説明

リチウムイオン電池を充電する方法

埋め込み可能な医療デバイスの充電方法は、医療デバイス中に組み込まれたリチウムイオン電池を充電することを含み、このとき前記リチウムイオン電池が、チタン酸リチウム活性物質を含んだ負極を有する。充電の少なくとも一部に対し、負極の電位が、負極の平衡電位より約70ミリボルトより大きく低い。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年10月29日付け出願の米国仮特許出願No.60/624,075と2005年1月26日付け出願の米国仮特許出願No.60/647,292(これら2つの特許文献の全開示内容を参照により本明細書に含める)の35U.S.C.§119(e)に基づいた利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般には、リチウムイオン電池の分野に関する。具体的には、本発明は、充電の速度が増すよう過電位にて充電することができるリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、活性物質(たとえばLiCoO2)を表面上に組み込んだ正電流コレクター(たとえば、アルミニウム箔等のアルミニウム)、および活性物質(たとえば、グラファイト等の炭素質物質)を表面上に組み込んだ負電流コレクター(たとえば、銅箔等の銅)を含む。正電流コレクターとその表面上に組み込まれた活性物質を合わせて正極と呼び、また負電流コレクターとその表面上に組み込まれた活性物質を合わせて負極と呼ぶ。
【0004】
図1は、上記のようなリチウムイオン電池10の一部の概略図を示している。リチウムイオン電池10は、正電流コレクター22と正極活性物質24とを含んだ正極20、負電流コレクター32と負極活性物質34とを含んだ負極30、電解質物質40、および正極20と負極30との中間もしくは間に設けられているセパレーター〔たとえば、ポリマー微孔質セパレーター(図示せず)〕を含む。電極20と30は、比較的フラットもしくは平面状のプレートとして供給されてもよいし、あるいはスパイラル構造もしくは他の構造(たとえば卵形構造)にて包装または巻きつけられていてもよい。電極はさらに、折りたたみ構造で供給されてもよい。
【0005】
電池10の充電時と放電時においては、リチウムイオンが正極20と負極30との間を移動する。たとえば、電池10が放電しているときは、リチウムイオンが負極30から正極20に流れる。一方、電池10が充電されているときは、リチウムイオンが正極20から負極30に流れる。
【0006】
図2は、従来のリチウムイオン電池に対する理論的な充電挙動と放電挙動を示しているグラフ100である。曲線110は、LiCoO2活性物質を表面上に組み込んだアルミニウム電流コレクターを含む正極に対する電極電位を示しており、一方、曲線120は、炭素質活性物質を表面上に組み込んだ銅電流コレクターを含む負極に対する電極電位を示している。曲線110と120との間の差が全セル電圧(overall cell voltage)を表わしている。
【0007】
図2に示されているように、フル容量にまで初期充電すると、曲線110からわかるように、正極の電位が、約3.0ボルトから、負極を形成するのに使用される銅の腐食電位(点線122で表示)より上のポイントにまで増大する。負極の電位は、約3.0ボルトから、アルミニウム電流コレクター上に組み込まれているLiCoO2活性物質の分解電位(点線112で表示)より下のポイントにまで低下する。初期充電すると、電池は、負電流コレクター上に不動態化層が形成される〔固体-電解質界面(“SEI”)と呼ばれることもある〕ことで容量の不可逆的な損失を受ける。容量の不可逆的な損失が、曲線120における出っ張りもしくは棚124として示されている。
【0008】
従来のリチウムイオン電池が有する1つの難点は、このような電池をゼロボルト付近のポイントにまで放電させると、電池は、受け渡し可能な容量(deliverable capacity)の損失を、ならびに負極電流コレクター(銅)の、そしておそらくは使用される物質と電池ケースの極性に応じて電池ケースの腐食を示すことがある、という点である。図2に示されているように、電池を初期充電した後、電池の電圧をゼロボルト(すなわち、ゼロパーセントの容量)に近づけるという電池の放電を引き続き行うと、点線126で示される経路に従った負極電位となる。図2に示されているように、負極電位は、負電流コレクターの銅腐食電位(銅の場合は約3.5ボルトであり、図2の点線122で示されている)において平らに又は横ばい状態になっている。
【0009】
従来のリチウムイオン電池の充電時においては、負極上のリチウムのめっきを避けるために、特定の予防措置をとる必要がある場合がある。たとえば、図2に示されているように、負極の電位(曲線120として示されている)は、充電時においては、容量が増大するにつれて約0.1ボルトのレベルに近づく。このため、従来のリチウムイオン電池の充電の間、負極の電位が約0.1ボルト未満に低下するという状況を避けるために、電池がフル充電状態に近づくにつれて“テーパー充電”が施される。テーパー充電の場合、リチウムが負極上に被膜を形成するというリスクを最小限にするために、電池がフル充電状態に近づくにつれて充電電圧を低下させる。さらに、負極の電位が比較的低いことから、電池を充電する際には、電池の開路電圧より大幅に高い充電電圧は使用することができない、と従来考えられてきた。したがって、従来のリチウムイオン電池の充電速度は、要望されるほど速やかには進行しない。
【0010】
医療デバイス業界では、患者の病状を処置するための多種多様な電子・機械的デバイスが製造されている。医療デバイスは、病状に応じて外科的に埋め込むこともできるし、あるいは処置を受ける患者に対して外部的に接続することもできる。臨床医は、患者の病状を処置するために、医療デバイスを単独で使用するか、あるいは医療デバイスを薬物療法や外科手術と組み合わせて使用する。幾つかの病状に対しては、医療デバイスが、より健康な状態とより充実した生活を個人に取り戻させるための最良で、そして場合によっては唯一の療法をもたらす。
【0011】
埋め込み可能な医療デバイスを含むこのような医療デバイスに対して、電池パワーの供給源を供給するのが望ましい。このような場合においては、患者に対する不便を軽減できるよう、比較的速やかに再充電できる電池を供給するのが有利である。さらに、電池の負極上にリチウムをめっきするという重大なリスクを生じることなく、従来のリチウムイオン電池より高い速度にて充電できる電池を供給することも有利である。さらに、このような電池を利用した医療デバイス(たとえば、埋め込み可能な医療デバイス)を供給することも有利である。
【発明の要約】
【0012】
本発明の代表的な実施態様は、埋め込み可能な医療デバイスを充電するための方法に関する。本発明の方法は、医療デバイス中に組み込まれたリチウムイオン電池を充電することを含み、このときリチウムイオン電池が、チタン酸リチウム活性物質を含んだ負極を有する。充電の少なくとも一部に対し、負極の電位が、負極の平衡電位より約70ミリボルトより大きく低い。
【0013】
本発明の他の代表的な実施態様は、リチウムイオン電池を充電操作にて充電する工程を含む、リチウムイオン電池を充電する方法に関し、このとき前記リチウムイオン電池が、チタン酸リチウム物質を含んだ負極を含む。充電操作の少なくとも一部に対し、負極の過電位は約70ミリボルトより大きい。リチウムイオン電池は、埋め込み可能な医療デバイス中に組み込まれ、充電操作により負極にリチウムの被膜が生じることはない。
【0014】
本発明の他の代表的な実施態様は、充電手順(charging routines)の少なくとも一部に対し、リチウムイオン電池の負極に少なくとも70ミリボルトの過電位をもたらす充電手順にしたがってリチウムイオン電池を誘導充電することを含む、リチウムイオン電池を充電する方法に関し、このとき前記リチウムイオン電池がチタン酸リチウム負極活性物質を含む。
【詳細な説明】
【0015】
図3を参照すると、リチウムイオン電池200の一部の概略断面図が、代表的な実施態様にしたがって示されている。代表的な実施態様によれば、電池200は、約1〜1000ミリアンペア時(mAh)の定格(a rating)を有する。他の代表的な実施態様によれば、電池は、約100〜400mAhの定格を有する。他の代表的な実施態様によれば、電池は、約300mAhの電池である。他の代表的な実施態様によれば、電池は、約75mAhの電池である。
【0016】
電池200は、少なくとも1つの正極210と少なくとも1つの負極220を含む。これらの電極は、電池200のフラットもしくは平面状の部材として供給されてもよいし、スパイラル構造もしくは他の構造にて巻きつけられていてもよいし、あるいは折りたたみ構造で供給されてもよい。たとえば、これらの電極は、比較的プリズム状の電池ケースに挿入すべく卵形巻き付けコイルを形成するよう、比較的矩形のマンドレルの周りに包装されてもよい。他の代表的な実施態様によれば、電池は、ボタンセル電池構造物として供給されても、薄膜固体電池構造物として供給されても、あるいは他のリチウムイオン電池構造物として供給されてもよい。
