説明

リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物及びその製造方法

【課題】ポリオレフィン系樹脂製品をリサイクル使用するにあたり、劣化により低下したポリオレフィン系樹脂の溶融張力を向上させ、成形加工性を良好に保持できる、ポリオレフィン系樹脂製品のリサイクル性を向上させる方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂製品(A)を破砕し、破砕された前記ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量部に対し、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位を主成分とし、質量平均分子量が15万〜2,000万であるアルキルメタクリレート系重合体(B)を0.01〜20質量部となるように配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物及びその製造方法、リサイクルポリオレフィン系樹脂製品を得る成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品は安価で軽量であり、また、耐久性に優れることから、フィルム、シート又は小型、大型の各種成形品として、食品包装用材料、容器、建材、農業用資材、コンテナー、家電製品等極めて多くの用途に用いられている。これらのプラスチック製品が廃棄物となった場合には、その優れた耐久性が却って欠点となり、腐敗の進行が極めて緩慢で埋め立て処分には適さず、その多くは焼却処分されているのが現状である。
【0003】
しかしながら、プラスチックは焼却時の発熱量が多いため、焼却炉を損傷するばかりでなく、大量の二酸化炭素を発生するため、地球環境保護の観点からも問題となっている。また、このような廃棄物の処理に関する問題ばかりではなく、省資源の観点からも有用廃棄物をリサイクルすることが社会的要請となっており、プラスチックについてもできる限りリサイクルすることが要望されている。
【0004】
プラスチックには極めて多くの種類があり、その種類によって特性も全く異なり、相溶しない組み合わせも多いため、リサイクルする場合にはこれらを分別することが必要である。その中でもポリオレフィン系樹脂は使用量が極めて多く、また、機械的特性ばかりでなく、耐候性等にも優れるので、コンテナー等の大型成形品に使用されることが多く、比較的分別回収が容易である。そのため、ポリオレフィン系樹脂製品の廃棄物をリサイクルすることが可能となれば、廃棄物の低減や省資源等の環境保護のための社会的ニーズに適応することとなり、その意義は極めて大きいものである。
【0005】
これまでも、ポリオレフィン系樹脂製品の廃棄物をリサイクルすることが行なわれており、廃棄物の分別、破砕、異物除去等の工程を経た後、酸化防止剤、加工安定剤等の添加剤を配合し加熱溶融成形して、丸棒、角材、板材又は各種複雑形状の成形品へと加工され、測量杭、標識杭、ベンチ、土留め材、パッキング、コンテナー等としてリサイクルされている。
【0006】
ポリオレフィン系樹脂を加工する場合には、加工温度における熱酸化劣化、使用環境における酸化劣化、光酸化劣化等を防止するために、フェノール系抗酸化剤、チオエーテル系抗酸化剤、リン系抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が数種類併用されており、リサイクル製品を製造する場合にもこれらの添加剤が使用されている。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は耐久性に優れる利点を活かして、屋外等の使用環境の厳しい条件下で長期間使用されるため、廃棄物となった時点で既に劣化していることが多く、成形加工性が大幅に低下している場合が多い。このような劣化した樹脂に対して、その劣化を抑制する添加剤を配合しても成形加工性は向上せず、むしろ低分子量化合物であるこれらの化合物が添加されることにより、成形加工性は低下する恐れがある。
【0007】
そのため、このような劣化したポリオレフィン系樹脂の成形加工性を向上させるようなリサイクルに適した添加剤を見出すことが強く望まれていた。
【0008】
例えば、特許文献1には、アクリル樹脂変性ポリテトラフルオロエチレンを劣化したポリオレフィン系樹脂に添加することで、溶融張力を向上させる技術が提案されている。しかしながら、特許文献1で提案されている方法は、溶融張力向上剤としてポリテトラフルオロエチレンを使用しており、環境対策として実施するリサイクル化達成技術であるにも関わらず、ハロゲン含有樹脂を配合するという点で矛盾があり、特にノンハロゲンを強く求められる分野においては、使用できないという問題があった。
【0009】
特許文献2には、溶融張力向上剤として長鎖アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合体をポリオレフィン系樹脂用の溶融張力向上剤として用いる技術が提案されている。しかしながら、特許文献2で提案されている方法は、ノンハロゲン系ではあるものの、使用する重合体のガラス転移温度が著しく低く、粉体として回収することが困難であり、取り扱い性に問題があった。
【特許文献1】特開平11−60871号公報
