ランキンサイクル装置付き車両
【課題】 内燃機関およびランキンサイクル装置を備えた車両において、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率を最大限に高めて内燃機関の燃料消費量を節減する。
【解決手段】 走行用駆動源としての内燃機関1および発電電動機2を備えたハイブリッド車両に、排気ガスの熱エネルギーを回収するランキンサイクル装置9を設ける。ランキンサイクル装置9の出力は変速機4に入力されて内燃機関1の駆動力のアシストに用いられ、あるいは電力に変換されてバッテリ8の充電に用いられる。排気ガスの温度が高く流量が多い車両の加速時およびクルーズ時にランキンサイクル装置9を作動させ、排気ガスの熱エネルギーを効率的に回収することにより内燃機関1の燃料消費量を節減する。
【解決手段】 走行用駆動源としての内燃機関1および発電電動機2を備えたハイブリッド車両に、排気ガスの熱エネルギーを回収するランキンサイクル装置9を設ける。ランキンサイクル装置9の出力は変速機4に入力されて内燃機関1の駆動力のアシストに用いられ、あるいは電力に変換されてバッテリ8の充電に用いられる。排気ガスの温度が高く流量が多い車両の加速時およびクルーズ時にランキンサイクル装置9を作動させ、排気ガスの熱エネルギーを効率的に回収することにより内燃機関1の燃料消費量を節減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動力を発生する内燃機関と、内燃機関の運転時にその排気ガスで作動して駆動力を発生するランキンサイクル装置とを備えたランキンサイクル装置付き車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル装置で内燃機関の排気ガスの熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、その機械エネルギーで車両の駆動力をアシストし、あるいは発電機を駆動して電力を得るものが、下記特許文献1および下記特許文献2により公知である。
【0003】
また内燃機関および発電電動機を備え、加速時やクルーズ時に発電電動機の駆動力で内燃機関の駆動力をアシストし、減速時に発電電動機の回生電力でバッテリを充電するハイブリッド車両も公知である。
【特許文献1】特開平5−340241号公報
【特許文献2】特開昭56−101012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載された走行用の内燃機関の排気ガスのエネルギーは、車両の運転状態(加速時、クルーズ時、減速時等)に応じて大きく変化するため、車両の運転状態に関わらずランキンサイクル装置を連続的に運転すると、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、内燃機関およびランキンサイクル装置を備えた車両において、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率を最大限に高めて内燃機関の燃料消費量を節減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、走行用の駆動力を発生する内燃機関と、内燃機関の運転時にその排気ガスで作動して駆動力を発生するランキンサイクル装置と、電動機として機能して内燃機関の駆動力をアシストするとともに、発電機として機能して発電を行う発電電動機と、発電電動機により充電され、かつ発電電動機に電力を供給するバッテリとを備えたランキンサイクル装置付き車両において、前記ランキンサイクル装置の駆動力は内燃機関の駆動力をアシストし、あるいは発電電動機を発電機として駆動し、少なくともランキンサイクル装置の作動時には、バッテリの残容量に応じて、車両の要求駆動力からランキンサイクル装置の駆動力と、発電電動機の駆動力あるいは負荷とを減算して内燃機関の目標出力を算出することを特徴とするランキンサイクル装置付き車両が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、車両の加速時あるいはクルーズ時にランキンサイクル装置を作動させて車両の減速時あるいは停止時にランキンサイクル装置を停止させることを特徴とするランキンサイクル装置付き車両が提案される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成によれば、ランキンサイクル装置の駆動力で内燃機関の駆動力をアシストし、あるいは発電電動機を発電機として駆動することにより、内燃機関の燃料消費量を節減することができる。しかも車両の減速時に回生制動により発電電動機を発電機として機能させて発電を行えば、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して内燃機関の燃料消費量を一層節減することができる。更に少なくともランキンサイクル装置の作動時には、バッテリの残容量に応じて、車両の要求駆動力からランキンサイクル装置の駆動力と、発電電動機の駆動力あるいは負荷とを減算して内燃機関の目標出力を算出するので、燃料の消費量を最小限に抑えながら車両の加速性能を高めるとともに、内燃機関の駆動力で発電電動機を駆動してバッテリを充電することができる。
【0009】
また請求項2の構成によれば、内燃機関の排気ガスの温度や流量が増加する車両の加速時あるいはクルーズ時にランキンサイクル装置を作動させ、内燃機関の排気ガスの温度や流量が減少する車両の減速時あるいは停止時にランキンサイクル装置を停止させるので、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図13は本発明の第1実施例を示すもので、図1はハイブリッド車両の全体構成を示す図、図2はランキンサイクル装置の構成を示す図、図3はメインルーチンのフローチャート、図4は停止時処理ルーチンのフローチャート、図5は加速時処理ルーチンのフローチャート、図6はクルーズ時処理ルーチンのフローチャート、図7は減速時処理ルーチンのフローチャート、図8は停止、加速、クルーズおよび減速を判定するマップを示す図、図9は電動機アシスト領域、内燃機関走行領域および充電領域を判定するマップを示す図、図10はバッテリの充電状態の各閾値を示す図、図11は内燃機関走行領域、電動機走行領域および充電領域を判定するマップを示す図、図12は車両の走行パターンの一例を示すタイムチャート、図13は車両の走行パターンの他の一例を示すタイムチャートである。
【0012】
