説明

レジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】 解像性やレジストパターン形状に優れるレジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供すること。また、有機溶剤に対する溶解性に優れ、ディフェクトリスクを低減できるレジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】 酸解離性溶解抑制基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)と、アルキル基を有さない単環または多環式のラクトン残基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)と、下記一般式(3)で表される構成単位(a3)とを含有することを特徴とするレジスト組成物用重合体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザー(248nm)が量産の中心となり、さらにArFエキシマレーザー(193nm)が量産で導入され始めている。また、Fエキシマレーザー(157nm)やEUV(極端紫外光)、EB(電子線)等を光源(放射線源)として用いるリソグラフィー技術についても研究が行われている。
このような短波長の光源用のレジストには、微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性と、このような短波長の光源に対する感度の高さが求められている。このような条件を満たすレジストの1つとして、ベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤(以下、PAGという)とを含有する化学増幅型レジストが知られており、化学増幅型レジストには、露光部のアルカリ可溶性が増大するポジ型と、露光部のアルカリ可溶性が低下するポジ型とがある。
【0003】
これまで、化学増幅型レジストのベース樹脂としては、KrFエキシマレーザー(248nm)に対する透明性が高いポリヒドロキシスチレンやその水酸基を酸解離性の溶解抑制基で保護したものが用いられてきた。しかし、このような樹脂は、それよりも短波長、たとえば193nmの光に対する透明性が充分ではなく、そのため、該樹脂をベース樹脂成分とする化学増幅型レジストは、たとえば193nmの光を用いるプロセスでは解像性が低いなどの欠点がある。
そのため、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂が用いられている。
【0004】
レジスト用の(メタ)アクリル系樹脂としては数多くの提案がなされており、例えば特許文献1には、エステル部に酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、エステル部にγ−ブチロラクトン骨格等のラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、エステル部に、水酸基等の極性基を含有する多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等を有する重合体が提案されている。
【特許文献1】特開2003−167347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような重合体を用いたレジストは、解像性やレジストパターン形状に優れる長所があるものの、該重合体は、有機溶剤に対する溶解性が充分でないという問題がある。そのため、該重合体等を含有するレジスト組成物を有機溶剤に溶解した状態とした際に析出物が生じ、このことが、レジストパターンを形成した際のディフェクトリスクを高める要因となっていると推測される。なお、ディフェクトとは、例えばKLAテンコール社の表面欠陥観察装置(商品名「KLA」)により現像後のレジストパターンの真上から観察した際に検知されるスカムやレジストパターンの不具合全般のことである。この不具合とは、例えば現像後のスカム、泡、ゴミ、レジストパターン間のブリッジ等である。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、解像性やレジストパターン形状に優れるレジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
また、有機溶剤に対する溶解性に優れ、ディフェクトリスクを低減できるレジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の3種の構成単位を有する重合体により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の態様は、酸解離性溶解抑制基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)と、
アルキル基を有さない単環または多環式のラクトン残基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)と、
下記一般式(3)
【0007】
【化1】

[式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し;RもしくはRとRもしくはRとが、または、RもしくはRとRとが、または、RもしくはRとRとが結合して−COO−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)を形成しており、該−COO−(CH−の形成に関与しないR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表し;XおよびYは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。]
で表される構成単位(a3)とを含有することを特徴とするレジスト組成物用重合体である。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むポジ型レジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)が、前記第1の態様のレジスト組成物用重合体を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物である。
さらに、本発明の第3の態様は、前記第2の態様のポジ型レジスト組成物を支持体上に塗布し、選択的に露光し、次いで現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成方法である。
【0009】
なお、本発明において、「構成単位」とは、重合体(樹脂)を構成するモノマー単位を意味する。「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方あるいは両方を意味する。「(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(メタ)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
また、露光には電子線の照射も含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、解像性やレジストパターン形状に優れるレジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法が提供される。
また、本発明により、有機溶剤に対する溶解性に優れ、ディフェクトリスクを低減できるレジスト組成物用重合体、ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
≪レジスト組成物用重合体≫
本発明のレジスト組成物用重合体は、構成単位(a1)〜(a3)を含有することを特徴とする。
構成単位(a1)〜(a3)をすべて含有することにより、該レジスト組成物用重合体を含有するポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジストパターンの解像性やレジストパターン形状が優れたものとなる。また、該レジスト組成物用重合体の有機溶剤に対する溶解性が向上し、それによって、レジストパターンを形成した際のディフェクトリスクを低減できる。しかも、焦点深度幅、リニアリティ等のリソグラフィー特性に悪影響を及ぼすことがない。
【0012】
[構成単位(a1)]
構成単位(a1)は、酸解離性溶解抑制基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
酸解離性溶解抑制基は、レジスト組成物用重合体全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有する基であり、たとえば露光により後述する酸発生剤成分(B)から酸が発生すると、その酸の作用により解離し、レジスト組成物用重合体全体のアルカリ可溶性を増大させる。
【0013】
構成単位(a1)において、酸解離性溶解抑制基は、特に限定するものではない。一般的には(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成するものが広く知られている。特に、耐ドライエッチング性に優れる点から、単環または多環式の脂環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が好ましい。
前記単環式の脂環式基としては、シクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロヘキサン、シクロペンタン等から1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
前記多環式の脂環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個又は2個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個又は2個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
このような単環または多環式の脂環式基は、例えばArFエキシマレーザー用のレジスト組成物の樹脂成分において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上入手しやすい点から好ましく、特に、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0014】
より具体的には、構成単位(a1)は、下記一般式(1−a)で表される構成単位(a11)であることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
式(1−a)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
また、Zは、環骨格上の炭素原子の1つにアルキル基が結合した単環または多環の脂環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を表し、かつ前記アルキル基が結合した炭素原子に、Zに隣接する酸素原子が結合している基である。
Zにおけるアルキル基としては、直鎖でも分岐でもよく、炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましく、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも、炭素数2以上、好ましくは2〜5のアルキル基が好ましく、この場合、メチル基の場合に比べて酸解離性が高くなる傾向がある。なお、工業的にはメチル、エチル基が好ましい。
【0017】
構成単位(a11)として、より具体的には、下記一般式(1−b)で表される構成単位(a111)、一般式(1−c)で表される構成単位(a112)等が挙げられる。
【0018】
【化3】

