説明

モータ

【課題】回路部品で発生した熱を放熱する手段
【解決手段】アルミダイキャストで形成されたベース部12には、回路部品381がベース部12側に実装された回路基板38を有するステータ部3が備えられている。ベース部12と回路部品381との間には、熱伝導性の高い導熱部材4が介在されている。回路部品381に発生する熱は、導熱部材4を介してベース部12に伝達される。ベース部12と支持脚13とハウジング1は、一体成形されているので、回路部品381で発生した熱が、ベース部12に伝達された後、支持脚13およびハウジング1に伝達され、拡散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装された回路部品の放熱構造を有する電動式のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の高性能化に伴い、電子機器内部に備えられた回路部品(例えばMPU等の高性能回路部品)の発熱量は上昇の一途を辿っており、電子機器筐体内部の温度上昇が著しい。そこで、電子機器筐体内部や特定の回路部品を冷却するために、冷却用ファンモータが用いられる。
【0003】
従来の冷却用ファンモータは、電動式のモータによりロータ部が駆動されている。このようなモータは、所定の中心軸を中心として環状に配置されたインペラおよびロータマグネットを有するロータ部、および、ロータマグネットと対向するように配置されたステータ部、および、ステータ部が設置されるベース部が備えられる。ステータ部は、ステータコアに銅線が巻回されてコイルが形成される。ステータコアに巻回されたコイルの一部が、ロータ部の回転を制御する回路を構成する回路部品に電気的に接続される。外部から制御回路に駆動電流が供給され、ステータコアに巻回されたコイルに電流が流れることで、ステータコアに磁界が発生し、ロータ部に備えられたロータマグネットに着磁された磁界とステータコアで発生している磁界との相互作用により、ロータ部に回転トルクが発生する。
【0004】
更なる電子機器内部の冷却が要求されており、従来の冷却用ファンモータよりも高い冷却特性を備える冷却用ファンモータの需要が高まっている。一般的に冷却用ファンモータの冷却特性を高めるには、電子機器筐体内の(高温の)空気を筐体外へ排出する排出量を増加させるために、冷却用ファンモータの風量を向上させる必要がある。風量を向上させるには、インペラが回転する際に発生する空気流量を増加させる必要があり、それに伴って、インペラの仕事量が増すため、冷却用ファンモータに供給する電流値が高くなる。回路基板に実装された回路部品に電流を流すと、回路部品の内部抵抗によって回路部品に温度上昇が生じる。回路部品に流れる電流が高電流である場合、温度上昇値は更に高くなる。インペラの回転を制御する回路を構成する回路部品には、許容温度範囲が定められているため、例えば、回路部品の発熱温度が、その許容温度範囲を越えると、回路部品自体に誤動作等を招く等の不具合が生じる虞がある。従って、モータを設計する際には、回路部品の内部温度を許容温度範囲内に抑える必要がある。特に回路部品に高電流が流れる冷却用ファンモータにおいては、安全性および信頼性の高いファンモータを得るためには、回路基板に実装された回路部品での発熱を強制的に放熱する手段が必要である。
【0005】
そこで例えば、コイルの冷却を目的とする場合では、特許文献1の第2図および第4図に示されたファンモータにおいて、次のような構造が開示されている。コイルがステータコアに巻回されており、熱伝導性の良い金属製の支持部材がステータコアと金属製のベース部との間に設置され、インペラが回転することによって吸気口から排気口へ送られる空気流をベース部に当てることで、支持部材を介してステータコアを冷却することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特公昭60−48640号公報(第2図および第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の第2図および第4図で示される、金属製の支持部材がステータコアと金属製のベース部との間に介在する構造では、ステータコアしか冷却することができず、インペラの回転を制御する回路部品が実装された回路基板をステータコアとベース部との間に設けた場合、回路基板上に点在する回路部品を十分に冷却することができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑みなされたものであり、回路部品の温度上昇を抑制する強制放熱手段を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1にかかるモータでは、電動式のモータであって、ステータ部と、ステータ部に対して所定の中心軸周りに回転するロータ部と、ステータ部が取付けられ、熱伝導性に優れた材料で形成されたベース部と、を備え、ステータ部が、コイルが巻回された複数のティースを有するステータコアと、ロータ部の回転を制御する制御回路を構成する回路部品が実装され、ロータ部とベース部との間に設けられた回路基板と、で構成され、回路基板のベース部側に実装された回路部品の少なくとも一部と、ベース部と、の間に両者に接触する状態で導熱部材が介在されることを特徴とする。
