説明

レジスト保護膜材料及びパターン形成方法

【課題】 良好な液浸リソグラフィーを可能とし、しかもフォトレジスト層の現像時に同時に除することができて、優れたプロセス適用性を有する液浸リソグラフィー用の保護膜材料、及びこのような材料を用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 (i)フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキル基もしくはフッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーと、フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーとのブレンド、又は(ii)フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキル基もしくはフッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位とフッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマー、を含有するレジスト保護膜材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工、特に波長193nmのArFエキシマレーザーを光源とし、投影レンズとウエハーの間に水を挿入する液浸フォトリソグラフィーにおいて、フォトレジストを保護すべくレジスト上層材料として用いるレジスト保護膜材料及びこれを用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジストのエッチング耐性低下等の種々の問題により、F2リソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱された(非特許文献1)。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいて、投影レンズとウエハーの間に水を含浸させることが提案されている。193nmにおける水の屈折率は1.44であり、NA1.0以上のレンズを使ってもパターン形成が可能で、理論上はNAを1.44にまで上げることができる。NAの向上分だけ解像力が向上し、NA1.2以上のレンズと強い超解像技術の組み合わせで45nmノードの可能性が示されている(非特許文献2)。
【0004】
ここで、レジスト膜の上に水が存在することによる様々な問題が指摘された。発生した酸や、クエンチャーとしてレジスト膜に添加されているアミン化合物が水に溶解してしまうことによる形状変化や、膨潤によるパターン倒れなどである。そのため、レジスト膜と水との間に保護膜を設けることが有効であることが提案されている(非特許文献3)。
【0005】
レジスト上層の保護膜は、今まで反射防止膜として検討された経緯がある。例えば、特許文献1〜3に示されるARCOR法などである。ARCOR法はレジスト膜上に透明な反射防止膜を形成し、露光後剥離する工程を含む方法であり、その簡便な方法で微細かつ高精度及び合わせ精度の高いパターンを形成する方法である。反射防止膜として低屈折率材料のパーフルオロアルキル化合物(パーフルオロアルキルポリエーテル、パーフルオロアルキルアミン)を用いると、レジスト−反射防止膜界面の反射光を大幅に低減し、寸法精度が向上する。フッ素系の材料としては、前述の材料以外に特許文献4に示されるパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)−テトラフルオロエチレン共重合体、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、パーフルオロブテニルビニルエーテルの環化重合体などの非晶質ポリマーなどが提案されている。
【0006】
しかし、上記パーフルオロアルキル化合物は、有機物との相溶性が低いことから、塗布膜厚を制御するための希釈液にはフロンなどが用いられているが、周知の通りフロンは現在環境保全の観点からその使用が問題となっている。また、上記化合物は均一な成膜性に問題があり、反射防止膜としては十分であるとはいえなかった。また、フォトレジスト膜の現像前に、反射防止膜をフロンで剥離しなければならなかった。そのため、従来装置に反射防止膜剥離用のシステムの増設をしなければならない、フロン系溶剤のコストがかなりかさむなど実用面でのデメリットが大きかった。
【0007】
従来装置に増設無しで反射防止膜の剥離を行おうとすると、現像ユニットを使って剥離を行うのが最も望ましい。フォトレジストの現像ユニットで用いられる溶液は、現像液であるアルカリ水溶液と、リンス液である純水であるので、これらの溶液で容易に剥離できる反射防止膜材料が望ましいといえる。そのため、数多くの水溶性の反射防止膜材料及びこれらを用いるパターン形成方法が提案された。例えば、特許文献5〜6などである。
【0008】
ところが、水溶性保護膜は、露光中に水に溶解してしまうので液浸リソグラフィーには用いることができない。一方で、非水溶性のフッ素系ポリマーは特殊なフロン系の剥離剤が必要であるということとフロン系溶媒専用の剥離カップが必要という問題があり、非水溶性で、簡便に剥離可能なレジスト保護膜が求められていた。
【0009】
ここで、ヘキサフルオロアルコールをペンダントしたメタクリレートをベースにする現像液可溶なトップコートが提案されている(非特許文献4)。このものはTgが150℃と高く、アルカリ溶解性も高く、レジストとの相性も良好である。
