説明

リテーナ及び基板収納容器

【課題】乾燥作業の迅速化や基板の汚染防止を図ることのできるリテーナ及び基板収納容器を提供する。
【解決手段】基板収納容器の蓋体10と共に洗浄されるリテーナ20を、蓋体10に装着される縦長の枠体21と、この枠体21の一対の対向片22からそれぞれ突出して相互に接近する一対の弾性片と、この一対の弾性片に形成されて半導体ウェーハの前部周縁を保持する保持部30とから形成する。また、枠体21の各対向片22の蓋体10に対向する裏面長手方向に、複数の凹凸28を間隔をおいて交互に形成し、この複数の凹凸28により、リテーナ20の洗浄や乾燥時の水切り性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやガラスウェーハ等からなる基板を保持するリテーナ及び基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の基板収納容器は、図示しないが、丸い精密基板である半導体ウェーハを複数枚整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面部を手動操作あるいは自動操作により開閉する着脱自在の蓋体と、この蓋体の裏面に深く装着されて半導体ウェーハの端部周縁である前部周縁を保持部を介し保持するリテーナとを備えて構成されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
蓋体とリテーナとは、一方に凹部が、他方には凸部がそれぞれ形成され、これら凹部と凸部との係合により蓋体にリテーナが面接触して装着固定される。また、リテーナは、枠体内の左右水平方向に伸びる弾性片を備え、この弾性片に、半導体ウェーハの前部周縁を保持する保持部が一体形成されている。
【特許文献1】特開2002−353301号公報
【特許文献2】特開2005−320028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、蓋体の裏面にリテーナが面接触するので、洗浄水を循環させる洗浄装置により蓋体を洗浄して乾燥させる場合に、リテーナに洗浄水が少なからず付着したり、溜まることとなり、この結果、乾燥作業の遅延を招いたり、残留した洗浄水により半導体ウェーハが汚染してしまうという問題がある。
本発明は上記に鑑みなされたもので、乾燥作業の迅速化や基板の汚染防止を図ることのできるリテーナ及び基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、枠体と、この枠体の一対の対向片からそれぞれ突出する一対の弾性片と、この一対の弾性片に形成されて基板の端部周縁を保持する保持部とを備え、洗浄水により洗浄されるものであって、
枠体を、間隔をおいて対向する一対の対向片と、この一対の対向片の両端部間にそれぞれ架設される一対の架設片とから形成し、これら対向片と架設片の少なくともいずれか一方の裏面に、凹凸部を形成して洗浄水の水切り性を向上させるようにしたことを特徴としている。
【0006】
なお、枠体の対向片と架設片の少なくともいずれか一方に、枠体を変形させるバネ性の屈曲部を形成するとともに、位置決め部を形成することができる。
また、一対の弾性片を、枠体の一対の対向片からそれぞれ突出して相互に接近する一対の第一弾性片と、この一対の第一弾性片の屈曲した自由端部に支持されて基板を保持する第二弾性片とから形成し、
第一弾性片の自由端部よりも枠体の対向片寄りの外側に第二弾性片の外側端部を位置させ、この外側端部と保持部とを一体化することができる。
【0007】
また、保持部は、一対の傾斜面により断面略V字形あるいは略Y字形の保持溝を形成する突起を備え、この突起の一対の傾斜面を上下左右非対称に形成することが可能である。
また、保持部を第一、第二の保持部に分割してこれらを第二弾性片に間隔をおいて形成し、第一の保持部よりも第二の保持部を第二弾性片の外側端部側に位置させることも可能である。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体の開口部を、洗浄水により洗浄される着脱自在の蓋体で開閉するものであって、
蓋体の基板に対向する対向面に、請求項1ないし5いずれかに記載のリテーナを取り付け、蓋体の対向面にリテーナの凹凸部を向けるようにしたことを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における枠体は、縦長でも良いし、横長でも良い。一対の弾性片や第一弾性片は、複数対でも良い。また、基板には、少なくとも各種サイズの半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、液晶基板等が含まれる。弾性片を形成する第二弾性片は、単数複数を特に問うものではない。保持部を形成する第一の保持部も、それぞれ単数複数を特に問うものではない。
