説明

モータとその制御装置

【課題】モータの負荷が低いときに、ステータとロータの界磁極の対向面積を減少させたときも、モータ効率が良いモータとその制御装置を提供する。
【解決手段】モータ100Aは、ロータ120Aと、ステータコイル111を巻回するためのコアとして用いられるティース110bを有するステータ110Aと、を備えている。ロータ120Aは、回転中心軸方向に界磁極領域120aと鉄心領域120bから構成され、回転中心軸に沿って一方側に相対的に移動可能である。界磁極領域120aは、永久磁石123が周方向に等間隔で埋め込まれ、鉄心領域120bは、永久磁石123の周方向の配置に対し、電気角を45°遅角させる形状である。ロータ120Aが一方側に移動してステータ110Aと界磁領域120aとの回転中心軸方向の重なりが減少したとき、鉄心領域120bがステータ110Aとの回転中心軸方向の重なりを補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の電動機および発電機として使用できるモータに関し、特に、ステータとロータとを、回転中心軸の方向に沿って相対的に移動可能なモータと、そのモータのステータとロータとの回転中心軸方向の相対位置を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステータとロータとを、回転中心軸の方向に沿って相対的に移動可能なモータが知られている。例えば、特許文献1には、エンジン回転速度の増大に伴って、ステータに対するロータの対向部面積が減少する電動機兼用発電機付きエンジンおよびその制御装置の技術が開示されている。
そして、モータが車両駆動用モータとして用いられたときに、定速走行状態では、モータは高速回転で低出力トルクであることが求められる。そのような場合に、モータの高速回転を許容した上、弱め制御するための電流を減少させることが可能なように、モータとロータの回転中心軸方向の重なりを減少させる技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2004−104943号公報(図1参照)
【特許文献2】特開平5−336700号公報(段落[0023],[0024]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような構成のラジアルモータにおいて、ステータおよびロータともに電磁鋼板を積層したものとし、ロータに永久磁石を固定して界磁曲を形成した永久磁石同期モータ(IPMSM)を適用する。そして、モータの出力トルクが低くて良いときに、ロータを回転中心軸に沿ってステータとオフセットするように移動させた対向部面積を減少させた状態で回転させると、ステータとロータとの重なりが無い回転軸方向領域では、ステータで発生した磁束を受ける部分が無くモータ効率が落ちていることになる。
【0005】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、モータの負荷が低いときに、ステータとロータの界磁極の対向面積を減少させたときも、モータ効率が良いモータとその制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明のモータは、回転中心軸の周りに回転可能なロータと、ロータの外周面または内周面と対向配置され、コイルを巻回するためのコアとして用いられるティースを有するステータと、を備え、ロータに永久磁石を固定して界磁極を構成するモータであって、ロータは、界磁極を前記回転中心軸に沿って一方側に相対的に移動させられるとき、ステータと対向するロータの外周面または内周面と、ティースのロータと対向する内周面または外周面との間の磁束をやり取りする面積を縮小し、一方側の部分に界磁極を形成する第1の永久磁石を有する界磁極領域とし、一方側と反対側の他方側の部分を鉄心領域とすることを特徴とする。
【0007】
ロータの界磁極を回転中心軸に沿って一方側に相対的に移動させ、ロータの外周面または内周面とティースの内周面または外周面との間の磁束をやり取りする面積を縮小可能とするモータにあっては、低負荷状態などには、ステータとロータ間の磁束量を減少させてモータ効率を向上することが求められる。
請求項1に記載の発明によれば、ロータの界磁極領域とティースのそれぞれの対向する周面の回転中心軸方向の重なりを減少させても、ロータの鉄心領域とティースのそれぞれの対向する周面が重なっているので、コイルに低電流を流す低負荷の場合や、弱め界磁制御(以下、「弱め制御」と称する)をして、さらに、ステータとロータ間の磁束量を減少させる場合に、ロータの界磁極領域とステータのそれぞれの対向する周面の重なりが減少しても、このロータの鉄心領域がステータとの間にリラクタンストルクを発生させるので、モータが発生するトルクとステータコイルの電流値との比(以下、「モータのトルク定数」と称する)が向上し、前記した従来技術よりも低負荷時のモータ効率が向上する。
【0008】
請求項2に記載の発明のモータは、請求項1に記載の発明の構成に加え、ロータの界磁極領域の第1の永久磁石は、周方向に等間隔で埋め込まれ、ロータの鉄心領域には、第1の永久磁石と同じ周方向の配置の位相で、第1の永久磁石より弱い磁力を有する第2の永久磁石を周方向に等間隔に埋め込まれて配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、コイルに低電流を流す低負荷の場合や、弱め制御をしてさらにステータとロータ間の磁束量を減少させる場合に、ロータの界磁極領域とステータとの重なりが減少しても、このロータの鉄心領域の第2の磁石によるステータとロータ間の磁束量は、ロータの界磁極領域とステータ間の磁束量より小さいので、モータのトルク定数が向上し、前記した従来技術よりも低負荷時のモータ効率が向上する。
【0010】
請求項3に記載の発明のモータは、請求項1に記載の発明の構成に加え、ロータの界磁極領域の第1の永久磁石は、周方向に等間隔で埋め込まれ、ロータの鉄心領域は、第1の永久磁石の周方向の配置に対し、電気角を45°遅角させる形状とすることを特徴とする。
【0011】
本発明が適用されている永久磁石同期モータでは、ステータが形成する回転磁界とロータとの間では、回転子(ロータ)の永久磁石による磁界と回転磁界が吸引反発して発生する磁石トルクと、回転磁界に回転子の突極部が吸引されて発生するリラクタンストルクが発生する。そして、ステータの回転磁界に吸引されるだけのロータの鉄心領域の発生するリラクタンストルクはサイン波でその電流位相は、永久磁石による界磁極を形成した界磁極領域の場合のコサイン波である磁石トルクの電流位相の半周期の位相である。
請求項3に記載の発明によれば、ロータの鉄心領域は、第1の永久磁石の周方向の配置に対し、電気角を45°遅角させる形状とするので、鉄心領域に発生するリラクタンストルクと、界磁極領域に発生する進角0°の場合の磁石トルクとの合力が最大になり、モータ効率が向上する。
【0012】
請求項4に記載の発明のモータは、請求項3に記載の発明の構成に加え、鉄心領域は、スリット型リラクタンスコアであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、鉄心領域は、スリット型リラクタンスコアであるのでロータが一方側に相対移動しない場合は、単なる鉄心であり、一方側に相対移動して、ステータのティースの内周面と対向し、ステータの回転磁界が貫通したときにリラクタンストルクを発生する。従って、ステータのティースの内周面と対向していない場合は、なんらトルクを発生せず、フリクションロスの原因にならない。
【0014】
請求項5に記載の発明のモータは、請求項3に記載の発明の構成に加え、鉄心領域は、突極型リラクタンスコアであることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、鉄心領域は、突極型リラクタンスコアであるのでロータが一方側に相対移動しない場合は、単なる鉄心であり、一方側に相対移動して、ステータのティースの内周面と対向し、ステータの回転磁界が貫通したときにリラクタンストルクを発生する。従って、ステータのティースの内周面と対向していない場合は、なんらトルクを発生せず、フリクションロスの原因にならない。また、突極型リラクタンスコアは、磁石入り鉄心や、スリット型リラクタンスコアに比較して、ロータの鉄心領域における切り欠き量が多いので、ロータのモーメント量を小さくでき、モータ回転時の影響が少ない。
【0016】
請求項6に記載の発明のモータは、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明の構成に加え、ステータが、回転中心軸に垂直な面で、回転中心軸方向に前記一方側の端から順に、一方側端部と、中央部と、他方側端部とに3区分され、ステータの一方側端部および他方側端部は、電気絶縁皮膜で覆われた磁性材の粒子を圧粉して固めた圧粉材で構成され、ステータの中央部は、電磁鋼板を積層して構成されることを特徴とする。
また、ステータの他方側端部のティースは、回転中心軸に沿って一方側にロータを相対的に最大量移動させたとき、ステータの中央部のティースに渦電流を生じさせないだけの回転中心軸方向の厚さを有することが望ましい。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、ステータの一方側端部および他方側端部は、電気絶縁皮膜で覆われた磁性材の粒子を圧粉して固めた圧粉材で構成され、ステータの中央部は、電磁鋼板を積層して構成されているので、ロータが回転中心軸方向のどの相対移動位置にあっても、ロータの回転中心軸方向端部のいずれかからステータの側面方向に漏れる磁束により、ステータを構成する電磁鋼板に発生する渦電流を抑制できる。
この結果、ステータの中央部は、渦電流の発生が抑制され、モータの鉄損が減少する。その結果、モータのフリクショントルクを低減でき、効率の良いモータを構成できる。
【0018】