露光機のスキャンスピードを上げるためには、水に接触するフォトレジスト保護膜の滑水性を上げる必要がある。滑水性を上げるには、単に撥水性を上げるだけではなく、異種の撥水性基を組み合わせ、ミクロドメイン構造を形成することが効果的であると報告されている。例えば、シロキサンをグラフトしたフッ素樹脂などは非常に優れた滑水性を示す(非特許文献5)。このものは、フッ素樹脂単独、シリコーン樹脂単独よりも優れた滑水性であり、TEM観察により、10−20nmのドメイン構造を形成していることが示されている(非特許文献6)。
【0010】
【特許文献1】特開昭62−62520号公報
【特許文献2】特開昭62−62521号公報
【特許文献3】特開昭60−38821号公報
【特許文献4】特開平5−74700号公報
【特許文献5】特開平6−273926号公報
【特許文献6】特許第2803549号公報
【非特許文献1】Proc.SPIE Vol.4690 xxix
【非特許文献2】Proc.SPIE Vol.5040 p724
【非特許文献3】2nd Immersion Work Shop, July 11,2003, Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography
【非特許文献4】J.Photopolymer Sci.and Technol. Vol.18 No.5 p615 (2005)
【非特許文献5】XXIV FATIPEC Congress Book,Vol.B, p15−38 (1997)
【非特許文献6】Progress in Organic Coatings, 31, p97−104(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な液浸リソグラフィーを可能とし、しかもフォトレジスト層の現像時に同時に除することができて、優れたプロセス適用性を有する液浸リソグラフィー用の保護膜材料、及びこのような材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、疎水性基としてパーフルオロアルキル基を有する繰り返し単位とアルキル基を有する繰り返し単位とを組み合わせることによってミクロ相分離構造を形成し、滑水角が非常に低いフォトレジスト用保護膜材料として有望であることを見いだし、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(i)フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキル基もしくはフッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーと、フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーとのブレンド、又は(ii)フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキル基もしくはフッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位とフッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマー、を含有するレジスト保護膜材料を提供する。また、本発明は、レジスト保護膜材料を用いて得られる、50nm以下のドメインサイズからなるミクロ相分離構造を有するレジスト保護膜を提供する。さらに、本発明は、ウエハーに形成したフォトレジスト層上にこの保護膜材料を用いる保護膜形成工程と、その後の露光工程と現像工程を含んでなるパターン形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレジスト保護膜材料及び保護膜は、通常のリソグラフィーによるパターン形成方法だけでなく、液体中で露光を行う液浸リソグラフィーにも利用できる。液浸リソグラフィーによるパターン形成方法は、レジスト膜上に形成されるレジスト保護膜が、非水溶性でアルカリ水溶液(アルカリ現像液)に溶解可能であり、しかもレジスト膜とミキシングしないものであるので、良好な液浸リソグラフィーを行うことができる。また、アルカリ現像時にレジスト膜の現像と保護膜の除去とを同時に一括して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のレジスト保護膜材料は、特に、ウエハーに形成したフォトレジスト層上にレジスト上層膜材料による保護膜を形成し、露光(好ましくは水中で露光)を行った後、現像を行うリソグラフィー(好ましくは液浸リソグラフィー)によるパターン形成方法に関する。
レジスト上層膜材料は、好ましくは、疎水性基としてフッ素原子を1個以上有するフッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位及び/又はフッ素を含まないアルキル基を有する繰り返し単位とともに、必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーを含有してなる。すなわち、フッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーと、アルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーとを含むブレンドを用いてもよい。また、フッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位とアルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーを用いてもよい。
パーフルオロアルキル基を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記式(1)中の繰り返し単位A1とA2とA3からなる群から選択することができる。フッ素原子を1個以上含むフッ素含有アルキレン基の繰り返し単位は、好ましくは、下記式(1)中の繰り返し単位A4から選択されることができる。
【0016】
【化1】

