説明

メタンのメタノール、ジメチルエーテルおよび派生生成物への選択的酸化的転換

本発明は、メタンを、メタノールとホルムアルデヒドの混合物を生成させるに十分な条件下で、ギ酸と二酸化炭素の形成を最小限にしながら酸化することによるメタン供給源からのメタノールの製造方法に関する。該酸化工程の後、ホルムアルデヒドをメタノールとギ酸に転換する処理工程が続き、ギ酸自体は、中間的に形成されたギ酸メチルの接触水素化によりさらにメタノールに転換し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最初にsynガスを生成しない、メタン供給源からのメタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素は、近代生活においては不可欠である。炭化水素は、燃料、並びに化学、石油化学、プラスチックおよびゴム工業のような各種分野における原材料として使用されている。石炭、石油およびガスのような化石燃料は、炭素と水素の種々の比率を有する炭化水素からなり、燃焼させる場合は再生不可能に使用されて、二酸化炭素および水を発生させる。その広範な用途および高い需要にもかかわらず、化石燃料は、有限な埋蔵量、不可逆的燃焼並びに大気汚染および世界的温暖化の原因のような多くの不利益を提供している。これらの不利益および増大しているエネルギー需要を考慮すれば、代替エネルギー源が必要である。
頻繁に取り上げられている1つのそのような代替物は、水素、いわゆる“水素経済”である。水素は、クリーン燃料として有利であり、燃焼するとき水のみを生成する。しかしながら、遊離の水素は天然のエネルギー源ではなく、水素の炭化水素または水からの生産は、極めてエネルギー消費性のプロセスである。さらに、水素を炭化水素から生成させる場合、クリーン燃料として強調される水素の如何なる利益よりも、主として天然ガス、石油または石炭の合成ガス(“syn-ガス”)、即ち、COとH2との混合物への改質による水素生産自体の方がクリーンとは程遠いという事実の方が上回っている。水素生産は化石燃料を消費し、燃料エネルギーの1/4は熱として失われる。また、水素は、取扱い、貯蔵し、輸送しまた流通することが困難であり費用高であるので、便利なエネルギー貯蔵媒体ではない。水素ガスは、極めて揮発性であり潜在的に爆発性であるので、高圧装置、費用高で非現実的な基幹施設、拡散および漏出を最低限にするための特別な材料、並びに爆発を防止するための大規模な安全措置を必要とする。
【0003】
より実際的な代替物はメタノールであることが示唆された。メタノール、即ち、CH3OHは、1個の付加的な酸素原子によってメタン(CH4)とは異なる最も簡単な液体酸素化炭化水素である。メチルアルコールまたは木精とも称されるメタノールは、穏やかなアルコール臭を有する無色の水溶性液体であり、貯蔵および輸送するのが容易である。メタノールは、-97.6℃で凍結し、64.6℃で沸騰し、20℃で0.791の密度を有する。
メタノールは、エネルギーを貯蔵する便利で且つ安全な手段であるのみならず、その誘導体であるジメチルエーテル(DME)と共に優良な燃料である。ジメチルエーテルは、メタノールから脱水によって容易に得られ、その高セタン価および好ましい性質故に、とりわけディーゼルエンジンにおける有効な燃料である。メタノールおよびジメチルエーテルは、ガソリンまたはディーゼルと混合して、例えば内燃エンジンまたは発電機における燃料として使用し得る。メタノールの最も効率的な使用の1つは、燃料電池、とりわけ、メタノールを二酸化炭素および水に直接酸化させると同時に電気を発生させる直接メタノール燃料電池(DMFC)においてである。
多くの種々の炭化水素と添加剤の複雑な混合物であるガソリンと異なり、メタノールは、単一の化学化合物である。メタノールは、ガソリンの約半分のエネルギー密度を有し、2リットルのメタノールが1リットルのガソリンと同じエネルギーを提供することを意味する。メタノールのエネルギー含有量が低いにしても、メタノールは、高めの100のオクタン価(107のリサーチ法オクタン価(RON)と92のモーター法オクタン価(MON)の平均)を有し、このことは、燃料/空気混合物を発火させる前により小さい体積に圧縮し得ることを意味する。このことは、エンジンがより高い圧縮比(ガソリンエンジンの8〜9対1に対して10〜11対1)において、ガソリン出力エンジンよりも効率的に稼動するのを可能にする。また、エンジン内における、より速くより完全な燃料燃焼を可能にするメタノールの高めの“火炎速度”によっても効率が上昇する。これらの要因は、ガソリンよりも低いエネルギー密度にもかかわらずメタノールが高効率であることを説明している。さらに、メタノールを最も極寒の条件においてさえもより発火性にするために、メタノールをガソリン、揮発性化合物(例えば、ジメチルエーテル)、他の成分またはメタノールを気化または噴霧化する装置と混合し得る。例えば、自動車燃料はメタノールをガソリンに添加することによって製造し得、その燃料は、少なくとも15体積%の最小ガソリン含有量を有して(M85燃料)、燃料が低温環境においてさえも容易に始動し得るようにし得る。勿論、そのような燃料におけるガソリンの如何なる置換えもオイル資源を節約し、添加するメタノールの量は、特定のエンジン設計に応じて決定し得る。
【0004】
メタノールは、ガソリンよりも約3.7倍高い蒸発潜熱を有し、液体からガス状態へと経過するとき有意に多めの量の熱を吸収し得る。このことは、エンジンからの熱の離れを助け、重い水冷装置の代りに空冷ラジエータの使用を可能にする。従って、ガソリン出力車と比較して、メタノール出力エンジンは、より小型で軽量のエンジンブロック、冷却条件の軽減、並びにより良好な加速および燃費能力を提供する。また、メタノールは、ガソリンよりも環境に優しく、炭化水素、NOx、SO2および粒状物のような大気汚染物の放出全体が低い。
また、メタノールは、入手し得る最も安全な燃料の1つである。ガソリンと比較して、メタノールの物理的、化学的性質は、火災のリスクを有意に低める。メタノールは低い揮発性を有し、発火が生じるのにガソリンよりも4倍濃縮しなければならない。発火したときでさえ、メタノールは、ガソリンよりも約4倍遅く燃焼し、ガソリン火炎速度の1/8でしか熱を放出せず、低い放射熱出力故に周囲の発火性物質への拡散ははるかに低いであろう。EPAは、ガソリンからメタノールへの切換えは、燃料関連火災の発生率を90%低下させると推定している。メタノールは無色の炎で燃焼するが、この問題は、添加剤により解決し得る。
また、メタノールは、ディーゼル燃料に対しても魅力的で環境に優しい代替物を提供する。メタノールは、燃焼中に汚染性粒子を一般に発生するディーゼル燃料とは対照的に、燃焼時に噴煙、煤煙または粒状物を発生しない。また、メタノールは、ディーゼルよりも低温で燃焼するので、極めて低放出量のNOxしか発生させない。さらにまた、メタノールは、ディーゼル燃料と比較して、有意に高い蒸気圧を有し、その高い揮発性により、寒冷気候においてさえも、通常のディーゼルエンジンによる寒冷始動の典型的な白煙を生じることなく、容易な始動を可能にする。必要に応じて、硝酸オクチル、硝酸テトラヒドロフルフリル、過酸化物または高級アルキルエーテルのような添加剤または発火改良剤を添加してメタノールのセタン価をディーゼルに近いレベルにもたらし得る。また、メタノールは、脂肪酸のエステル化によるバイオディーゼル燃料の製造においても使用し得る。
【0005】
メタノールと密接に関連し、メタノールから誘導され、さらにまた、望ましい代替燃料は、ジメチルエーテルである、全てのエーテルのうちの最も簡単なものであるジメチルエーテル(DEM、CH3OCH3)は、禁制CFCガスの変わりに、スプレー缶中のエアゾール推進剤として現在主として使用されている無色で、無毒、非発がん性、非腐蝕性の環境に優しい化学品である。DMEは、-25℃の沸点を有し、周囲条件下では気体である。しかしながら、DMEは、液化石油ガス(LPG)とまったく同様に、加圧タンク内で液体として容易に取扱われ、貯蔵されている。代替燃料としてのジメチルエーテルの興味は、55〜60のその高いセタン価にあり、このセタン価は、メタノールのセタン価よりもはるかに高く、また、通常のディーゼル燃料の40〜55のセタン価よりも高い。このセタン価は、DMEをディーゼルエンジンにおいて有効に使用し得ることを示唆している。有利なことに、DMEは、メタノール同様、クリーン燃焼性であり、煤煙粒状物、黒煙またはSO2を発生せず、その排ガスの後処理なしでさえも極めて少量のNOxおよび他の放出物しか発生させない。DMEの幾つかの物理的、化学的性質を、ディーゼル燃料と比較して、下記の表1に示す。