【特許文献2】特開平9−255816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、粉体取り扱い性が良好なアルキルメタクリレート系重合体をポリオレフィン系樹脂製品に配合することで、劣化により低下したポリオレフィン系樹脂の溶融張力を向上させ、成形加工性を良好に保持することが可能なリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物及びその製造方法と、リサイクルポリオレフィン系樹脂製品を得る成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂製品(A)を破砕し、破砕された前記ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量部に対し、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位を主成分とし、質量平均分子量が15万〜2,000万であるアルキルメタクリレート系重合体(B)を0.01〜20質量部となるように配合するリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法である。
【0012】
また、本発明は、前記製造方法で得られるリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0013】
また、本発明は、前記リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を成形してリサイクルポリオレフィン系樹脂製品を得る成形方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、粉体取り扱い性が良好なアルキルメタクリレート系重合体(B)をポリオレフィン系樹脂製品(A)に配合することで、劣化により低下したポリオレフィン系樹脂の溶融張力を向上させ、成形加工性を良好に保持できる、リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができる。
【0015】
また、本発明の成形方法によれば、成形加工性を良好に保持して、リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を成形してリサイクルポリオレフィン系樹脂製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のポリオレフィン系樹脂製品(A)は、ポリオレフィン系樹脂を含有する。ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量%中のポリオレフィン系樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0017】
本発明のポリオレフィン系樹脂製品(A)は、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を含有してもよい。また、充填剤、各種安定剤、滑剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0018】
本発明のポリオレフィン系樹脂製品(A)は、ポリオレフィン系樹脂を含有する物品であり、例えば、食品包装用材料、容器、建材、農業用資材、コンテナー、家電製品等のポリオレフィン系樹脂製の物品やその廃棄物;シート、フィルム、熱成形体、中空成形体、発泡体、射出成形品、繊維等のポリオレフィン系樹脂製の成形品やその廃棄物が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂製品(A)として、本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を成形して得られるリサイクルポリオレフィン系樹脂製品を用いてもよい。
【0019】
本発明のポリオレフィン系樹脂製品(A)は、取り扱い性が良好となるのと、ポリオレフィン系樹脂とアルキルメタクリレート系重合体(B)との配合の際に分散性が良好となるため、破砕して用いる。
【0020】
本発明のポリオレフィン系樹脂は、例えば、オレフィン系単量体の単独重合体又は共重合体、優位量のオレフィン系単量体と劣位量のビニル単量体との共重合体、オレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体を主成分とするものである。
【0021】
前記オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。これらの中では、エチレン、プロピレンが好ましい。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記オレフィン系単量体を重合して得られるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、ポリメチルペンテンが挙げられる。これらの中では、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体が好ましい。
【0023】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)は、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位を主成分とする。アルキル基の炭素数が2以上であれば、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好となり、溶融張力が十分に向上する。アルキル基の炭素数が6以下であれば、粉体取り扱い性が良好となる。アルキルメタクリレート単位のアルキル基の炭素数は、4〜6の範囲が好ましく、炭素数4がポリオレフィン系樹脂との相溶性と粉体取り扱い性のバランスとの点でより好ましい。
【0024】
アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位の原料となるアルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレートとしては、例えば、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−メチルブチルメタクリレート、3−メチルブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、3−メチルペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)は、特性を損ねない範囲で、必要に応じてその他の単量体単位を含有してもよい。