【0017】
上式中、R1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R2とR3とR4は、それぞれ独立して炭素数1〜20のフッ素原子を1個以上有するアルキル基であり、エーテル基又はエステル基を有していても良い。Xは、−O−又は−C(=O)−O−である。mは0又は1である。F1〜F4は、それぞれ独立してフッ素原子と水素原子とメチル基とトリフルオロメチル基とからなる群から選ばれ、F1〜F4のうちに少なくとも1個以上のフッ素原子を有するものである。
【0018】
フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキル基は、好ましくは、パーフルオロアルキル基又はトリフルオロメチル基がジフルオロメチル基で置き換えられた置換パーフルオロアルキル基である。
繰り返し単位A1とA2とA3は、具体的には下記に例示することができる。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位A4は、具体的には下記に例示することができる。
【0024】
【化6】

【0025】
次に、フッ素を含まないアルキル基を有する繰り返し単位は、下記一般式(2)中の繰り返し単位B1とB2とB3からなる群から選択することができる。
【0026】
【化7】

【0027】
上式中、R1、X、mは、前述の通りであるが、式(1)から独立した指定され、式(1)のものと同じでも異なっていてもよい。R5とR6は、独立して炭素数1〜20のフッ素原子を含まないアルキル基であり、エーテル基又はエステル基を有していても良く、R7は、水素原子、又は炭素数1〜20のフッ素原子を含まないアルキル基であり、エーテル基又はエステル基を有していても良い。
繰り返し単位B1とB2とB3は、具体的には下記に例示することができる。
【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
本発明は、フッ素含有アルキル基(好ましくはパーフルオロアルキル基)又はフッ素含有アルキレン基(フルオロアルキレン基)とアルキル基を有する繰り返し単位を組み合わせることによるミクロ相分離構造を形成することによって、高い滑水性を特徴とする液浸露光用レジスト保護膜を提案するものである。このレジスト保護膜は露光、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)後剥離を行うが、有機溶媒で剥離しても良いが、アルカリ溶解性によって現像時に剥離しても良い。アルカリ溶解性のためには、A1〜A4から選ばれる繰り返し単位とB1〜B3から選ばれる繰り返し単位と、必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位Cとを併存させる。
【0034】
A1〜A4から選ばれる繰り返し単位とB1〜B3から選ばれる繰り返し単位と必要に応じて併存するアルカリ溶解性を得るための溶解性基について示す。
アルカリ溶解性基としては、フェノール基、スルホ基、カルボキシル基、αトリフルオロメチルアルコールが挙げられ、これらの中ではカルボキシル基とαトリフルオロメチルアルコールが好ましく用いることができる。カルボキシル基あるいはαトリフルオロメチルアルコールを有する繰り返し単位としては、具体的には下記に例示することができる。
【0035】
【化13】

