説明

レチクル搬送容器

【課題】 レチクル搬送容器の方向を間違えてもレチクルストッカーに装着できるようにする。
【解決手段】 一端に開口を有しレチクル12を収納する内部を有し、開口を覆って塞ぐ扉14と、扉14でポッド13を塞いだときに内部を気密にシールするシール材15とを備えたレチクル搬送容器11である。扉14の外側表面に形成されて、装置側に位置決めして取り付けるためのキネマティックピングルーブを、180°方向を変えて二組設けた。ポッド13の外側表面のうち、キネマティックピングルーブに対応した位置には、キネマティックピングルーブを受けて保持するための受け部22を、二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定パターンを基板に転写する露光機等で使用されるレチクルを搬送する際に収納するレチクル搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子等の製造は、フォトリソグラフィ工程で行われる。この工程では、レチクル(フォトマスクを含む)に形成されたパターンの像を、露光機で半導体ウエハやガラスプレート等の基板上に投影転写する。このとき、基板上には感光剤が塗布されており、投影されたパターンが感光剤と反応して、その後の処理を経て回路が形成される。
【0003】
この工程において、レチクルは、塵埃等による汚染や接触等による損傷等を防ぐため、専用のレチクル搬送容器に収納して取り扱われる。
【0004】
このとき、形成する回路が複雑な場合は、基板上に多数の回路パターンを作り込む必要があるため、それに合わせて多数のレチクルが用意され、基板上に多数のパターンが重ね合わせて露光される。
【0005】
このフォトリソグラフィ工程で使用される装置の一例を図2に示す。図中の1は基板上に回路パターンを投影・転写する露光機である。2は多数のレチクルが収納されて保管されたレチクルストッカーである。3はレチクルが収納されたレチクル搬送容器である。4は露光機1とレチクルストッカー2との間に設けられて、これらの間でレチクルをレチクル搬送容器3に収納した状態で搬送するための搬送レールである。5は搬送レール4に設けられてレチクル搬送容器3を直接把持して持ち運ぶための搬送機構部である。
【0006】
これらは、制御装置(図示せず)で制御されている。これにより、回路パターンに必要なレチクルが、レチクル搬送容器3に収納された状態で搬送レール4の搬送機構部5によって、レチクルストッカー2から露光機1へ搬送される。露光機1で不要になったレチクルは、搬送レール4の搬送機構部5によってレチクルストッカー2に戻される。
【0007】
以上の工程において使用されるレチクルは、塵埃等によって汚染されたり、接触等によって損傷したりすると正確な回路パターンができないため、レチクルを安全にかつ確実に支持するためにレチクル搬送容器3に収納されている。
【0008】
このレチクル搬送容器3の一例として特許文献1がある。特許文献1におけるレチクルの支持手段はピンである。レチクルを下側から支持するための手段として、レチクルの四隅の位置にレチクル支持ピンが設けられている。レチクルを周囲から水平方向にずれないように支持する手段として、水平移動を抑えるストッパピンが設けられている。さらに、レチクルを上側から支持する手段として、レチクル押さえが設けられている。これにより、レチクルはそのXYZ方向が支持され、固定される。
【0009】
このレチクル搬送容器の下側面には、通常キネマティックピングルーブが設けられ、装置側のキネマティックピンに嵌合することで、レチクル搬送容器が正確に位置決めされる。このキネマティックピングルーブ及びキネマティックピンは、ほぼ二等辺三角形の各頂点位置に3つずつ設けられている。
【特許文献1】特開平10−163094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述した従来のレチクル搬送容器3では、このレチクル搬送容器3をレチクルストッカー2に収納する際に、レチクル搬送容器3の方向が180°ずれていると、キネマティックピンとキネマティックピングルーブが逆になってしまい、装着することができなくなる。このため、レチクル搬送容器3の方向に十分に注意して装着する必要があり、この結果、作業効率が悪くなってしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、レチクル搬送容器の向きの間違いを許容して、作業効率の向上を図ったものである。即ち本発明は、一端に開口を有しレチクルを収納する内部を有し、上記開口を覆って塞ぐ扉と、上記扉で上記ポッドを塞いだときに内部を気密にシールするシール材とを備えたレチクル搬送容器であって、上記扉の外側表面に形成されて、装置側に位置決めして取り付けるためのキネマティックピングルーブを、180°方向を変えて二組設けたことを特徴とする。