【0019】
式(1−b)中、Rは(1−a)と同義である。nは3〜5の整数であり、−(CHは、Rが結合した炭素原子とともに4〜6員環を形成している。Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基である。nは好ましくは4または5である。
は、炭素数2以上のアルキル基が好ましく、特に炭素数2〜5のアルキル基が好ましい。
構成単位(a111)としては、たとえば、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位等が挙げられる。
【0020】
【化4】

【0021】
式(1−c)中、RおよびRは(1−b)と同義である。Rはメチル基またはエチル基が好ましい。
構成単位(a112)としては、たとえば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位等が挙げられる。
【0022】
また、構成単位(a1)としては、下記一般式(II)で表される構成単位(a12)、下記一般式(III)で表される構成単位(a13)等が挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
式(II)中、Rは(1−a)と同義であり、RおよびRは、それぞれ独立に、直鎖または分岐のアルキル基であり、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基であると好ましい。このような基は、たとえば2−メチル−2−アダマンチル基より酸解離性が高くなる傾向がある。
、Rは、共にメチル基である場合が工業的に好ましく、具体的には、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位を挙げることができる。
【0025】
【化6】

【0026】
式(III)中、Rは(1−a)と同義であり、Rは、tert−ブチル基、tert−アミル基等の第3級アルキル基であり、tert−ブチル基である場合が工業的に好ましい。
また、基−COORは、式中に示したテトラシクロドデカニル基の3または4の位置に結合していてよいが、これらは異性体が混合していることから、結合位置を特定できない。また、(メタ)アクリレート構成単位のカルボキシル基残基も同様に式中に示した8または9の位置に結合するが、結合位置の特定はできない。
構成単位(a1)としては、これらの中でも、上記一般式(1−b)で表される構成単位(a111)が、微細なレジストパターンが倒れにくく好ましい。
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明のレジスト組成物用重合体中、構成単位(a1)の割合は、本発明のレジスト組成物用重合体の全構成単位の合計に対して、20〜60モル%が好ましく、30〜50モル%がより好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に高解像性のパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0028】
[構成単位(a2)]
構成単位(a2)は、アルキル基を有さない単環または多環式のラクトン残基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
本発明において、「単環または多環式のラクトン残基」とは、環骨格上に置換基(アルキル基を除く)を有してもよい単環または多環式のラクトンから、その環骨格上の水素原子を1個除いた基である。
ここで、環骨格とは、ラクトンが単環式である場合はラクトン環であり、ラクトンが多環式、すなわちラクトン環とさらに他の環構造(例えば炭化水素環)を有する場合は、ラクトン環と他の環構造とを合わせた環全体を意味する。
なお、ラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を意味する。
【0029】
構成単位(a2)は、ラクトン残基がアルキル基を有さないことが重要で、これにより、以下のような作用が奏されるのではないかと推測される。すなわち、本発明のレジスト組成物用重合体全体の親水性が高まり、本発明のレジスト組成物用重合体をレジスト組成物とした際に、該レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜と現像液との親和性が高まって、解像性が向上する。また、レジスト膜と基板との密着性を高められ、それによって、レジストパターンを形成した際に、パターン倒れや膜剥がれ等が起こりにくくなる。
【0030】
単環式のラクトン残基としては、たとえば、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基、δ−バレロラクトンから水素原子1つを除いた基等が挙げられる。
また、多環式のラクトン残基としては、たとえば、ラクトン環含有ポリシクロアルカン(例えばビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等)から水素原子を1つを除いた多環式基などが挙げられる。
また、ラクトン残基は、アルキル基以外の置換基を有していてもよい。ラクトン残基が有してもよい置換基としては、アルキル基以外の基であれば特に限定はなく、たとえば、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。ただし、本発明において、ラクトン残基は、置換基を有さないものが好ましい。
また、構成単位(a2)のラクトン残基は、基板との密着性に優れる点から、炭素数10以下であることが好ましく、4〜10がより好ましい。
【0031】
本発明においては、構成単位(a2)が、単環式のラクトン残基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a21)であることが、本発明の効果に優れる点で好ましい。
【0032】
構成単位(a2)として、より具体的には、例えば下記一般式(2−1)〜(2−21)で表される構成単位等が挙げられる。式(2−1)〜(2−21)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
これらの中でも、有機溶剤への溶解性の点から、前記一般式(2−1)、(2−2)、(2−3)で表される構成単位が、中でも、前記一般式(2−2)で表される構成単位が、レジスト組成物とした際の基板への密着性が優れ、微細なパターン倒れの発生を抑制できる点から好ましい。
構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明のレジスト組成物用重合体中、構成単位(a2)の割合は、本発明のレジスト組成物用重合体の全構成単位の合計に対して、10〜60モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性の向上が得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0037】
[構成単位(a3)]
構成単位(a3)は、前記一般式(3)で表される構成単位である。構成単位(a3)を有することにより、本発明のレジスト組成物用重合体の有機溶剤に対する溶解性が向上し、ディフェクトリスクを低減できる。
【0038】
式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
また、R〜Rは、RもしくはRとRもしくはRとが、または、RもしくはRとRとが、または、RもしくはRとRとが結合して−COO−(CH−を形成しており、nは0〜3の整数を表し、特に、基板との密着性に優れる点から、0または1が好ましい。
また、該−COO−(CH−の形成に関与しないR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表す。
XおよびYは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表し、特に、工業上入手しやすい点から、一方がメチル基、他方がイソプロピル基であることが好ましい。
【0039】
構成単位(a3)は、本発明の効果の点、および基板表面への密着性およびエッチング耐性に優れる点から、下記一般式(3−a)で表される構成単位(a31)、および下記一般式(3−b)で表される構成単位(a32)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
【化9】

