説明

モータポンプ装置

【課題】モータを駆動させたときの振動を、基体に伝わり難くすることができるモータポンプ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】基体10と、プランジャポンプ4と、モータ20とを備えた車両用ブレーキ液圧制御装置1(モータポンプ装置)であって、モータ20は、ヨーク21と、基体10の軸受穴15に内嵌された第一のベアリング31と、第一のベアリング31に軸支された回転軸22と、整流子24に給電するブラシ25を保持しているブラシホルダ26とを有し、ブラシホルダ26は、ヨーク21に内嵌されるとともに、第一のベアリング31の外周面に係止され、ブラシホルダ26および第一のベアリング31は基体10に対して回転軸22の軸方向に間隔を空けて配置され、ヨーク21と基体10との間にはモータ側シール部材42が介設され、基体10によってヨーク21からのブラシホルダ26の抜け止めが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体に設けられたポンプと、ポンプを駆動させるためのモータと、を備えたモータポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用ブレーキ液圧制御装置に用いられるモータポンプ装置としては、ブレーキ液路が形成された基体と、基体の内部に形成されたリザーバからブレーキ液を吸引するためのポンプと、ポンプを作動させるためのモータと、を備え、モータが基体の外面に取り付けられているものがある。
【0003】
従来のモータポンプ装置のモータは、基体側に開口したヨークと、基体の内部に設けられたベアリングに回転自在に軸支された回転軸と、回転軸に装着された整流子に給電するブラシと、ブラシを保持しているブラシホルダと、を備えている。また、ブラシホルダは基体の外面に接合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3078578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来のモータポンプ装置では、モータを駆動させたときの振動が、ブラシホルダやベアリングを介して、基体に伝わり易いため、装置全体の振動が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決し、モータを駆動させたときの振動を、基体に伝わり難くすることができるモータポンプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、基体と、前記基体の内部に設けられたポンプと、前記ポンプを作動させるためのモータと、を備えたモータポンプ装置であって、前記モータは、前記基体側に開口した有底筒状のヨークと、前記基体の軸受穴に内嵌されたベアリングと、前記ベアリングに回転自在に軸支された回転軸と、前記回転軸に装着された回転子および整流子と、前記整流子に給電するブラシと、前記ブラシを保持しているブラシホルダと、を有している。前記ブラシホルダは、前記ヨークに内嵌されるとともに、前記ベアリングの外周面に係止され、前記ブラシホルダおよび前記ベアリングは、前記基体に対して前記回転軸の軸方向に間隔を空けて配置されている。さらに、前記ヨークと前記基体との間には、モータ側シール部材が介設され、前記基体によって前記ヨークからの前記ブラシホルダの抜け止めが形成されている。
【0008】
この構成では、ブラシホルダおよびベアリングが基体に対して回転軸の軸方向に間隔を空けて配置されるとともに、モータを駆動させたときの振動がモータ側シール部材に吸収されるため、モータを駆動させたときの振動が基体に伝わり難くなっている。
【0009】
また、基体にヨークを取り付けることによって、ブラシホルダは基体の外面に間隔を空けて対向して配置されるようになるので、基体の外面によってヨークからのブラシホルダの抜け出しを阻止することができる。
【0010】
前記したモータポンプ装置の前記基体に、前記ポンプを構成する部材が装着されるポンプ穴が形成され、前記ポンプ穴が前記軸受穴に連通している構成では、前記ベアリングの外周面と前記軸受穴の内周面との間に、軸受側シール部材を介設することが好ましい。
【0011】
ここで、ポンプの作動時に可動する部品によって、作動液がポンプ穴から軸受穴に掻き出される場合があるが、前記した構成では、ベアリングよりもモータの内部側に作動液が流出するのを、軸受側シール部材によって防ぐことができる。
また、モータを駆動させたときの振動が軸受側シール部材に吸収されるため、装置全体の振動を更に抑制することができる。
【0012】