図1において、ハイブリッド車両は走行用の駆動力を発生する内燃機関1を備えており、内燃機関1および発電電動機2はクラッチ3を介して直列に接続され、更に発電電動機2は変速機4、クラッチ5および差動装置6を介して駆動輪7に接続される。従って、クラッチ3を締結した状態で内燃機関1を駆動すれば、その駆動力がクラッチ3、発電電動機2、変速機4、クラッチ5および差動装置6を介して駆動輪7に伝達されて車両を走行させる。このとき、発電電動機2は空転させても良いが、バッテリ8からの電力で発電電動機2を駆動すれば内燃機関1の駆動力を発電電動機2の駆動力でアシストすることができ、あるいは発電電動機2を内燃機関1の駆動力で駆動して発電機として機能させればバッテリ8を充電することができる。また車両の減速時に、クラッチ3を締結解除して駆動輪7から逆伝達される駆動力で発電電動機2を駆動すれば、その発電電動機2が発生する回生電力でバッテリ8を充電することができる。
【0013】
車両は内燃機関1の廃熱で作動するランキンサイクル装置9を備えており、ランキンサイクル装置9が出力する駆動力は変速機4に入力される(矢印a参照)。変速機4は、ランキンサイクル装置9が発生した駆動力と、内燃機関1あるいは発電電動機2が発生した駆動力とを、例えば遊星歯車機構を用いて統合して駆動輪7に伝達する。。
【0014】
図2に示すように、ランキンサイクル装置9は公知の構造を有するもので、内燃機関1の廃熱である排気ガスを熱源として高温高圧蒸気を発生する蒸発器10と、その高温高圧蒸気の膨脹によって軸出力を発生する膨脹器11と、膨脹器11から排出される降温降圧蒸気を凝縮させて水に戻す凝縮器12と、凝縮器12からの水を蒸発器10に供給する給水ポンプ13とを有する。
【0015】
次に、内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9の制御をフローチャートを参照しながら説明する。内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9は、車速センサ、車体加速度センサ、スロットル開度センサ、バッテリ電圧センサ、バッテリ電流センサ等の出力に基づいて電子制御ユニットにより制御される。
【0016】
先ず、図3のメインルーチンのステップS1で車速および車速の変化(車体加速度および車体減速度)を検出し、ステップS2でスロットル開度を検出し、ステップS3で車速およびスロットル開度から車両の要求出力を算出する。続くステップS4で車両が停止状態にあれば、ステップS5で後述する停止時処理を実行し、ステップS6で車両が加速状態にあれば、ステップS7で後述する加速時処理を実行し、ステップS8で車両がクルーズ状態にあれば、ステップS9で後述するクルーズ時処理を実行し、ステップS10で車両が減速状態にあれば、ステップS11で後述する減速時処理を実行する。そしてステップS12で、前記停止時処理、加速時処理、クルーズ時処理および減速時処理に応じた内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9の駆動力制御を実行する。
【0017】
車両が停止状態、加速状態、クルーズ状態および減速状態の何れにあるかは、図8に示すマップに基づいて決定される。図8に示すマップは横軸に車速をとり、縦軸に要求出力をとったもので、そこに放物線状の走行抵抗ラインが設定される。車速および要求出力が共に0であれば車両が停止状態であると判定し、車速および要求出力が走行抵抗ラインの近傍の斜線領域にあれば車両がクルーズ状態であると判定し、車速および要求出力が前記斜線領域の上側にあれば車両が加速状態であると判定し、車速および要求出力が前記斜線領域の下側にあれば車両が減速状態であると判定する。尚、前記マップ以外に、例えば登坂路において車速が略一定であれば加速状態であると見做なされ、降坂路において車速が略一定であれば減速状態であると見做なされ、車体加速度あるいは車体減速度の絶対値が所定値以下の場合にはクルーズ状態である見做される。
【0018】
次に、図4のフローチャートに基づいて前記ステップS5(停止時制御)のサブルーチンを説明する。
【0019】
先ず、ステップS21で内燃機関1の出力を0に設定(停止)し、ステップS22で発電電動機2の出力を0に設定し、ステップS23でランキンサイクル装置9の出力を0に設定することにより、ステップS24で内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9のトータルの出力を0に設定する。このように車両の停止時に内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9を全て停止させることにより、燃料消費量を節減することができる。尚、停止した内燃機関1を始動する際、発電電動機2がスタータモータとして使用される。
【0020】
次に、図5のフローチャートに基づいて前記ステップS7(加速時制御)のサブルーチンを説明する。
【0021】
先ず、ステップS31で車速およびスロットル開度から車両の要求駆動力Ftrを算出し、ステップS32でバッテリ電圧およびバッテリ電流からバッテリ残容量Esocを算出する。続くステップS33で要求駆動力Ftrを図9のマップに適用し、現在の運転状態が電動機アシスト領域にあるか、内燃機関走行領域にあるか、充電領域にあるかを判定する。図9のマップは横軸に車速Vcarをとり、縦軸に要求駆動力Ftrをとったもので、そこに右下がりの第1閾値F1(Vcar)および第2閾値F2(Vcar)が設定される。そして、前記ステップS33で要求駆動力Ftrが第1閾値F1(Vcar)以上であれば電動機アシスト領域にあると判定し、ステップS34でアシスト許可フラグAST FLGを「1」にセットする。
【0022】
続くステップS35で前記アシスト許可フラグAST FLGが「1」にセットされているとき、つまり内燃機関1だけでは要求駆動力Ftrを満たすことができないとき、ステップS36でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であって発電電動機2による駆動力のアシストが可能な場合には、ステップS37で発電電動機2に発生させるべきアシスト量Pmを要求駆動力Ftrおよび車速Vcarに応じてマップ検索により決定する。またステップS38でバッテリ残容量Esocが図10の第1閾値E1以下であって発電電動機2による駆動力のアシストが不能な場合には、ステップS39で発電電動機2に発生させるべきアシスト量Pmを0に設定するとともに、アシスト許可フラグAST FLGを「0」にリセットする。
