説明

リアサスペンション構造

【課題】サスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減する。
【解決手段】リアサスペンション構造10では、トレーリングアーム30に縦方向アーム部30Aが形成されると共に、サスペンションメンバ12のボデーマウント部14よりも車両前後方向前側の部位に荷重伝達部36が結合されている。従って、車輪18が例えば縁石に衝突するなどして車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重Fが入力された場合には、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントに対し逆向きの曲げモーメントを生じさせることができ、互いの曲げモーメントを相殺する(打ち消す)ことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアサスペンション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のリアサスペンション構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、車両用懸架装置の例が開示されている。この特許文献1に記載の例では、車両幅方向に延びる一対のロアアームと、車両前後方向に延びるストラットロッドとが設けられている。一対のロアアームは、一端側がホイールキャリアに連結され、他端側がサブフレームに連結されている。
【特許文献1】特開平11−78450号公報
【特許文献2】特開2003−104018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、車輪が例えば縁石に衝突するなどして車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合には、この荷重が車輪から一対のロアアームを介してサブフレームに入力され、この一対のロアアームからの入力荷重によりサブフレームに曲げモーメントが生じる。
【0004】
ここで、曲げモーメントが生じた場合でもサブフレームに十分な耐力を確保できるようにするためには、例えばサブフレームの断面幅を拡大したり板厚を厚くしたりする必要がある。
【0005】
ところが、このようにすると、サブフレームの重量が増加する。従って、サブフレームの軽量化を図るためには、サブフレームに生ずる曲げモーメントを低減することが望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、サスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できるリアサスペンション構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のリアサスペンション構造は、前後一対のボデーマウント部にて車体に支持されたサスペンションメンバと、一端側が車輪を支持するキャリアに連結され、他端側が前記サスペンションメンバに連結された第一リンクと、一端側が前記キャリアに連結され、他端側が車体の前記キャリアに対する車両前後方向にずれた位置に連結された第二リンクと、前記第二リンクと前記サスペンションメンバとの間に設けられ、前記車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合に前記第二リンクに作用した荷重を前記サスペンションメンバに伝達する荷重伝達部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載のリアサスペンション構造によれば、車輪を支持するキャリアには、第一リンクの他に第二リンクが連結されている。また、この第二リンクとサスペンションメンバとの間には、車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合に第二リンクに作用した荷重をサスペンションメンバに伝達する荷重伝達部が設けられている。
【0009】
従って、車輪が例えば縁石に衝突するなどして車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合には、この荷重が、キャリアから第一リンクを介してサスペンションメンバに伝達される以外に、キャリアから第二リンク及び荷重伝達部を介してサスペンションメンバに伝達される。つまり、車輪からの荷重が分散されてサスペンションメンバに入力される。
【0010】
これにより、第一リンクからサスペンションメンバへ入力される荷重を低減できるので、第一リンクからの入力荷重によりサスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0011】
請求項2に記載のリアサスペンション構造は、請求項1に記載のリアサスペンション構造において、前記荷重伝達部は、前記第二リンク及び前記サスペンションメンバの少なくとも一方に一体又は別体に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のリアサスペンション構造によれば、荷重伝達部を第二リンク及びサスペンションメンバの少なくとも一方に一体又は別体に設ける、という簡単な構成により、第一リンクからの入力荷重によりサスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0013】
請求項3に記載のリアサスペンション構造は、請求項1又は請求項2に記載のリアサスペンション構造において、前記荷重伝達部は、前記サスペンションメンバと前記第一リンクとの連結部と前記前後一対のボデーマウント部の一方を挟んだ反対側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載のリアサスペンション構造によれば、荷重伝達部は、サスペンションメンバと第一リンクとの連結部と前後一対のボデーマウント部の一方を挟んだ反対側に設けられている。