前記したモータポンプ装置において、前記ブラシホルダと前記ベアリングの外周面とがインサート成形によって一体に固定されている場合には、ブラシホルダとベアリングを基体に対して同時に組み付けることができるため、組み付け工数を低減することができる。
また、モータを基体に対して位置決めすると、モータのブラシホルダに固定されたベアリングも基体に対して位置決めされるため、ベアリングを組み付けるときの作業効率を高めることができる。
【0013】
前記したモータポンプ装置において、前記ベアリングの外周面に突起部を設け、前記突起部が前記ブラシホルダと前記軸受側シール部材とに挟まれるように構成した場合には、ブラシホルダをベアリングに対して簡単に係止させるとともに、ベアリングは突起部と軸受側シール部材との間に位置決めされるので、ベアリングのずれを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のモータポンプ装置では、モータを駆動させたときの振動が基体に伝わり難いため、装置全体の振動を抑制することができる。また、基体にヨークを取り付けることで、ブラシホルダの抜け止めを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【図2】第一実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置を示した正面図である。
【図3】第一実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置を示した図で、図2のA−A断面図である。
【図4】第一実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置を示した図で、図2のB−B断面図である。
【図5】第一実施形態のモータポンプ装置を示した部分拡大断面図である。
【図6】第二実施形態のモータポンプ装置を示した部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の実施形態では、モータポンプ装置としての車両用ブレーキ液圧制御装置について説明する。なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0017】
(第一実施形態)
図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置1(モータポンプ装置)は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などのバーハンドルタイプの車両に好適に用いられるものである。
車両用ブレーキ液圧制御装置1は、マスタシリンダM1,M2とホイールシリンダB1,B2とを接続するブレーキ液路A,Bを有するブレーキ系統K1,K2を有しており、ブレーキ液路A,Bが形成された基体10と、基体10に装着される入口弁2および出口弁3と、基体10の内部に設けられたリザーバ5およびプランジャポンプ4と、プランジャポンプ4を作動させるためのモータ20と、入口弁2、出口弁3およびモータ20の作動を制御する制御装置100と、を主に備えている。
【0018】
車両用ブレーキ液圧制御装置1は、前輪ブレーキに装着されたホイールシリンダB1と、後輪ブレーキに装着されたホイールシリンダB2とに付与するブレーキ液圧を適宜制御することによって、各ホイールシリンダB1,B2のアンチロックブレーキ制御が可能になっている。
【0019】
前輪ブレーキ系統K1は、前輪を制動するためのものであり、入口側接続穴11から出口側接続穴12に至る系統である。入口側接続穴11には、液圧源であるマスタシリンダM1に至るブレーキ配管が接続され、出口側接続穴12には、ホイールシリンダB1に至るブレーキ配管が接続される。
前輪ブレーキ系統K1のマスタシリンダM1には、ブレーキ操作子としてブレーキレバーL1が接続されている。
【0020】
後輪ブレーキ系統K2は、後輪を制動するためのものであり、入口側接続穴13から出口側接続穴14に至る系統である。入口側接続穴13には、マスタシリンダM1とは別の液圧源であるマスタシリンダM2に至るブレーキ配管が接続され、出口側接続穴14には、ホイールシリンダB2に至るブレーキ配管が接続される。
後輪ブレーキ系統K2のマスタシリンダM2には、ブレーキ操作子としてブレーキペダルL2が接続されている。
【0021】
プランジャポンプ4は、リザーバ5に貯留されたブレーキ液を吸入して、ブレーキ液路A,BのマスタシリンダM1,M2側に吐出するものである。
モータ20は、両プランジャポンプ4,4の共通の動力源であり、制御装置100からの指令に基づいて作動する電動部品である。