請求項7に記載の発明のモータは、請求項6に記載の発明の構成に加え、ステータの一方側端部のバックヨークを、一方側に延出させ、ステータの他方側端部のバックヨークを一方側と反対側の他方側に延出させることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、ロータを一方側に所定量移動してモータを運転するときに、ステータの一方側にはみ出したロータの界磁極領域からステータの側面(回転中心軸方向)に貫通する磁束が、圧粉材で構成されたステータの一方側端部を迂回してステータの中央部に到るのを抑制でき、ステータの中央部は、渦電流の発生を抑制され、モータの鉄損が減少する。さらに、ロータの界磁極領域からの磁束がステータのみならず、モータケースとの間に渦電流を生じさせてフリクショントルクを生じることを抑制できる。
また、ロータを他方側に移動してモータを運転するときに、ステータの他方側にはみ出したロータの鉄心領域からステータの側面(回転中心軸方向)に貫通する磁束が、圧粉材で構成されたステータの他方側端部を迂回してステータの中央部に到るのを抑制でき、ステータの中央部は、渦電流の発生を抑制され、モータの鉄損が減少する。さらに、鉄心領域からの磁束がステータのみならず、モータケースとの間に渦電流を生じさせてフリクショントルクを生じることを抑制できる。
その結果、請求項6に記載の発明のモータよりもモータのフリクショントルクを低減でき、効率の良いモータを構成できる。
また、ロータの回転中心軸に沿った移動の有無に拘わらず、バックヨークにおける磁路拡大効果により鉄損を低減することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明のモータは、請求項6または請求項7に記載の発明の構成に加え、ステータの一方側端部と中央部との間、およびステータの他方側端部と中央部との間に、それぞれ非磁性材を介設させたことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、ロータを一方側に所定量移動してステータとロータの界磁極領域との磁束をやり取りする面積を縮小して用いる。このとき、ステータの一方側にはみ出したロータの界磁極領域からステータの側面(回転中心軸方向)に貫通する磁束が、電磁鋼板で構成されたステータの中央部に貫通するのを、圧粉材で構成されたステータの一方側端部と非磁性材とで抑制する。この結果、電磁鋼板を積層して構成されたステータの中央部は、渦電流の発生を抑制され、モータの鉄損が減少する。
【0022】
同様に、ロータを他方側に所定量移動してステータとロータの界磁極領域との磁束をやり取りする面積を最大にして用いる。このとき、ステータの他方側にはみ出したロータの鉄心領域からステータの側面(回転中心軸方向)に貫通する磁束が、電磁鋼板で構成されたステータの中央部に貫通するのを、圧粉材で構成されたステータの他方側端部と非磁性材とで抑制する。この結果、電磁鋼板を積層して構成されたステータの中央部は、渦電流の発生を抑制され、モータの鉄損が減少する。
その結果、モータのフリクショントルクを低減でき、効率の良いモータを構成できる。
【0023】
特に、ステータの一方側端部とステータの中央部との間、および、ステータの他方側端部とステータの中央部との間に、それぞれ磁気抵抗の非常に高い非磁性材を介設させることにより、電磁鋼板で構成されたステータの中央部にステータの側面(回転中心軸方向)に貫通する磁束が到達するのを抑制できるとともに、圧粉材で構成されたステータの一方側端部および他方側端部のティースの回転中心軸方向の厚さを低減でき、モータをコンパクトに構成できる。非磁性材の磁気抵抗が非常に高い場合は、磁束が貫通しにくいので、非磁性材の回転中心軸方向の厚さも薄くできる。
【0024】
請求項9に記載の発明のモータは、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の発明の構成に加え、ロータの回転中心軸に沿った相対位置移動は、油圧によりなされることを特徴とする。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、ロータの回転中心軸に沿った相対位置移動は、油圧によりなされるので、モータに要求される出力トルク、発電作用による回生トルクに応じたフリクショントルクの小さい、効率の良い運転状態にモータを維持することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明のモータの制御装置は、請求項9に記載のモータを車両駆動用モータとして使用し、ロータの回転中心軸に沿った相対位置の移動を制御する位置制御手段と、車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、を備え、位置制御手段は、走行状態取得手段が取得した車両の走行状態を示す信号にもとづいて相対位置移動を制御することを特徴とする。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、位置制御手段が、走行状態取得手段が取得した車両の走行状態を示す信号にもとづいて相対位置移動を制御するので、車両の走行状態に対応したモータの出力トルクまたは発電作用による回生トルクを実現するときに、モータの効率の良い状態で運転できる。
【0028】
請求項11に記載の発明のモータの制御装置は、請求項10に記載の発明の構成に加え、位置制御手段は、前記車両の走行状態としてモータ回転角速度および必要トルクのうちの少なくとも1つを用いて前記相対位置移動を制御することを特徴とする。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、モータ回転角速度および必要トルクのうちの少なくとも1つを用いてロータの相対位置の移動を制御するので、車両の走行状態に対応したモータの出力トルクまたは発電作用による回生トルクを実現するときに、モータの効率の良い状態で運転できる。特に、車両が定速走行している場合は、モータに要求される出力トルク(必要トルク)は小さく、車両の加速時に要求される最大出力トルクの数分の1である。そして、そのような場合、モータの回転速度は、高速である。逆に、モータに要求される出力トルクや回生トルク(必要トルク)が大きいのは、モータの回転速度が低い車両の低速走行状態や、加速時などである。
従って、モータの回転速度の低い場合や、モータに要求される出力トルクや回生トルクである必要トルクが大きい場合は、ロータの界磁極領域の外周面とティースの内周面との間の磁束をやり取りする面積を最大にし、必要な動力を供給する。逆に、モータの回転速度のより高い場合や、モータに要求される出力トルクや回生トルクである必要トルクが小さい場合は、前記面積を縮小して、かつ、縮小した分をロータの鉄心領域の外周面とティースの内周面との間でリラクタンストルクを発生させて、モータのトルク定数を向上し、回転時の引きずり損失を低減し、モータを効率の良い状態で運転できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ステータに対するロータの界磁極の対向部面積を減少可能であって、トルクとコイルの電流値との比の大きいモータと、その制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態のモータとその制御装置の全体構成図である。
【図2】図1におけるステータとロータの断面拡大図であり、(a)は、ロータが回転中心軸方向の「最大負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図、(b)は、ロータが回転中心軸方向の「最小負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図である。
【図3】(a)は、図2の(b)におけるY−Y矢視断面図、図3の(b)は、図2の(b)におけるZ−Z矢視断面図、(c)は、第1の実施形態の変形例のモータにおける図2の(b)におけるZ−Z矢視断面図に対応する断面図である。
【図4】モータのモータ回転速度−モータトルク運転マップにおける使用可能領域と実際的な使用領域の説明図である。
【図5】比較例のモータにおけるロータをステータに対して相対的に回転中心軸方向に移動可能な永久磁石同期モータの説明図である。
【図6】磁石トルク、リラクタンストルクの電流位相差βに対する変化の説明図である。
【図7】コイル電流Iaと出力トルクTqの関係を示す説明図である。
【図8】(a)は、図2の(b)のY−Y矢視断面図に相当する第2の実施形態のステータとロータの断面図、図8の(b)は、図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する第2の実施形態のステータとロータの断面図、(c)は、図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する第2の実施形態の第1の変形例のステータとロータの断面図である。
【図9】図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する第2の実施形態の第2の変形例のステータとロータの断面図である。
【図10】第3の実施形態におけるステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図であり、(a)は、ロータが回転中心軸方向の「最大負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図、(b)は、ロータが回転中心軸方向の「最小負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
《第1の実施形態》
以下、本発明の実施の形態に係るモータとその制御装置を、図面を参照しながら説明する。図1から図3は本発明の第1の実施形態に係るモータを車両モータとして適用した場合のモータとその制御装置を示し、図1は、実施形態のモータとその制御装置の全体構成図ある。
【0033】
(全体構成)
図1に示すように、永久磁石を用いた同期モータ(IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor))であるモータ100Aは、図示しないエンジンのクランク軸と、図示しないトランスミッションの入力軸の間に直列に配置され、ロータ軸2の左右端でそれぞれと接続されている。例えば、図1においてロータ軸2の左端で、図示しないフライホイール付きダンパを介してエンジンのクランクの右端に接続され、図1においてロータ軸2の右端で、図示しない接続構造を介してトランスミッションの入力軸の左端に接続されている。