【0012】
これにより、上記レチクル搬送容器をレチクルストッカーに装着するとき、レチクル搬送容器の方向が間違ってもそのまま装着することができ、レチクル搬送容器の方向について過度に注意を払う必要が無くなる。
【0013】
上記ポッドの外側表面のうち、上記キネマティックピングルーブに対応した位置には、上記キネマティックピングルーブを受けて保持するための受け部を、上記二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設することが望ましい。
【0014】
これにより、複数のレチクル搬送容器を、その方向について過度の注意を払わずに、積層することができる。
【発明の効果】
【0015】
作業者が上記レチクル搬送容器を180°方向がずれた状態でレチクルストッカーに装着した場合でも、180°方向を変えた二組のキネマティックピングルーブがこれを許容して、上記レチクル搬送容器の装着をすることができるため、上記レチクル搬送容器の方向について過度の注意を払わずに積層することができ、レチクル搬送容器の装着時において作業の効率化を図ることができる。
【0016】
上記受け部を上記二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設して、複数のレチクル搬送容器を、その方向について過度の注意を払わずに、積層することができるようにしたので、レチクル搬送容器の積層作業時において作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。図1は扉をその底面側から見た斜視図、図3は本実施形態に係るレチクル搬送容器をそのポッドと扉とを互いに分離した状態で示す斜視図、図4は本実施形態に係るレチクル搬送容器を示す側面断面図、図5は本実施形態に係るレチクル搬送容器の要部を示す断面図、図6はメンブレンフィルターを示す要部断面図、図7は無線タグを示す要部断面図である。
【0018】
レチクル搬送容器11は図3及び図4に示すように主に、レチクル12を収納するポッド13と、このポッド13を塞ぐ扉14と、ポッド13と扉14との間に設けられて内部を気密にシールするシール材15とから構成されている。
【0019】
ポッド13は、レチクル12を内部に収納する本体部17と、当該本体部17の外周に一体的に形成されて扉14に嵌合する周縁嵌合部18とから構成されている。
【0020】
本体部17は、皿状に形成され、レチクル12を内部に完全に収納できる深さに設定されている。本体部17の中央部には、搬送用のセンターハンドリングフランジ20が設けられている。本体部17の周縁部には、水平に延びた板状のサイドハンドリングフランジ21が設けられている。センターハンドリングフランジ20が、搬送装置の腕部(図示せず)と結合して、レチクル搬送容器11やポッド13が持ち上げられる。また、サイドハンドリングフランジ21は、露光機内で扉14をポッド13から機械的に分離するときに補助支持手段として用いられる。さらに、本体部17の外側表面の周縁部には、後述するキネマティックピングルーブ61の受け部22が1辺に3カ所ずつ、対向する2辺に合計6カ所に設けられている。この6カ所の受け部22は、キネマティックピングルーブ61に対応した位置であって、二組のキネマティックピングルーブ61をいずれの方向からでも嵌合できるように配設されている。各受け部22は平面形状が半円形の板材で形成されている。平面半円形の各受け部22は、外側へ開口するように配設されている。平面半円形の各受け部22は、その先端側が基端側よりも互いに近づくように内側へ僅かに傾けて形成されている。これにより、下側のレチクル搬送容器11の受け部22に上側のレチクル搬送容器11のキネマティックピングルーブ61が容易に嵌合して、正確に位置決めされるため、複数のレチクル搬送容器11を簡単にかつ安定して積層することができるようになっている。もちろん、これら受け部の形状はキネマティックピングルーブを受けることが可能であれば半円形以外の形状であっても良い。