【0010】
さらに、基板収納容器は、フロントオープンボックスタイプ、基板をカセットを介して収納するトップオープンボックスタイプ、ボトムオープンボックスタイプ、透明、不透明、半透明等を問うものではない。この場合、リテーナは、基板収納容器のタイプに応じ、フロントリテーナやリヤリテーナ等として使用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、枠体に凹凸部を形成して洗浄水の水切り性を向上させるので、乾燥作業の迅速化や基板の汚染防止を図ることができるという効果がある。
【0012】
また、一対の弾性片を、枠体の一対の対向片からそれぞれ突出して相互に接近する一対の第一弾性片と、この一対の第一弾性片の屈曲した自由端部に支持されて基板を保持する第二弾性片とから形成し、第一弾性片の自由端部よりも枠体の対向片寄りの外側に第二弾性片の外側端部を位置させ、この外側端部と保持部とを一体化すれば、基板の保持領域を拡大して基板を安定して継続保持することができる。したがって、基板の回転を抑制することができ、基板の回転に伴い保持部が削られたり、基板の汚染や損傷を招くおそれが少ない。
【0013】
さらに、保持部の突起の一対の傾斜面を上下左右対称に形成するのではなく、上下左右非対称に形成すれば、一つの保持溝を形成する傾斜面が、基板と接触することのできる領域が、上下左右対称に形成する場合よりも広くなるので、基板と保持溝との位置がずれている場合でも、確実に基板を保持溝に収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図10に示すように、複数枚の丸い半導体ウェーハWを収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面部を開閉する蓋体10と、収納された半導体ウェーハWに対向する蓋体10の対向面である裏面にフロントリテーナとして装着され、半導体ウェーハWを保持するリテーナ20とを備え、このリテーナ20の枠体21から突出する弾性片29を、複数の第一弾性片31と第二弾性片33とに分割し、各第一弾性片31にダンパー機能を付与するようにしている。
【0015】
複数枚の半導体ウェーハWは、例えば25枚あるいは26枚からなり、容器本体1に整列収納される。各半導体ウェーハWは、例えば直径300mmの薄い円板状の単結晶シリコンからなり、表裏面がそれぞれ鏡面に形成され、周縁部に、整列を容易にする平面略半楕円形のノッチnが切り欠かれており、このノッチnが容器本体1の開口した正面部側に通常位置する。このノッチnの近傍には、図示しない読取装置に読み取られるバーコードが周縁に沿って形成される。このような半導体ウェーハWは、その両側部周縁が図示しない専用のロボットによりハンドリングされた状態で容器本体1に出し入れされる。
【0016】
基板収納容器の容器本体1と蓋体10とは、例えばポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリエーテルイミド等の成形材料を使用して成形される。これらの成形材料の中では、透明性や高剛性に優れるポリカーボネートの選択が最適である。これらの成形材料には、帯電防止剤、カーボンや金属繊維等の導電性付与剤、紫外線吸収剤、ガラス繊維や炭素繊維等の補強剤が選択的に適量添加される。
【0017】
容器本体1は、図1に示すように、正面部の開口したフロントオープンボックスタイプに形成され、複数枚の半導体ウェーハWを所定の間隔で上下に整列させた状態で収納する。この容器本体1は、その内部両側に、相互に対向して半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対のティースが上下方向に所定のピッチで配列される。
【0018】
各ティースは、図示しないが、容器本体1の内側部に一体形成されて半導体ウェーハWの側部周縁に沿う平面略長方形、略く字形、略半円弧形の棚板と、この棚板上に一体形成される平坦な基板接触部とを備え、棚板の容器本体1正面部側には、容器本体1の内壁面と共に半導体ウェーハWの位置を規制する段差が形成される。このような複数対のティースは、半導体ウェーハWの両側部周縁を高精度に水平に支持し、半導体ウェーハWが上下方向に傾斜して専用のロボットによる出し入れが困難になるのを防止するよう機能する。