【0026】
その他の単量体単位の原料となるその他の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート等のアルキルアクリレート;メチルメタクリレート;2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が7以上のアルキルメタクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)(100質量%)中の、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位の含有率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。アルキルメタクリレート系重合体(B)(100質量%)中の、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位の含有率が50質量%以上であれば、ポリオレフィン系樹脂中での相溶性が良好となり、溶融張力が十分に向上する。
【0028】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量は15万〜2,000万の範囲である。アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量が15万以上であれば、ポリオレフィン系樹脂の溶融張力が十分に向上し、リサイクル性を向上させる。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量が2,000万以下であれば、ポリオレフィン系樹脂中での良好な分散性が得られ、溶融張力が向上し、リサイクル性を向上させる。アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量として、50万〜1,500万の範囲が好ましく、100万〜700万の範囲がより好ましい。
【0029】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)は、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレートを主成分とする単量体を、ラジカル重合、イオン重合等の公知の重合法を用いて重合することにより得られる。これらの重合法の中でも、ラジカル重合が特に好ましい。アルキルメタクリレート系重合体(B)を得るためのラジカル重合は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の重合法を用いることができるが、得られる重合体を粉体状、顆粒状の形態で得られることから乳化重合が特に好ましい。
【0030】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)を乳化重合する際には、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、非イオン系乳化剤等の公知の乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、スルホン酸塩系乳化剤、硫酸塩系乳化剤、リン酸エステル塩系乳化剤等のアニオン系乳化剤が好ましい。乳化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)を重合する際には、公知の開始剤を用いることができる。開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩化合物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;上記の過硫酸塩化合物又は有機過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが好ましい。
【0032】
重合温度は、開始剤の種類によるが、40〜80℃が好ましい。
【0033】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)を乳化重合で得る場合、得られたアルキルメタクリレート系重合体(B)のラテックスを粉体化する方法としては、例えば、凝析法、スプレードライ法が挙げられる。
【0034】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)を乳化重合で得る場合、ラテックス中でのアルキルメタクリレート系重合体(B)の粒子の粒子径は特に規定されないが、質量平均粒子径として50〜250nmの範囲が好ましい。質量平均粒子径が50nm以上であれば、乳化重合で用いた乳化剤がポリオレフィン系樹脂に与える影響を最小限に抑えることができ、質量平均粒子径が250nm以下であれば、アルキルメタクリレート系重合体(B)の重合時の停止反応が起こりにくく、分子量制御が容易である。
【0035】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量部に対し、0.01〜20質量部の範囲である。ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量部に対し、アルキルメタクリレート系重合体(B)の配合量が0.01質量部以上であれば、溶融張力が十分に向上し、20質量部以下であれば、ポリオレフィン系樹脂の特性が低下することがない。アルキルメタクリレート系重合体(B)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量部に対し、0.05〜15質量部の範囲が好ましく、0.1〜10質量部の範囲がより好ましい。
