モータ
【課題】ロータコアの強度低下を抑制しつつモータ効率を向上する。
【解決手段】モータのロータ部は、ロータコア32およびロータコア32の周方向に配置されてロータコア32に保持される複数の界磁用磁石33を備える。ロータコア32では、電機子に対向する磁極の極性が互いに異なるとともに隣接する1対の界磁用磁石33の間のフラックスバリア部322に、当該界磁用磁石対が挿入される2つの磁石保持穴321から独立したフラックスバリア穴323が形成される。また、各磁石保持穴321おいて、界磁用磁石33の側面332から隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられる。これにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下を抑制することができるとともに、フラックスバリア部322の磁気抵抗を増大させ、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れを抑制してモータ効率を向上することができる。
【解決手段】モータのロータ部は、ロータコア32およびロータコア32の周方向に配置されてロータコア32に保持される複数の界磁用磁石33を備える。ロータコア32では、電機子に対向する磁極の極性が互いに異なるとともに隣接する1対の界磁用磁石33の間のフラックスバリア部322に、当該界磁用磁石対が挿入される2つの磁石保持穴321から独立したフラックスバリア穴323が形成される。また、各磁石保持穴321おいて、界磁用磁石33の側面332から隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられる。これにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下を抑制することができるとともに、フラックスバリア部322の磁気抵抗を増大させ、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れを抑制してモータ効率を向上することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや排気ガス問題の改善等の環境負荷低減を目的とした車両の開発が盛んに行われている。このような車両に搭載される環境負荷を低減する機構の1つとして、車両が停止している際にエンジンを自動的に停止することにより、エンジンから排出される二酸化炭素の量を減らすアイドリングストップが知られている。
【0003】
ここで、車両の冷暖房装置において、コンプレッサがエンジンにより駆動される場合、アイドリングストップによりエンジンが停止されることにより冷暖房装置も停止してしまう。そこで、冷暖房装置のコンプレッサを電動式とし、当該コンプレッサを車載バッテリーにより駆動することにより、エンジンの停止中であっても冷暖房装置を駆動することが可能となる。このような車載の電動コンプレッサとして利用されるモータの1つとして、電機子の内側に配置されたロータコアに永久磁石が埋め込まれたIPM(interior permanent magnet(埋込磁石))モータがある。IPMモータは、永久磁石のロータコアからの脱落を確実に防止することができるため信頼性が高く、また、熱減磁に対しても高い耐久性を有するため、車両搭載用のモータとして適している。
【0004】
ところで、IPMモータでは、複数の永久磁石の周囲に磁性体であるロータコアの一部が存在するため、異極配置された隣接する永久磁石の間においてロータコアを介しての磁気短絡(いわゆる、磁束漏れ)が生じる。そこで、ロータコアの永久磁石間の部位における磁気抵抗を大きくして磁束漏れを抑制することにより、モータを駆動する効率(以下、「モータ効率」という。)を向上する技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1の永久磁石式回転電機では、それぞれが1つのポールを構成する複数の磁石群が回転子の周方向に配置されており、各磁石群は、回転子の外周側に向けて開いたV字状に配置される複数の永久磁石により構成される。特許文献1の回転子では、各磁石群の周方向の両端部(すなわち、回転子の外周側に近い端部)に、当該各磁石群が収容される穴と連続する空洞が設けられており、当該空洞により隣接する磁石群間における磁気抵抗を大きくして磁束漏れを低減することにより、モータ効率の向上が図られている。
【0006】
一方、特許文献2の電動機では、両端部がロータ(コア)の外周側を向くV字状に配置されるとともに1つのポールを構成する一対の永久磁石(以下、「永久磁石対」という。)がロータの周方向に複数配置されている。当該電動機では、ロータの隣接する永久磁石対の間の部位(すなわち、突極)に突極空隙を設け、各永久磁石対の2つの永久磁石の端部間の部位に磁極空隙を設け、さらに、ステータの各磁極の先端にC面取りを施すことにより、最大電流時においても逆突極性を維持し、インダクタンス変化によるロータの回転角度の検出を可能としている。
【特許文献1】特開2005−328679号公報
【特許文献2】特開2000−60038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、IPMモータでは、ロータ部の回転時に、ロータコアの界磁用磁石間の部位に、界磁用磁石に働く遠心力が加わるため、ロータコアの当該部位の強度を所定の大きさ以上に維持する必要がある。このため、特許文献1の回転電機では、各磁石群が収容される穴と連続する空洞を回転子の周方向に大きくすることが困難となり、モータ効率の向上に限界がある。また、特許文献2のロータでは、突極空隙の幅が突極の幅とほぼ等しくされているため、ロータの永久磁石間の部位の強度が低下してしまい、ロータの回転時に当該部位に加わる力を十分に支持することができない恐れがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ロータコアの強度低下を抑制しつつモータ効率を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、電動式のモータであって、電機子を有するステータ部と、前記ステータ部に取り付けられた軸受機構と、前記軸受機構を介して所定の中心軸を中心に前記ステータ部に対して回転可能に支持されるロータ部とを備え、前記ロータ部が、シャフトと、前記シャフトに取り付けられ、外周面が前記電機子と対向する略円筒状の磁性体であるロータコアと、前記ロータコアの前記外周面よりも前記中心軸側において前記中心軸を中心とする円周上に配置され、それぞれが前記中心軸に平行に伸びる複数の界磁用磁石とを備え、前記ロータコアが、前記複数の界磁用磁石が挿入される複数の磁石保持穴と、前記電機子に対向する磁極の極性が互いに異なるとともに隣接する複数の界磁用磁石対の間において前記中心軸に平行に伸びる複数のフラックスバリア穴とを備え、前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、前記中心軸を中心とする周方向両側の2つの界磁用磁石の最近接部を結ぶ面と前記ロータコアの前記外周面との間において、前記2つの界磁用磁石が挿入される2つの磁石保持穴から独立して形成されており、前記複数の磁石保持穴のそれぞれにおいて、保持される界磁用磁石の側面から隣接するフラックスバリア穴に向かって広がる隙間が設けられる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータであって、各フラックスバリア穴と前記ロータコアの前記外周面との間の最短距離、および、前記各フラックスバリア穴に隣接する2つの磁石保持穴と前記各フラックスバリア穴との間のそれぞれの最短距離が等しい。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のモータであって、前記複数の界磁用磁石において、前記電機子に対向する磁極の極性が、前記中心軸を中心とする周方向において2個ずつ変更される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータであって、前記複数の磁石保持穴のそれぞれのフラックスバリア穴とは反対側において、保持される界磁用磁石の側面との間に隙間が設けられている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のモータであって、前記複数の界磁用磁石のそれぞれが、主面が前記ロータコアの前記外周面側を向く板状であり、前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれの断面が、前記ロータコアの前記外周面に略平行な辺と、隣接する2つの界磁用磁石の互いに対向する面に平行な2辺とを有する略三角形である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のモータであって、前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、一定の断面形状にて前記ロータコアを貫通する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のモータであって、前記ロータ部が、前記複数のフラックスバリア穴に埋め込まれ、前記ロータコアよりも透磁率が低い材料により形成された補強部をさらに備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のモータであって、前記ロータ部が、前記ロータコアの前記中心軸方向の両側の端面において前記複数の界磁用磁石の端部を覆うとともに一部が前記複数のフラックスバリア穴に進入する樹脂製の2つのロータカバーをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ロータコアの強度低下を抑制しつつモータ効率を向上することができる。請求項2および5の発明では、ロータコアの強度低下の抑制とモータ効率の向上とをバランス良く実現することができる。請求項3および7の発明では、ロータコアの強度低下をより確実に抑制することができる。請求項4および6の発明では、モータ効率をより向上することができる。請求項7の発明では、モータの製造を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動式のモータ1の外観を示す平面図であり、図2は、モータ1を示す縦断面図である。図2では、図1に示すモータ1の中心軸J1を含む面における断面を示しており、また、当該断面よりも手前側および奥側の構成の一部も併せて示している。モータ1は、いわゆるアイドリングストップ(すなわち、車両が停止している際にエンジンを自動的に停止する機構)が搭載された車両等において、冷暖房装置のコンプレッサとして利用される3相交流モータであり、図1および図2に示すように、中心軸J1方向の長さが外径の約2倍である縦長のモータである。
【0019】
図2に示すように、モータ1はインナーロータ型のモータであり、固定組立体であるステータ部2、回転組立体であるロータ部3、ステータ部2に取り付けられるとともにロータ部3を中心軸J1を中心にステータ部2に対して回転可能に支持する軸受機構4、ロータ部3のステータ部2に対する角度位置を検出する装置であるレゾルバ部5、および、これらの構成を内部に収容する略有底円筒状のハウジング6を備える。以下の説明では、便宜上、中心軸J1に沿ってレゾルバ部5側を上側、ステータ部2およびロータ部3側を下側として説明するが、中心軸J1は必ずしも重力方向と一致する必要はない。