表1:DMEとディーゼル燃料の物理的性質の比較

【0006】
現在、DMEは、専ら、メタノールの脱水によって製造されている。また、メタノール合成工程と脱水工程を1つの工程に組合せることによる合成ガスからの直接DME合成方法も開発されてきている。
もう1つのメタノール誘導体は、炭酸ジメチル(DMC)であり、これは、メタノールをホスゲンによって転換することにより或いはメタノールの酸化的カルボニル化により得ることができる。DMCは、高セタン価を有し、ディーゼル燃料に10%までの濃度で混合して燃料粘度を低下させ、排気を改善することができる。
メタノールおよびその誘導体、例えば、DME、DMC、並びにバイオディーゼルは、多くの実際的および潜在的用途を有する。これらは、例えば、ICE出力車におけるガソリンおよびディーゼル燃料の代替物として、現存のエンジンおよび燃料系にほんの僅かな改変を加えることによって使用し得る。また、メタノールは、輸送分野におけるICEの最良の代替物とみなされている燃料電池車両(FCV)用の燃料電池においても使用し得る。また、DMEも、家庭加熱用さらには工業用途におけるLNGおよびLPGの潜在的な代替物である。
また、メタノールは、水素への改質において有用である。水素の貯蔵および流通に関連する問題に対処する試みにおいては、ガソリンまたはメタノールのような水素に富む液体を車両内の水素源として車上改質器によって使用することが示唆されている。また、メタノールは、そのような水素生産において入手し得る全ての物質のうちの最も安全なものとみなされている。さらに、液体メタノールの高水素含有量故に、純粋低温水素と比較しても(-253℃の液体水素中の70.8gに対して室温でのメタノール1リットル中では98.8gの水素)、メタノールは、水素燃料の優れた担体である。メタノール中に破壊することの難しいC-C結合が存在しないことは、その純粋水素への転換を80〜90%の効率でもって容易にする。
【0007】
純粋水素系貯蔵装置とは対照的に、改質システムはコンパクトであり、均一液体水素よりも体積基準で水素を多く含有し、加圧なしで貯蔵し取扱いするのが容易である。また、メタノール水蒸気改質器は、はるかに低い温度(250〜350℃)において操作を可能にする点で、さらに、車上使用に良好に適応化させるのに有利である。さらにまた、メタノールは、燃料電池に対する汚染物であるイオウを含有せず、また、窒素酸化物は、低操作温度故にメタノール改質器からは形成されない。粒状物およびNOx放出物は事実上排除され、他の放出物は最低限である。さらにまた、メタノールは、燃料補給をディーゼル燃料同様に迅速且つ容易にし得る。即ち、車上メタノール改質器は、容易に流通させることができ、車両内で貯蔵し得る液体燃料からの水素の迅速且つ効率的な給送を可能にする。今日まで、メタノールは、輸送用途用の燃料電池において使用するのに適切であると実用規模で処理され、実証されている唯一の液体燃料である。
また、車上改質以外に、メタノールは、水素燃料電池車両に燃料補給するための給油所における水素の好都合な生産も可能にする。燃料電池、即ち、燃料の自由化学エネルギーを電気エネルギーに変換する電気化学装置は、触媒電気化学酸化による電力生産の高効率の方法を提供する。例えば、水素と酸素(空気)を電気化学電池様装置内で混合して水と電力を生成させる。該方法はクリーンであり、水が唯一の副生成物である。しかしながら、水素自体を、先ず、電気分解によって或いは改質器により炭化水素源(化石燃料)からエネルギー消費過程において生成させなければならないので、水素燃料電池は、利用においては依然として必然的に限られている。
【0008】
高純度水素の製造方法は、高活性触媒によるメタノールの水蒸気改質により開発されており、比較的低温(240〜290℃)での操作を可能にし、さらに、操作の柔軟性並びに迅速な始動および停止を可能にしている。これらのメタノール-水素(MTH)装置は、時間当り50〜4000m3のH2の生産能力範囲において、電子工学、ガラス、セラミックおよび食品加工工業のような種々の産業において既に使用されており、優れた信頼性、長期寿命および最低のメンテナンスを備えている。比較的低温で操作することで、MTH法は、メタノールを適切な反応温度に加熱するのにあまりエネルギーを必要としないことから、600℃より上で実施しなければならない天然ガスおよび他の炭化水素の改質を上回る明白な利点を有する。
メタノールの有用性は、他の改質方法、例えば、水蒸気改質、メタノールの部分酸化および新規な触媒系を組合せた酸化的水蒸気改質として知られる方法の開発をもたらしている。酸化的水蒸気改質法は、ゼロまたは痕跡量のCOを含む高純度水素を、高メタノール転換率および230℃ほどの温度で生産する。該方法は、水蒸気改質と異なり、発熱反応の利点を有し、従って、エネルギー消費を最少化する。また、水蒸気改質と特定比率のメタノール部分酸化を組合せ、発熱反応の欠点にそれ自体持続するに十分なエネルギーのみを発生させることによって対処するメタノールの自熱改質法も存在する。自熱改質は発熱性でも吸熱性でもなく、一旦反応温度に達すると何ら外部熱を必要としない。上述の可能性にもかかわらず、水素燃料電池は、高度に揮発性で可燃性の水素または改質器を使用しなければならない。
【0009】
米国特許第5,599,638号は、水素燃料電池の欠点に対処するための簡単な直接メタノール燃料電池(DMFC)を開示している。水素燃料電池とは対照的に、上記DNFCは、水の電気分解または天然ガスまたは炭化水素の改質のような方法による水素生成に依存していない。また、DMFCは、液体燃料としてのメタノールが、貯蔵および流通に新たな基盤施設を必要とする水素燃料と異なり、周囲温度での冷却或いは費用高の高圧基盤施設を必要とせず、現存の貯蔵および分配装置によって使用し得るので、よりコスト有効性である。さらに、メタノールは、通常のバッテリーおよびH2-PEM燃料電池のような他の系と比較して、比較的高い理論体積エネルギー密度を有する。このことは、小サイズおよびエネルギー単位量が所望される小携帯用途(携帯電話、ラップトップコンピュータ等)においては大いに重要である。
DMFCは、輸送分野のような種々の領域において多くの利点を提供する。メタノール水蒸気改質器の必要性を排除することにより、DMFCは、コスト、複雑性および車両重量を有意に軽減し、燃費を改善する。また、DMFC装置は、その簡素性においても、直接水素燃料電池に匹敵し、車上水素貯蔵または水素生成用改質器の厄介な問題はない。水とCO2のみを放出するので、他の汚染物(例えば、NOx、PM、SO2等)の放出は、排除される。直接メタノール燃料電池車両は、事実上ゼロ放出車両(ZEV)であることが予測され、メタノール燃料電池車両の使用は、車両からの大気汚染物を長期に亘ってほぼ削減することが見込まれる。さらに、ICE車両と異なり、放出プロフィールは、経時的にほぼ変化しないままであることが予測される。34%の室温温度効率を可能にする節減されたコストとクロスオーバー特性を有する炭化水素またはヒドロフルオロカーボン材料系の新たな膜が開発されている。
【0010】
説明したように、メタノールは輸送燃料として多くの重要な利点を有する。水素と異なり、メタノールは、加圧または液化のためのエネルギー集約的な手順を何ら必要としない。メタノールは、室温で液体であるので、車両中で容易に取扱い、貯蔵し、分配し、搬送することができる。メタノールは、車上メタノール改質器を介して燃料電池車両用の理想的な水素担体として機能し得、DMFC車両において直接使用し得る。