【0019】
容器本体1の底面の前部両側と後部中央とには、基板収納容器を搭載する加工装置(図示せず)上に位置決めされる位置決め具(図示せず)がそれぞれ一体形成され、各位置決め具が断面略M字形、略V字形、略Y字形等に形成される。また、容器本体1の天井中央部には、図示しない自動搬送機構(オーバーヘッドホイストトランスファー)に把持される平面略矩形のロボティックフランジ(図示せず)が着脱自在に装着される。また、容器本体1の両側壁の上下間には、上下方向に斜めに伸びる手動操作用のハンドル2がそれぞれ架設される。
【0020】
蓋体10は、図1や図2に示すように、容器本体1の正面部に対応する正面略矩形の筐体11と、この筐体11の開口した表面左右両側部に装着されて露出する一対の表面プレートとを備え、これら筐体11と一対の表面プレートとの間に、外部からの操作により作動する施錠用の施錠機構が内蔵されており、容器本体1の正面部に蓋体開閉装置によりシールガスケット12を介し着脱自在に嵌合される。
【0021】
蓋体10の筐体11は、基本的には外周面にエンドレスのシールガスケット12を備えた断面略皿形に形成され、表面の中央部が正面略矩形に膨出形成されており、この表面中央部の膨出に伴い、両側部が分離されて施錠機構内蔵用の空間を区画形成するとともに、裏面中央部13が略矩形に凹んでリテーナ20装着用の空間を形成する(図7ないし図10参照)。
【0022】
シールガスケット12は、例えば弾性のポリエステル系熱可塑性エラストマー等を使用して枠形に成形され、蓋体10の嵌合時に圧縮変形されてシール機能を発揮する。また、施錠機構は、図示しないが、筐体11表面の左右両側部中央にそれぞれ軸支されて外部から回転操作される一対の回転プレートと、各回転プレートに連結されてその回転に伴い上下方向にスライドする一対の進退動作プレートと、各進退動作プレートの先端部に回転可能に連結軸支されて容器本体1の正面部内周縁に穿孔された係止穴に係止する係止爪とを備え、蓋体10の表面プレートに被覆される。
【0023】
筐体11の凹んだ裏面中央部13には、リテーナ20の枠体21を位置決めする左右一対の位置決め突起14が配設されるとともに、リテーナ20の第一弾性片31に対向する複数のストッパ15が突設され、各ストッパ15が第一弾性片31の過度の変形や破損を規制するよう機能する(図7、図9、図10参照)。このストッパ15は、円柱形や台形等、任意の形に形成される。また、筐体11の裏面中央部13の左右両側には図2に示すように、枠体21の表面に着脱自在に係合する複数の係合爪16が上下方向に配列され、各係合爪16がJ字形やL字形等に屈曲形成される。
【0024】
リテーナ20は、図2ないし図5等に示すように、蓋体10に装着される縦長の枠体21と、この枠体21の一対の対向片22からそれぞれ突出して相互に接近する一対の弾性片29と、この一対の弾性片29に形成されて半導体ウェーハWの前部周縁を保持する保持部30とを備え、一対の弾性片29が、枠体21の一対の対向片22からそれぞれ突出する一対の第一弾性片31と、この一対の第一弾性片31の屈曲した自由端部32に支持されて半導体ウェーハWの周縁方向に伸びてこれを保持する第二弾性片33とから形成されるとともに、保持部30が第一、第二の保持部35・36に分割されており、蓋体10と共に、あるいは蓋体10とは別に単独で湿式洗浄されたり、乾燥作業に供される。
【0025】
リテーナ20は、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリエーテルイミド等の合成樹脂、ポリエステル系の熱可塑性能エラストマー、ポリウレタン系の熱可塑性能エラストマー等の成形材料を使用して成形される。これらの成形材料の中では、成形時のアウトガスや損傷の少ないポリブチレンテレフタレートの選択が最適である。これらの成形材料には、帯電防止剤、カーボンや金属繊維等の導電性付与剤、紫外線吸収剤、ガラス繊維や炭素繊維等の補強剤が選択的に適量添加される。
【0026】
リテーナ20の枠体21は、図2ないし図5、図8等に示すように、間隔をおき平行に対向して蓋体10の上下方向に伸びる一対の対向片22と、この一対の対向片22の上下両端部間にそれぞれ水平に架設される一対の架設片23とを備え、各対向片22の裏面中央部に、蓋体10の位置決め突起14に挟持嵌合して位置決め精度を向上させる位置決め部24が凹み形成され、各架設片23には、半導体ウェーハW方向に突出するバネ性の屈曲部25が形成されており、蓋体10の凹んだ裏面中央部13に複数の係合爪16を介し着脱自在に装着される。
