説明

レーザリフトオフ装置

【課題】レーザ光をワークに照射することによりワークから発生する種々の粒塵による悪影響を除去すること。
【解決手段】ワークステージ10のステージ部11の周縁に、環状外壁部21bと天井壁部21aから構成される環状壁部21が設置され、ステージ部11には、排気機構に連結する排出口12が複数箇所に設けられている。この排出口12には配管22を介して例えばポンプやファンなどの排気機構が連結され、環状壁部21内の空気を吸引する。ワーク1にレーザ光を照射することにより、そのエッジ部からガスと一緒に、環状外壁部21bと天井壁部21aとで区切られた内部空間Aに噴き出された粒塵は、排出口12に向かう流体の流れにより、ステージ部11に設けられた排出口12から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体により形成される半導体発光素子の製造プロセスにおいて、基板上に形成された材料層にレーザ光を照射することによって、当該材料層を分解して当該基板から剥離する(以下、レーザリフトオフという)ためのレーザリフトオフ方法及びレーザリフトオフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN(窒化ガリウム)系化合物半導体により形成される半導体発光素子の製造プロセスにおいて、サファイア基板の上に形成されたGaN系化合物材料層(材料層)を当該サファイア基板の裏面からレーザ光を照射することにより剥離するレーザリフトオフの技術が知られている。以下、基板上に形成された材料層に対してレーザ光を照射して基板から材料層を剥離することをレーザリフトオフと呼ぶ。
【0003】
例えば、特許文献1においては、サファイア基板の上にGaN層を形成し、当該サファイア基板の裏面からレーザ光を照射することにより、GaN層を形成するGaNが分解され、当該GaN層をサファイア基板から剥離するレーザリフトオフ方法について記載されている。以下では基板上に材料層が形成されたものをワークと呼ぶ。
特許文献2には、ワークを搬送しながらワークに対してサファイア基板越しにライン状のレーザ光を照射することが記載される。具体的に同文献には、図12に示すように、サファイア基板121とGaN系化合物の材料層122の界面への照射領域123がライン状になるようにレーザ光124を成形し、サファイア基板121をレーザ光124の長手方向と垂直方向に移動させながら、当該レーザ光124をサファイア基板121の裏面から照射するレーザリフトオフ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−501778号公報
【特許文献2】特開2003−168820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、基板上に形成された材料層に対してレーザ光を照射して基板から材料層を剥離するレーザリフトオフの技術が知られているが、このようなレーザリフトオフ処理においては、ワークにレーザ光を照射することにより、ワークから種々の粒塵が発生することが分かった。ワークから発生する種々の粒塵としては、例えば次のものが考えられる。
・GaNに対してレーザ光を照射することで分解したGaの粒子。
・レーザ光の照射によって分解しきれなかったGaNの粒子。
・GaN層は後述するように、サポート基板と貼り合せた後にレーザ光を照射してリフトオフするが、レーザ光の照射によって発生する該サポート基板の構成物質の粒子(例えば、Si)。
・GaN層とサポート基板との貼り合せに使う貼合せ剤の粒子(例えば、半田、合成樹脂)
【0006】
上記した種々の粒塵は、材料層がGaNである場合、レーザ光の照射によってGaNが分解して生成したNガスと一緒に、ワークのエッジ部からワークの面と平行方向に噴出される。
上記の粒塵を放置して該粒塵がワーク上に付着した場合、レーザ光が粒塵によって遮られ、材料層の未分解部分が発生する。材料層の未分解部分が発生すると、リフトオフの不良につながる。また、最悪の場合、サファイア基板と材料層との間で生じる応力が未分解部分に集中することにより、ワークが割れる惧れがある。
【0007】