【0023】
続くステップS40で要求駆動力Ftrが図9に示す第2閾値F2(Vcar)以下であれば充電領域にあると判定し、ステップS41で発電許可フラグREG FLGを「1」にセットする。
【0024】
続くステップS42で前記発電許可フラグREG FLGが「1」にセットされているとき、ステップS43でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であってバッテリ8の充電が不要である場合には、ステップS44で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを0に設定するとともに、発電許可フラグREG FLGを「0」にリセットする。またステップS45でバッテリ残容量Esocが図10の第1閾値E1以下であってバッテリ8の充電が必要な場合には、ステップS46で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを要求駆動力Ftrおよび車速Vcarに応じてマップ検索により決定する。
【0025】
続くステップS47でランキンサイクル装置9の出力であるランキンサイクル出力Prcを内燃機関1の運転状態から算出し、ステップS48で要求駆動力Ftrから発電電動機2のアシスト量Pm(あるいは負値である発電電動機2の発電量Pm)と、ランキンサイクル出力Prcとを減算して目標内燃機関出力Peを算出し、ステップS49で最小の燃料消費量で前記目標内燃機関出力Peを得るための内燃機関1の回転数Neを算出する。
【0026】
このように、車両の加速時に要求駆動力Ftrが大きい場合には、バッテリ残容量Esocが充分であることを条件に発電電動機2の駆動力で内燃機関1の駆動力をアシストし、また車両の加速時に要求駆動力Ftrが小さい場合には、バッテリ8が過充電にならないことを条件に内燃機関1の駆動力で発電電動機2を駆動してバッテリ8を充電するので、車両の加速性能を高めるとともに、加速に続くクルーズに備えてバッテリ8を充電することができる。
【0027】
次に、図6のフローチャートに基づいて前記ステップS9(クルーズ時制御)のサブルーチンを説明する。
【0028】
先ず、ステップS51で車速およびスロットル開度から車両の要求駆動力Ptrを算出し、ステップS52でバッテリ電圧およびバッテリ電流からバッテリ残容量Esocを算出する。続くステップS53でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であれば発電電動機2による走行が可能であると判定し、ステップS54で放電許可フラグDCH FLGを「1」にセットする。
【0029】
続くステップS55で前記放電許可フラグDCH FLGが「1」にセットされているとき、ステップS56で要求駆動力Ptrが図11の閾値P1以下であって発電電動機2の出力だけで走行可能な場合には、ステップS57で発電電動機2に発生させるべき電動機出力Pmを要求駆動力Ptrとする。またステップS58で要求駆動力Ptrが図11の閾値P1を越えていて発電電動機2の出力だけでは走行できない場合には、ステップS59で発電電動機2に発生させるべき電動機出力Pmを車速Vcarおよび要求駆動力Ptrに基づいて設定するとともに、要求駆動力Ptrから前記電動機出力Pmを減算したものを目標内燃機関出力Peとする。
【0030】
続くステップS60でバッテリ残容量Esocが図10の第1閾値E1未満であれば、内燃機関1による発電が必要であると判定し、ステップS61で発電許可フラグREG FLGを「1」にセットするとともに、放電許可フラグDCH FLGを「0」にリセットする。
【0031】
続くステップS62で前記発電許可フラグREG FLGが「1」にセットされているとき、ステップS63で要求駆動力Ptrが図11の設定値Pbsfc(内燃機関1の効率が最大となる出力)未満である場合には、ステップS64で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを、設定値Pbsfcから要求駆動力Ptrを減算した値に設定し、内燃機関1の出力となる設定値Pbsfcの一部である発電量Pmで発電電動機2を駆動してバッテリ8を充電する。またステップS65でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であってバッテリ8の充電が不要な場合には、ステップS66で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを0に設定するとともに、発電許可フラグREG FLGを「0」にリセットする。
【0032】
続くステップS67でランキンサイクル装置9の出力であるランキンサイクル出力Prcを内燃機関1の運転状態から算出し、ステップS68で要求駆動力Ftrから発電電動機2の電動機出力Pm(あるいは負値である発電電動機2の発電量Pm)と、ランキンサイクル出力Prcとを減算して目標内燃機関出力Peを算出し、ステップS69で最小の燃料消費量で前記目標内燃機関出力Peを得るための内燃機関1の回転数Neを算出する。
【0033】
このように、車両のクルーズ時にバッテリ残容量Esocが充分であるとき、要求駆動力Ptrが大きければ内燃機関1の駆動力および発電電動機2の駆動力を併用して走行し、要求駆動力Ptrが小さければ内燃機関1を停止して発電電動機2の駆動力だけで走行するので燃料の消費量を最小限に抑えることができる。また車両のクルーズ時にバッテリ残容量Esocが不足しているときには、内燃機関1の駆動力で発電電動機2を駆動してバッテリ8を充電することができる。
【0034】
次に、図7のフローチャートに基づいて前記ステップS11(減速時制御)のサブルーチンを説明する。
【0035】
先ず、ステップS71で車速およびスロットル開度から車両の要求出力、つまり要求回生出力Ptrを算出し、ステップS72でバッテリ電圧およびバッテリ電流からバッテリ残容量Esocを算出する。続くステップS73でバッテリ残容量Esocが図10の第3閾値E3以下であれば回生電力によるバッテリ8の充電が可能であると判定し、ステップS74で充電許可フラグCHA FLGを「1」にセットする。
【0036】
続くステップS75で前記充電許可フラグCHA FLGが「1」にセットされているとき、ステップS76で要求回生出力Ptrの絶対値が図11の閾値P2の絶対値以下である場合には、ステップS77で前記要求回生出力のPtrをそのまま発電電動機2の回生出力Pmとする。またステップS78で要求回生出力Ptrの絶対値が図11の閾値P2の絶対値を越えている場合には、ステップS79で発電電動機2の回生出力Pmを前記閾値P2に設定する。