【0036】
また、本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)は、1種のアルキルメタクリレート系重合体を用いても良く、分子量、粒子径、組成等の異なる2種以上のアルキルメタクリレート系重合体を混合して使用しても良い。
【0037】
本発明のアルキルメタクリレート系重合体(B)には、必要に応じて酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、無機充填剤等の添加剤を添加することができる。
【0038】
本発明のポリオレフィン系樹脂製品(A)とアルキルメタクリレート系重合体(B)との配合は、押出混練、ロール混練等の公知の方法で溶融混練することによりなされる。また、アルキルメタクリレート系重合体(B)とポリオレフィン系樹脂製品(A)の一部を混合しマスターバッチを作製した後、ポリオレフィン系樹脂製品(A)をさらに配合、混合する等の多段階の混合も可能である。
【0039】
本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物は、溶融張力が向上し、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形時及びブロー成形時の溶融樹脂のドローダウン、発泡成形時のセルの連泡化等が改良され、カレンダー加工、熱成形、ブロー成形、発泡成形等の成形加工性が改良される。また、押出成形時の吐出量、シート及びフィルム等の押出成形体の表面状態が改良され、押出加工性も改良される。
【0040】
本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて未使用のポリオレフィン系樹脂を配合することができる。未使用のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、ポリメチルペンテンが挙げられる。
【0041】
本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物には、さらに必要に応じて充填剤を配合することができる。充填剤の配合量は、リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、この充填剤の配合により剛性や耐熱性が向上し、カレンダー加工等におけるロール面への粘着防止等の加工性が改良され、また低コスト化が達成できる。リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物100質量部に対して、充填剤の配合量が100質量部以下であれば、表面特性が損なわれない。充填剤としては、例えば、ガラス繊維、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラックが挙げられる。これらの中では、タルク、炭酸カルシウム等が好ましい。
【0042】
本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物には、さらに必要に応じて各種安定剤、滑剤、難燃剤等の添加剤を含有することができる。
【0043】
前記安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤;ジドデシルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;「チヌビン−770」(商品名;チバ・ジャパン(株)製)、「アデカスタブLA−57」(商品名;(株)ADEKA製)等のヒンダードアミン系光安定剤、「チヌビン1577FF」(商品名;チバ・ジャパン(株)製)、「アデカスタブLA−32」(商品名;(株)ADEKA製)等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0044】
前記滑剤としては、例えば、ドデシル酸、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸のナトリウム、カルシウム又はマグネシウム塩が挙げられる。
【0045】
前記難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジ−i−プロピルフェニルホスフェート、アルコキシ置換ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、ポリホスフェート等のリン酸エステル化合物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;金属酸化物;スルファミン酸化合物が挙げられる。
【0046】
本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂成物の成形方法としては、熱成形、プレス成形、カレンダー成形、ブロー成形、発泡成形、押出成形、射出成形、溶融紡糸等を挙げることができる。
【0047】
本発明のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を用いて得られるリサイクルポリオレフィン系樹脂製品としては、シート、フィルム、熱成形体、中空成形体、発泡体、射出成形品、繊維等の成形品を挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明について説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0049】
また、諸物性の測定は下記の方法にて実施した。
(1)質量平均分子量
