説明

ループ型ヒートパイプ及び電子装置

【課題】 冷却能力の高いループ型ヒートパイプを小さなスペース内で形成することを課題とする。
【解決手段】 発熱体20が基板10に搭載される。発熱体20は蒸発部30に収容される。蒸発部30に接続された蒸気流路40が基板10中に形成される。蒸発部30に接続された液流路60が基板10中に形成される。蒸気流路40と液流路60との間に凝縮部50が設けられる。蒸発部30、蒸気流路40、凝縮部50,及び液流路60は、密封された循環流路を形成し、循環流路に冷媒が封入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態はヒートパイプの原理を用いて電子部品を冷却する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の電子機器の多くは、大規模半導体集積回路(LSI)を用いて電子回路を形成した電子回路基板を有している。LSIは動作時に発熱するため、放熱機構を設けてLSIを冷却することが多い。例えば、LSIパッケージの放熱面にヒートスプレッダやヒートシンク等の放熱部材を接触させて、LSIパッケージ内部で発生した熱を放熱部材を介して周囲に放出することで、LSIパッケージを冷却することができる。
【0003】
LSIの高集積化に伴いLSIの発熱量が増大しており、放熱部材による放熱では冷却能力が足りない場合がある。そこで、放熱部材の代わりにヒートパイプによる熱移動を利用した放熱機構によりLSIパッケージを冷却することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1には、密閉容器内部に冷媒を封入して形成した沸騰冷却装置をCPU等の発熱体に取り付けることで、発熱体を冷却することが開示されている。密閉容器内部に気化部が設けられ、ウィックを通じて液体冷媒が気化部に供給される。気化部で気化して気体となった冷媒は放熱部へと流れ、放熱部において再び液体冷媒となってウィックに供給される。発熱体は気化部が設けられた部分の密閉容器の外側に接触するように取り付けられ、気化部での冷媒の気化熱が発熱体から奪われることで発熱体が冷却される。
【0005】
特許文献2には、CPU等の発熱体が装着された容器の内面に沿ってウィックを配置し、容器内に冷媒を封入して形成した冷却装置が開示されている。容器内部の液体冷媒はウィックを伝わって発熱体が装着された部分に移動し、ここで液体冷媒が熱を受けて気化して気体冷媒となる。気体冷媒は、容器内部に設けられた複数の通路に沿って移動して行く途中で液体冷媒となる。液体冷媒は再びウィックを伝わって移動し発熱体が装着された部分で再び気化する。この冷媒の循環サイクルが繰り返されることで、発熱体が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−330329号公報
【特許文献2】特開2008−281253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1,2に開示された放熱機構は、発熱体に取り付けられることで発熱体を冷却するようになっている。放熱機構は、発熱体から熱を吸収する受熱部(蒸発部)と放熱部(凝縮部)とが一体となっており、CPUやLSI等の発熱体に比べて大きな装置となる。したがって、電子部品が高密度実装された回路基板上において、このような放熱機構を配置するスペースを確保できないおそれがある。
【0008】
そこで、蒸発部(冷媒が蒸発する部分)と凝縮部(冷媒が凝縮する部分)とを分離し、これらの間をつなぐ冷媒通路を設けて形成したループ型ヒートパイプ(LHP)を用いることが提案されている。
【0009】
LHPの蒸発部はLSI等の発熱体に熱的に接触し、凝縮部は熱を放出できる位置に配置される。蒸発部の内部に多孔質体(ウィックと称される)が設けられ、凝縮部から液管を流れてきた液体冷媒はウィックに入り、発熱体からの熱を受けて蒸発する。液体冷媒が蒸発して発生した気体冷媒は、蒸気管を通って凝縮部に供給される、凝縮部において放熱して再び液体冷媒に戻る。このように、冷媒が液体と気体に変化しながらLHP内を循環することで、蒸発部において発熱体から熱を吸収し、その熱を凝縮部において周囲に放出する。すなわち、循環する冷媒の蒸発潜熱を利用することで、発熱体を効率的に冷却することができる。
【0010】