【0020】
ステータ部2は、ハウジング6の内周面に取り付けられる電機子21を備え、電機子21は、薄板状の珪素鋼板が積層されて形成されたステータコア211を備える。図3は、ステータコア211を示す平面図である。図3に示すように、ステータコア211は、中心軸J1を中心として放射状に配置された複数(本実施の形態では、24本)のティース2111、および、複数のティース2111の中心軸J1と反対側の端部を一体的に保持する略円環状のコアバック2112を備える。
【0021】
図4は、電機子21のステータコア211、および、ステータコア211に取り付けられる複数(本実施の形態では、48本)の導線212を示す斜視図である。図4に示すように、複数の導線212は、複数のティース2111間の複数(本実施の形態では、24個)のスロット2113において中心軸J1に平行に伸びる部位を有する。複数の導線212は、図5.Aおよび図5.Bに示す角形導線212aおよび丸形導線212bをそれぞれ複数有する。以下の説明では、角形導線212aと丸形導線212bとを区別する必要がない場合には、角形導線212aおよび丸形導線212bをまとめて導線212と呼ぶ。
【0022】
図5.Aに示すように、角形導線212aは、断面形状が矩形のU字型導線(すなわち、U字型の平角線)であり、図5.Bに示すように、丸形導線212bは、断面形状が円形のU字型導線(すなわち、U字型の丸線)である。本実施の形態では、丸形導線212bの直径は3.16mm以上3.24mm以下とされる。また、本実施の形態では、角形導線212aの断面積は12.3mm2以上とされ、丸形導線212bの断面積よりも大きくされる。
【0023】
図5.Aおよび図5.Bに示すように、角形導線212aおよび丸形導線212bはそれぞれ、ステータコア211の2つの異なるスロット2113(図4参照)にそれぞれ収容されるとともに中心軸J1に平行に伸びる2本の直線部2121、および、2本の直線部2121の中心軸J1方向における下側(すなわち、図2に示すハウジング6の底部側)の端部の間において屈曲しつつ2本の直線部2121の当該端部をステータコア211の下側にて一体的に接続する屈曲部2122を備える。角形導線212aおよび丸形導線212bはそれぞれ、直線状の導線を中央部近傍にて屈曲することによりU字型に成形される。複数の導線212の両端部2123(すなわち、2本の直線部2121の屈曲部2122側とは反対側の端部)は、図4に示すように、ステータコア211の上側(すなわち、ハウジング6の底部とは反対側の開口側)において、ステータコア211の各スロット2113から上向きに突出する。
【0024】
図6.Aは、ステータコア211および導線212(すなわち、角形導線212aおよび丸形導線212b)を示す断面図である。図6.Aでは、図示の都合上、ステータコア211および導線212の断面を平行斜線を付すことなく示している。図6.Aに示すように、電機子21では、ステータコア211の各スロット2113において、2本の角形導線212aの直線部2121(図5.A参照)と2本の丸形導線212bの直線部2121(図5.B参照)とが中心軸J1を中心とする径方向に配列されており、丸形導線212bは角形導線212aの中心軸J1側に配置されている。
【0025】
図6.Bは、図6.Aに示すステータコア211および導線212の一部を拡大して示す図である。図6.Bに示すように、角形導線212aのスロット2113に収容される部位の断面は、中心軸J1(図6.A参照)を中心とする径方向に(略)平行な2つの短辺2124、および、2つの短辺2124に略垂直な(すなわち、中心軸J1を中心とする周方向に(略)平行な)2つの長辺2125を備える。また、各スロット2113の中心軸J1側の端部近傍では、スロット2113の内側面(すなわち、当該スロット2113を挟む2つのティース2111の側面)が、最も中心軸J1側に配置された丸形導線212bのスロット2113に収容される部位の外側面に沿うように湾曲している。換言すれば、各スロット2113の内側面は、上記丸形導線212bの外側面に沿う湾曲部2114を備える。
【0026】
図2に示すように、電機子21は、中心軸J1方向においてステータコア211の上側に配置されて複数のU字型の導線212の端部2123(図4参照)と接続されるバスバーユニット213をさらに備え、バスバーユニット213は、中心軸J1を中心とする略円環状であって中心軸J1方向に積層された6枚の端子台であるバスバープレート2131を備える。以下の説明では、6枚のバスバープレート2131をそれぞれ区別して呼ぶ場合には、バスバーユニット213における下側(すなわち、ステータコア211側)に配置されるものから順に、バスバープレート2131a〜2131fと呼ぶ。
【0027】
図7.Aないし図7.Fは、バスバープレート2131a〜2131fを示す平面図である。図7.Aないし図7.Fに示すように、各バスバープレート2131(すなわち、バスバープレート2131a〜2131f)は、中心軸J1方向に関して同じ位置にて周方向に配列された複数の導電体の端子であるバスバー2132、および、中心軸J1を中心とする略円環状であって当該複数のバスバー2132が一体的に固定される絶縁体(本実施の形態では、樹脂)の端子保持部であるバスバーホルダ2133を備える。各バスバープレート2131では、複数のバスバー2132が、バスバーホルダ2133の外周縁よりも内側にてバスバーホルダ2133に固定される。
【0028】
図2に示すバスバーユニット213では、6枚のバスバーホルダ2133にそれぞれ保持されたバスバー群が、中心軸J1方向において互いに異なる位置に配置され、複数の導線212の一部にそれぞれ接続される。電機子21では、6枚のバスバープレート2131の複数のバスバー2132(図7.Aないし図7.F参照)により、複数の導線212の端部2123(図4参照)がステータコア211の上側において周方向に直列に接続されることにより、ステータコア211の複数のティース2111(図3参照)上に(複数の)コイル214が形成される。換言すれば、コイル214は、複数のバスバー2132、および、複数のバスバー2132を介して接続された複数の導線212を備える。
【0029】
電機子21では、図4に示す複数のティース2111のうち、連続する3本のティース2111に1ターンを巻回する分布巻きにより各コイル214(図2参照)が形成されており、1本の導線212の2本の直線部2121(図5.Aおよび図5.B参照)が挿入される2つのスロット2113の間には、他の導線212の直線部2121が挿入される他の2つのスロット2113が挟まれる。本実施の形態では、各コイル214のターン数は2とされ、それぞれ1本の角形導線212aおよび丸形導線212b(図5.Aおよび図5.B参照)が接続されることにより形成される。電機子21では、複数の角形導線212aおよび複数の丸形導線212bが交互に接続されてコイル214が形成されており、コイル214はバスバーユニット213(図2参照)を介して外部電源と接続される。
【0030】
図7.Aないし図7.Fに示すバスバープレート2131a〜2131fの外径(すなわち、各バスバープレートに外接する仮想円の直径)はそれぞれ、ステータコア211(図3参照)の外径よりも小さいため、複数のバスバー2132、および、各バスバー2132の導線との接合部2132aは、ステータコア211の外周縁よりも内側(すなわち、中心軸J1側)に配置される。したがって、複数の導線212と複数のバスバー2132の接合部2132aとは、ステータコア211の外周縁よりも中心軸J1側において接合される。本実施の形態では、バスバープレート2131a〜2131fの複数のバスバー2132と導線212との接合はTIG溶接により行われる。
【0031】
図2に示すロータ部3は、中心軸J1を中心とするシャフト31、シャフト31の周囲に圧入等により取り付けられた略円筒状のロータコア32、ロータコア32に保持されてそれぞれが中心軸J1に平行に伸びる薄板状の永久磁石である複数の界磁用磁石33、および、ロータコア32の中心軸J1方向の両端面を覆う略円板状のロータカバー34を備える。ロータコア32は、薄板状の磁性体の鋼板(すなわち、電磁鋼板)が中心軸J1方向に積層されて形成されており、その外周面は電機子21と対向する。また、ロータカバー34は、非磁性体(例えば、樹脂やアルミニウム)により形成されており、ボルト等によりロータコア32に固定されて界磁用磁石33の中心軸J1方向の移動を規制する。モータ1では、中心軸J1を中心とする環状の電機子21の中心軸J1側に界磁用磁石33が配置されており、電機子21と界磁用磁石33との間で中心軸J1を中心とする回転力(トルク)を発生する。
【0032】
図8.Aは、ロータコア32および界磁用磁石33を示す平面図である。図8.Aに示すように、ロータコア32には、中心軸J1に平行であってロータコア32を貫通する複数(本実施の形態では、16個)の磁石保持穴321が形成されており、当該複数の磁石保持穴321のそれぞれに薄板状の界磁用磁石33が挿入されることにより、複数の界磁用磁石33が、ロータコア32の外周面よりも中心軸J1側において中心軸J1を中心とする円周上に配置される。本実施の形態では、1個の磁石保持穴321に挿入される界磁用磁石33が中心軸J1方向に4分割されている。以下の説明では、1個の磁石保持穴321に挿入される4分割された界磁用磁石33をまとめて1個の界磁用磁石33として取り扱う。16個の界磁用磁石33は、それぞれの主面をロータコア32の外周面側(すなわち、図2に示す電機子21側)に向けて配列される。
【0033】
ロータ部3では、ロータコア32の外周面に向けて開いたV字状に配置される隣接する2つの界磁用磁石33において、電機子21に対向する磁極の極性が等しくされ(以下、「同極配置」と呼ぶ。)、当該2つの界磁用磁石33により1つのポールが形成される。換言すれば、複数の界磁用磁石33において、電機子21に対向する磁極の極性が、中心軸J1を中心とする周方向において2個ずつ変更される。本実施の形態では、ロータ部3のポール数は8とされる。
【0034】
ロータコア32では、電機子21に対向する磁極の極性が互いに異なる(以下、「異極配置」と呼ぶ。)とともに隣接する1対の界磁用磁石33(以下、「界磁用磁石対」という。)の間の部位322(すなわち、中心軸J1に向けて開いたV字状に配置される隣接する界磁用磁石対の中心軸J1から遠い側の端部の間の部位)に、当該界磁用磁石対が挿入される2つの磁石保持穴321から独立した穴部323が形成される。中心軸J1に平行に伸びる穴部323は、異極配置された複数の界磁用磁石対の間(すなわち、ロータ部3のポール間)に1つずつ形成されるため、本実施の形態では、8個の穴部323が、中心軸J1を中心とする円周上に等ピッチにて配列される。8個の穴部323の形状は全て等しく、また、隣接する2つの磁石保持穴321に対する相対位置も等しい。
【0035】
モータ1のロータコア32では、異極配置された界磁用磁石33間の部位322に穴部323が形成されることにより、当該部位322における磁気抵抗が増大する。これにより、異極配置された界磁用磁石33間における磁気短絡(いわゆる、磁束漏れ)が抑制され、モータ効率が向上される。このように、モータ1では、ロータコア32の穴部323が形成された部位322が、いわゆるフラックスバリアの役割を果たす。以下の説明では、部位322を「フラックスバリア部322」といい、穴部323を「フラックスバリア穴323」という。