また、メタノールは、静置用途における魅力的な燃料源である。例えば、メタノールは電力を発生させるガスタービンの燃料として直接使用し得る。ガスタービンは燃料として天然ガスまたは軽質石油留出物を典型的に使用する。そのような燃料と比較して、メタノールは高い出力およびその低燃焼温度故の低NOx放出を達成し得る。メタノールはイオウを含有していないので、SO2放出も排除される。メタノールにおける操作は、天然ガスおよび留出物燃料と同じ柔軟性を提供し、比較的容易な改変後、元々天然ガスまたは他の化石燃料用に設計された現存のタービンにより実施し得る。また、高純度薬品級メタノールよりも低生産コストを有する燃料級メタノールをタービンにおいて使用し得るので、メタノールは魅力的な燃料である。静置用途においては燃料電池のサイズおよび重量は移動用途よりも重要ではないので、PEM燃料電池およびDMFC以外の各種燃料電池、例えば、リン酸、溶融炭酸塩および固体酸化物燃料電池(それぞれ、PAFC、MCFCおよびSOFC)も使用し得る。
【0011】
燃料としての使用以外に、メタノールおよびメタノール由来化学品は、化学工業において他の有意な用途を有する。今日、メタノールは、化学工業における最も重要な原料の1つである。3200万トンの年間生産メタノールの大部分は、ホルムアルデヒド、酢酸、MTBE (環境的理由で次第に廃止されつつある)のような基礎化学品、並びに各種ポリマー、塗料、接着剤、建設材料等を含む多種類の化学製品および材料の製造に使用されている。世界的には、ほぼ70%のメタノールは、ホルムアルデヒド(38%)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE、20%)および酢酸(11%)を製造するのに使用されている。また、メタノールは、とりわけ、クロロメタン、メチルアミン、メチルメタクリレートおよびジメチルテレフタレート用の原料である、その後、これらの化学中間体を処理して、塗料、樹脂、シリコーン、接着剤、凍結防止剤およびプラスチックのような製品を製造している。メタノールから大量に製造されるホルムアルデヒドは、主として、フェノール-、尿素-およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびポリアセタール樹脂、並びにブタンジオールおよびメチレンビス(4-フェニルイソシアネート) (MDI;MDI発泡体は、冷蔵庫、ドアにおける、さらに車両ダッシュボードおよびバンパーにおける断熱材として使用される)を製造するのに使用されている。ホルムアルデヒド樹脂は、広範囲の用途における、例えば、パーチクルボード、合板および他の木材パネルの製造における接着剤として主として使用される。メタノール由来化学製品および材料の例は、図1に示している。
【0012】
基礎化学品の製造においては、原材料は、典型的には製造コストの60〜70%までを構成する。従って、原料のコストは、有意な経済的役割を果たす。その低コスト故に、メタノールは、現在エチレンおよびプロピレンのようなより費用高の原料を使用して、酢酸、アセトアルデヒド、エタノール、エチレングリコール、スチレンおよびエチルベンゼン、並びに各種合成炭化水素製品を製造する方法における潜在的な原料であるとみなされている。例えば、メタノールのエタノールへの直接転換は、ロジウム系触媒(メタノールのアセトアルデヒドへの還元的カルボニル化を90%に近い選択性でもって促進させることが判明している)およびルテニウム系触媒(アセトアルデヒドをエタノールへさらに還元する)を使用して達成し得る。また、原料としてエチレンを使用する通常の方法の代りにメタノールの酸化的カップリングによりエチレングリコールを製造する可能性も追求されており、さらに、メタノール脱水によって得られるジメチルエーテルからのエチレングリコールの合成における有意の前進も図られている。
メタノールのエチレンおよびプロピレンのようなオレフィンへの転換は、メタノール-オレフィン(MTO)技術としても知られており、オレフィン物質の高需要、とりわけポリオレフィン生産におけるとりわけ有望な検討事項である。MTO法は、現在のところ、2工程法であり、天然ガスをsynガスからメタノールに転換し、その後、メタノールをオレフィンに転換している。メタノールを先ず脱水してジメチルエーテル(DME)とし、その後、これが反応してエチレンおよび/またはプロピレンを形成することが考慮されている。少量のブテン、より高級のオレフィン、アルカンおよび芳香族も形成される。
【化1】

【0013】
種々の触媒、例えば、ZSM-5 (Mobil社によって開発されたゼオライト)のような合成アルミノシリケートゼオライト触媒、SAPO-34およびSAPO-17 (UOP社)のようなシリコアルミノホスフェート(SAPO)分子ふるい、並びにアルミナ上の酸化タングステンのような二官能性支持型酸-塩基触媒(WO3/Al2O3)は、メタノールをエチレンおよびプロピレンに250〜350℃の温度で転換するのに活性であることが判明している。最終生成物のタイプおよび量は、使用する触媒のタイプおよびMTO法に依存する。操作条件により、プロピレン対エチレンの質量比は、約0.77〜1.33で改変し得、著しい柔軟性を可能にする。例えば、UOP and Norsk Hydro社により開発されたMTO法に従うSAPO-34を使用する場合、メタノールは、エチレンおよびプロピレンに80%よりも高い選択性で、さらにまた、多くの製品の価値ある出発物質であるブテンに約10%で転換する。ZSM-5触媒によるLurgi社によって開発されたMTO法を使用する場合、主として、プロピレンが70%よりも高い収率で生成する。ZSM-5触媒によるExxonMobil社により開発された方法は、ガソリンおよび/または留出物範囲の炭化水素を95%よりも高い選択性で生成させる。
また、著しい酸性度を有する媒体-有孔ゼオライト、例えば、ZSM-5を触媒として使用するメタノール-ガソリン(MTG)法も存在する。この方法においては、メタノールを先ず脱水して触媒上のジメチルエーテル、メタノールおよび水の平衡混合物とし、その後、この混合物を軽質オレフィン、主として、エチレンおよびプロピレンに転換する。軽質オレフィンは、さらなる転換を受けて、より高級のオレフィン、C3〜C6アルカン、並びにトルエン、キシレンおよびトリメチルベンゼンのようなC6〜C10芳香族となる。
石油およびガス埋蔵量の減少により、合成炭化水素が主要な役割を果たすであろうことは、必然的である。従って、MTGおよびMTO法により入手し得るメタノール系合成炭化水素および化学品は、石油およびガス系物質の置換えに当って益々の重要性を担うであろう。上記で列挙したメタノールの使用は、例示であって、限定するものではない。
また、メタノールは、単細胞タンパク質源としても使用し得る。単細胞タンパク質(SCP)とは、エネルギーを獲得しながら炭化水素基質を分解する微生物が産生するタンパク質を称する。タンパク質含有量は、微生物のタイプ、例えば、細菌、酵母、カビ等に依存する。SCPは、食品および動物飼料としての使用のような多くの用途を有する。
【0014】
メタノールの数多くの用途を考慮すれば、メタノールを製造する改良され且つ効率的な方法を有することが明らかに望ましい。現在のところ、メタノールは、ほぼ専ら、化石燃料、主として天然ガス(メタン)および石炭の不完全燃焼(または触媒改質)から得られた合成ガスから製造されている。
また、メタノールは再生可能なバイオマスからも製造し得るが、そのようなメタノール生産もsynガスを含み、エネルギー的に好ましくはなく、規模的に限られる。本明細書において使用するとき、用語“バイオマス”とは、任意のタイプの植物または動物物質、即ち、木材および木材廃棄物、農作物およびその廃棄副産物、都市ゴミ、動物廃棄物、水生植物および藻類を含む、生物形態によって生産された材料を包含する。バイオマスのメタノールへの転換方法は石炭からのメタノールの製造方法と同様であり、バイオマスのsynガスへのガス化、その後の化石燃料において使用したのと同じ方法によるメタノール合成を必要とする。また、バイオマスの使用は、低エネルギー密度並びに嵩高なバイオマスの集荷および輸送の高コストのような他の不利益も提供する。“バイオ原油”(biocrude)、即ち、バイオマスの急速熱分解により得られた黒色液体の使用を含む最近の改良法は幾分有望ではあるものの、バイオ原油の商業的応用のためにはさらなる開発を必要とする。