このようにレーザ光をワークに照射することによって種々の粒塵が発生するという問題は、基板と、該基板とは異種の材料からなる材料層とからなるワークに対してレーザ光を照射し、材料層を基板との界面付近で分解させ、基板から該基板とは異種の材料層を剥離することによって発生する。
一方、例えば露光装置では、基板とは異種の材料層を基板との界面付近で分解させるという工程を実施しないので、「粒塵」といった問題は生じない。すなわち、レーザリフトオフ処理においては、通常の露光処理程では見られない「粒塵」が発生するという特有の問題があり、これにより、レーザリフトオフ処理の不良につながることがあった。
本発明は上記事情に基づきなされたものであって、基板上に形成された材料層に対してレーザ光を照射して基板から材料層を剥離するレーザリフトオフ装置において、レーザ光をワークに照射することによりワークから発生する種々の粒塵による悪影響を除去することができるレーザリフトオフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ワークにレーザ光を照射することで発生する「粒塵」は、例えば材料層がGaNである場合、レーザ光照射によってGaNが分解することで生成したNガスと一緒に、ワークのエッジ部からワークの面と平行方向に噴出される。本発明では、かかるワークの面と平行方向に向けてNガスと一緒に噴出される「粒塵」を集塵する集塵機構を設けた。
上記集塵機構は、ワークのエッジ部における基板と材料層の貼り合わせ面よりも上方に伸びだす壁面と、前記粒塵の排出口とを有し、該壁面の端部は、前記レーザ光源から照射されるレーザ光を遮らないように、前記ワークのエッジ部の近傍に位置し、前記ワークのエッジ部から、該ワーク面に対して平行に噴出される粒塵を、差圧により生ずる上記排出口に向かう空気の流れにより、前記排出口から排出させる。
このように、本発明は、材料層のGaNが分解することによってNガスと一緒に噴出される材料層の「粒塵」を、集塵機構により集塵し、外方に飛散することを抑制することができる。したがって、ワークから発生する「粒塵」がレーザリフトオフ処理に悪影響を与えるのを効果的に防止することができる。
また、本発明のレーザリフトオフ装置は、前記ワークのエッジ部における基板と材料層の貼り合わせ面よりも上方に伸びだす壁面を有し、該壁面の端部を前記ワークのエッジ部の近傍に位置させる。そして、該壁面と前記ステージ部の間の空間を、前記ワークのエッジ部の周囲の空間よりも減圧状態とする機構を設けている。
このように、基板と材料層の貼り合わせ面よりも上方に伸びだす壁面を設け、該壁面の端部を前記ワークのエッジ部の近傍に位置させ、該ワーク面に対して平行に噴出される粒塵を差圧を利用して排出口から排出するようにしたので、「粒塵」を効果的に排出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)ワークにレーザ光を照射することによってワークのエッジ部から噴出される粒塵を集塵する集塵機構を、ワークのエッジ部を取り囲むように設けたので、レーザ光照射によりNガスと一緒にワークのエッジ部からワークの面と平行方向に噴出される粒塵を効果的に回収することができる。このため、粒塵がワーク上に付着する等により、レーザ光が粒塵によって遮られ、ワークの材料層に未分解部分が発生するという問題を解消することができる。
(2)ワークのエッジ部における基板と材料層の貼り合わせ面よりも上方に伸びだす壁面と、前記粒塵の排出口とを設け、該壁面の端部を、前記レーザ光源から照射されるレーザ光を遮らないように前記ワークのエッジ部の近傍に位置させ、差圧を利用して排出口に向かう空気の流れを作り出し、粒塵を排出口から排出させるようにしたので、粒塵の舞い上がりを抑止し、かつ、粒塵を効果的に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例のレーザリフトオフ処理の概要を説明する概略図である。
【図2】本発明の実施例のレーザリフトオフ装置の光学系の構成を示す概念図である。
【図3】本実施例のレーザリフトオフ方法を説明する図である。
【図4】ワークの互いに隣接する領域S1,S2に重畳して照射されるレーザ光の強度分布を示す図である。
【図5】ワークのエッジ部から粒塵が噴き出される様子を説明する図である。
【図6】集塵機構を備えた本発明の実施例のワークステージの断面図である。