【0010】
請求項2にかかるモータでは、請求項1に記載のモータであって、ベース部が、側壁をベース部の外周部に有することを特徴とする。
【0011】
請求項3にかかるモータでは、請求項1または請求項2に記載のモータであって、ベース部が、ダイキャストによって形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4にかかるモータでは、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のモータであって、ベース部が、ベース部の回路部品と対向する面に、回路基板へ向かう突出面が形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5にかかるモータでは、請求項4または請求項5のいずれかに記載のモータであって、回路部品に対向するベース部の対向面には、導熱部材および絶縁シートが配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6にかかるモータでは、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のモータを用いた軸流ファンユニットであって、ロータ部は、ロータ部外周面より径方向外方に向けて突設され、回転することで空気を軸方向に吸気し軸方向に排気する複数枚の羽根を備え、複数枚の羽根は、空気流の流路を形成するハウジングによって径方向外方から外囲され、ハウジングとベース部とが支持脚によって連結されることを特徴とする。
【0015】
請求項7にかかるモータでは、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のモータを用いた遠心ファンユニットであって、ロータ部は、ロータ部の径方向外方において、中心軸を中心として環状に配列された複数枚の羽根を備えており、軸方向から吸気した空気を径方向外方側に排出するように流路が形成されたハウジングが備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、回路基板のベース部側に実装された複数の回路部品と熱伝導性に優れたベース部の間にある導熱部材を介して、回路部品で発生した熱をベース部に逃がすことができる。したがって、更なる高電流を回路基板に実装された回路部品に流すことが可能となる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ベース部の外周部に側壁が形成されることによって、導電部材がベース部内に収容することができる。加えて、ベース部の外周部に側壁を形成された分だけベース部の表面積が増加することになり、回路部品の冷却効率が向上する。更に、ハウジング
請求項3の発明によれば、ベース部をダイキャストで形成することによって、切削加工と比較して、短時間で多量に製造することができる。加えて、1つの金型で鋳造を行うことができるので、同一製品を多量に供給することも可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、回路基板に実装された複数の回路部品の内、発熱による動作不良が顕著に現れる一部の回路部品のみと熱伝導性に優れたベース部の間に導熱部材を局所的に介在させることにより、使用する導熱部材の量が必要最低限となり、コストダウンを図ることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、ベース部において、回路部品と対向する面に回路基板へ向かう突出面が形成されることにより、回路部品とベース部の間に介在される導熱部材を薄くすることができる。従って、使用する導熱部材の量を減らすことが可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0020】
請求項7および請求項8の発明によれば、熱伝導性に優れたベース部もしくはベース部と熱的に接続された部材に、インペラの回転によって生じる空気流を当てることにより、更に強制的に回路部品を冷却するができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態のモータについて、図1乃至図7を参照して説明する。ここではファンモータを実施形態として説明する。なお、下記の説明において、便宜上、各図面の上下方向を「上下方向」と記載したが、実際の取付け状態における方向を限定するものではない。更に、回転軸に平行な方向を軸方向とし、回転軸を中心とする半径方向を径方向と定義する。
【0022】
(第1の実施形態)図1は、本発明にかかる第1の実施形態を示した軸方向の断面図である。ファンモータAは、外部電源から電流が供給されることで、複数枚の羽根22を有するインペラ2が回転駆動する。インペラ2は、略円筒状のインペラカップ部21を備えており、インペラカップ部21の外周面には、径方向外方に向けて複数枚の羽根22が突設されている。