【0015】
現存のメタノール製造方法はsynガスを必要とする。synガスは、水素、一酸化炭素および二酸化炭素の混合物であり、メタノールは、下記の反応式に従って不均質触媒上で生成させている:
【化2】

【0016】
最初の2つの反応は、それぞれ、21.7 kcal.mol-1および9.8 kcal.mol-1に等しい反応熱を伴う発熱性であり、体積低下をもたらす。メタノールへの転換は、圧力を上げ、ルシャトリエ(Le Chatelier)の原理に従って温度を下げることによって助長される。3番目の反応式は吸熱性逆水性ガスシフト反応(RWGSR)を説明する。第3の反応において生成させた一酸化炭素は水素とさらに反応してメタノールを生成し得る。第2の反応は単純に第1と第3の反応の和である。これら反応の各々は、可逆的であり、従って、反応条件、例えば、温度、圧力およびsynガスの組成による熱力学平衡によって制限される。
メタノール製造用の合成ガスは、任意の炭素質物質、例えば、石炭、コークス、天然ガス、石油、重質油、およびアスファルトの改質または部分酸化によって得ることができる。synガスの組成は、一般に、下記に示す等式に相応する化学量論数Sによって特徴付けられる。
S = (H2モル数−CO2モル数)/(COモル数+CO2モル数)
理想的には、Sは、2に等しいかまたは2よりも僅かに高い。2よりも高い値は過剰の水素を示し、一方、2よりも低い値は、相対的な水素不足を示す。プロパン、ブタンまたはナフサのような高めのH/C比を有する原料の改質は、メタノールへの転換に理想的な2近くのS値をもたらす。しかしながら、石炭またはメタンを使用する場合は、さらなる処理が最適のS値を得るのに必要である。石炭からの合成ガスは、望ましくない副生成物の形成を回避する処理を必要とする。メタンの水蒸気改質では、2.8〜3.0の化学量論数を有するsynガスが得られ、CO2を添加するか或いはアンモニア合成のような何か他のプロセスにおける過剰の水素を使用することによってS値を2近くに下げることを必要とする。しかしながら、天然ガスは、高水素含有量を、さらには、最低のエネルギー消費、資本投下および操作コストを提供することから、メタノール製造用の依然として好ましい原料である。また、天然ガスは、イオウ、ハロゲン化化合物、および上記方法で使用する触媒を汚損し得る金属のような少量の不純物も含有する。
【0017】
現存の各方法は、極めて活性で選択性の銅系触媒を必ず使用しており、反応器設計および触媒配置においてのみ異なる。synガスのほんの1部のみしか触媒上を通過後にメタノールに転換されないので、残りのsynガスを、メタノールおよび水の分離後に再利用している。また、synガスを液体中にバブリングさせるより最近開発されたメタノール製造の液相法も存在する。現存の各方法は99%よりも高いメタノール選択性および70%よりも高いエネルギー効率を有するものの、反応器を出る粗メタノールは、水並びに他の不純物、例えば、溶解ガス(例えば、メタン、COおよびCO2)、ジメチルエーテル、ギ酸メチル、アセトン、より高級のアルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール)および長鎖炭化水素を依然として含有している。商業的には、メタノールは、3通りの純度等級、即ち、燃料級、溶媒として一般に使用される“A”級、および“AA”即ち化学等級で入手し得る。化学等級は、99.85%を超えるメタノール含有量の最高純度を有し、メタノール生産工業において一般的に順守されている基準である。synガス生成および精製工程は現存の各方法においては重要であり、最終結果は原料の性質および純度に大きく依存している。所望の純度レベルを達成するために、現存の各方法によって製造したメタノールは、通常、十分な蒸留によって精製する。synガスによる現存のメタノール製造方法のもう1つの主要な欠点は、最初の高吸熱性水蒸気改質工程のエネルギー必要性である。また、上記方法は、メタンを酸化反応において一酸化炭素に転換し、引続き、この一酸化炭素(および幾分かのCO2)をメタノールに還元しなければならないので非効率である。
【0018】
一酸化炭素と水素の混合物(synガス)を最初に生成せずにメタン(天然ガス)をメタノールへ選択的に転換することは長年の課題であり、極めて望ましい実際的な目標である。メタノールをメチル誘導体に転換する種々のC-H活性化が報告されてきているものの、そのような化学は実用的であるには依然として遠い。メタンのメタノールへの選択的且つ直接酸化の探求が種々の酸化剤および金属酸化物触媒を使用してなされたものの、探求された高選択度の転換はいずれも極めて低いメタノール収率でしか達成されなかった。高い転換率においては選択性が急速に失われ、酸化生成物(ホルムアルデヒド、ギ酸および二酸化炭素)の混合物のみが得られる。
即ち、種々の詳細な反応条件が高メタノール転換率を完全酸化なしで達成するために探究されているが、今のところ、直接の酸化的転換を通常のsynガス系メタノール製造と拮抗し得るようにする高い収率、選択性および触媒安定性の組合せは達成できていない。メタノールをメタンから高選択性で良好な収率の酸化的転換によって効率的に製造する改良された方法が求められており、今回、これらを本発明によって提供する。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、最初にsynガスを生成しない、メタン供給源からのメタノールの製造方法に関する。この方法は、少量のギ酸および二酸化炭素を伴うメタノールとホルムアルデヒドの混合物を生成させるに十分な条件下でメタンを酸化する工程;上記ホルムアルデヒドを、メタノールおよびギ酸またはギ酸メチルを生成させるに十分な条件下で転換させる工程;および、その後、上記ギ酸メチルを、メタノールを形成させるのに十分な条件下で水素化により転換する工程を含む。有利には、上記メタノール酸化混合物をその各成分を分離することなく処理して、何らの副生成物を生じさせずに該混合物中の実質的に全てのホルムアルデヒドをメチルアルコールに転換する。好ましくは、未反応メタンを回収し、上記酸化工程に再利用する。
上記ホルムアルデヒドは、固体塩基触媒によりメタノールとギ酸に転換し、その後引続き、これらメタノールとギ酸をギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で転換し得る。上記ギ酸は、メタノールを生成させるに十分な条件下で上記ホルムアルデヒドと反応させることができる。また、上記ホルムアルデヒドを、ギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で触媒二量化に供し、その後、ギ酸メチルをメタノールに転換することも可能である。ギ酸メチルは接触水素化によって、或いは電気化学還元によってメタノールに転換し得る。
メタン供給源は、天然ガス、石炭ガスまたはメタン水和物であり得る。メタン供給源は、メタノールとホルムアルデヒドを実質的に形成させるに十分な条件下で酸化剤と接触させることによって酸化し得る。有用な酸化剤には、分子状酸素または空気および適切な触媒、或いは過酸化水素および酸化物触媒が含まれる。酸化物触媒は、V、Ti、Ga、Mg、Cu、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、LaまたはSnをベースとし、必要に応じて、シリカまたはアルミナ支持体上で使用する単一または混合触媒であり得る。
【0020】
他の生成物を調製するためには、上記メタノールを、ジメチルエーテルを生成させるに十分な条件下で脱水し得る。該ジメチルエーテルを、酸-塩基またはゼオライト触媒の存在下に加熱して、エチレンまたはプロピレンを形成させ得る。エチレンまたはプロピレンは、高級オレフィン、合成炭化水素または芳香族、並びに化学品用の原料としてまたは輸送燃料として使用するそれらの生成物のいずれかに転換し得る。エタノールまたはプロパノールは、それぞれ、エチレンまたはプロピレンを水和することによって調製し得る。また、ジメチルエーテルは、家庭または産業使用における加熱目的用の天然ガスおよびLPGの代替物として使用し得る。