【図7】集塵機構を備えた本発明の実施例のワークステージの斜視図である。
【図8】本発明の実施例のワークステージの変形例を示す図である。
【図9】本発明の集塵機構を備えたワークステージの第2の実施例を示す図である。
【図10】本発明の集塵機構を備えたワークステージの第3の実施例を示す図である。
【図11】GaN系化合物材料層により形成される半導体発光素子の製造方法を説明する図である。
【図12】ライン状のレーザ光をレーザ光の長手方向と垂直方向に移動させながら照射する従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施例のレーザリフトオフ処理の概要を説明する概略図である。
本実施例において、レーザリフトオフ処理は次のように行われる。
図1(b)に示すレーザ光を透過する基板1aと材料層1bとサポート基板1cが積層されたワーク1が、図1(a)に示すようにワークステージ10に載置されている。ワーク1は、ワークステージ10上に、基板1aが上になるように載置される。
ワーク1を載せたワークステージ10は、コンベヤのような搬送機構2に載置され、搬送機構2によって所定の速度で搬送される。ワーク1は、ワークステージ10と共に図中の矢印AB方向に搬送されながら、基板を通じて、図示しないパルスレーザ源から出射するパルスレーザ光Lが照射される。
ワーク1は、サファイアからなる基板1aの表面に、GaN(窒化ガリウム)系化合物の材料層1bが形成されてなるものである。基板1aは、GaN系化合物の材料層を良好に形成することができ、尚且つ、GaN系化合物の材料層を分解するために必要な波長のレーザ光を透過するものであれば良い。材料層1bには、低い入力エネルギーによって高出力の青色光を効率良く出力するためにGaN系化合物を用いることができる。材料層1bとしては、III族系化合物を用いることができ、上記GaN系化合物や、窒化インジウムガリウム(InGaN)系化合物、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系化合物などがある。
材料層1bはパルスレーザ光Lが照射されることにより、材料層1bのGaNがGaとNとに分解する。
【0012】
レーザ光は、基板1aおよび基板1aから剥離する材料層1bを構成する物質に対応して適宜選択され、サファイアの基板1aからGaN系化合物の材料層1bを剥離する場合には、例えば波長248nmを放射するKrF(クリプトンフッ素)エキシマレーザを用いることができる。レーザ波長248nmの光エネルギー(5eV)は、GaNのバンドギャップ(3.4eV)とサファイアのバンドギャップ(9.9eV)の間にある。したがって、波長248nmのレーザ光はサファイアの基板からGaN系化合物の材料層を剥離するために望ましい。
上記ワーク1へのレーザ光照射によって、GaNが分解することで生成したNガスと一緒に、ワーク1のエッジ部からワークの面と平行方向に粒塵が噴出する。本実施例では、この粒塵を集塵するため、ワークステージ10の周縁に、集塵機構を構成する集塵用中空容器23が設けられている。なお、集塵機構に構成については後述する。
【0013】
図2は本発明の実施例のレーザリフトオフ装置の光学系の構成を示す概念図である。同図において、レーザリフトオフ装置は、パルスレーザ光を発生するレーザ源30と、レーザ光を所定の形状に成形するためのレーザ光学系40と、ワーク1が載置されるワークステージ10と、ワークステージ10を搬送する搬送機構2と、レーザ源30で発生するレーザ光の照射間隔および搬送機構2の動作を制御する制御部31とを備えている。
レーザ光学系40は、シリンドリカルレンズ41、42と、レーザ光をワークの方向へ反射するミラー43と、レーザ光を所定の形状に成形するためのマスク44と、マスク44を通過したレーザ光Lの像をワーク1上に投影する投影レンズ45とを備えている。ワーク1へのパルスレーザ光の照射領域の面積および形状は、レーザ光学系40によって適宜設定することができる。
【0014】
レーザ光学系40の先にはワーク1が配置されている。ワーク1はワークステージ10に載置される。ワークステージ10のワークの周縁には、後述する集塵機構を構成する集塵用中空容器23が設けられ、ワークから発生する粒塵を集塵する。
