の主観評価の強弱は、ほぼ同じであると言える(すなわち、グラフの形状が似ている)。フリップフロップ度は、質問内容を変えた影響で、1回目と2回目で主観評価の強弱が違う結果になった。その理由は、1回目の主観評価の質問形式として、「フリップフロップ度とは、見る角度によって色が変わる度合い」としたために、下地色が濃い試料番号1、試料番号3及び試料番号5をフリップフロップ度が強いと感じてしまったためと考えられる。
【0081】
次に、ミクロ画像解析及びマクロ画像解析の結果と人間の主観評価の相関関係について説明する。人間の主観評価とミクロ画像解析手段41が抽出した特徴量との相関値を求めた結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
表8に示す値は、表7に示した2回目の主観評価の評価値とミクロ画像解析結果の特徴量との相関値である。表9は、表8の結果から主観評価の各評価値について正負に関わらず相関値が大きかった順にミクロ画像解析結果の特徴量を順位付けした結果である。
【0084】
【表9】
【0085】
図29(A)〜図29(D)、図30は、表9の結果から主観評価の各評価値について順位が1位であるミクロ画像解析結果の特徴量との相関関係をグラフにしたものである。すなわち、図29(A)はメタリック度とフレークサイズとの相関関係、図29(B)はキラキラ度とフレークサイズとの相関関係、図29(C)は一様度とフレーク表面状態との相関関係、図29(D)はフリップフロップ度とフレーク表面状態との相関関係、図30は粒状度とフレーク表面状態との相関関係を示している。表10はミクロ画像解析結果の特徴量をまとめたものである。
【0086】
【表10】
【0087】
以上の結果から、主観評価のキラキラ度、メタリック度とミクロ画像解析結果との相関性について考察する。表8、表9を見ると、主観評価のキラキラ度及びメタリック度は、ミクロ画像解析結果のフレークサイズ及びフレーク密度と相関関係が強いと言える。図28の主観評価のアンケート結果を見ると、キラキラ度については試料番号2、試料番号4及び試料番号6の評価値が高くなっている。表10のミクロ画像解析結果の特徴量を見ると、フレークサイズについては試料番号6が最も高く、またフレーク密度については試料番号2及び試料番号4も高い。このことから考えると、試料番号6では1つ1つの大きなフレークが強く光り、試料番号2及び試料番号4ではフレークが多数集まって、人間にキラキラした印象を与えるのではないかと考えられる。
【0088】
また、図28の主観評価のアンケート結果を見ると、メタリック度については試料番号7、試料番号2及び試料番号4が高くなっている。試料番号7のptという試料は、他の7つの試料に比べて特殊なもので、クロムメッキのような金属調塗装物である。そのため、他の試料に比べて、メタリック度が高くなったのではないかと考えられる。試料番号2及び試料番号4はキラキラ度が高く、それが金属的という印象に結びついたため、メタリック度が高くなったと考えられる。
【0089】
次に、主観評価の一様度、粒状度とミクロ画像解析結果との相関性について考察する。表8、表9を見ると、主観評価の粒状度及び一様度は、ミクロ画像解析結果のフレーク表面状態及びフレーク密度と相関関係が強いと考えられる。フレーク表面状態の評価値が大きいということは、フレークの配向特性や、フレークの種類などにより、反射光が様々な位相を持ち、塗装物の表面が複雑に光っていると考えることができる。反射光が複雑な様子が「つぶつぶ感」(きらきら感)という印象に結びつき、フレーク表面状態の評価値が大きいほど粒状度が大きくなり、正の相関関係になったのではないかと考えられる。逆に一様度については、反射光が複雑であるがために、一様ではないという印象を与えたため、負の相関関係になったと考えられる。
【0090】
粒状度とフレーク密度との相関値は負の値になっている。フレークの密度が低いと、下地塗装の中にフレークがきらりと光っているような状態になり、フレーク1つ1つの光がより強調される場合がある。そのため、密度が低いほうがより粒状度が強いという印象になり、負の相関関係になったと考えられる。一様度とフレークサイズとの相関値は負になっている。人間の眼の分解能は約20μmと言われており、塗装中のフレークは平均すると約20〜40μmの大きさがあるため、人間はフレークの一粒一粒を無意識的な印象の中で見ている。そのため、フレーク1つ1つが大きくなればなるほど、塗装表面の一様さの印象は小さくなり、負の相関関係になったと考えられる。
【0091】
次に、主観評価のフリップフロップ度とミクロ画像解析結果との相関性について考察する。表8、表9を見ると、フリップフロップ度は、メタリック度、キラキラ度、一様度及び粒状度に比べて、ミクロ画像解析結果との明確な相関関係はみられなかった。その理由としては、フリップフロップ度が多くの原因に影響を受ける特徴量であることが考えられる。つまり、他の主観評価に比べて、フレークサイズやフレーク密度、フレーク浮き沈み、フレーク表面状態などが同時に影響するからと考えられる。また、他の主観評価に比べて、はっきりと評価しにくいものなので、個人差による影響もあると考えられる。
【0092】
次に、ミクロ画像解析結果とマクロ画像解析結果を併用した試料の分類結果について説明する。図25に示したマクロ画像解析結果に基づく試料の分類を、ミクロ画像解析結果を基にさらに細かく分類した結果を図31に示す。グループG1,G2,G3がマクロ画像解析結果に基づく分類で、グループG10,G11,G20,G21,G22がミクロ画像解析結果に基づく分類である。
【0093】
グループG1において、試料番号4に比べて、試料番号6はフレークサイズとフレーク浮き沈みの評価値が高いため、試料番号4と試料番号6を分けて、それぞれグループG10,G11とした。また、グループG1は、メタリック度及びキラキラ度との相関性が強いテキスチャ分類グループになっている。メタリック度の主観評価の順位は、試料番号4が1位で、試料番号6が2位、キラキラ度の主観評価の順位は、試料番号4と試料番号6が共に2位であった。図25の結果でも述べたが、試料番号4と試料番号6の試料は共に強く光るフレークが存在しており、そのためコントラスト値が高くなった。メタリック度とキラキラ度は両方とも試料の光り方に関係した主観評価であるので、この主観評価を考慮しても、グループG1の分類結果は妥当な結果であると言える。
【0094】