【0036】
図8.Bは、ロータコア32の1つのフラックスバリア穴323近傍を拡大して示す図である。図8.Bに示すように、フラックスバリア穴323は、異極配置された界磁用磁石対の間のフラックスバリア部322において、周方向両側の2つの界磁用磁石33の最近接部を結ぶ面333(すなわち、2つの界磁用磁石33の中心軸J1(図8.A参照)側の主面331の互いに対向するエッジを結ぶ面333であり、図8.B中に二点鎖線にて示す。)と、ロータコア32の外周面との間に形成され、ロータコア32を中心軸J1方向に貫通する。フラックスバリア穴323の断面形状は略三角形であり、中心軸J1方向において一定である。
【0037】
磁石保持穴321のフラックスバリア穴323側の端部では、当該磁石保持穴321に保持される界磁用磁石33の側面332から、隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられる。また、磁石保持穴321のフラックスバリア穴323とは反対側の端部(すなわち、同極配置される隣接する2つの界磁用磁石33の互いに対向する側の端部)では、磁石保持穴321の内側面と当該磁石保持穴321に保持される界磁用磁石33の側面332との間に隙間325が設けられる。
【0038】
隙間324および隙間325はそれぞれ、界磁用磁石33の主面331に略垂直な2つの側面332のおよそ半分と対向する。また、界磁用磁石33の各側面332の残り半分は磁石保持穴321の内側面と当接しており、これにより、磁石保持穴321内における界磁用磁石33の周方向の動きが規制される。
【0039】
各フラックスバリア穴323の略三角形状の断面は、ロータコア32の外周面に略平行な辺、および、各フラックスバリア穴323に隣接する2つの界磁用磁石33の互いに対向する側面332に略平行な2辺を有する。各フラックスバリア穴323とロータコア32の外周面との間の最短距離D1、および、各フラックスバリア穴323に隣接する2つの磁石保持穴321と各フラックスバリア穴323との間のそれぞれの最短距離D2,D3は等しくされる。
【0040】
軸受機構4は、図2に示すように、ロータ部3のロータコア32の上側および下側においてシャフト31に取り付けられる上部ベアリング41および下部ベアリング42、並びに、上部ベアリング41が収容されるとともにハウジング6に固定されるベアリングホルダ43を備える。下部ベアリング42は、ハウジング6の底部中央に設けられた円筒状の側壁を有する収容部の内部に収容される。
【0041】
次に、モータ1の製造の流れについて説明する。図9は、モータ1の製造の流れを示す図である。また、図10.Aないし図10.Cは、製造途上のモータ1を示す正面図であり、図11.Aおよび図11.Bは、製造途上のモータ1を示す平面図である。
【0042】
モータ1が製造される際には、まず、図3に示すステータコア211の中心軸J1方向の両側から、樹脂等の絶縁体により形成されたインシュレータが挿入されてステータコア211に装着されることにより、複数のティース2111の側面および上下面、並びに、コアバック2112の上下面が絶縁体により被覆される。続いて、ステータコア211の複数のスロット2113に、複数の導線212のそれぞれの2本の直線部2121(図5.Aおよび図5.B参照)がステータコア211の下側から挿入され、図4に示すように各導線212の端部2123がステータコア211の上側に突出した状態とされる(ステップS11)。各導線212の両端部2123では、導線212の表面を被覆する厚さ数μmの絶縁体(例えば、ポリイミドアミド)の膜が予め除去されて側面に導電部が露出しており、当該両端部2123は、導電体であるバスバー2132の接合部2132a(図7.Aないし図7.F参照)と接合される接合部とされる。
【0043】
導線212の挿入が終了すると、図7.Aに示すバスバープレート2131aが、図10.Aに示すように、ステータコア211の上側(すなわち、複数の導線212の端部2123側)に配置され(ステップS12)、図11.Aに示すように、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132の接合部2132aに、複数の導線212の一部(すなわち、バスバープレート2131aと接合される導線群)の端部2123(図10.A参照)がそれぞれ嵌合される。そして、バスバー2132の接合部2132aと導線212の端部2123との各組み合わせに対してTIG溶接が行われ、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132と複数の導線212の一部とが接合される(ステップS13)。
【0044】
次に、図7.Bに示すバスバープレート2131bが、図10.Bに示すように、ステータコア211上に配置されたバスバープレート2131a上に重ねられ(ステップS14)、図11.Bに示すように、バスバープレート2131bの複数のバスバー2132の接合部2132aに、複数の導線212の一部(すなわち、バスバープレート2131bと接合される導線群)がそれぞれ嵌合される。バスバープレート2131bの複数のバスバー2132は、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132のステータコア211とは反対側において、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132の一部と中心軸J1方向に関して重なるように配置される。
【0045】
ここで、バスバープレート2131aおよびバスバープレート2131aの複数のバスバー2132を第1端子台および第1端子と捉え、バスバープレート2131bおよびバスバープレート2131bの複数のバスバー2132を第2端子台および第2端子と捉えた場合、モータ1では、第2端子台が第1端子台上に重ねられ、複数の第2端子が、中心軸J1方向に関して複数の第1端子の一部と重なっている。
【0046】
バスバープレート2131bでは、バスバープレート2131aの接合と同様に、バスバー2132の接合部2132aと導線212の端部2123との各組み合わせに対してTIG溶接が行われ、バスバープレート2131bの複数のバスバー2132と複数の導線212の一部とが接合される(ステップS15)。
【0047】
以下、同様に、全てのバスバープレート2131が導線212と接合されるまで(ステップS16)、次のバスバープレート2131を接合済みのバスバープレート2131上に重ねて当該バスバープレート2131のバスバー2132と複数の導線212の一部とをTIG溶接により接合する工程が繰り返され(ステップS14〜S16)、図10.Cに示すように、バスバーユニット213(すなわち、ステータコア211上に積層された6枚のバスバープレート2131)を有する電機子21が形成される。バスバーユニット213では、各バスバープレート2131の複数のバスバー2132(図7.Aないし図7.F参照)が、他のバスバープレート2131の複数のバスバー2132の一部と中心軸J1方向において重なる。
【0048】
全ての(本実施の形態では、6枚の)バスバープレート2131が導線212と接合されて電機子21の製造が終了すると、加熱されたハウジング6(図2参照)に対して、電機子21が複数の導線212の屈曲部2122側から挿入され、焼き嵌めにより電機子21がハウジング6の内部に固定される(ステップS17)。続いて、略円環板状のコイルカバーがハウジング6の内部に取り付けられ、電機子21のバスバーユニット213の上側が覆われる。
【0049】
次に、図2に示すロータ部3、並びに、ロータ部3のシャフト31に取り付けられた上部ベアリング41および下部ベアリング42が、ハウジング6内部の電機子21の内側(すなわち、中心軸J1側)に挿入される(ステップS18)。ロータ部3の組み立て、並びに、シャフト31への上部ベアリング41および下部ベアリング42の取り付けは、上述の電機子21の組み立て(ステップS11〜S16)とは独立して、電機子21の組み立てよりも前または後に、あるいは、電機子21の組み立てと並行して行われる。
【0050】
ロータ部3が電機子21の内側に挿入されると、ベアリングホルダ43が電機子21の上側(すなわち、ハウジング6の開口側)においてハウジング6に固定され(ステップS19)、その後、ベアリングホルダ43の上側においてレゾルバ部5がハウジング6に固定されることにより、モータ1の製造が終了する(ステップS20)。
【0051】
以上に説明したように、モータ1のロータ部3では、ロータコア32のフラックスバリア部322にフラックスバリア穴323を形成して磁気抵抗を増大させることにより、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れを抑制し、モータ効率を向上することができる。また、各磁石保持穴321おいて、界磁用磁石33の側面332から隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられることにより、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れをより一層抑制し、モータ効率をより向上することができる。
【0052】
ロータ部3では、フラックスバリア穴323を、隣接する2つの磁石保持穴321から独立させることにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下を抑制することができる。また、上記隙間324を設けることにより、フラックスバリア穴323が過剰に大きくなることを防止し、フラックスバリア部322の強度低下をより一層抑制することができる。その結果、ロータ部3の回転時に界磁用磁石33に働く遠心力を、フラックスバリア部322にて確実に支持することができ、モータ1の信頼性を向上することができる。
【0053】
車両の冷暖房装置のコンプレッサとして利用されるモータでは、高い信頼性と高効率が要求される。本実施の形態に係るモータ1は、上述のように、ロータコア32の強度低下を抑制しつつモータ効率を向上することができるため、車両の冷暖房装置のコンプレッサとして特に好ましく利用することができる。
【0054】
ロータ部3では、各フラックスバリア穴323が、一定の断面形状にてロータコア32を貫通する貫通穴とされることにより、フラックスバリア部322における磁気抵抗を中心軸J1方向において均一に増大させることができ、モータ効率をさらに向上することができる。また、各磁石保持穴321のフラックスバリア穴323とは反対側において、界磁用磁石33の側面332との間に隙間325が設けられることにより、同極配置された2つの界磁用磁石の間における比較的小さな磁束漏れをも抑制し、モータ効率をより一層向上することができる。
【0055】
さらには、ロータ部3において、隣接する2つの界磁用磁石33により1つのポールを形成し、当該2つの界磁用磁石33をそれぞれ独立する磁石保持穴321に保持することにより、ロータ部3の回転時に界磁用磁石33に働く遠心力を小さくし、ロータコア32のフラックスバリア部322に加えられる荷重を低減することができる。すなわち、遠心力に対するフラックスバリア部322の強度を相対的に向上し、ロータコア32の相対的な強度低下をより一層抑制することができる。
【0056】