【0027】
枠体21の表面四隅部には、半導体ウェーハW方向に伸びる握持操作可能な正面略I字形のリブ26がそれぞれ突出形成され、この複数のリブ26が、取付性を向上させたり、リテーナ20のストック時に保持部30が荷重の作用で変形するのを有効に防止する。また、複数のリテーナ20の積層時には、スタッキング機能を発揮したり、第一弾性片31や第二弾性片33の接触に伴う変形を防止する。各リブ26の高さは、複数のリテーナ20の積層時にリテーナ20と隣接する他のリテーナ20における保持部30が非接触となる高さが好ましい。
【0028】
各対向片22の表面縁には図3に示すように、リテーナ20の着脱性を向上させる複数の逃がし溝27が間隔をおいて配列形成され、逃がし溝27の形成されていない領域に筐体11の係合爪16が外側から着脱自在に係合する。また、各対向片22の蓋体10に対向する裏面長手方向には図8に示すように、複数の凹凸28が間隔をおいて交互に形成され、この複数の凹凸28がリテーナ20の洗浄や乾燥時の水切り性を向上させる。
【0029】
各屈曲部25は、図5や図7に示すように、架設片23の中央部に略U字形に湾曲形成され、握持操作されることにより狭まるよう変形してリテーナ20を断面略へ字形に撓ませ、蓋体10の裏面中央部13にリテーナ20を係合爪16を介し装着する装着作業を円滑にする。
【0030】
一対の第一弾性片31は、図5ないし図7等に示すように、枠体21の一対の対向片22からそれぞれ内方向に突出し、間隔をおき相互に接近しており、枠体21の上下長手方向に所定のピッチで複数配列される。各第一弾性片31は、図5ないし図7等に示すように、半導体ウェーハWの動きに追従して変形可能な細長い略L字形に屈曲して枠体21の架設片23に平行に配置され、短い自由端部32が半導体ウェーハW方向に指向しており、屈曲部の裏面が蓋体10のストッパ15に間隔をおいて対向する。
【0031】
第二弾性片33は、図5ないし図7等に示すように、半導体ウェーハWの前部周縁に沿うようやや屈曲した板片に形成され、中央部が第一弾性片31方向に略U字形に浅く凹み形成される。この第二弾性片33は、一対の第一弾性片31の屈曲した自由端部32間に架設され、枠体21の架設片23や第一弾性片31に平行に配置されるとともに、第一弾性片31の自由端部32よりも枠体21の対向片22寄りの外側に外側端部34が位置しており、半導体ウェーハWを第一、第二の保持部35・36を介して保持する。
【0032】
第一、第二の保持部35・36は、同図に示すように、第二弾性片33の中央部からやや左右外方向にずれた位置、換言すれば、第一の保持部形成領域37に左右一対の第一の保持部35がそれぞれ一体形成され、第二弾性片33の両外側端部34、換言すれば、第二の保持部形成領域38に第二の保持部36がそれぞれ一体形成されており、第一の保持部35よりも第二の保持部36が第二弾性片33の外側端部34に位置する。
【0033】
第一、第二の保持部35・36は、図2、図5ないし図7に示すように、相対向する一対の傾斜面39により断面略V字形あるいは略Y字形を呈する奥細りの保持溝40を形成する突起41をそれぞれ備え、この突起41の保持溝40に半導体ウェーハWの前部周縁が案内され、位置決め挟持される。
【0034】
一対の第一の保持部35は、図5ないし図7、図9等に示すように、第二の保持部36よりも先に半導体ウェーハWのノッチnを挟んだ状態で半導体ウェーハWの中心線近傍を保持するよう機能する。この第一の保持部35は、略ブロック形を呈する突起41の一対の傾斜面39が上下左右非対称に形成され、この一対の傾斜面39が第二の保持部36における一対の傾斜面39よりも高く形成される。すなわち、この突起41の一対の傾斜面39は、確実に半導体ウェーハWを保持溝40に導く観点から一方が高く、他方が低く形成され、しかも、半導体ウェーハWの平面の中心線を挟んで左右に非対称を呈する。
【0035】
各第二の保持部36は、図5ないし図7、図9等に示すように、第一の保持部35により所定の位置に整列した半導体ウェーハWを安定して保持する観点から、突起41やその保持溝40が半導体ウェーハWの周縁方向に伸長して形成される。この第二の保持部36の高さは、蓋体10の裏面から突出しない高さに調整される。
【0036】