【0021】
本体部17の内側の四隅近傍にはレチクルリテーナー25が設けられている。このレチクルリテーナー25は、後述する扉14側のレチクルリテーナー45と対をなしてレチクル12を支持するための部材である。このレチクルリテーナー25は、図4及び図5に示すように、リテーナー受け部26と、リテーナー板部27とから構成されている。リテーナー受け部26は、リテーナー板部27を支持するための部材である。リテーナー受け部26は、本体部17の内側の四隅近傍に、本体部17と共に一体的に形成されている。具体的には、本体部17の隅部に形成された五角形の板材によって形成され、その1つの辺がレチクル12の上側角部12Aに当接して弾性的に支持する傾斜面部28を形成する辺となっている。リテーナー受け部26のうち傾斜面部28を形成する辺の一端には、リテーナー板部27の一端部が嵌合する一端側嵌合用切り欠き29が設けられている。リテーナー受け部26のうち傾斜面部28を形成する辺の他端には、リテーナー板部27の他端部が嵌合する他端側嵌合用切り欠き30が設けられている。さらに、傾斜面部28を形成する辺には凹部31が設けられている。この凹部31は、傾斜面部28の内側に設けられてレチクル12の上側角部12Aが当接したときに傾斜面部28の撓みを許容するための部位である。この凹部31により、リテーナー板部27に緩衝機能が持たされている。即ち、リテーナー板部27自身の持つ弾性と共に、凹部31によってリテーナー板部27が弾性的に撓むことで、外部から伝わる振動等を吸収して、レチクル12を弾性的に支持する緩衝機能が持たされている。凹部31の隙間は1mm程度以上あれば良い。
【0022】
リテーナー板部27は、レチクル12の上側角部12Aに当接して弾性的に支持する傾斜面部28を形成する部材である。リテーナー板部27は、弾性高分子材料で成形されている。具体的には、PEE(ポリエステルエラストマー)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの、発塵のない弾性材料を用いる。リテーナー板部27は、当接面板33と、一端嵌合部34と、他端嵌合部35とからなり、その側面形状を変則的なコ字状に形成されている。当接面板33は、リテーナー板部27をリテーナー受け部26に嵌合した状態で、傾斜面部28を構成するための部材である。当接面板33は、弾性を有する合成樹脂で成形されているため、それ自身が弾性的に変形すると共に、上記凹部31によって弾性的に撓んで、レチクル12の上側角部12Aに斜めから当接して弾性的に支持するようになっている。
【0023】
一端嵌合部34は、リテーナー受け部26の一端側嵌合用切り欠き29に嵌合して、リテーナー板部27をリテーナー受け部26に取り付けるための部分である。他端嵌合部35は、リテーナー受け部26の他端側嵌合用切り欠き30に嵌合して、リテーナー板部27をリテーナー受け部26に取り付けるための部分である。これにより、一端嵌合部34及び他端嵌合部35が一端側嵌合用切り欠き29及び他端側嵌合用切り欠き30に嵌合することで、リテーナー板部27がリテーナー受け部26に固定されている。
【0024】
本体部17の内側の四隅近傍には、上記レチクルリテーナー25と共にペリクルリテーナー37も設けられている。レチクル12には、ペリクルが設けられない場合と、下側面にペリクル46が設けられる場合と、上下両側面にペリクル46が設けられる場合がある。ペリクルリテーナー37は、レチクル12の上側面にペリクルが設けられる場合に機能する部材である。ペリクルリテーナー37は、レチクルリテーナー25と同じ構成を有している。即ち、ペリクルリテーナー37は、レチクルリテーナー25のリテーナー受け部26と同じ構成のリテーナー受け部38と、レチクルリテーナー25のリテーナー板部27と同じ構成のリテーナー板部39とから構成されている。リテーナー板部39の内側にはレチクルリテーナー25の凹部31と同じ構成の凹部(図示せず)が設けられている。
【0025】
ポッド13の周縁嵌合部18は、図3及び図4に示すように、本体部17の周縁から周囲に張り出すように皿状に形成されている。この皿状の周縁嵌合部18は、扉14の周囲を完全に収納できる深さに設定されている。周縁嵌合部18の対向する辺には、扉14を固定するための留め具41が設けられている。