【0017】
電池ケース(図示せず)は金属(たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、または他の金属)を使用して製造することができる。代表的な実施態様によれば、電池ケースは、チタン、チタン合金、またはステンレス鋼を使用して製造することができる。他の代表的な実施態様によれば、電池ケースは、プラスチック材料やプラスチック-ホイルラミネート材料(a plastic-foil laminate material)(たとえば、ポリオレフィン層とポリエステル層との中間にアルミニウム箔が組み込まれている)を使用して製造することができる。
【0018】
代表的な実施態様によれば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金を含む部材もしくはタブによって、負極がアルミニウムケースに連結される。アルミニウムもしくはアルミニウム合金の部材もしくはタブは、正極に連結または貼付することができる。代表的な実施態様によれば、タブは、電池のための端子として機能してよい。
【0019】
電池200の寸法は、種々の実施態様に応じて異なってよい。たとえば、比較的プリズム状の電池ケース中に電極を組み込むことができるよう電極が巻き付けられているという1つの代表的な実施態様によれば、電池は、約30〜40mm×約20〜30mm×約5〜7mmの寸法を有する。他の代表的な実施態様によれば、電池の寸法は約20mm×20mm×3mmである。他の代表的な実施態様によれば、電池は、約30mmの直径と約3mmの厚さを有するボタンセル型電池の形態にて供給することができる。当業者には言うまでもないことであるが、本明細書に記載のこのような寸法と構造は単に例示のためのものであって、本明細書に記載の新規概念にしたがって、種々のサイズ、形状、および構造を有する電池を製造することができる。
【0020】
リチウムイオンが移動する媒体を供給するために、正極と負極との中間もしくは間に電解質230が組み込まれている。電解質は液体(たとえば、リチウム塩を1種以上の非水性溶媒中に溶解して得られる溶液)であってよい。代表的な実施態様によれば、電解質は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびLiPF6の1.0M塩の混合物であってよい。他の代表的な実施態様によれば、リチウム電池に一般的に使用できる成分〔たとえば、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびリチウムビス-オキサラートボラート塩(LiBOBと呼ばれることもある)など〕を使用しない電解質を使用することができる。
【0021】
他の種々の電解質を、他の代表的な実施態様にしたがって使用することができる。代表的な実施態様によれば、電解質は、リチウム塩をポリ(エチレンオキシド)やシリコーン等のポリマー物質中に溶解して得られる溶液であってよい。他の代表的な実施態様によれば、電解質は、N-メチル-N-アルキルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩等のようなイオン性液体であってもよい。他の代表的な実施態様によれば、電解質は、リチウムホスホラスオキシナイトライド(LiPON)等のリチウムイオン伝導性ガラスのような固体電解質であってもよい。他の代表的な実施態様によれば、電解質は、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)の1:1混合物を1.0M塩のLiPF6中に混合して得られる物質であってもよい。他の代表的な実施態様によれば、電解質は、ポリプロピレンカーボネート溶媒とリチウムビス-オキサラートボラート塩を含んでよい。他の代表的な実施態様によれば、電解質は、PVDFコポリマー、PVDF-ポリイミド物質、有機ケイ素ポリマー、熱重合ゲル、放射線硬化アクリラート、ポリマーゲルを含んだ粒状物、無機ゲルポリマー電解質、PVDFゲル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ガラスセラミック電解質、リン酸塩ガラス、リチウム伝導性ガラス、リチウム伝導性セラミック、および無機イオン性液体ゲルなどの1種以上を含んでよい。
【0022】
正極210と負極220との中間もしくは間にセパレーター250が組み込まれている。代表的な実施態様によれば、セパレーター250は、電解質とリチウムイオンがセパレーターの一方の側から他方の側に流れるのを可能にすべく形成される微小孔を含んだ、ポリプロピレン/ポリエチレンコポリマー多層積層物や他のポリオレフィン多層積層物等のポリマー物質である。代表的な実施態様によれば、セパレーター250の厚さは約10マイクロメートル(μm)〜約50μmである。特定の代表的な実施態様によれば、セパレーター250の厚さは約25μmであり、セパレーターの平均孔径は約0.02μm〜約0.1μmである。
【0023】
正極210は、金属等の導電性物質で造られている電流コレクター212を含む。代表的な実施態様によれば、電流コレクター212はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。
代表的な実施態様によれば、電流コレクター212の厚さは約5μm〜約75μmである。特定の代表的な実施態様によれば、電流コレクター212の厚さは約20μmである。理解しておかねばならないことは、正電流コレクター212が薄い箔物質として図示されているけれども、種々の代表的な実施態様によれば、正電流コレクターは、多種多様な他の構造物のいずれであってもよいという点である。たとえば、正電流コレクターは、メッシュグリッド、エキスパンデッドメタルグリッド、または光化学エッチンググリッド等のグリッドであってよい。
【0024】
電流コレクター212は、活性物質216の層をその上に設けている(たとえば、電流コレクターの表面がプレーティングされている)。図3は、活性物質216が電流コレクター212の一方の側だけに設けられているけれども、理解しておかねばならないことは、活性物質216として示されているものと類似もしくは同一の活性物質の層を、電流コレクター212の両側に設けることもできるし、あるいはこうした層が電流コレクター212の両側の表面を被覆することもできる、という点である。
【0025】
代表的な実施態様によれば、活性物質216は、リチウムを含んだ物質または化合物である。一次活性物質(primary active material)216中に含まれるリチウムは、それぞれ、電池の放電時もしくは充電時において、ドーピングまたはアンドープすることができる。代表的な実施態様によれば、一次活性物質216は酸化リチウムコバルト(LiCoO2)である。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター212上に設けられる活性物質はLiMn2O4である。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター212上に設けられる活性物質は、式LiCoxNi(1-x)O2の物質であり、このときxは約0.05〜約0.8である。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター212上に設けられる活性物質は、式LiNixCoyMn(1-x-y)O2(たとえば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の物質である。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター212上に設けられる活性物質は、上記の種々の物質に金属をドーピングして得られる物質〔たとえば、式LiMxCoyNi(1-x-y)O2の物質、このときMはアルミニウムまたはチタンであり、xは約0.05〜約0.3であり、yは約0.1〜約0.3である〕である。
【0026】
特定の用途に対しては、約3ボルト以上のセル電圧を有する電池を供給するのが望ましい。このような場合には、より高い電圧の活性物質〔たとえば式Li2-xCoyFezMn4-(y+z)O8の物質(たとえばLi2Co0.4Fe0.4Mn3.2O8)〕を正電流コレクター上に使用することができる。このような活性物質は、リチウム基準電極に対して5.2ボルトまで充電することができ、したがって最大で約3.7ボルトの全セル電圧を得ることが可能になる、と考えられる。正極に対して使用することができる他の比較的高電圧の活性物質としては、LiCoPO4;LiNiPO4;Li2CoPO4F;Li[Ni0.2Li0.2Mn0.6]O2;およびLiCoxMn2-xO4(たとえばLiCo0.3Mn1.7O4);などがある。