グループG2においては、フレークサイズ、フレーク密度及びフレーク浮き沈みの評価値が全て最も小さくなったため、試料番号1の試料をグループG2の中で他の試料と区別した。また、マクロ画像解析結果では、試料番号1のコントラスト値がグループG2の中で最も高い値になっている。その理由は、密度が小さく、フレークがあまり詰まっていない中に、1つのフレークが光っている状態でコントラスト計算の(i−j)の2乗が大きくなったため、グループG2の中では、コントラスト値が最も大きくなったと考えられる。また、試料番号5の試料は、グループG2の中で、最もフレークサイズが大きく、フレーク浮き沈みによる変化が最も大きくなったため、グループG2の中で他の試料と区別した。残りの試料番号3、試料番号8及び試料番号2は、はっきりとした評価値の違いがみられなかったので、同一グループにした。
【0095】
図31に示すように、ミクロ画像解析結果とマクロ画像解析結果を併用することで、メタリック塗装の試料を6グループまで分類することができた。
次に、図31の結果を踏まえて、本実施の形態の画像処理装置4の判別手段43の動作を説明する。判別手段43は、記憶手段40に予め記憶されているデータベースを参照して、評価対象となる試料を判別する(図3ステップS3)。
【0096】
記憶手段40に記憶されているデータベースとしては、ミクロ画像解析手段41の処理結果との比較用の第1のデータベースと、マクロ画像解析手段42の処理結果との比較用の第2のデータベースがある。
第1のデータベースの構造は、表10に示した構造と同様である。すなわち、予めメタリック塗装の代表的な標準的試料を顕微鏡デジタルカメラ2で撮像して、この顕微鏡デジタルカメラ2によって取り込まれたミクロ画像からミクロ画像解析手段41の処理結果を求めておき、このミクロ画像解析手段41の処理結果を判別用の判断基準として第1のデータベースに標準的試料毎に登録しておく。
【0097】
判別手段43は、第1のデータベースに登録されている特徴量と評価対象の試料のミクロ画像に対するミクロ画像解析手段41の処理結果の特徴量とを同種の特徴量毎に比較して、第1のデータベースに登録されている試料の中から比較結果が最も近いものを選択する。特徴量の比較は同種の特徴量毎、すなわちフレークサイズ毎、フレーク密度毎、フレーク浮き沈みの評価値毎、フレーク表面状態の評価値毎に行われるため、特徴量毎の比較結果の多数決によって最も近い標準的試料を選択する。第1のデータベースに登録されているデータ数が豊富なほど判別の精度が高まる。
【0098】
例えば、判別手段43は、ミクロ画像解析手段41で得られたフレーク密度が第1のデータベースに登録された試料αのフレーク密度に近いが、ミクロ画像解析手段41で得られたフレークサイズ、フレーク浮き沈みの評価値及びフレーク表面状態の評価値が第1のデータベースに登録された別の試料βの同種の特徴量に近いといった場合、ミクロ画像解析手段41で解析した評価対象の試料が試料βであると判定する。このとき、判別手段43は、特徴量の比較に際して、第1のデータベースに登録された特徴量を中心値として、ミクロ画像解析手段41の処理結果の特徴量が中心値から所定の誤差範囲内にある場合、値が近いと判定する。中心値からの誤差範囲は特徴量毎に予め定められている。以上のような特徴量の比較によって、評価対象の試料を判別することができる。
【0099】
ただし、ミクロ画像解析手段41の処理結果のみでは試料を十分判別できない場合がある。そこで、判別手段43は、第2のデータベースに予め登録されている試料毎のコントラスト値と評価対象の試料のマクロ画像に対するマクロ画像解析手段42の処理結果のコントラスト値とを比較して、データベースに登録されている試料の中から比較結果が最も近いものを選択する。
第2のデータベースには、予めコントラスト値を試料毎に登録しておけばよい。すなわち、予めメタリック塗装の代表的な標準的試料をデジタルカメラ3で撮像して、このデジタルカメラ3によって取り込まれたマクロ画像からマクロ画像解析手段42の処理結果を求めておき、このマクロ画像解析手段42の処理結果を判別用の判断基準として第2のデータベースに標準的試料毎に登録しておく。なお、デジタルカメラ3として、スキャナを使用してもよい。
【0100】
第1のデータベースの場合と同様に、判別手段43は、第2のデータベースに登録されたコントラスト値を中心値として、マクロ画像解析手段42の処理結果のコントラスト値が中心値から所定の誤差範囲内にある場合、値が近いと判定する。コントラスト値についても中心値からの誤差範囲は予め定められている。
【0101】
判別手段43は、ミクロ画像解析手段41の処理結果に基づく試料の判別結果を優先し、この判別で断定不可能なものやグループ単位の判別しかできないものをマクロ画像解析手段42の処理結果に基づいて判別する。
そして、判別手段43は、試料の判別結果(試料番号や試料名)を表示装置5に表示させる(図3ステップS4)。
【0102】
以上のように、本実施の形態では、標準的試料のミクロ画像から第1の特徴量としてフレークサイズ、フレーク密度、フレーク浮き沈みの評価値、及びフレークの表面状態の評価値を抽出して、この第1の特徴量を第1のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観の適切な数値化を実現することができる。また、本実施の形態では、標準的試料のマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量としてコントラスト値を抽出して、この第2の特徴量を第2のデータベースに登録することにより、標準的試料の外観のさらに適切な数値化を実現することができる。データベースに登録されている標準的試料数が豊富になるほどメタリック塗装の外観の適切な数値化が可能となる。
【0103】
さらに、本実施の形態では、評価対象の試料のミクロ画像から第1の特徴量としてフレークサイズ、フレーク密度、フレーク浮き沈みの評価値、及びフレークの表面状態の評価値を抽出して、第1のデータベースに登録された第1の特徴量と比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を向上させることができる。また、本実施の形態では、評価対象の試料のマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量としてコントラスト値を抽出して、第2のデータベースに登録された第2の特徴量と比較して評価対象の試料を判別することにより、メタリック塗装の試料の判別精度を更に向上させることができ、第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合でも、試料を判別することができる。
【0104】
