説明

レーザー彫刻用感光性樹脂組成物

【課題】光による硬化が可能であり、近赤外線レーザー光で彫刻することが可能であり、高精細な彫刻が可能な印刷原版を実現し得るレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】以下の(a)〜(c)の各成分、
(a)数平均分子量が1000〜20万の高分子化合物、
(b)分子量が1000未満であり、重合性不飽和基を有する有機化合物、
(c)平均1次粒径が20nmより大きく、80nm未満であり、且つDBP吸油量が60mL/100g〜150mL/100gであるカーボンブラック、
を含むことを特徴とするレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻用感光性樹脂組成物、印刷原版、及び印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルムなどの包装材、壁紙、化粧板などの建装材、ラベル印刷などに用いられるフレキソ印刷は、各種の印刷方式の中でその比重を高めている。これに用いる印刷版の製作には、通常、感光性樹脂が用いられることが多く、液状の樹脂、又はシート状に成形された固体樹脂板を用い、フォトマスクを感光性樹脂上に置き、マスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという方法が用いられてきた。
【0003】
近年、現像工程の省略を目的として、直接レーザーで印刷原版を彫刻する方法が開発されている。特許文献1:特開2001−121833号公報には、シリコーンゴムを用い、その中にレーザー光線の吸収体としてカーボンブラックを混合する記載がある。また、特許文献2:特許第2846954号公報、特許文献3:特許第2846955号公報には、SBS、SIS、SEBS等の熱可塑性エラストマーが機械的、光化学的、熱化学的に強化された材料を用いることが開示されている。
一方、特許文献4:特公表2004−535962号公報には、エラストマー性レリーフ層の硬化性を改良するため、エラストマー性レリーフ層を電子線架橋する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−121833号公報
【特許文献2】特許第2846954号公報
【特許文献3】特許第2846955号公報
【特許文献4】特表2004−535962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1〜3に記載の樹脂組成物はいずれもカーボンブラックを多量に含有する。近赤外線領域に発振波長を有するレーザー光(以下、「近赤外線レーザー光」と略記することがある。)を用いて樹脂製の印刷原版を彫刻する場合、殆どの樹脂はこの波長領域に光吸収を有しないため、レーザー光を吸収する物質(カーボンブラックや色素、等)を印刷原版中に多量に配合する必要がある。カーボンブラックや色素は紫外光領域あるいは可視光領域にも光吸収を有するため、それらが多量に含まれる場合には、印刷原版を通常の光硬化法(紫外光又は可視光を用いる)によって光硬化させることが困難であった。つまり、版内部の十分な硬化性と近赤外線レーザーを用いた彫刻性とを両立することは困難な課題であった。
また、特許文献4には電子線を用いた硬化方法が記載されており、当該方法を用いる場合には版内部を比較的良好に硬化させることが可能となる。しかし、レーザー彫刻性の観点からカーボンブラックを多量に含有する印刷原版においては、カーボンブラックの分散性が一般に乏しく、高精細な彫刻を行なう観点からなお改善の余地があった。
本発明は、光による硬化が可能であり、近赤外線レーザー光で彫刻することが可能であり、高精細な彫刻が可能な印刷原版を実現し得るレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、ある特定のカーボンブラックを特定の樹脂組成物に配合する事により、光硬化が可能であり、近赤外線レーザーでの高精彩彫刻が可能な印刷原版を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
以下の(a)〜(c)の各成分、
(a)数平均分子量が1000〜20万の高分子化合物、
(b)分子量が1000未満であり、重合性不飽和基を有する有機化合物、
(c)平均1次粒径が20nmより大きく、80nm未満であり、且つDBP吸油量が60mL/100g〜150mL/100gであるカーボンブラック、
を含むことを特徴とするレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[2]
前記(c)成分のpHが1〜5である[1]に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[3]
前記(c)成分の含有率が0.01〜30質量%である[1]又は[2]に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[4]
前記(b)成分が、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸である[1]〜[3]のいずれかに記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[5]
前記(a)成分の20℃における性状が液状である[1]〜[4]のいずれかに記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[6]
更に、以下の(d)成分、
(d)成分:重合開始剤、