【0015】
従って、上述のように、車輪からの荷重がキャリアから第一リンクを介してサスペンションメンバに伝達されると共にキャリアから第二リンク及び荷重伝達部を介してサスペンションメンバに伝達された場合には、第一リンクからの入力荷重によりサスペンションメンバに生ずる曲げモーメントに対し逆向きの曲げモーメントを生じさせることができる。
【0016】
これにより、互いの曲げモーメントを相殺する(打ち消す)ことができるので、サスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0017】
請求項4に記載のリアサスペンション構造は、請求項1に記載のリアサスペンション構造において、前記前後一対のボデーマウント部の一方には、前記サスペンションメンバに設けられたボデーマウント部材を下側から支持するロアプレートが設けられ、前記荷重伝達部は、前記第二リンク及び前記ロアプレートの少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載のリアサスペンション構造によれば、荷重伝達部を第二リンク及びロアプレートの少なくとも一方に一体又は別体に設ける、という簡単な構成により、第一リンクからの入力荷重によりサスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0019】
また、前記課題を解決するために、請求項5に記載のリアサスペンション構造は、前後一対のボデーマウント部にて車体に支持されたサスペンションメンバと、一端側が車輪を支持するキャリアに連結され、他端側が前記サスペンションメンバに連結された第一リンクと、一端側が車輪を支持するキャリアに連結され、他端側が前記サスペンションメンバと前記第一リンクとの連結部と前記前後一対のボデーマウント部を結ぶ方向における前記前後一対のボデーマウント部の一方を挟んだ反対側にて前記サスペンションメンバに連結された第二リンクと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載のリアサスペンション構造によれば、車輪を支持するキャリアには、それぞれサスペンションメンバに連結された第一リンク及び第二リンクが連結されている。
【0021】
従って、車輪が例えば縁石に衝突するなどして車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合には、この荷重が、キャリアから第一リンクを介してサスペンションメンバに伝達される以外に、キャリアから第二リンクを介してサスペンションメンバに伝達される。つまり、車輪からの荷重が分散されてサスペンションメンバに入力される。
【0022】
これにより、第一リンクからサスペンションメンバへ入力される荷重を低減できるので、第一リンクからの入力荷重によりサスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0023】
しかも、第二リンクは、サスペンションメンバと第一リンクとの連結部と前後一対のボデーマウント部を結ぶ方向における前後一対のボデーマウント部の一方を挟んだ反対側にてサスペンションメンバに連結されている。
【0024】
従って、上述のように、車輪からの荷重がキャリアから第一リンクを介してサスペンションメンバに伝達されると共にキャリアから第二リンクを介してサスペンションメンバに伝達された場合には、第一リンクからの入力荷重によりサスペンションメンバに生ずる曲げモーメントに対し逆向きの曲げモーメントを生じさせることができる。
【0025】
これにより、互いの曲げモーメントを相殺する(打ち消す)ことができるので、サスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、サスペンションメンバに生ずる曲げモーメントを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第一実施形態]
はじめに、図面を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。
【0028】
なお、以下の各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印INは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向内側をそれぞれ示している。
【0029】
図1には、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10の全体構成が平面図にて示されており、図2,図3には、図1の要部が平面図、斜視図によりそれぞれ示されている。
【0030】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10は、車両前後方向に延在するサスペンションメンバ12を備えている。このサスペンションメンバ12は、その長手方向両端側に配置された前後一対のボデーマウント部14,16にて車体に支持されている。
【0031】
サスペンションメンバ12の車両幅方向外側には、車輪18(右後輪)を支持するキャリア20が配置されており、キャリア20とサスペンションメンバ12との間には、第一リンクとしての一対のロアリンク22,24が配置されている。
【0032】
一対のロアリンク22,24は、それぞれ車両幅方向を長手方向とされると共に互いに車両前後方向に並んで配置されている。一対のロアリンク22,24は、一端側がキャリア20にそれぞれ連結され、他端側がサスペンションメンバ12の長手方向中間部、すなわち前後一対のボデーマウント部14,16間の部位にブラケット26,28を介してそれぞれ連結されている。
【0033】