【0034】
このモータ100Aのステータ110Aは、周知のように環状のバックヨーク110aから磁極のコアを形成するように径方向内方側に突出したティース110bを多数周方向に突起させ形成され、周方向に隣接するティース110b同士の間に形成されたスロットを用いて、各ティース110bにU,V,W相を構成するステータコイル(コイル)111が、所定の手順で巻回されている。
そして、詳細な構成は後記するが、ロータ120Aが固定される環状体のロータ基部7aをロータ軸2から支持するロータディスク7は、ロータ軸2の回転中心軸Lの方向に沿って油圧により移動可能に、ボールスプライン35を用いたスプライン係合構造によってロータ軸2に取り付けられている。
ステータ110Aおよびロータ120Aの詳細な構成については後記する。
【0035】
モータ100Aのステータコイル111の電流制御のためにインバータ部130が設けられている。インバータ部130は、バッテリ133からの直流電力を三相交流電流に変換し、モータ100Aを力行作用する電動機として制御するスイッチング素子で構成された電動機制御部130aと、モータ100Aを発電機として作用させ、発電された三相交流電力を直流に変換し、バッテリ133に充電するスイッチング素子で構成された発電機制御部130bとから構成されている。
【0036】
そして、インバータ部130は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースなどを有するマイクロコンピュータを含んでおり、制御システムとして上位のエンジン制御ECU201と通信回線で接続しており、エンジン制御ECU201からのモータ100Aへの要求トルク指令を受けて、前記したマイクロコンピュータが、モータ100Aのモータ回転角を検出するモータ回転角センサ211からのモータ回転角を示す信号およびモータ回転角センサ211からのモータ回転角を示す信号を時間微分して得られるモータ回転角速度にもとづいて、電動機制御部130aと発電機制御部130bのスイッチング素子をスイッチング動作させて、例えば、d軸電流およびq軸電流の制御をする。
なお、モータ100Aはロータ軸2がエンジンのクランク軸と直結しているので、モータ回転角速度として、エンジン回転速度を使用しても良い。
【0037】
エンジン制御ECU201には、インバータ部130で算出されたモータ回転角速度、アクセル開度センサ213 、エンジンの回転速度を検出するためのクランクパルスセンサ215、車速センサ217およびブレーキペダルセンサ218などからのブレーキ踏み込み量の信号が入力される。エンジン制御ECU201のロータ位置制御部201aは、前記各センサからの信号にもとづいて油圧制御ユニット203に後記する目標位置の制御信号を出力する。油圧制御ユニット203は、ロータディスク7の回転中心軸L方向の位置(以下、単に「軸方向位置」と称する)を検出する位置センサ214からの信号と、前記したロータ位置制御部201aからの目標位置の制御信号にもとづいてロータディスク7の軸方向位置を制御する。
エンジン制御ECU201の具体的な作用については、ロータディスク7の位置制御のところで詳細に説明する。
【0038】
(ロータディスクの構造)
次に、図1を参照しながらロータディスクの構造を説明する。図1においてロータ軸2の回転中心軸Lの下半部および上半部は、それぞれ、ロータディスク7の回転中心軸Lに沿った移動量が最小(図1において左方向端)の状態(以下、この軸方向位置を「最大負荷位置」と称する)、および移動量が最大(図1において右方向端)の状態(以下、この軸方向位置を「最小負荷位置」と称する)を示している。
前記したロータディスク7の軸方向位置が「最大負荷位置」のとき、ロータ120の外周面と、それに対向するステータ110のティース110bの内周面とは、正対し、回転中心軸方向に100%重なっており、磁束をやり取りする面積が最大状態である。それに対し、ロータディスク7が図1において右方向側(一方側)に移動すると、ロータ120の外周面と、それに対向するステータ110のティース110bの内周面とは、オフセットし、磁束をやり取りする面積が縮小する。そして、ロータディスク7の軸方向位置が「最小負荷位置」のとき、回転中心軸方向の重なりは、例えば、最小の50%に重なる。
ちなみに、本実施形態におけるロータディスク7がステータ110に対して、回転中心軸方向に相対的に右方向側への移動は、特許請求の範囲に記載の「一方側に相対的に移動」に対応し、特許請求の範囲に記載の「一方側の反対側である他方側」とは、本実施形態の図1の左方向側に対応する。
【0039】
モータ100Aのロータ軸2は、その回転中心軸方向の左端部が図示省略の左ケーシングにボールベアリング32を介して支持されるとともに、右端部近くが図示省略の右ケーシングにボールベアリング34を介して支持される。
【0040】
ロータディスク7は、ボールスプライン35を介してロータ軸2の外周に、回転中心軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に支持される。ロータディスク7の右側面に対向するように、ロータ軸2の外周にピストン部材36が固定され、さらに、ピストン部材36の右側面に対向するように内側シリンダ部材37が、ロータ軸2の外周に固定される。
【0041】
ロータディスク7の外周部右側面には外側シリンダ部材38が固定されており、ピストン部材36の外周に設けたシール部材39が、外側シリンダ部材38の内周面に摺動自在に当接する。そして、ロータディスク7、ピストン部材36およびロータ軸2の間に第1のディスク油室8が画成される。第1のディスク油室8には、ロータディスク7を図1において左方向に向けて付勢するスプリング40が圧縮状態で収納される。
また外側シリンダ部材38の内周に設けたシール部材41が、内側シリンダ部材37の外周面に摺動自在に当接する。その結果、ピストン部材36、外側シリンダ部材38、内側シリンダ部材37およびロータ軸2の間に第2のディスク油室43が画成される。
【0042】
ロータ軸2の内部には、その右端面に開口する盲孔状のシャフト内油室2aが回転中心軸Lに同軸に形成されており、シャフト内油室2aを仕切るようにロータ軸2の右端開口から圧入された概略円柱状の第1のプラグ42がロータ軸2の段部に当接する位置に油密に固定される。
【0043】
また、ボールベアリング34の右側、つまり、右ケーシングの外側に、断面がEの字形で開口側が径方向内方を向いた環状の油圧供給リング44が、ロータ軸2の外周に3条所定の間隔を取って周方向に設けられた溝に位置決めされ、油圧供給リング44の内周縁44a,44b,44cとそれぞれに対応する溝との間に環状のシール45A,45B,45Cを介設させて油密に、かつ、ロータ軸2と油圧供給リング44が相対的に回転可能に取り付けられている。ロータ軸2の外周と油圧供給リング44の内周面との間には、シール45A,45B,45Cで油密された油室49A、49Bが形成され、油圧供給リング44の外周面から油室49Aに連通する油路44d、油圧供給リング44の外周面から油室49Bに連通する油路44eが設けられている。そして、油路44dには、油圧制御ユニット203からの圧力調節管50Aが、油路44eには、油圧制御ユニット203からの圧力調節管50Bが、それぞれ接続され、油圧制御ユニット203にて調圧された油圧が供給されたり、油圧が抜かれたりする。
【0044】
ロータ軸2の内部には、シャフト内油室2aを仕切るようにロータ軸2の右端開口から圧入された概略円柱状の第2のプラグ48が、ロータ軸2の段部に当接する位置に油密に固定される。第2のプラグ48の中心に形成した盲の油孔48aが、シール部材47Bを介してシャフト内油室2aを回転中心軸方向に伸びるフィードパイプ46の右端と嵌合する。油孔48aは、径方向に、例えば、120°間隔で放射状に延びる3本の油孔48b,…により、第2のプラグ48の外周に周方向に形成された環状の油溝48cに連通している。第2のプラグ48の環状の油溝48cは、ロータ軸2を径方向に貫通する複数の油孔2b,…を介して油室49Aに連通する。
【0045】
フィードパイプ46の左端は、前記第1のプラグ42の中心に形成された盲の油孔42aにシール部材47Aを介して嵌合する。第1のプラグ42は、油孔42aから120°間隔で放射状に延びる3本の油孔42b,…と、これら3本の油孔42b,…の外端に連通する環状の油溝42cと、を有している。第1のプラグ42の環状の油溝42cは、ロータ軸2を径方向に貫通する複数の油孔2c,…と、ロータディスク7の筒状部を半径方向に貫通する複数の油孔7b,…とを介して第1のディスク油室8に連通する。
【0046】
シャフト内油室2aは、ロータ軸2を径方向に貫通する複数の油孔2d,…を介して第2のディスク油室43に連通するとともに、ロータ軸2を径方向に貫通する複数の油孔2e,…を介して油圧供給リング44の油室49Bに連通する。
【0047】
(エンジン制御ECUにおけるロータディスクの位置制御)
次に、エンジン制御ECU201におけるモータ100Aの制御を具体的に説明する。エンジン制御ECU201は、アクセル開度センサ213からの運転者のアクセル踏み込み量(アクセル開度)、クランクパルスセンサ215からのエンジン回転速度、車速センサ217からの車速、ブレーキペダルセンサ218からのブレーキ踏み込み量の各信号にもとづいて、エンジン回転速度、アクセル開度、車速、ブレーキ踏み込み量の多次元マップを参照して、エンジンへのエンジン要求トルクとモータ100Aへのモータ要求トルクの演算をする。
【0048】
そして、算出したエンジン要求トルクとエンジン回転速度に応じて、例えば、燃料噴射やエンジン吸入空気量を制御し、算出したモータ要求トルクをモータ要求トルク指令としてインバータ部130へ出力する。算出されたモータ要求トルクが正値の場合は、モータ100Aを電動機として力行させる電動機モードの場合であり、算出されたモータ要求トルクが負値の場合は、モータ100Aを発電機として作用させる回生発電モードの場合である。