なお、本実施の形態の画像処理装置4は、CPU、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータにおいて、本発明のメタリック塗装数値化方法を実現させるためのメタリック塗装評価プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、記録媒体から読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、プログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【0105】
また、本実施の形態が対象とするメタリック塗装のフレークは、金属材料に限るものではなく、金属光沢が得られるものであれば他の材料でもよい。他の材料としては、例えばガラスが考えられる。
また、本実施の形態では、メタリック塗装の光輝感や粒子感の数値化について説明しているが、メタリック塗装の色についても色相や彩度、明度あるいはそれ以外のパラメータを用いて数値化することができる。この色の数値化については、既存の測色手法により数値化できるので、説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、メタリック塗装を評価する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るメタリック塗装数値化装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図2の画像処理装置のミクロ画像解析手段の動作を示すフローチャートである。
【図5】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレークサイズ抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍のミクロ画像を示す図である。
【図7】ミクロ画像解析手段のフレークサイズ抽出手段の処理結果の画像を示す図である。
【図8】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレーク密度抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率100倍のミクロ画像を示す図である。
【図10】ミクロ画像解析手段のフレーク密度抽出手段の処理結果の画像を示す図である。
【図11】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレーク浮き沈み抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍の浅焦点ミクロ画像及び深焦点ミクロ画像を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍の浅焦点ミクロ画像及び深焦点ミクロ画像を示す図である。
【図14】ミクロ画像解析手段のフレーク浮き沈み抽出手段によるエッジ検出処理後の画像を示す図である。
【図15】ミクロ画像解析手段のフレーク浮き沈み抽出手段によるエッジ検出処理後の画像を示す図である。
【図16】図2の画像処理装置におけるミクロ画像解析手段のフレーク表面状態抽出手段の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態で用いる試料の倍率1000倍のノマルスキー微分干渉画像を示す図である。
【図18】図17の画像中における色の画素頻度の分布を示す図である。
【図19】図2の画像処理装置のマクロ画像解析手段の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態で用いるGLCM法を説明するための図である。
【図21】図20の部分画から算出されたGLCMを示す図である。
【図22】本発明の実施の形態で用いる試料のマクロ画像を示す図である。
【図23】マクロ画像解析手段の処理結果を示す図である。
【図24】マクロ画像解析手段の処理結果を示す図である。
【図25】マクロ画像解析手段の処理結果に基づく試料の分類結果を示す図である。
【図26】主観評価のアンケートの概略を示す図である。
【図27】1回目の主観評価の結果を示す図である。
【図28】2回目の主観評価の結果を示す図である。
【図29】主観評価の評価値とミクロ画像解析結果の特徴量との相関関係を示す図である。
【図30】主観評価の評価値とミクロ画像解析結果の特徴量との相関関係を示す図である。
【図31】マクロ画像解析手段とミクロ画像解析手段の処理結果に基づく試料の分類結果を示す図である。
【図32】ソリッド塗装の構造を示す断面図である。
【図33】メタリック塗装の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1…顕微鏡、2…顕微鏡デジタルカメラ、3…デジタルカメラ、4…画像処理装置、5…表示装置、40…記憶手段、41…ミクロ画像解析手段、42…マクロ画像解析手段、43…判別手段、410…フレークサイズ抽出手段、411…フレーク密度抽出手段、412…フレーク浮き沈み抽出手段、413…フレーク表面状態抽出手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準的試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の標準的試料撮像手順と、
この第1の標準的試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する標準的試料のミクロ画像解析手順と、
前記第1の特徴量を第1のデータベースに登録する第1のデータベース登録手順とを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項2】
請求項1記載のメタリック塗装数値化方法において、
さらに、評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の評価対象試料撮像手順と、
この第1の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する評価対象試料のミクロ画像解析手順と、
前記第1のデータベースに登録された第1の特徴量と前記評価対象試料のミクロ画像解析手順によって抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する判別手順とを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項3】
請求項2記載のメタリック塗装数値化方法において、
さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の標準的試料撮像手順と、
この第2の標準的試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する標準的試料のマクロ画像解析手順と、