【0023】
インペラカップ部21の内周面には、有蓋円筒状のロータヨーク31が圧入固定されている。ロータヨーク31の円筒部内周面には、多極着磁されたロータマグネット33が圧入固定されている。通常、ロータマグネット33は、ロータヨーク31に固定後に多極着磁されるが、着磁工程はロータマグネット33単品でも可能であり、着磁工程の順序は限定されない。ロータヨーク31は、ステンレス等の耐錆性が高い磁性体で形成されている。主に量産性を考慮し、プレス加工にて形成される。よって、ロータヨーク31とロータマグネット33との間で磁気回路を形成することができ、ロータマグネット33からファンモータA外部への漏洩磁束を低減することが可能である。また、ロータマグネット33から発生する磁束密度を高めることも可能である。更に、ロータヨーク31の中心部には、プレス加工時にバーリング加工にて形成されたシャフト貫通孔が形成されており、シャフト貫通孔にシャフト32が締結固定されている。
【0024】
シャフト32は、ボール軸受341および342に挿入されることによって、回転自在に支持される。ボール軸受341および342は、ベース部12の中心部に形成された略円筒状の軸受ハウジング121の内周面に設けられた段差部に、ボール軸受341が中心軸上方向より、軸受342が中心軸下方向より、挿入される。ボール軸受(上側)341とボール軸受(下側)342との距離、いわゆる軸受スパンの中間点は、回転体の重心と近づけると好ましい。ボール軸受342は、下側からバネ348によって予圧される。バネ348は、ボール軸受342とワイヤーリング344とでボール軸受に予圧が加わるように固定される。ワイヤーリング344は、シャフト32先端部に形成された環状溝に嵌合固定される。
【0025】
インペラ2の径方向外方を包囲するハウジング1は、軸方向に2つの開口部を備えている。2つの開口部のうち、一方を吸気口17、他方を排気口18とし、インペラ2が回転する際に発生する空気流が、吸気口17側から排気口18側に向かって流れる。ハウジング1の上端面および下端面は、矩形枠状の正方形にて形成されているが、円形でも良く、形状は限定されない。正方形の四隅には、径方向外方に突出したフランジ部16が形成されており、各フランジ部16には、ファンモータAが機器に取付けられる際に、ビス等の取付け具が挿入される取付け孔161が形成されている。
【0026】
ハウジング1の下端面中央にベース部12が配置されている。ベース部12の外周側面から径方向外方に向けて4本の支持脚13が放射状に延伸されており、風洞部11と連結されている。ベース部12は支持脚13によってハウジング1に対して固定されている。従って、支持脚13は風洞部11が形成する空気流路14を横切っており、インペラ2が回転する際に発生する空気流は、支持脚13と干渉する。ただし、支持脚13の本数は4本に限定されず、3本でも5本でも良い。支持脚13の断面は、通常、空気流の風損を低減し、支持脚13の強度を向上させるために略三角形に形成されている。支持脚13の断面形状は、翼断面に形成されても良く、支持脚13の断面形状は限定されない。また、支持脚13を有するベース部12は、排気口18側に限定されず、吸気口17側に配置されていても良い。
【0027】
ベース部12上端面の外縁に、略環状の側壁15が設けられている。ベース部12は、側壁15を介して支持脚13と接続されている。これにより、側壁15と支持脚13との接続面積を大きくすることができるため、支持脚13とベース部12との固定強度を向上させることが可能となる。また、ベース部12の外周縁に側壁15が設けられることで、ベース部12の軸方向断面形状が、コ字状になり、断面二次モーメントが増加し、ベース部12の強度が向上する。
【0028】
ハウジング1は、アルミダイキャストにより、ベース部12と軸受ハウジング121と支持脚13とが一体的に形成される。アルミダイキャストとは、高温溶融されたアルミ合金が成形金型に押し込まれ、金型内および外部で冷却されることによって、鋳物が製造される鋳造方式である。アルミダイキャストで形成されたハウジング1は、強度および耐熱性が高いため、高負荷および高温度の過酷な環境下においても使用することができる。また、アルミダイキャストは、1つの金型から多量の鋳物が生産することが可能であるため、生産性が高い。更に、アルミダイキャストは、複雑な形状を容易に形成することができ、且つ、寸法精度の高いハウジング1を得ることができる。高い信頼性の軸受が要求される場合には、軸受ハウジング121を追加工(切削加工)することによって同軸度および真円度を向上させても良い。ハウジング1の材料は、アルミ合金に限定されず、亜鉛、マグネシウム等の合金でも良く、熱伝導性に優れた金属合金であれば、適宜変更可能である。また、ハウジング1は、アルミダイキャストではなく、金属板などのプレス加工によって形成されても良い。
【0029】