ちなみに、エンジン回転速度、アクセル開度、車速、ブレーキ踏み込み量の多次元マップは、エンジン制御ECU201のROMに予め格納されている。
【0049】
そして、エンジン制御ECU201のCPUは、プログラムにより前記したロータディスク7の位置制御を実行する機能部としてのロータ位置制御部201aを有している。ロータ位置制御部201aは、インバータ部130で算出されたモータ回転角速度と、前記算出されたモータ要求トルクにもとづいて、ロータ位置マップを参照して、最も効率の良いロータ位置を算出し、油圧制御ユニット203に目標位置として出力する。
ちなみに、ロータ位置マップは、エンジン制御ECU201のROMに予めモータ回転角速度およびモータ要求トルクの二次元マップの形で格納されている。
なお、エンジンのクランク軸とロータ軸2とが直結されている場合は、インバータ部130からのモータ回転角速度の代わりに、エンジン回転速度を用いることもできる。
ここで、ロータ位置制御部201a、油圧制御ユニット203および位置センサ214は、特許請求の範囲に記載の「位置制御手段」を構成しエンジン制御ECU201におけるモータ要求トルクを演算する機能の部分、モータ回転角センサ211、アクセル開度センサ213、クランクパルスセンサ215、車速センサ217、ブレーキペダルセンサ218などは、特許請求の範囲に記載の「走行状態取得手段」に相当する。
【0050】
(油圧制御ユニット)
次に、油圧制御ユニット203の概略を説明する。油圧制御ユニット203は油圧回路と、油圧回路に含まれるリニアソレノイドバルブなどを制御するCPU、ROM、RAM、インタフェース回路を含むマイクロコンピュータとを含んで構成され、前記したエンジン制御ECU201と通信回線で接続している。そして、エンジン制御ECU201のロータ位置制御部201aで算出した目標位置を、油圧制御ユニット203が受信して、位置センサ214により検出した位置をフィードバックしてロータディスク7の軸方向位置を目標位置に調節する。
【0051】
油圧制御ユニット203に含まれる図示しない油圧回路を簡単に説明する。油圧回路は、オイルタンク、オイルポンプ、第1のリニアソレノイド、高圧コントロールバルブ、高圧レギュレータバルブ、第2のリニアソレノイド、シフトコントロールバルブ、第1のシフトバルブ、第2のシフトバルブ、リリーフバルブ、オイルクーラ、フィルタを含んで構成されている。
オイルタンクからオイルポンプで汲み上げられ加圧された制御用オイルは、第1のリニアソレノイドにより作動する高圧コントロールバルブに接続された高圧レギュレータバルブにより調圧される。高圧に調圧された制御用オイルは、第2のリニアソレノイドにより作動するシフトコントロールバルブに接続された第1のシフトバルブにより、圧力調節管50A経由で油圧供給リング44の油室49Aへの供給と、圧力調節管50B経由で油圧供給リング44の油室49Bへの供給とに、流れ方向を切替え可能になっている。第1のシフトバルブが中立位置に保持されると、第1のシフトバルブに接続している圧力調節管50A,50Bは、ともに制御用オイルの流れが遮断される。
なお、前記したシフトコントロールバルブは、後記する第2のシフトバルブにも接続され、第1のシフトバルブと第2のシフトバルブを連動して動作させる。
【0052】
そして、圧力調節管50A,50Bは、第2のシフトバルブにも接続し、前記したように第1のシフトバルブから圧力調節管50Aが高圧に調圧された制御用オイルの供給を受けているとき、圧力調節管50B側は、第2のシフトバルブを介してリリーフバルブに接続し、オイルクーラおよびフィルタを経てオイルタンクに戻される。
逆に、前記したように第1のシフトバルブから圧力調節管50Bが高圧に調圧された制御用オイルの供給を受けているとき、圧力調節管50A側は、第2のシフトバルブを介してリリーフバルブに接続し、オイルクーラおよびフィルタを経てオイルタンクに戻される。
第2のシフトバルブが中立位置に保持されると、第2のシフトバルブに接続している圧力調節管50A,50Bは、ともに制御用オイルの流れが遮断される。
【0053】
圧力調節管50A経由で油圧供給リング44の油室49Aに供給された制御用の高圧オイルは、油孔2b,…、油溝48c,油孔48b、油孔48aを介して、ロータ軸2のシャフト内油室2aに収納されたフィードパイプ46の内部を流れて第1のプラグ42の油孔42aに流入し、そこから、油孔42a、径方向の油孔42b,…および周方向の油溝42cを通過し、さらに、ロータ軸2の油孔2c,…およびロータディスク7の油孔7b,…を経て第1のディスク油室8に供給される。
また、圧力調節管50B経由で油圧供給リング44の油室49Bに供給された制御用の高圧オイルは、油孔2e,…を介して、ロータ軸2のシャフト内油室2aに供給され、さらに、油孔2d,…を経て、ロータディスク7の第2のディスク油室43に供給される。
【0054】
このように、第1のディスク油室8と第2のディスク油室43に供給される制御用オイルの量を制御することで、ロータディスク7を回転中心軸方向の移動可能範囲の中の任意の位置に移動して、かつ、保持することができる。
【0055】
モータ100Aを発電機または電動機として最大回生トルクまたは最大出力トルクで機能させる場合は、ロータディスク7の第1のディスク油室8に作用する高圧オイルでロータディスク7は、図1において左方向端の「最大負荷位置」に移動させる。その結果、第2のディスク油室43の容積が縮小して該第2のディスク油室43内の制御用オイルがシャフト内油室2aに押し出され、その制御用オイルは圧力調節管50Bを介して油圧制御ユニット203の図示しないオイルタンクに回収される。
【0056】
モータ100Aを発電機または電動機のいずれにも機能させず空転させる場合は、第2のディスク油室43に作用する高圧オイルでロータディスク7は、図1において右方向端の「最小負荷位置」に移動させる。その結果、第1のディスク油室8の容積が縮小して該第1のディスク油室8内の制御用オイルがフィードパイプ46に押し出され、その制御用オイルは圧力調節管50Aを介してオイルタンクに回収される。
【0057】
なお、油圧制御ユニット203の故障、例えば、制御用オイル流出とかオイルポンプ故障などによりロータディスク7の回転中心軸方向の移動可能範囲内での位置制御が不可能な場合も、スプリング40の付勢力により、ロータディスク7の位置が「最大負荷位置」に保持されるので、モータ100Aによるトルク補助や回生発電機能は維持できる。
【0058】
(ロータおよびステータの構造)
次に、本実施形態におけるモータ100Aのステータ110Aとロータ120Aの詳細な構成について図1、図2を参照しながら説明する。
図2は、図1におけるステータとロータの断面拡大図であり、(a)は、ロータが回転中心軸方向の「最大負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図、(b)は、ロータが回転中心軸方向の「最小負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図である。
図3の(a)は、図2の(b)におけるY−Y矢視断面図、図3の(b)は、図2の(b)におけるZ−Z断面図である。図3の(c)は、第1の実施形態の変形例のモータにおける図2の(b)におけるZ−Z矢視断面図に対応する断面図である。
【0059】
本実施形態におけるモータ100Aは、前記したように永久磁石を用いた同期モータ(IPMSM)であり、ステータ110Aは、環状のバックヨーク110aと、バックヨーク110aから径方向内方側に延出されたティース110bとから構成され、周方向に隣接するティース110b、110bの間に、ステータコイル111をティース110bに巻回できるように所定の形状のスロットが形成されている。通常の永久磁石同期モータと同様に、モータ100Aのステータ110Aは、薄板の電磁鋼板113、例えば、珪素鋼板を回転中心軸方向に多数重ねて構成されている。
【0060】
ロータ基部7a(図1参照)に固定された筒状体のロータ120Aは、回転中心軸方向に図2において右方向側(一方側)の端から左方向側(他方側)に向かって界磁極領域120a、鉄心領域120bの順に構成されている。ロータ120Aの界磁極領域120aは、環状の薄板の電磁鋼板121、例えば、珪素鋼板を回転中心軸方向に多数重ねて構成され、界磁極領域120aの外周表面から所定の深さの位置に、回転中心軸方向に孔があけられている。その回転中心軸方向の孔に永久磁石123を挿入固定してあり、界磁極を形成している。この永久磁石は、界磁極領域120aの周方向に複数の界磁極を形成するように、周期的に規則的に離散配置されている。
【0061】
図2、および図2の(b)のY−Y矢視断面図である図3の(a)に示すように、ロータ120Aの界磁極領域120aでは、回転中心軸方向に垂直な横断面で2つの永久磁石123をV字形に界磁極領域120aの外周面より径方向内側に埋め込んで配置して1つの界磁極を形成している。そして、周方向に隣接する界磁極同士は、角度θ1で、例えば、45°の等間隔で周方向に配置されている。V字形の永久磁石123,123に周方向に隣接するV字形の永久磁石123,123との間に、機械角で角度θ2、例えば、22.5°ずれて、突極が形成されている。
【0062】
図2、および図2の(b)のZ−Z矢視断面図である図3の(b)に示すように、鉄心領域120bは、環状の薄板の電磁鋼板125、例えば、珪素鋼板を回転中心軸方向に多数重ねて構成され、鉄心領域120bの外周表面から所定の深さの位置に、回転中心軸方向に複数の所定の形状の孔があけられ、1組のスリット126を形成している。この1組のスリット126が、鉄心領域120bの周方向に隣接する他の組のスリット126との間に突極を形成するように、周方向に周期的に規則的に離散配置されている。そして、図3の(b)に示すように、周方向に隣接する突極同士は、角度θ1の半値である角度θ2だけ界磁極領域120aの界磁極とずれて、角度θ1の間隔、例えば、45°の等間隔で周方向に配置されている。このように構成された鉄心領域120bはスリット型リラクタンスコアと称される。
ちなみに、ステータ110Aおよびロータ120Aの電磁鋼板113,121,125として、珪素鋼板に限定されることは無く、珪素を用いない他の種類の電磁鋼板でも良い。