合成燃料の領域においては、十分量のジメチルエーテルを通常のディーゼル燃料と混合することによって改良されたディーゼル燃料を調製することができる。また、メタノールとホスゲンとの反応によってまたはメタノールの酸化的カルボニル化によって炭酸ジメチルを調製することができ、そして、十分量の炭酸ジメチルを通常のディーゼル燃料と混合することによって改良されたディーゼル燃料を調製することができる。輸送燃料は、メタノールをガソリンに添加することによって製造することができ、該燃料は少なくとも15体積%の最低ガソリン含有量を有する。
他の用途に関しては、メタノールまたはジメチルエーテルは、LNGまたはLPGの使用および輸送における固有の不利益または危険性を最小限するまたは排除するための好都合なエネルギー貯蔵物および輸送物質として機能し得る。また。メタノールを、ヒトまたは動物栄養用の単細胞タンパク質の製造において使用することも可能である。
本発明の特徴および利点は、下記の例示としての実施態様の詳細な説明および添付図面の再検討から明らかとなろう。
【0021】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、天然ガスのようなメタン供給源のメタノールまたはジメチルエーテルへの新規で効率的な酸化的転換に関する。この方法は、メタンを、メタノールとホルムアルデヒドの混合物を得るのに十分であるが実質的にギ酸および二酸化炭素を排除する条件下で酸化することを含む。その後、ホルムアルデヒドを、メタノールおよびギ酸またはギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で転換し;その後、ギ酸メチルを、何ら副生成物を生じさせずにメタノールを形成させるに十分な条件下で水素化により転換する。好ましくは、メタン酸化混合物を、その各成分を分離せずに直接処理してメタノールを生成させる。この方法により、実用に適し得る収率でもってメタノールの高選択性を達成する。
1つの実施態様においては、上記メタン酸化工程において生成させたホルムアルデヒドを、改変Cannizzarro反応により、メタノールおよびギ酸に触媒転換し、その後、メタノールとギ酸を、ギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で反応させる。また、ホルムアルデヒドもその触媒二量化によってギ酸メチルに転換する。ギ酸メチル自体、115(RON)の高オクタン価を有し、内燃エンジン用の燃料として機能し得る。もう1つの実施態様においては、得られるギ酸を使用してホルムアルデヒドを還元してメタノールを生成させる。
有利には、任意のメタン天然源(天然ガス、炭田メタン、メタン水和物等)から入手し得るメタンを、酸化剤と接触させることによって酸化する。酸化剤は分子状酸素であってよく、或いは過酸化水素または酸化物触媒を含み得る。酸化物(混合酸化物)触媒は、V、Ti、Ga、Mg、Cu、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、LaまたはSnをベースとし得、必要に応じて、シリカまたはアルミナ支持体上で使用する。未反応メタンは回収し、その後、上記酸化工程に再利用する。
ギ酸メチルは、何ら副生成物を生じさせずに接触水素化によって或いは電気化学還元によってメタノールに転換し得る。必要に応じて、メタノールは、その後、ジメチルエーテルを生成させるに十分な条件下で脱水し得る。
得られるメタノール生成物は、種々の形で使用し得る。メタノールは、エネルギー貯蔵および輸送用の好都合且つ安全な物質である。メタノールは、内燃エンジンおよび燃料電池用の優れた燃料である。メタノールは、ジメチルエーテルを生成させるに十分な条件下で脱水し得る。ジメチルエーテルは、ディーゼル燃料の優れた代替物である。メタノールおよび/またはジメチルエーテルは、触媒によって、エチレンまたはプロピレン(並びに他のオレフィン)に転換し得る。これらの軽質オレフィンは、例えば、エタノール(エチレンの水和による)、より高炭素のオレフィンまたは芳香族のような合成炭化水素混合物およびそれらの生成物に転換し、種々の派生化学品用の原料および輸送燃料として使用し得る。また、メタノールは、単細胞タンパク質源としても有用である。
【0022】
本発明は、天然ガスのようなメタン供給源のメタノールまたはジメチルエーテルへの新規で効率的な酸化的転換に関する。この方法は、メタンを、メタノールとホルムアルデヒドの混合物を得るのに十分であるが実質的にギ酸および二酸化炭素を排除する条件下で酸化することを含む。その後、ホルムアルデヒドを、メタノールおよびギ酸またはギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で転換し;その後、ギ酸メチルを、何ら副生成物を含まないメタノールを形成させるに十分な条件下で水素化により転換する。好ましくは、メタン酸化混合物を、その各成分を分離しないで直接処理して、メタノールを生成させる。この方法により、実用に適し得る収率でもってメタノールの高選択性を達成する。
1つの実施態様においては、上記メタン酸化工程において生成させたホルムアルデヒドを、改変Cannizzarro反応により、メタノールおよびギ酸に触媒転換し、その後、メタノールとギ酸を、ギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で反応させる。また、ホルムアルデヒドもその触媒二量化によってギ酸メチルに転換する。ギ酸メチル自体、115(RON)の高オクタン価を有し、内燃エンジン用の燃料として機能し得る。もう1つの実施態様においては、得られるギ酸を使用してホルムアルデヒドを還元してメタノールを生成させる。
有利には、任意のメタン天然源(天然ガス、炭田メタン、メタン水和物等)から入手し得るメタンを、酸化剤と接触させることによって酸化する。酸化剤は、分子状酸素であってよく、或いは過酸化水素または酸化物触媒を含み得る。酸化物(混合酸化物)触媒は、V、Ti、Ga、Mg、Cu、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、LaまたはSnをベースとし得、必要に応じて、シリカまたはアルミナ支持体上で使用する。未反応メタンは回収し、その後、上記酸化工程に再利用する。
ギ酸メチルは、何ら副生成物を生じさせずに、その接触水素化によって或いは電気化学還元によってメタノールに転換し得る。必要に応じて、メタノールは、その後、ジメチルエーテルを生成させるに十分な条件下で脱水し得る。
得られるメタノール生成物は、種々の形で使用し得る。メタノールは、エネルギー貯蔵および輸送用の好都合且つ安全な物質である。メタノールは、内燃エンジンおよび燃料電池用の優れた燃料である。メタノールは、ジメチルエーテルを生成させるに十分な条件下で脱水し得る。ジメチルエーテルは、ディーゼル燃料の優れた代替物である。メタノールおよび/またはジメチルエーテルは、触媒によって、エチレンまたはプロピレン(並びに他のオレフィン)に転換し得る。これらの軽質オレフィンは、例えば、エタノール(エチレンの水和による)、より高炭素のオレフィンまたは芳香族のような合成炭化水素混合物およびそれらの生成物に転換し、種々の派生化学品用の原料および輸送燃料として使用し得る。また、メタノールは、単細胞タンパク質源としても有用である。
【0023】
本発明は、最初にsynガスを製造することを回避するメタン(天然ガス)の酸化的転換によるメタノールの合成方法に関する。今回、メタンを、主要生成物としてメタノールとホルムアルデヒドの混合物を生成する初期酸化工程を使用することにより、選択的に、同時に高転換率でメタノールに転換し得ることを見出した。この酸化工程の後、上記混合物を何ら分離することなく処理してメタノールの収率の有意の増大をもたらす処理工程が続く。これによって、上記方法全体は、メタンを先ずsynガスに転換してその後現在使用されているフィッシャー・トロプッシュタイプ化学によりメタノールを生成させるという必要のない、メタノール生産のために実用的なものになっている。