【0036】
【化14】

【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

【0040】
式(1)と(2)の撥水性のA1〜A4から選ばれる繰り返し単位及び/又はB1〜B3から選ばれる繰り返し単位とともに、必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位Cを含有するポリマーの水への溶解速度は、好ましくは0.1Å(オングストローム)/s以下であり、レジスト保護膜を形成後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液からなる現像液への溶解速度は、好ましくは300Å/s以上である。なお、アルカリ溶解性と云えるためには、レジスト保護膜がアルカリ水に接したときにアルカリ水に溶解することが好ましく、アルカリ溶解性の繰り返し単位Cは、好ましいアルカリ溶解速度を得るために必要な場合に併存させてよい。
ミクロドメイン構造を構成する共重合ポリマーとしては、(i)A1〜A4から選ばれた繰り返し単位と必要に応じてCの繰り返し単位を含む共重合ポリマーと、B1〜B3から選ばれた繰り返し単位と必要に応じてCの繰り返し単位を含む共重合ポリマーとのブレンド、又は(ii)A1〜A4から選ばれた繰り返し単位とB1〜B3から選ばれた繰り返し単位と必要に応じてCの繰り返し単位を含む共重合ポリマー、が挙げられる。
ミクロドメイン構造を形成するために、異なる極性を有するポリマーのブレンドは有効である。このため、ブレンドする一方のポリマーにはフッ素含有アルキル基、もう一方にはアルキル基を有する繰り返し単位と、それぞれアルカリ溶解性基を有する繰り返し単位とを有するように共重合させたポリマー同士をブレンドさせる。更に、ミクロドメイン構造を構成する共重合ポリマーとしては、一般的にはブロックポリマーの有効性が述べられている。ブロックポリマーの場合、ポリマーブレンドの場合よりもミクロドメイン構造の大きさや分布を精緻にコントロールできるメリットがある。
【0041】
ミクロドメイン構造のサイズは50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下である。50nm以上のサイズになると、ドメイン同士の屈折率差により、回折光の散乱が起き、パターン後のレジストラインに揺らぎが生じる場合がある。更に、ドメイン部分がベーク中にレジストとミキシング層を形成しやすくなる。例えばポリスチレンとポリシロキサンなどの極性の大きく異なるポリマーブレンドの場合、巨大な相分離膜が形成される。しかし、本発明のレジスト保護膜の場合、アルカリ溶解性基を導入することによって、ブレンドポリマー同士の極性の違いはそれほど大きくならない。そのため、それほど大きなミクロドメイン構造を形成することはない。
【0042】
繰り返し単位A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3およびCのモル比率a1、a2、a3、a4、b1、b2、b3およびcは、ポリマーブレンドの場合、好ましくは、フッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位を含むポリマーが0.1≦a1+a2+a3+a4≦0.9、0≦c≦0.9、a1+a2+a3+a4+c=1であり、フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位を含むポリマーが0.1≦b1+b2+b3≦0.9、0≦c≦0.9、b1+b2+b3+c=1である。
フッ素基含有アルキル基を有する繰り返し単位とフッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位を含む共重合ポリマーの場合は、好ましくは、0.1≦a1+a2+a3+a4≦0.9、0.1≦b1+b2+b3≦0.9、0≦c≦0.9、a1+a2+a3+a4+b1+b2+b3+c=1である。
なお、a1+a2+a3+a4+b1+b2+b3+c=1とは、繰り返し単位A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、Cを含む高分子化合物において、繰り返し単位a1、a2、a3、a4、b1、b2、b3、cの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示す。
【0043】
本発明のポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000であることが望ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料とミキシングを起こしたり、水に溶解し易くなったりする。大きすぎるとスピンコート後の成膜性に問題が生じたり、アルカリ溶解性が低下したりすることがある。
【0044】
これらポリマーを合成するには、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などによるが、ブロック重合を行う場合、リビングアニオン重合などのリビング重合が有効である。
重合方法としては、繰り返し単位A1〜A4、B1〜B3、Cを得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、開始剤を加え、加熱重合を行うことにより、高分子化合物を得ることができる。
重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が例示できる。
重合開始剤としては、ラジカル重合においては2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、アニオン重合としてはアルキルリチウムが用いられ、その中でも特にsec-ブチルリチウム、n-ブチルリチウムがリビングアニオン重合用開始剤としてとして好ましく用いられる。カチオン重合としては硫酸、燐酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸等の酸、BF3、AlCl3、TiCl4、SnCl4などのフリーデルクラフツ触媒のほか、I2、(C653CClのようにカチオンを生成しやすい物質が使用される。
重合温度としては好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0045】
本発明のレジスト保護膜材料は、上記ポリマーを溶媒に溶解させて用いることが好ましい。またこの場合、スピンコーティング法による成膜性の点から、上記ポリマーの濃度が0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%となるように溶媒を使用することが好ましい。
【0046】
用いられる溶媒としては特に限定されないが、レジスト層を溶解させる溶媒は好ましくない。例えば、レジスト溶媒として用いられるシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類などは好ましくない。
【0047】
レジスト層を溶解しない溶媒としては、炭素数4以上の高級アルコール、トルエン、キシレン、アニソール、ヘキサン、シクロヘキサン、エーテルなどの非極性溶媒を挙げることができる。特に炭素数4以上の高級アルコールが好ましく用いられ、具体的には1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテルが挙げられる。
【0048】
一方、フッ素系の溶媒もレジスト層を溶解しないので好ましく用いることができる。