【0063】
ロータ120Aが、図2の(a)に示すように回転中心軸方向の前記した「最大負荷位置」にあるとき、ステータ110Aのティース110bおよびロータ120Aの界磁極領域120aの対向する内周面と外周面とは、回転中心軸方向に100%重なっており(ラップ代100%)、ロータ120Aの界磁極領域120aの回転中心軸L(図1参照)に沿って左方向側(他方側)に配置した鉄心領域120bは、ステータ110Aのティース110bの左側端面から左側にはみ出している。つまり、界磁極領域120a内の永久磁石123からティース110bへの図2の(a)中、矢印Aで示すように磁束Aは、ロータ120から径方向外方にティース110bに向かって貫通している。ちなみに、永久磁石の磁極が逆の場合は、磁束Aの矢印Aは逆向きになる。ロータ120Aがこの回転中心軸方向の移動可能範囲における「最大負荷位置」にあるとき、モータ100Aは、磁石トルクもリラクタンストルクも合わせた、最大のトルクを引き出すことが可能となる。
そして、このような軸方向位置は、モータ100Aに高負荷が要求されるときに効率の良い位置である。
【0064】
これに対し、図2の(b)中の矢印Xで示すようにロータ120Aが回転中心軸方向の移動可能範囲における前記した「最小負荷位置」に移動したとき、ステータ110Aのティース110bとロータ120Aの界磁極領域120aの対向する内周面と外周面との回転中心軸方向の重なりは、例えば、約50%(ラップ代50%)に減少している。
【0065】
しかし、ティース110bとロータ120Aの界磁極領域120aの回転中心軸方向の重なりを50%に減少させても、ステータ110Aのティース110bとロータ120Aの鉄心領域120bの内周面と外周面とは回転中心軸方向に50%重なっているので、ティース110bで発生された磁束を、ティース110bの内周面に対向している界磁極領域120aと鉄心領域120bとで100%受け取っている。コイルに低電流を流す低負荷の場合や、弱め制御をして、さらに、ステータ110Aとロータ120Aとの間の磁束量を減少させる場合に、ロータ120Aの界磁極領域120aとステータ110Aとの回転中心軸方向の重なりが減少しても、このロータ120Aの鉄心領域120bがステータ110Aとの間にリラクタンストルクを発生させるので、モータ100Aのトルク定数が向上し、前記した従来技術よりも低負荷時のモータ効率が向上する。
そして、このような「最大負荷位置」より右方向側(一方側)にロータ120Aがずれた位置は、通常走行におけるモータ100Aに要求される負荷が低いときに効率の良い位置である。
ロータ120Aは、前記した「最大負荷位置」と「最小負荷位置」とを、移動可能範囲の両端として両端を含むその間の任意の軸方向位置に設定可能である。
【0066】
図4は、モータのモータ回転速度−モータトルク運転マップにおける使用可能領域と実際的な使用領域の説明図である。図4を参照しながら、モータ100Aをエンジンの出力軸とトランスミッションの入力軸の間に配置し、車両に搭載して、エンジン出力のアシスト用および回生発電用に用いる場合のモータ100Aの使用領域について説明する。
縦軸はモータトルク(Nm)を示し、プラス(+)で示した上側の領域は、電動機として力行運転する場合(電動機モード)における出力トルクを示し、マイナス(−)で示した下側の領域は、発電機として運転する場合(回生発電モード)における回生トルクを示す。
【0067】
そして、領域Cがモータ100Aの使用可能領域を示し、その中でも符号C1で示した右斜線領域は、モータ100Aを同一電流に対して発生トルクまたは回生トルクを最大になるように制御する最大トルク電流制御を行う場合に実現される領域であり、強め領域C1と称する。ちなみに、強め領域C1でのモータ100Aの電流の制御は、リラクタンストルクを利用して効率の良い運転とするために、d軸電流がゼロでない最大トルクを与える電流位相角とするのが普通である。
【0068】
符号C2で示した左斜線領域は、モータ100Aにおいてd軸電流を積極的に流すようにし、永久磁石123の磁束を減磁する電流制御を行う場合に実現される領域であり、弱め制御領域C2(図4参照)と称する。
【0069】
そして、符号Dで示した太線で囲った領域は、車両の実走行で高頻度にモータが使用される実際的な使用領域Dを示している。図4に示すように実際的な使用領域Dは、出力可能な最大トルクに比較して低負荷(低トルク)であり、ロータ120Aを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転するのが効率的である。
【0070】
図5は、比較例のモータにおけるロータをステータに対して相対的に回転中心軸方向に移動可能な永久磁石同期モータの説明図である。モータ150のステータ110は本実施形態におけるモータ100Aのステータ110Aと同じ構成であるが、ロータ140は、ステータ110と同じ回転中心軸方向の長さを有し、本実施形態におけるロータ120Aの界磁極領域120aのみで構成されている。比較例のモータ150におけるステータ110とロータ140を、回転中心軸L(図1参照)方向に沿って右方向側に相対的にずらすと、図5の(b)に示すようにラップ代が50%に減少する。これは、永久磁石123とティース110bとの間の磁束Aの量が減少して、磁石トルクが減少するだけでなく、リラクタンストルクも減少することになり、ティース110bで発生させた磁束をロータ140で受けることはできず無駄になっており効率的なモータになっていない。
【0071】
しかし、本実施形態によれば、低負荷時にロータ120Aを「最大負荷位置」より右方向側にずらしても、図2の(b)に示したようにステータ110Aのティース110bの周面と、ロータ120Aの界磁極領域120aおよび鉄心領域120bの外周面が対向しており、ステータ110Aのティース110bにおいて発生された磁束が比較例の図5の(b)に示したように無駄にならず、効率の良い運転が可能となる。
【0072】
以下に、低負荷時にロータ120Aを「最大負荷位置」より右方向側にずらした場合の、出力トルクTqについて、図6を参照しながら詳しく説明する。
図6は、磁石トルク、リラクタンストルクの電流位相差βに対する変化の説明図である。
図3の(a),(b)に示すように、界磁極領域120aにおける1つの界磁曲を形成するV字形の永久磁石123,123を、回転中心軸Lの周りに、例えば、図中d軸の矢印で示した回転角の原点を基準にして、機械角θ1(45°)で周期的に配置し、鉄心領域120bにおける周方向に隣接する2組のスリット126の間に形成される突極を、前記した界磁極に対して、例えば、図中d軸の矢印で示した回転角の原点を基準にして、機械角θ2(22.5°)ずらして、回転中心軸Lの周りに、機械角θ1(45°)で周期的に配置してある。
【0073】
電流位相差βは、回転磁界Φaを作るコイル電流Iaおよび回転磁界Φaと、q軸との位相差であり、IaはベクトルとしてIa=[Id,Iq]Tと表わされる。
永久磁石同期モータの出力トルクTq(図6における総合トルク)は次式(1)のように表わされる。
【数1】

ここで、P:ステータ110Aの極対数
Φmag:永久磁石123による磁束
N:ステータコイルの巻数
Ld:d軸インダクタンス
Lq:q軸インダクタンス
Id:d軸電流(Id=Ia・sinβ)
Iq:q軸電流(Iq=Ia・cosβ)
【0074】
式(1)の右辺の第1項は、磁石トルクを表わし、右辺の第2項がリラクタンストルクを表わしている。リラクタンストルクの項のId×Iqは、{(1/2)×(Ia)2×sin(2β)}と表わされ、電流位相の周期がβの1/2になる。隣接する2組のスリット126,126間に形成した突極が機械角θ2(図3の(b)参照)だけd軸に対してずらして設定してあるので、図6に示すようにリラクタンストルクは、進角させてない磁石トルクに対して電流位相差(電気角)βを45°遅角させたことになり、磁石トルクとリラクタンストルクの合力である総合トルク(出力トルクTqに対応)が電流位相差βで45°弱の位相位置で最大値にすることができ、モータ効率が向上する。
その結果、ロータ120Aを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合は、界磁極領域120aによる磁石トルクよりも鉄心領域120bによるリラクタンストルクが大きく寄与し、その合力である総合トルクは、電流位相差βで45°の位相位置で最大値にすることができ、モータ効率が向上する。
【0075】
また、ロータ120Aを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合に、回転磁界Φaが比較例のように無駄にならずリラクタンストルクを得ることができるので、出力トルクTとコイル電流Iaの比、つまり、トルク定数が向上する。
【0076】
なお、ロータ120Aの鉄心領域120bの、ステータ110Aのティース110bの内周面と対向していない部分は、なんらトルクを発生せず、フリクションロスの原因にならない。
【0077】
図7は、コイル電流Iaと出力トルクTqの関係を示す説明図であり、曲線xは、本実施形態におけるロータ120Aの界磁極領域120aのラップ代が100%(軸方向位置が「最大負荷位置」)の場合のコイル電流−出力トルク特性極線であり、曲線yは、本実施形態におけるロータ120Aの界磁極領域120aのラップ代が50%(軸方向位置が「最小負荷位置」)の場合のコイル電流−出力トルク特性極線であり、曲線zは、図5に示した比較例におけるロータ140のラップ代が50%(軸方向位置が「最小負荷位置」)の場合のコイル電流−出力トルク特性極線である。
ちなみに、曲線xは、図5に示した比較例におけるロータ140のラップ代が100%(軸方向位置が「最大負荷位置」)の場合のコイル電流−出力トルク特性極線でもある。
【0078】
図7を見て分かるように、本実施形態によれば、ステータ110Aのティース110bとロータ120Aの界磁極領域120aのラップ代が100%の場合に、出力トルクの値T1を得るためには、コイル電流Iaは値I1だけ流す必要があるのに対し、ステータ110Aのティース110bとロータ120Aの界磁極領域120aのラップ代が50%の場合は、コイル電流Iaは値I1より大きな値I2だけを流す必要がある。