【0027】
他の種々の代表的な実施態様によれば、活性物質は、式Li1-xMO2(式中、Mは金属である)の物質(たとえば、LiCoO2、LiNiO2、およびLiMnO2);式Li1-w(M’xM”y)O2(式中、M’とM”は異なった金属である)の物質〔たとえば、Li(CrxMn1-x)O2、Li(AlxMn1-x)O2、Li(CoxM1-x)O2(式中、Mは金属である)、Li(CoxNi1-x)O2、およびLi(CoxFe1-x)O2〕;式Li1-w(MnxNiyCoz)O2の物質〔たとえば、Li(Mn1/3Ni1/3Co1/3)O2、Li(Mn1/3Ni1/3Co1/3-xMgx)O2、Li(Mn0.4Ni0.4Co0.2)O2、およびLi(Mn0.1Ni0.1Co0.8)O2〕;式Li1-w(MnxNixCo1-2x)O2の物質;式Li1-w(MnxNiyCozAlw)O2の物質;式Li1-w(NixCoyAlz)O2の物質〔たとえば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2〕;式Li1-w(NixCoyMz)O2(式中、Mは金属である)の物質;式Li1-w(NixMnyMz)O2(式中、Mは金属である)の物質;式Li(Nix-yMnyCr2-x)O4の物質;LiMn2O4;式LiM’M”2O4(式中、M’とM”は異なった金属である)の物質(たとえば、LiMn2-y-zNiyO4、LizO4、LiNiCuO4、LiMn1-xAlxO4、LiNi0.5Ti0.5O4、およびLi1.05Al0.1Mn1.85O4-zFz);Li2MnO3;式LixVyOzの物質(たとえば、LiV3O8、LiV2O5、およびLiV6O13);式LiMPO4(式中、Mは金属である)またはLiM’xM”1-xPO4(式中、M’とM”は異なった金属である)の物質〔たとえば、LiFePO4、LiFexM1-xPO4(式中、Mは金属である)、LiVOPO4、およびLi3V2(PO4)3〕;LiMPO4x(式中、Mは鉄やバナジウム等の金属であり、Xはフッ素等のハロゲンである);およびこれらの組み合わせ物;等の物質を含んでよい。
【0028】
バインダー物質を活性物質216の層と組み合わせて使用して、種々の電極部材を接合もしくは繋ぎ合わせることもできる。たとえば、代表的な実施態様によれば、活性物質の層は、導電性の添加剤(カーボンブラック)とバインダー〔たとえば、フッ化ポリビニリデン(PVDF)やエラストマーポリマー〕を含んでよい。
【0029】
代表的な実施態様によれば、活性物質216の層の厚さは約0.1μm〜約3mmである。他の代表的な実施態様によれば、活性物質216の層の厚さは約25μm〜約300μmである。特定の代表的な実施態様によれば、活性物質216の層の厚さは約75μmである。
【0030】
負極220は、金属等の導電性物質で造られた電流コレクター222を含む。代表的な実施態様によれば、電流コレクター222はアルミニウムもしくはアルミニウム合金である。アルミニウムもしくはアルミニウム合金を使用することの1つの有利な特徴は、このような物質が比較的安価であって、比較的容易に電流コレクターに作製できる、という点である。アルミニウムもしくはアルミニウム合金を使用することの他の有利な特徴としては、これらの物質が比較的低い密度を有しており、比較的導電性が高く、容易に溶接することができ、そして広く市販されているという事実がある。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター222は、チタンまたはチタン合金である。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター222は銀または銀合金である。
【0031】
負電流コレクター222は薄い箔物質として示されているけれども、負電流コレクターは、種々の代表的な実施態様にしたがった他の多様な構造物のいずれを有してもよい。たとえば、正電流コレクターは、メッシュグリッド、エキスパンデッドメタルグリッド、または光化学エッチンググリッド等のグリッドであってよい。
【0032】
代表的な実施態様によれば、電流コレクター222の厚さは約100nm〜約100μmである。他の代表的な実施態様によれば、電流コレクター222の厚さは約5μm〜約25μmである。特定の代表的な実施態様によれば、電流コレクター222の厚さは約10μmである。
【0033】
負電流コレクター222は、活性物質224をその上に設けている。図3は、活性物質224が電流コレクター222の一方の側だけに設けられているけれども、理解しておかねばならないことは、活性物質224として示されているものと類似もしくは同一の活性物質の層を、電流コレクター222の両側に設けることもできるし、あるいはこうした層が電流コレクター222の両側の表面を被覆することもできる、という点である。
【0034】
代表的な実施態様によれば、負極活性物質224は、Li4Ti5O12等のチタン酸リチウム物質〔Li1+x[Li1/3Ti5/3]O4(式中、0≦x<1)と呼ばれることもある〕である。負極活性物質として使用するのに適した他のチタン酸リチウム物質は、以下のチタン酸リチウムスピネル物質の1種以上を含んでよい:HxLiy-xTiOxO4、HxLiy-xTiOxO4、Li4MxTi5-xO12、LixTiyO4、LixTiyO4、Li4[Ti1.67Li0.33-yMy]O4、Li2TiO3、Li4Ti4.75V0.25O12、Li4Ti4.75Fe0.25O11.88、Li4Ti4.5Mn0.5O12、およびLiM’M”XO4(式中、M’は、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、バナジウム、銅、クロム、モリブデン、ニオブ、またはこれらの組み合わせ物等の金属であり;M”は、任意の三価非遷移金属であり;そしてXは、ジルコニウム、チタン、またはこれら2種の金属の組み合わせ物である)。このようなチタン酸リチウムスピネル物質は、どのようなリチウム化状態(any state of lithiation)〔たとえば、Li4+xTi5O12(式中、0≦x≦3)〕であっても使用することができる。
【0035】
代表的な実施態様によれば、チタン酸リチウムを、その少なくとも5%がチタン酸リチウムナノ粒子(たとえば、約500ナノメートル未満の粒径を有する)の形態となるように供給することができる。こうしたナノ粒子の使用は、リチウムイオンをドーピングおよびアンドープするためのより大きな表面積をもたらすことを意図している。
【0036】
さらに、バインダー物質を活性物質224の層と組み合わせて使用することもできる。たとえば、代表的な実施態様によれば、活性物質の層は、フッ化ポリビニリデン(PVDF)やエラストマーポリマー等のバインダーを含んでよい。活性物質224はさらに、導電率を高めるために、炭素(たとえばカーボンブラック)等の導電性物質を0%〜10%の組み込み重量にて含んでよい。
【0037】
種々の代表的な実施態様によれば、活性物質224の厚さは約0.1μm〜約3mmである。他の代表的な実施態様によれば、活性物質224の厚さは約25μm〜約300μmである。他の代表的な実施態様によれば、活性物質224の厚さは約20μm〜約90μmであり、特定の代表的な実施態様によれば約75μmである。
【0038】
図4は、代表的な実施態様にしたがって造られたリチウムイオン電池(たとえば、図3に関して記載の電池)に対する理論的な充電挙動と放電挙動を示しているグラフ300である。曲線310は、LiCoO2一次活性物質をその上に設けたアルミニウム電流コレクターを含む正極(たとえば正極210)に対する電位を示している。
【0039】
曲線320は、チタン酸リチウム活性物質をその上に設けたアルミニウム電流コレクターを含む負極に対する電位を示している。曲線310と320との間の差が電池の全セル電圧を表わしており、図4において曲線340として示されている。
【0040】
図4に示されているように、負極(たとえば電極220)の電圧を示している曲線320の比較的フラットな部分(参照番号324で表示)は、約1.5〜1.6ボルトのレベルである。したがって、曲線320の比較的フラットな部分324は、炭素活性物質を使用している電極のレベル(たとえば、炭素活性物質を組み込んだ負極に対する理論電圧を示している図2の曲線120を参照)より大幅に高いレベルとなっている。
【0041】