【0026】
扉14は、ポッド13の周縁嵌合部18に嵌合することで、ポッド13を塞いで、シール材15を介して内部を気密にシールするための部材である。この扉14は、図3〜図5に示すように、ほぼ平坦状に形成され、その周縁にシール溝43が設けられている。シール材15は、このシール溝43に装着されて、ポッド13と扉14との間を気密にシールする。扉14の上側面には、その四隅の位置に扉側支持部材44が設けられている。この扉側支持部材44は、上記ポッド13側のレチクルリテーナー25と相まってレチクルを上下両側から支持するレチクルリテーナー45と、レチクル12の下側面に取り付けられたペリクル46を支持するペリクルリテーナー47と、これらを一体的に支持するベース板部48とから構成されている。レチクルリテーナー45の構成は、リテーナー受け部50が上述したポッド13側のレチクルリテーナー25のリテーナー受け部27と、図5の紙面に垂直な方向にずれたミラー対象の構成になっている。即ち、レチクルリテーナー45は、リテーナー受け部50と、リテーナー板部51とから構成され、これらが上記レチクルリテーナー25のリテーナー受け部26及びリテーナー板部27と、鏡に映したときのように対象的な構成になっている。リテーナー板部51の内側の凹部52も、レチクルリテーナー25の凹部31と同様の機能を備えている。即ち、リテーナー板部51が凹部52によって弾性的に撓んで、レチクル12の下側角部12Bに斜めから当接して弾性的に支持するようになっている。
【0027】
上記構成のレチクルリテーナー45とレチクルリテーナー25とは互いにずれた位置に設けられ、互いに干渉しないで、レチクル12を支持するようになっている。このレチクルリテーナー25,45でレチクル12を挟み持って、規定位置で支持するようになっている。ポッド13を取り外した後も、レチクル12は、扉14のレチクルリテーナー45によって扉14から規定の距離だけ隔てた状態で支持されるようになっている。ペリクルリテーナー47のペリクル受け部56も、ポッド13側のペリクルリテーナー37のリテーナー受け部39と図5の紙面内横方向にずれたミラー対象の構成になっている。即ち、ペリクルリテーナー47は、ポッド13側のペリクルリテーナー37のリテーナー受け部38とミラー対象のリテーナー受け部55と、リテーナー板部39とミラー対象のリテーナー板部56とから構成されている。リテーナー板部56の内側にはペリクルリテーナー37の凹部と同じ構成の凹部(図示せず)が設けられている。
【0028】
扉14の裏面には、図1に示すように、2組のキネマティックピングルーブ61が設けられている。このキネマティックピングルーブ61は、露光機に位置決めして取り付けるための部材である。キネマティックピングルーブ61は、ほぼ二等辺三角形の頂点の位置に設けられた3つを一組として、180°向きを変えた状態で二組(61A,61B)、合計6本設けられている。これは、レチクル搬送容器11を装置内に装着するときに、作業者がレチクル搬送容器11の向きを180°間違えて装着した場合でも、そのまま装着できるようにするためである。
【0029】
ポッド13には、図6にしめすように、メンブレンフィルター取り付け部62が形成されている。このメンブレンフィルター取り付け部62は、メンブレンフィルター63を確実に取り付けると共に、容易に着脱できるようにするための部分である。このメンブレンフィルター取り付け部62は、管ガイド65と、フィルター嵌合筒部66と、ストッパ67とから構成されている。
【0030】
管ガイド65は、メンブレンフィルター63を内部に収納して固定するための筒部である。この管ガイド65は、ポッド13の本体部17に一体的に設けられている。管ガイド65の外側は開口しており、メンブレンフィルター63が着脱できるようになっている。さらに、管ガイド65は、レチクル搬送容器11内の気体を置換するためのガス供給管(図示せず)と接続するための管ともなっている。管ガイド65の内側は、塞がれてフィルター嵌合筒部66が設けられている。このフィルター嵌合筒部66は、メンブレンフィルター63の嵌合筒部71が嵌合するための筒部である。フィルター嵌合筒部66は、管ガイド65内において、その内側底部から外側へ向けて延びた小径の筒部として構成されている。管ガイド65の内側面の中間位置には、ストッパ67が設けられている。このストッパ67は、管ガイド65内に装着されたメンブレンフィルター63を抜け落ちないように固定するための部材である。