それに対し、図5に示した比較例の場合は、ステータ110のティース110bとロータ140のラップ代が100%の場合に、出力トルクの値T1を得るためには、コイル電流Iaは値I1流す必要に対し、ステータ110のティース110bとロータ140のラップ代が50%の場合は、コイル電流Iaは値I2よりさらに大きな値I3を流す必要がある。従って、同じ出力トルクT1を得るのに本実施形態の場合、ΔIだけ電流が低減できる。
【0079】
前記したようにモータ回転角速度およびモータ要求トルク(必要トルク)をパラメータとした二次元マップを用いてロータの相対位置の移動を制御するので、車両の走行状態に対応したモータ100Aの出力トルクまたは発電作用による回生トルクを実現するときに、モータ100Aの効率の良い状態で運転できる。特に、車両が定速走行している場合は、モータ100Aに要求される出力トルク(必要トルク)は小さく、車両の加速時に要求される最大出力トルクの数分の1である。そして、そのような場合、モータ100Aの回転速度は、高速である。逆に、モータ100Aに要求される出力トルクや回生トルク(必要トルク)が大きいのは、モータ100Aの回転速度が低い車両の低速走行状態や、加速時などである。
【0080】
まとめると、本実施形態によれば、モータ100Aの回転速度の低い場合や、モータ100Aに要求される必要トルクである出力トルクや回生トルクが大きい場合は、ロータ120Aの界磁極領域120aの外周面とティース110bの内周面との間の磁束をやり取りする面積を最大にして、必要な動力を供給したり、必要な回生トルクを吸収したりし、モータ100Aをモータ効率の良い状態で運転できる。また、モータ100Aの回転速度がより高いときや、モータ100Aに要求される必要トルクである出力トルクや回生トルクが小さい場合は、界磁極領域120aの外周面とティース110bの内周面との間の磁束をやり取りする面積を縮小し、その分を鉄心領域120bの外周面とティース110bの内周面との間の磁束をやり取りする面積で補償して、モータ100Aをモータ効率の良い状態で運転できる。
【0081】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態に係るモータ100Aにおいて、ロータ120Aの鉄心領域120bをスリット型リラクタンスコアとしたがそれに限定されるものではない。図3の(a),(c)を参照しながら第1の実施形態の変形例のモータ100Bを説明する。図3の(a),(c)に示すモータ100Bは、第1の実施形態におけるモータ100Aとは、ロータ120Aをロータ120Bに置き変えた点だけが異なり、他は第1の実施形態と同じである。
本変形例における第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0082】
モータ100Bのロータ120Bの界磁極領域120aは、第1の実施形態と同じ構成であり、鉄心領域120bだけが図3の(c)に示すように、突極型リアクタンスコアの形状をして構成されている。図3の(c)は、図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する本変形例のステータ110Aとロータ120Bの断面図である。
図3の(c)に示すように、鉄心領域120bは、ほぼ環状の薄板の電磁鋼板125、例えば、珪素鋼板を回転中心軸方向に多数重ねて構成され、鉄心領域120bの外周表面から所定の深さまで切り欠かれ、積層されることによって鉄心領域120bの回転中心軸方向全長にわたって凹部120b2が形成される。この凹部120b2は、鉄心領域120bの周方向に隣接する他の凹部120b2と間に突部120b1を残し、この突部120b1が周方向に周期的に規則的に離散配置されている。この突部120b1が突極型リラクタンスコアの突極に対応する。
【0083】
そして、図3の(c)に示すように、周方向に隣接する突極同士は、角度θ1の半値である角度θ2だけd軸とずれ、例えば、機械角45°の等間隔で周方向に配置されている。
本変形例によれば、ロータ120Bを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合は、界磁極領域120aの磁石トルクよりも鉄心領域120bによるリラクタンストルクが大きく寄与し、その合力である総合トルクは、電流位相差βで45°の位相位置で最大値にすることができ、モータ効率が向上する。
また、ロータ120Bを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合に、回転磁界Φaが比較例のように無駄にならずリラクタンストルクを得ることができるので、出力トルクTとコイル電流Iaの比、つまり、トルク定数が向上する。
【0084】
なお、ロータ120Bの鉄心領域120bの、ステータ110Aのティース110bの内周面と対向していない部分は、なんらトルクを発生せず、フリクションロスの原因にならない。
【0085】
《第2の実施形態》
第1の実施形態に係るモータ100Aのロータ120Aの界磁極領域120aにおいて、1つの界磁極を形成する永久磁石配置は、永久磁石123をV字形に2つ配置するものとしたがそれに限定されるものでは無い。他の配置で界磁極を形成しても良い。
図8の(a),(b)を参照しながら本発明の第2の実施形態のモータ100Cについて説明する。図8の(a),(b)に示すモータ100Cは、第1の実施形態におけるモータ100Aとは、ロータ120Aをロータ120Cに置き変えた点だけが異なり、他は第1の実施形態と同じである。
本実施形態における第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0086】
図8の(a)は、図2の(b)のY−Y矢視断面図に相当する第2の実施形態のステータとロータの断面図、図8の(b)は、図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する第2の実施形態のステータとロータの断面図である。
ロータ120Cは、その界磁極領域120aの界磁極が、回転中心軸方向の横断面が矩形の1枚の平板形状の永久磁石123を電磁鋼板121にあけた孔に回転中心軸方向に挿入固定して構成されている点が、第1の実施形態におけるロータ120Aと異なるだけであり、他は第1の実施形態におけるロータ120Aと同じである。
【0087】
ロータ基部7a(図1参照)に固定された筒状体のロータ120Cは、回転中心軸方向に図1において右方向側(一方側)の端から界磁極領域120a、鉄心領域120bの順に構成されている。ロータ120Cの界磁極領域120aは、環状の薄板の電磁鋼板121、例えば、珪素鋼板を回転中心軸方向に多数重ねて構成され、界磁極領域120aの外周表面から所定の深さの位置に、回転中心軸方向の横断面が矩形の孔があけられている。その回転中心軸方向の孔に回転中心軸方向の横断面が矩形の平板形状の永久磁石123を挿入固定してあり、界磁極を形成している。そして、周方向に隣接する界磁極同士は、角度θ1で、例えば、45°の等間隔で周方向に配置されている。そして、回転中心軸方向の横断面が矩形の平板形状の永久磁石123に周方向に隣接する永久磁石123との間に、機械角で角度θ2、例えば、22.5°ずれて、突極が形成されている。
【0088】
ロータ120Cの鉄心領域120bは、前記したロータ120Aにおける鉄心領域120bと同じ構成のスリット型リラクタンスコアであり、隣接する2組のスリット126同士は回転中心軸Lに対し、機械角で角度θ1の間隔で周方向に配置され、隣接する2組のスリット126同士の間に形成される突極は、図8の(a),(b)に示すように、界磁極の突極と同位相に配置されている。
【0089】
(第2の実施形態の第1の変形例)
なお、ロータ120Cの鉄心領域120bは、スリット型リラクタンスコアに限定されるものではない。図8の(a),(c)に第2の実施形態の第1の変形例のモータ100Dを説明する。
図8の(c)は、図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する本変形例のステータ110Aとロータ120Dの断面図である。図8の(a),(c)に示すモータ100Dは、第2の実施形態におけるモータ100Bとは、ロータ120Cをロータ120Dに置き変えた点だけが異なる。
【0090】
モータ100Dのロータ120Dの界磁極領域120aは、第2の実施形態と同じ構成であり、鉄心領域120bだけが図8の(c)に示すように、前記した第1の実施形態の変形例におけるロータ120Bにおける鉄心領域120bと同じ突極型リアクタンスコアの形状である。
従って、同じ構成には同じ符号を付し重複する説明を省略する。
【0091】
第2の実施形態におけるモータ100Cおよび第1の変形例におけるモータ100Dによれば、ロータ120Cまたはロータ120Dを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合は、界磁極領域120aの磁石トルクよりも鉄心領域120bによるリラクタンストルクが大きく寄与し、その合力である総合トルクは、電流位相差βで45°の位相位置で最大値にすることができ、モータ効率が向上する。
また、ロータ120Cまたはロータ120Dを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合に、回転磁界Φaが比較例のように無駄にならずリラクタンストルクを得ることができるので、出力トルクTとコイル電流Iaの比、つまり、トルク定数が向上する。
【0092】
なお、ロータ120Cまたはロータ120Dの鉄心領域120bの、ステータ110Aのティース110bの内周面と対向していない部分は、なんらトルクを発生せず、フリクションロスの原因にならない。
【0093】
(第2の実施形態の第2の変形例)
次に、図8の(a),図9を参照しながら第2の実施形態の第2の変形例のモータ100Eを説明する。
図9は、図2の(b)のZ−Z矢視断面図に相当する第2の実施形態の第2の変形例のステータとロータの断面図である。図8の(a)および図9に示すモータ100Eは、第2の実施形態におけるモータ100Bとは、ロータ120Cをロータ120Eに置き変えた点だけが異なる。
