説明

モジュールとその製造方法

【課題】回路基板と、この回路基板の表層に設けられた配線パターンに実装された電子部品と、これらを封止する絶縁性樹脂と、絶縁性樹脂の上に設けられた金属ペースト等からなる導電性樹脂層等から形成された従来の回路モジュールでは、必要なシールド性が得られない場合があった。
【解決手段】基板部103と、電子部品104と、これらを封止するモールド部102と、この断面に第1のダレ部110を伴って露出した上向内層配線107と、第2のダレ部111を伴って露出した下向内層配線109と、前記モールド部102の表面と、を覆うスパッタによる金属膜からなるシールド部112と、を有するモジュール101であって、前記第1のダレ部110より、第2のダレ部111の大きさや面積等を大きくすることで、シールド部112の厚みが薄くなりやすい、基板部103の裏面電極108側において、シールド特性を高めたモジュール101とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やパソコンの無線LAN等に使われるモールド成型されたモジュールとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のモジュールについて、図7を用いて説明する。
【0003】
図7は、従来のモジュールの断面図を示す。図7において、従来の回路モジュール1は、回路基板5と、この回路基板5の表層に設けられた配線パターン4に実装された、半導体チップや積層セラミックコンデンサ、角チップ抵抗器等の電子部品6と、これら電子部品6等を封止する絶縁性樹脂2と、絶縁性樹脂2の上に設けられた金属ペースト等からなる導電性樹脂層3等から形成されている。
【0004】
そして、回路基板5に内蔵されたグランド層7と一部が、導電性樹脂層3に電気的に接続され、導電性樹脂層3を、シールドとしている。
【0005】
なおこうしたモジュールとしては、以下の特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−286915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の回路モジュール1において、充分なシールド効果が得られない場合があった。
【0008】
特に、導電性樹脂層3は、導電粉を、絶縁性樹脂に分散させてなる導電性ペーストからなるため、回路基板5の側面に露出したグランド層7(例えば、グランド層7は、銅箔等からなる)の端面に塗布することになるため、導電性樹脂層3とグランド層7との接触抵抗(あるいは接続抵抗)が高く、更にグランド層7の露出面の酸化等の影響を受けやすい。
【0009】
また回路基板5の薄層化、ファインパターン化に伴い、内蔵されるグランド層7の厚みが低下するため、回路基板5の側面に露出するグランド層7の露出面積が低下するため、導電性樹脂層3とグランド層7との接触抵抗(あるいは接続抵抗)が増加してしまう。
【0010】
本発明は、回路基板の切断面において、グランド配線となる内部配線を露出させた場合でも、グランド層と、シールドを構成する金属膜との間の電気的接続の低抵抗化や、安定化に対応するモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のモジュールは、芯材にエポキシ樹脂を含浸した絶縁層と、銅箔の光沢面が上向きの上向内層配線と、光沢面が下向きの下向内層配線と、上面配線と、裏面配線と、を有する回路基板と、
前記上面配線に実装された電子部品と、この電子部品を前記基板部上でモールド封止するモールド部と、この断面に第1のダレ部を伴って露出した前記上向内層配線と、第2のダレ部を伴って露出した前記下向内層配線と、前記封止部の表面と、を覆うスパッタによる金属膜と、を有するモジュールであって、前記第1のダレ部より、第2のダレ部を大きくしたモジュールとする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により本発明のモジュールは、特にスパッタによる金属膜からなるシールド部の厚みが薄くなり、シールド性が低下しやすい基板部の下側(即ち、マザー基板側、あるいは裏面配線側)において、特に第1のダレ部を、第2のダレ部の大きさ(幅、あるいは厚み、あるいは面積のいずれか1つ以上)を大きくすることで、グランドとなる内部配線と、シールド部となる金属膜との間の接続抵抗を小さくすることができ、モジュールの電気的な接続信頼性やシールド性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)(B)は、共に本発明の実施例1におけるモジュールの断面図
【図2】(A)〜(E)は、共にモジュールの製造方法の一例を説明する断面図