ロータ部3では、フラックスバリア穴323とロータコア32の外周面との間の距離D1、および、各フラックスバリア穴323に隣接する2つの磁石保持穴321と各フラックスバリア穴323との間のそれぞれの最短距離D2,D3が等しくされることにより、フラックスバリア穴323の断面積を大きく確保しつつロータ部3の回転時のフラックスバリア部322における応力集中を緩和することができる。その結果、ロータコア32の強度低下の抑制とモータ効率の向上とをバランス良く実現することができる。
【0057】
また、フラックスバリア穴323の断面形状が、ロータコア32の外周面、および、隣接する2つの界磁用磁石33の側面332にそれぞれ略平行な3辺を有する略三角形とされることにより、フラックスバリア穴323と磁石保持穴321との間の細い部位(すなわち、磁路面積が小さく磁気抵抗が大きい部位)の長さを長くしてフラックスバリア部322の磁気抵抗をより大きくしつつロータ部3の回転時のフラックスバリア部322における応力集中を緩和することができる。その結果、ロータコア32の強度低下の抑制とモータ効率の向上とをさらにバランス良く実現することができる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータについて説明する。図12は、第2の実施の形態に係るモータのロータ部3aを示す縦断面図であり、図13は、ロータ部3aの一部を拡大して示す横断面図である。図12では、ロータ部3aの中心軸J1を含むとともにロータコア32のフラックスバリア穴323を通る面における断面を示しており、また、図13では、図12に示す中心軸J1に垂直な面における断面を示している。図12では、図示の都合上、シャフト31の一部の図示を省略している。
【0059】
図12および図13に示すように、ロータ部3aでは、各フラックスバリア穴323の中心軸J1方向の全長に亘って、ロータコア32よりも透磁率が低い材料(好ましくは非磁性体であり、本実施の形態では樹脂)により形成された補強部341が埋め込まれている。その他の構成は図1ないし図8.Bと同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0060】
図12に示すように、ロータ部3aでは、ロータコア32の中心軸J1方向の両側の端面において複数の界磁用磁石33(図13参照)の端部を覆う2つのロータカバー34が、補強部341と同様の樹脂により形成されており、当該2つのロータカバー34は、インサート成形により補強部341と一体的に形成される。ここで、樹脂製の補強部341を、同じく樹脂製のロータカバー34の一部と捉えた場合、ロータ部3aでは、2つのロータカバー34の一部が複数のフラックスバリア穴323に進入している状態となっている。
【0061】
図13に示すように、ロータ部3aでは、第1の実施の形態と同様に、ロータコア32のフラックスバリア部322に磁石保持穴321と独立するフラックスバリア穴323が形成され、さらに、各磁石保持穴321おいて、界磁用磁石33の側面332から隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられることにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下を抑制することができるとともに、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れを抑制してモータ効率を向上することができる。
【0062】
ロータ部3aでは、特に、各フラックスバリア穴323に補強部341が埋め込まれることにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下をより一層抑制することができる。また、複数の補強部341が、インサート成形により2つのロータカバー34と一体的に成形されることにより、ロータ部3aおよびモータの製造を簡素化することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0064】
例えば、第2の実施の形態に係るモータでは、2つのロータカバー34が複数の補強部341を介して強固に締結されている場合、ロータカバー34をロータコア32に固定するボルト等は省略されてもよい。また、補強部341は、ロータ部3aの回転バランスを調整する重りとして利用されてもよい。
【0065】
上記実施の形態に係るモータでは、各フラックスバリア部322に形成されるフラックスバリア穴323の断面形状は、略三角形以外の他の形状とされてもよい。また、各フラックスバリア部322に、中心軸J1方向に伸びる2つ以上の貫通穴がフラックスバリア穴として設けられてもよい。これにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度向上を図ることができる。
【0066】
フラックスバリア穴323は、必ずしも中心軸J1方向にロータコア32を貫通する必要はなく、各フラックスバリア部322に、ロータコア32の一方の端面から中心軸J1方向に伸びる凹部がフラックスバリア穴323として形成されてもよい。また、ロータコア32の両側の端面から中心軸J1方向にそれぞれ伸びる凹部が形成されてもよく、当該2つの凹部の間において中心軸J1方向に伸びる空隙がさらに設けられてもよい。
【0067】
上記実施の形態に係るロータ部では、各ポールは必ずしもV字状に配置された2個の界磁用磁石33により構成される必要はなく、例えば、3個以上の界磁用磁石により構成されてもよく、1個の平板状の界磁用磁石により構成されてもよい。ただし、上記実施の形態のように、ロータコア32の外周面に向かってV字状に開いた2個の界磁用磁石33により1つのポールを構成することにより、平板状の1個の界磁用磁石により1つのポールを構成する場合に比べて、両界磁用磁石33の中心線に向かって磁束を集中して磁束密度を高くすることができ、その結果、モータ効率を向上することができる。
【0068】
界磁用磁石33は必ずしも平板状には限定されず、例えば、湾曲した薄板状とされてもよい。また、中心軸J1方向に伸びる円柱状の永久磁石が界磁用磁石として用いられてもよい。
【0069】
また、モータは、車両の冷暖房装置のコンプレッサ以外に、いわゆるハイブリッドカー(すなわち、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と電動式モータの双方により駆動される車両)や電気自動車等の車両の駆動源として利用されてもよく、その他、様々な装置やその駆動源として利用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態に係るモータの平面図である。
【図2】モータの縦断面図である。
【図3】ステータコアの平面図である。
【図4】ステータコアおよび導線の斜視図である。
【図5.A】角形導線の斜視図である。
【図5.B】丸角形導線の斜視図である。
【図6.A】ステータコアおよび導線の断面図である。
【図6.B】1つのスロットを拡大して示す図である。
【図7.A】バスバープレートの平面図である。
【図7.B】バスバープレートの平面図である。
【図7.C】バスバープレートの平面図である。
【図7.D】バスバープレートの平面図である。
【図7.E】バスバープレートの平面図である。
【図7.F】バスバープレートの平面図である。
【図8.A】ロータコアおよび界磁用磁石の平面図である。
【図8.B】フラックスバリア穴近傍を拡大して示す図である。
【図9】モータの製造の流れを示す図である。
【図10.A】製造途上のモータを示す正面図である。
【図10.B】製造途上のモータを示す正面図である。
【図10.C】製造途上のモータを示す正面図である。
【図11.A】製造途上のモータを示す平面図である。
【図11.B】製造途上のモータを示す平面図である。
【図12】第2の実施の形態に係るモータのロータ部の縦断面図である。
【図13】ロータ部の一部を拡大して示す横断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 モータ
2 ステータ部
3,3a ロータ部
4 軸受機構
21 電機子
31 シャフト
32 ロータコア
33 界磁用磁石
34 ロータカバー
321 磁石保持穴
323 フラックスバリア穴
324 隙間
325 隙間
331 主面
332 側面
333 面
341 補強部
J1 中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや排気ガス問題の改善等の環境負荷低減を目的とした車両の開発が盛んに行われている。このような車両に搭載される環境負荷を低減する機構の1つとして、車両が停止している際にエンジンを自動的に停止することにより、エンジンから排出される二酸化炭素の量を減らすアイドリングストップが知られている。
【0003】
ここで、車両の冷暖房装置において、コンプレッサがエンジンにより駆動される場合、アイドリングストップによりエンジンが停止されることにより冷暖房装置も停止してしまう。そこで、冷暖房装置のコンプレッサを電動式とし、当該コンプレッサを車載バッテリーにより駆動することにより、エンジンの停止中であっても冷暖房装置を駆動することが可能となる。このような車載の電動コンプレッサとして利用されるモータの1つとして、電機子の内側に配置されたロータコアに永久磁石が埋め込まれたIPM(interior permanent magnet(埋込磁石))モータがある。IPMモータは、永久磁石のロータコアからの脱落を確実に防止することができるため信頼性が高く、また、熱減磁に対しても高い耐久性を有するため、車両搭載用のモータとして適している。
【0004】
ところで、IPMモータでは、複数の永久磁石の周囲に磁性体であるロータコアの一部が存在するため、異極配置された隣接する永久磁石の間においてロータコアを介しての磁気短絡(いわゆる、磁束漏れ)が生じる。そこで、ロータコアの永久磁石間の部位における磁気抵抗を大きくして磁束漏れを抑制することにより、モータを駆動する効率(以下、「モータ効率」という。)を向上する技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1の永久磁石式回転電機では、それぞれが1つのポールを構成する複数の磁石群が回転子の周方向に配置されており、各磁石群は、回転子の外周側に向けて開いたV字状に配置される複数の永久磁石により構成される。特許文献1の回転子では、各磁石群の周方向の両端部(すなわち、回転子の外周側に近い端部)に、当該各磁石群が収容される穴と連続する空洞が設けられており、当該空洞により隣接する磁石群間における磁気抵抗を大きくして磁束漏れを低減することにより、モータ効率の向上が図られている。
【0006】
一方、特許文献2の電動機では、両端部がロータ(コア)の外周側を向くV字状に配置されるとともに1つのポールを構成する一対の永久磁石(以下、「永久磁石対」という。)がロータの周方向に複数配置されている。当該電動機では、ロータの隣接する永久磁石対の間の部位(すなわち、突極)に突極空隙を設け、各永久磁石対の2つの永久磁石の端部間の部位に磁極空隙を設け、さらに、ステータの各磁極の先端にC面取りを施すことにより、最大電流時においても逆突極性を維持し、インダクタンス変化によるロータの回転角度の検出を可能としている。
【特許文献1】特開2005−328679号公報