アルキルメタクリレート系重合体(B)のテトラヒドロフラン可溶分を試料として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(機種名「HLC−8220」、東ソー(株)製)、カラム(商品名「TSK−GEL SUPER HZM−M」、東ソー(株)製)を用い、アルキルメタクリレート系重合体(B)の質量平均分子量を測定した。
【0050】
尚、本発明における質量平均分子量は、標準ポリスチレンによる検量線から求めた。
(2)粉体取り扱い性
アルキルメタクリレート系重合体(B)の粉体を8メッシュの篩に通過させ、以下の基準によりアルキルメタクリレート系重合体(B)の粉体取り扱い性を評価した。
【0051】
○:篩通過分が90%以上
×:篩通過分が90%未満
(3)溶融張力
リサイクル性の指標として、リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物の溶融張力を評価した。溶融張力は、ポリオレフィン系樹脂の重要な加工性の指標の1つであり、劣化により低下したポリオレフィン系樹脂の溶融張力を向上させることは、ポリオレフィン系樹脂のリサイクル性の向上と見なし得る。溶融張力は、以下のようにして測定した。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂組成物を、ツインキャピラリーレオメータ(機種名「ROSAND RH7」、Malvern Instrument社製)を用いて、一定量(0.54cm/分)で押出し、ストランドを一定速度(4m/分)で引き取った。ダイスのL/Dは16.0mm×φ1.0mm、温度は190℃とした。
(製造例1)アルキルメタクリレート系重合体(B1)の製造
下記混合物を、ホモミキサーを用いて10000rpmで6分間攪拌し、乳化混合物を得た。
【0053】
混合物:
i−ブチルメタクリレート 100部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1部
脱イオン水 300部
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、上記乳化混合物を仕込み、容器内を窒素で置換した。次いで、内温を60℃まで昇温させて、過硫酸カリウム0.15部を加えた。
【0054】
その後、加熱攪拌を2時間継続して重合を終了し、アルキルメタクリレート系重合体(B1)のラテックスを得た。得られたアルキルメタクリレート系重合体(B1)のラテックスを、酢酸カルシウム5部を含有する熱水100部中に滴下してラテックスの凝析を行ない、凝析物を分離洗浄し、65℃で16時間乾燥し、アルキルメタクリレート系重合体(B1)の粉体を得た。
【0055】
このアルキルメタクリレート系重合体(B1)の質量平均分子量は300万であった。粉体取り扱い性を評価したところ、篩通過分は99%であり、良好な粉体取り扱い性であった。
(製造例2)アルキルメタクリレート系重合体(B2)の製造
混合物中に、n−オクチルメルカプタン0.1部を加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アルキルメタクリレート系重合体(B2)の粉体を得た。
(製造例3)アルキルメタクリレート系重合体(B3)の製造
i−ブチルメタクリレート100部をn−ブチルメタクリレート100部に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてアルキルメタクリレート系重合体(B3)の粉体を得た。
(製造例4)アルキルメタクリレート系重合体(B4)の製造
混合物中に、n−オクチルメルカプタン0.1部を加えたこと以外は、製造例3と同様にして、アルキルメタクリレート系重合体(B4)の粉体を得た。
(製造例5)アルキルメタクリレート系重合体(B5)の製造
混合物中に、n−オクチルメルカプタン1部を加えたこと以外は、製造例1と同様にして、アルキルメタクリレート系重合体(B5)の粉体を得た。
(製造例6)アルキルメタクリレート系重合体(B6)の製造
i−ブチルメタクリレート100部をメチルメタクリレート100部に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてアルキルメタクリレート系重合体(B6)の粉体を得た。
(製造例7)アルキルメタクリレート系重合体(B7)の製造
下記混合物を、ホモミキサーを用いて10000rpmで6分間攪拌した後、ホモジナイザーを用いて圧力200kg/cmで強制乳化し、乳化混合物を得た。
【0056】
混合物:
2−エチルヘキシルメタクリレート 100部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1部
脱イオン水 300部
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、上記乳化混合物を仕込み、容器内を窒素で置換した。次いで、内温を60℃まで昇温させて、下記還元剤水溶液を投入した。
【0057】
還元剤水溶液:
硫酸第一鉄 0.0003部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.0009部
ロンガリット 0.1部
脱イオン水 5部
次いで、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.15部を加えた。その後、加熱攪拌を2時間継続して重合を終了し、アルキルメタクリレート系重合体(B7)のラテックスを得た。得られたアルキルメタクリレート系重合体(B7)のラテックスを製造例1と同様の方法で凝析回収後、乾燥処理を行ない、アルキルメタクリレート系重合体(B7)の粉体を得た。
【0058】
このアルキルメタクリレート系重合体(B7)の質量平均分子量は200万であった。粉体取り扱い性を評価したところ、篩通過分が10%未満であった。
【0059】