負極活性物質用にチタン酸リチウム物質を使用することの、有利であると思われる1つの特徴は、より好都合なデザイン・ルールが可能であるという点である。たとえば、従来のリチウムイオンセルにおいては、リチウムのめっきを防止するために、負極が正極と、全てのエッジに対して約1mm程度重なり合わなければならない。スペースが重要な問題となる用途の場合、このことは、著しい体積の無駄となる場合がある〔たとえば、高さが約22mmである頭蓋インプラントセル(a cranial implant cell)の場合は、約10%の体積が無駄となることがある〕〕。チタン酸塩物質を使用すると、リチウムのめっきの可能性が低下するので、正極と負極を重ね合わせる設計上の要件が不必要となり、したがって、改良されたエネルギー密度を有するリチウムイオン電池の製造が可能となる。
【0042】
チタン酸リチウム物質に対するリチウム拡散効率は約2×10-8cm2/秒のオーダー(これは炭素の場合の約10倍である)であり、したがって、比較的速いサステインド・レイト・ケイパビリティ(sustained rate capability)が得られる。このような物質を使用すると、十分なパワーと再充電速度をそのまま達成しつつ、より小さな表面積の電極を有する電池の製造が可能となる。代表的な実施態様によれば、電池は、コインセルまたはホイルラミネートパッケージ(a foil laminate package)においてモノリシック(すなわち単板)電極を使用する。チタン酸リチウム物質のサステインド・レイト・ケイパビリティが比較的速いことから、電池は比較的薄くてよく(たとえば約1mm)、低コストとなる。さらに、他の代表的な実施態様によれば、電池は、輪郭をつけた形状(contoured shapes)にて製造することができ、これにより、このような電池をデバイス中に、これまでにないやり方で適切に〔たとえば、デバイスのハウジングもしくはケース(たとえば、ペースメーカー等の医療デバイス用のハウジング)の内面にそって〕包装することが可能となる。このことは、頭蓋インプラント等のデバイスにおいて特に有利である(頭蓋インプラントの場合、頭蓋骨の湾曲に調和した輪郭を有するデバイスを提供するのが望ましい)。
【0043】
従来のリチウムイオン電池は、リチウムのめっきを防止すべく、約5〜10%のわずかに過剰の負極活性物質でバランスがとられている。過剰の活性物質を使用すると、電池がより大きくなり、この結果、エネルギー密度が減少したセルが得られることとなる。代表的な実施態様によれば、チタン酸リチウム活性物質をアルミニウム負電流コレクター上に使用する電池またはセルは、過剰な負極活性物質を使用せずに製造することができる〔たとえば“バランスのとれた設計物(a balanced design)”として〕。
【0044】
チタン酸リチウム物質を使用することの他の有利な特徴は、リチウムイオン電池の負極に使用すると、チタン酸リチウム物質は、約1.55ボルトの電位プラトーにてリチウムを循環させると考えられる、という点である(たとえば図4を参照;図4は、約3%〜約90%の充電状態での電池の充電時において、約1.5ボルトのレベルでの負極の電位を曲線324として示している)。これは、フル充電状態において約0.1ボルトにてリチウムを循環させる黒鉛状炭素より大幅に高い(たとえば図2を参照;図2における曲線120は、黒鉛状炭素を使用している負極の充電/放電挙動を示している)。
【0045】
このようなリチウムイオン電池は、約1.55ボルトのプラトーにてリチウムを循環させるので、リチウムのめっきを受けにくいと考えられる。リチウムのめっきは、リチウムイオン電池の性能の低下を引き起こすことがある、よく知られている現象である。チタン酸リチウムを負極活性物質として使用しているリチウムイオン電池は、充電時にリチウムのめっきを生じにくいと考えられる(リチウムのめっきは、リチウムの基準電極に対して0ボルトにて起こる)。たとえば、チタン酸リチウムを負極活性物質として使用しているリチウム電池は、充電操作における1つ以上のポイントにおいて、負極の電位がその平衡(すなわち開回路)電位より70ミリボルトより大きく低くなるように充電することができる。図4に示されている点線322は、負極の平衡電位(曲線324として図示)より約70ミリボルト低い負極に対する電位を表わしている。負極の電位を、曲線322とリチウム基準電極に対するゼロボルトとの間に(たとえば、図4における曲線322とグラフのx軸との間の範囲に)低下させるような仕方でリチウムイオン電池(たとえば本明細書に記載の電池)を充電すると、リチウムのめっきが起こらないが、炭素質の負極をもたない従来のリチウムイオン電池は、このような電位においてリチウムをめっきするようである。
【0046】
負極活性物質に対して炭素質物質の代わりにチタン酸リチウム物質を使用することの他の利点は、チタン酸リチウム物質を使用すると、炭素質物質を使用した場合より高い速度での電池の充電と放電が可能になると考えられる、という点である。たとえば、リチウムイオン電池の充電速度に対する通常の上限は約1Cである(放電状態から1時間で電池をフル充電することができる、ということを意味している)。その反面、文献においては、最大で10Cの速度でチタン酸リチウムを充電することができる、ということが報告されている(すなわち、1/10時間または6分でフル充電に達する)。これに対する1つの可能な理由は、チタン酸リチウム活性物質を使用している負極は、リチウムのめっきのリスクを受けにくいと考えられる、ということである。電池をより速やかに再充電できる能力を有することは、こうした電池を使用するデバイスの機能性を大幅に高めることとなる。
【0047】
さらに、チタン酸リチウム活性物質を含んだ負極を使用すると、負極が炭素活性物質を使用している電池の充電において使用される電圧より高い電圧で電池を充電することが可能になる、と考えられる。このような特性をもつことの1つの潜在的な利点は、非密封セル〔たとえば、リベットポリマー・フィードスルー(a rivet polymer feedthrough)やホイルパッケージ(foil package)等を使用しているセル〕を製造することができるという点である。非密封セルは一般に、他のセルより大きなエネルギー密度を有し、比較的低コストで製造することができ、多種多様な物質(たとえば、ポリマーホイルラミネート等)を使用して製造することができる。特に医療用途においては、このようなセルは従来、漏出のリスクを低下させるために、より低い蒸気圧を有するポリマー電解質やゲル電解質を使用している。しかしながら、このような電解質は一般に、液体電解質より導電性が劣り、したがってパワーおよび/または充電速度が比較的低くなる。チタン酸リチウム活性物質をアルミニウム電流コレクター上に含んだ電池を使用することによって、電解質における抵抗損失(たとえば、IRの低下)を補償するよう、セルの充電電圧を増大させることができる。
【0048】
チタン酸リチウム負極活性物質を使用する電池に関して上記した有利であると思われる種々の特徴により(たとえば、アルミニウム負電流コレクター上に設けられ、LiCoO2等の活性物質をその上に設けた正極と共に使用される)、もしこうした特徴がなければ、従来のリチウムイオン電池(たとえば、チタン酸リチウム負極活性物質を使用しない電池)と共には使用できない多くの充電手順を使用することができる、と考えられる。このような充電手順の代表的な実施態様(これらに限定されない)を図5〜10に示す。このような充電手順のそれぞれが、充電操作の少なくとも一部に対して、負極の電位(リチウム電極に関して)を当該電極の平衡(すなわち開回路)電位より約70ミリボルトより大きく低くする(すなわち、充電の過電位が約70ミリボルトより大きい)。チタン酸リチウム活性物質を負極上に使用することで、電極へのリチウムのめっきを起こすことなく、負極の電位をこのレベルに到達させることが可能となる。
【0049】
図5は、代表的な実施態様による理論的な充電手順と充電アルゴリズムを示しているグラフである。図5に示されているように、充電電圧が電池の最終充電電圧を超えるレベルにて制御される、一定電圧の充電手順を使用することができる(これに対応して、電池の充電の増大と共に充電電流が減少する)。たとえば、電池の最終充電電圧(すなわち、フル充電電池の開回路電圧)が約3ボルトである代表的な実施態様によれば、図5に示すように、最大約4.5ボルトまでの一定電圧にて充電することができる。所望の最終充電電圧と充電電圧との1.5ボルト差は、負極のおおよその電位を示している(たとえば図4を参照)。この充電手順により、充電操作の少なくとも一部に対して70ミリボルトより大きい過電位が生じる。このように、電池の充電は、従来の負極物質(たとえば炭素等)を使用する電池の充電と比較して比較的速やかな速度で行うことができる。
【0050】