【0037】
続くステップS80でバッテリ残容量Esocが図10の第3閾値E3を越えていれば、バッテリ8がそれ以上充電できない状態にあると判定し、ステップS81で充電許可フラグCHA FLGを「0」にリセットする。
【0038】
続くステップS82で前記充電許可フラグCHA FLGが「0」にリセットされているとき、ステップS83で内燃機関1が運転中である場合には、ステップS84で回生制動を行わずにエンジンブレーキおよびメカブレーキで車両を減速する。またステップS85で内燃機関1が停止中であれば、ステップS86でメカブレーキで車両を減速する。
【0039】
このように、車両の減速時にバッテリ8が過充電になる虞がないことを条件に、発電電動機2により回生制動を実行して回生電力でバッテリ8を充電し、またバッテリ8が過充電になる虞がある場合には回生制動を禁止してエンジンブレーキおよびメカブレーキで車両を減速するので、燃料の消費量を最小限に抑えながらバッテリ残容量Esocを最大限に確保することができる。
【0040】
図12は車両の走行パターンの一例を示すもので、加速時には内燃機関1の駆動力および発電電動機2の駆動力を併用して走行し、クルーズ時には内燃機関1の駆動力で走行し、減速時には内燃機関1を停止させて発電電動機2の回生電力でバッテリ8を充電する。そして内燃機関1の運転時にはランキンサイクル装置9の出力で内燃機関1の駆動力がアシストされる。
【0041】
図13は車両の走行パターンの他の一例を示すもので、車両の発進時には大きな低速トルクを出力可能な発電電動機2を使用し、加速時には内燃機関1の駆動力で走行し、クルーズ時には発電電動機2の駆動力で走行し、減速時には内燃機関1を停止させて発電電動機2の回生電力でバッテリ8を充電する。そして内燃機関1の運転時にはランキンサイクル装置9の出力で内燃機関1の駆動力がアシストされる。
【0042】
次に、図14に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
【0043】
図1に示す第1実施例では発電電動機2が内燃機関1および変速機4の間に設けられていたが、第2実施例はバッテリ8により駆動される第1発電電動機2aが差動装置6に接続され、かつバッテリ8により駆動される第2発電電動機2bが内燃機関1に接続される。第1発電電動機2aは、該第1発電電動機2aだけの駆動力による走行と、内燃機関1の駆動力のアシストと、回生電力の発生とに使用され、第2発電電動機2bは、内燃機関1の始動と、内燃機関1の駆動力による発電とに使用される。本実施例でも、前述した第1実施例と同様にランキンサイクル装置9が出力する駆動力は、遊星歯車機構等の駆動力統合手段を介して変速機4に入力される(矢印a参照)。
【0044】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものでなく、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0045】
例えば、既に説明した実施例では、図1および図14に矢印aで示すようにランキンサイクル装置9の軸出力を車両の走行用の駆動源として直接使用しているが、ランキンサイクル装置9の軸出力で図示せぬ発電機を駆動することができる。矢印bで示すように発電機で発電した電力はバッテリ8に充電され、発電電動機2,2a,2bの駆動に使用される。車両の加速時やクルーズ時には発電電動機2,2aによる回生電力を得ることができないが、このときランキンサイクル装置9により発電した電力でバッテリ8を充電することにより、内燃機関1の駆動力を用いることなく、加速時、クルーズ時および減速時の全ての場合において、ランキンサイクル装置9の発電電力あるいは発電電動機2,2aの回生電力でバッテリ8を充電することができ、発電電動機2,2a,2bの性能を充分に生かすことができる。尚、本実施例では、第1、第2実施例におけるランキンサイクル出力Prcに対応する出力を、発電電動機2が電動機出力Pmとして出力することになる。
【0046】
また図5に示す加速時の処理に代えて、図6に示すクルーズ時の処理を採用することができる。
【0047】
また実施例では蓄電手段としてバッテリ8を例示したが、バッテリ8に代えてキャパシタを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ハイブリッド車両の全体構成を示す図
【図2】ランキンサイクル装置の構成を示す図
【図3】メインルーチンのフローチャート
【図4】停止時処理ルーチンのフローチャート
【図5】加速時処理ルーチンのフローチャート
【図6】クルーズ時処理ルーチンのフローチャート
【図7】減速時処理ルーチンのフローチャート
【図8】停止、加速、クルーズおよび減速を判定するマップを示す図
【図9】電動機アシスト領域、内燃機関走行領域および充電領域を判定するマップを示す図
【図10】バッテリの充電状態の各閾値を示す図
【図11】内燃機関走行領域、電動機走行領域および充電領域を判定するマップを示す図
【図12】車両の走行パターンの一例を示すタイムチャート
【図13】車両の走行パターンの他の一例を示すタイムチャート
【図14】本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の全体構成を示す図
【符号の説明】
【0049】
1 内燃機関
2 発電電動機
2a 第1発電電動機(発電電動機)
8 バッテリ
9 ランキンサイクル装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動力を発生する内燃機関と、内燃機関の運転時にその排気ガスで作動して駆動力を発生するランキンサイクル装置とを備えたランキンサイクル装置付き車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル装置で内燃機関の排気ガスの熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、その機械エネルギーで車両の駆動力をアシストし、あるいは発電機を駆動して電力を得るものが、下記特許文献1および下記特許文献2により公知である。
【0003】
また内燃機関および発電電動機を備え、加速時やクルーズ時に発電電動機の駆動力で内燃機関の駆動力をアシストし、減速時に発電電動機の回生電力でバッテリを充電するハイブリッド車両も公知である。
【特許文献1】特開平5−340241号公報