一対のロアリンク22,24に対する車両前後方向前側には、第二リンクとしてのトレーリングアーム30が配置されている。トレーリングアーム30は、一端側がキャリア20に連結され、他端側が車体のキャリア20に対する車両前後方向前側にずれた位置32に連結されている。
【0034】
このトレーリングアーム30は、キャリア20の車両前後方向の動きを拘束するためのものであり、上述の一対のロアリンク22,24と共に、トレーリングアーム式ダブルウィッシュボーンサスペンション装置を構成している。
【0035】
また、トレーリングアーム30は、湾曲した形状に構成されており、このトレーリングアーム30の長手方向中間部から他端側(車体側)に至る部位は、車両前後方向に延在する縦方向アーム部30Aとされている。
【0036】
サスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位、すなわちロアリンク22との連結部(つまり、ブラケット26による連結部分)と前側のボデーマウント部14を挟んだ反対側の部位(つまり、ボデーマウント部14よりも車両前後方向前側の部位)には、荷重伝達部36が溶接等により結合されている。この荷重伝達部36には、上述のトレーリングアーム30の縦方向アーム部30Aを向き、且つ、このトレーリングアーム30と平行な荷重伝達面36Aが形成されている。
【0037】
そして、このリアサスペンション構造10では、車輪18が例えば縁石に衝突するなどして車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合には、トレーリングアーム30の縦方向アーム部30Aと荷重伝達部36の荷重伝達面36Aとが当接され、車輪18からの荷重が、キャリア20から一対のロアリンク22,24を介してサスペンションメンバ12に伝達される以外に、キャリア20からトレーリングアーム30及び荷重伝達部36を介してサスペンションメンバ12に伝達される構成とされている。
【0038】
なお、車輪18が例えば縁石に衝突などしない通常の走行時には、図2,図3に示されるように、トレーリングアーム30の縦方向アーム部30Aと荷重伝達部36の荷重伝達面36Aとの間に隙間38が確保され、車輪18の上下動に伴うトレーリングアーム30の揺動が許容されるようになっている。
【0039】
そして、上記構成からなるリアサスペンション構造10によれば、以下の作用及び効果を奏する。
【0040】
ここで、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10の作用及び効果をより明確にするために、先ず、比較例に係るリアサスペンション構造210について説明する。図10には、比較例に係るリアサスペンション構造210の全体構成が平面図にて示されている。
【0041】
なお、比較例に係るリアサスペンション構造210において、上述の本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10と同一の構成については、便宜上、同一の符号を用いることとする。
【0042】
図10に示されるように、比較例に係るリアサスペンション構造210は、上述の本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10に対し、湾曲形状のトレーリングアーム30の代わりに、直線形状のトレーリングアーム230を備え、且つ、荷重伝達部36を省いた構成とされている。
【0043】
ここで、図11(A)には、図10に示されるリアサスペンション構造210において車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重Fが入力された状態が示されており、図11(B)、図11(C)には、図11(A)におけるリアサスペンション構造210のSFD(せん断力線図)、BMD(曲げモーメント線図)がそれぞれ示されている。
【0044】
図11(A)に示されるように、車輪18が例えば縁石に衝突するなどして車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重Fが入力された場合には、サスペンションメンバ12と一対のロアリンク22,24との各連結部に荷重fa,fbが作用する。一方、サスペンションメンバ12の前後一対のボデーマウント部14,16には、サスペンションメンバ12とロアリンク22,24との各連結部に荷重fa,fbがそれぞれ作用することに伴って反力Ra,Rbがそれぞれ作用する。
【0045】
そして、この場合のリアサスペンション構造210におけるSFDは、図11(B)に示される通りである。また、サスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間には、図11(C)のリアサスペンション構造210におけるBMDで示される通り、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbにより曲げモーメントが生じる。
【0046】
ここで、曲げモーメントが生じた場合でもサスペンションメンバ12に十分な耐力を確保できるようにするためには、サスペンションメンバ12の断面幅を拡大したり板厚を厚くしたりする必要がある。
【0047】
ところが、このようにすると、サスペンションメンバ12の重量が増加する。従って、サスペンションメンバ12の軽量化を図るためには、サスペンションメンバ12に生ずる曲げモーメントを低減することが望まれる。
【0048】
一方、図1に示される本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10では、トレーリングアーム30に縦方向アーム部30Aが形成されると共に、サスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位に荷重伝達部36が結合されている。