【図3】(A)(B)は、共に電子部品が実装された基板部を、ダイシング装置を用いて分割する様子を部分拡大して説明する断面図
【図4】発明者らが作成したモジュールのSEMによる断面写真
【図5】(A)〜(C)は、それぞれ図4の部分拡大写真
【図6】(A)〜(C)は、それぞれ図5(A)〜(C)の模式図
【図7】従来のモジュールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
以下、実施例1のモジュールについて図面を用いて説明する。図1(A)(B)は、共に本発明の実施例1におけるモジュールの断面図である。
【0015】
図1(A)(B)において、101はモジュール、102はモールド部、103は基板部、104は電子部品、105は半田部、106は上面配線、107は上向内層配線、108は裏面配線、109は下向内層配線、110は第1のダレ部、111は第2のダレ部、112はシールド部、113は絶縁層、114は光沢面、115は粗面である。
【0016】
図1(A)は、モジュール101の断面図である。図1(A)に示すように、モジュール101は、基板部103と、モールド部102と、これらを覆うスパッタで形成した金属膜からなるシールド部112と、を有している。
【0017】
基板部103は、芯材(図示していない)にエポキシ樹脂(図示していない)を含浸してなる絶縁層113と、1層以上の上向内層配線107と、1層以上の下向内層配線109と、上面配線106と、裏面配線108と、を有している。
【0018】
上面配線106とは、基板部103の、モールド部102側、あるいはモールド部102に内蔵された電子部品104側の表面に設けた配線であり、電子部品104を、半田部105を介して実装する部分に相当する。
【0019】
裏面配線108とは、基板部103の、モールド側でない部分であり、モジュール101を、他の回路基板(図示していない)やマザー基板(図示していない)に、実装するための配線である。
【0020】
上向内層配線107とは、基板部103に内蔵された内層配線の1つであり、配線を構成する銅箔の光沢面114が下向(すなわち、裏面配線108側)であるものである。なお上向内層配線107の粗面115側は、下向(すなわち、モールド部102側、あるいはモールド部102に内蔵された電子部品104側、あるいは上面配線106側)となる。
【0021】
下向内層配線109も、上向内層配線107も、共に基板部103に内蔵された内層配線の1つであり、配線を構成する銅箔の光沢面114が上向(すなわち、モールド部102側、あるいはモールド部102に内蔵された電子部品104側、あるいは上面配線106側。なお上向とは便宜上の言葉であり、モールド側と呼んでも良い)であるものである。なお上向内層配線107の粗面115側は、下向(すなわち、裏面配線108側。なお下向とは便宜上の呼び名であって、モールド側でない側と呼んでも良い)となる。
【0022】
なお、下向内層配線109も上向内層配線107も、共に片面が光沢面114の、残り面が粗面115の、銅箔(片面光沢の銅箔と呼ばれることもある)を用いることが望ましい。これは光沢面114が露光時のパターン解像度に、粗面115側がエポキシ樹脂等の絶縁層113側との密着性に、それぞれ優れているからである。なお下向内層配線109も、上向内層配線107も、共に市販の片側光沢の銅箔を用いることができる。また市販の銅箔の、片面を光沢面114とし、残り面を粗面115とするには、市販の処理液、あるいは市販の粗化処理液を用いることが有用である。
【0023】
図1(A)において、シールド部112は、スパッタ装置(図示していない)を用いて、モジュール101の5面(即ち、天井面と4つの側面の合計5面)にシールド部112となる金属薄膜を形成している。スパッタ装置を用いることで、金属薄膜の薄層化(膜厚を10μm以下、更には5μm以下、更には2μm以下)と、更に金属膜の低抵抗化が可能となる。
【0024】
またシールド部112と、グランドとなる上向内層配線107や下向内層配線109との接続部(すなわち、基板部103の断面に露出した上向内層配線107や下向内層配線109)に、第1のダレ部110、第2のダレ部111を形成することで、上向内層配線107や下向内層配線109と、シールド部112との接続面積を広げることができ、シールド部112の抵抗値を小さくし、更にシールド性を高める効果が得られる。これはスパッタ装置によって、モジュール101の5面にシールド部112となる金属薄膜を設けた場合、モジュール101の側面の膜厚が、モジュール101の天井面の膜厚より薄くなりやすいためであり、第1のダレ部110、第2のダレ部111を形成することで、上向内層配線107や下向内層配線109と、シールド部112との接続面積を広げることができ、シールド部112の抵抗値を小さくし、更にシールド性を高める効果が得られる。