ワークステージ10は搬送機構2に載置されており、搬送機構2によって搬送される。これにより、ワーク1が、図1に示す矢印A、Bの方向に順次に搬送され、ワーク1におけるレーザ光の照射領域が刻々と変わる。制御部31は、ワーク1の隣接する照射領域に照射される各レーザ光の重畳度が所望の値になるように、レーザ源20で発生するパルスレーザ光のパルス間隔を制御する。
【0015】
レーザ源30から発生するレーザ光Lは波長248nmの紫外線を発生する例えばKrFエキシマレーザである。レーザ源としてArFレーザやYAGレーザを使用しても良い。ワーク1の光入射面3Aは、投影レンズ45の焦点Fに配置されている。レーザ源20で発生したパルスレーザ光Lは、シリンドリカルレンズ41、42、ミラー43、マスク44を通過した後に、投影レンズ45によってワーク1上に投影される。パルスレーザ光Lは、基板1aを通じて基板1aと材料層1bの界面に照射される。基板1aと材料層1bの界面では、パルスレーザ光Lが照射されることにより、材料層1bの基板1aとの界面付近のGaNが分解される。このとき、前記したように、ワーク1のエッジ部からワークの面と平行方向に粒塵が噴出する。
【0016】
図3は、ワークに対する領域を正方形となるように成形したパルスレーザ光を、ワークをレーザ源に対して一方向に搬送しながら照射する、本実施例のレーザリフトオフ方法を説明する図であり、図3(b)は図3(a)のX部の拡大図である。
このレーザリフトオフ方法では、パルスレーザ光の照射間隔と、ワーク1の搬送速度とを調整することにより、正方形状のパルスレーザ光の照射領域の、ワーク1の移動方向と平行方向に伸びるエッジ部およびワークの移動方向と直交方向に伸びるエッジ部の双方が重畳するように、ワーク1に対してパルスレーザ光を照射する。
図3のレーザリフトオフ方法では、ワーク1の紙面上方のエッジ部を超えるように、紙面のHAの方向に向け、パルスレーザ光を各照射領域が線状に並ぶように順次に照射し、パルスレーザ光の照射領域S1ないしS4を形成する。そして、パルスレーザ照射領域の大きさからレーザ重畳領域STを差し引いた分だけワーク1を紙面下方のHB方向に移動させた後、紙面のHCの方向に向けて、パルスレーザ光を各照射領域が線状に並ぶように順次に照射し、パルスレーザ光照射領域S5ないしS10を形成する。
【0017】
ワーク1の移動方向において隣接する各照射領域S1ないしS10の、ワーク1の移動方向と直交する方向に伸びるエッジ部が、互いに重畳する。また、ワークの移動方向と直交方向において隣接する各照射領域S1とS9、S2とS8、S3とS7、S4とS6の、ワークの移動方向と平行方向に伸びるエッジ部が、互いに重畳する。
図4はワークの互いに隣接する領域S1,S2に重畳して照射されるレーザ光の強度分布を示す図である。同図に示すように、各パルスレーザ光の照射領域は、材料層であるGaNの分解閾値VEを超える領域で重畳される。このようにして、図3に示すように、順次に形成された複数のパルスレーザ光の照射領域が一方向において線状に並んで形成される複数の照射領域群G1〜G6を形成する。
【0018】
本発明のレーザリフトオフ方法では、ワーク1の一端からパルスレーザ光の照射を開始し、ワーク1の他端に対して最後にパルスレーザ光を照射する。つまり、図3に示すように、レーザ光を照射した順番どおりに、ワークの一端から他端に向けて、各照射領域群G1〜G6が順次に並ぶように、各照射領域群を形成する。ワーク1において最初に形成される照射領域群G1では、各照射領域S1〜S4が、ワーク1の一方のエッジ部から伸びだすように、パルスレーザ光を照射する。ワーク1において最後に形成される照射領域群G6では、各照射領域が、ワーク1の他方のエッジ部から伸びだすように、パルスレーザ光を照射する。こうすることによって、基板から順次剥離されたGaNの四角形状の剥離領域では、基板からはじめて剥離されるエッジ部が常に2辺になる。
【0019】
ここで、上記のレーザリフトオフ装置は、レーザ光をワークに照射することによってワーク1のエッジ部から、材料層のGaNが分解することで発生したGaの粒子などの粒塵が噴き出される。図5に示すように、レーザ光を一方向にスキャンさせながらワークに照射する場合、各照射領域群G1〜G6において(図5ではG2について説明する)、最初にレーザ光が照射されるワークのエッジ部と、最後にレーザ光が照射されるワークのエッジ部から、粒塵Dが噴き出される。粒塵Dは、材料層であるGaN層の分解時に発生したNガスと一緒に、ワークの面と平行方向に勢い良く噴き出される。