【0049】
ここで、図4(A)には、図1に示されるリアサスペンション構造10において車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重Fが入力された状態が示されており、図4(B)、図4(C)には、図4(A)におけるリアサスペンション構造10のSFD(せん断力線図)、BMD(曲げモーメント線図)がそれぞれ示されている。
【0050】
図4(A)に示されるように、車輪18が例えば縁石に衝突するなどして車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重Fが入力された場合には、トレーリングアーム30の縦方向アーム部30Aと荷重伝達部36の荷重伝達面36Aとが当接される。
【0051】
従って、この場合には、車輪18からの荷重Fが、キャリア20から一対のロアリンク22,24を介してサスペンションメンバ12に伝達される以外に、キャリア20からトレーリングアーム30及び荷重伝達部36を介してサスペンションメンバ12に伝達される。つまり、車輪18からの荷重Fが荷重fa,fb,fxに分散されてサスペンションメンバ12に入力される。なお、この場合のリアサスペンション構造10におけるSFDは、図4(B)に示される通りである。
【0052】
これにより、一対のロアリンク22,24からサスペンションメンバ12へ入力される荷重fa,fbを低減できるので、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0053】
しかも、荷重伝達部36は、サスペンションメンバ12とロアリンク22との連結部と車両前後方向前側のボデーマウント部14を挟んだ反対側に設けられている。
【0054】
従って、上述のように、車輪18からの荷重Fがキャリア20から一対のロアリンク22,24を介してサスペンションメンバ12に伝達されると共にキャリア20からトレーリングアーム30及び荷重伝達部36を介してサスペンションメンバ12に伝達された場合には、図4(C)に示されるように、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントに対し逆向きの曲げモーメントを生じさせることができる。
【0055】
これにより、互いの曲げモーメントを相殺する(打ち消す)ことができるので、図4(C)と図11(C)との比較から明らかなように、サスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0056】
また、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10によれば、荷重伝達部36をサスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位に別体に設ける、という簡単な構成により、サスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0057】
このように、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10によれば、サスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。従って、例えばサスペンションメンバ12の断面小型化及び薄肉化を図ることができ、これにより、サスペンションメンバ12の軽量化を図ることができる。
【0058】
また、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10によれば、一対のロアリンク22,24からサスペンションメンバ12へ入力される荷重を低減できるので、一対のロアリンク22,24をサスペンションメンバ12に連結するためのブラケット26,28の軽量化も図ることができる。
【0059】
さらに、本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10によれば、サスペンションメンバ12の断面小型化及び薄肉化を図ることにより、部品レイアウトの設計自由度を向上できる。
【0060】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0061】
例えば、上記実施形態において、荷重伝達部36は、サスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位に別体に設けられていたが、図5,図6に示されるように、サスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位に一体に設けられていても良い。
【0062】
つまり、換言すれば、サスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位がトレーリングアーム30側へ延長され、この延長された部位が荷重伝達部36として構成されていても良い。なお、この場合のトレーリングアーム30と荷重伝達部36との隙間38は、上述の実施形態と同様に、必要最小限の寸法に設定されることが好ましい。
【0063】
また、上記実施形態において、荷重伝達部36は、サスペンションメンバ12にのみ設けられていたが、トレーリングアーム30にのみ設けられていても良く、また、トレーリングアーム30及びサスペンションメンバ12の両方に設けられていても良い。
【0064】
また、荷重伝達部36は、トレーリングアーム30に設けられる場合に、トレーリングアーム30に一体又は別体に設けられていても良い。
【0065】
以上のように構成されていても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0066】
また、上記実施形態において、荷重伝達部36は、サスペンションメンバ12の車両前後方向前側の部位に設けられていたが、トレーリングアーム30とサスペンションメンバ12との間の適宜位置に設けられていても良い。