【0022】
制御装置100は、車輪速度センサからの出力に基づいて、入口弁2、出口弁3およびモータ20の作動を制御することで、ブレーキ液路A,B内のブレーキ液圧を変動させるように構成されている。
【0023】
次に、前記した車両用ブレーキ液圧制御装置1によるアンチロックブレーキ制御について説明する。
なお、前輪ブレーキ系統K1および後輪ブレーキ系統K2における制御は同じであるため、以下の説明では、前輪ブレーキ系統K1の制御について説明し、後輪ブレーキ系統K2の制御については省略する。
【0024】
ブレーキレバーL1が操作され、ホイールシリンダB1にブレーキ液圧が作用している状態において、ホイールシリンダB1に接続された車輪にスリップ状態が発生して、車輪がロックしそうになると、制御装置100によってアンチロックブレーキ制御が行われる。
【0025】
制御装置100において、ホイールシリンダB1に作用するブレーキ液圧を減圧すべきと判断された場合には、入口弁2が閉弁し、出口弁3が開弁する。このようにすると、入口弁2よりもホイールシリンダB1側にあるブレーキ液が、出口弁3からリザーバ5側に流出して、リザーバ5にブレーキ液が貯留され、ホイールシリンダB1に作用していたブレーキ液圧が減圧する。
【0026】
制御装置100において、ホイールシリンダB1に作用するブレーキ液圧を保持すべきと判断された場合には、入口弁2および出口弁3が閉弁する。このようにすると、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められるため、ホイールシリンダB1に作用していたブレーキ液圧が保持される。
【0027】
制御装置100において、ホイールシリンダB1に作用するブレーキ液圧を増圧すべきと判断された場合には、入口弁2が開弁し、出口弁3が閉弁する。また、プランジャポンプ4を駆動させ、リザーバ5からブレーキ液を吸入してブレーキ液路AのマスタシリンダM1側に吐出する。このようにすると、ブレーキレバーL1の操作に起因してマスタシリンダM1で発生したブレーキ液圧が入口弁2を通じてホイールシリンダB1に作用して、ホイールシリンダB1のブレーキ液圧が増圧する。
【0028】
次に、前記した車両用ブレーキ液圧制御装置1の基体10、二つのプランジャポンプ4,4およびモータ20について詳細に説明する。
【0029】
基体10は、図3に示すように、車両に搭載される略直方体の金属製部品である。基体10の内部には、軸受穴15、ポンプ穴16(図4参照)、入口弁装着穴、出口弁装着穴などの複数の穴によってブレーキ液路A,B(図1参照)が形成されている。
【0030】
基体10の一面10aの中央部には、円形断面の軸受穴15が形成されている。軸受穴15は、後記するモータ20の回転軸22が挿入される有底の穴部であり、開口部には第一のベアリング31が内嵌されている。
【0031】
軸受穴15の開口部には、第一のベアリング31(特許請求の範囲における「ベアリング」)が内嵌される嵌合部15bが形成されている。また、嵌合部15bよりも基体10の一面10a側には、嵌合部15bよりも拡径された軸受側シール収容部15cが形成されている。
基体10の一面10aにおいて、軸受側シール収容部15cの周囲には、凹部15dが形成されている。この凹部15dの開口縁部には、モータ側シール収容部15eが形成されている。
【0032】
ポンプ穴16は、図4に示すように、プランジャポンプ4のシリンダを構成する円形断面の穴部である。このポンプ穴16は軸受穴15に連通するとともに、基体10の側面に開口している。第一実施形態では、二つのポンプ穴16,16が、基体10の両側面から中心部に向けて、軸受穴15を挟んで同軸線上に形成されている。
両ポンプ穴16,16は、ベアリング31の内嵌位置よりも底面15a側(基体10の内部側)で、軸受穴15に連通している。
【0033】
プランジャポンプ4は、ポンプ穴16内に摺動自在に装着される円形断面のプランジャ4aを備えている。プランジャ4aによってポンプ穴16内にポンプ室が区画されている。そして、プランジャポンプ4は、ポンプ穴16内でプランジャ4aが軸方向に往復動することで、ポンプ室にブレーキ液を吸入するとともに、ポンプ室からブレーキ液を吐出するように構成されている。
【0034】
モータ20は、基体10の一面10a側に開口した有底円筒状のヨーク21と、軸受穴15に内嵌された第一のベアリング31と、第一のベアリング31に回転自在に軸支された回転軸22と、回転軸22に装着された回転子23および整流子24と、整流子24に給電するブラシ25と、ブラシ25を保持しているブラシホルダ26と、を備えている。
【0035】