【0025】
また第1のダレ部110より、第2のダレ部111の大きさ(面積、厚みのいずれか1つ以上)を大きくすることで、シールド性が低下しやすい基板部の下側(即ち、マザー基板側、あるいは裏面配線側)において、特に第1のダレ部を、第2のダレ部の大きさ(幅、あるいは厚み、あるいは面積のいずれか1つ以上)を大きくすることで、グランドとなる内部配線と、シールド部となる金属膜との間の接続抵抗を小さくすることができ、モジュールの電気的な接続信頼性やシールド性を向上させることができる。
【0026】
図1(B)は、図1(A)の第1のダレ部110や第2のダレ部111付近を部分拡大した断面図である。図1(B)に示すように、上向内層配線の光沢面114側には第1のダレ部110を、下向内層配線109の光沢面114側には第2のダレ部111を形成している。
【0027】
なお第1のダレ部110は無くても(あるいは小さくても)良いが、第2のダレ部111は、一定以上の大きさ(望ましくは下向内層配線109の0.5倍以上10倍以下)を有することが望ましい。これはシールド性が低下しやすい基板部の下側(即ち、マザー基板側、あるいは裏面配線側)において、第2のダレ部111を大きく(幅、あるいは厚み、あるいは面積のいずれか1つ以上)することで、グランドとなる内部配線と、シールド部となる金属膜との間の接続抵抗を小さくするためである。
【0028】
なお基板部103は、ガラス繊維119(例えば、ガラス織布やガラス不織布)やアラミド繊維(例えば、アラミド織布やガラス織布)にエポキシ樹脂を含浸してなるプリプレグを、1層以上の銅箔を内蔵するように、積層したものを用いる。こうした基板部103として、市販のガラスエポキシ樹脂基板(ガラエポ基板と呼ばれる場合もある)を用いても良い。
【0029】
なお基板部103に用いる絶縁層113として、ガラス繊維119(例えば、ガラス織布やガラス不織布)をエポキシ樹脂で含浸、硬化してなるものを用いる以外に、アラミド繊維(例えば、アラミド織布やガラス織布)をエポキシ樹脂で含浸、硬化してなるものを用いても良い。
【0030】
絶縁層113、ガラス繊維119等の芯材を含むものを用いることで、モジュール101の下部(特に、前記下向内層配線109と前記裏面配線108との間の前記絶縁層113側の断面に設けた溝(例えば後述する図5や図6の溝121)を設けた場合でも、溝の成長を芯材で制御することができるためである。またクラック等を溝した場合、絶縁層113に含まれる芯材が、絶縁層113に含まれるエポキシ樹脂が、溝から外部に欠落することを防止する。
【0031】
なおモールド部102は、熱膨張係数等の調整用の無機フィラー120等を添加したエポキシ樹脂等からなる封止材を用いる。
【0032】
上面配線106、上向内層配線107、下向内層配線109、裏面配線108等を構成する銅箔としては、電気銅や圧延銅を用いる。銅箔の厚みは、12μm、18μm、36μm等を選ぶことで、その基板部103からの露出部(更には第1のダレ部110、第2のダレ部111)の形成が容易となる。
【0033】
またシールド部112を構成する金属薄膜は、銅を主体としたもの、すなわち銅の含有率が70wt%、望ましくは90wt%のものとし、その厚みは0.1μm以上5.0μm以下が望ましい。銅の含有率が90wt%未満の場合や、厚みが0.1μm未満の場合、電気抵抗が増加する場合がある。また厚みが5.0μmを超えると、成膜時の残留応力等の影響を受ける場合がある。
【0034】
なおシールド部112を構成する金属薄膜の防錆の目的で、NiやZn等の金属材料の添加、あるいは合金化は有用である。またシールド部112を複数の金属層とすることも有用である。この場合、最表層には防錆性に優れたNi等の金属材料を用いることが望ましい。なお内層側には、銅を主体とすることが望ましいが、これは基板部103からの銅箔の露出部との接続抵抗を下げるのに有用な為である。また銅は、電気抵抗が低く、シールド性(EMI及びEMC)に優れている。また内層側に、チタン等を用いることで、基板部103(あるいは絶縁層113)との密着性を高められる。
【0035】
以上のように、芯材にエポキシ樹脂を含浸した絶縁層113と、銅箔の光沢面114が上向きの上向内層配線107と、光沢面114が下向きの下向内層配線109と、上面配線106と、裏面配線108と、を有する基板部と、前記上面配線106に実装された電子部品104と、この電子部品104を基板部上でモールド封止するモールド部102と、この断面に第1のダレ部110を伴って露出した前記上向内層配線107と、第2のダレ部111を伴って露出した前記下向内層配線109と、前記封止部の表面と、を覆うスパッタによる金属膜と、を有するモジュール101であって、前記第1のダレ部110より第2のダレ部111を大きくしたモジュール101とすることで、金属膜と、グランドとなる内層配線との間の接続抵抗を小さくし、シールド効果を高めることができる。