【特許文献2】特開昭56−101012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載された走行用の内燃機関の排気ガスのエネルギーは、車両の運転状態(加速時、クルーズ時、減速時等)に応じて大きく変化するため、車両の運転状態に関わらずランキンサイクル装置を連続的に運転すると、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、内燃機関およびランキンサイクル装置を備えた車両において、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率を最大限に高めて内燃機関の燃料消費量を節減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、走行用の駆動力を発生する内燃機関と、内燃機関の運転時にその排気ガスで作動して駆動力を発生するランキンサイクル装置と、電動機として機能して内燃機関の駆動力をアシストするとともに、発電機として機能して発電を行う発電電動機と、発電電動機により充電され、かつ発電電動機に電力を供給するバッテリとを備えたランキンサイクル装置付き車両において、前記ランキンサイクル装置の駆動力は内燃機関の駆動力をアシストし、あるいは発電電動機を発電機として駆動し、少なくともランキンサイクル装置の作動時には、バッテリの残容量に応じて、車両の要求駆動力からランキンサイクル装置の駆動力と、発電電動機の駆動力あるいは負荷とを減算して内燃機関の目標出力を算出することを特徴とするランキンサイクル装置付き車両が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、車両の加速時あるいはクルーズ時にランキンサイクル装置を作動させて車両の減速時あるいは停止時にランキンサイクル装置を停止させることを特徴とするランキンサイクル装置付き車両が提案される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成によれば、ランキンサイクル装置の駆動力で内燃機関の駆動力をアシストし、あるいは発電電動機を発電機として駆動することにより、内燃機関の燃料消費量を節減することができる。しかも車両の減速時に回生制動により発電電動機を発電機として機能させて発電を行えば、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して内燃機関の燃料消費量を一層節減することができる。更に少なくともランキンサイクル装置の作動時には、バッテリの残容量に応じて、車両の要求駆動力からランキンサイクル装置の駆動力と、発電電動機の駆動力あるいは負荷とを減算して内燃機関の目標出力を算出するので、燃料の消費量を最小限に抑えながら車両の加速性能を高めるとともに、内燃機関の駆動力で発電電動機を駆動してバッテリを充電することができる。
【0009】
また請求項2の構成によれば、内燃機関の排気ガスの温度や流量が増加する車両の加速時あるいはクルーズ時にランキンサイクル装置を作動させ、内燃機関の排気ガスの温度や流量が減少する車両の減速時あるいは停止時にランキンサイクル装置を停止させるので、ランキンサイクル装置による排気ガスのエネルギーの回収効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図13は本発明の第1実施例を示すもので、図1はハイブリッド車両の全体構成を示す図、図2はランキンサイクル装置の構成を示す図、図3はメインルーチンのフローチャート、図4は停止時処理ルーチンのフローチャート、図5は加速時処理ルーチンのフローチャート、図6はクルーズ時処理ルーチンのフローチャート、図7は減速時処理ルーチンのフローチャート、図8は停止、加速、クルーズおよび減速を判定するマップを示す図、図9は電動機アシスト領域、内燃機関走行領域および充電領域を判定するマップを示す図、図10はバッテリの充電状態の各閾値を示す図、図11は内燃機関走行領域、電動機走行領域および充電領域を判定するマップを示す図、図12は車両の走行パターンの一例を示すタイムチャート、図13は車両の走行パターンの他の一例を示すタイムチャートである。
【0012】
図1において、ハイブリッド車両は走行用の駆動力を発生する内燃機関1を備えており、内燃機関1および発電電動機2はクラッチ3を介して直列に接続され、更に発電電動機2は変速機4、クラッチ5および差動装置6を介して駆動輪7に接続される。従って、クラッチ3を締結した状態で内燃機関1を駆動すれば、その駆動力がクラッチ3、発電電動機2、変速機4、クラッチ5および差動装置6を介して駆動輪7に伝達されて車両を走行させる。このとき、発電電動機2は空転させても良いが、バッテリ8からの電力で発電電動機2を駆動すれば内燃機関1の駆動力を発電電動機2の駆動力でアシストすることができ、あるいは発電電動機2を内燃機関1の駆動力で駆動して発電機として機能させればバッテリ8を充電することができる。また車両の減速時に、クラッチ3を締結解除して駆動輪7から逆伝達される駆動力で発電電動機2を駆動すれば、その発電電動機2が発生する回生電力でバッテリ8を充電することができる。
【0013】
車両は内燃機関1の廃熱で作動するランキンサイクル装置9を備えており、ランキンサイクル装置9が出力する駆動力は変速機4に入力される(矢印a参照)。変速機4は、ランキンサイクル装置9が発生した駆動力と、内燃機関1あるいは発電電動機2が発生した駆動力とを、例えば遊星歯車機構を用いて統合して駆動輪7に伝達する。。
【0014】
図2に示すように、ランキンサイクル装置9は公知の構造を有するもので、内燃機関1の廃熱である排気ガスを熱源として高温高圧蒸気を発生する蒸発器10と、その高温高圧蒸気の膨脹によって軸出力を発生する膨脹器11と、膨脹器11から排出される降温降圧蒸気を凝縮させて水に戻す凝縮器12と、凝縮器12からの水を蒸発器10に供給する給水ポンプ13とを有する。
【0015】
次に、内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9の制御をフローチャートを参照しながら説明する。内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9は、車速センサ、車体加速度センサ、スロットル開度センサ、バッテリ電圧センサ、バッテリ電流センサ等の出力に基づいて電子制御ユニットにより制御される。
【0016】