を含む[1]〜[5]のいずれかに記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[7]
更に、以下の(e)成分、
(e)成分:酸化物微粒子、
を含む[1]〜[6]のいずれかに記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を用いてなる印刷原版。
[9]
[8]に記載の印刷原版にレーザー彫刻を施してなる印刷版。
【発明の効果】
【0008】
光による硬化が可能であり、近赤外線レーザー光で彫刻することが可能であり、高精細な彫刻が可能な印刷原版を実現し得るレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本実施の形態のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物は、以下の(a)〜(c)の各成分、
(a)成分:数平均分子量が1000〜20万の高分子化合物、
(b)成分:分子量が1000未満であり、重合性不飽和基を有する有機化合物、
(c)平均1次粒径が20nmより大きく、80nm未満であり、且つDBP吸油量が60mL/100g〜150mL/100gであるカーボンブラック、
を含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、本実施の形態において上記構成を採用することにより、版内部の十分な硬化性、近赤外線レーザーを用いた彫刻性、高精細な彫刻性が実現される機構について、その詳細は詳らかでないが、次のような機構が考えられる。
即ち、特定の粒径、及びDBP吸油量を有する前記(c)成分が、比較的構造の小さな前記(b)成分と相互作用することにより、前記(c)成分が組成物中に良好に微分散し得る。前記(c)成分の良好な微分散が実現することは前記(c)成分の配合量を低減し得ることに繋がり、その結果、組成物は十分な光硬化性を備える傾向となる。
一方、組成物の光硬化後、近赤外線レーザー光による彫刻を行なう際には前記(c)成分が彫刻の起点となり得るが、前記(c)成分の吸収するレーザー光エネルギーが前記(b)成分に効率よく伝達される結果、前記(c)成分の配合量が少ない場合であっても近赤外線レーザーを用いた彫刻性が損なわれない。
他方、平均1次粒径が比較的小さな(c)成分が良好に微分散しているため、彫刻の際に前記(c)成分の吸収するレーザー光エネルギーが樹脂組成物に伝達される範囲が局所的となり、高精細な彫刻性が実現されることとなる。
【0012】
前記(a)成分としては、エラストマー、非エラストマーのいずれも用いることができる。これらは併用することも可能である。
前記エラストマーとしては、例えば熱可塑性エラストマーを用いることができる。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等のスチレン系熱可塑性エラストマー;オレフィン系熱可塑性エラストマー;ウレタン系熱可塑性エラストマー;エステル系熱可塑性エラストマー;アミド系熱可塑性エラストマー;シリコーン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
なお、本実施の形態において「熱可塑性エラストマー」とは、加熱することにより流動し通常の熱可塑性プラスチック同様成形加工ができ、常温ではゴム弾性を示す材料である。分子構造としては、一般に、ポリエーテルあるいはゴム分子のようなソフトセグメントと、常温付近では加硫ゴムと同じく塑性変形を防止するハードセグメントからなる。ハードセグメントとしては凍結相、結晶相、水素結合、イオン架橋など種々のタイプのセグメントが存在する。
【0013】
前記熱可塑性エラストマーとしては、熱分解性をより向上させる観点から、分子骨格中に分解性の高い易分解性官能基を主鎖に導入したポリマーを用いることが好ましい。易分解性官能基としては、例えば、カルバモイル基、カーボネート基等が挙げられる。
また、前記熱可塑性エラストマーは印刷版の用途により適宜選択される。例えば、耐溶剤性が要求される分野では、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系熱可塑性エラストマーが好ましく使用される。一方、耐熱性が要求される分野では、ウレタン系、オレフィン系、エステル系、フッ素系熱可塑性エラストマーが好ましく使用される。
【0014】
前記非エラストマーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂、等を挙げることができる。
【0015】
前記(a)成分としては、印刷版の機械的強度をより向上させる観点から、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を用いることが好ましい。特にポリウレタン系、ポリエステル系熱可塑性エラストマーにおいて重合性不飽和基を分子内に有する化合物を用いることが好適である。ここで、「分子内に重合性不飽和基を有する」とは、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端、高分子主鎖中や側鎖中に重合性不飽和基(ビニル基等)が導入されている態様が含まれる。重合性不飽和基は直接導入されても良いし、結合剤を介して導入されてもよい。
【0016】
前記(a)成分の数平均分子量としては、1000〜20万、好ましくは2000〜15万、より好ましくは5000〜10万、更に好ましくは7000〜8万である。数平均分子量を1000から20万の範囲とすることは、印刷原版の機械的強度を確保してレーザー彫刻時に樹脂を充分に溶融あるいは分解させる観点から好適である。