このようなフッ素置換された溶媒を例示すると、2−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、4−フルオロアニソール、2,3−ジフルオロアニソール、2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、5,8−ジフルオロ−1,4−ベンゾジオキサン、2,3−ジフルオロベンジルアルコール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、2’,4’−ジフルオロプロピオフェノン、2,4−ジフルオロトルエン、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアミド、トリフルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエチルブチレート、エチルヘプタフルオロブチレート、エチルヘプタフルオロブチルアセテート、エチルヘキサフルオログルタリルメチル、エチル−3−ヒドロキシ−4,4,4−トリフルオロブチレート、エチル−2−メチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、エチルペンタフルオロベンゾエート、エチルペンタフルオロプロピオネート、エチルペンタフルオロプロピニルアセテート、エチルパーフルオロオクタノエート、エチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、エチル−4,4,4−トリフルオロブチレート、エチル−4,4,4−トリフルオロクロトネート、エチルトリフルオロスルホネート、エチル−3−(トリフルオロメチル)ブチレート、エチルトリフルオロピルベート、S−エチルトリフルオロアセテート、フルオロシクロヘキサン、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−7,7−ジメチル−4,6−オクタンジオン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタフルオロペンタン−2,4−ジオン、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2−ペンタノール、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2−ペンタノン、イソプロピル4,4,4−トリフルオロアセトアセテート、メチルパーフルオロデナノエート、メチルパーフルオロ(2−メチル−3−オキサヘキサノエート)、メチルパーフルオロノナノエート、メチルパーフルオロオクタノエート、メチル−2,3,3,3−テトラフルオロプロピオネート、メチルトリフルオロアセトアセテート、1,1,1,2,2,6,6,6−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオン、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−デカノール、パーフルオロ(2,5−ジメチル−3,6−ジオキサンアニオニック)酸メチルエステル、2H−パーフルオロ−5−メチル−3,6−ジオキサノナン、1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロノナン−1,2−ジオール、1H,1H,9H−パーフルオロ−1−ノナノール、1H,1H−パーフルオロオクタノール、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタノール、2H−パーフルオロ−5,8,11,14−テトラメチル−3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタデカン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリヘキシルアミン、パーフルオロ−2,5,8−トリメチル−3,6,9−トリオキサドデカン酸メチルエステル、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデカン−1,2−ジオール、トルフルオロブタノール1,1,1−トリフルオロ−5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、1,1,1−トリフルオロ−2−プロピルアセテート、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、プロピレングリコールトリフルオロメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルトリフルオロメチルアセテート、トリフルオロメチル酢酸ブチル、3−トリフルオロメトキシプロピオン酸メチル、パーフルオロシクロヘキサノン、プロピレングリコールトリフルオロメチルエーテル、トリフルオロ酢酸ブチル、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2−トリフルオロメチル−2−プロパノール,2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、4,4,4−トリフルオロ−1−ブタノール、などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の非水溶性でかつアルカリ可溶性のレジスト保護膜(上層膜)材料を使ったパターン形成方法について説明する。
まず、フォトレジスト層の上に非水溶性でかつアルカリ可溶性のレジスト保護膜(上層膜)材料をスピンコート法などで成膜する。膜厚は10〜500nmの範囲が好ましい。
露光方法は、レジスト保護膜と投影レンズの間が空気あるいは窒素などの気体であるドライ露光でもよいが、液体中で露光を行う液浸露光、好ましくはレジスト保護膜と投影レンズ間が液体で満たされている液浸露光でもよい。液浸露光では水が好ましく用いられる。180〜250nmの範囲の露光波長が好ましい。液浸露光において、ウエハー裏面への水の回り込みや、基板からの溶出を防ぐために、ウエハーエッジや裏面のクリーニングの有無、及びそのクリーニング方法は重要である。例えばレジスト保護膜をスピンコート後に40〜130℃の範囲で10〜300秒ベークすることによって溶媒を揮発させる。レジストや、ドライ露光の場合はスピンコート時にエッジクリーニングを行うが、液浸露光の場合、親水性の高い基板面が水に接触すると、エッジ部分の基板面に水が残ることがあり、好ましいことではない。そのためレジスト保護膜のスピンコート時にはエッジクリーニングをしない方法が挙げられる。
【0050】
レジスト保護膜を形成後、KrF又はArF液浸リソグラフィーによって水中で露光する。なお、露光波長は、好ましくは180〜250nmである。
露光後、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行い、アルカリ現像液で10〜300秒現像を行う。アルカリ現像液は2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に広く用いられており、プロセス簡略化のメリット等の点から好ましくは本発明のレジスト保護膜の剥離とレジスト膜の現像を同時に行う。PEB前に、レジスト保護膜上に水が残っている場合がある。水が残っている状態でPEBを行うと、水が保護膜を通過しレジスト中の酸と共沸脱水を起こしてしまい、パターン形成ができなくなる。PEB前に保護膜上の水を完全に除去するため、PEB前のスピンドライ、保護膜表面の乾燥空気や窒素によるパージ、あるいは露光後のステージ上の水回収ノズル形状や水回収プロセスの最適化などによって保護膜上の水を乾燥あるいは回収する必要がある。更に、本発明に示される撥水性が高く、滑水性に優れるレジスト保護膜は、水回収性に優れている特徴がある。
【0051】
レジスト材料の種類は、特に限定されない。ポジ型でもネガ型でもよく、通常の炭化水素系の単層レジスト材料でもよく、珪素原子などを含んだバイレイヤーレジスト材料でもよい。KrF露光におけるレジスト材料は、ベース樹脂としてポリヒドロキシスチレン又はポリヒドロキシスチレン−(メタ)アクリレート共重合体の、ヒドロキシ基あるいはカルボキシル基の水素原子が酸不安定で置換された重合体が好ましく用いられる。
【0052】
ArF露光におけるレジスト材料は、ベース樹脂として芳香族を含まない構造が必須であり、具体的にはポリアクリル酸及びその誘導体、ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸交互重合体及びポリアクリル酸又はその誘導体との3あるいは4元共重合体、テトラシクロドデセン誘導体−無水マレイン酸交互重合体及びポリアクリル酸又はその誘導体との3あるいは4元共重合体、ノルボルネン誘導体−マレイミド交互重合体及びポリアクリル酸又はその誘導体との3あるいは4元共重合体、テトラシクロドデセン誘導体−マレイミド交互重合体及びポリアクリル酸又はその誘導体との3あるいは4元共重合体、及びこれらの2つ以上の、あるいはポリノルボルネン及びメタセシス開環重合体から選択される1種あるいは2種以上の高分子重合体が好ましく用いられる。
【実施例】
【0053】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中、GPCはゲルパーミエーションクロマトグラフィーであり、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
また、合成例で使用したモノマー1〜13の構造式を下記に示す。
【0054】
【化18】