図5に示されている電池の充電を終了させるべきポイントを決めるために、種々のカットオフ基準を使用することができる。図4に示されているように、チタン酸リチウム活性物質を負極上に使用する電池は、充電の終わりにセル電圧の比較的急激な増大をこうむる(たとえば、図4における曲線340の最も右の部分を参照)。このような急激な増大は、炭素や他の従来の負極活性物質を使用する電池においては一般には存在しない負極電位(なぜなら、たとえば図2に示されているように、このポイントにおける負極の電位は、既にほぼゼロボルトだからである)の比較的急激な減少(たとえば、図4の曲線320を参照)に対応している。充電時におけるこのポイントの確認は、充電がほぼ完了してということの、および/または、充電を停止しなければならないということの指示として使用することができる。電池の充電をいつ停止すべきかを決めるのに、他の種々の方法も使用することができる。たとえば、代表的な実施態様にしたがって所定の時間が経過したときに、電池の充電を停止することができる。他の代表的な実施態様によれば、電池の電流が所定の閾値未満に低下したときに、電池の充電を停止することができる(すなわち、図5の下方部分に示されている電流が所定の閾値未満に低下する場合がある)。他の代表的な実施態様によれば、時間に対する電池の電流の勾配(すなわちdi/dt)が所定の閾値未満に低下したときに、電池の充電を停止することができる。
【0051】
図6は、他の代表的な実施態様による理論的な充電手順または充電アルゴリズムを示しているグラフである。図6に示されているように、充電電流が一定のレベルにて制御される一定電流の充電手順を使用することができる。充電電圧が最終的に、電池の最終充電電圧(たとえば3ボルト)を超えるレベル(たとえば4.5ボルト)に達するよう、充電電圧が、図6に示されているグラフと類似のグラフにしたがって進行していく。この場合も、チタン酸リチウム物質を負極活性物質として使用しているので、充電中のあるポイントにおいて、過電位が約70ミリボルトを超えたとしても、負極上へのリチウムのめっきを防止することができる、と考えられる。このように、電池の充電は、従来の負極物質(たとえば炭素等)を使用する電池の充電と比較して比較的速やかな速度で行うことができる。
【0052】
図6に示されている電池の充電を終了させるべきポイントを決めるために、種々のカットオフ基準を使用することができる。たとえば、電池の電圧が所定の閾値を超えたときに〔すなわち、図6の上方部分に示されている電圧が所定の閾値(たとえば4.5ボルト)より高くなってときに〕、電池の充電を停止することができる。他の代表的な実施態様によれば、時間に対する電池の電圧の勾配(すなわちdV/dt)が所定の閾値を超えたときに、電池の充電を停止することができる。他の代表的な実施態様によれば、電池の容量に対する電池の電圧の勾配(すなわちdV/dQ)が所定の閾値を超えたときに、電池の充電を停止することができる。
【0053】
図7は、図5と6に示されている充電手順の一部を組み合わせた他の代表的な実施態様による理論的な充電手順と充電アルゴリズムを示しているグラフである。図7に示されているように、充電手順の第1の部分は、制御された一定電流を使用しているが、充電手順の第2の部分は、制御された一定電圧を使用している。たとえば、充電電圧が電池の所望の最終電圧(たとえば4.5ボルト)より上の所定の閾値に達するポイントまでは、電流を一定のレベルに制御することができ、その後に、充電電圧をこの閾値にて制御する(図7に示されているように、このポイントにおいて、電流が時間と共に減少していく)。
【0054】
図7に示されている電池の充電を終了させるべきポイントを決めるために、種々のカットオフ基準を使用することができる。たとえば、代表的な実施態様にしたがって所定の時間が経過したときに、電池の充電を停止することができる。他の代表的な実施態様によれば、電池の電流が所定の閾値未満に低下したときに、電池の充電を停止することができる。
【0055】
図8は、ステップダウン電流(a step-down current)を使用することができる他の代表的な実施態様による理論的な充電手順と充電アルゴリズムを示しているグラフである。図8に示されているように、一定の電流を加えると、充電電圧が所定の閾値(たとえば4.5ボルト)にまで増大する。この充電電圧に達すると、電流が、より低い一定の電流値に低下する。充電電圧が所定の閾値(または、他の代表的な実施態様による異なった閾値)に近づくごとに、電流がより低い一定値に低下するよう、このプロセスを繰り返す。
【0056】
図8に示されている電池の充電を終了させるべきポイントを決めるために、種々のカットオフ基準を使用することができる。たとえば、代表的な実施態様にしたがって所定の時間が経過したときに、電池の充電を停止することができる。他の代表的な実施態様によれば、所定の数のステップ(たとえば、充電電流におけるステップダウン)処置をとったときに、電池の充電を停止することができる。他の代表的な実施態様によれば、電池の電流が所定の閾値未満に低下したときに、電池の充電を停止することができる(たとえば、電流の値が所定の閾値未満のレベルにステップダウンしたときに充電を停止する)。他の代表的な実施態様によれば、ある特定の電流レベルに関連した電圧の変化が所定の値未満になったときに(たとえば、ある特定の充電電流に対し、電圧の低下が所定の閾値未満になる)、電池の充電を停止することができる。
【0057】
図9と10は、図5〜8に示されている手順またはアルゴリズムと共に使用することができる方法を示している。図9は、電流遮断法と、図6に示されているのと類似の充電手順または充電アルゴリズムとを組み合わせて使用することを示している。代表的な実施態様によれば、充電時における周期的な間隔にて充電電流が除去される(たとえば、電流を加えない)。他の代表的な実施態様によれば、周期的な電流遮断は、(電流の完全な除去とは対照的に)電流の低下として施すことができる。電流を周期的に除去するか又は減少させると、電圧が比較的速やかに低下する。この電圧低下を読み取って、ある特定のポイントにおける電池の開回路電圧を決定することができる。開回路電圧が、所望する最終電池電圧に近づいていくある値を有することがいったん決定されたら、充電手順を停止することができる。
【0058】
図10は、過電圧(充電電圧と所望の最終電池電圧の差)が所定の閾値(たとえば1.5ボルト;この値は、図4に示すように、負極のおよその電位に相当する)を超えるのを防止するべく、電池の充電時に電池の抵抗もしくはインピーダンスを周期的に測定する、というアルゴリズムまたは手順を使用することを示している。このように、所望の最終電池電圧より高い電圧での電池の充電は、過電圧が閾値(この閾値において、負極のリチウムめっきが起こることがある)を超えるというリスクの低下と共に進行する。
【0059】
理解しておかねばならないことは、図9〜10に関して記載の方法と類似の方法を、図5〜8に関して記載の他の手順もしくはアルゴリズムと共に使用することができる、という点である。たとえば、電池のインピーダンスや抵抗は、充電手順の過電圧が、リチウムのめっきが起こりうる閾値を超えないことを確実にするための手順のいずれかと組み合わせて測定することができる。同様に、電圧遮断法や電流遮断法を使用して、充電される電池の開回路電圧を比較的速やかに測定することができる。
【0060】
図9〜10は、充電操作時に遮断される充電手順を示しているが、理解しておかねばならないことは、チタン酸リチウム物質が負極活性物質として使用されているので、充電操作におけるこのような遮断または停止は省くことができるという点である。なぜなら、これらの電池は、炭素質の活性物質を使用する従来のリチウムイオン電池より、リチウムのめっきのリスクが小さいからである。
【0061】
理解しておかねばならないことは、図5〜10に関して記載の手順またはアルゴリズムは、電池の充電時において、充電操作の少なくとも一部に対して過電位にて充電することを意図している、という点である。記載の実施態様は、約70ミリボルトの閾値過電位を使用しているけれども、理解しておかねばならないことは、種々の代表的な実施態様によれば、リチウムのめっきが防止される限り、いかなる適切な過電位も使用することができる、という点である。たとえば、他の代表的な実施態様によれば、100ミリボルトより大きい過電位を使用することができる。チタン酸リチウム負極活性物質を使用すると、従来の負極活性物質(たとえば炭素)を使用した電池の場合には、リチウムのめっきが起こりうるために使用できないような過電位を、充電時において有利に使用できるようになる。
【実施例】
【0062】
基準電極を有する単板のリチウムイオンセルをステンレス鋼缶中にて作製した。正極は、LiCoO2のコーティング、粉末状グラファイト、およびPVDFをアルミニウム電流コレクター上に含んだ。負極は、Li4Ti5O12のコーティング、カーボンブラック、およびPVDFをアルミニウムホイル電流コレクター上に含んだ。Li4Ti5O12は、“EXM1037”の商品名で得た〔ドイツ、ミュンヘンのサッド・ケミー社(Sud-Chemie)から市販〕。Li4Ti5O12は、500nm未満の粒子(レーザー回折によって測定)を約40容量%含んだ。正極コーティングの物質付着量(mass deposition)は約22mg/cm2であり、コーティングのカレンダー厚さは約70ミクロンであった。負極の物質付着量は約17mg/cm2であり、カレンダー厚さは約75ミクロンであった。電極の活性エリアは約5cm2であった。