なお、本実施の形態において「数平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレン標品に対して評価したものである。
【0017】
前記(a)成分の20℃における性状としては、固体状であっても液状であっても良いが、特に、円筒状樹脂版への加工の容易性の観点、また、レーザー光に対する分解のし易さの観点からは、液状であることが好ましい。
ここで、「液状」とは、20℃での動的粘弾性測定におけるせん断速度1.0(1/s)における粘度が100kPa・s以下であると定義される。
【0018】
一方、前記(a)成分として20℃における性状が固体状である化合物を用いる場合、前記(a)成分の軟化温度としては、好ましくは50℃以上300℃以下、より好ましくは80℃以上250℃以下、更に好ましくは100℃以上200℃以下である。軟化温度を50℃以上とすることは、常温で固体として取り扱い、シート状あるいは円筒状に加工したものを変形させずに取り扱う観点から好ましい。また軟化温度を300℃以下とすることは、円筒状に加工する際の加工温度を抑制し、混合する他の化合物を変質、分解させない観点から好適である、
なお、本実施の形態における「軟化温度」とは、動的粘弾性測定装置を用い、室温から温度を上昇させた場合に粘性率が大きく変化する(粘性曲線の傾きが変化する)最初の温度として測定される温度である。
【0019】
前記(a)成分が前記熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂を含む場合、このような熱可塑性樹脂が前記(a)成分中に占める割合としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。当該割合を30質量%以上とすることは、レーザー光の照射により樹脂を充分に流動化させ、後述する(e)成分への彫刻カスの吸着性を向上させる観点から好適である。
【0020】
前記(b)成分としては、例えばラジカル重合反応や付加重合反応に関与する重合性不飽和基を有する化合物が挙げられる。
前記(b)成分としてより具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾール;シアネートエステル類;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0021】
また、汎用性・重合速度の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましく用いられる。(メタ)アクリル酸の誘導体とは、(メタ)アクリル酸の構造式中に種々の置換基が導入された化合物を意味し、(メタ)アクリル酸のα位やβ位に置換基が導入された化合物や、(メタ)アクリル酸のエステル誘導体、等を例示することができる。
ここで、上記置換基としては、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基、などの脂環族基;
ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、などの芳香族基(更に、これらのような置換基にアルキル基等が導入された置換芳香族基を含む。);
アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、アリル基、グリシジル基、アルキレングリコール基、ポリオキシアルキレングリコール基、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール基、トリメチロールプロパン基、多価アルコール基、等が挙げられる。
【0022】
そして、前記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、前記(c)成分との相互作用の観点から、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸が好ましく、中でも、(メタ)アクリル酸の芳香族基によるエステル誘導体が好ましい。このような(メタ)アクリル酸の芳香族基によるエステル誘導体としては、例えば、フェノキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
なお、前記(b)成分の分子量(分子式に基づく分子量)としては1000未満であるが、前記(a)成分との相溶性、前記(c)成分との相互作用の観点から、好ましくは800以下である。一方、下限としては、好ましくは28以上である。
【0024】
前記(c)成分として用いられるカーボンブラックの平均1次粒径としては、20nmより大きく80nm未満、好ましくは25nmより大きく70nm未満である。また、前記(c)成分として用いられるカーボンブラックのDBP吸油量としては、60mL/100g〜150mL/100g、好ましくは65mL/100g〜130mL/100gである。
前記(c)成分として用いられるカーボンブラックの平均1次粒径及びDBP吸油量を当該範囲とすることは、版内部の十分な硬化性、近赤外線レーザーを用いた彫刻性、高精細な彫刻性をより良好に実現させる観点から好適である。
【0025】
前記(c)成分のpHとしては、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2.5〜3である。pHを当該範囲に設定することは、前記(c)成分の凝集をより低減させ、(c)成分の配合量が少量でもレーザー光を効率良く吸収可能であり、光硬化が容易な印刷原版を実現させる観点からより好適である。