しかしながら、LSIの高集積化及び高機能化に伴ってLSIパッケージが大型化し、その発熱量も増大しており、これに見合った大きさの蒸発部を有するLHPを配置するスペースの確保も難しくなってきている。すなわち、大型のLSIパッケージに取り付ける場合には、蒸発部もLSIパッケージの大きさに合わせて大きくしなければならず、また、大きな発熱量を吸収するためには蒸発部も大きくしなければならない。蒸発部が大型となると、凝縮部やこれらを繋ぐ配管(液管、蒸気管)も同様に大型となり、LHPを配置するためのスペースの確保が難しくなる。
【0011】
そこで、冷却能力の高いLHPを小さなスペース内で形成することのできる技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によれば、基板に搭載された発熱体と、該発熱体を収容した蒸発部と、前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された蒸気流路と、前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された液流路と、前記第蒸気流路と前記液流路との間に設けられた凝縮部とを有し、前記蒸発部、前記上記流路、前記液流路、及び前記凝縮部は、密封された循環流路を形成し、該循環流路に冷媒が封入されたループ型ヒートパイプが提供される。
【発明の効果】
【0013】
基板の一部を用いてループ型ヒートパイプを形成するので、ループ型ヒートパイプが占有する面積を小さくすることができ、限られたスペースにおいて冷却能力の高いループ型ヒートパイプを形成することができる。これにより、ループ型ヒートパイプを用いた電子装置全体のサイズを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態によるループ型ヒートパイプが設けられた回路配線基板の平面図である。
【図2】一実施形態によるループ型ヒートパイプの全体構成を示す図である。
【図3】蒸発部の内部構造を示す図であり、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】蒸発部の内部構造を示す図であり、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】蒸発部の内部構造を示す図であり、図3のV−V線に沿った断面図である。
【図6】蒸発部の内部構造を示す図であり、図3のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】ウィックに溝を設けた場合の蒸発部の内部構造を示す図であり、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図8】ウィックに溝を設けた場合の蒸発部の内部構造を示す図であり、図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図9】ループ型ヒートパイプが組み込まれた電子装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は一実施形態によるループ型ヒートパイプが設けられた回路配線基板の平面図である。図2は一実施形態によるループ型ヒートパイプの全体構成を示す図である。
【0017】
一実施形態によるループ型ヒートパイプ(以下、LHPと称することもある)は、電子部品及び電気部品が搭載される回路配線基板10を利用して形成される。回路配線基板10に搭載されたLSIやCPU等の電子部品である半導体パッケージ20(例えば、図3参照)は、蒸発器容器32により覆われる。蒸発器容器32により覆われて密閉された空間(密閉空間)が蒸発部30となり、冷媒が蒸発して気化する部分となる。
【0018】
回路配線基板10内に蒸気流路40が形成され、蒸気流路40の一端は蒸発部30に接続され、他端は凝縮器配管52に接続されている。また、回路配線基板10内に液流路60が形成され、液流路60の一端は蒸発部30に接続され、他端は凝縮器配管52に接続されている。
【0019】
凝縮器配管52の一部には放熱フィン54が取り付けられ、この部分が凝縮部50となり、冷媒が配管内部で凝縮して液化する部分となる。
【0020】
なお、図1において、凝縮器配管52は回路配線基板10の側面から延出しているが、凝縮器配管52が回路配線基板10に接続される位置は、側面に限られることなく、回路配線基板10の表面であっても裏面であってもよい。また、凝縮器配管52を長くして所望の形状に曲げることで、放熱フィン54が設けられた凝縮部50を所望の位置に配置することができる。
【0021】