メタンのメタノールおよびホルムアルデヒドとの混合物への初期酸化は、約150〜700℃の温度の流体系における任意の既知の触媒酸化手順を使用し、ギ酸および二酸化炭素の形成を最低限に保ち得る。当業者であれば、この酸化をこの方法で実施する一般的な広い実施し得る条件には精通していることである。そのような酸化は、種々の酸化剤、好ましくは酸素(または空気)を使用し得る。また、過酸化水素またはその等価物による酸化も各種触媒に亘って有効である。V、Ti、Ga、Mg、Cu、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、LaまたはSn等をベースとする種々の酸化物(混合酸化物)触媒は、好ましくは、シリカまたはアルミナのような支持体上で使用する。1回のオキシジェネート形成の全体量は、一般に約20〜30%未満に保たれ、未反応メタンは再利用する。
【0024】
メタンの均質ガス相酸化においては、メタンを高圧(約3.0〜20MPa(約30〜200気圧)および高温(約200〜500℃)において酸素と反応させることが報告されている。メタノールへの選択的酸化の最適条件は広範囲に試験されている。メタノールへの選択性は系中の酸素濃度を減少させることによって増大することが観察されている。最良で、8〜10%の転換率においてメタノール形成における75〜80%の選択性が、ガラスライニング反応器(該反応器は二次反応を抑制しているようであった)を使用しての低温炎条件(450℃、6.5MPa(65気圧)、5%未満のO2含有量)において達成されている。これらの最良の反応条件(450〜500℃の温度および3.0〜6.0MPa(30〜60気圧)下で得られた殆どの他の試験においては、5〜10%のメタン転換率でもって30〜40%のメタノール選択性が報告されている。高圧においては、ガス相ラジカル反応が優勢であり、固体触媒の予測された好ましい効果を抑制している。メタノールへの選択性は、反応器の設計および形状並びに反応物の滞留時間のようなラジカル反応に影響を与える要因を制御することによってのみ適度に影響を受け得る。
およそ周囲圧(101kPa(1気圧))においては、触媒は、O2によるメタンの部分酸化において重大な役割を果たし得る。多数の触媒、主として、金属酸化物および混合酸化物が試験されている。金属も試験されているが、金属は完全酸化を助長する傾向を有する。殆どの場合、反応は約600〜800℃の温度で実施しており、ホルムアルデヒド(HCHO)が支配的な生成物として得られ、多くの場合は唯一の酸化生成物として得られていた。シリカ自体は、メタンのホルムアルデヒドへの酸化において特異な活性を示す。しかしながら、シリカ支持型酸化モリブデン(MoO3)および酸化バナジウム(V2O5)触媒によって高いメタン転換率が得られていた。にもかかわらず、ホルムアルデヒドの収率は1〜5%の範囲のままであった。モリブデン酸鉄触媒、Fe2O3(MoO3)2.25は、メタン部分酸化における最も活性な触媒であることが判明し、23%のホルムアルデヒド収率が報告されている。シリカ支持型PCl3-MoCl5-R4Sn触媒上での反応では、16%の収率が得られていた。シリカ支持型MoO3触媒は、過剰の水蒸気中で20〜25%のメタン転換率で酸化化合物(CH3OHおよびHCHO)への90%高選択性を示すことが観察されていた。メタンの部分酸化において使用した高温においては、触媒表面上に形成されたメタノールは、ホルムアルデヒドおよび/または炭素酸化物に急速に分解または酸化し、得られる生成物混合物中でのその不存在を説明している。
【0025】
副生成物の形成を最小限とし、メタノールへの選択性を増大させるには、低めの反応温度(<250℃)の使用が好ましい。しかしながら、現在使用されているメタン酸化用の触媒は、低めの温度では十分に活性ではない。ガス相反応は高温(>400℃)を一般に必要とするので、より穏やかな温度で操作する液相反応を使用し得る。例えば、メタノールは、超酸中でのメタンの求電子酸素化(例えば、酸素官能化)によって得ることができる(Olah et. al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1978, 17, 909)。メタンを、室温において超酸(濃硫酸よりも何百万倍も強いブレーンステッド酸)中で過酸化水素(H2O2)と反応させる場合、メタンは高選択性でメタノールを生成する。反応は、強酸中で、プロトン化過酸化水素、H3O2+のメタンC-H結合中への挿入により進行する。強酸系中で形成されたメタノールは、プロトン化形、CH3OH2+形であり、さらなる酸化から保護されており、観察される高選択性をもたらす。液体超酸の一般的な高コストを考慮すれば、より安価な過酸化物および強酸系を使用し得る。
メタンの酸化によって生成させたメタノールは、強酸系中でそのように化学的に保護されて、硫酸または発煙硫酸中に溶解させた金属および金属複合体触媒を主として使用するその後の酸化を抑制する(Periana et al. Science, 1993, 259, 340)。数種の均質触媒系は、これらの条件下で、他方では極めて非反応性のメタンのC-H結合を低めの温度で且つ驚くべき高選択性で活性化させる。200℃辺りの温度においては、HgSO4触媒を使用する濃硫酸によるメタンのメタノールへの転換が効率的である。メタンの酸化は硫酸水素メチル(CH3OSO3H)を生成し、これは、分離工程においてメタノールに加水分解し得る。50%の転換率において、硫酸水素メチルへの85%の選択性が達成されている。触媒サイクルを完成させるには、Hg+をHg2+にH2SO4によって再酸化する。全体として、上記方法は、生成させるメタノールの1分子に対して1分子の硫酸を使用する。工程中に発生したSO2は容易にSO3に酸化し得、これは、H2Oと反応すると再利用し得るH2SO4を生成する。
【0026】
しかしながら、硫酸水素メチルのメタノールへの開裂およびその硫酸媒体からの分離は、硫酸の再生を必要とするエネルギー消費性の面倒な方法である。また、有毒性の水銀の使用は、上記方法を幾分魅力のないものにしている。しかしながら、白金、イリジウム、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよび金のような無毒性金属もメタン酸化においては使用し得、最良の結果は、H2SO4中の白金複合体によって得られる。
酸化反応中に形成された水は次第に硫酸を希釈するので、硫酸の酸度を低下させる。白金の活性は、水銀および殆どの金属系の活性と同様に、低酸度において急速に低下するので、上記酸化的転換は、発煙硫酸(H2SO4とSO3の混合物)中で行っている。SO3は反応中に生成した水と反応してH2SO4を生成し、それによって酸度の低下を回避している。
メタノールは、空気または酸素による直接メタン酸化においては、大部分のホルムアルデヒド(およびギ酸)と一緒に少量しか形成されないので、今回、この混合物を事前に分離することなく第2処理工程においてさらに処理し、メタノール含有量の実質的な増大をもたらし、本方法全体をメタノールの商業的生産において選択性且つ実用的にし得ることを見出した。酸化工程において形成されたホルムアルデヒドとギ酸のこの後処理は、種々の方法で実施し得る。
1つの実施態様によれば、ホルムアルデヒドを、いわゆるカニツァロ(Cannizarro)反応の変法において、適切な担体上に付着させたCaOおよびMgOのような固体塩基触媒上で処理してメタノールとギ酸を生成させる。これらの生成物は、互いに容易に反応してギ酸メチルを形成する。
2 HCHO → CH3OH + HCCOH
CH3OH + HCOOH → HCOOCH3 + H2O
【0027】
ホルムアルデヒドのギ酸メチルへの転換を実施する別の方法は、ティッシェンコ(Tischenko)反応の修正法、即ち、約120〜180℃の温度範囲においてホルムアルデヒドをギ酸メチルに転換するアルミニウムアルコシド触媒による或いはCu、PbO、SnO2-V2O5、Fe2O3-V2O5、SnO2-MoO3、SnO2-Sb2O5またはZrO2触媒によるホルムアルデヒドの触媒二量化を含む。熟練化学者であれば、この場合も、これらの反応を高い転換率および収率で実施するに当っての一般的な実際的および実施可能な条件には精通していることである。