【0036】
(実施例2)
次に、実施例2として、実施例1で説明したモジュール101の製造方法の一例について、図2から図3を用いて説明する。
【0037】
図2(A)〜(E)は、共にモジュール101の製造方法の一例を説明する断面図である。116は矢印、117は接着層であり、例えばダイシングテープとして市販されているものを使うことが有用である。118はダイシング溝であり、ダイシングによって形成された分割溝に相当する。
【0038】
図2(A)の矢印116に示すように、基板部103に電子部品104を実装する。なおガラスエポキシ樹脂基板等からなる1枚の大きな基板部103の上に、複数個の電子部品104を実装し、後で切断し、複数個のモジュール101とすることは有用である(図示していない)。
【0039】
図2(B)は、電子部品104を基板部103に実装した様子を示す断面図である。なお実装方法は半田(図示していない)に限定する必要は無い。
【0040】
図2(C)は、電子部品104が実装された基板部103に、モールド部102を形成する様子を示す断面図である。モールド部102は、市販のモールド材料(例えば、エポキシ樹脂に熱膨張係数調整用のセラミックフィラー120等を添加したもの)を使うことができる。またモールドには、金型やプレス、加熱装置(これらは図示していない)を用いることは有用である。
【0041】
またこうして得たサンプルを、図2(C)に示すように、接着層117の上に固定することで、ダイシング装置(図示していない)による分割(あるいは切断)が容易となる。
【0042】
図2(D)は、図2(C)で作成したサンプルを、ダイシング装置によって所定寸法に分割(あるいは切断)する様子を示す断面図である。
【0043】
図2(E)は、図2(D)で得たサンプルの表面に、スパッタ装置(図示していない)を用いて、シールド部112となる金属膜を形成する様子を説明する断面図である。なお図2(D)から図2(E)の状態において、個別に分割(あるいは切断)されたサンプルを、別の接着層117で張り替えても良い。
【0044】
なお図2(A)〜(E)において、基板部103の表面に形成された、電子部品104実装用の上面配線106や、裏面配線108、上向内層配線107や下向内層配線109、あるいはソルダーレジスト等は図示していない。
【0045】
なお図2に示すように、1枚の基板部103に、複数個の電子部品104を実装し、これら全体を一度にモールド用の封止材で覆い、1つの大きな封止構造体とし、この封止構造体(例えば、図2(C))を、ダイシング装置等で、複数に分割(あるいは切断)することで、個々のモジュール101とすることは有用である。
【0046】
次に、図3を用いて更に詳しく説明する。図3(A)(B)は、共に電子部品104が実装された基板部103を、ダイシング装置を用いて分割する様子を部分拡大して説明する断面図である。図3(A)はダイシングする前、図3(B)はダイシングした後の状態をそれぞれ示す。
【0047】
図3(A)に示すように、基板部103は、1層以上の上向内層配線107と、1層以上の下向内層配線109と、これらを層間接続する複数の絶縁層113と、を有している。なお図3(A)(B)において、基板部103の表面に設けた上面配線106や裏面配線108、ソルダーレジスト122、複数の内層間を層間接続するビア部分等は、図示していない。
【0048】
図3(A)において、上向内層配線107は、基板部103の上側に設けた上面配線106側(上面配線106は図示していない)に、その光沢面114を向けた状態で1層以上が、下向内層配線109は、基板部103の下側に設けた裏面配線108側(裏面配線108は図示していない)に、その光沢面114を向けた状態で、1層以上が、それぞれ内蔵されている。
【0049】
次に、図3(B)に示すように、下向内層配線109と裏面配線108との間の絶縁層113側の断面に、溝121を形成することで、第1のダレ部110より第2のダレ部111を大きくすることができる。
【0050】
図3(B)は、ダイシングした後の状態を示す。図3(A)に示すように、ダイシング装置の回転刃(図示していない)を矢印116に示すように、基板部103に当てて、溝121を形成する。
【0051】
図3(B)において、第1のダレ部110とは、上向内層配線107の光沢面114に発生させたダレ部である。ここでダレ部とは、ダイシングの回転刃の回転に伴い、銅箔の一部がダレ部(あるいは一種のバリ部)となった部分である。
【0052】