図2に示すように、ループ型ヒートパイプ内では、冷媒が気化と液化を繰り返しながら循環する。蒸発部30において、液相の冷媒(液体冷媒と称する)は半導体パッケージ20からの熱を吸収して気化し、気相の冷媒(気体冷媒と称する)となる。蒸発部30内で発生した気体冷媒は蒸気流路40を通じて凝縮器配管52の凝縮部50に流れ込む。凝縮部50に流れ込んだ気体冷媒は冷却され凝縮して液体冷媒となる。液体冷媒は、液流路60を通じて蒸発部30に供給される。
【0022】
以上のように、ループ型ヒートパイプ内で冷媒が液化及び気化を繰り返すことで、冷媒が気化する蒸発部30内の圧力は、冷媒が凝縮する凝縮部50内の圧力より高くなり、ループ型ヒートパイプ内で圧力差が生じる。この圧力差により冷媒はループ型ヒートパイプ内で図2の矢印で示すように循環する。冷媒の循環サイクルにおいて、蒸発器30内の液体冷媒が気化する際に半導体パッケージ20から気化熱を奪うことで、半導体パッケージ20は冷却される。
【0023】
次に、上述のループ型ヒートパイプに関して、配線回路基板10の一部を利用して形成された部分について説明する。
【0024】
まず、蒸発部30について説明する。図3は回路配線基板10の一部に形成された蒸発部30の内部構造を示す図であり、図1のIII−III線に沿った断面図である。図4は蒸発部30の内部構造を示す図であり、図1のIV−IV線に沿った断面図である。図5は蒸発部30の内部構造を示す図であり、図3のV−V線に沿った断面図である。図6は蒸発部30の内部構造を示す図であり、図3のVI−VI線に沿った断面図である。図3乃至図6において、液体冷媒の流れが実線矢印で示されており、気体冷媒の流れが点線矢印で示されている。
【0025】
回路配線基板10に半導体パッケージ20が実装される。回路配線基板10の材料としては、シリコン、樹脂、セラミック等、どのような材料でもよいが、後述するように冷媒を密閉する必要があるため、冷媒に反応ぜず、また、冷媒を透過しない材料とすることが好ましい。あるいは、冷媒に接触する部分を、冷媒と反応しないような材料で覆っておくこととしてもよい。
【0026】
本実施形態では、半導体パッケージ20はBGA型パッケージであり、回路配線基板10に対してフリップチップ実装される。半導体パッケージ20はBGA型に限られず、放熱面を上にして実装できるものであれば、どのような型のパッケージでもよい。
【0027】
半導体パッケージ20の放熱面となる背面には、放熱板34が取り付けられている。放熱板34は、熱伝導性に優れた例えば金属製の板であり、半導体パッケージ20の背面に接触した状態で取り付けられる。半導体パッケージ20の背面から放熱板34への熱伝達が良くなるように、熱伝導性接着剤にて放熱板34を半導体パッケージ20の背面に接合することが好ましい。
【0028】
放熱板34の上面には、図3に示すように、凹部として複数の溝34aが形成されている。溝34aは、後述のように気化した冷媒(気体冷媒)が流れる流路となる。溝34aが形成された放熱板34の上にウィック36が配置される。ウィック36は、例えば金属やセラミックス等の焼結体により形成された平板状多孔質体であり、内部に連続した小さな孔又は通路が形成されている。この連続した孔又は通路に液体冷媒が入り込んで、毛細管現象により移動する。
【0029】
以上のように回路配線基板10上に配置された半導体パッケージ20、放熱板34及びウィック36は、蒸発器容器32により覆われる。蒸発器容器32は、例えばステンレス鋼等の金属板により形成された皿状の容器である。蒸発器容器32は回路配線基板10に接合され、蒸発器容器32と回路配線基板10との間に密閉空間が形成される。すなわち、この密閉空間内に半導体パッケージ20、放熱板34及びウィック36が配置された状態となる。蒸発器容器32の回路配線基板10への接合は、はんだ接合、ロウ付け、接着剤等を用いて行なわれる。Oリング等の弾性シール材を介して蒸発器容器32を回路配線基板10に機械的に固定してもよい。
【0030】
本実施形態では、発熱体の一例として半導体パッケージ20を冷却するために、上述の密閉空間に冷媒が封入される。このため、半導体パッケージ20に冷媒が接触しないように半導体パッケージ20を隔離する必要がある。そこで、半導体パッケージ20の周囲に包囲部材38を設けて、半導体パッケージ20を冷媒が流れる空間から隔離する。
【0031】
なお、上述の密閉空間に封入される冷媒として、水、エタノール等のアルコール類、代替フロン、炭化水素系冷媒(ブタン、ペンタン)等を用いることができる。
【0032】