【0055】
[合成例1]
200mLのフラスコにモノマー1を38.7g、モノマー7を6.7g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー1とした。
【0056】
[合成例2]
200mLのフラスコにモノマー1を38.7g、モノマー3を12.3g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー2とした。
【0057】
[合成例3]
200mLのフラスコにモノマー2を30.3g、モノマー8を7.7g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー3とした。
【0058】
[合成例4]
200mLのフラスコにモノマー2を30.3g、モノマー3を12.3g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー4とした。
【0059】
[合成例5]
200mLのフラスコにモノマー2を30.3g、モノマー4を5.5g、モノマー5を11g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー5とした。
【0060】
[合成例6]
200mLのフラスコにモノマー2を26.0g、モノマー6を1.4g、モノマー5を22g溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー6とした。
【0061】
[合成例7]
200mLのフラスコにモノマー1を22.1g、モノマー10を10.6g、モノマー4を11g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー7とした。
【0062】
[合成例8]
200mLのフラスコにモノマー2を17.3g、モノマー10を10.6g、モノマー4を11g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー8とした。
【0063】
[合成例9]
200mLのフラスコにモノマー1を38.7g、モノマー9を14g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー9とした。
【0064】
[合成例10]
200mLのフラスコにモノマー2を30.3g、モノマー9を14g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー10とした。
【0065】
[合成例11]
200mLのフラスコにモノマー11を35.0g、モノマー12を4.5g、モノマー13を2.5g、溶媒としてメタノールを60g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー11とした。
【0066】
[合成例12]
200mLのフラスコにモノマー11を35.0g、モノマー12を9.0g、溶媒としてメタノールを60g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー12とした。
【0067】
[合成例13]
200mLのフラスコにモノマー11を35.0g、モノマー13を5.0g、溶媒としてメタノールを60g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー13とした。
【0068】
[合成例14]
200mLのフラスコにモノマー11を15.0g、モノマー12を12.0g、モノマー13を5.0g、溶媒としてメタノールを60g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー14とした。
【0069】
[合成例15]
200mLのオートクレーブにモノマー4を10.9g、モノマー1.9g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、テトラフルオロエチレンガスを6.0g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、45℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー15とした。
【0070】
[合成例16]
200mLのオートクレーブにモノマー14を9.7g、モノマー2.9g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、テトラフルオロエチレンガスを6.0g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、45℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー16とした。
【0071】
[合成例17]
200mLのフラスコにモノマー1を22.1g、モノマー10を10.6g、モノマー14を11g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー17とした。
【0072】
[合成例18]
200mLのフラスコにモノマー2を17.3g、モノマー10を10.6g、モノマー14を11g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー18とした。
【0073】
[合成例19]
200mLのフラスコにモノマー1を38.7g、モノマー15を9.4g、溶媒としてメタノールを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を3g加え、65℃まで昇温後、25時間反応させた。この反応溶液をヘキサンに晶出させて樹脂を単離した。得られた樹脂の組成は1H−NMR、分子量はGPCで確認し、実施例ポリマー19とした。
【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
【化21】