上記構成において、蓋体10にリテーナ20を装着する場合には、先ず、枠体21の一対の屈曲部25をそれぞれ握持操作して枠体21を断面略へ字形に変形させ、この変形した枠体21を蓋体10の裏面中央部13に係合爪16と干渉しないよう積層し、その後、各屈曲部25の握持操作を解除して枠体21を元の状態や幅に復帰させれば、蓋体10の係合爪16と逃がし溝27の形成されていない領域とが係合することにより、リテーナ20を適切、かつ強固に装着することができる。
【0037】
上記構成によれば、リテーナ20に一対の屈曲部25をそれぞれ形成して弾性を予め付与しておくので、リテーナ20の枠体21を大きく強く無理に変形させる必要が全くない。したがって、リテーナ20の装着作業時に必要以上の力を誤って加えてしまうことにより、リテーナ20の変形を招くおそれがきわめて少ない。
【0038】
また、例えリテーナ20を大型に形成しても、係合爪16や逃がし溝27等を多数形成する必要がないので、装着作業の円滑化や容易化を図ることができ、作業効率を著しく向上させることができる。また、枠体21の外周縁に複数の逃がし溝27を配列形成するので、この逃がし溝27を活用して握持操作すれば、装着されたリテーナ20の取り外し作業の簡易化や容易化が大いに期待できる。
【0039】
次に、複数枚数の半導体ウェーハWを整列収納した容器本体1の開口した正面部に蓋体10をリテーナ20を介して嵌合する場合について説明する。この場合、半導体ウェーハWの前部周縁に第一の保持部35の傾斜面39が先ず接触し、この状態で半導体ウェーハWの位置を傾斜面39に沿わせて調整しながら、リテーナ20が半導体ウェーハWの中心線に沿って接近し、第二の保持部36の傾斜面39も半導体ウェーハWと接触する。この状態で第一、第二の保持部35・36の保持溝40内に半導体ウェーハWが収納される。
【0040】
容器本体1の開口した正面部に蓋体10が完全に嵌合した状態においては、第一、第二の保持部35・36を備えた第二弾性片33が、半導体ウェーハWの中心線上を半導体ウェーハWの形状に沿って平行に移動し、半導体ウェーハWが保持される状態となる。このとき、第二弾性片33を支持する第一弾性片31が蓋体10の厚さ方向に変形し、この変形に伴う反発力が第二弾性片33に伝達されることにより、半導体ウェーハWが強固に保持される。
【0041】
次に、基板収納容器の輸送時の振動や衝撃等が半導体ウェーハWに作用し、半導体ウェーハWにずれが生じる場合について説明すると、この場合、半導体ウェーハWの左右方向のいずれかに力(図10の矢印参照)が作用するが、このとき、第二弾性片33を支持する一対の第一弾性片31が左右非対称に個々に変形して応力を緩和するので、第一、第二の保持部35・36が半導体ウェーハWとの接触状態を維持することになる。
【0042】
この結果、半導体ウェーハWが第一、第二の保持部35・36の保持溝40から外れたり、回転するのを有効に抑制防止することができる。また、半導体ウェーハWとの接触状態を維持するので、半導体ウェーハWとの擦れに伴うパーティクルの発生を効果的に低減することができる。
【0043】
上記構成によれば、対向片22の蓋体10に対向する裏面長手方向に複数の凹凸28を形成するので、循環する洗浄水により蓋体10を洗浄して乾燥させる場合に、リテーナ20に洗浄水が付着して溜まるのを抑制防止することができる。この結果、乾燥作業の遅延を招いたり、残留した洗浄水により半導体ウェーハWが汚染してしまうおそれがない。また、複数の凹凸28により、リテーナ20の成形時の成形収縮を緩和して変形を抑制することが可能になる。したがって、半導体ウェーハWと第一、第二の保持部35・36との接触精度を著しく向上させることが可能になる。
【0044】
また、リテーナ20の弾性片29を第一弾性片31と第二弾性片33とに分割し、第一弾性片31のみを変形させ、第二弾性片33における第一、第二の保持部35・36の半導体ウェーハWとの相対位置に変更を来たさないようにするので、半導体ウェーハWの保持領域を拡大し、半導体ウェーハWを安定して継続保持することができる。したがって、半導体ウェーハWの回転を規制することができ、半導体ウェーハWの回転に伴い第一、第二の保持部35・36が削られてパーティクルを発生させたり、半導体ウェーハWの汚染や表面の損傷を招くおそれがない。
【0045】
また、第一、第二の保持部35・36の保持力を大きくして半導体ウェーハWの回転を規制する必要もないので、容器本体1の正面部に蓋体10を嵌合する際に大きな抵抗が生じることがない。これにより、容器本体1に蓋体10を円滑に嵌合することができる。さらに、第一の保持部35を一対として第二の保持部36との間に間隔を形成するので、半導体ウェーハWのバーコードの目視確認や読み取り作業に何ら支障を来たすことがない。