ヨーク21は、有底円筒状の部品であり、開口部21a側の端部には径方向の外方に突出したフランジ部21bが形成されている。図2に示すように、フランジ部21bをボルト21cによって、基体10の一面10aに取り付けることで、ヨーク21が基体10の一面10aに固定されている。また、図3に示すように、ヨーク21の内周面には、複数のマグネット21dが周方向に装着されている。
【0036】
第一のベアリング31は、軸受穴15の嵌合部15bに内嵌されることで、径方向に位置決めされている。また、第一のベアリング31には、軸受側シール収容部15cに装着された軸受側シール部材41が外嵌されている。さらに、第一のベアリング31は、基体10に対して、回転軸22(軸受穴15)の軸方向に間隔を空けて配置されている。すなわち、第一のベアリング31と、軸受穴15の底面15aおよび嵌合部15bの底面との間に隙間が形成されている。
【0037】
軸受側シール部材41は、弾性を有する環状の樹脂製部品であり、第一のベアリング31の外周面と軸受側シール収容部15cの内面との間に圧縮された状態で介設されている。この軸受側シール部材41によって、第一のベアリング31の外周面と軸受穴15の内周面との間が液密にシールされている。
【0038】
また、第一のベアリング31の外周面(外輪)と、後記するブラシホルダ26の内周部26bとがインサート成形によって一体に固定されている。
【0039】
回転軸22は、一端側(図3の右側)の部位がヨーク21内に挿入され、他端側(図3の左側)の部位が軸受穴15に挿入された円形断面の軸部材である。回転軸22の一端は、ヨーク21内に設けられた第二のベアリング32に回転自在に軸支されている。また、回転軸22の他端側の部位は、第一のベアリング31に回転自在に軸支されている。
【0040】
回転軸22の一端部は、軸中心に対して偏心している。その偏心した部位には、偏心カム33が外嵌されている。したがって、偏心カム33は、回転軸22の回転に伴って、回転軸22の軸中心回りに公転する。
【0041】
偏心カム33の外周面(外輪)には、プランジャ4aの端面が当接している。そして、偏心カム33が回転軸22の軸中心回りに公転し、偏心カム33の外周面がプランジャ4a側に変位したときには、プランジャ4aは偏心カム33に押されて往動作する。また、偏心カム33の外周面がプランジャ4aから離れる方向に変位したときには、プランジャ4aはポンプ穴16内に設けられたばね部材に押されて復動作する。このように、回転軸22を回転させることで、両プランジャポンプ4,4が駆動する。
【0042】
回転軸22の外端側の部位には、マグネット21dに対応する位置に、回転子23が外嵌されている。回転子23は、積層コア23aのスロットにマグネットワイヤを巻回したコイル23bを有している。さらに、回転軸22には、回転子23よりも内端側に整流子24が外嵌されている。この整流子24はコイル23bに電気的に接続されている。
【0043】
ブラシホルダ26は、図5に示すように、ヨーク21の開口部21aに内嵌される円板状の部材であり、中央穴26aが形成され、その内周部26bは第一のベアリング31の外周面にインサート成形によって一体に固定されている。ブラシホルダ26の外周縁部には、環状の係止部26cが形成されている。
【0044】
ブラシホルダ26において、ヨーク21の底部側の面26dには、複数のブラシ25が取り付けられている。各ブラシ25は整流子24の外周面に接触している。
また、ブラシホルダ26において、基体10側の面26eには、基体10に形成されたターミナル挿通穴17に挿通されるターミナル支持部26fが形成されている。
ターミナル支持部26fには、制御装置100(図1参照)の基板に電気的に接続されたターミナル(図示せず)が埋設されており、このターミナルを介して各ブラシ25に給電される。
【0045】
ブラシホルダ26の係止部26cは、ヨーク21の内周面に内嵌されており、ブラシホルダ26は径方向に位置決めされている。
また、係止部26cは、ヨーク21の内周面に形成された突起部21eに係止されており、ヨーク21の底部側への移動が阻止されている。なお、第一実施形態では、ヨーク21の外周面を押圧して内周面側に突出させるプレス加工(ハーフピアス)によって、突起部21eが形成されている。
【0046】
係止部26cが突起部21eに係止された状態(係止部26cの端面が突起部21eに当接した状態)では、ブラシホルダ26は基体10の一面10aに対して回転軸22の軸方向に間隔を空けた状態となる。つまり、ブラシホルダ26の基端側10の面26eは、基体10の一面10aに対して間隔を空けて対向している。