【0094】
モータ100Eのロータ120Eの界磁極領域120aは、第2の実施形態と同じ構成であり、鉄心領域120bだけが図9に示すように、前記した第1の実施形態におけるロータ120Aにおける界磁極領域120aと同じように永久磁石(第2の永久磁石)127をV字形に2つ配置し、1つの界磁極を形成し、界磁極を機械角で角度θ1で等間隔に周方向に配置し、周方向に隣接する界磁極同士の間に突極を形成させ、突極を界磁極と機械角で角度θ2だけずらし、角度θ1で等間隔に周方向に配置したものである。ここで、永久磁石127は前記した永久磁石123よりも磁力の弱いものとしたところが、ロータ120Aにおける界磁極領域120aと異なる構成である。
従って、同じ構成には同じ符号を付し重複する説明を省略する。
【0095】
第2の実施形態の第2の変形例におけるモータ100Eによれば、ロータ120Eを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合は、界磁極領域120aの磁石トルクに加えて鉄心領域120bの磁石トルクも加わり、さらに、鉄心領域120bによるリラクタンストルクも寄与し、その合力である総合トルクは、電流位相差βで45°の位相位置で最大値にすることができ、モータ効率が向上する。
また、ロータ120Eを「最大負荷位置」より右方向側にずらして運転する場合に、回転磁界Φaが比較例のように無駄にならず磁石トルクおよびリラクタンストルクを得ることができるので、出力トルクTとコイル電流Iaの比、つまり、トルク定数が向上する。
【0096】
《第3の実施形態》
次に、図10を参照しながら本発明の第3の実施形態におけるモータ100Fについて説明する。
図10は、第3の実施形態におけるステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図であり、(a)は、ロータが回転中心軸方向の「最大負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図、(b)は、ロータが回転中心軸方向の「最小負荷位置」にある場合のステータとロータの回転中心軸方向の拡大断面図である。
【0097】
本実施形態におけるモータ100Fは、前記したように永久磁石を用いた同期モータ(IPMSM)であり、ステータ110Bは、環状のバックヨーク110aと、バックヨーク110aから径方向内方側に延出されたティース110bとから構成され、周方向に隣接するティース110b、110bの間に、ステータコイル111をティース110bに巻回できるように所定の形状のスロットが形成されている。モータ100Fのステータ110Bは、図10の(a)に示すように左方向側の端から左側端部(ステータの他方側端部)110d、中央部(ステータの中央部)110c、右側端部(ステータの一方側端部)110eの順に区切られている。中央部110cは、通常の永久磁石同期モータのように薄板の電磁鋼板113、例えば、珪素鋼板を回転中心軸方向に多数重ねて構成されているが、左側端部110dおよび右側端部110eは、通常の永久磁石同期モータと異なり、所定回転中心軸方向の長さに亘って、鉄などの磁性粉に樹脂などの電気絶縁材でコーティングした粒子(電気絶縁皮膜で覆われた磁性材の粒子)をさらに樹脂をバインダとして圧縮成型した圧粉材115で形成されている。
【0098】
そして、圧粉材115のバックヨーク部分である圧粉材バックヨーク部115a,115aは、電磁鋼板113のティース部分および圧粉材ティース部115b、115bを合わせてティース110bを構成し、ティース110bをコアとして巻回されたステータコイル111の左方向側(他方側)および右方向側(一方側)の外形端部まで、回転中心軸l(図1参照)に沿って延出させてある。
ちなみに、ステータ110Bの中央部110cと左側端部110d、および中央部110cと右側端部110eとは、対向する面に接着材を塗布して接着させてからティース110bをコアとしてステータコイル111を巻回することにより、互いに固く一体化される。
【0099】
左側端部110dの圧粉材ティース部115bの回転中心軸方向の厚さは、ロータ120の図10における左方向側への回転中心軸方向の移動量が最大状態(軸方向位置が「最大負荷位置」にある状態)のとき、圧粉材ティース部115bの図10の(a)において左側側面(回転中心軸方向)からの磁束B1が電磁鋼板113に到達する前に減衰するに十分な厚さとする。また、右側端部110eの圧粉材ティース部115bの回転中心軸方向の厚さは、ロータ120の図10における右方向側への回転中心軸方向の移動量が最大状態(軸方向位置が「最小負荷位置」にある状態)のとき、圧粉材ティース部115bの図10の(b)において右側側面(回転中心軸方向)からの磁束B2が電磁鋼板113に到達する前に減衰するに十分な厚さとする。
【0100】
ロータ基部7a(図1参照)に固定された筒状体のロータ120は、前記したロータ120A,120B,120C,120D,120Eのいずれでも良い。図10においては、代表的にロータ120Aを示している。
従って、前記したモータ100A〜100Eまでのロータ120A〜120Eの構成の構成についての説明は省略する。
以下では、図10では、ロータ120は( )内に表示したように前記したロータ120Aを例示している。
【0101】
ロータ120が図10の(a)に示すように回転中心軸方向の前記した「最大負荷位置」にあるとき、ステータ110Bのティース110bおよびロータ120の界磁極領域120aの対向する内周面と外周面とは回転中心軸方向に100%重なっている(ラップ代100%)。そして、ロータ120の鉄心領域120bが左側(他方側)にはみ出している。ロータ120内の永久磁石123からティース110bへの図10の(a)中、矢印Aで示すように磁束Aは、ロータ120から径方向外方にティース110bに向かって貫通しており、ロータ120の界磁極領域120bの外周面とティース110bの内周面との磁束をやり取りする面積は100%である。
【0102】
しかしながら、永久磁石123から鉄心領域120bにわずかに漏れる磁束が矢印B1で示したように、ステータ110Bの左側端部110dの側面(回転中心軸方向)から入る。これは、ロータ120としてロータ120Eを用いる場合は、特に、鉄心領域120bに含まれる永久磁石127からの磁束によって大きな磁束B1が生じる。磁束B1は、左側端部110dの圧粉材バックヨーク部115aによって、ステータ110Bの中央部110cの電磁鋼板113のバックヨーク部への磁束の回り込みも阻止され、圧粉材ティース部115bを貫通する磁束も、圧粉材115に隣接する電磁鋼板113を回転中心軸方向に貫通しないように減衰されてしまう。
【0103】
さらに、左側端部110dの圧粉材バックヨーク部115aは、モータ100Fのステータ110Bを固定するモータケースが、導電部材で構成されている場合に、磁束がモータケースを貫通しないように規制するので、モータケースとの間に渦電流を生じさせてフリクショントルクを生じることを抑制できる。
ちなみに、永久磁石の磁極が逆の場合は、磁束Aの矢印Aは逆向きになる。
【0104】
ロータ120がこの移動可能範囲における「最大負荷位置」にあるとき、圧粉材115より磁束流れが良い中央部110cの電磁鋼板113で構成された部分の能力を最大限に利用することができる。
そして、このような軸方向位置は、モータ100Fに高負荷が要求されるときに効率の良い位置である。
【0105】
これに対し、図10の(b)中の矢印Xで示すようにロータ120が回転中心軸方向の移動可能範囲における前記した「最小負荷位置」にあるとき、ステータ110Bのティース110bとロータ120の界磁極領域120aの対向する内周面と外周面との回転中心軸方向の重なりは、例えば、約50%に減少し(ラップ代50%)、重なりが減少した界磁極領域120aの代わりに鉄心領域120bが補償している。
【0106】
そして、図10の(b)に示すように重なり部分の界磁極領域120a内の永久磁石123からティース110bへの磁束Aは、矢印Aで示すように、ロータ120から径方向外方にティース110bに向かって貫通しているが、図10の(b)においてティース110bの内周面と対向して重ならない回転中心軸方向に右側にはみ出した界磁極領域120aの永久磁石123からティース110bへの磁束B2は、ステータ110Bの右側端部110eの圧粉材バックヨーク部115aによって、中央部110cの電磁鋼板113のバックヨーク部への磁束の回り込みを阻止され、右側端部110eの圧粉材ティース部115bを貫通する磁束も、圧粉材115に隣接する中央部110cの電磁鋼板113を回転中心軸方向に貫通しないように減衰されてしまう。
【0107】
さらに、右側端部110eの圧粉材バックヨーク部115aは、モータ100Fのステータ110Bを固定するモータケースが、導電部材で構成されている場合に、磁束がモータケースを貫通しないように規制するので、モータケースとの間に渦電流を生じさせてフリクショントルクを生じることを抑制できる。
【0108】
また、左側端部110dおよび右側端部110eが、電気絶縁皮膜で覆われた磁性材の粒子を圧粉して固めた圧粉材115で構成されているので、磁束が磁性材の粒子にどの方向から貫通して、その強さが変化しても渦電流特性が方向性を持たない。
さらに、ロータ120の回転中心軸に沿った移動の有無に拘わらず、圧粉材バックヨーク部115aにおける磁路拡大効果により、鉄損を低減することができる。
その結果、ロータ120が回転中心軸方向に「最大負荷位置」から右方向のどの位置に移動しても、ステータ110Bの中央部110cの電磁鋼板113に回転中心軸方向から貫通する磁束が、ほぼゼロに抑制され、その状態でモータ100Fが無負荷で空転されても、つまり、エンジンによる連れ回しを受けても、渦電流を電磁鋼板113に生じることによる鉄損でのフリクショントルクの発生が抑制できる。つまり、モータ100Fの連れ回り時のフリクショントルクを低減するので、車両の燃費向上に寄与する。
そして、このような「最大負荷位置」より右方向側にロータ120がずれた位置は、通常走行におけるモータ100Fに要求される負荷が低いときに効率の良い位置である。