【0028】

その後、CannizarroまたはTischenko反応によって得られたギ酸メチルを亜クロム酸銅触媒上で接触水素化して、副生成物なしで2モルのメタノールを得る。また、ギ酸メチルは、Cu、Sn、Pb電極を使用しての電気化学還元することもできる。
HCOOCH3 + H2 → 2 CH3OH
即ち、全体的反応は、下記である:
【0029】
2H2
2CH2O → 2CH3OH
【0030】
Cannizarroタイプ反応において形成させたギ酸は、それ自体、ホルムアルデヒドと熱的にまたは触媒により反応させてメタノールを生成させるときに還元剤(水素源として)作用し得る。
CH2O + HCO2H → CH3OH + CO2
これらの反応の適切な組合せは、全体的高選択性および収率でもってのメタンのメタノールへの酸化的転換を可能にする。Cannizarroタイプの反応工程との組合せにおいては、3モルのホルムアルデヒドに対して2モルのメタノールが、本出願と同日付けで出願されたEfficient And Selective Conversion Of Carbon Dioxide To Methanol, Dimethyl Ether And Derived Productsと題するG.Olah等の同時係属中の米国特許出願 [Attorney Docket No. 81722-4500]に記載されている方法に従ってさらなるメタノールを生成させるために再利用するのに利用し得る1モルの二酸化炭素と一緒に得られる;上記米国特許出願の内容は、本明細書に引用により取り込まれるものとする。
【0031】

【0032】
メタノールはジメチルエーテルに容易に脱水するので、本発明のメタンのメタノールへの酸化的転換は、燃料として或いは化学用途において使用するジメチルエーテルを生成させるのにも良好に適している。何らかの好ましい反応条件を所望する限りにおいては、一般的な試験を行ってそのような好ましいまたは最適化条件を見出し得る。
【0033】
任意の天然ガスまたはメタン供給源を、本発明に従うメタノール製造において使用し得る。通常の天然ガス源以外に、メタノールは、例えば、“バイオガス”、即ち、嫌気性菌の酸素の不存在下での有機物質の分解の結果からも発生し得る。バイオガスは、殆どの哺乳類、シロアリのような生物体または微生物の消化中の消化経路において、さらにまた、多量の腐敗中の植物が集積し得る湿地帯、沼地または湿原においても発生する。バイオガスは、種々の割合のメタンと二酸化炭素からなり、痕跡量の他の成分、例えば、硫化水素(H2S)、水素および/または一酸化炭素を含有する。
メタンをメタノールに選択的に転換する本方法は、燃料としてのおよび他の化学用途におけるメタノール数多くの応用性の点でとりわけ有利である。メタノールの安全性および汎用性は、本発明の直接転換法をとりわけ望ましいものにする。
当該技術において知られているように、メタノールは、酸素化添加剤としてガソリンと混合して、僅かな改変のみで内燃エンジンにおいて使用し得る。また、メタノールは、燃料電池内の電気を、メタノールをH2およびCOに接触改質するか或いは直接メタノール燃料電池(DMFC)内でメタノールを空気と直接反応させるかのいずれかによって発生させるのに使用し得る。DMFCは、燃料電池技術を大いに簡素化し、DMFCを携帯モバイル電子機器および発電機のような広範囲の用途に対して容易に利用可能にしている。
天然ガス(メタン)のメタノールまたはジメチルエーテルへの直接転換のもう1つの有意の利益は、パイプラインを施設または利用できない場合の即時且つ安全な燃料輸送である。LNG(液化天然ガス)は、現在極めて大型のタンカー(>200,000メートルトン)を使用し極低温条件下で海外に広く輸送され、LPGターミナルで陸揚げされ、パイプラインに供給されて増大する需要を満たし且つ消失しつつある地場天然ガス源に置換わっており、破壊的事故の潜在的危険性を含んでいる。本発明に従う天然ガスのメタノール(ジメチルエーテル)への直接転換は、天然ガス輸送の安全な代替法を提供する。
【0034】
好都合に貯蔵可能なエネルギー源および燃料である以外に、メタノールは、ホルムアルデヒド、酢酸のような種々の化学品、並びにポリマー、塗料、接着剤、建設材料、合成化学品、製薬および単細胞タンパク質のような多くの他の製品用の出発物質でもある。注目すべきは、メタノールは、単純な接触工程において、エチレンおよび/またはプロピレン、即ち、合成炭化水素およびその生成物の製造用基礎構成物へ好都合に転換し得る(例えば、メタノールからオレフィンへの、即ち、MTOプロセスにおいて)。このことは、現在化石燃料に由来している炭化水素燃料および製品が、メタンの単純な選択的転換において有利に得ることのできるメタノールから取得し得ることを意味する。
また、本発明に従うメタン(天然ガス)からのメタノール改良された効率的な直接生産は、直接酸化メタノール燃料電池内の燃料として並びに燃料および種々の製品用の合成炭化水素用の出発物質として使用し得る液体生成物中でのエネルギーの好都合な貯蔵を可能にする新たに命名したMETHANOL ECONOMYTMなる方法おける必要原材料も提供する。METHANOL ECONOMYTM法は、天然ガス源のメタノールまたはジメチルエーテルへの効率的な直接転換並びに大気また産業排気ガスであり得る二酸化炭素の化学的再利用によるこれら物質の生産に基づく。METHANOL ECONOMYTM法の概念は、有意義な利点と可能性を提供する。この方法においては、メタノールを、(1) それ自体としてまたは派生生成物の形の好都合なエネルギー貯蔵媒体;(2) メタノール燃料電池におけるような容易に輸送可能で分配可能な燃料;および(3) 現在油およびガス源から得られており、ポリマーおよび動物飼料またはヒト摂取用に使用し得る単細胞タンパク質でさえ含む炭化水素およびその製品用の原料として使用する。メタノールおよび/またはジメチルエーテルは、Nafion-H等のような固体酸性触媒上でのメタノールの処理のような任意の脱水方法を使用する開示した方法によって製造し得る。これらの生成物は、内燃エンジンまたは燃料電池内の輸送燃料としての大きな実用的用途を有する。また、ジメチルエーテルは、天然ガスの代替物としても使用し得る。両生成物は、オレフィン(エチレンおよびプロピレンのような)用並びにその後の合成炭化水素および派生生成物の製造用の原材料でもある。
【0035】
(実施例)
以下の実施例は、本発明方法の有用性を具体的に説明するが、限定するものではない。これらの実施例は、本発明方法に応用した既知の適切なまたは修正した化学反応の使用に基づく。
実施例1
窒素で希釈したメタン(20モル%)、O2 (10モル%)のガス混合物を、石英管連続流反応器内の650℃の予熱SiO2上に通し、1回通過において17%のホルムアルデヒドを得た。メタンの転換率は、30%であった。他の酸化物および混合酸化物触媒上での同様な反応によっても、約20〜50%のメタン転換率で10〜20%範囲のホルムアルデヒド収率を得ることが予測される。未反応メタンは回収する。生成するより少量のCOおよびCO2は、さらなるメタノール製造において使用し得る。該酸化工程における酸素は、空気と置換えてもよい。
その後の第2工程において、上記第1工程において生成させた生成物混合物は、何ら反応生成物を分離せずに、ガス相流動条件(100〜180℃)またはバッチ条件(150℃)いずれかでの塩基性触媒条件(CaO、MgO等)において、メタノールおよびギ酸を生じる。Cannizzaro反応における転換率および選択性は、>90%である。メタノールとギ酸は、分離してもよく、或いは下記の実施例3および4において示すようにさらに反応させてギ酸メチルを高収率で生成させてメタノールに転換することもできる。
【0036】
実施例2
ZrO2触媒上で、実施例1において得られたガス状ホルムアルデヒドを150℃で反応させて85%の転換率でもって99%の選択性でギ酸メチルを得た。他の上述した触媒も、同様な選択性および転換率をもたらすことが予測される。