【0077】
【化22】

【0078】
実施例ポリマー1〜19、およびこれらのブレンドポリマーは、上記合成例に示したポリマーを用い、それぞれ0.5gをイソブチルアルコール25gに溶解させ、それぞれ0.2ミクロンサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト保護膜溶液を作製した。
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理したシリコンウエハー上にレジスト保護膜溶液を塗布し、100℃で60秒間ベークして厚さ50nmのレジスト保護膜を作製した。
次に、上記方法でレジスト保護膜を形成したウエハーを純水で5分間リンスし、膜厚の変動を観察した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
また、上記方法でレジスト保護膜を形成したウエハーを2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で現像し、膜厚の変動を観察した。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例12ポリマーはアルカリに溶解せず、有機溶媒剥離タイプのレジスト保護膜である。その為、上記方法で作成した実施例ポリマー14膜上に、ジ−n−ブチルエーテルをパドル、スピンドライ後、膜厚の変動を観察した。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
上記方法でレジスト保護膜を形成して水平に保ったウエハー上に50μLの純水を滴下し水玉を形成した。次にこのウエハーを徐々に傾斜させ、水玉が転落し始めるウエハーの角度(転落角)を求めた。結果を表4と表5に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
転落角が小さいことは、水が流動し易いことを示し、スキャン露光におけるスキャンスピードを高くできることを示す。本発明のフッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位とフッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位を組み合わせたポリマーの場合は、フッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位とフッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位それぞれ単独を有するポリマーよりも転落角が小さくなる特徴がある。
【0088】
更に、下記に示すレジストポリマー5g、PAG0.25g、クエンチャーである12Mpの0.5gを55gのプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液に溶解し、0.2ミクロンサイズのポリプロピレンフィルターで濾過し、レジスト溶液を作製した。Si基板上に作製した日産化学社製反射防止膜ARC−29Aの87nm膜厚上にレジスト溶液を塗布し、120℃で60秒ベークして膜厚150nmのレジスト膜を作製した。その上にレジスト保護膜を塗布し、120℃で60秒間ベークした。擬似的な液浸露光を再現するために、露光後の膜の純水リンスを5分間行った。ニコン製ArFスキャナーS307E(NA0.85 σ0.93 4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、純水をかけながら5分間リンスを行い、110℃で60秒間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行い、2.38質量%TMAH現像液で60秒間現像を行った。
保護膜無しで露光、純水リンス、PEB、現像、また露光後純水リンスを行わない通常のプロセスも行った。
ウエハーを割断し、75nmラインアンドスペースのパターン形状、感度を比較した。結果を表6に示す。
【0089】
【化23】

【0090】
【表6】

【0091】
Si基板上に作製した日産化学社製反射防止膜ARC−29Aの87nm膜厚上にレジスト溶液を塗布し、120℃で60秒ベークして膜厚150nmのレジスト膜を作製した。その上にレジスト保護膜を塗布し、120℃で60秒間ベークした。擬似的な液浸露光を再現するために、露光後の膜の純水リンスを5分間行った。ニコン製ArFスキャナーS307E(NA0.85 σ0.93 4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、純水をかけながら5分間リンスを行い、110℃で60秒間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行い、ジ−n−ブチルエーテルをパドル、スピンドライによってレジスト保護膜を剥離し、2.38質量%TMAH現像液で60秒間現像を行った。
ウエハーを割断し、75nmラインアンドスペースのパターン形状、感度を比較した。結果を表7に示す。
【0092】
【表7】