【特許文献2】特開2000−60038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、IPMモータでは、ロータ部の回転時に、ロータコアの界磁用磁石間の部位に、界磁用磁石に働く遠心力が加わるため、ロータコアの当該部位の強度を所定の大きさ以上に維持する必要がある。このため、特許文献1の回転電機では、各磁石群が収容される穴と連続する空洞を回転子の周方向に大きくすることが困難となり、モータ効率の向上に限界がある。また、特許文献2のロータでは、突極空隙の幅が突極の幅とほぼ等しくされているため、ロータの永久磁石間の部位の強度が低下してしまい、ロータの回転時に当該部位に加わる力を十分に支持することができない恐れがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ロータコアの強度低下を抑制しつつモータ効率を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、電動式のモータであって、電機子を有するステータ部と、前記ステータ部に取り付けられた軸受機構と、前記軸受機構を介して所定の中心軸を中心に前記ステータ部に対して回転可能に支持されるロータ部とを備え、前記ロータ部が、シャフトと、前記シャフトに取り付けられ、外周面が前記電機子と対向する略円筒状の磁性体であるロータコアと、前記ロータコアの前記外周面よりも前記中心軸側において前記中心軸を中心とする円周上に配置され、それぞれが前記中心軸に平行に伸びる複数の界磁用磁石とを備え、前記ロータコアが、前記複数の界磁用磁石が挿入される複数の磁石保持穴と、前記電機子に対向する磁極の極性が互いに異なるとともに隣接する複数の界磁用磁石対の間において前記中心軸に平行に伸びる複数のフラックスバリア穴とを備え、前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、前記中心軸を中心とする周方向両側の2つの界磁用磁石の最近接部を結ぶ面と前記ロータコアの前記外周面との間において、前記2つの界磁用磁石が挿入される2つの磁石保持穴から独立して形成されており、前記複数の磁石保持穴のそれぞれにおいて、保持される界磁用磁石の側面から隣接するフラックスバリア穴に向かって広がる隙間が設けられる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータであって、各フラックスバリア穴と前記ロータコアの前記外周面との間の最短距離、および、前記各フラックスバリア穴に隣接する2つの磁石保持穴と前記各フラックスバリア穴との間のそれぞれの最短距離が等しい。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のモータであって、前記複数の界磁用磁石において、前記電機子に対向する磁極の極性が、前記中心軸を中心とする周方向において2個ずつ変更される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータであって、前記複数の磁石保持穴のそれぞれのフラックスバリア穴とは反対側において、保持される界磁用磁石の側面との間に隙間が設けられている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のモータであって、前記複数の界磁用磁石のそれぞれが、主面が前記ロータコアの前記外周面側を向く板状であり、前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれの断面が、前記ロータコアの前記外周面に略平行な辺と、隣接する2つの界磁用磁石の互いに対向する面に平行な2辺とを有する略三角形である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のモータであって、前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、一定の断面形状にて前記ロータコアを貫通する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のモータであって、前記ロータ部が、前記複数のフラックスバリア穴に埋め込まれ、前記ロータコアよりも透磁率が低い材料により形成された補強部をさらに備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のモータであって、前記ロータ部が、前記ロータコアの前記中心軸方向の両側の端面において前記複数の界磁用磁石の端部を覆うとともに一部が前記複数のフラックスバリア穴に進入する樹脂製の2つのロータカバーをさらに備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ロータコアの強度低下を抑制しつつモータ効率を向上することができる。請求項2および5の発明では、ロータコアの強度低下の抑制とモータ効率の向上とをバランス良く実現することができる。請求項3および7の発明では、ロータコアの強度低下をより確実に抑制することができる。請求項4および6の発明では、モータ効率をより向上することができる。請求項7の発明では、モータの製造を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動式のモータ1の外観を示す平面図であり、図2は、モータ1を示す縦断面図である。図2では、図1に示すモータ1の中心軸J1を含む面における断面を示しており、また、当該断面よりも手前側および奥側の構成の一部も併せて示している。モータ1は、いわゆるアイドリングストップ(すなわち、車両が停止している際にエンジンを自動的に停止する機構)が搭載された車両等において、冷暖房装置のコンプレッサとして利用される3相交流モータであり、図1および図2に示すように、中心軸J1方向の長さが外径の約2倍である縦長のモータである。
【0019】
図2に示すように、モータ1はインナーロータ型のモータであり、固定組立体であるステータ部2、回転組立体であるロータ部3、ステータ部2に取り付けられるとともにロータ部3を中心軸J1を中心にステータ部2に対して回転可能に支持する軸受機構4、ロータ部3のステータ部2に対する角度位置を検出する装置であるレゾルバ部5、および、これらの構成を内部に収容する略有底円筒状のハウジング6を備える。以下の説明では、便宜上、中心軸J1に沿ってレゾルバ部5側を上側、ステータ部2およびロータ部3側を下側として説明するが、中心軸J1は必ずしも重力方向と一致する必要はない。
【0020】
ステータ部2は、ハウジング6の内周面に取り付けられる電機子21を備え、電機子21は、薄板状の珪素鋼板が積層されて形成されたステータコア211を備える。図3は、ステータコア211を示す平面図である。図3に示すように、ステータコア211は、中心軸J1を中心として放射状に配置された複数(本実施の形態では、24本)のティース2111、および、複数のティース2111の中心軸J1と反対側の端部を一体的に保持する略円環状のコアバック2112を備える。
【0021】
図4は、電機子21のステータコア211、および、ステータコア211に取り付けられる複数(本実施の形態では、48本)の導線212を示す斜視図である。図4に示すように、複数の導線212は、複数のティース2111間の複数(本実施の形態では、24個)のスロット2113において中心軸J1に平行に伸びる部位を有する。複数の導線212は、図5.Aおよび図5.Bに示す角形導線212aおよび丸形導線212bをそれぞれ複数有する。以下の説明では、角形導線212aと丸形導線212bとを区別する必要がない場合には、角形導線212aおよび丸形導線212bをまとめて導線212と呼ぶ。
【0022】
図5.Aに示すように、角形導線212aは、断面形状が矩形のU字型導線(すなわち、U字型の平角線)であり、図5.Bに示すように、丸形導線212bは、断面形状が円形のU字型導線(すなわち、U字型の丸線)である。本実施の形態では、丸形導線212bの直径は3.16mm以上3.24mm以下とされる。また、本実施の形態では、角形導線212aの断面積は12.3mm2以上とされ、丸形導線212bの断面積よりも大きくされる。
【0023】
図5.Aおよび図5.Bに示すように、角形導線212aおよび丸形導線212bはそれぞれ、ステータコア211の2つの異なるスロット2113(図4参照)にそれぞれ収容されるとともに中心軸J1に平行に伸びる2本の直線部2121、および、2本の直線部2121の中心軸J1方向における下側(すなわち、図2に示すハウジング6の底部側)の端部の間において屈曲しつつ2本の直線部2121の当該端部をステータコア211の下側にて一体的に接続する屈曲部2122を備える。角形導線212aおよび丸形導線212bはそれぞれ、直線状の導線を中央部近傍にて屈曲することによりU字型に成形される。複数の導線212の両端部2123(すなわち、2本の直線部2121の屈曲部2122側とは反対側の端部)は、図4に示すように、ステータコア211の上側(すなわち、ハウジング6の底部とは反対側の開口側)において、ステータコア211の各スロット2113から上向きに突出する。
【0024】
図6.Aは、ステータコア211および導線212(すなわち、角形導線212aおよび丸形導線212b)を示す断面図である。図6.Aでは、図示の都合上、ステータコア211および導線212の断面を平行斜線を付すことなく示している。図6.Aに示すように、電機子21では、ステータコア211の各スロット2113において、2本の角形導線212aの直線部2121(図5.A参照)と2本の丸形導線212bの直線部2121(図5.B参照)とが中心軸J1を中心とする径方向に配列されており、丸形導線212bは角形導線212aの中心軸J1側に配置されている。
【0025】
図6.Bは、図6.Aに示すステータコア211および導線212の一部を拡大して示す図である。図6.Bに示すように、角形導線212aのスロット2113に収容される部位の断面は、中心軸J1(図6.A参照)を中心とする径方向に(略)平行な2つの短辺2124、および、2つの短辺2124に略垂直な(すなわち、中心軸J1を中心とする周方向に(略)平行な)2つの長辺2125を備える。また、各スロット2113の中心軸J1側の端部近傍では、スロット2113の内側面(すなわち、当該スロット2113を挟む2つのティース2111の側面)が、最も中心軸J1側に配置された丸形導線212bのスロット2113に収容される部位の外側面に沿うように湾曲している。換言すれば、各スロット2113の内側面は、上記丸形導線212bの外側面に沿う湾曲部2114を備える。
【0026】
図2に示すように、電機子21は、中心軸J1方向においてステータコア211の上側に配置されて複数のU字型の導線212の端部2123(図4参照)と接続されるバスバーユニット213をさらに備え、バスバーユニット213は、中心軸J1を中心とする略円環状であって中心軸J1方向に積層された6枚の端子台であるバスバープレート2131を備える。以下の説明では、6枚のバスバープレート2131をそれぞれ区別して呼ぶ場合には、バスバーユニット213における下側(すなわち、ステータコア211側)に配置されるものから順に、バスバープレート2131a〜2131fと呼ぶ。
【0027】
図7.Aないし図7.Fは、バスバープレート2131a〜2131fを示す平面図である。図7.Aないし図7.Fに示すように、各バスバープレート2131(すなわち、バスバープレート2131a〜2131f)は、中心軸J1方向に関して同じ位置にて周方向に配列された複数の導電体の端子であるバスバー2132、および、中心軸J1を中心とする略円環状であって当該複数のバスバー2132が一体的に固定される絶縁体(本実施の形態では、樹脂)の端子保持部であるバスバーホルダ2133を備える。各バスバープレート2131では、複数のバスバー2132が、バスバーホルダ2133の外周縁よりも内側にてバスバーホルダ2133に固定される。