【0031】
メンブレンフィルター63は、レチクル搬送容器11の内外で気体の出入りを許容するためのフィルターである。このメンブレンフィルター63は、塵埃等の通過を防止して気体のみのレチクル搬送容器11の内外側間での出入りを許容する。メンブレンフィルター63は、フィルター本体部70と、嵌合筒部71と、開口筒部72とから構成されている。
【0032】
フィルター本体部70は、肉厚円盤状に形成され、内部にフィルターが収納されている。フィルター本体部70の直径は上記ストッパ67に係止する大きさに設定されている。嵌合筒部71は、フィルター本体部70内とレチクル搬送容器11内とを連通するための部材である。嵌合筒部71は、メンブレンフィルター63が管ガイド65内に装着された状態で、フィルター嵌合筒部66に嵌合してフィルター本体部70内とレチクル搬送容器11内とを連通する。開口筒部72は、フィルターを介してレチクル搬送容器11内と外部とを連通するための筒部である。なお、フィルターとしては、0.1〜0.5μmのメッシュが充填されており、不活性ガスや乾燥空気中のダスト成分を除去する。
【0033】
扉14の外側表面には、図7に示すように、無線タグ74が設けられている。この無線タグ74は、覆い板75に覆われた状態で、扉14の外側表面に取り付けられている。覆い板75は無線タグ74を完全に覆った状態でその全周を溶着されて内部が密封されている。覆い板75には、無線タグ74を収納する凹部75Aが形成されている。無線タグ74はこの覆い板75の凹部75Aに収納された状態で、覆い板75が扉14の外側表面にその全周を溶着される。これにより、無線タグ74は覆い板75内に密封収納されている。これは、レチクル搬送容器11の搬送中等において、無線タグ74の脱落や機械的損傷を防止するためである。さらに、無線タグ自身による装置の汚染を防ぐためである。この無線タグ74は、外部からの電磁波の変化によって、非接触状態で情報を書き込んだり読み出したりできる素子である。この無線タグ74に、処理、保管等の際に必要な種々の管理情報を格納する。
【0034】
以上のように構成されたレチクル搬送容器11は、次のようにして使用される。なお、ここでは、レチクル搬送容器11を、半導体ウエハ上に回路パターンを焼き付けるときの処理に使用される場合を例に説明する。
【0035】
まず、レチクル12がレチクル搬送容器11内に収納される。このとき、レチクル12は、扉14のレチクルリテーナー45に載置され、ポッド13が取り付けられて留め具41で固定される。これにより、レチクル12が扉14側のレチクルリテーナー45とポッド13側のレチクルリテーナー25とで挟まれて支持される。具体的には、レチクルリテーナー45のリテーナー板部51にレチクル12の下側角部12Bが、レチクルリテーナー25のリテーナー板部27にレチクル12の上側角部12Aが、それぞれ斜めから当接して支持される。このとき、リテーナー板部51,27の内側には凹部52,31があり、リテーナー板部51,27の撓みを許容しているため、レチクル12は弾性的に支持される。これにより、レチクル12は、その表面に傷をつけることなく、全ての自由度が抑えられてレチクル搬送容器11内に固定される。
【0036】
レチクル12にペリクル46が設けられている場合は、このペリクル46が、上記レチクル12と同様の作用により、ペリクルリテーナー47によって固定される。
【0037】
このようにして、レチクル12がレチクル搬送容器11内に1枚ずつ収納され、作業者によってレチクルストッカー2内に必要な数量だけ上積みして装着される。このとき、レチクル搬送容器11はすべて設定された方向に合わせて収納するのが望ましいが、方向が違っている場合でも、二組のキネマティックピングルーブ61によって問題なく装着される。即ち、レチクル搬送容器11の向きが180°ずれている場合でも、二組のうちの一方のキネマティックピングルーブ61がレチクルストッカー2内のキネマティックピンに嵌合して装着される。また、複数のレチクル搬送容器11を積層する場合も、キネマティックピングルーブ61に合わせて6カ所に設けられた受け部22がレチクル搬送容器11の向きに関係なくキネマティックピングルーブ61を受けて互いに嵌合し、各レチクル搬送容器11を正確に位置決めし、安定して積層させる。これにより、作業者は過度の注意を払わずに、レチクル搬送容器11をレチクルストッカー2内に装着することができる。