【0020】
本発明の実施例のレーザリフトオフ装置は、かかる粒塵を集塵して排気するための、集塵機構を備える。
図6、図7は本発明の集塵機構の第1の実施例を示す図であり、環状外壁部と天井壁部から構成される環状壁部を備えた集塵機構20の構成例を示す。図6は本実施例のワークステージの断面図、図7はワークが載置されていない状態のワークステージの斜視図であり、同図(b)は、集塵機構の天井壁部を除去した状態を示している。
図6に示されるように、ワークステージ10のステージ部11の周縁には、集塵用中空容器23として機能する環状外壁部21bと天井壁部21aから構成される環状壁部21が設置される。ステージ部11は、ワーク1および環状壁部21を載置した状態で、レーザ源に対して相対的に移動可能である。
【0021】
環状壁部21は、例えばステンレスによって有底の円筒形状に構成され、ワーク1のエッジ部を取り囲むよう設けられた、ワーク1の面に対して垂直方向に伸びる環状外壁部21bと、該環状外壁部21aからワーク1側に向けてワーク1の面と平行方向に庇状に伸び出した天井壁部21aとで構成される。該環状外壁部21bは、ワークの光照射面よりもやや高くなるように設けられる。該天井壁部21aの中央には、レーザ光を遮蔽することがないよう光入射開口21cが形成される。該光入射開口21cの大きさは、ワーク1の交換を容易に行うことができるように、その開口エッジがワークエッジ部の直上に配置されない程度の大きさとされる。かかる環状壁部21は、環状外壁部21bと天井壁部21aとによりある程度区切られた内部空間を有する。
【0022】
上記環状壁部21は、ステージ部11上に設置される。ステージ部11には、排気機構に連結するための排出口12が複数箇所に亘り設けられている。複数の排出口12は、図7(b)に示すように、環状壁部21寄りに配置され、環状壁部21に沿って環状に形成される。
この排出口12には配管22を介して例えばポンプやファンなどの排気機構が連結され、環状壁部21内の空気を吸引するようになっている。粒塵Dがワーク1のエッジ部からワーク1の面と平行方向に噴き出すというレーザリフトオフ装置の性質上、排出口12はワーク1の直近よりも環状壁部21の環状外壁部21b付近に設けることが好ましい。排出口12をステージ部11に設けた場合は、排気機構と連結するための配管22をステージ部11に直接連結することができるので、装置構造をシンプルにすることができる。
環状壁部21は、その内部空間の空気を排気機構で吸引することによって、内部空間を−10KPa〜−30KPa程度、大気圧よりも減圧した状態とされる。また、環状壁部21内の種々の集塵を排気するためには、該環状壁部21の内部空間において概ね0.5〜1.0m/秒の風速が必要とされる。
【0023】
次に、上記実施例のレーザリフトオフ装置の動作について説明する。
まず、レーザ源(図2参照)を駆動することにより、ワーク1に対して波長248nmのKrFレーザ光を照射する。ワーク1の基板1aとの界面付近のGaNは、レーザ光が照射されることによってGaとNとに分解される。ワーク1のエッジ部からは、図5に示すように、GaNの分解によって発生したNガスと一緒に前述した粒塵Dがワーク1の面と平行方向に噴き出される。
配管22を介して環状壁部21の天井壁部21aとステージ部11との間の空間Aを減圧することにより、当該空間Aと空間Aの外部との差圧により、図6の矢印に示すような流体の流れが作り出される。これによって、噴出された粒塵Dは天井壁部21aの外方に舞い上がることが抑止され、かつ、粒塵Dは排出口12から排出される。
【0024】
以上説明した本発明の実施例のレーザリフトオフ装置においては、ワーク1に対してレーザ光を照射することによって不可避的に種々の粒塵がワーク1のエッジ部から噴き出されるものの、ワーク1のエッジの周囲には環状壁部21が設けられ、環状壁部21内へ噴出された粒塵は図6の矢印に示す流体の流れによって、環状壁部21外に排出される。