【0093】
保護膜無しで露光後純水リンスを行った場合はT−top形状になった。これは発生した酸が水に溶解したためと考えられる。一方、本発明の保護膜を使った場合は形状の変化は起こらなかった。メタクリレートをベースとする保護膜の場合は、現像後のレジスト形状が頭張りのT−top形状膜減りであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の液浸リソグラフィーによるレジスト保護膜は、フッ素基含有アルキル基とフッ素原子を含まないアルキル基を疎水性基として組み合わせたものであり、フッ素基含有アルキル基単独、フッ素原子を含まないアルキル基単独のものよりも滑水性に優れ、フッ素基含有アルキル基単独、フッ素原子を含まないアルキル基単独のものと同様にレジスト膜とミキシングしないものであるので、良好な液浸リソグラフィーを行うことができる。アルカリ溶解性の繰り返し単位を組み合わせることによってアルカリ溶解性を向上し、アルカリ現像時にレジスト膜の現像と保護膜の除去とを同時に一括して行うこともできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子を1個以上含有するフッ素含有アルキル基もしくはフッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位を含むポリマーとフッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位を含むポリマーとのブレンド、又は上記フッ素含有アルキル基もしくは上記フッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位と上記フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位を含むポリマーを含有するレジスト保護膜材料。
【請求項2】
上記フッ素含有アルキル基もしくは上記フッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーと、上記フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位と必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーとのブレンドを含有する請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項3】
上記フッ素含有アルキル基もしくは上記フッ素含有アルキレン基を有する繰り返し単位と、上記フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位と、必要に応じてアルカリ溶解性の繰り返し単位を含むポリマーを含有する請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項4】
上記フッ素含有アルキル基を有する繰り返し単位が、下記式(1)の繰り返し単位A1とA2とA3からなる群から選択され、上記フッ素含有アルキレン基の繰り返し単位がA4から選択され、上記フッ素原子を含まないアルキル基を有する繰り返し単位が、下記式(2)の繰り返し単位B1とB2とB3からなる群から選択される請求項1〜3のいずれかに記載のレジスト保護膜材料。
【化1】

(上式中、R1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、R2とR3とR4は、それぞれ独立して炭素数1〜20のフッ素原子を1個以上有するアルキル基であり、エーテル基又はエステル基を有していても良く、Xは、−O−又は−C(=O)−O−であり、mは0又は1であり、F1〜F4はそれぞれ独立してフッ素原子と水素原子とメチル基とトリフルオロメチル基とからなる群から選ばれるが、F1〜F4のうちに少なくとも1個以上のフッ素原子を有するものであり、R5とR6は、それぞれ独立して炭素数1〜20のフッ素原子を含まないアルキル基であり、エーテル基又はエステル基を有していても良く、R7は、水素原子、又は炭素数1〜20のフッ素原子を含まないアルキル基であり、エーテル基又はエステル基を有していても良い。)
【請求項5】
上記フッ素含有アルキル基が、パーフルオロアルキル基又はトリフルオロメチル基がジフルオロメチル基で置き換えられた置換パーフルオロアルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト保護膜材料。
【請求項6】
上記ポリマーが一種類であれば該ポリマーを、上記ポリマーが二種類以上であれば全ポリマーを溶解する溶媒を更に含有する請求項1〜5のいずれかに記載のレジスト保護膜材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のレジスト保護膜材料を用いて得られる、50nm以下のドメインサイズからなるミクロ相分離構造を有するレジスト保護膜。
【請求項8】
ウエハーに形成したフォトレジスト層上に請求項1〜6のいずれかに記載の保護膜材料を用いる保護膜形成工程と、その後の露光工程と現像工程を含んでなるパターン形成方法。
【請求項9】
上記露光工程が、液体中で露光を行う請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
上記露光工程が、180〜250nmの範囲の露光波長を用い、投影レンズとウエハーの間に液体を挿入させたものである請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
上記現像工程が、アルカリ現像液により上記フォトレジスト層の現像と上記保護膜の剥離とを同時に行う請求項8〜10のいずれかに記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2007−140446(P2007−140446A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65836(P2006−65836)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】