先ず、図3のメインルーチンのステップS1で車速および車速の変化(車体加速度および車体減速度)を検出し、ステップS2でスロットル開度を検出し、ステップS3で車速およびスロットル開度から車両の要求出力を算出する。続くステップS4で車両が停止状態にあれば、ステップS5で後述する停止時処理を実行し、ステップS6で車両が加速状態にあれば、ステップS7で後述する加速時処理を実行し、ステップS8で車両がクルーズ状態にあれば、ステップS9で後述するクルーズ時処理を実行し、ステップS10で車両が減速状態にあれば、ステップS11で後述する減速時処理を実行する。そしてステップS12で、前記停止時処理、加速時処理、クルーズ時処理および減速時処理に応じた内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9の駆動力制御を実行する。
【0017】
車両が停止状態、加速状態、クルーズ状態および減速状態の何れにあるかは、図8に示すマップに基づいて決定される。図8に示すマップは横軸に車速をとり、縦軸に要求出力をとったもので、そこに放物線状の走行抵抗ラインが設定される。車速および要求出力が共に0であれば車両が停止状態であると判定し、車速および要求出力が走行抵抗ラインの近傍の斜線領域にあれば車両がクルーズ状態であると判定し、車速および要求出力が前記斜線領域の上側にあれば車両が加速状態であると判定し、車速および要求出力が前記斜線領域の下側にあれば車両が減速状態であると判定する。尚、前記マップ以外に、例えば登坂路において車速が略一定であれば加速状態であると見做なされ、降坂路において車速が略一定であれば減速状態であると見做なされ、車体加速度あるいは車体減速度の絶対値が所定値以下の場合にはクルーズ状態である見做される。
【0018】
次に、図4のフローチャートに基づいて前記ステップS5(停止時制御)のサブルーチンを説明する。
【0019】
先ず、ステップS21で内燃機関1の出力を0に設定(停止)し、ステップS22で発電電動機2の出力を0に設定し、ステップS23でランキンサイクル装置9の出力を0に設定することにより、ステップS24で内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9のトータルの出力を0に設定する。このように車両の停止時に内燃機関1、発電電動機2およびランキンサイクル装置9を全て停止させることにより、燃料消費量を節減することができる。尚、停止した内燃機関1を始動する際、発電電動機2がスタータモータとして使用される。
【0020】
次に、図5のフローチャートに基づいて前記ステップS7(加速時制御)のサブルーチンを説明する。
【0021】
先ず、ステップS31で車速およびスロットル開度から車両の要求駆動力Ftrを算出し、ステップS32でバッテリ電圧およびバッテリ電流からバッテリ残容量Esocを算出する。続くステップS33で要求駆動力Ftrを図9のマップに適用し、現在の運転状態が電動機アシスト領域にあるか、内燃機関走行領域にあるか、充電領域にあるかを判定する。図9のマップは横軸に車速Vcarをとり、縦軸に要求駆動力Ftrをとったもので、そこに右下がりの第1閾値F1(Vcar)および第2閾値F2(Vcar)が設定される。そして、前記ステップS33で要求駆動力Ftrが第1閾値F1(Vcar)以上であれば電動機アシスト領域にあると判定し、ステップS34でアシスト許可フラグAST FLGを「1」にセットする。
【0022】
続くステップS35で前記アシスト許可フラグAST FLGが「1」にセットされているとき、つまり内燃機関1だけでは要求駆動力Ftrを満たすことができないとき、ステップS36でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であって発電電動機2による駆動力のアシストが可能な場合には、ステップS37で発電電動機2に発生させるべきアシスト量Pmを要求駆動力Ftrおよび車速Vcarに応じてマップ検索により決定する。またステップS38でバッテリ残容量Esocが図10の第1閾値E1以下であって発電電動機2による駆動力のアシストが不能な場合には、ステップS39で発電電動機2に発生させるべきアシスト量Pmを0に設定するとともに、アシスト許可フラグAST FLGを「0」にリセットする。
【0023】
続くステップS40で要求駆動力Ftrが図9に示す第2閾値F2(Vcar)以下であれば充電領域にあると判定し、ステップS41で発電許可フラグREG FLGを「1」にセットする。
【0024】
続くステップS42で前記発電許可フラグREG FLGが「1」にセットされているとき、ステップS43でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であってバッテリ8の充電が不要である場合には、ステップS44で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを0に設定するとともに、発電許可フラグREG FLGを「0」にリセットする。またステップS45でバッテリ残容量Esocが図10の第1閾値E1以下であってバッテリ8の充電が必要な場合には、ステップS46で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを要求駆動力Ftrおよび車速Vcarに応じてマップ検索により決定する。
【0025】
続くステップS47でランキンサイクル装置9の出力であるランキンサイクル出力Prcを内燃機関1の運転状態から算出し、ステップS48で要求駆動力Ftrから発電電動機2のアシスト量Pm(あるいは負値である発電電動機2の発電量Pm)と、ランキンサイクル出力Prcとを減算して目標内燃機関出力Peを算出し、ステップS49で最小の燃料消費量で前記目標内燃機関出力Peを得るための内燃機関1の回転数Neを算出する。
【0026】
このように、車両の加速時に要求駆動力Ftrが大きい場合には、バッテリ残容量Esocが充分であることを条件に発電電動機2の駆動力で内燃機関1の駆動力をアシストし、また車両の加速時に要求駆動力Ftrが小さい場合には、バッテリ8が過充電にならないことを条件に内燃機関1の駆動力で発電電動機2を駆動してバッテリ8を充電するので、車両の加速性能を高めるとともに、加速に続くクルーズに備えてバッテリ8を充電することができる。
【0027】
次に、図6のフローチャートに基づいて前記ステップS9(クルーズ時制御)のサブルーチンを説明する。
【0028】