[式(3−a)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表し;R、XおよびYは式(3)と同義である。]
【0041】
【化10】

[式(3−b)中、Rは水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表し;R、XおよびYは式(3)と同義である。]
【0042】
構成単位(a3)としては、例えば下記一般式(3−1)〜(3−16)で表される構成単位が挙げられる。なお、式中、Rは式(3)と同義である。
【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
これらの中で、式(3−11)〜(3−16)で表される構成単位は、有機溶剤への溶解性に優れ、かつ他の構成単位との共重合性に優れる点で好ましい。中でも、式(3−11)〜(3−14)で表される構成単位が、レジスト組成物とした際の解像性が優れる点から好ましい。
また、上記の中でも、式(3−1)、(3−2)、(3−5)〜(3−8)で表される構成単位が、他の構成単位との共重合性に優れる点で好ましい。
【0046】
構成単位(a3)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物用重合体中、構成単位(a3)の割合は、本発明のレジスト組成物用重合体の全構成単位の合計に対して、5〜40モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。下限値以上とすることにより、有機溶剤に対する溶解性が充分なものとなる。また、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0047】
構成単位(a3)を誘導するモノマーは、たとえば、下記に示す工程にて製造することができる。なお、下記の工程は前記式(3−1)で表される構成単位を誘導するモノマーの製造工程を示しているが、その他のモノマーも類似の工程にて製造することができる。
【0048】
【化13】

【0049】
上記工程における原料であるテルピネンなどのジエンは、公知の方法で製造することができ、また、市販品を使用することもできる。
テルピネンとアクリル酸エステルの環化付加反応は、公知の方法にて行うことができるが、好ましくはルイス酸などの触媒を用いるとよい。
【0050】
二重結合に対する酸化反応は、公知の方法で行うことができるが、好ましくは過酸化水素、過安息香酸などの過酸化物を用いるとよい。
引き続くラクトン化反応は、公知の方法で行うことができるが、好ましくはルイス酸などの触媒を用いるとよい。
また、二重結合の酸化とラクトン化は、同時に行うこともできる。
【0051】
得られたアルコール体のエステル化反応は、好ましくはメタクリルクロリドなどのカルボン酸ハライド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ビニルなどのエステル、メタクリル酸などのカルボン酸と反応させるとよい。トリエチルアミンなどの塩基存在下、塩化メチレン、トルエンなどの溶媒中、カルボン酸ハライドと反応させることが特に好ましい。
【0052】
上記工程において生成する反応中間体は、精製せずに次工程に用いることもできるが、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製してもよい。また、反応中間体および目的物であるモノマーは、いくつかの位置異性体、幾何異性体、光学異性体を含む場合がある。本発明においては、異性体の混合物のまま重合反応に使用することができる。また、反応中間体を含んでいてもそのまま重合反応に使用することができる。
上記反応の生成物は、必要に応じて、通常の蒸留、薄膜蒸留、再結晶あるいはカラムクロマトグラフィーなどによって精製することが好ましい。
【0053】
本発明のレジスト組成物用重合体が前記構成単位(a1)〜(a3)を含む重合体である場合、該重合体としては、解像性、レジストパターン形状、微細パターンの倒れにくさ、有機溶剤への溶解性の効果に優れる点から、下記一般式(I)で表される3種の構成単位を含む重合体が好ましい。
【0054】
【化14】