【0028】
図2に示すバスバーユニット213では、6枚のバスバーホルダ2133にそれぞれ保持されたバスバー群が、中心軸J1方向において互いに異なる位置に配置され、複数の導線212の一部にそれぞれ接続される。電機子21では、6枚のバスバープレート2131の複数のバスバー2132(図7.Aないし図7.F参照)により、複数の導線212の端部2123(図4参照)がステータコア211の上側において周方向に直列に接続されることにより、ステータコア211の複数のティース2111(図3参照)上に(複数の)コイル214が形成される。換言すれば、コイル214は、複数のバスバー2132、および、複数のバスバー2132を介して接続された複数の導線212を備える。
【0029】
電機子21では、図4に示す複数のティース2111のうち、連続する3本のティース2111に1ターンを巻回する分布巻きにより各コイル214(図2参照)が形成されており、1本の導線212の2本の直線部2121(図5.Aおよび図5.B参照)が挿入される2つのスロット2113の間には、他の導線212の直線部2121が挿入される他の2つのスロット2113が挟まれる。本実施の形態では、各コイル214のターン数は2とされ、それぞれ1本の角形導線212aおよび丸形導線212b(図5.Aおよび図5.B参照)が接続されることにより形成される。電機子21では、複数の角形導線212aおよび複数の丸形導線212bが交互に接続されてコイル214が形成されており、コイル214はバスバーユニット213(図2参照)を介して外部電源と接続される。
【0030】
図7.Aないし図7.Fに示すバスバープレート2131a〜2131fの外径(すなわち、各バスバープレートに外接する仮想円の直径)はそれぞれ、ステータコア211(図3参照)の外径よりも小さいため、複数のバスバー2132、および、各バスバー2132の導線との接合部2132aは、ステータコア211の外周縁よりも内側(すなわち、中心軸J1側)に配置される。したがって、複数の導線212と複数のバスバー2132の接合部2132aとは、ステータコア211の外周縁よりも中心軸J1側において接合される。本実施の形態では、バスバープレート2131a〜2131fの複数のバスバー2132と導線212との接合はTIG溶接により行われる。
【0031】
図2に示すロータ部3は、中心軸J1を中心とするシャフト31、シャフト31の周囲に圧入等により取り付けられた略円筒状のロータコア32、ロータコア32に保持されてそれぞれが中心軸J1に平行に伸びる薄板状の永久磁石である複数の界磁用磁石33、および、ロータコア32の中心軸J1方向の両端面を覆う略円板状のロータカバー34を備える。ロータコア32は、薄板状の磁性体の鋼板(すなわち、電磁鋼板)が中心軸J1方向に積層されて形成されており、その外周面は電機子21と対向する。また、ロータカバー34は、非磁性体(例えば、樹脂やアルミニウム)により形成されており、ボルト等によりロータコア32に固定されて界磁用磁石33の中心軸J1方向の移動を規制する。モータ1では、中心軸J1を中心とする環状の電機子21の中心軸J1側に界磁用磁石33が配置されており、電機子21と界磁用磁石33との間で中心軸J1を中心とする回転力(トルク)を発生する。
【0032】
図8.Aは、ロータコア32および界磁用磁石33を示す平面図である。図8.Aに示すように、ロータコア32には、中心軸J1に平行であってロータコア32を貫通する複数(本実施の形態では、16個)の磁石保持穴321が形成されており、当該複数の磁石保持穴321のそれぞれに薄板状の界磁用磁石33が挿入されることにより、複数の界磁用磁石33が、ロータコア32の外周面よりも中心軸J1側において中心軸J1を中心とする円周上に配置される。本実施の形態では、1個の磁石保持穴321に挿入される界磁用磁石33が中心軸J1方向に4分割されている。以下の説明では、1個の磁石保持穴321に挿入される4分割された界磁用磁石33をまとめて1個の界磁用磁石33として取り扱う。16個の界磁用磁石33は、それぞれの主面をロータコア32の外周面側(すなわち、図2に示す電機子21側)に向けて配列される。
【0033】
ロータ部3では、ロータコア32の外周面に向けて開いたV字状に配置される隣接する2つの界磁用磁石33において、電機子21に対向する磁極の極性が等しくされ(以下、「同極配置」と呼ぶ。)、当該2つの界磁用磁石33により1つのポールが形成される。換言すれば、複数の界磁用磁石33において、電機子21に対向する磁極の極性が、中心軸J1を中心とする周方向において2個ずつ変更される。本実施の形態では、ロータ部3のポール数は8とされる。
【0034】
ロータコア32では、電機子21に対向する磁極の極性が互いに異なる(以下、「異極配置」と呼ぶ。)とともに隣接する1対の界磁用磁石33(以下、「界磁用磁石対」という。)の間の部位322(すなわち、中心軸J1に向けて開いたV字状に配置される隣接する界磁用磁石対の中心軸J1から遠い側の端部の間の部位)に、当該界磁用磁石対が挿入される2つの磁石保持穴321から独立した穴部323が形成される。中心軸J1に平行に伸びる穴部323は、異極配置された複数の界磁用磁石対の間(すなわち、ロータ部3のポール間)に1つずつ形成されるため、本実施の形態では、8個の穴部323が、中心軸J1を中心とする円周上に等ピッチにて配列される。8個の穴部323の形状は全て等しく、また、隣接する2つの磁石保持穴321に対する相対位置も等しい。
【0035】
モータ1のロータコア32では、異極配置された界磁用磁石33間の部位322に穴部323が形成されることにより、当該部位322における磁気抵抗が増大する。これにより、異極配置された界磁用磁石33間における磁気短絡(いわゆる、磁束漏れ)が抑制され、モータ効率が向上される。このように、モータ1では、ロータコア32の穴部323が形成された部位322が、いわゆるフラックスバリアの役割を果たす。以下の説明では、部位322を「フラックスバリア部322」といい、穴部323を「フラックスバリア穴323」という。
【0036】
図8.Bは、ロータコア32の1つのフラックスバリア穴323近傍を拡大して示す図である。図8.Bに示すように、フラックスバリア穴323は、異極配置された界磁用磁石対の間のフラックスバリア部322において、周方向両側の2つの界磁用磁石33の最近接部を結ぶ面333(すなわち、2つの界磁用磁石33の中心軸J1(図8.A参照)側の主面331の互いに対向するエッジを結ぶ面333であり、図8.B中に二点鎖線にて示す。)と、ロータコア32の外周面との間に形成され、ロータコア32を中心軸J1方向に貫通する。フラックスバリア穴323の断面形状は略三角形であり、中心軸J1方向において一定である。
【0037】
磁石保持穴321のフラックスバリア穴323側の端部では、当該磁石保持穴321に保持される界磁用磁石33の側面332から、隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられる。また、磁石保持穴321のフラックスバリア穴323とは反対側の端部(すなわち、同極配置される隣接する2つの界磁用磁石33の互いに対向する側の端部)では、磁石保持穴321の内側面と当該磁石保持穴321に保持される界磁用磁石33の側面332との間に隙間325が設けられる。
【0038】
隙間324および隙間325はそれぞれ、界磁用磁石33の主面331に略垂直な2つの側面332のおよそ半分と対向する。また、界磁用磁石33の各側面332の残り半分は磁石保持穴321の内側面と当接しており、これにより、磁石保持穴321内における界磁用磁石33の周方向の動きが規制される。
【0039】
各フラックスバリア穴323の略三角形状の断面は、ロータコア32の外周面に略平行な辺、および、各フラックスバリア穴323に隣接する2つの界磁用磁石33の互いに対向する側面332に略平行な2辺を有する。各フラックスバリア穴323とロータコア32の外周面との間の最短距離D1、および、各フラックスバリア穴323に隣接する2つの磁石保持穴321と各フラックスバリア穴323との間のそれぞれの最短距離D2,D3は等しくされる。
【0040】
軸受機構4は、図2に示すように、ロータ部3のロータコア32の上側および下側においてシャフト31に取り付けられる上部ベアリング41および下部ベアリング42、並びに、上部ベアリング41が収容されるとともにハウジング6に固定されるベアリングホルダ43を備える。下部ベアリング42は、ハウジング6の底部中央に設けられた円筒状の側壁を有する収容部の内部に収容される。
【0041】
次に、モータ1の製造の流れについて説明する。図9は、モータ1の製造の流れを示す図である。また、図10.Aないし図10.Cは、製造途上のモータ1を示す正面図であり、図11.Aおよび図11.Bは、製造途上のモータ1を示す平面図である。
【0042】
モータ1が製造される際には、まず、図3に示すステータコア211の中心軸J1方向の両側から、樹脂等の絶縁体により形成されたインシュレータが挿入されてステータコア211に装着されることにより、複数のティース2111の側面および上下面、並びに、コアバック2112の上下面が絶縁体により被覆される。続いて、ステータコア211の複数のスロット2113に、複数の導線212のそれぞれの2本の直線部2121(図5.Aおよび図5.B参照)がステータコア211の下側から挿入され、図4に示すように各導線212の端部2123がステータコア211の上側に突出した状態とされる(ステップS11)。各導線212の両端部2123では、導線212の表面を被覆する厚さ数μmの絶縁体(例えば、ポリイミドアミド)の膜が予め除去されて側面に導電部が露出しており、当該両端部2123は、導電体であるバスバー2132の接合部2132a(図7.Aないし図7.F参照)と接合される接合部とされる。
【0043】
導線212の挿入が終了すると、図7.Aに示すバスバープレート2131aが、図10.Aに示すように、ステータコア211の上側(すなわち、複数の導線212の端部2123側)に配置され(ステップS12)、図11.Aに示すように、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132の接合部2132aに、複数の導線212の一部(すなわち、バスバープレート2131aと接合される導線群)の端部2123(図10.A参照)がそれぞれ嵌合される。そして、バスバー2132の接合部2132aと導線212の端部2123との各組み合わせに対してTIG溶接が行われ、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132と複数の導線212の一部とが接合される(ステップS13)。
【0044】
次に、図7.Bに示すバスバープレート2131bが、図10.Bに示すように、ステータコア211上に配置されたバスバープレート2131a上に重ねられ(ステップS14)、図11.Bに示すように、バスバープレート2131bの複数のバスバー2132の接合部2132aに、複数の導線212の一部(すなわち、バスバープレート2131bと接合される導線群)がそれぞれ嵌合される。バスバープレート2131bの複数のバスバー2132は、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132のステータコア211とは反対側において、バスバープレート2131aの複数のバスバー2132の一部と中心軸J1方向に関して重なるように配置される。