実施例3
実施例1および2の方法により得られたギ酸メチルを、ガス相中の分子状水素により、亜クロム酸銅触媒上で大気圧下に100〜230℃の温度範囲にて接触還元させる。メタノールへの選択性は >90%であり、ギ酸メチル転換率は約85〜90%である。
実施例4
実施例1の相応する生成物から得られたギ酸とホルムアルデヒドの1:1混合物を、190℃の石英管反応器内のWO3/Al2O3上に通した。メタノールとギ酸メチルを、全体的に40%の収率にて2:1の比で得た。ギ酸の転換率は、70%であった。水中の1:1ホルムアルデヒドとギ酸(2〜10M 溶液)の反応をガラスライニング反応器内で250℃にて実施したところ、清浄な転換により、メタノールを60%の収率で得た。
【0037】
これらの実施例は、本発明方法の一般的有用性を例証しているが、当業者であれば、本明細書において提示した内容および教示を利用して、開示したような広範囲の他の化学品および生成物を生成させることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】メタノール由来化学生成物および物質の既知の例を示す。
【図2】発明者 George OlahによるMETHANOL ECONOMYTM法と称する本発明方法を図式的に例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少量のギ酸および二酸化炭素を含むメタノールとホルムアルデヒドの混合物を生成させるに十分な条件下でメタンを酸化する工程;前記ホルムアルデヒドを、メタノールおよびギ酸またはギ酸メチルを生成させるに十分な条件下で転換させる工程;および、その後、前記ギ酸メチルを、メタノールを形成させるのに十分な条件下で水素化により転換する工程を含むことを含む、最初にsynガスを生成させることなくメタン供給源からメタノールを製造する方法。
【請求項2】
メタノール酸化混合物をその各成分を分離することなく処理して、該混合物中の実質的に全てのホルムアルデヒドを何らの副生成物を生じさせずにメチルアルコールに転換する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ホルムアルデヒドを、固体塩基触媒により、メタノールとギ酸に転換し、その後引続き、これらメタノールとギ酸を、ギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で転換する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ギ酸を、前記ホルムアルデヒドと、メタノールを生成させるに十分な条件下で反応させることをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ホルムアルデヒドを、ギ酸メチルを形成させるに十分な条件下で触媒二量化に供することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
メタン供給源が、天然ガス、石炭ガスまたはメタン水和物である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
メタン供給源を、メタノールとホルムアルデヒドを実質的に形成させるに十分な条件下で酸化剤と接触させることによって酸化する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化剤が、分子状酸素または空気および適切な触媒である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
酸化剤が、過酸化水素および酸化物触媒を含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
酸化物触媒が、V、Ti、Ga、Mg、Cu、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、LaまたはSnをベースとする単一または混合触媒であり、必要に応じて、シリカまたはアルミナ支持体上で使用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
未反応メタンを回収し、前記酸化工程に再利用させる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ギ酸メチルを、接触水素化によってメタノールに転換する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ギ酸メチルを、電気化学還元によってメタノールに転換する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
メタノールを、ジメチルエーテルを生成させるに十分な条件下で脱水することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
ジメチルエーテルを酸-塩基またはゼオライト触媒の存在下に加熱して、エチレンまたはプロピレンを形成させることをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
エチレンまたはプロピレンを、化学品用の原料としてまたは輸送燃料として使用する、高級オレフィン、合成炭化水素または芳香族並びにそれらの生成物のいずれかに転換することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
エチレンまたはプロピレンを水和してエタノールまたはプロパノールを形成させることをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
ジメチルエーテルを、家庭または産業使用における加熱目的用の天然ガスおよびLPGの代替物として使用する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
十分量のジメチルエーテルを通常のディーゼル燃料と混合することによって改良されたディーゼル燃料を調製することをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
メタノールとホスゲンとの反応によってまたはメタノールの酸化的カルボニル化によって炭酸ジメチルを形成させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
十分量の炭酸ジメチルを通常のディーゼル燃料と混合することによって改良されたディーゼル燃料を調製することをさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
メタノールをガソリンに添加することによって輸送燃料を調製することをさらに含み、該燃料が少なくとも15体積%の最低ガソリン含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
メタノールまたはジメチルエーテルを、LNGまたはLPGの使用および輸送における固有の不利益または危険性を最小限にするまたは排除するための好都合なエネルギー貯蔵および輸送物質として使用することをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項24】
メタノールを、ヒトまたは動物栄養用の単細胞タンパク質の製造において使用することをさらに含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−537956(P2008−537956A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506655(P2008−506655)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013743
【国際公開番号】WO2006/113294
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(301040556)ユニヴァーシティー オブ サザン カリフォルニア (15)
【Fターム(参考)】