【0046】
次に、図11、図12は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、リテーナ20の弾性片29を第一弾性片31と第二弾性片33とに分割せず、各弾性片29を略L字形に形成してその直線的な自由端部上に保持部30を一体形成するようにしている。
蓋体10の裏面中央部13の両側には、複数の凹部が配列して穿孔される。また、リテーナ20の枠体21には、蓋体10の凹部に干渉する複数の係合爪16が並べて突出形成される。また、各弾性片29の裏面には、各弾性片29の過剰な変形や破損を防止するストッパ15が選択的に形成される。
【0047】
保持部30は、相対向する一対の傾斜面39により断面略V字形あるいは略Y字形を呈する奥細りの保持溝40を形成する突起41を備え、この突起41の保持溝40に半導体ウェーハWの前部周縁が案内され、位置決め挟持される。この保持部30の一対の傾斜面39は、上下左右非対称に形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、リテーナ20の構成の多様化が期待できるのは明らかである。
【0048】
次に、図13ないし図15は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、基板収納容器を、上面の開口した容器本体1Aに複数枚の半導体ウェーハWを整列用のカセット3を介し整列収納するトップオープンボックスタイプとし、容器本体1Aとカセット3の開口上部を覆う蓋体10Aの天井内面に、水平方向に並んだ複数枚の半導体ウェーハWの端部周縁である上部周縁を保持するリテーナ20を着脱自在に装着するようにしている。
【0049】
リテーナ20の枠体21は、図14や図15に示すように、相対向する一対の架設片23の間に、対向片22に平行な一対の平行片45がそれぞれ間隔をおいて架設され、各対向片22と各平行片45との間には、これら22・45の長手方向に並ぶ複数の弾性片29が架設されており、各弾性片29には、半導体ウェーハWの上部周縁を保持する保持部30が一体形成される。
【0050】
一対の平行片45の間には、枠体21の略中央部に位置する矩形の空間46が細長く区画形成される。また、各弾性片29は、半導体ウェーハWの上部周縁に接近するよう湾曲形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、リテーナ20の構成の多様化が期待できるのは明らかである。
【0051】
なお、上記実施形態では、直径300mmの半導体ウェーハWを示したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば直径200mmや450mmの半導体ウェーハWでも良い。また、容器本体1の内部両側にティースをそれぞれ一体形成したが、容器本体1の内部両側に別体のティースを固定部品や摩擦係合等を利用して後から取り付けても良い。また、枠体21の表面に、正面略L字形等のリブ26を必要数突出形成しても良い。また、架設片23の蓋体10に対向する裏面に複数の凹凸28を形成しても良い。また、屈曲部25を略C字形や略V字形等に形成することもできる。
【0052】
また、架設片23全体を弧形に湾曲させてバネ性の屈曲部25を形成しても良いし、架設片23ではなく、対向片22にバネ性の屈曲部25を形成することもできる。また、位置決め突起14や位置決め部24は、左右対称に配設したり、あるいは左右非対称に配設してリテーナ20装着の際の方向性を向上させることもできる。
【0053】
また、位置決め突起14や位置決め部24を左右対称に配設し、枠体21に、上下方向の方向性を示す凹凸等を新たに形成することも可能である。また、蓋体10の裏面中央部13に位置決め部24を凹み形成し、枠体21の対向片22に位置決め突起14を形成することも可能である。さらに、第一弾性片31をJ字形、S字形、Z字形等に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体の裏面を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明に係るリテーナの実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係るリテーナの実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【図5】本発明に係るリテーナの実施形態を模式的に示す端面説明図である。