先ず、ステップS51で車速およびスロットル開度から車両の要求駆動力Ptrを算出し、ステップS52でバッテリ電圧およびバッテリ電流からバッテリ残容量Esocを算出する。続くステップS53でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であれば発電電動機2による走行が可能であると判定し、ステップS54で放電許可フラグDCH FLGを「1」にセットする。
【0029】
続くステップS55で前記放電許可フラグDCH FLGが「1」にセットされているとき、ステップS56で要求駆動力Ptrが図11の閾値P1以下であって発電電動機2の出力だけで走行可能な場合には、ステップS57で発電電動機2に発生させるべき電動機出力Pmを要求駆動力Ptrとする。またステップS58で要求駆動力Ptrが図11の閾値P1を越えていて発電電動機2の出力だけでは走行できない場合には、ステップS59で発電電動機2に発生させるべき電動機出力Pmを車速Vcarおよび要求駆動力Ptrに基づいて設定するとともに、要求駆動力Ptrから前記電動機出力Pmを減算したものを目標内燃機関出力Peとする。
【0030】
続くステップS60でバッテリ残容量Esocが図10の第1閾値E1未満であれば、内燃機関1による発電が必要であると判定し、ステップS61で発電許可フラグREG FLGを「1」にセットするとともに、放電許可フラグDCH FLGを「0」にリセットする。
【0031】
続くステップS62で前記発電許可フラグREG FLGが「1」にセットされているとき、ステップS63で要求駆動力Ptrが図11の設定値Pbsfc(内燃機関1の効率が最大となる出力)未満である場合には、ステップS64で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを、設定値Pbsfcから要求駆動力Ptrを減算した値に設定し、内燃機関1の出力となる設定値Pbsfcの一部である発電量Pmで発電電動機2を駆動してバッテリ8を充電する。またステップS65でバッテリ残容量Esocが図10の第2閾値E2以上であってバッテリ8の充電が不要な場合には、ステップS66で発電電動機2に発生させるべき発電量Pmを0に設定するとともに、発電許可フラグREG FLGを「0」にリセットする。
【0032】
続くステップS67でランキンサイクル装置9の出力であるランキンサイクル出力Prcを内燃機関1の運転状態から算出し、ステップS68で要求駆動力Ftrから発電電動機2の電動機出力Pm(あるいは負値である発電電動機2の発電量Pm)と、ランキンサイクル出力Prcとを減算して目標内燃機関出力Peを算出し、ステップS69で最小の燃料消費量で前記目標内燃機関出力Peを得るための内燃機関1の回転数Neを算出する。
【0033】
このように、車両のクルーズ時にバッテリ残容量Esocが充分であるとき、要求駆動力Ptrが大きければ内燃機関1の駆動力および発電電動機2の駆動力を併用して走行し、要求駆動力Ptrが小さければ内燃機関1を停止して発電電動機2の駆動力だけで走行するので燃料の消費量を最小限に抑えることができる。また車両のクルーズ時にバッテリ残容量Esocが不足しているときには、内燃機関1の駆動力で発電電動機2を駆動してバッテリ8を充電することができる。
【0034】
次に、図7のフローチャートに基づいて前記ステップS11(減速時制御)のサブルーチンを説明する。
【0035】
先ず、ステップS71で車速およびスロットル開度から車両の要求出力、つまり要求回生出力Ptrを算出し、ステップS72でバッテリ電圧およびバッテリ電流からバッテリ残容量Esocを算出する。続くステップS73でバッテリ残容量Esocが図10の第3閾値E3以下であれば回生電力によるバッテリ8の充電が可能であると判定し、ステップS74で充電許可フラグCHA FLGを「1」にセットする。
【0036】
続くステップS75で前記充電許可フラグCHA FLGが「1」にセットされているとき、ステップS76で要求回生出力Ptrの絶対値が図11の閾値P2の絶対値以下である場合には、ステップS77で前記要求回生出力のPtrをそのまま発電電動機2の回生出力Pmとする。またステップS78で要求回生出力Ptrの絶対値が図11の閾値P2の絶対値を越えている場合には、ステップS79で発電電動機2の回生出力Pmを前記閾値P2に設定する。
【0037】
続くステップS80でバッテリ残容量Esocが図10の第3閾値E3を越えていれば、バッテリ8がそれ以上充電できない状態にあると判定し、ステップS81で充電許可フラグCHA FLGを「0」にリセットする。
【0038】
続くステップS82で前記充電許可フラグCHA FLGが「0」にリセットされているとき、ステップS83で内燃機関1が運転中である場合には、ステップS84で回生制動を行わずにエンジンブレーキおよびメカブレーキで車両を減速する。またステップS85で内燃機関1が停止中であれば、ステップS86でメカブレーキで車両を減速する。
【0039】
このように、車両の減速時にバッテリ8が過充電になる虞がないことを条件に、発電電動機2により回生制動を実行して回生電力でバッテリ8を充電し、またバッテリ8が過充電になる虞がある場合には回生制動を禁止してエンジンブレーキおよびメカブレーキで車両を減速するので、燃料の消費量を最小限に抑えながらバッテリ残容量Esocを最大限に確保することができる。
【0040】
図12は車両の走行パターンの一例を示すもので、加速時には内燃機関1の駆動力および発電電動機2の駆動力を併用して走行し、クルーズ時には内燃機関1の駆動力で走行し、減速時には内燃機関1を停止させて発電電動機2の回生電力でバッテリ8を充電する。そして内燃機関1の運転時にはランキンサイクル装置9の出力で内燃機関1の駆動力がアシストされる。
【0041】
図13は車両の走行パターンの他の一例を示すもので、車両の発進時には大きな低速トルクを出力可能な発電電動機2を使用し、加速時には内燃機関1の駆動力で走行し、クルーズ時には発電電動機2の駆動力で走行し、減速時には内燃機関1を停止させて発電電動機2の回生電力でバッテリ8を充電する。そして内燃機関1の運転時にはランキンサイクル装置9の出力で内燃機関1の駆動力がアシストされる。
【0042】
次に、図14に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
【0043】