[式(I)中、R、R’およびR’’はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、XおよびYは式(3)と同義である。]
【0055】
[構成単位(a4)]
本発明のレジスト組成物用重合体は、構成単位(a1)〜(a3)に加えて、さらに極性基含有多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)(ただし、前記構成単位(a1)、(a2)および(a3)を除く)を含有することが好ましい。これにより、重合体全体の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、解像性等のリソグラフィー特性の向上に寄与する。
極性基としては、シアノ基(−CN)、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)等が挙げられ、水酸基が好ましい。
多環式基としては、前記構成単位(a1)の説明において例示したものと同様の多数の多環式基(好ましくは、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基等の多環の脂環式炭化水素基)から適宜選択して用いることができる。
構成単位(a4)として、より具体的には、下記一般式(4−a)で表される構成単位(a41)が挙げられる。
【0056】
【化15】

[式(4−a)中、Wは極性基を表し;mは1〜3の整数を表し、1であることが特に好ましく;Rは前記に同じである。]
【0057】
構成単位(a41)としては、特に、下記一般式(VIII)で表される構成単位が好ましい。
【0058】
【化16】

(式(VIII)中、R、mは式(4−a)に同じである。)
【0059】
これらの中でも、mが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0060】
構成単位(a4)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物用重合体中、構成単位(a4)の割合は、本発明のレジスト組成物用重合体の全構成単位の合計に対して、0〜30モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましい。上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0061】
[構成単位(a5)]
本発明のレジスト組成物用重合体は、さらに、構成単位(a1)〜(a4)以外の、それらと共重合可能なモノマーから誘導される構成単位(a5)を含んでいてもよい。ここで、「構成単位(a1)〜(a4)以外」とは、これらと重複しないという意味である。
構成単位(a5)としては、例えば、多環式の脂環式基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a51)が挙げられ、多環式の脂環式基としては、前記構成単位(a1)等において挙げたものと同様な多数の多環式基が挙げられる。特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。
構成単位(a51)として、具体的には、下記(IX)〜(XI)の構造のものを例示することができる。
【0062】
【化17】