ブラシホルダ26と基体10との間隔は、ブラシホルダ26が基体10側に移動したときでも、ブラシホルダ26が基体10に当接することよって、ヨーク21からのブラシホルダ26の抜け出しが阻止されるように設定する。
【0047】
基体10の一面10aにモータ20を取り付けた状態では、ヨーク21の開口部21a、ブラシホルダ26の係止部26c、基体10のモータ側シール収容部15eによって囲まれた環状の空間15fが形成される。この空間15fにはモータ側シール部材42が収容されている。
モータ側シール部材42は、弾性を有する環状の樹脂製部品であり、ヨーク21の開口部21a、ブラシホルダ26の係止部26c、基体10のモータ側シール収容部15eの間に圧縮された状態で介設されている。
そして、モータ側シール部材42によって、ヨーク21と基体10との間が液密にシールされるとともに、ブラシホルダ26と基体10との間、およびブラシホルダ26とヨーク21との間が液密にシールされている。
【0048】
以上のような車両用ブレーキ液圧制御装置1では、図5に示すように、ブラシホルダ26および第一のベアリング31が基体10に対して回転軸22の軸方向に間隔を空けて配置されている。また、モータ20を駆動させたときの振動が、モータ側シール部材42および軸受側シール部材41に吸収される。このように、車両用ブレーキ液圧制御装置1では、モータ20を駆動させたときの振動が基体10に伝わり難くなっているため、装置全体の振動を抑制することができる。
【0049】
また、基体10にヨーク21を取り付けることによって、ブラシホルダ26は基体10に対向して配置されるようになるので、基体10によってヨーク21からのブラシホルダ26の抜け出しを阻止することができ、ブラシホルダ26の抜け止めを構成することができる。
したがって、ブラシホルダ26を保持するためのハウジング等の部材を用いなくても、ヨーク21からのブラシホルダ26の抜け止めを形成することができるため、車両用ブレーキ液圧制御装置1の部品点数を低減することができ、製造コストを低減することができる。また、モータ20の各部品を基体10側に寄せることができるため、装置全体を小型化することができる。
【0050】
また、図4に示すように、プランジャポンプ4の作動時に、プランジャ4aの往復動によって、ブレーキ液がポンプ穴16から軸受穴15に掻き出された場合でも、第一のベアリング31よりもモータ20の内部側(ヨーク21の内部)にブレーキ液が流出するのを、軸受側シール部材41によって防ぐことができる。
【0051】
また、図3に示すように、ブラシホルダ26の内周部26bと、第一のベアリング31とがインサート成形によって一体に固定されており、ブラシホルダ26と第一のベアリング31とを基体10に対して同時に組み付けることができるため、組み付け工数を低減することができる。
また、モータ20を基体10に対して位置決めすると、モータ20のブラシホルダ26に固定された第一のベアリング31も軸受穴15内に位置決めされるため、第一のベアリング31を組み付けるときの作業効率を高めることができる。
【0052】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
第一実施形態では、図5に示すように、ブラシホルダ26は第一のベアリング31にインサート成形によって係止させているが、ブラシホルダ26を第一のベアリング31に係止させる構成は限定されるものではない。
【0053】
また、モータ側シール部材42が、基体10とブラシホルダ26の内面26eとの間に挟まれるように構成してもよい。この構成では、モータ側シール部材42の弾発力によってブラシホルダ26が外側に向けて押し出されるため、ブラシホルダ26の係止部26cをヨーク21の突起部21eに確実に係止させることができる。
【0054】
また、第一実施形態では、本発明のモータポンプ装置として、図1に示すように、バーハンドルタイプの車両の車両用ブレーキ液圧制御装置1を説明したが、本発明のモータポンプ装置は、自動四輪車などの各種の車両用ブレーキ液圧制御装置に適用可能である。さらに、本発明のモータポンプ装置は、車両用ブレーキ液圧制御装置に限定されるものではない。
また、第一実施形態では、プランジャポンプ4を用いているが、ポンプの構成は限定されるものではない。
このように、本発明のモータポンプ装置は、基体と、基体の内部に設けられたポンプと、ポンプを作動させるためのモータと、を備えているのであれば、各種の装置に適用可能である。
【0055】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(モータポンプ装置)について説明する。