図3(A)に示すように、基板部103の中央部より上(すなわち上面配線106側)に、上向内層配線107を設けることで、上向内層配線107に発生する第1のダレ部110を、上向内層配線107の粗面115側に発生したダレ部(図示していない)より大きくすることができる。このように、上向内層配線107の光沢面114側に設けた第1のダレ部110を、粗面115側に設けたダレ(図示していない)より大きくすることで、上向内層配線107と絶縁層113との密着性を高めながらも、上向内層配線107の断面部分(この断面部分には、第1のダレ部110も含む)、シールド部112との密着面積を大きくすることができる。
【0053】
また図3(B)に示すように、基板部103の中央部より下(すなわち裏面配線108側)に、下向内層配線109を設けることで、下向内層配線109の光沢面114側に発生させた第2のダレ部111を、下向内層配線109の粗面115側に発生したダレ部(図示していない)や、上向内層配線107の粗面115側に発生したダレ部(図示していない)や、上向内層配線107の光沢面114側に設けた第1のダレ部110より、大きくすることができる。このように、下向内層配線109の光沢面114側に設けた第2のダレ部111を、これらダレ部より、より大きくすることで、下向内層配線109とシールド部112との密着面積を大きくすることができる。これは、スパッタでシールド部112を形成した場合、基板部103の上側(即ち上面配線106側、あるいはモールド部102側)より下側(即ち配線側)が、その金属膜厚が薄くなり、シート抵抗が増加する課題の解決に有用である。
【0054】
以上のように、少なくとも、銅箔の光沢面114が上向きの上向内層配線107と、光沢面114が下向きの下向内層配線109と、上面配線106と、裏面配線108と、を有する回路基板(あるいは基板部103)に、電子部品104を実装する実装工程と、前記電子部品104を前記回路基板上で樹脂モールドし、モールド構造体とする封止工程と、前記モールド構造体を、ダイシング装置を用いて複数に切断する切断工程と、この切断工程で得られた切断品の5面を覆う金属膜を、スパッタで形成する金属膜工程と、を有するモジュール101の製造方法であって、前記切断工程によって、上向内層配線に第1のダレ部110を、下向内層配線に、第1のダレ部より大きい第2のダレ部111を形成し、金属膜工程で、前記第1のダレ部110を有する上向内層配線と、第2のダレ部を有する下向内層配線とに、一度に金属膜を形成することで、シールド性の高いモジュール101を製造することができる。
【0055】
(実施例3)
実施例3を用いて、実施例1や実施例2で説明したモジュール101の発明者らによる試作品の一例について説明する。
【0056】
図4は、発明者らが作成したモジュール101のSEM(走査型電子顕微鏡)による断面写真の一例である。図4において、119はガラス繊維、120はフィラー、121は溝、122はソルダーレジストである。図4において、上面電極、裏面電極、電子部品104、モールド部102等は図示していない。
【0057】
図4に示すように、モジュール101は、芯材(例えばガラス繊維119)にエポキシ樹脂を含浸した絶縁層113と、銅箔の光沢面114が上向きの上向内層配線107と、光沢面114が下向きの下向内層配線109と、上面配線106と、裏面配線108と、を有する回路基板と、前記上面配線106に実装された電子部品104(図示していない)と、この電子部品104を前記回路基板上でモールド封止するモールド部102(図示していない)と、この断面に第1のダレ部110を伴って露出した前記上向内層配線107と、第2のダレ部111を伴って露出した前記下向内層配線109と、前記封止部の表面と、を覆うスパッタによる金属膜と、を有している。
【0058】
そして、モジュール101を構成する絶縁層113の側面に溝121を設け、この溝121に、下向内層配線109の一部を充填することで、第2のダレ部111を大きくしている。更に下向内層配線109と裏面配線108との間の絶縁層113の断面に、複数の溝121を設けることで、第1のダレ部110より第2のダレ部111を大きく形成することは有用である。これは、スパッタでシールド部112となる金属膜を形成した場合、下側(即ち裏面配線108側)ほど、シールド部112の厚みが薄くなり、シールド部112のシート抵抗が増加するため、グランドとなる銅箔との接続が難しくなるためである。
【0059】
図4において、溝121は、基板部103(あるいは絶縁層113)の側面(あるいは、ダイシング溝118)に、複数設けることが望ましい。なお複数とは、1つの溝121の一部が複数に枝分かれしているものも含む。これは溝121が1つだけであっても、複数に枝分かれしていれば、この溝121に銅箔の一部を充填しやすくなり、また絶縁層との密着性(あるいはアンカー効果)を高める効果が得られるためである。