【0109】
まとめると、本実施形態によれば、モータ100Fの回転速度の低い場合や、モータ100Fに要求される必要トルクである出力トルクや回生トルクが大きい場合は、ロータ120の界磁極領域120aの外周面とティース110bの内周面との間の磁束をやり取りする面積を最大にして、必要な動力を供給したり、必要な回生トルクを吸収したりし、モータ100Fをモータ効率の良い状態で運転できる。モータ100Fの回転速度がより高い場合や、モータ100Fに要求される必要トルクである出力トルクや回生トルクが小さい場合は、前記面積を縮小して、回転時の引きずり損失を低減し、モータ100Fをモータ効率の良い状態で運転できる。
【0110】
(第3の実施形態の変形例)
なお、本実施形態のモータ100Fのステータ110Bは、電磁鋼板113を積層して構成された中央部110cと、圧粉材115で構成された左側端部110dおよび右側端部110eそれぞれとの間に非磁性材として、磁気抵抗の非常に高い材料、例えば、非磁性ステンレス鋼板を介設させても良い。このようにステータ110Bにおいて非磁性材を挟み込むことにより、中央部110cの電磁鋼板113に回転中心軸方向から貫通する可能性のある磁束を効率よく抑制できる。その結果、ステータ110Bの圧粉材ティース部115bの回転中心軸方向の厚さを低減でき、モータ100Fを回転中心軸方向によりコンパクトに構成できる。
【0111】
《その他の変形例》
第1から第3の実施形態およびその変形例では、ロータ120をロータ軸2の外周に沿って回転中心軸方向に移動させ、ステータ110A,110Bと回転中心軸方向に相対的にずらす構成とし、対向するロータ120A〜120Eの界磁極領域120aとの回転中心軸方向の重なり面積を可変としたが、それに限定されるものではない。ロータ120A〜120Eはロータ軸2に固定し、モータ100A〜100Fのケーシングに固定されたステータ110A,110Bの方をボールベアリング32,34とともにロータ軸に沿って移動させる構成でも良い。
【0112】
さらに、第1から第3の実施形態およびその変形例におけるモータ100A〜100Fのロータディスク7を回転中心軸方向に移動する油圧制御ユニット203を、トランスミッションを制御する油圧制御ユニットの一部としても良い。その場合、ロータ軸2の外周面に油圧供給リング44を配置する代わりに、ロータ軸2をトランスミッションの入力軸と一体化して、トランスミッションの入力軸の右端側から、特開平10−252850号公報の図2に記載されているように、トランスミッションのカバーに油路を2つ設けて、油圧をシャフト内油室2aと、フィードパイプ46内に供給するようにしても良い。
【0113】
また、第1から第3の実施形態およびその変形例では、モータ100A〜100Fを車両の駆動用に用いたとき、ロータ120(120A〜120E)の軸方向位置の制御における目標位置を、エンジン制御ECU201で算出したモータ要求トルク、およびモータ回転角速度にもとづいて、モータ要求トルクおよびモータ回転角速度の二次元マップを参照して算出したがそれに限定されるものではない。モータ要求トルク、またはモータ回転角速度(つまり、エンジン回転速度)にもとづいて、モータ要求トルクまたはモータ回転角速度の一次元マップを参照して目標位置を算出しても良い。
【0114】
さらに、エンジン制御ECU201がトランスミッションを制御するトランスミッション制御ECUと通信回線で結ばれ、トランスミッションのシフト位置を検出するシフト位置検出センサからの信号を受信し、エンジン制御ECU201が、シフト位置、アクセル開度、ブレーキペダルの踏み込み量、車速などから、エンジンブレーキ状態を判定し、モータ要求トルクとして最大の回生トルクを要求するため、ロータ位置制御部201aにおいて、「最大負荷位置」を目標位置として、油圧制御ユニット203に出力させるようにしても良い。
この場合、シフト位置検出センサも、特許請求の範囲に記載の「走行状態取得手段」に含まれる。
【0115】
第1の実施形態から第3の実施形態およびその変形例においては、モータ100A〜100Fは、インナロータ型のラジアルモータとしたが、それに限定されるものではなく、アウタロータ型のラジアルモータでも可能である。
【符号の説明】
【0116】
2 ロータ軸
2a シャフト内油室
2b,2c,2d,2e,7b,42a,42b,48a,48b 油孔
7 ロータディスク
7a ロータ基部
8 第1のディスク油室
35 ボールスプライン
36 ピストン部材
37 内側シリンダ部材
38 外側シリンダ部材
40 スプリング
42 第1のプラグ
42c,48c 油溝
43 第2のディスク油室
44 油圧供給リング
44a,44b,44c 内周縁
46 フィードパイプ
48 第2のプラグ
49A,49B 油室
100A,100B,100C,100D,100E,100F モータ
110,110A,110B ステータ
110a バックヨーク
110b ティース
110c 中央部
110d 左側端部(他方側端部)
110e 右側端部(一方側端部)
111 ステータコイル(コイル)
113,121,125 電磁鋼板
115 圧粉材
115a 圧粉材バックヨーク部
115b 圧粉材ティース部
120,120A,120B,120C,120D,120E ロータ
120a 界磁極領域
120b 鉄心領域
120b2 凹部
120b1 突部
123,127 永久磁石
126 スリット
130 インバータ部
130a 電動機制御部
130b 発電機制御部
133 バッテリ
201 エンジン制御ECU(走行状態取得手段)
201a ロータ位置制御部(位置制御手段)
203 油圧制御ユニット(位置制御手段)
211 モータ回転角センサ(走行状態取得手段)
213 アクセル開度センサ(走行状態取得手段)
214 位置センサ(位置制御手段)
215 クランクパルスセンサ(走行状態取得手段)
217 車速センサ(走行状態取得手段)
218 ブレーキペダルセンサ(走行状態取得手段)
L 回転中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸の周りに回転可能なロータと、前記ロータの外周面または内周面と対向配置され、コイルを巻回するためのコアとして用いられるティースを有するステータと、を備え、前記ロータに永久磁石を固定して界磁極を構成するモータであって、
前記ロータは、
前記界磁極を前記回転中心軸に沿って一方側に相対的に移動させられるとき、前記ステータと対向する前記ロータの外周面または内周面と、前記ティースの前記ロータと対向する内周面または外周面との間の磁束をやり取りする面積を縮小し、
前記一方側の部分に界磁極を形成する第1の永久磁石を有する界磁極領域とし、前記一方側と反対側の他方側の部分を鉄心領域とすることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記ロータの界磁極領域の第1の永久磁石は、周方向に等間隔で埋め込まれ、
前記ロータの前記鉄心領域には、前記第1の永久磁石と同じ周方向の配置の位相で、前記第1の永久磁石より弱い磁力を有する第2の永久磁石を周方向に等間隔に埋め込まれて配置されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータの界磁極領域の第1の永久磁石は、周方向に等間隔で埋め込まれ、
前記ロータの鉄心領域は、前記第1の永久磁石の周方向の配置に対し、電気角を45°遅角させる形状とすることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記鉄心領域は、スリット型リラクタンスコアであることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記鉄心領域は、突極型リラクタンスコアであることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
前記ステータが、前記回転中心軸に垂直な面で、前記回転中心軸方向に前記一方側の端から順に、一方側端部と、中央部と、他方側端部とに3区分され、
前記ステータの一方側端部および他方側端部は、電気絶縁皮膜で覆われた磁性材の粒子を圧粉して固めた圧粉材で構成され、
前記ステータの中央部は、電磁鋼板を積層して構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記ステータの一方側端部のバックヨークを、前記一方側に延出させ、前記ステータの他方側端部のバックヨークを前記一方側と反対側の他方側に延出させることを特徴とする請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記ステータの一方側端部と前記中央部との間、および前記ステータの他方側端部と前記中央部との間に、それぞれ非磁性材を介設させたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ロータの前記回転中心軸に沿った相対位置の移動は、油圧によりなされることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項10】
請求項9に記載のモータを車両駆動用モータとして使用し、
前記ロータの前記回転中心軸に沿った相対位置の移動を制御する位置制御手段と、
車両の走行状態を取得する走行状態取得手段と、を備え、
前記位置制御手段は、前記走行状態取得手段が取得した車両の走行状態を示す信号にもとづいて前記相対位置移動を制御することを特徴とするモータの制御装置。
【請求項11】
前記位置制御手段は、前記車両の走行状態としてモータ回転角速度および必要トルクのうちの少なくとも1つを用いて前記相対位置移動を制御することを特徴とする請求項10に記載のモータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−206972(P2010−206972A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50642(P2009−50642)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】