第二実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、図6に示すように、第一のベアリング31の外周面(外輪)に凹溝31aを周方向に形成し、この凹溝31aにC形状の止め輪31bを嵌め込むことで、止め輪31bの外周部によって、第一のベアリング31の外周面に突起部31cを形成している。
そして、突起部31cを軸受側シール部材41とブラシホルダ26の内周部26bとによって挟み込むことで、ブラシホルダ26を第一のベアリング31に係止させている。
この構成では、ブラシホルダ26を第一のベアリング31に対して簡単に係止させるとともに、第一のベアリング31は突起部31cと軸受側シール部材41との間に位置決めされるので、第一のベアリング31のずれを防ぐことができる。
【0056】
なお、第二実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、止め輪31bによって第一のベアリング31の外周面に突起部31cを形成しているが、突起部の構成は限定されるものではなく、第一のベアリング31の外周面に凸部を形成して突起部を設けてもよい。
【0057】
また、第二実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、第一実施形態と同様に、モータ側シール部材42が、基体10とブラシホルダ26の内面26eとの間に挟まれるように構成してもよい。
さらに、第二実施形態では、第一実施形態と同様に、モータポンプ装置としての車両用ブレーキ液圧制御装置について説明したが、第二実施形態の構成を有するモータポンプ装置は各種の装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用ブレーキ液圧制御装置(モータポンプ装置)
2 入口弁
3 出口弁
4 プランジャポンプ
4a プランジャ
10 基体
10a 一面
15 軸受穴
15b 嵌合部
15c 軸受側シール収容部
15d 凹部
15e モータ側シール収容部
16 ポンプ穴
20 モータ
21 ヨーク
21d マグネット
21e 突起部
22 回転軸
23 回転子
24 整流子
25 ブラシ
26 ブラシホルダ
26b 内周部
26c 係止部
31 第一のベアリング
31b 止め輪
31c 突起部
32 第二のベアリング
33 偏心カム
41 軸受側シール部材
42 モータ側シール部材
100 制御装置
A,B ブレーキ液路
B1,B2 ホイールシリンダ
K1,K2 ブレーキ系統
L1 ブレーキレバー
L2 ブレーキペダル
M1,M2 マスタシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の内部に設けられたポンプと、前記ポンプを作動させるためのモータと、を備えたモータポンプ装置であって、
前記モータは、
前記基体側に開口した有底筒状のヨークと、
前記基体の軸受穴に内嵌されたベアリングと、
前記ベアリングに回転自在に軸支された回転軸と、
前記回転軸に装着された回転子および整流子と、
前記整流子に給電するブラシと、
前記ブラシを保持しているブラシホルダと、を有し、
前記ブラシホルダは、前記ヨークに内嵌されるとともに、前記ベアリングの外周面に係止され、
前記ブラシホルダおよび前記ベアリングは、前記基体に対して前記回転軸の軸方向に間隔を空けて配置されており、
前記ヨークと前記基体との間には、モータ側シール部材が介設され、
前記基体によって前記ヨークからの前記ブラシホルダの抜け止めが形成されていることを特徴とするモータポンプ装置。
【請求項2】
前記基体には、前記ポンプを構成する部材が装着されるポンプ穴が形成され、
前記ポンプ穴は、前記軸受穴に連通しており、
前記ベアリングの外周面と前記軸受穴の内周面との間には、軸受側シール部材が介設されていることを特徴とする請求項1に記載のモータポンプ装置。
【請求項3】
前記ブラシホルダと前記ベアリングの外周面とがインサート成形によって固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータポンプ装置。
【請求項4】
前記ベアリングの外周面には、突起部が設けられており、
前記突起部が前記ブラシホルダと前記軸受側シール部材とに挟まれていることを特徴とする請求項2に記載のモータポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21806(P2013−21806A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152727(P2011−152727)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】