ステータ部3は、軸受ハウジング121の外周部に支持される。ステータ部3は、ステータコア35と、コイル37と、インシュレータ36と、回路基板38と、で構成される。ステータコア35は、ロータヨーク31の円筒部内周面に固定されたロータマグネット33と間隙を介して、径方向に対向するように配置されている。ステータコア35の径方向外方の端部に形成された各ティース351には、絶縁部材で形成されたインシュレータ36を介して、コイル37がそれぞれ巻回される。ステータコア35の下方には、インペラ2の回転駆動を制御するための回路基板38が配置される。
【0030】
回路基板38の片面に、回路パターン(回路配線)が形成されている。回路基板38は、回路パターンが形成されている側をベース部12と対向する側に向けて、ベース部12の外縁に形成された側壁部15の上端部にビスで固定される。ただし回路基板38は、図5のように、インシュレータ36に固定されても良く、回路基板38の固定手段は限定されない。回路パターン上には、回路部品381を実装するためのランドが形成されている。ランド上に実装された回路部品381とコイル37の一端とが電気的に接続されることにより、一連の回路が構成される。外部電源からリード線(図略)を介して回路パターンに供給された電流を、回路パターンに実装された回路部品381、例えば、ドライブICやホール素子3811を介してコイル37に流すことにより、ステータコア35に磁界が発生する。この磁界と多極着磁されたロータマグネット33が形成する磁界との相互作用により、インペラ2に回転トルクが発生し、インペラ2がシャフト32を回転軸として回転する。
【0031】
インペラ2の回転位置の検出にはホール素子3811が用いられる。インペラ2が回転することによって、その内周面に固定されたロータマグネット33の磁束が回路基板に実装されたホール素子3811によって検出される。ロータマグネット33は周方向に多極着磁されているため、インペラ2が回転することによってホール素子3811の上方を通過する磁束が変化する。これにより、インペラ2の位置を検出することができる。ホール素子3811の代わりに、内部にアンプ回路を内蔵するホールICを用いても良い。また本実施例においては磁束を検出する磁気センサを用いたが、これに限定するものでなく、その他の検出手段を用いても良い。ドライブICは、コイル37に供給される出力電圧をスイッチングすることができる。これらホール素子3811およびドライブICが回路基板38に実装されることによって、インペラ2の回転速度を制御することが可能となる。
【0032】
回路基板38に実装された回路部品381に電流が流れることにより、回路部品381が電気抵抗を有しているため、回路部品381において発熱が生じる。インペラ2が回転する際に発生する空気流量を増加させると、それに伴って、インペラ2の仕事量が増すため、回路部品381に流れる電流値は高くなり、回路部品381における発熱量が増加する。
【0033】
回路部品381とベース部12との間には、図1に示されているように、熱伝導性の高い導熱部材4が介在されている。従って、回路部品381に発生する熱は、導熱部材4を介してベース部12に伝達される。ベース部12と支持脚13とハウジング1は、熱伝導性に優れた材料で一体成形されているので、回路部品381で発生した熱が、ベース部12に伝達された後、支持脚13およびハウジング1に伝達され、拡散する。インペラ2が回転駆動することによって軸方向に生じた空気流が、ベース部12と支持脚13とハウジング1とに伝達された熱を外部に強制放熱する。なお、導熱部材4は、側壁15と回路基板38とベース部12とで形成される略閉空間に収容されている。
【0034】
導熱部材4には、低硬度の熱伝導性シリコンゴムシートを用いる。シリコンゴムシートは、軟らかく、粘着性に優れている。このため、シリコンゴムシートの表面形状は、ベース部12と各回路部品381の間に介在されることによって、各回路部品381で形成された凹凸部分(つまり回路基板38の実装面の形状)に合わせて形状を変化させることが可能である。よって、各回路部品381の下端面および側面が、シリコンゴムシートによって覆われている。従って、各回路部品381とシリコンゴムシートとの接触面積が大きくなり、各回路部品381で発生した熱は、効率良くシリコンゴムシートに伝達される。例えば、軸方向の高さが均一でない複数の回路部品381を回路基板38に実装したとき、ベース部12の上端面と各回路部品381の下端面との間隔にばらつきが生じる。このとき、導熱部材4を、ベース部12と各回路部品381との間に介在させると、導熱部材4は、各回路部品381の形状に対応するように変形する。従って、導熱部材4は各回路部品381に対して接触面積が大きくなり、導熱部材4の粘着性により密着性が向上し、各回路部品381で発生した熱を効率良くベース部12に伝熱することができる。加えて、インペラ2の回転制御や回転速度などの仕様変更に伴い、回路基板38における回路部品381の実装位置や、回路部品381の変更に対して、柔軟に対応させることが可能となる。更に、導熱部材4は低硬度であるため、図3のように、特に放熱させる必要のある一部分の回路部品381に対応させて、導熱部材4の形状を変更することが容易である。また、導熱部材4を回路基板38とベース部12との間に介在させることによって、インペラ2の回転に伴って発生する振動の回路基板38への伝達が低減される。これにより、ファンモータAの騒音値及び振動値を低下させることができる。