【0063】
基準電極は、フィードスルー・ピン(セルのヘッドスペースに配置)の端部上の、金属リチウムのナゲットで構成した。プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、およびジエチルカーボネートの混合物中の1MのLiPF6からなる電解質を使用して、セルを活性化させた。セルを形成させ、ARBIN BT-2000電池サイクラーを使用して37℃でサイクルさせた。サイクリング中、電流、セル電圧、およびLi基準電極に対する負極の電位をモニターした。12回の状態調節サイクルが完了した後、電池を2サイクル充電して、一定電流(0.5mA)の充電条件下と一定電圧(3V)の充電条件下での充電速度を比較した。
【0064】
図11A〜Dは、一定電流条件と一定充電条件に対する結果の比較を示している。セル電圧、充電電流、負極の電位、および充電率が、それぞれ図11A、11B、11C、および11Dに示されている。一定電圧の充電条件により、セルは、一定電流条件の場合よりはるかに高い速度で充電された。たとえば、図11Dに示すように、セルは、一定電圧で充電した場合には、約84分で80%のフル充電に達したが、一定電流条件の場合には10%であった。図11Cに示されているように、一定電圧の充電時における負極の電位は、一定電圧の充電の間一定電流の充電条件の場合より約500mV低かった。このことは、負極の過電圧または過電位が、一定電圧の充電時においては少なくとも500mVであったことを示している。充電操作時に比較的大きな過電位を使用することによって、セルは、このような過電位を使用しない充電操作と比較して、かなり短い時間で充電することができた。
【0065】
代表的な実施態様によれば、上記のようなリチウムイオン電池と充電手順を医療デバイス〔たとえば、ヒトの体内に埋め込むことができる医療デバイス(“埋め込み可能な医療デバイス”または“IMD”と呼ばれる)〕と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載のようなリチウムイオン電池と充電手順をIMDと共に使用することの1つの利点は、充電時間が比較的速いことから、患者に対する不都合が軽減される、という点である。
【0066】
図12は、患者430のボディすなわち胴432中に埋め込まれたシステム400(たとえば、埋め込み可能な医療デバイス)の概略図を示している。システム400は、例示のため、患者430に対する高電圧(たとえば700ボルト)の治療処置をもたらすよう造られた除細動器として示されている埋め込み可能な医療デバイスの形態のデバイス410を含む。
【0067】
代表的な実施態様によれば、デバイス410は、密封されていて生物学的に不活性な容器もしくはハウジング414を含む。この容器は、導電性物質で造られていてよい。1つ以上のリード線416が、デバイス410を、静脈422を介して患者の心臓420に電気的に連結している。心臓の活動を検知するように、および/または、心臓420に電位をもたらすように、電極417が設けられる。リード線416の少なくとも一部(たとえば、露出電極417として示されているリード線の終端部)を、心臓420の心室と心房の1つ以上に隣接した状態で、あるいは接触させた状態で設けることができる。
【0068】
デバイス410は、デバイス410に電力を供給すべくその内部に設けられた電池440を含む。他の代表的な実施態様によれば、電池440は、デバイスに対して外部に設けることもできるし、あるいは患者430に対して外部に設けることもできる(たとえば、電池の除去、電池の交換、および/または、電池の充電を可能にするために)。電池440のサイズと容量は、ある特定の患者の身体特性もしくは医療特性に対して必要とされる充電の量、デバイスのサイズもしくは構造、および多様な他のファクターのいずれか、を含めた多くのファクターに基づいて選定することができる。代表的な実施態様によれば、電池は5mAhの電池である。他の代表的な実施態様によれば、電池は300mAhの電池である。他の種々の代表的な実施態様によれば、電池は約1〜1000mAhの容量を有してよい。
【0069】
他の代表的な実施態様によれば、デバイス410に電力を供給するために2つ以上の電池を設けることができる。このような代表的な実施態様によれば、電池は同じ容量を有してもよいし、あるいは電池の1つ以上が、他の電池より高い、または低い容量を有してもよい。たとえば、代表的な実施態様によれば、電池の1つが約500mAhの容量を有し、別の電池が約75mAhの容量を有してよい。
【0070】
図13に示されている他の代表的な実施態様によれば、埋め込み可能な神経刺激デバイス500〔埋め込み可能なニューロ・スティムレータ(implantable neuro stimulator)またはINS〕は、種々の代表的な実施態様に関して記載したような電池502を含んでよい。幾つかの神経刺激製品とそれに関連した部品の例が、メドトロニック社(Medtronic,Inc)から入手できる“埋め込み可能な神経刺激システム”と題するパンフレット中に説明されている。
【0071】
INSは、ヒトの神経系統や臓器に影響を与えるのに使用される1つ以上の電気刺激信号を生じる。リード線の遠位端に設けてある電気接点を所望の刺激部位(たとえば、脊椎や脳)に配置し、リード線の近位端をINSに接続する。次いでINSを個体中に(たとえば、腹部、胸部、または上臀部における皮下ポケット中に)外科的に埋め込む。臨床医が、プログラマーを使用してINSに療法のプログラムを組み込む。この療法は、特定の患者の治療に対する刺激信号のパラメーターを形成する。痛み、失禁、運動障害(癲癇やパーキンソン病など)、および睡眠時無呼吸等の疾病を処置するのにINSを使用することができる。種々の生理学的状態、心理学的状態、および感情状態を処置するためのさらなる療法も有望であると思われる。治療がなされるようINSを埋め込む前に、一般には、INS機能の一部もしくは全てを繰り返す外部スクリーナーを患者に接続して、推薦された療法の有効性を評価する。
【0072】
INS500は、リード・エクステンション(a lead extension)522とスティムレーション・リード(a stimulation lesd)524を含む。スティムレーション・リード524は、コネクター532を近位端に、そして電気接点(図示せず)を遠位端に有する1つ以上の絶縁導体である。幾つかのスティムレーション・リードは、患者に経皮的に挿入されるよう設計されており〔たとえば、ミネソタ州ミネアポリスのメドトロニック社から市販のモデル3487A Pisces-Quad(登録商標)〕、また幾つかのスティムレーション・リードは、外科的に埋め込まれるように設計されている〔たとえば、メドトロニック社から市販のモデル3998Specify(登録商標)リード〕。
【0073】
リード・コネクター532はINS500に直接接続することができる(たとえば、ポイント536において)けれども、一般にはリード・エクステンション522に接続する。次いでリード・エクステンション522(たとえば、メドトロニック社から市販のモデル7495)をINS500に接続する。
【0074】
INS520の埋め込みは、通常は患者を局所麻酔にて処置しながら、少なくとも1つのスティムレーション・リード524を埋め込むことから始める。スティムレーション・リード524は、経皮的に埋め込むこともできるし、あるいは外科的に埋め込むこともできる。スティムレーション・リード524が埋め込まれて配置されたら、一般には、スティムレーション・リード524の遠位端を所定の位置に固定して、埋め込み後のスティムレーション・リード524の移動を最小限にする。スティムレーション・リード524の近位端は、リード・エクステンション522に接続されるように造り上げることができる。
【0075】
INS500に療法のプログラムが組み込まれ、患者に対する療法を最適化するためにしばしば療法が変更される(すなわち、ある特定の状況において適切な療法が施されるよう、INSに複数のプログラムまたは療法を組み込むことができる)。電池502が再充電を必要とするという場合には、外部リード(図示せず)を使用して、電池を充電デバイスもしくは充電装置に電気的に連結することができる。
【0076】