包囲部材38は、半導体パッケージ20からの熱が周囲に放出されずに効率的に放熱板34に伝達されるように、断熱性に優れた材料で形成することが好ましい。また、包囲部材38は冷媒にも接触するため、冷媒と反応せず、また冷媒を透過しないような材料とすることが好ましい。そのような材料として、例えば、ガラス、セラミックス、フッ素樹脂等がある。樹脂材として、フッ素樹脂の他に、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いることもできる。
【0033】
包囲部材38は半導体パッケージ20及び放熱板34を包囲した状態で、回路配線基板10と放熱板34とに接着材等により接合され、内部に半導体パッケージ20を封止する。ただし、図4及び図5に示すように、包囲部材38は放熱板34の溝34aが開口している側面は覆わないようになっている。また、ウィック36は包囲部材38より上側に配置され、包囲部材38により隔離されないようになっている。
【0034】
以上のような構成の蒸発部30では、蒸発器容器32の内面と包囲部材38の外面により冷媒流路あるいは冷媒が流れる空間が形成される。
【0035】
一方、図4に示すように、回路配線基板10の内部に蒸気流路40及び液流路60が形成されている。蒸気流路40及び液流路60は、回路配線基板10の製造工程で形成される通路であり、例えば、回路配線基板10の製造工程の途中で基板に溝を形成し、その溝の上にさらに層を形成して溝の開口部分を塞ぐことで、形成することができる。あるいは、回路配線基板10の製造工程の途中で、予め製造した金属管を回路配線基板10に埋め込むこととしてもよい。
【0036】
液流路60は、蒸発部30に形成された液溜め部30aに接続される(図4,図6参照)。液溜め部30aは、半導体パッケージ20及び放熱板34を包囲する包囲部材の3辺の周囲に形成された空間であり、液溜め部30aの上側にはウィック36が延在している。したがって、液溜め部30aに流入した液体冷媒は、液溜め部30aに溜まってから上方のウィック36に吸い込まれ、ウィック36内を通って放熱板34の上方に移動する。液溜め部30aは、図5及び図6に示すようにコの字型となっており、比較的大きな容積を有する。このため、十分な量の液体冷媒を液溜め部30aに蓄えておくことができ、液体冷媒が連続してウィック36に供給されても、液体冷媒の枯渇を防ぐことができる。
【0037】
放熱板34には半導体パッケージ20の熱が伝わっており、温度が高くなっているため、ウィック36内の液体冷媒は放熱板34により加熱されて蒸発し、気体冷媒となる。言い換えれば、ウィック36内の液体冷媒は、放熱板34から気化熱を奪って気化する。これにより放熱板34は冷却され、放熱板34に熱的に接続されている半導体パッケージも冷却される。
【0038】
放熱板34の上のウィック36内で気化して発生した気体冷媒は、放熱板34の上面の複数の溝34aを流れて蒸気溜め部30bに入る。蒸気溜め部30bは、図5に示すように包囲部材38から外側に延在する分離部38aにより、液溜め部30aから隔離されており、液体冷媒が蒸気溜め部30bに流れ込まないようになっている。液溜め部30aには、回路配線基板10内に形成された蒸気流路40が接続されており、液溜め部30aに溜まった気体冷媒は蒸気流路40に流れ込む。言い換えれば、蒸発器容器を回路配線基板10に接合して形成された密閉空間は、包囲部材38の分離部38aにより、蒸気流路40が接続された側と、液流路が接続された側に分離されている。
【0039】
蒸気流路40に流れ込んだ気体冷媒は、蒸気流路40を流れて凝縮器配管52を通り、凝縮部50に入る。気体冷媒は凝縮部50で放熱して凝縮し、液体冷媒に変化する。凝縮部で生成された液体冷媒は、回路配線基板10内に形成された液流路60を通じて再び蒸発部30の液溜め部30aに流れ込む。
【0040】
以上のように、本実施形態によるループ型ヒートパイプは、蒸発部30と蒸気流路40と凝縮部50と液流路60とが繋がることで形成された冷媒の循環流路を有する。したがって、本実施形態によるループ型ヒートパイプ内において、冷媒は、蒸発部30にて気化するときの気化熱を半導体パッケージ20から奪い且つ半導体パッケージ20から奪った熱を凝縮部50で放出しながら、循環流路を循環する。これにより、半導体パッケージ20を効率的に冷却することができる。
【0041】
本実施形態では、蒸発部30において放熱板34に直接取り付けられたウィック36において液体冷媒が気化する。すなわち、ウィック36がヒートパイプの蒸発器に相当する部分である。したがって、本実施形態では、蒸発器を回路配線基板10内に組み込んだこととなり、従来のように蒸発器を含むヒートパイプを回路基板上の半導体パッケージに取り付けるためのスペースほど大きなスペースを必要としない。