【0035】
導熱部材4を薄くすることで、導熱部材4の使用量を少なくし、コストダウンを図ることができる。また、導熱部材4の熱抵抗値を低く抑えることも可能となる。導熱部材4の熱抵抗値が低くなると、効率よく回路部品38で発生した熱がベース部12に伝達される。導熱部材4を薄くするためには、ベース部12の上端面と回路基板38の下端面とを近接させ、ベース部12と回路部品381との間隙を狭くすることが考えられる。本実施例の変形例においては、図4のように、ベース部12を厚くすることで、ベース部12と回路部品381との間隙を狭くし、導熱部材4を薄くしている。図1および図4において、ベース部12の厚みは、それぞれ約3.5mmおよび約5.5mmとしている。ベース部12と回路部品381との間隙は、それぞれ約3.5mmおよび約1.5mmとしている。即ち、導熱部材4の厚みが約2mm薄くなる。このとき、図4の回路部品381は、図1の回路部品381に対して、約8℃表面温度が低い。従って、導熱部材4の厚みを3.5mmから1.5mmにした場合、回路部品381の表面温度を約8℃冷却することができる。また、導熱部材4が配置される部分に、回路基板38へ向かう突出面を形成しても良い。
【0036】
導熱部材4には、低硬度のシリコンゴムシートの他に、アルミニウム薄などの支持基材上に充填剤が含まれる感圧接着剤を塗布してコーティングしたサーマルテープ、例えば、ポリイミドフィルム(Polyimide Film)等のテープ状の部材を用いても良い。シリコンオイルを基油としたアルミナ等の熱伝導性の高い粉末を配合した、グリス状の熱伝導性シリコン樹脂を用いても良い。導熱部材4は、熱伝導性が高い部材であれば、適宜変更が可能であり、限定されない。
【0037】
ベース部12を形成するアルミ合金は導電性材料であることから、製品の信頼性を考慮して、回路基板38とベース部12とを電気的に絶縁する必要がある。本実施形態では、導熱部材4は絶縁材料であるシリコンゴムシートで形成されているので、回路基板38とベース部12とは、電気的に絶縁されている。回路基板38とベース部12との間に導熱部材4が介在していない部分においては、絶縁シート5、例えば、ポリエステルフィルム(Polyester Film)などがベース部12の上端面に載置されている。回路基板38とベース部12とが、導熱部材4および絶縁シート5によって電気的に絶縁されるので、ハウジング1などの筐体に落雷による高電圧(サージ電圧)が印加された場合、回路基板38とベース部12との短絡を防止し、絶縁耐力(耐電圧)が向上する。なお、絶縁シート5の外縁部を上方に折曲させて、側壁の一部を構成しても良い。
【0038】
(第2の実施形態)図6は、本発明にかかる、第2の実施形態を示した断面図である。図7は、本発明の第2の実施形態を示した斜視図である。図6および図7において、図1乃至図5と同一符号のものは、同一もしくはそれに相当する部位を示す。
【0039】
インペラ2aは、図6および図7のように、略円筒状のインペラカップ部21を備えており、インペラカップ部21の径方向外方には、中心軸を中心として環状に配列された複数枚の羽根22を備えている。複数枚の羽根22は、羽根支持部23によって連結固定されている。羽根支持部23は、インペラカップ部21の外周面から放射状に延出されている。インペラ2aの形状に関しては、上述した形状に限定されず、インペラカップ部21の外周面に、複数枚の羽根22が放射状に突設される形状でも良く、インペラ2aが回転することによって軸方向から空気を吸気して径方向外方に向けて排気されるインペラ形状であれば、要求特性に合わせて適宜変更である。
【0040】
インペラカップ部21の内周面には、有蓋円筒状のロータヨーク31が圧入固定されている。ロータヨーク31の円筒部内周面には、多極着磁されたロータマグネット33が圧入固定されている。ロータヨーク31の中心部には、シャフト貫通孔が形成されており、シャフト貫通孔にシャフト32が締結固定されている。
【0041】
シャフト32は、ボール軸受341および342に挿入されることによって、回転自在に支持される。ボール軸受341および342は、ベース部12aの中心部に形成された略円筒状の軸受ハウジング121の内周面に設けられた段差部に、ボール軸受341が中心軸上方向より、軸受342が中心軸下方向より、挿入される。
【0042】