医師または患者が種々の療法を管理することができるよう、医師プログラマー(a physician programmer)と患者プログラマー(a patient programmer)(図示せず)を設けることもできる。医師プログラマー(コンソールプログラマーとしても知られている)は、埋め込まれたINS500と交信するのに遠隔測定法を使用し、したがって臨床医は、INS500に保存された患者の療法をプログラム・管理することができ、患者のINS500システムに対処することができ、および/またはデータを修正することができる。医師プログラマーの1つの例は、メドトロニック社から市販のモデル7432コンソールプログラマーである。患者プログラマーも、INS500と交信するのに遠隔測定法を使用し、したがって患者は、臨床医によって規定されている療法の幾つかの態様を管理することができる。患者プログラマーの1つの例は、メドトロニック社から市販のモデル7434Itrel(登録商標)3EZ患者プログラマーである。
【0077】
本明細書に記載の医療デバイス(たとえば、システム400やシステム500)は、除細動器や神経刺激デバイスとして説明されているけれども、理解しておかねばならないことは、他のタイプの埋め込み可能な医療デバイスも、他の代表的な実施態様にしたがって使用することができるという点である(たとえば、種々の健康食物の悪影響を軽減するためのペースメーカー、電気除細動器、心収縮モジュール、薬物投与デバイス、診断レコーダー、および蝸牛インプラントなど)。さらに他の実施態様によれば、埋め込みできない医療デバイスまたは他のタイプのデバイスは、本明細書に記載の電池を使用することができる。
【0078】
さらに、本明細書に記載の医療デバイスは、患者の体内に埋め込まれたときに充電もしくは再充電できるように意図されている。すなわち、代表的な実施態様によれば、医療デバイスを充電もしくは再充電するために、医療デバイスを患者から切り離したり、取り除いたりする必要がない。たとえば、磁気誘導を使用して、エネルギーを体外から埋め込まれた電池に供給するという経皮的エネルギー移動(TET)を使用することができ、この場合、埋め込まれた電池に対して直接物理的に接触させる必要はなく、またインプラントのいかなる部分も患者の皮膚から突き出る必要はない。他の代表的な実施態様によれば、電池を充電もしくは再充電するために充電デバイスに電気的に連結することができるコネクターを、患者の体の外部に設けることができる。他の代表的な実施態様によれば、電池を充電もしくは再充電するために患者からの取り外しまたは分離を必要としてよい医療デバイスを設けることもできる。
【0079】
本明細書に記載の電池が使用される他の応用は、2つ以上の電池が使用されるマルチ電池システムである(たとえば、マルチ電池デバイス用のパワーモジュールとして)。この1つの例が、2つの電池を含んだ埋め込み可能な除細動器(ICD)である。ICDは、耐用年数の殆どに対して低パワーモードで作動するが、細動除去ショックが必要となるごとに、数秒間にわたって比較的高いパワー(たとえば10ワット)を供給しなければならない。低速度もしくは中速度の一次セル(たとえば、CFx、CFx-SVOハイブリッド、またはリチウム/MnO2からなるカソードを含むリチウム電池)はエネルギーモジュールとして作用し、エネルギーの大部分をデバイスに供給する。しかしながらこのエネルギーモジュールは、高パワーを維持することができない。したがって、本明細書に開示のようなリチウムイオンセル(たとえば、アルミニウム負電流コレクター、銀負電流コレクター、またはチタン負電流コレクター上に供給されたチタン酸リチウム物質と、本明細書に記載のような活性物質を電流コレクター上に供給した正極とを有する電池)に並列に接続され、高ドレイン用途においてパワーモジュールとして作用する。2つのセルを組み合わせた電池は、高いエネルギーとパワー密度を有する。2つのセルを並列で接続する場合は、2つのセル電圧が必ず互いに同等でなければならない。標準的なリチウムイオンセルの場合、ほとんどのリチウム一次セルと並列に接続するには電圧が高すぎる(約3.7V)。並列に接続すると、一時セルの損傷を引き起こし、患者にとって支障をきたすことになると思われる。しかしながら、本明細書に開示しているようなリチウムイオンセルを使用すると、2つのセルタイプの電圧の範囲が完全に重なり合うので、リチウム一次セルに対する比較的安全な接続が可能となる。
【0080】
理解しておかねばならないことは、種々の代表的な実施態様に関して説明してきたリチウムイオン電池の構造と配列は単に例示のためのものである、という点である。本発明の幾つかの実施態様だけを詳細に説明してきたが、この開示内容を考察する当業者は、本明細書の新規開示内容および特許請求の範囲に記載の主題の利点から実質的に逸脱することなく多くの改良や変更(たとえば、サイズ、寸法、構造、形状、および種々の成分の比率を変えること、パラメーターの値、集成体を据え付けること、種々の材料や着色剤の使用、ならびに配向など)が可能である、ということを容易に理解するであろう。したがってこのような改良や変更は全て、特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲内に含まれる。本発明の範囲を逸脱することなく、好ましい他の代表的な実施態様のデザイン、操作条件、および集成体に関して、他の置き換え物(substitutions)、改良物、変更物、および省略物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】従来のリチウムイオン電池の概略断面図である。
【図2】従来のリチウムイオン電池(たとえば、図1に概略的に示されている電池)に対する理論的な充電挙動と放電挙動を示しているグラフである。
【図3】代表的な実施態様によるリチウムイオン電池の一部の概略断面図である。
【図4】リチウムイオン電池(たとえば、図3に示されている電池)に対する理論的な充電挙動と放電挙動を示しているグラフである。
【図5】理論面での代表的な実施態様による、可能な電池充電手順もしくは電池充電アルゴリズムを示しているグラフである。
【図6】理論面での他の代表的な実施態様による、可能な電池充電手順もしくは電池充電アルゴリズムを示している別のグラフである。
【図7】理論面での他の代表的な実施態様による、可能な電池充電手順もしくは電池充電アルゴリズムを示している別のグラフである。
【図8】理論面での他の代表的な実施態様による、可能な電池充電手順もしくは電池充電アルゴリズムを示している別のグラフである。
【図9】理論面での他の代表的な実施態様による、可能な電池充電手順もしくは電池充電アルゴリズムを示しているグラフである。
【図10】代表的な実施態様による、充電手順もしくは充電アルゴリズム時の、電池のインピーダンスもしくは抵抗を決定するための方法を示している別のグラフである。
【図11A−D】代表的な実施態様による、電池の充電性能を示しているグラフである。
【図12】患者の体内もしくは胴体内に埋め込まれた、埋め込み可能な医療デバイスの形態のシステムの概略図である。
【図13】埋め込み可能な医療デバイスの形態の他のシステムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイス中に組み込まれたリチウムイオン電池を充電する工程を含み、このとき前記リチウムイオン電池が、チタン酸リチウム活性物質を含む負極を有し、充電の少なくとも一部に対し、負極の電位が、負極の平衡電位より約70ミリボルトより大きく低い、埋め込み可能な医療デバイスを充電するための方法。
【請求項2】
充電の少なくとも一部に対し、負極の電位が、負極の平衡電位より約100ミリボルトより大きく低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リチウムイオン電池を充電する工程が、負極の電位を、リチウム基準電極と比較してゼロボルトより高く保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リチウムイオン電池を充電する工程が、ある一定の充電電圧を利用する充電操作の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リチウムイオン電池を充電する工程が、ある一定の充電電流を利用する充電操作の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リチウムイオン電池を充電する工程が充電操作の一部であって、前記充電操作の第1の部分がある一定の充電電流を利用し、前記充電操作の第2の部分がある一定の充電電圧を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リチウムイオン電池を充電する工程が、ステップダウン電流法を利用する充電操作の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)負極の電位が急激に低下する;(b)所定の時間が経過する;(c)リチウムイオン電池の電流が所定の閾値未満に低下する;および(d)リチウムイオン電池の電流の時間に対する勾配(di/dt)が所定の閾値未満に低下する;からなる群から選択される所定の条件が満たされたときに、リチウムイオン電池の充電を終了させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(a)リチウムイオン電池の電圧が所定の閾値を超える;(b)リチウムイオン電池の電圧の時間に対する勾配(dV/dt)が所定の閾値を超える;および(c)リチウムイオン電池の電圧の容量に対する勾配(dV/dQ)が所定の閾値を超える;からなる群から選択される所定の条件が満たされたときに、リチウムイオン電池の充電を終了させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池が、LiCoO2、LiMn2O4、LiMnxCoyNi(1-x-y)O2、LiAlxCoyNi(1-x-y)O2、LiTixCoyNi(1-x-y)O2、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される物質を含む活性物質と電流コレクターとを含んだ正極を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