【0045】
ここで、バスバープレート2131aおよびバスバープレート2131aの複数のバスバー2132を第1端子台および第1端子と捉え、バスバープレート2131bおよびバスバープレート2131bの複数のバスバー2132を第2端子台および第2端子と捉えた場合、モータ1では、第2端子台が第1端子台上に重ねられ、複数の第2端子が、中心軸J1方向に関して複数の第1端子の一部と重なっている。
【0046】
バスバープレート2131bでは、バスバープレート2131aの接合と同様に、バスバー2132の接合部2132aと導線212の端部2123との各組み合わせに対してTIG溶接が行われ、バスバープレート2131bの複数のバスバー2132と複数の導線212の一部とが接合される(ステップS15)。
【0047】
以下、同様に、全てのバスバープレート2131が導線212と接合されるまで(ステップS16)、次のバスバープレート2131を接合済みのバスバープレート2131上に重ねて当該バスバープレート2131のバスバー2132と複数の導線212の一部とをTIG溶接により接合する工程が繰り返され(ステップS14〜S16)、図10.Cに示すように、バスバーユニット213(すなわち、ステータコア211上に積層された6枚のバスバープレート2131)を有する電機子21が形成される。バスバーユニット213では、各バスバープレート2131の複数のバスバー2132(図7.Aないし図7.F参照)が、他のバスバープレート2131の複数のバスバー2132の一部と中心軸J1方向において重なる。
【0048】
全ての(本実施の形態では、6枚の)バスバープレート2131が導線212と接合されて電機子21の製造が終了すると、加熱されたハウジング6(図2参照)に対して、電機子21が複数の導線212の屈曲部2122側から挿入され、焼き嵌めにより電機子21がハウジング6の内部に固定される(ステップS17)。続いて、略円環板状のコイルカバーがハウジング6の内部に取り付けられ、電機子21のバスバーユニット213の上側が覆われる。
【0049】
次に、図2に示すロータ部3、並びに、ロータ部3のシャフト31に取り付けられた上部ベアリング41および下部ベアリング42が、ハウジング6内部の電機子21の内側(すなわち、中心軸J1側)に挿入される(ステップS18)。ロータ部3の組み立て、並びに、シャフト31への上部ベアリング41および下部ベアリング42の取り付けは、上述の電機子21の組み立て(ステップS11〜S16)とは独立して、電機子21の組み立てよりも前または後に、あるいは、電機子21の組み立てと並行して行われる。
【0050】
ロータ部3が電機子21の内側に挿入されると、ベアリングホルダ43が電機子21の上側(すなわち、ハウジング6の開口側)においてハウジング6に固定され(ステップS19)、その後、ベアリングホルダ43の上側においてレゾルバ部5がハウジング6に固定されることにより、モータ1の製造が終了する(ステップS20)。
【0051】
以上に説明したように、モータ1のロータ部3では、ロータコア32のフラックスバリア部322にフラックスバリア穴323を形成して磁気抵抗を増大させることにより、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れを抑制し、モータ効率を向上することができる。また、各磁石保持穴321おいて、界磁用磁石33の側面332から隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられることにより、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れをより一層抑制し、モータ効率をより向上することができる。
【0052】
ロータ部3では、フラックスバリア穴323を、隣接する2つの磁石保持穴321から独立させることにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下を抑制することができる。また、上記隙間324を設けることにより、フラックスバリア穴323が過剰に大きくなることを防止し、フラックスバリア部322の強度低下をより一層抑制することができる。その結果、ロータ部3の回転時に界磁用磁石33に働く遠心力を、フラックスバリア部322にて確実に支持することができ、モータ1の信頼性を向上することができる。
【0053】
車両の冷暖房装置のコンプレッサとして利用されるモータでは、高い信頼性と高効率が要求される。本実施の形態に係るモータ1は、上述のように、ロータコア32の強度低下を抑制しつつモータ効率を向上することができるため、車両の冷暖房装置のコンプレッサとして特に好ましく利用することができる。
【0054】
ロータ部3では、各フラックスバリア穴323が、一定の断面形状にてロータコア32を貫通する貫通穴とされることにより、フラックスバリア部322における磁気抵抗を中心軸J1方向において均一に増大させることができ、モータ効率をさらに向上することができる。また、各磁石保持穴321のフラックスバリア穴323とは反対側において、界磁用磁石33の側面332との間に隙間325が設けられることにより、同極配置された2つの界磁用磁石の間における比較的小さな磁束漏れをも抑制し、モータ効率をより一層向上することができる。
【0055】
さらには、ロータ部3において、隣接する2つの界磁用磁石33により1つのポールを形成し、当該2つの界磁用磁石33をそれぞれ独立する磁石保持穴321に保持することにより、ロータ部3の回転時に界磁用磁石33に働く遠心力を小さくし、ロータコア32のフラックスバリア部322に加えられる荷重を低減することができる。すなわち、遠心力に対するフラックスバリア部322の強度を相対的に向上し、ロータコア32の相対的な強度低下をより一層抑制することができる。
【0056】
ロータ部3では、フラックスバリア穴323とロータコア32の外周面との間の距離D1、および、各フラックスバリア穴323に隣接する2つの磁石保持穴321と各フラックスバリア穴323との間のそれぞれの最短距離D2,D3が等しくされることにより、フラックスバリア穴323の断面積を大きく確保しつつロータ部3の回転時のフラックスバリア部322における応力集中を緩和することができる。その結果、ロータコア32の強度低下の抑制とモータ効率の向上とをバランス良く実現することができる。
【0057】
また、フラックスバリア穴323の断面形状が、ロータコア32の外周面、および、隣接する2つの界磁用磁石33の側面332にそれぞれ略平行な3辺を有する略三角形とされることにより、フラックスバリア穴323と磁石保持穴321との間の細い部位(すなわち、磁路面積が小さく磁気抵抗が大きい部位)の長さを長くしてフラックスバリア部322の磁気抵抗をより大きくしつつロータ部3の回転時のフラックスバリア部322における応力集中を緩和することができる。その結果、ロータコア32の強度低下の抑制とモータ効率の向上とをさらにバランス良く実現することができる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータについて説明する。図12は、第2の実施の形態に係るモータのロータ部3aを示す縦断面図であり、図13は、ロータ部3aの一部を拡大して示す横断面図である。図12では、ロータ部3aの中心軸J1を含むとともにロータコア32のフラックスバリア穴323を通る面における断面を示しており、また、図13では、図12に示す中心軸J1に垂直な面における断面を示している。図12では、図示の都合上、シャフト31の一部の図示を省略している。
【0059】
図12および図13に示すように、ロータ部3aでは、各フラックスバリア穴323の中心軸J1方向の全長に亘って、ロータコア32よりも透磁率が低い材料(好ましくは非磁性体であり、本実施の形態では樹脂)により形成された補強部341が埋め込まれている。その他の構成は図1ないし図8.Bと同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0060】
図12に示すように、ロータ部3aでは、ロータコア32の中心軸J1方向の両側の端面において複数の界磁用磁石33(図13参照)の端部を覆う2つのロータカバー34が、補強部341と同様の樹脂により形成されており、当該2つのロータカバー34は、インサート成形により補強部341と一体的に形成される。ここで、樹脂製の補強部341を、同じく樹脂製のロータカバー34の一部と捉えた場合、ロータ部3aでは、2つのロータカバー34の一部が複数のフラックスバリア穴323に進入している状態となっている。
【0061】
図13に示すように、ロータ部3aでは、第1の実施の形態と同様に、ロータコア32のフラックスバリア部322に磁石保持穴321と独立するフラックスバリア穴323が形成され、さらに、各磁石保持穴321おいて、界磁用磁石33の側面332から隣接するフラックスバリア穴323に向かって広がる隙間324が設けられることにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下を抑制することができるとともに、異極配置された界磁用磁石対の間における磁束漏れを抑制してモータ効率を向上することができる。
【0062】
ロータ部3aでは、特に、各フラックスバリア穴323に補強部341が埋め込まれることにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度低下をより一層抑制することができる。また、複数の補強部341が、インサート成形により2つのロータカバー34と一体的に成形されることにより、ロータ部3aおよびモータの製造を簡素化することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0064】
例えば、第2の実施の形態に係るモータでは、2つのロータカバー34が複数の補強部341を介して強固に締結されている場合、ロータカバー34をロータコア32に固定するボルト等は省略されてもよい。また、補強部341は、ロータ部3aの回転バランスを調整する重りとして利用されてもよい。
【0065】
上記実施の形態に係るモータでは、各フラックスバリア部322に形成されるフラックスバリア穴323の断面形状は、略三角形以外の他の形状とされてもよい。また、各フラックスバリア部322に、中心軸J1方向に伸びる2つ以上の貫通穴がフラックスバリア穴として設けられてもよい。これにより、ロータコア32のフラックスバリア部322の強度向上を図ることができる。
【0066】
フラックスバリア穴323は、必ずしも中心軸J1方向にロータコア32を貫通する必要はなく、各フラックスバリア部322に、ロータコア32の一方の端面から中心軸J1方向に伸びる凹部がフラックスバリア穴323として形成されてもよい。また、ロータコア32の両側の端面から中心軸J1方向にそれぞれ伸びる凹部が形成されてもよく、当該2つの凹部の間において中心軸J1方向に伸びる空隙がさらに設けられてもよい。
【0067】
上記実施の形態に係るロータ部では、各ポールは必ずしもV字状に配置された2個の界磁用磁石33により構成される必要はなく、例えば、3個以上の界磁用磁石により構成されてもよく、1個の平板状の界磁用磁石により構成されてもよい。ただし、上記実施の形態のように、ロータコア32の外周面に向かってV字状に開いた2個の界磁用磁石33により1つのポールを構成することにより、平板状の1個の界磁用磁石により1つのポールを構成する場合に比べて、両界磁用磁石33の中心線に向かって磁束を集中して磁束密度を高くすることができ、その結果、モータ効率を向上することができる。