従って、本発明のレーザリフトオフ装置では、レーザリフトオフ処理時に発生した種々の粒塵がワークのレーザ光照射面に付着されることを確実に防止することができるため、材料層の未分解やワークの割れといった不具合が生じる惧れが無い。
さらに、本発明のレーザリフトオフ装置は、環状壁部21がステージ部11に設置され、該ステージ部11の、前記環状壁部21の環状外壁部21bより内方側には、前記排気機構に接続するための排出口12が形成されている。かかるレーザリフトオフ装置の構成は、排出口12をワーク1のエッジ部の周囲に設けることによって、ワーク1の面と平行方向に噴き出された「粒塵」の排出を効果的に行うことができ、且つ、排気機構に接続するための配管などの設置が容易になるため装置構造をシンプルにすることができる。
また、天井壁部21aを設けることにより、天井壁部21aとステージ部11との間にバッファ空間Aが形成される。このバッファ空間Aは、ワークのエッジ部からGaNの分解によって発生したNガスと一緒に粒塵Dが、ワークの面と平行方向に瞬間的に大量に噴き出された際に、粒塵Dが天井壁部21aの外部に舞い上がることを抑える機能を有する。
【0025】
図8(a)(b)は本実施例の変形例を示す図であり、環状壁部の他の構成例を示す断面図であり、図6に示したものと同一のものには同一の符号が付されている。
排気機構に連結するための排出口12は、図7に示したようにステージ部11に設ける場合に限らず他の位置に設けてもよい。例えば、図8(a)のように環状壁部21の天井壁部21aに形成したり、図8(b)に示すように、環状壁部21の環状外壁部21bに形成することもできる。
【0026】
図9は本発明の集塵機構を備えたワークステージの第2の実施例を示す図である。本実施例は、上記環状壁部21に代えて、集塵用中空容器23として、円環状に形成されワーク面に対して傾斜して配置された、天井壁部24を設けたものである。その他の構成は図6、図7と同様であり、ステージ部11には、排気機構に連結するための排出口12が複数箇所に亘り設けられている。この排出口12には配管22を介して例えばポンプやファンなどの排気機構が連結され、環状壁部21内の空気を吸引する。
本実施例においても、ワーク1のエッジ部からガスと一緒に噴き出された粒塵Dは、図9の矢印に示す流体の流れによって、ステージ部11に設けられた排出口12から排出される。また、天井壁部24を設けることにより、天井壁部24とステージ部11との間にバッファ空間Aが形成される。このバッファ空間Aは、ワークのエッジ部からGaNの分解によって発生したNガスと一緒に粒塵Dが、ワークの面と平行方向に瞬間的に大量に噴き出された際に、粒塵Dが天井壁部21aの外部に舞い上がることを抑える機能を有する。
【0027】
図10は、本発明の第3の実施例を示す図であり、本実施例の集塵機構は、気体をステージ部の上側から流入させることにより、粒塵を排出させるようにしたものである。
本実施例は、前記図6において、集塵用中空容器23の上に、レーザ光を透過させるための窓部25aを有する密封容器25を取り付けたものである。該密封容器25には、該密封容器25内に気体を流入させるための供給管25bが設けられている。また、ステージ部11には、配管22を介して大気に連通する排出口12が設けられている。
供給管25bを介して密閉容器25の上方側の空間Bに給気することにより、上方側の空間Bを下方側の空間Aよりも陽圧にする。これにより、上方側の空間Bと下方側の空間Aの差圧により図10の矢印に示すような流体の流れを作り出す。これによって、粒塵Dが天井壁部21aの外方に舞い上がることを抑止し、かつ、粒塵Dを排出口12から排出する。
また、天井壁部21aを設けることにより、天井壁部21aとステージ部11との間にバッファ空間Aが形成される。このバッファ空間Aは、ワークのエッジ部からGaNの分解によって発生したNガスと一緒に粒塵Dが、ワークの面と平行方向に瞬間的に大量に噴き出された際に、粒塵Dが天井壁部21aの外部に舞い上がることを抑える機能を有する。
なお、前記図8に示した第1の実施例の変形例や、図9に示した第2の実施例の集塵機構において、上記第3の実施例のように、気体をステージ部に流入させることにより、粒塵を排出させるようにしてもよい。
【0028】