【0067】
例えば、図7、図8に示される如く、車両前後方向前側のボデーマウント部14に設けられていても良い。
【0068】
すなわち、図7,図8に示される変形例では、車両前後方向前側のボデーマウント部14に、サスペンションメンバ12に設けられたボデーマウント部材42(防振ゴム)を下側から支持するロアプレート44が設けられており、荷重伝達部36は、ロアプレート44のトレーリングアーム30側に一体に設けられている。
【0069】
つまり、換言すれば、ロアプレート44の車両幅方向外側の部位がトレーリングアーム30側へ延長され、この延長された部位が荷重伝達部36として構成されている。
【0070】
なお、この図7,図8において示される符号46,48,50,52,54は、リアサイドメンバ、ボルト、ナット、筒部材、ボデーマウント部材(防振ゴム)である。
【0071】
このように構成されていても、車輪18からの荷重Fが分散されてサスペンションメンバ12に入力されるので、一対のロアリンク22,24からサスペンションメンバ12へ入力される荷重fa,fbを低減できる。これにより、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0072】
また、この構成によれば、荷重伝達部36をロアプレート44に一体に設ける、という簡単な構成により、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0073】
なお、この図7,図8に示される変形例において、荷重伝達部36は、トレーリングアーム30にのみ設けられていても良く、また、トレーリングアーム30及びロアプレート44の両方に設けられていても良い。
【0074】
また、この図7,図8に示される変形例では、ロアプレート44の車両幅方向外側の部位がトレーリングアーム30側へ延長されることでロアプレート44に荷重伝達部36が構成されていたが、上述の実施形態と同様に、荷重伝達部36とトレーリングアーム30との隙間38が必要最小限の寸法に確保されていれば、ロアプレート44の車両幅方向外側の部位がトレーリングアーム30側へ延長されないでロアプレート44に荷重伝達部36が構成されていても良い。
【0075】
また、上記実施形態において、リアサスペンション構造10は、トレーリングアーム式ダブルウィッシュボーンサスペンション装置に適用されていたが、その他のサスペンション装置、例えば、マルチリンク式サスペンション装置に適用されていても良い。
【0076】
[第二実施形態]
次に、図面を参照しながら、本発明の第二実施形態について説明する。
【0077】
図9には、本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造110の全体構成が平面図にて示されている。
【0078】
本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造110は、上述の本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10に対し、以下の如く構成が変更されている。
【0079】
つまり、本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造110では、トレーリングアーム30の代わりに、直線状の第二リンクとしてのストラットロッド130が備えられている。
【0080】
ストラットロッド130は、一端側がキャリア20に連結され、他端側がサスペンションメンバ12とロアリンク22との連結部と前後一対のボデーマウント部14,16を結ぶ方向(車両前後方向)における車両前後方向前側のボデーマウント部14を挟んだ反対側(つまり、ボデーマウント部14よりも車両前後方向前側)にてサスペンションメンバ12に連結されている。
【0081】
このストラットロッド130は、キャリア20の車両前後方向の動きを拘束するためのものであり、上述の一対のロアリンク22,24と共に、ストラット式サスペンション装置を構成している。
【0082】
なお、本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造110において、上述の本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造10と同一の構成については、同一の符号を用いることとし、その説明を省略する。
【0083】
そして、上記構成からなるリアサスペンション構造110によれば、以下の作用及び効果を奏する。
【0084】
すなわち、本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造110によれば、車輪18を支持するキャリア20には、それぞれサスペンションメンバ12に連結されたロアリンク22,24及びストラットロッド130が連結されている。
【0085】
従って、車輪18が例えば縁石に衝突するなどして車輪18に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重Fが入力された場合には、この荷重Fが、キャリア20から一対のロアリンク22,24を介してサスペンションメンバ12に伝達される以外に、キャリア20からストラットロッド130を介してサスペンションメンバ12に伝達される。つまり、車輪18からの荷重Fが荷重fa,fb,fxに分散されてサスペンションメンバ12に入力される。
【0086】
これにより、一対のロアリンク22,24からサスペンションメンバ12へ入力される荷重fa,fbを低減できるので、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0087】