なお、本実施の形態における「平均1次粒径」、「DBP吸油量」、「pH」は、後述の実施例における測定法に準じて測定できる。
【0026】
前記(c)成分としては市販品を用いることができる。このような市販品としては、例えばカーボンブラックの例として、Special Black100(Degussa社製、平均1次粒径50nm、DBP吸油量94mL/100g、pH3.3)、TOKABLACK A700F(東海カーボン社製、平均1次粒径62nm、DBP吸油量121mL/100g、pH3)、MA220(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径55nm、DBP吸油量93mL/100g、pH3)、MA77(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径23nm、DBP吸油量68mL/100g、pH3)、MA100(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径24nm、DBP吸油量100mL/100g、pH3)などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0027】
前記(c)成分が、前記レーザー彫刻用感光性樹脂組成物中に占める割合としては、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.1〜25質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%である。当該配合量に設定する事は、感光性樹脂組成物を容易に光硬化させる観点から好適である。
【0028】
本実施の形態におけるレーザー彫刻用感光性樹脂組成物は、更に、以下の(d)成分、
(d)成分:重合開始剤、
を含むことができる。
このような(d)成分としては、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年、培風館発行に記載された、ラジカル重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤を含む)、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤を用いることができる。
【0029】
ここで、光重合開始剤を用いて感光性樹脂組成物の硬化を行なうことは、本実施の形態の感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を形成する観点から好ましい。
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、アントラキノン類等の光ラジカル重合開始剤のほか、光を吸収して酸を発生する芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤あるいは光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
なお、前記(d)成分としては、有機過酸化物などの熱重合開始剤を単独で用いても良いし、熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用しても良い。
【0030】
前記(d)成分が、前記(a)成分と前記(b)成分の合計量に占める割合としては、好ましくは0.01〜10質量%である。
【0031】
本実施の形態におけるレーザー彫刻用感光性樹脂組成物は、更に、以下の(e)成分、
(e)成分:酸化物微粒子、
を含むことができる。
このような(e)成分としては、粒子中に微小細孔を有する、あるいは微小な空隙を有する無機粒子(無機多孔質体)であることが好ましい。前記(e)成分は、レーザー彫刻において粘稠性の液状カスが発生した場合、そのような液状カスを吸収除去する観点、及び版面のタック防止の観点から好ましく用いられる。また、その数平均粒子径、比表面積、平均細孔径、細孔容積、灼熱減量は、使用目的に応じて種々選定される。
【0032】
前記(e)成分の数平均粒子径としては、好ましくは0.001μm〜100μmであり、より好ましくは0.01μm〜20μmであり、更に好ましくは3μm〜10μmである。数平均粒子径を0.001μm以上とすることは、レーザー彫刻の際の粉塵低減、及び他の成分との混合性向上の観点から好ましい。一方、100μm以下とすることは、レーザー彫刻した際のレリーフ画像の欠損を低減する観点から好ましい。
なお、前記(e)成分の数平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0033】
前記(e)成分の平均細孔径は、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収量に極めて大きく影響を及ぼす。平均細孔径の好ましい範囲は、0.1nm以上1000nm以下、より好ましくは0.2nm以上200nm以下、更に好ましくは2nm以上50nm以下である。なお、本実施の形態にいう平均細孔径は、窒素吸着法を用いて測定した値である。
【0034】
前記(e)成分は、特に赤外線波長領域のレーザー光照射により変形あるいは溶融せずに多孔質性を保持することが望ましい。950℃において2時間処理した場合の灼熱減量が、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0035】