【図6】本発明に係るリテーナの実施形態を模式的に示す要部斜視説明図である。
【図7】本発明に係るリテーナの実施形態における装着作業状態を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体とリテーナとの位置決め状態を模式的に示す断面説明図である。
【図9】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の実施形態における半導体ウェーハの保持状態を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の第2の実施形態における蓋体等を模式的に示す説明図である。
【図12】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の第2の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図13】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の第3の実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図14】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の第3の実施形態におけるリテーナを模式的に示す正面説明図である。
【図15】本発明に係るリテーナ及び基板収納容器の第3の実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 容器本体
1A 容器本体
10 蓋体
10A 蓋体
11 筐体
13 裏面中央部
14 位置決め突起
15 ストッパ
16 係合爪
17 固定突起
20 リテーナ
21 枠体
22 対向片
23 架設片
24 位置決め部
25 屈曲部
26 リブ
27 逃がし溝
28 凹凸
29 弾性片
30 保持部
31 第一弾性片
32 自由端部
33 第二弾性片
34 外側端部
35 第一の保持部
36 第二の保持部
39 傾斜面
40 保持溝
41 突起
45 平行片
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、この枠体の一対の対向片からそれぞれ突出する一対の弾性片と、この一対の弾性片に形成されて基板の端部周縁を保持する保持部とを備え、洗浄水により洗浄されるリテーナであって、
枠体を、間隔をおいて対向する一対の対向片と、この一対の対向片の両端部間にそれぞれ架設される一対の架設片とから形成し、これら対向片と架設片の少なくともいずれか一方の裏面に、凹凸部を形成して洗浄水の水切り性を向上させるようにしたことを特徴とするリテーナ。
【請求項2】
枠体の対向片と架設片の少なくともいずれか一方に、枠体を変形させるバネ性の屈曲部を形成するとともに、位置決め部を形成した請求項1記載のリテーナ。
【請求項3】
一対の弾性片を、枠体の一対の対向片からそれぞれ突出して相互に接近する一対の第一弾性片と、この一対の第一弾性片の屈曲した自由端部に支持されて基板を保持する第二弾性片とから形成し、
第一弾性片の自由端部よりも枠体の対向片寄りの外側に第二弾性片の外側端部を位置させ、この外側端部と保持部とを一体化するようにした請求項1又は2記載のリテーナ。
【請求項4】
保持部は、一対の傾斜面により断面略V字形あるいは略Y字形の保持溝を形成する突起を備え、この突起の一対の傾斜面を上下左右非対称に形成した請求項1、2、又は3記載のリテーナ。
【請求項5】
保持部を第一、第二の保持部に分割してこれらを第二弾性片に間隔をおいて形成し、第一の保持部よりも第二の保持部を第二弾性片の外側端部側に位置させるようにした請求項4記載のリテーナ。
【請求項6】
基板を収納する容器本体の開口部を、洗浄水により洗浄される着脱自在の蓋体で開閉する基板収納容器であって、
蓋体の基板に対向する対向面に、請求項1ないし5いずれかに記載のリテーナを取り付け、蓋体の対向面にリテーナの凹凸部を向けるようにしたことを特徴とする基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−124063(P2009−124063A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298979(P2007−298979)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】