前記第2の特徴量を第2のデータベースに登録する第2のデータベース登録手順とを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項4】
請求項3記載のメタリック塗装数値化方法において、
さらに、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の評価対象試料撮像手順と、
この第2の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する評価対象試料のマクロ画像解析手順とを備え、
前記判別手順は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに登録された第2の特徴量と前記評価対象試料のマクロ画像解析手順によって抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する手順を含むことを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項5】
請求項1記載のメタリック塗装数値化方法において、
前記第1の特徴量は、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、前記フレークの密度、前記フレークの浮き沈みの度合い、及び前記フレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つであることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項6】
請求項3記載のメタリック塗装数値化方法において、
前記第2の特徴量は、コントラスト値であることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項7】
標準的試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡と、
この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の撮像手段と、
この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段と、
前記第1の特徴量を記憶する第1のデータベースとを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項8】
請求項7記載のメタリック塗装数値化装置において、
さらに、評価対象の試料を判別する判別手段を備え、
前記顕微鏡は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大し、
前記第1の撮像手段は、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像し、
前記ミクロ画像解析手段は、この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出し、
前記判別手段は、前記第1のデータベースに記憶された第1の特徴量と前記評価対象の試料のミクロ画像から抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別することを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項9】
請求項8記載のメタリック塗装数値化装置において、
さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像する第2の撮像手段と、
この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析手段と、
前記第2の特徴量を記憶する第2のデータベースとを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項10】
請求項9記載のメタリック塗装数値化装置において、
前記第2の撮像手段は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像し、
前記マクロ画像解析手段は、この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出し、
前記判別手段は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに記憶された第2の特徴量と前記評価対象の試料のマクロ画像から抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別することを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項11】
請求項7記載のメタリック塗装数値化装置において、
前記第1の特徴量は、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、前記フレークの密度、前記フレークの浮き沈みの度合い、及び前記フレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つであることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項12】
請求項9記載のメタリック塗装数値化装置において、
前記第2の特徴量は、コントラスト値であることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項1】
標準的試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の標準的試料撮像手順と、
この第1の標準的試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する標準的試料のミクロ画像解析手順と、
前記第1の特徴量を第1のデータベースに登録する第1のデータベース登録手順とを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項2】
請求項1記載のメタリック塗装数値化方法において、
さらに、評価対象の試料のメタリック塗装面を顕微鏡によって拡大し、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の評価対象試料撮像手順と、
この第1の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出する評価対象試料のミクロ画像解析手順と、