(式中、Rは前記に同じである。)
【0063】
【化18】

(式中、Rは前記に同じである。)
【0064】
【化19】

(式中、Rは前記に同じである。)
【0065】
また、上記以外の構成単位(a5)としては、たとえば、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸tert−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル等の直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;
α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸イソプロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸イソブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸tert−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メトキシメチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸イソプロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸イソブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸tert−ブトキシエチル等の直鎖または分岐構造を有するα−置換(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシスチレン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシスチレン、p−tert−パーフルオロブチルスチレン、p−(2−ヒドロキシ−イソプロピル)スチレン等の芳香族アルケニル化合物;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびカルボン酸無水物;
エチレン、プロピレン、ノルボルネン、テトラフルオロエチレン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらは、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
構成単位(a5)は、本発明の効果を大きく損なわない範囲で用いることができ、一般には、本発明のレジスト組成物用重合体の全構成単位の合計に対して、20モル%以下とすることが好ましい。
【0067】
本発明のレジスト組成物用重合体は、上記構成単位(a1)〜(a3)およびその他の任意の構成単位を誘導するモノマーの混合物を共重合して得られる。
各構成単位を誘導するモノマーは、それぞれ、1種であってもよく、2種以上が混在するものであってもよい。
また、本発明の重合体において、各構成単位は任意のシーケンスを取り得る。したがって、この重合体は、ランダム共重合体であっても、交互共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であってもよい。
【0068】
本発明のレジスト組成物用重合体の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミネーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されないが、基板との密着性に優れ、パターン倒れを抑制できる点から、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。また、ディフェクトリスクを低減できる点から、100,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましい。
本発明のレジスト組成物用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、ディフェクトリスクを低減できる点から、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。
【0069】
重合は、たとえば重合開始剤を使用することによって行うことができる。
重合開始剤を使用する重合では、重合開始剤のラジカル体が反応溶液中に生じ、このラジカル体を起点としてモノマーの連鎖重合が進行する。
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル−2,2’−アゾビスブチレート等のアゾ化合物;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物などが挙げられる。
また、ArFエキシマレーザー(193nm)光源を用いるリソグラフィー用の重合体を製造する場合は、光線透過率をできるだけ低下させないように、分子構造中に芳香環を有さないものが好ましい。
さらに、重合時の安全性等を考慮すると、重合開始剤は10時間半減期温度が60℃以上のものが好ましい。
【0070】
レジスト組成物用重合体を製造する際には、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を用いると、低分子量の重合体を製造する際に、重合開始剤の量を少なくすることができる、重合体の分子量分布を小さくすることができる等の利点がある。
好適な連鎖移動剤としては、たとえば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。
重合反応においては、成長末端にラジカルをもつ重合体が反応溶液中に生じるが、連鎖移動剤を使用すると、この成長末端のラジカルと連鎖移動剤が衝突して成長末端が失活した重合体になる。一方、連鎖移動剤はラジカルを持った構造になり、このラジカル体が起点となって、再び、モノマーが連鎖重合していく。そのため、得られた重合体の末端には、連鎖移動残基が存在する。
ArFエキシマレーザー(193nm)光源を用いるリソグラフィー用の重合体を製造する場合は、重合体の光線透過率をできるだけ低下させないように、芳香環を有さない連鎖移動剤を用いることが好ましい。
【0071】
本発明のレジスト組成物用重合体の製造は、特に限定されないが、溶液重合で行われることが好ましく、中でも、組成分布および/または分子量分布の狭い重合体が簡便に得られる点から、重合により目的とする重合体の構成単位となるモノマー(モノマーのみであっても、モノマーを有機溶剤に溶解させた溶液であってもよい)を重合容器中に滴下しながら重合を行う滴下重合法とよばれる重合方法により本発明の重合体を製造することが好ましい。
【0072】
滴下重合法においては、たとえば、有機溶剤をあらかじめ重合容器に仕込み、所定の重合温度まで加熱した後、モノマーおよび重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤を有機溶剤に溶解させたモノマー溶液を、重合容器内の有機溶剤中に滴下する。モノマーは、有機溶剤に溶解させずに滴下してもよく、その場合、重合開始剤と必要に応じて連鎖移動剤とをモノマーに溶解させた溶液を有機溶剤中に滴下する。また、有機溶剤をあらかじめ重合容器内に仕込まずにモノマーを重合容器中に滴下してもよい。
【0073】
滴下重合における重合温度は、特に限定されないが、50〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0074】
滴下重合に用いる有機溶剤は、モノマーおよび重合開始剤と、連鎖移動剤とを併用する場合は、その連鎖移動剤、および得られる重合体のいずれも溶解できる溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、たとえば、1,4−ジオキサン、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等が挙げられる。
【0075】
有機溶剤に溶解させたモノマー溶液のモノマー濃度は、特に限定されないが、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0076】
この滴下重合法では、各々のモノマーの一部をあらかじめ重合容器に仕込んでおいてもよい。各々のモノマーの一部とは、使用するモノマーの全量に対して3〜70質量%の範囲が好ましい。
また、この滴下重合法では、各モノマーの重合速度や共重合反応性比に応じて、モノマー組成比が異なる少なくとも2種以上のモノマー溶液を連続して滴下することができる。少なくとも2種以上のモノマー溶液を連続して滴下するとは、前段のモノマー溶液が重合容器へ滴下終了する前に、次段のモノマー溶液を滴下開始してもよいし、前段のモノマー溶液が重合容器へ滴下終了した直後に次段のモノマー溶液を滴下開始してもよいし、前段のモノマー溶液が重合容器へ滴下終了した後から、重合終了までの間の任意のタイミングで次段のモノマー溶液を滴下開始してもよい。
また、モノマー、重合開始剤、および連鎖移動剤等の諸剤は、それぞれ単独に滴下してもよい。
【0077】
かかる溶液重合等の方法で製造された重合体溶液は、そのまま、あるいは必要に応じて、滴下重合に用いる有機溶剤として上述した有機溶剤等の良溶媒にて適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水等の多量の貧溶媒中に滴下して重合体を析出させる再沈殿工程を行ってもよい。この再沈殿工程は、場合により不要となることがあるが、重合体溶液中に残存する未反応のモノマー、あるいは重合開始剤等を取り除くために非常に有効である。これらの未反応物は、そのまま残存していると、レジスト性能に悪影響を及ぼす可能性があるので、できるだけ取り除くことが好ましい。その後、その析出物を濾別し、充分に乾燥してもよいし、乾燥せず湿粉のまま使用してもよい。
また、製造された重合体溶液は、そのまま、または適当な溶剤で希釈してレジスト組成物に用いることもできる。その際、保存安定剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
【0078】
≪ポジ型レジスト組成物≫
本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)(以下、(A)成分という)と、露光(放射線の照射)により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という)とを含むポジ型レジスト組成物である。
【0079】
(A)成分
(A)成分は、前記本発明のレジスト組成物用重合体を含有する。該レジスト組成物用重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポジ型レジスト組成物における(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚に応じて調整すればよい。一般的には、固形分濃度にして、8〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
【0080】
(B)成分
本発明において、(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている露光により酸を発生する化合物、いわゆる酸発生剤であれば特に限定せずに用いることができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類、ジアゾメタンニトロベンジルスルホネート類などのジアゾメタン系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0081】
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート等を挙げることができる。
【0082】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0083】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0084】
【化20】