【0042】
また、回路配線基板10とその上に実装した電子部品で形成される電子装置の厚みは、放熱板34とウィック36を覆う蒸発器容器32の突出高さのみが加わるだけとなる。すなわち、本実施形態によるループ型ヒートパイプを用いた電子装置の厚みは、回路配線基板10とは別個に作成したヒートパイプを半導体パッケージ20に取り付けたときの電子装置の厚みより小さくなる。
【0043】
さらに、本実施形態では、蒸気流路40及び液流路60が回路配線基板10内に形成されているので、蒸気流路40及び液流路60を形成する配管を回路配線基板10上に設ける必要は無く、その分のスペースも省くことができる。
【0044】
また、放熱板34がウィック36への伝熱部材として機能することで、従来の放熱板と蒸発器との間の界面に用いられている材料(TIM:Thermal Interface Material)を用いなくても、接触熱抵抗を低減できる。
【0045】
なお、図3乃至図6に示す例では、気化した液体冷媒を蒸気溜め部30bに流すために、放熱板34に凹部として複数の溝34aを設けているが、図7及び図8に示すように、ウィック36に凹部として複数の溝36aを設けることとしてもよい。
【0046】
図9は上述のループ型ヒートパイプが組み込まれた電子装置の平面図である。電子装置は、上述の回路配線基板10と、回路配線基板10を用いて形成されたループ型ヒートパイプとを有する。回路配線基板10には、半導体パッケージ20及び抵抗22、コンデンサ24、メモリ26、IC28等の他の電子部品が実装され、所定の機能を提供する回路が形成されている。半導体パッケージ20は、回路配線基板10を用いて形成されたループ型ヒートパイプにより冷却される。
【0047】
ここで、上述のループ型ヒートパイプを作成した実施例について説明する。
【0048】
(実施例1)
大きさ35mm×35mmのLSIパッケージの上に、インジウム(In)などからなる金属製の伝熱部材を介して銅(Cu)製の放熱板を取り付けた。放熱板の大きさは50mm×50mmであり,厚さは6mmであった。放熱板には幅2mm、深さ1mm、長さ40mmの溝を2mm間隔で7本形成した。この時、放熱板の外周は、PTFEなどの耐熱性樹脂により形成した包囲部材によって固定した。この放熱板の上に、SUS焼結金属からなる多孔質体を載置した。多孔質体の平均気孔半径5μmであり、空隙率は45%であった。多孔質体の大きさは55mm×55mmであり、厚さは2mmであった。これらを図3に示すように、ステンレス鋼(SUS)からなる容器で覆い、容器を回路配線基板にはんだ接合することによって蒸発部の封止を行なった。LSIパッケージ、放熱板及び包囲部材の外周部には、上述の実施形態のように流路構造を形成した。流路構造は、通常のビルドアップ配線基板の製造工程において、ドリル等でパターン形成した基板を張り合わせることで形成した。回路配線基板内に形成された液流路および蒸気流路は、凝縮部を有する凝縮器配管に接続した。発熱体であるLSIパッケージと凝縮部までの距離は300mm程度であり、密閉されたループ内に代替フロン(例えば、HMC-365mfc(沸点40℃))を封入してループ型ヒートパイプを形成した。
【0049】
従来の半導体装置では,放熱板の上に例えば高さ30mmのヒートシンクを取り付け、空冷によってLSIパッケージの冷却を行なっていたが、本実施例では、放熱板の上に、厚さ2mmの多孔質体と厚さ1mmの蒸発器容器があるだけである。すなわち、本実施例のループ型ヒートパイプを用いることで、従来と比較して、部品実装高さを1/10にすることができた。
【0050】
(実施例2)
大きさ30mm×30mmのLSIパッケージの上に,アルミナなどからなるフィラーを含有する樹脂ペースト状の伝熱部材を介してCu製の放熱板を取り付けた。放熱板の大きさは50mm×50mmであり、厚さは5mmであった。放熱板の外周は、PTFEなどの耐熱性樹脂により形成した支持部材によって固定した。この放熱板の上に、セラミックス焼結体からなる多孔質体を載置した。多孔質体の平均気孔半径は4μm、空隙率は40%であった。多孔質体の大きさは55mm×55mmであり、厚さは3mmであった。セラミックス多孔質体と放熱板の接触部には、幅2mm、深さ1mm、長さ40mmの溝を2mm間隔で7本形成した。放熱板およびそれを包囲する包囲部材、セラミックス多孔質体を図7に示すようにステンレス鋼(SUS)からなる容器で覆い、回路配線基板とはんだ接合することによって蒸発部の封止を行なった。LSIパッケージ、放熱板および包囲部材の外周部には、上述の実施形態のように流路構造を形成した。流路構造は、通常のビルドアップ配線基板の製造工程において、ドリル等でパターン形成された基板を張り合わせることで形成した。回路配線基板内に形成された液流路および蒸気流路は、凝縮部を有する凝縮器配管に接続した。発熱体であるLSIパッケージと凝縮部までの距離は300mm程度であった。密閉されたループ内にエタノール(沸点78℃)を封入してループ型ヒートパイプを形成した。