【0060】
なお溝121は、基板部103の4つの側面(あるいは4つのダイシング溝118に面した面)に、それぞれ設けることが望ましい。こうすることで、モジュール101の全ての側面で、この溝121に銅箔の一部を充填しやすくなり、また絶縁層113との密着性(あるいはアンカー効果)を高める効果が得られる。
【0061】
溝121は、絶縁層113側、特に下向内層配線109と裏面配線108(裏面電極は図示していない)との間の絶縁層113側の断面に、積極的に設けたクラックや、割れとすることは有用である。
【0062】
溝121を、下向内層配線109と裏面配線108との間の、絶縁層113に積極的に設けることは有用である。またこの溝121に、下向内層配線109の一部を、第2のダレ部111として充填することで、第2のダレ部111を大きくすることができ、シールド部112と下向内層配線109との接続抵抗を小さくできる。
【0063】
またこの溝121を利用して、(すなわち溝121の一部に、下向内層配線109を構成する銅箔の一部をダイシング時に充填、あるいは押し込むことで)、第2のダレ部111を、より効果的に大きくできる。
【0064】
なお溝121を利用することで、第1のダレ部110より、第2のダレ部111を大きくしやすいことは言うまでも無い。
【0065】
なお溝121の内部に、シールド部112の一部が入っても良いが、溝121を、シールド部112となる金属膜が充填する必要は無い。
【0066】
図4において、倍率は200倍であり、H型のスケールが100μmの長さを示している。
【0067】
図5(A)〜(C)は、それぞれ図4の部分拡大写真である。図5(A)は、図4に示した上向内層配線107と、シールド部112との接続部分の拡大図である。図5(A)に示すように、上向内層配線107の光沢面114側に第1のダレ部110を設けることで、上向内層配線107と、シールド部112となる金属膜との密着面積を増加させ、互いの密着強度や接触抵抗を小さくできる。なお上向内層配線107の粗面115側に、ダレ部(番号は付与していない)を設けても良いが、このダレ部の大きさは、粗面115程度に抑えることが望ましい。これは第1のダレ部110が、上向内層配線107の光沢面114側と、この光沢面114側に接した絶縁層113との密着の低さを利用するためである。
【0068】
図5(B)は、図4に示した下向内層配線109と、シールド部112との接続部分の拡大図である。図5(B)に示すように、下向内層配線109の光沢面114側に第2のダレ部111を設けることで、上向内層配線107と、シールド部112となる金属膜との密着面積を増加させ、互いの密着強度や接触抵抗を小さくできる。なお下向内層配線109の粗面115側に、ダレ部(番号は付与していない)を設けても良いが、このダレ部の大きさは、粗面115程度に抑えることが望ましい。これは第2のダレ部111が、上向内層配線107の光沢面114側と、この光沢面114側に接した絶縁層113との密着の低さを利用するためである。
【0069】
また溝121を設け、この溝121の一部に、下向内層配線109の一部を第2のダレ部111として充填することは有用である。
【0070】
なお図5(B)に示すように、溝121を、一種のクラック(あるいは割れ)を利用した場合であって、絶縁層113に内蔵されたガラス繊維119によって、それ以上の成長が抑制されるので、信頼性等に影響を与えることはない。
【0071】
図5(C)は、図4に示したスケールを拡大したものであり、H型のスケールが100μmを示している。図5に示すように、溝121の最大長さは200μm以下(望ましくは100μm以下)、溝121の厚み(あるいは高さ)は、50μm以下(望ましくは30μm以下)が望ましい。溝121の最大長さが200μmを超え、あるいは厚みが50μmを超えた場合、ガラス繊維119による抑制効果が低下する場合がある。
【0072】
図6(A)〜(C)は、それぞれ図5(A)〜(C)の模式図である。
【0073】
図6(A)は、図5(A)に示した上向内層配線107と、シールド部112との接続部分の模式図である。図6(A)に示すように、上向内層配線107の光沢面114側に第1のダレ部110を設けることで、上向内層配線107と、シールド部112となる金属膜との密着面積を増加させ、互いの密着強度や接触抵抗を小さくできる。なお上向内層配線107の粗面115側に、ダレ部(番号は付与していない)を設けても良いが、このダレ部の大きさは、粗面115程度に抑えることが望ましい。これは第1のダレ部110が、上向内層配線107の光沢面114側と、この光沢面114側に接した絶縁層113との密着の低さを利用するためである。