【0068】
界磁用磁石33は必ずしも平板状には限定されず、例えば、湾曲した薄板状とされてもよい。また、中心軸J1方向に伸びる円柱状の永久磁石が界磁用磁石として用いられてもよい。
【0069】
また、モータは、車両の冷暖房装置のコンプレッサ以外に、いわゆるハイブリッドカー(すなわち、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と電動式モータの双方により駆動される車両)や電気自動車等の車両の駆動源として利用されてもよく、その他、様々な装置やその駆動源として利用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態に係るモータの平面図である。
【図2】モータの縦断面図である。
【図3】ステータコアの平面図である。
【図4】ステータコアおよび導線の斜視図である。
【図5.A】角形導線の斜視図である。
【図5.B】丸角形導線の斜視図である。
【図6.A】ステータコアおよび導線の断面図である。
【図6.B】1つのスロットを拡大して示す図である。
【図7.A】バスバープレートの平面図である。
【図7.B】バスバープレートの平面図である。
【図7.C】バスバープレートの平面図である。
【図7.D】バスバープレートの平面図である。
【図7.E】バスバープレートの平面図である。
【図7.F】バスバープレートの平面図である。
【図8.A】ロータコアおよび界磁用磁石の平面図である。
【図8.B】フラックスバリア穴近傍を拡大して示す図である。
【図9】モータの製造の流れを示す図である。
【図10.A】製造途上のモータを示す正面図である。
【図10.B】製造途上のモータを示す正面図である。
【図10.C】製造途上のモータを示す正面図である。
【図11.A】製造途上のモータを示す平面図である。
【図11.B】製造途上のモータを示す平面図である。
【図12】第2の実施の形態に係るモータのロータ部の縦断面図である。
【図13】ロータ部の一部を拡大して示す横断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 モータ
2 ステータ部
3,3a ロータ部
4 軸受機構
21 電機子
31 シャフト
32 ロータコア
33 界磁用磁石
34 ロータカバー
321 磁石保持穴
323 フラックスバリア穴
324 隙間
325 隙間
331 主面
332 側面
333 面
341 補強部
J1 中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式のモータであって、
電機子を有するステータ部と、
前記ステータ部に取り付けられた軸受機構と、
前記軸受機構を介して所定の中心軸を中心に前記ステータ部に対して回転可能に支持されるロータ部と、
を備え、
前記ロータ部が、
シャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、外周面が前記電機子と対向する略円筒状の磁性体であるロータコアと、
前記ロータコアの前記外周面よりも前記中心軸側において前記中心軸を中心とする円周上に配置され、それぞれが前記中心軸に平行に伸びる複数の界磁用磁石と、
を備え、
前記ロータコアが、
前記複数の界磁用磁石が挿入される複数の磁石保持穴と、
前記電機子に対向する磁極の極性が互いに異なるとともに隣接する複数の界磁用磁石対の間において前記中心軸に平行に伸びる複数のフラックスバリア穴と、
を備え、
前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、前記中心軸を中心とする周方向両側の2つの界磁用磁石の最近接部を結ぶ面と前記ロータコアの前記外周面との間において、前記2つの界磁用磁石が挿入される2つの磁石保持穴から独立して形成されており、
前記複数の磁石保持穴のそれぞれにおいて、保持される界磁用磁石の側面から隣接するフラックスバリア穴に向かって広がる隙間が設けられることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
各フラックスバリア穴と前記ロータコアの前記外周面との間の最短距離、および、前記各フラックスバリア穴に隣接する2つの磁石保持穴と前記各フラックスバリア穴との間のそれぞれの最短距離が等しいことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータであって、
前記複数の界磁用磁石において、前記電機子に対向する磁極の極性が、前記中心軸を中心とする周方向において2個ずつ変更されることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータであって、
前記複数の磁石保持穴のそれぞれのフラックスバリア穴とは反対側において、保持される界磁用磁石の側面との間に隙間が設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のモータであって、
前記複数の界磁用磁石のそれぞれが、主面が前記ロータコアの前記外周面側を向く板状であり、
前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれの断面が、前記ロータコアの前記外周面に略平行な辺と、隣接する2つの界磁用磁石の互いに対向する面に平行な2辺とを有する略三角形であることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のモータであって、
前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、一定の断面形状にて前記ロータコアを貫通することを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のモータであって、
前記ロータ部が、前記複数のフラックスバリア穴に埋め込まれ、前記ロータコアよりも透磁率が低い材料により形成された補強部をさらに備えることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項6に記載のモータであって、
前記ロータ部が、前記ロータコアの前記中心軸方向の両側の端面において前記複数の界磁用磁石の端部を覆うとともに一部が前記複数のフラックスバリア穴に進入する樹脂製の2つのロータカバーをさらに備えることを特徴とするモータ。
【請求項1】
電動式のモータであって、
電機子を有するステータ部と、
前記ステータ部に取り付けられた軸受機構と、
前記軸受機構を介して所定の中心軸を中心に前記ステータ部に対して回転可能に支持されるロータ部と、
を備え、
前記ロータ部が、
シャフトと、
前記シャフトに取り付けられ、外周面が前記電機子と対向する略円筒状の磁性体であるロータコアと、
前記ロータコアの前記外周面よりも前記中心軸側において前記中心軸を中心とする円周上に配置され、それぞれが前記中心軸に平行に伸びる複数の界磁用磁石と、
を備え、
前記ロータコアが、
前記複数の界磁用磁石が挿入される複数の磁石保持穴と、
前記電機子に対向する磁極の極性が互いに異なるとともに隣接する複数の界磁用磁石対の間において前記中心軸に平行に伸びる複数のフラックスバリア穴と、
を備え、
前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、前記中心軸を中心とする周方向両側の2つの界磁用磁石の最近接部を結ぶ面と前記ロータコアの前記外周面との間において、前記2つの界磁用磁石が挿入される2つの磁石保持穴から独立して形成されており、
前記複数の磁石保持穴のそれぞれにおいて、保持される界磁用磁石の側面から隣接するフラックスバリア穴に向かって広がる隙間が設けられることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
各フラックスバリア穴と前記ロータコアの前記外周面との間の最短距離、および、前記各フラックスバリア穴に隣接する2つの磁石保持穴と前記各フラックスバリア穴との間のそれぞれの最短距離が等しいことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータであって、
前記複数の界磁用磁石において、前記電機子に対向する磁極の極性が、前記中心軸を中心とする周方向において2個ずつ変更されることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータであって、
前記複数の磁石保持穴のそれぞれのフラックスバリア穴とは反対側において、保持される界磁用磁石の側面との間に隙間が設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のモータであって、
前記複数の界磁用磁石のそれぞれが、主面が前記ロータコアの前記外周面側を向く板状であり、
前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれの断面が、前記ロータコアの前記外周面に略平行な辺と、隣接する2つの界磁用磁石の互いに対向する面に平行な2辺とを有する略三角形であることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のモータであって、
前記複数のフラックスバリア穴のそれぞれが、一定の断面形状にて前記ロータコアを貫通することを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のモータであって、
前記ロータ部が、前記複数のフラックスバリア穴に埋め込まれ、前記ロータコアよりも透磁率が低い材料により形成された補強部をさらに備えることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項6に記載のモータであって、
前記ロータ部が、前記ロータコアの前記中心軸方向の両側の端面において前記複数の界磁用磁石の端部を覆うとともに一部が前記複数のフラックスバリア穴に進入する樹脂製の2つのロータカバーをさらに備えることを特徴とするモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5.A】
【図5.B】
【図6.A】
【図6.B】
【図7.A】
【図7.B】
【図7.C】
【図7.D】
【図7.E】
【図7.F】
【図8.A】
【図8.B】
【図9】
【図10.A】
【図10.B】
【図10.C】
【図11.A】
【図11.B】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5.A】
【図5.B】
【図6.A】
【図6.B】
【図7.A】
【図7.B】
【図7.C】
【図7.D】
【図7.E】
【図7.F】
【図8.A】
【図8.B】
【図9】
【図10.A】
【図10.B】
【図10.C】
【図11.A】
【図11.B】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−148482(P2008−148482A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334201(P2006−334201)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】
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