表1にアルキルメタクリレート系重合体(B1)〜(B7)の質量平均分子量及び粉体取り扱い性を示す。
【0060】
【表1】

(参考例1)ポリオレフィン系樹脂製品(A1)の溶融張力
ポリプロピレンペレット(商品名「ノバテックPP FY−4」、日本ポリプロピレン(株)製)を、破砕したポリオレフィン系樹脂製品(A1)として用いた。このポリオレフィン系樹脂製品(A1)をリサイクル回数0回のポリオレフィン系樹脂組成物とし、溶融張力を評価したところ、0.019Nであった。
(実施例1)リサイクルポリオレフィン系樹脂組成物の製造
参考例1で用いたポリオレフィン系樹脂製品(A1)(リサイクル回数0回のポリオレフィン系樹脂組成物)を、プレス成形機(庄司鉄工所(株)製)を用いて、200℃でプレス成形を行ない、成形片を破砕して得られたポリオレフィン系樹脂100部に対し、アルキルメタクリレート系重合体(B1)3部を添加してハンドブレンドした後、単軸押出機(サーモ・プラスティックス工業(株)製)を用いて、バレル温度200℃、スクリュー回転数50rpmにて溶融混練し、80℃で一晩乾燥させ、リサイクル回数1回のポリオレフィン系樹脂組成物を得た。溶融張力を評価したところ、溶融張力は0.020Nであった。
【0061】
さらに、このリサイクル回数1回のポリオレフィン系樹脂組成物をプレス成形して得られた成形片を破砕して得られたポリオレフィン系樹脂100部に対し、上記アルキルメタクリレート系重合体(B1)を3部添加し、上記と同様の方法でリサイクル回数2回のポリオレフィン系樹脂組成物を得た。溶融張力は0.020Nであった。この一連の操作をさらにもう1回繰り返して得たリサイクル回数3回のポリオレフィン系樹脂組成物の溶融張力は0.020Nであった。
(実施例2〜4)
アルキルメタクリレート系重合体(B2)〜(B4)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を製造した。
(比較例1)
アルキルメタクリレート系重合体(B)を添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法でリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を製造した。
(比較例2〜3)
アルキルメタクリレート系重合体(B5)〜(B6)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を製造した。
(比較例4)
アルキルメタクリレート系重合体(B7)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を製造しようとしたが、(B7)の粉体取り扱い性が悪くリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物が得られず、リサイクル性の評価は断念した。
【0062】
表2に参考例1、実施例1〜4、比較例1〜4で得られたポリオレフィン系樹脂組成物の溶融張力を示す。
【0063】
【表2】

比較例1のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物は、アルキルメタクリレート系重合体(B)の添加がないため、リサイクル回数を重ねるほど溶融張力が低下した。実施例1〜4のアルキルメタクリレート系重合体(B1)〜(B4)を添加したリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物は、リサイクル回数を重ねても溶融張力が向上した。比較例2のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物は、アルキルメタクリレート系重合体(B5)の分子量が本発明の範囲より低いため、リサイクル回数を重ねるほど溶融張力が低下した。比較例3のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物は、アルキルメタクリレート系重合体(B6)のアルキル基の炭素数が本発明の範囲より少ないため、リサイクル回数を重ねるほど溶融張力が低下した。比較例4は、アルキルメタクリレート系重合体(B7)のアルキル基の炭素数が本発明の範囲より多いため、粉体取り扱い性が悪く、ポリオレフィン系樹脂組成物を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
ポリオレフィン系樹脂製品(A)にアルキルメタクリレート系重合体(B)を配合することにより、劣化により低下したポリオレフィン系樹脂の溶融張力を向上させ、カレンダー成形時の引き取り性、熱成形性、プレス成形性、ブロー成形性、発泡成形性、溶融紡糸性等の成形加工性を良好に保持でき、ポリオレフィン系樹脂製品のリサイクル性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂製品(A)を破砕し、破砕された前記ポリオレフィン系樹脂製品(A)100質量部に対し、アルキル基の炭素数が2〜6のアルキルメタクリレート単位を主成分とし、質量平均分子量が15万〜2,000万であるアルキルメタクリレート系重合体(B)を0.01〜20質量部となるように配合するリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で得られるリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のリサイクルポリオレフィン系樹脂組成物を成形してリサイクルポリオレフィン系樹脂製品を得る成形方法。

【公開番号】特開2010−159322(P2010−159322A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1070(P2009−1070)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】