【0051】
以上のように、本明細書は以下の事項を開示する。
(付記1)
基板に搭載された発熱体と、
該発熱体を収容した蒸発部と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された蒸気流路と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された液流路と、
前記第蒸気流路と前記液流路との間に設けられた凝縮部と
を有し、
前記蒸発部、前記蒸気流路、前記凝縮部、及び前記液流路は、密封された循環流路を形成し、該循環流路に冷媒が封入されたループ型ヒートパイプ。
(付記2)
付記1記載のループ型ヒートパイプであって、
前記蒸発部は前記基板に接合された容器を含み、
該容器と前記基板とにより形成された密閉空間内に前記発熱体が収容されたループ型ヒートパイプ。
(付記3)
付記2記載のループ型ヒートパイプであって、
前記発熱体に接触して載置された放熱板と、該放熱板の上に配置されたウィックとが前記蒸発部の前記密閉空間内に収容されたループ型ヒートパイプ。
(付記4)
付記3記載のループ型ヒートパイプであって、
前記発熱体と前記放熱板とを包囲する包囲部材が前記蒸発部の前記密閉空間内に収容されたループ型ヒートパイプ。
(付記5)
付記4記載のループ型ヒートパイプであって、
前記包囲部材は断熱材により形成されたループ型ヒートパイプ。
(付記6)
付記4又は5記載のループ型ヒートパイプであって、
前記包囲部材は、前記密閉空間を、前記蒸気流路が接続された側と前記液流路が接続された側とに分離する分離部を有するループ型ヒートパイプ。
(付記7)
付記6記載のループ型ヒートパイプであって、
前記放熱板と前記ウィックのうち少なくとも一方に、前記密閉空間の前記蒸気流路が接続された側に開口する凹部が形成されたループ型ヒートパイプ。
(付記8)
付記7記載のループ型ヒートパイプであって、
前記凹部は、前記放熱板と前記ウィックとが接する面に開口する複数の溝を含むループ型ヒートパイプ。
(付記9)
付記1乃至8のうちいずれか一項記載のループ型ヒートパイプであって、
前記蒸気流路の一端と前記液流路の一端は前記基板の面に開口し、前記凝縮部を含む凝縮器配管が前記蒸気流路の前記一端と前記液流路の前記一端に接続されたループ型ヒートパイプ。
(付記10)
付記9記載のループ型ヒートパイプであって、
前記凝縮部は前記凝縮器配管の外側に放熱フィンが取り付けられた部分を含むループ型ヒートパイプ。
(付記11)
付記1乃至10記載のループ型ヒートパイプと、
前記ループ型ヒートパイプの蒸発部が形成された基板に搭載された電気部品と
を有し、
前記蒸発部に設けられた発熱体は電子部品であり、該電子部品と前記電気部品とで所定の回路を形成する電子装置。
(付記12)
基板に搭載された発熱体と、
該発熱体に接触して載置された放熱板と、
該放熱板に接触して載置されたウィックと
該放熱板および該ウィックを密閉空間内に収容した蒸発部と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された蒸気流路と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された液流路と、
前記蒸気流路と前記液流路との間に設けられた凝縮部と
を有し、
前記蒸発部、前記蒸気流路、前記凝縮部、及び前記液流路は、密封された循環流路を形成し、該循環流路に冷媒が封入されたループ型ヒートパイプ。
(付記13)
付記12記載のループ型ヒートパイプであって、
前記発熱体と前記放熱板とを包囲する包囲部材が前記蒸発部の前記密閉空間内に収容されたループ型ヒートパイプ。
(付記14)
付記13記載のループ型ヒートパイプであって、
前記蒸発部は前記基板に接合された容器を含み、
該容器と前記基板とにより形成された密閉空間内に前記発熱体が収容されたループ型ヒートパイプ。
(付記15)