【0085】
(B)成分としては、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。下限値以上とすることによりパターン形成が十分に行われ、上限値以下とすることにより均一な溶液が得られ、良好な保存安定性が得られる。
【0086】
(D)成分
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに、任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは、炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0087】
(E)成分
また、前記(D)成分との配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0088】
その他の任意成分
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0089】
有機溶剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤に溶解させて製造することができる。
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましいが、その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜8:2、より好ましくは2:8〜5:5の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは9:1〜4:6、より好ましくは8:2〜5:5であると好ましい。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
有機溶剤の使用量は特に限定しないが、基板等の支持体に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0090】
[レジストパターン形成方法]
本発明のポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法は例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、まずシリコンウェーハのような支持体上に、上記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光(放射線を照射)した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
なお、支持体(基板)とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
【0091】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。
基板としては、例えばシリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板や、ガラス基板などが挙げられる。
配線パターンの材料としては、例えば銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などが使用可能である。
【0092】
露光(放射線の照射)に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。特に、本発明にかかるレジスト組成物は、ArFエキシマレーザーに対して有効である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り、「質量部」を示す。
また、以下のようにして、製造した重合体の物性等を測定した。その結果を表1に示す。
<レジスト組成物用重合体の質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)>
約20mgのレジスト組成物用重合体を5mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、0.5μmメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。この測定において、分離カラムは昭和電工製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列にしたものを用い、溶剤はTHF、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとして単分散ポリスチレンを使用して測定した。
【0094】
<レジスト組成物用重合体中の各構成単位の組成比(モル%)>
H−NMRの測定により求めた。この測定は、日本電子(株)製、GSX−400型FT−NMR(商品名)を用いて、約5質量%のレジスト用重合体試料の重水素化クロロホルム、重水素化アセトンあるいは重水素化ジメチルスルホキシドの溶液を直径5mmφの試験管に入れ、測定温度40℃、観測周波数400MHz、シングルパルスモードにて、64回の積算で行った。
【0095】
<有機溶剤への溶解性評価(ディフェクトリスク評価)>
固形分濃度が15質量%になるように、所定量のPGMEAまたは乳酸エチルに室温で攪拌しながら共重合体を溶解させ、完全に溶解するまでの時間を測定した。
表1中の記号の意味は、レジスト用共重合体が完全に溶解するまでの時間が、
◎:1時間未満であった、
○:1時間以上3時間未満であった、
△:3時間以上24時間未満であった、
×:24時間以上、または不溶であった、
である。
【0096】
<実施例1>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEAを42.0部入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。下記式(51−1)で表される単量体と下記式(51−2)で表される単量体との混合物(以下、DOLMAと略記する。)11.7部、
【0097】
【化21】

【0098】
下記式(52)で表されるα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(以下、GBLMAと略記する。)13.6部、
【0099】
【化22】

【0100】
下記式(53)で表される2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(以下、MAdMAと略記する。)18.7部、
【0101】
【化23】

【0102】
PGMEA75.0部、n−オクチルメルカプタン0.29部、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記する。)1.31部を混合した単量体溶液の入った滴下装置から、一定速度で6時間かけてフラスコ中へ滴下した。その後、80℃の温度を1時間保持した。次いで、得られた反応溶液を約10倍量のメタノール中に攪拌しながら滴下し、白色の析出物(重合体A−1)の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、減圧下60℃で約40時間乾燥した。得られた重合体A−1の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0103】
<実施例2>
DOLMAに代えて、下記式(54−1)で表される単量体と下記式(54−2)で表される単量体との混合物(以下、DOLAMAと略記する。)13.4部を使用した以外は、実施例1と同様の操作で、重合体A−2を得た。得られた重合体A−2の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0104】
【化24】

【0105】
<実施例3>
GBLMAの使用量を6.8部とし、下記式(55)で表される1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン(以下、HAdMAと言う。)9.4部をさらに用い、n−オクチルメルカプタンの使用量を0.61部とした以外は、実施例1と同様の操作で、重合体A−3を得た。得られた重合体A−3の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0106】
【化25】

【0107】
<実施例4>
DOLMAの使用量を17.5部、GBLMAの使用量を10.2部、n−オクチルメルカプタンの使用量を0.61部とした以外は、実施例1と同様の操作で、重合体A−4を得た。得られた重合体A−4の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0108】
<実施例5>
MAdMAに代えて、下記式(56)で表される2−メタクリロイルオキシ−2−エチルシクロヘキサン(以下、ECHMAと言う。)15.7部を使用し、n−オクチルメルカプタンの使用量を0.61部とした以外は、実施例1と同様の操作で、重合体A−5を得た。得られた重合体A−5の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0109】
【化26】

【0110】
<実施例6>
MAdMAに代えて、ECHMA15.7部を使用した以外は、実施例4と同様の操作で、重合体A−6を得た。得られた重合体A−6の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0111】
<実施例7>
DOLMAに代えて、DOLAMA13.4部を使用した以外は、実施例5と同様の操作で、重合体A−7を得た。得られた重合体A−7の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0112】
<実施例8>
GBLMAに代えて、下記式(57)で表されるα−アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(以下、GBLAと言う。)9.4部を使用した以外は、実施例6と同様の操作で、重合体A−8を得た。得られた重合体A−8の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0113】
【化27】