【0074】
図6(B)は、図5(B)に示した下向内層配線109と、シールド部112との接続部分の模式図である。図6(B)に示すように、下向内層配線109の光沢面114側に第2のダレ部111を設けることで、上向内層配線107と、シールド部112となる金属膜との密着面積を増加させ、互いの密着強度や接触抵抗を小さくできる。なお下向内層配線109の粗面115側に、ダレ部(番号は付与していない)を設けても良いが、このダレ部の大きさは、粗面115程度に抑えることが望ましい。これは第2のダレ部111が、上向内層配線107の光沢面114側と、この光沢面114側に接した絶縁層113との密着の低さを利用するためである。
【0075】
また溝121を設け、この溝121の一部に、下向内層配線109の一部を第2のダレ部111として充填することは有用である。
【0076】
なお図6(B)に示すように、溝121を、一種のクラック(あるいは割れ)を利用した場合であって、絶縁層113に内蔵されたガラス繊維119によって、それ以上の成長が抑制されるので、信頼性等に影響を与えることはない。
【0077】
図6(C)は、図5(C)に示したスケールを拡大したものであり、H型のスケールが100μmを示している。図6(C)の矢印116に示すように、溝121の最大長さは200μm以下(望ましくは100μm以下)、溝121の厚み(あるいは高さ)は、50μm以下(望ましくは30μm以下)が望ましい。溝121の最大長さが200μmを超え、あるいは厚みが50μmを超えた場合、ガラス繊維119による抑制効果が低下する場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のモジュール及びその製造方法は、シールド部となるスパッタで形成した金属膜と、モジュールのグランド電極となる下向内層配線との接続安定性を高めることができ、基板部からの漏洩ノイズを効果的に低減することで、EMIやEMC特性に優れたモジュールであり、電子機器の小型化、高密度実装、更には狭隣接実装を実現することができる。
【符号の説明】
【0079】
101 モジュール
102 モールド部
103 基板部
104 電子部品
105 半田部
106 上面配線
107 上向内層配線
108 裏面配線
109 下向内層配線
110 第1のダレ部
111 第2のダレ部
112 シールド部
113 絶縁層
114 光沢面
115 粗面
116 矢印
117 接着層
118 ダイシング溝
119 ガラス繊維
120 フィラー
121 溝
122 ソルダーレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材にエポキシ樹脂を含浸した絶縁層と、銅箔の光沢面が上向きの上向内層配線と、光沢面が下向きの下向内層配線と、上面配線と、裏面配線と、を有する基板部と、
前記上面配線に実装された電子部品と、
この電子部品を前記基板部上でモールド封止するモールド部と、
この断面に第1のダレ部を伴って露出した前記上向内層配線と、第2のダレ部を伴って露出した前記下向内層配線と、前記封止部の表面と、を覆うスパッタによる金属膜と、を有するモジュールであって、
前記第1のダレ部より、第2のダレ部を大きくしたモジュール。
【請求項2】
第1のダレ部と、第2のダレ部とは、共に、光沢面と粗面とを有する銅箔からなる内層配線の、前記光沢面に設けたものである請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
少なくとも、
銅箔の光沢面が上向きの上向内層配線と、光沢面が下向きの下向内層配線と、上面配線と、裏面配線と、を有する基板部に、電子部品を実装する実装工程と、
前記電子部品を前記基板部上で樹脂モールドし、モールド構造体とする封止工程と、
前記モールド構造体を、ダイシング装置を用いて複数に切断する切断工程と、
前記切断工程で得られた切断品の5面を覆う金属膜を、スパッタで形成する金属膜工程と、
を有するモジュールの製造方法であって、
前記切断工程によって、前記上向内層配線に第1のダレ部を、前記下向内層配線に、前記第1のダレ部より大きい、第2のダレ部を形成し、
前記金属膜工程において、前記第1のダレ部を有する前記上向内層配線と、前記第2のダレ部を有する前記下向内層配線とに、前記金属膜を形成するモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−159787(P2011−159787A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20044(P2010−20044)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】