ベース部12aの外縁に、インペラ2aを径方向外方から包囲するハウジング側壁部1bが形成されている。ベース部12aとハウジング側壁部1bとが一体成形されることによって、ハウジング1aが構成されている。ハウジング側壁部1bの上端部に、図6および図7のように、吸気口17を有するハウジングカバー19が取り付けられている。ベース部12aと、ハウジング側壁部1bの内側面と、ハウジングカバー19と、複数枚の羽根22の外周面が形成する包絡面とで取り囲まれることによって、インペラ2aが回転する際に発生する空気流の空気流路14aが形成される。空気流路14aを流れた空気は、ハウジング側壁部1bに備えられた排気口18から外部に排出される。吸気口17は、ベース部12aに形成されても良く、ハウジングカバー19もしくはベース部12aの少なくとも何れかに形成されれば良い。また、空気流路14aは、回転軸に垂直な断面において、空気流路14aの幅が排気口18に向かって漸次拡大する。しかし、小型ファンモータにおいては、流路の幅を一定にしても風量特性が低減しないため、空気流路の幅が排気口に向かって漸次拡大しなくても良い。
【0043】
ステータ部3は、軸受ハウジング121の外周部に支持される。ステータ部3は、ステータコア35と、コイル37と、インシュレータ36と、回路基板38と、で構成される。ステータコア35は、ロータヨーク31の円筒部内周面に固定されたロータマグネット33と間隙を介して、径方向に対向するように配置されている。ステータコア35の径方向外方の端部に形成された各ティース351には、絶縁部材で形成されたインシュレータ36を介して、コイル37がそれぞれ巻回される。ステータコア35の下方には、インペラ2aの回転駆動を制御するための回路基板38が配置される。
【0044】
回路基板38の片面に、回路パターンが形成されている。回路基板38は、回路パターンが形成されている側をベース部12aと対向する側に向けて、インシュレータ36に固定される。ただし、回路基板38の固定手段は限定されない。回路パターン上には、回路部品381を実装するためのランドが形成されている。ランド上に実装された回路部品381とコイル37の一端とが電気的に接続されることにより、一連の回路が構成される。外部電源からリード線を介して回路パターンに供給された電流を、回路パターンに実装された回路部品381を介してコイル37に流すことにより、ステータコア35に磁界が発生する。この磁界と多極着磁されたロータマグネット33が形成する磁界との相互作用により、インペラ2aに回転トルクが発生し、インペラ2aがシャフト32を回転軸として回転する。
【0045】
回路基板38に実装された回路部品381に電流が流れることにより、回路部品381が電気抵抗を有しているため、回路部品381において発熱が生じる。
【0046】
回路部品381とベース部12aとの間には、図6に示されているように、熱伝導性の高い導熱部材4が介在されている。従って、回路部品381に発生する熱は、導熱部材4を介してベース部12aに伝達される。ベース部12aとハウジング1aは、熱伝導性に優れた材料で一体成形されているので、回路部品381で発生した熱が、ベース部12aに伝達された後、ハウジング1aに伝達され、拡散する。インペラ2aが回転駆動することによって軸方向に生じた空気流が、ベース部12aとハウジング1aとに伝達された熱を外部に強制放熱する。
【0047】
導熱部材4には、低硬度の熱伝導性シリコンゴムシートを用いる。シリコンゴムシートは、軟らかく、粘着性に優れている。このため、シリコンゴムシートの表面形状は、ベース部12と各回路部品381の間に介在されることによって、各回路部品381で形成された凹凸部分(つまり回路基板38の実装面の形状)に合わせて形状を変化させることが可能である。よって、各回路部品381の下端面および側面が、シリコンゴムシートによって覆われている。従って、各回路部品381とシリコンゴムシートとの接触面積が大きくなり、各回路部品381で発生した熱は、効率良くシリコンゴムシートに伝達される。
【0048】
ベース部12aを形成するアルミ合金は導電性材料であることから、製品の信頼性を考慮して、回路基板38とベース部12aとを電気的に絶縁する必要がある。本実施形態では、導熱部材4は絶縁材料であるシリコンゴムシートで形成されているので、回路基板38とベース部12aとは、電気的に絶縁されている。回路基板38とベース部12aとの間に導熱部材4が介在していない部分においては、絶縁シート5がベース部12aの上端面に載置されている。回路基板38とベース部12aとが、導熱部材4および絶縁シート5によって電気的に絶縁されるので、ハウジング1aなどの筐体に落雷による高電圧が印加された場合、回路基板38とベース部12aとの短絡を防止し、絶縁耐力が向上する。
【0049】
(その他の実施形態)上記の第1および第2の実施形態においては、ファンモータAおよびBに関して説明をしたが、本発明は、ファンモータに限定されず、回路部品38で発生した熱が導熱部材4を介してベース部12もしくは12aに伝達される構成であれば、ファンモータに限らず、その他のDCブラシレスモータに適用可能である。
【0050】