【0114】
<実施例9>
GBLMAの使用量を6.8部、ECHMAの使用量を19.6部とした以外は、実施例6と同様の操作で、重合体A−9を得た。得られた重合体A−9の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0115】
<実施例10>
GBLMAの使用量を13.6部、ECHMAの使用量を11.8部とした以外は、実施例6と同様の操作で、重合体A−10を得た。得られた重合体A−10の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0116】
<実施例11>
GBLMAに代えて、下記式(58)で表される8−または9−メタクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン(以下、OTDMAと言う。)9.4部を使用した以外は、実施例3と同様の操作で、重合体A−11を得た。得られた重合体A−11の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0117】
【化28】

【0118】
<比較例1>
DOLMAに代えて1−アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン(以下、HAdAと言う。)8.9部を使用した以外は、実施例1と同様の操作で、重合体A’−1を得た。得られた重合体A’−1の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0119】
<比較例2>
MAdMAに代えて、下記式(61)で表される2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート(以下、EAdMAと言う。)19.8部を使用し、GBLMAに代えて、OTDMA18.9部を使用し、HAdAに代えて、HAdMA9.4部を使用した以外は、比較例1と同様の操作で、重合体A’−2を得た。得られた重合体A’−2の各物性を測定した結果を表1に示した。
【0120】
【化29】

【0121】
【表1】

【0122】
<実施例12>
(A)成分として実施例8で得られた重合体A−8、すなわち下記式で表される重合体を100質量部、(B)成分としてトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.0質量部、(D)成分としてトリエタノールアミン0.35質量部を用い、これらをPGMEAとELの混合溶剤(PGMEA:ELの質量比が8:2)1300質量部に溶解させてポジ型レジスト組成物を得た。
【0123】
【化30】

[式中、p:q:r=40:30:30(モル比);XおよびYは、一方がメチル基、他方がイソプロピル基]
【0124】
有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、ポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で100℃、60秒間プレベーク(PAB)し、乾燥することにより、膜厚260nmのレジスト層を形成した。
ついで、ArF露光装置NSR−S306(ニコン社製;NA(開口数)=0.78,2/3輪帯)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(6%ハーフト−ン)を介して選択的に照射した。
そして、110℃、60秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥してレジストパターンを形成した。
【0125】
このようにしてレジストパターンを形成した基板を、日立社製の走査型電子顕微鏡(測長SEM、S−9200)により観察したところ、ライン幅100nmのラインアンドスペース(L/S)パターン(ピッチ1:1)が解像しており、その形状は、矩形性に優れていた。
【0126】
また、上記L/Sパターン(100nm)形成に用いた露光量Eop(43mJ)で、90nm、110nm、120nm、130nm、200nmの1:1L/Sパターン用のマスクを用いて同様の処理を行い、レジストパターンサイズの再現性(リニアリティ)を調べた結果、全てのパターンサイズで、マスクに忠実なL/Sパターンが形成できた。
【0127】
また、上記と同様にしてL/Sパターン(100nm)を形成し、その際の焦点深度幅(DOF)を求めたところ、375nmであった。
【0128】
さらに、ライン幅90nmのラインアンドスペース(L/S)パターン(ピッチ1:1で180nm)のパターンにおいて、露光量をオーバードーズとし、レジストパターンが倒れる限界値を求めたところ、71nmであった。
【0129】
<比較例3>
(A)成分として、比較例1で得られた重合体A’−1、すなわち下記式で表される重合体を用い、(B)成分として、モノメチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート2.0質量部とトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート0.8質量部、トリエタノールアミン0.25質量部とを用い、さらにγ−ブチロラクトン25質量部を加え、これらをPGMEAとELの混合溶剤(PGMEA:ELの質量比が8:2)1300質量部に溶解させてポジ型レジスト組成物を得た。
そして、PAB温度を120℃、PEB温度を120℃とした以外は実施例12と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、レジストパターンを形成して同様なその評価を行った。
【0130】
【化31】

[式中、p:q:r=40:40:20(モル比)]
【0131】
その結果、ライン幅100nmのL/Sパターン(ピッチ1:1)は解像していたが、その形状は、矩形性が悪かった。
また、上記L/Sパターン(100nm)形成に用いた露光量Eop(38mJ)でリニアリティを調べた結果、実施例12と同様な結果であった。
また、DOFは300nmであった。
また、パターン倒れは、82.1nmであった。
【0132】
<比較例4>
(A)成分として、比較例2で得られた重合体A’−2、すなわち下記一般式で表される重合体を用い、PAB温度を125℃とした以外は実施例12と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、レジストパターンを形成して同様なその評価を行った。
【0133】
【化32】