図1に示す第1実施例では発電電動機2が内燃機関1および変速機4の間に設けられていたが、第2実施例はバッテリ8により駆動される第1発電電動機2aが差動装置6に接続され、かつバッテリ8により駆動される第2発電電動機2bが内燃機関1に接続される。第1発電電動機2aは、該第1発電電動機2aだけの駆動力による走行と、内燃機関1の駆動力のアシストと、回生電力の発生とに使用され、第2発電電動機2bは、内燃機関1の始動と、内燃機関1の駆動力による発電とに使用される。本実施例でも、前述した第1実施例と同様にランキンサイクル装置9が出力する駆動力は、遊星歯車機構等の駆動力統合手段を介して変速機4に入力される(矢印a参照)。
【0044】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものでなく、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0045】
例えば、既に説明した実施例では、図1および図14に矢印aで示すようにランキンサイクル装置9の軸出力を車両の走行用の駆動源として直接使用しているが、ランキンサイクル装置9の軸出力で図示せぬ発電機を駆動することができる。矢印bで示すように発電機で発電した電力はバッテリ8に充電され、発電電動機2,2a,2bの駆動に使用される。車両の加速時やクルーズ時には発電電動機2,2aによる回生電力を得ることができないが、このときランキンサイクル装置9により発電した電力でバッテリ8を充電することにより、内燃機関1の駆動力を用いることなく、加速時、クルーズ時および減速時の全ての場合において、ランキンサイクル装置9の発電電力あるいは発電電動機2,2aの回生電力でバッテリ8を充電することができ、発電電動機2,2a,2bの性能を充分に生かすことができる。尚、本実施例では、第1、第2実施例におけるランキンサイクル出力Prcに対応する出力を、発電電動機2が電動機出力Pmとして出力することになる。
【0046】
また図5に示す加速時の処理に代えて、図6に示すクルーズ時の処理を採用することができる。
【0047】
また実施例では蓄電手段としてバッテリ8を例示したが、バッテリ8に代えてキャパシタを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ハイブリッド車両の全体構成を示す図
【図2】ランキンサイクル装置の構成を示す図
【図3】メインルーチンのフローチャート
【図4】停止時処理ルーチンのフローチャート
【図5】加速時処理ルーチンのフローチャート
【図6】クルーズ時処理ルーチンのフローチャート
【図7】減速時処理ルーチンのフローチャート
【図8】停止、加速、クルーズおよび減速を判定するマップを示す図
【図9】電動機アシスト領域、内燃機関走行領域および充電領域を判定するマップを示す図
【図10】バッテリの充電状態の各閾値を示す図
【図11】内燃機関走行領域、電動機走行領域および充電領域を判定するマップを示す図
【図12】車両の走行パターンの一例を示すタイムチャート
【図13】車両の走行パターンの他の一例を示すタイムチャート
【図14】本発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の全体構成を示す図
【符号の説明】
【0049】
1 内燃機関
2 発電電動機
2a 第1発電電動機(発電電動機)
8 バッテリ
9 ランキンサイクル装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動力を発生する内燃機関(1)と、内燃機関(1)の運転時にその排気ガスで作動して駆動力を発生するランキンサイクル装置(9)と、電動機として機能して内燃機関(1)の駆動力をアシストするとともに、発電機として機能して発電を行う発電電動機(2,2a)と、発電電動機(2,2a)により充電され、かつ発電電動機(2,2a)に電力を供給するバッテリ(8)とを備えたランキンサイクル装置付き車両において、 前記ランキンサイクル装置(9)の駆動力は内燃機関(1)の駆動力をアシストし、あるいは発電電動機(2,2a)を発電機として駆動し、少なくともランキンサイクル装置(9)の作動時には、バッテリ(9)の残容量に応じて、車両の要求駆動力からランキンサイクル装置(9)の駆動力と、発電電動機(2)の駆動力あるいは負荷とを減算して内燃機関(1)の目標出力を算出することを特徴とするランキンサイクル装置付き車両。
【請求項2】
車両の加速時あるいはクルーズ時にランキンサイクル装置(9)を作動させて車両の減速時あるいは停止時にランキンサイクル装置(9)を停止させることを特徴とする、請求項1に記載のランキンサイクル装置付き車両。
【請求項1】
走行用の駆動力を発生する内燃機関(1)と、内燃機関(1)の運転時にその排気ガスで作動して駆動力を発生するランキンサイクル装置(9)と、電動機として機能して内燃機関(1)の駆動力をアシストするとともに、発電機として機能して発電を行う発電電動機(2,2a)と、発電電動機(2,2a)により充電され、かつ発電電動機(2,2a)に電力を供給するバッテリ(8)とを備えたランキンサイクル装置付き車両において、 前記ランキンサイクル装置(9)の駆動力は内燃機関(1)の駆動力をアシストし、あるいは発電電動機(2,2a)を発電機として駆動し、少なくともランキンサイクル装置(9)の作動時には、バッテリ(9)の残容量に応じて、車両の要求駆動力からランキンサイクル装置(9)の駆動力と、発電電動機(2)の駆動力あるいは負荷とを減算して内燃機関(1)の目標出力を算出することを特徴とするランキンサイクル装置付き車両。
【請求項2】
車両の加速時あるいはクルーズ時にランキンサイクル装置(9)を作動させて車両の減速時あるいは停止時にランキンサイクル装置(9)を停止させることを特徴とする、請求項1に記載のランキンサイクル装置付き車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−143522(P2008−143522A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334976(P2007−334976)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2000−314435(P2000−314435)の分割
【原出願日】平成12年10月10日(2000.10.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2000−314435(P2000−314435)の分割
【原出願日】平成12年10月10日(2000.10.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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