前記第1のデータベースに登録された第1の特徴量と前記評価対象試料のミクロ画像解析手順によって抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する判別手順とを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項3】
請求項2記載のメタリック塗装数値化方法において、
さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の標準的試料撮像手順と、
この第2の標準的試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する標準的試料のマクロ画像解析手順と、
前記第2の特徴量を第2のデータベースに登録する第2のデータベース登録手順とを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項4】
請求項3記載のメタリック塗装数値化方法において、
さらに、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記第1の撮像手順よりも低い倍率で撮像する第2の評価対象試料撮像手順と、
この第2の評価対象試料撮像手順によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出する評価対象試料のマクロ画像解析手順とを備え、
前記判別手順は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに登録された第2の特徴量と前記評価対象試料のマクロ画像解析手順によって抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別する手順を含むことを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項5】
請求項1記載のメタリック塗装数値化方法において、
前記第1の特徴量は、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、前記フレークの密度、前記フレークの浮き沈みの度合い、及び前記フレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つであることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項6】
請求項3記載のメタリック塗装数値化方法において、
前記第2の特徴量は、コントラスト値であることを特徴とするメタリック塗装数値化方法。
【請求項7】
標準的試料のメタリック塗装面を拡大する顕微鏡と、
この顕微鏡によって拡大された画像を撮像する第1の撮像手段と、
この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出するミクロ画像解析手段と、
前記第1の特徴量を記憶する第1のデータベースとを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項8】
請求項7記載のメタリック塗装数値化装置において、
さらに、評価対象の試料を判別する判別手段を備え、
前記顕微鏡は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を拡大し、
前記第1の撮像手段は、この顕微鏡によって拡大された画像を撮像し、
前記ミクロ画像解析手段は、この第1の撮像手段によって取り込まれたミクロ画像から第1の特徴量を抽出し、
前記判別手段は、前記第1のデータベースに記憶された第1の特徴量と前記評価対象の試料のミクロ画像から抽出された第1の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別することを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項9】
請求項8記載のメタリック塗装数値化装置において、
さらに、標準的試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像する第2の撮像手段と、
この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出するマクロ画像解析手段と、
前記第2の特徴量を記憶する第2のデータベースとを備えることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項10】
請求項9記載のメタリック塗装数値化装置において、
前記第2の撮像手段は、前記評価対象の試料のメタリック塗装面を前記顕微鏡と第1の撮像手段による倍率よりも低い倍率で撮像し、
前記マクロ画像解析手段は、この第2の撮像手段によって取り込まれたマクロ画像からテキスチャ解析手法によって第2の特徴量を抽出し、
前記判別手段は、前記第1の特徴量に基づく判別が不十分な場合に、前記第2のデータベースに記憶された第2の特徴量と前記評価対象の試料のマクロ画像から抽出された第2の特徴量とを比較することにより、前記評価対象の試料を判別することを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項11】
請求項7記載のメタリック塗装数値化装置において、
前記第1の特徴量は、メタリック塗装中の金属光沢の微小片であるフレークのサイズ、前記フレークの密度、前記フレークの浮き沈みの度合い、及び前記フレークの表面状態を示す評価値のうちの少なくとも1つであることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【請求項12】
請求項9記載のメタリック塗装数値化装置において、
前記第2の特徴量は、コントラスト値であることを特徴とするメタリック塗装数値化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図6】
【図9】
【図12】
【図13】
【図17】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図6】
【図9】
【図12】
【図13】
【図17】
【図22】
【公開番号】特開2008−246347(P2008−246347A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89554(P2007−89554)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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