[式中、p:q:r=40:40:20(モル比)]
【0134】
その結果、ライン幅100nmのL/Sパターン(ピッチ1:1)は解像していたが、その形状は、トップ部が丸みを帯びるなど矩形性が悪かった。
また、上記L/Sパターン(100nm)形成に用いた露光量Eop(38mJ)でリニアリティを調べた結果、リニアリティは実施例12とほぼ同様であったが、90nmのパターンは未解像で不十分であった。
また、DOFは150nmであった。
また、顕著なパターン倒れも見られた。
実施例12、比較例3,4の結果を表2に示した。
【0135】
【表2】

【0136】
<実施例13〜19>
(A)成分として表3に示す表1に対応する重合体100質量部、(B)成分としてトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート3.0質量部、(D)成分としてトリエタノールアミン0.35質量部を用い、これらをPGMEAとELの混合溶剤(PGMEA:ELの質量比が8:2)1300質量部に溶解させてポジ型レジスト組成物を得た。
【0137】
有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、ポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で表2に示すPAB温度で60秒間、乾燥することにより、膜厚250nmのレジスト層を形成した。
ついで、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製;NA(開口数)=0.60,2/3輪帯)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、通常のバイナリマスクパターンを介して選択的に照射した。
そして、表3に示すPEB温度で60秒間加熱処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥してレジストパターンを形成した。
【0138】
このようにしてレジストパターンを形成した基板を、日立社製の走査型電子顕微鏡(測長SEM、S−9200)により観察した結果を表3に示す。
【0139】
【表3】

【0140】
上記の結果から明らかなように、特定の構成単位(a1)〜(a3)を有する実施例1〜11(本発明)の重合体は、有機溶剤への溶解性に優れていた。したがって、必然的に、該重合体を含むレジスト組成物は、ディフェクトリスクが低減されることがわかった。
また、実施例12(本発明)のポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジストパターンは、極めてその形状、解像性等の特性に優れており、パターン倒れがなく、このことから、レジスト膜の基板に対する密着性が高いことがわかった。さらに、実施例12(本発明)のポジ型レジスト組成物は、リニアリティやDOF等のリソグラフィー特性にも優れていた。
また、実施例13〜19の(本発明)のポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジストパターンは、その形状、解像性等の特性に優れていることがわかった。なお、実施例12、比較例3、比較例4では同一の高開口数(NA)露光装置で評価しているが、実施例13以降はそれらの実施例と比較例より、低開口数(NA)露光装置で評価しており、比較例3,4より特性が劣っているわけではない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性溶解抑制基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)と、
アルキル基を有さない単環または多環式のラクトン残基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)と、
下記一般式(3)
【化1】

[式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し;RもしくはRとRもしくはRとが、または、RもしくはRとRとが、または、RもしくはRとRとが結合して−COO−(CH−(nは0〜3の整数を表す。)を形成しており、該−COO−(CH−の形成に関与しないR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表し;XおよびYは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。]
で表される構成単位(a3)とを含有することを特徴とするレジスト組成物用重合体。
【請求項2】
前記構成単位(a3)が、下記一般式(3−a)
【化2】

[式(3−a)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表し;R、XおよびYは式(3)と同義である。]
で表される構成単位(a31)、および下記一般式(3−b)
【化3】

[式(3−b)中、Rは水素原子、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐アルキル基、または炭素数1〜3の分岐を有していてもよいアルコキシ基を表し;R、XおよびYは式(3)と同義である。]
で表される構成単位(a32)からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項3】
前記構成単位(a2)が、単環式のラクトン残基を含有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a21)である請求項1または2に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項4】
前記構成単位(a1)が、下記一般式(1−a)
【化4】

[式(1−a)中、Zは、環骨格上の炭素原子の1つにアルキル基が結合した単環または多環の脂環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を表し、かつ前記アルキル基が結合した炭素原子に、Zに隣接する酸素原子が結合しており;Rは式(3)と同義である。]
で表される構成単位(a11)である請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項5】
前記構成単位(a11)が、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートおよび2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種から誘導される構成単位である請求項4に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項6】
下記一般式(I)
【化5】

[式(I)中、R、R’およびR’’はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、XおよびYは式(3)と同義である。]
で表される3種の構成単位を含む請求項5に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項7】
さらに極性基含有多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)(ただし、前記構成単位(a1)、(a2)および(a3)を除く)を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項8】
前記構成単位(a4)が、下記一般式(4−a)
【化6】

[式(4−a)中、Wは極性基を表し;mは1〜3の整数を表し;Rは式(3)と同義である。]
で表される構成単位(a41)である請求項7に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項9】
前記極性基が水酸基である請求項7または8に記載のレジスト組成物用重合体。
【請求項10】
酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むポジ型レジスト組成物であって、
前記樹脂成分(A)が、請求項1〜9のいずれか一項に記載のレジスト組成物用重合体を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項11】
前記酸発生剤成分(B)が、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩である請求項10に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項12】
さらに含窒素有機化合物(D)を含有する請求項10または11に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物を支持体上に塗布し、選択的に露光し、次いで現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2006−8737(P2006−8737A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183640(P2004−183640)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】