付記14記載のループ型ヒートパイプであって、
前記包囲部材は、前記密閉空間を、前記蒸気流路が接続された側と前記液流路が接続された側とに分離する分離部を有するループ型ヒートパイプ。
(付記16)
付記15記載のループ型ヒートパイプであって、
前記放熱板と前記ウィックのうち少なくとも一方に、前記密閉空間の前記蒸気流路が接続された側に開口する凹部が形成されたループ型ヒートパイプ。
(付記17)
付記12乃至16のうちいずれか一項記載のループ型ヒートパイプと、
前記ループ型ヒートパイプの蒸発部が形成された基板に搭載された電気部品と
を有し、
前記蒸発部に設けられた発熱体は電子部品であり、該電子部品と前記電気部品とで所定の回路を形成する電子装置。
【符号の説明】
【0052】
10 回路配線基板
20 半導体パッケージ
30 蒸発部
30a 液溜め部
30b 蒸気溜め部
32 蒸発器容器
34 放熱板
34a 溝
36 ウィック
36a 溝
38 包囲部材
38a 分離部
40 蒸気流路
50 凝縮部
52 凝縮器配管
54 放熱フィン
60 液流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載された発熱体と、
該発熱体を収容した蒸発部と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された蒸気流路と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された液流路と、
前記第蒸気流路と前記液流路との間に設けられた凝縮部と
を有し、
前記蒸発部、前記蒸気流路、前記凝縮部、及び前記液流路は、密封された循環流路を形成し、該循環流路に冷媒が封入されたループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
請求項1記載のループ型ヒートパイプであって、
前記蒸発部は前記基板に接合された容器を含み、
該容器と前記基板とにより形成された密閉空間内に前記発熱体が収容されたループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
請求項2記載のループ型ヒートパイプであって、
前記発熱体に接触して載置された放熱板と、該放熱板の上に配置されたウィックとが前記蒸発部の前記密閉空間内に収容されたループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
請求項3記載のループ型ヒートパイプであって、
前記発熱体と前記放熱板とを包囲する包囲部材が前記蒸発部の前記密閉空間内に収容されたループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
請求項4記載のループ型ヒートパイプであって、
前記包囲部材は、前記密閉空間を、前記蒸気流路が接続された側と前記液流路が接続された側とに分離する分離部を有するループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
請求項5記載のループ型ヒートパイプであって、
前記放熱板と前記ウィックのうち少なくとも一方に、前記密閉空間の前記蒸気流路が接続された側に開口する凹部が形成されたループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
基板に搭載された発熱体と、
該発熱体を収容した蒸発部と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された蒸気流路と、
前記基板中に形成され、前記蒸発部に接続された液流路と、
前記第蒸気流路と前記液流路との間に設けられた凝縮部と
を有し、
前記蒸発部、前記蒸気流路、前記凝縮部、及び前記液流路は、密封された循環流路を形成し、該循環流路に冷媒が封入されたループ型ヒートパイプと、
前記ループ型ヒートパイプの蒸発部が形成された基板に搭載された電気部品と
を有し、
前記蒸発部に設けられた発熱体は電子部品であり、該電子部品と前記電気部品とで所定の回路を形成する電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207849(P2012−207849A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73670(P2011−73670)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】