負極が、アルミニウム、チタン、銀、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される物質を含んだ電流コレクターを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
チタン酸リチウム活性物質がLi4Ti5O12を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
チタン酸リチウム活性物質が少なくとも5%のナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
リチウムイオン電池を充電する工程が、患者に埋め込まれる医療デバイスを使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
医療デバイスが、神経刺激装置、細動除去器、心臓ペースメーカー、心収縮モジュール、心収縮モジュレータ、電気除細動器、薬物投与装置、蝸牛インプラント、補聴器、センサー、テレメトリーデバイス、および診断レコーダーからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
リチウムイオン電池を充電する工程が誘導充電を利用する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リチウムイオン電池が、約2.8ボルトより大きい電位を有する正極を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
リチウムイオン電池の電圧が約1.3ボルトより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
リチウムイオン電池が約1mAh〜約1000mAhの容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
リチウムイオン電池を充電する工程が、リチウムイオン電池の充電状態または平衡電圧を確定するために、充電中は中断されない、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
リチウムイオン電池を充電操作にて充電する工程を含み、このとき前記リチウムイオン電池が、チタン酸リチウム物質を含んだ負極を含み、充電操作の少なくとも一部に対し、負極の過電位が約70ミリボルトより大きく、リチウムイオン電池が、埋め込み可能な医療デバイス中に組み込まれ、充電操作により負極にリチウムの被膜が生じることはない、リチウムイオン電池を充電する方法。
【請求項22】
充電操作の少なくとも一部に対し、負極の過電位が約100ミリボルトより大きい、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
リチウムイオン電池が約1mAh〜約1000mAhの容量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
充電操作がある一定の充電電圧を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
充電操作がある一定の充電電流を利用する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
(a)負極の電位が急激に低下する;(b)所定の時間が経過する;(c)リチウムイオン電池の電流が所定の閾値未満に低下する;および(d)リチウムイオン電池の電流の時間に対する勾配(di/dt)が所定の閾値未満に低下する;からなる群から選択される所定の条件が満たされたときに充電操作を終了させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
(a)リチウムイオン電池の電圧が所定の閾値を超える;(b)リチウムイオン電池の電圧の時間に対する勾配(dV/dt)が所定の閾値を超える;および(c)リチウムイオン電池の電圧の容量に対する勾配(dV/dQ)が所定の閾値を超える;からなる群から選択される所定の条件が満たされたときに充電操作を終了させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
負極が、アルミニウム、チタン、銀、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される物質を含んだ電流コレクターを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
チタン酸リチウム活性物質がLi4Ti5O12を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
医療デバイスが、神経刺激装置、細動除去器、心臓ペースメーカー、心収縮モジュール、心収縮モジュレータ、電気除細動器、薬物投与装置、蝸牛インプラント、補聴器、センサー、テレメトリーデバイス、および診断レコーダーからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
医療デバイスが患者の体内に埋め込まれているときに充電操作が行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
充電手順の少なくとも一部に対し、リチウムイオン電池の負極に少なくとも70ミリボルトの過電位をもたらす充電手順にしたがってリチウムイオン電池を誘導充電することを含み、このとき前記リチウムイオン電池がチタン酸リチウム負極活性物質を含む、リチウムイオン電池を充電する方法。
【請求項33】
リチウムイオン電池が約1mAh〜約1000mAhの容量を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
充電手順が負極に少なくとも100ミリボルトの過電位をもたらす、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
充電操作が、ある一定の充電電圧とある一定の充電電流の少なくとも一方を利用する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
負極が、アルミニウム、チタン、および銀からなる群から選択される物質を含んだ電流コレクターを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
リチウムイオン電池が患者の体内に埋め込まれる医療デバイス中に組み込まれ、前記医療デバイスが、神経刺激装置、細動除去器、心臓ペースメーカー、心収縮モジュール、心収縮モジュレータ、電気除細動器、薬物投与装置、蝸牛インプラント、補聴器、センサー、テレメトリーデバイス、および診断レコーダーからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
チタン酸リチウム活性物質がLi4Ti5O12を含む、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A−D】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−519403(P2008−519403A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539178(P2007−539178)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/038970
【国際公開番号】WO2006/050117
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.INS
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】