【0038】
その後のレチクル搬送容器11の搬送等はすべて機械的に行われる。即ち、レチクルストッカー2からレチクル搬送容器11を取り出して収納し、搬送クレーンで搬送レール上を移動し、露光機1にレチクル搬送容器11内のレチクル12をセットするまでの操作が全て機械的に行われる(SMIF:Standard Mechanical Interface)。
【0039】
搬送レール4の搬送機構部5は、レチクルストッカー2内のレチクル搬送容器11とそのセンターハンドリングフランジ20で互いに結合されて持ち上げられる。そして、搬送レール4で露光機1まで移動される。
【0040】
次いで、レチクル搬送容器11は露光機1内に導入される。その後、レチクル12は露光機1の自動露光ステージ(図示せず)に移され、すでに装着されている半導体ウエハ上に正確に位置決めされた状態で設置され、露光作業が自動的に行われる。
【0041】
露光が終了すると、レチクル12はレチクル搬送容器11に戻され、再び搬送機構部5で搬送レール4を移動してレチクルストッカー2に戻される。
【0042】
以上の処理工程においては、無線タグ74に記録された情報に基づいて工程制御される。レチクル搬送容器11の扉14の無線タグ74には、レチクル12の種類や作業履歴等の種々の情報が記録されており、露光機1内に装着された読み取り装置(図示せず)が無線タグ74の情報を非接触で読み取って、露光機1内での制御等をその情報に基づいて行う。露光作業の終了後は、必要に応じて書き込み装置(図示せず)で無線タグ74に、レチクル12やレチクル搬送容器11の履歴、作業履歴等を書き込む。これにより、露光作業や管理等をスムーズに行う。
【0043】
このとき、無線タグ74は覆い板75によって密閉収納されているため、無線タグ74の脱落や機械的損傷をなくすことができる上に、無線タグ74自身による装置の汚染も防ぐことができる。
【0044】
また、レチクル搬送容器11を圧力の変動する環境に置いた場合、例えば飛行機による輸送等のように、上空の比較的気圧の低い環境と、地上の比較的気圧の高い環境に置いた場合、レチクル搬送容器11の内圧が外圧よりも低くなることがある。この場合、ポッド13と扉14とを分離するのが難しくなるが、メンブレンフィルター63がレチクル搬送容器11の内外で気体の出入りを許容するため、レチクル搬送容器11の内圧が外圧よりも低くなるのを防止する。これにより、ポッド13と扉14とを分離するのが容易になる。
【0045】
また、レチクル搬送容器11内の気体を置換する場合は、メンブレンフィルター取り付け部62の管ガイド65にガス供給管を差し込んで接続して、管ガイド65に不活性ガスや乾燥空気などを送る。
【0046】
以上のように、キネマティックピングルーブ61を180°ずらして二組設けたので、レチクル搬送容器11が、その方向を間違えて装着された場合でも、問題なく装着することができる。これにより、作業者は過度の注意を払わずに、レチクル搬送容器11をレチクルストッカー2内に装着することができ、作業性を向上させることができる。
【0047】
また、ポッド13の本体部17には、キネマティックピングルーブ61に合わせて受け部22を6カ所に設けたので、レチクル搬送容器11の方向を気にせずに、複数のレチクル搬送容器11を積み上げることができる。これにより、作業者は過度の注意を払う必要が無くなり、作業性を向上させることができる。
【0048】
また、レチクル12等がレチクルリテーナー25等によって、傷つくことなく、安全に且つ確実に支持され、レチクル12等をより慎重に取り扱うことができるようになる。
【0049】
また、無線タグ74に種々の情報を記録して管理するため、その情報に基づいて作業効率を向上させることができる。このとき、無線タグ74は覆い板75によって密閉収納されているため、無線タグ74の脱落や機械的損傷をなくすことができる上に、無線タグ74自身による装置の汚染も防ぐことができる。
【0050】