しかも、ストラットロッド130は、サスペンションメンバ12とロアリンク22との連結部と前後一対のボデーマウント部14,16を結ぶ方向における車両前後方向前側のボデーマウント部14を挟んだ反対側にてサスペンションメンバ12に連結されている。
【0088】
従って、上述のように、車輪18からの荷重Fがキャリア20から一対のロアリンク22,24を介してサスペンションメンバ12に伝達されると共にキャリア20からストラットロッド130を介してサスペンションメンバ12に伝達された場合には、一対のロアリンク22,24からの入力荷重fa,fbによりサスペンションメンバ12に生ずる曲げモーメントに対し逆向きの曲げモーメントを生じさせることができる(図4(C)参照)。
【0089】
これにより、互いの曲げモーメントを相殺する(打ち消す)ことができるので、サスペンションメンバ12に生ずる曲げモーメントを低減できる。
【0090】
このように、本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造110によれば、サスペンションメンバ12における前後一対のボデーマウント部14,16間に生ずる曲げモーメントを低減できる。従って、例えばサスペンションメンバ12の断面小型化及び薄肉化を図ることができ、これにより、サスペンションメンバ12の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1の要部拡大平面図である。
【図3】図1の要部拡大斜視図である。
【図4】(A)は図1に示されるリアサスペンション構造において車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された状態を示す説明図、(B)、(C)は(A)におけるリアサスペンション構造のSFD(せん断力線図)、BMD(曲げモーメント線図)である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造の第一変形例を示す図である。
【図6】図5に示されるリアサスペンション構造の斜視図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係るリアサスペンション構造の第二変形例を示す図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係るリアサスペンション構造の全体構成を示す平面図である。
【図10】比較例に係るリアサスペンション構造の全体構成を示す平面図である。
【図11】(A)は図10に示されるリアサスペンション構造において車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された状態を示す説明図、(B)、(C)は(A)におけるリアサスペンション構造のSFD(せん断力線図)、BMD(曲げモーメント線図)である。
【符号の説明】
【0092】
10,110 リアサスペンション構造
12 サスペンションメンバ
14,16 ボデーマウント部
20 キャリア
22,24 ロアリンク(第一リンク)
30 トレーリングアーム(第二リンク)
36 荷重伝達部
42 ボデーマウント部材
44 ロアプレート
130 ストラットロッド(第二リンク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対のボデーマウント部にて車体に支持されたサスペンションメンバと、
一端側が車輪を支持するキャリアに連結され、他端側が前記サスペンションメンバに連結された第一リンクと、
一端側が前記キャリアに連結され、他端側が車体の前記キャリアに対する車両前後方向にずれた位置に連結された第二リンクと、
前記第二リンクと前記サスペンションメンバとの間に設けられ、前記車輪に対し車両幅方向内側へ所定以上の荷重が入力された場合に前記第二リンクに作用した荷重を前記サスペンションメンバに伝達する荷重伝達部と、
を備えたことを特徴とするリアサスペンション構造。
【請求項2】
前記荷重伝達部は、前記第二リンク及び前記サスペンションメンバの少なくとも一方に一体又は別体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリアサスペンション構造。
【請求項3】
前記荷重伝達部は、前記サスペンションメンバと前記第一リンクとの連結部と前記前後一対のボデーマウント部の一方を挟んだ反対側に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリアサスペンション構造。
【請求項4】
前記前後一対のボデーマウント部の一方には、前記サスペンションメンバに設けられたボデーマウント部材を下側から支持するロアプレートが設けられ、
前記荷重伝達部は、前記第二リンク及び前記ロアプレートの少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリアサスペンション構造。
【請求項5】
前後一対のボデーマウント部にて車体に支持されたサスペンションメンバと、
一端側が車輪を支持するキャリアに連結され、他端側が前記サスペンションメンバに連結された第一リンクと、
一端側が車輪を支持するキャリアに連結され、他端側が前記サスペンションメンバと前記第一リンクとの連結部と前記前後一対のボデーマウント部を結ぶ方向における前記前後一対のボデーマウント部の一方を挟んだ反対側にて前記サスペンションメンバに連結された第二リンクと、
を備えたことを特徴とするリアサスペンション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−40298(P2009−40298A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209052(P2007−209052)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】