次に、上記したレーザリフトオフ方法を用いることができる半導体発光素子の製造方法について説明する。以下ではGaN系化合物材料層により形成される半導体発光素子の製造方法について図11を用いて説明する。
結晶成長用の基板には、レーザ光を透過し材料層を構成する窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体を結晶成長させることができるサファイア基板を使用する。図11(a)に示すように、サファイア基板101上には、例えば有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いて迅速にGaN系化合物半導体よりなるGaN層102が形成される。
続いて、図11(b)に示すように、GaN層102の表面には、発光層であるn型半導体層103とp型半導体層104とを積層させる。例えば、n型半導体としてはシリコンがドープされたGaNが用いられ、p型半導体としてはマグネシウムがドープされたGaNが用いられる。
【0029】
続いて、図11(c)に示すように、p型半導体層104上には、半田105が塗布される。続いて、図11(d)に示すように、半田105上にサポート基板106が取付けられる。サポート基板106は例えば銅とタングステンの合金からなる。
そして、図11(e)に示すように、サファイア基板101の裏面側からサファイア基板101とGaN層102との界面に向けてレーザ光107を照射する。レーザ光107は、照射領域が0.25mm以下の面積を有する正方形となり、かつ、光強度分布が図4に示したような略台形状となるように成形される。
レーザ光107をサファイア基板101とGaN層102の界面に照射して、GaN層102を分解することにより、サファイア基板101からGaN層102を剥離する。剥離後のGaN層102の表面に、図11(f)に示すように、透明電極であるITO108を蒸着により形成し、ITO108の表面に電極109を取付ける。
【符号の説明】
【0030】
1 ワーク
1a 基板(サファイア基板)
1b 材料層
1c サポート基板
2 搬送機構
10 ワークステージ
11 ステージ部
12 排出口
20 集塵機構
21 環状壁部
21b 環状外壁部
21a 天井壁部
21c 光入射開口
22 配管
23 集塵用中空容器
24 天井壁部
25 密封容器
25a 窓部
25b 供給管
30 レーザ源
31 制御部
40 レーザ光学系
41、42 シリンドリカルレンズ
43 ミラー
44 マスク
45 投影レンズ
101 サファイア基板101
102 GaN層
103 n型半導体層
104 p型半導体層
105 半田
106 サポート基板
107 レーザ光
108 ITO
109 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に材料層が形成されてなるワークを載置するステージ部と、該ワークに対し該基板を透過する波長域のレーザ光を出射するレーザ源と、該ワークと該レーザ源とを相対的に搬送しながら該基板を通してレーザ光を照射し、該基板と該材料層との界面で該材料層を分解して、該材料層を該基板から剥離するレーザリフトオフ装置において、
前記ワークにレーザ光を照射することによって該ワークのエッジ部から、該ワーク面に対して平行に噴出される粒塵を集塵する集塵機構を備え、
前記集塵機構は、前記ワークのエッジ部における基板と材料層の貼り合わせ面よりも上方に伸びだす壁面と、前記粒塵の排出口とを有し、
該壁面の端部は、前記レーザ光源から照射されるレーザ光を遮らないように、前記ワークのエッジ部の近傍に位置し、
前記ワークのエッジ部から、該ワーク面に対して平行に噴出される粒塵を、差圧を利用して該壁面と前記ステージ部の間の空間に導き、前記排出口から排出させる機構を備えた
ことを特徴とするレーザリフトオフ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−191112(P2012−191112A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55252(P2011−55252)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】