さらに、メンブレンフィルター63によってレチクル搬送容器11の内外での気体の出入りを許容するため、レチクル搬送容器11の内圧が外圧よりも低くなるのを防止して、ポッド13と扉14とを容易に分離することができるようになる。また、レチクル搬送容器11内の気体の置換を容易にすることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、メンブレンフィルター63をポッド13側に1つ設けたが、扉14側に設けてもよい。メンブレンフィルター63の設置個数も、1つに限らず、2以上でもよい。ポッド13又は扉14のいずれか一方又は両方に、1又は複数のメンブレンフィルター63を設けることができる。この場合、他の邪魔にならない位置に設ける。
【0052】
また、上記実施形態では、無線タグ74を扉14の外側表面の1カ所に設けたが、必要に応じて2以上設けてもよい。設ける場所も、扉14に限らずポッド13でもよい。両方でもよい。要求される機能、読み取り装置及び書き込み装置との関係で、ポッド13側に設けたりすることもある。また、無線タグ74に記録する情報としても、作業履歴等に限らず、種々の情報を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る扉をその底面側から見た斜視図である。
【図2】フォトリソグラフィ工程で使用される装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器をそのポッドと扉とを互いに分離した状態で示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレチクル搬送容器の要部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るメンブレンフィルターを示す要部断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る無線タグを示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
11:レチクル搬送容器、12:レチクル、12A:上側角部、12B:下側角部、13:ポッド、14:扉15:シール材、17:本体部、18:周縁嵌合部、20:センターハンドリングフランジ、21:サイドハンドリングフランジ、22:受け部、25:レチクルリテーナー、26:リテーナー受け部、27:リテーナー板部、28:傾斜面部、29:一端側嵌合用切り欠き、30:他端側嵌合用切り欠き、31:凹部、33:当接面板、34:一端嵌合板、35:他端嵌合板、37:ペリクルリテーナー、38:リテーナー受け部、39:リテーナー板部、41:留め具、43:シール溝、44:扉側支持部材、45:レチクルリテーナー、46:ペリクル、47:ペリクルリテーナー、48:ベース板部、50:リテーナー受け部、51:リテーナー板部、52:凹部、55:リテーナー受け部、56:リテーナー板部、61:キネマティックピングルーブ、62:メンブレンフィルター取り付け部、63:メンブレンフィルター、65:管ガイド、66:フィルター嵌合筒部、67:ストッパ、70:フィルター本体部、71:嵌合筒部、72:開口筒部、74:無線タグ、75:覆い板、75A:凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口を有しレチクルを収納する内部を有するポッドと、上記開口を覆って塞ぐ扉と、上記扉で上記ポッドを塞いだときに内部を気密にシールするシール材とを備えたレチクル搬送容器であって、
上記扉の外側表面に形成されて、装置側に位置決めして取り付けるためのキネマティックピングルーブを、180°方向を変えて二組設けたことを特徴とするレチクル搬送容器。
【請求項2】
請求項1に記載のレチクル搬送容器において、
上記ポッドの外側表面のうち、上記キネマティックピングルーブに対応した位置に、上記キネマティックピングルーブを受けて保持するための受け部を、上記二組のキネマティックピングルーブをいずれの方向からでも嵌合できるように配設したことを特徴とするレチクル搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−173273(P2006−173273A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361885(P2004−361885)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】