上記の第1および第2の実施形態においては、DCブラシレスモータの構成が、ティース351の径方向外方に間隙を介しロータマグネット33が対向しているアウターロータであるが、本発明は、ティース351の径方向内方に間隙を介しロータマグネット33が対向しているインナーロータにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施例を示す軸流ファンモータの軸方向断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示す軸流ファンモータを分解した斜視図である。
【図3】第1の実施例におけるベース部の第1の変形例を示す軸流ファンモータの軸方向断面図である。
【図4】第1の実施例におけるベース部の第2の変形例を示す軸流ファンモータの軸方向断面図である。
【図5】第1の実施例におけるベース部の第3の変形例を示す軸流ファンモータの軸方向断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示す遠心ファンモータの軸方向断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例を示す遠心ファンモータを分解した斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
A ファンモータ
1 ハウジング
11 風洞部
12 ベース部
121 軸受ハウジング
13 支持脚
14 空気流路
15 側壁
16 フランジ部
161 取付け孔
17 吸気口
18 排気口
2 インペラ
21 インペラカップ部
22 羽根
3 ステータ部
31 ロータヨーク
32 シャフト
33 ロータマグネット
341 ボール軸受(上側)
342 ボール軸受(下側)
343 バネ
344 ワイヤーリング
35 ステータコア
351 ティース
36 インシュレータ
37 コイル
38 回路基板
381 回路部品
3811 ホール素子
4 導熱部材
5 絶縁シート
B ファンモータ
1a ハウジング
1b ハウジング側壁部
19 ハウジングカバー
2a インペラ
12a ベース部
14a 空気流路
23 羽根支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式のモータであって、
ステータ部と、
前記ステータ部に対して所定の中心軸周りに回転するロータ部と、
前記ステータ部が取付けられ、熱伝導性に優れた材料で形成されたベース部と、
を備え、
前記ステータ部が、
コイルが巻回された複数のティースを有するステータコアと、
前記ロータ部の回転を制御する制御回路を構成する回路部品が実装され、前記ロータ部と前記ベース部との間に設けられた回路基板と、
で構成され、
前記回路基板の前記ベース部側に実装された回路部品の少なくとも一部と、前記ベース部と、の間に両者に接触する状態で導熱部材が介在される
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記ベース部が、側壁を前記ベース部の外周部に有する
ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータであって、
前記ベース部が、ダイキャストによって形成される
ことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のモータであって、
前記ベース部の前記回路部品と対向する面に、前記回路基板へ向かう突出面が形成される
ことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項4または請求項5のいずれかに記載のモータであって、
前記回路部品に対向する前記ベース部の対向面には、前記導熱部材および絶縁シートが配置されている
ことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のモータを用いたファンユニットであって、
前記ロータ部は、
前記ロータ部外周面より径方向外方に向けて突設され、
回転することで空気を軸方向に吸気し軸方向に排気する複数枚の羽根を備え、
前記複数枚の羽根は、
前記空気流の流路を形成するハウジングによって径方向外方から外囲され、
前記ハウジングと前記ベース部とが支持脚によって連結される
ことを特徴とする軸流ファンユニット。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のモータを用いたファンユニットであって、
前記ロータ部は、
前記ロータ部の径方向外方において、前記中心軸を中心として環状に配列された複数枚の羽根を備えており、
軸方向から吸気した空気を径方向外方側に排出するように流路が形成されたハウジングが備えられている
ことを特徴とする遠心ファンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−300741(P2007−300741A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127091(P2006−127091)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】