前記(e)成分の粒子形状は特に限定するものではなく、例えば、球状、扁平状、針状、無定形、あるいは表面に突起のある粒子などを使用することができる。その中でも、印刷版の耐磨耗性の観点から、特に球状粒子が好ましい。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体など使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、ナノポーラスシリカ、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。
【0036】
また、前記(e)成分の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化あるいは疎水性化した粒子を用いることもできる。
なお、本実施の形態における前記(e)成分は、1種類を単独で、もしくは2種類以上を併用することができる。
【0037】
本実施の形態において、前記(a)成分100質量部に対する前記(b)成分の配合量としては、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。
また、前記(a)成分100質量部に対する前記(d)成分の配合量としては、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。
更に、前記(a)成分100質量部に対する前記(e)成分の配合量としては、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜30質量部、更に好ましくは2〜20質量部である。前記(e)の配合量を50質量部以下とすることは、印刷版の耐摩耗性を向上させる観点から好適である。一方、1質量部以上とすることは、レーザー彫刻時に発生する液状カスの除去を効果的に実現する観点から好適である。
なお、前記(a)成分、及び前記(b)成分の合計量100質量部に対する前記(c)成分の配合量としては、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.1〜25質量部、更に好ましくは0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
【0038】
その他、本実施の形態のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料、分散剤などを添加することができる。
【0039】
レーザー彫刻を行なう際に用いる光源としては、版を形成する多くの樹脂の光吸収が少ない近赤外線領域、すなわち波長700nmから2μmの領域に発振波長を有するレーザー光(近赤外線レーザー光)が、特に好ましく用いられる。例えば、波長700nmから2μmの近赤外線領域に発振波長を有するレーザーとしては、半導体レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等を挙げることができる。近赤外線領域のレーザー光は、ビームを波長の倍程度の大きさまで絞ることができるため、高精細な印刷版を作製するツールとして極めて重要である。
また、樹脂版を構成する樹脂組成物(本実施の形態のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物)は、レーザー彫刻時に彫刻速度を確保するためには、溶融あるいは分解し易いものが好ましい。
【0040】
本実施の形態の感光性樹脂組成物を光架橋(光硬化)させる方法としては、例えば200nmから600nmの範囲の紫外線あるいは可視光線を照射する方法や、電子線を照射する方法を挙げることができる。作業性の観点からは、200nmから450nmの紫外線領域の光を用いることがより好ましい。200nmから600nmの範囲の光を用いることは、樹脂を分解させることなく充分に架橋させる観点から好適である。光を使って架橋させる方法は、装置が簡便で厚み精度が高くできるなどの利点を有し好適である。
【0041】
ここで、光硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等が挙げられる。硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
【0042】
上記感光性樹脂組成物を用いて形成される印刷原版の厚みとしては、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが、好ましくは0.01〜15mm、好ましくは0.01〜7mmの範囲である。場合によっては、組成の異なる材料を複数積層していても構わない。
また、本実施の形態の印刷原版としては、レーザー彫刻される層の下部にエラストマーからなるクッション層が形成された2層以上の構成とすることもできる。一般的にレーザー彫刻される層の厚さは、0.1mm〜10mmである。それ以外の下部層は組成の異なる材料であっても構わない。
更に、前記クッション層のショアA硬度としては、好ましくは20〜70度、より好ましくは30〜60度である。ショアA硬度を上記範囲とすることは、適度な変形性を確保し、印刷品質を確保する観点から好適である。
【0043】
前記クッション層の材質としては、例えば、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等が挙げられるが、ゴム弾性を有することが好適である。ナノメーターレベルの微細孔を有する多孔質エラストマー層であってもよい。特にシート状あるいは円筒状樹脂版への加工性の観点から、光で硬化する感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。シート状あるいは円筒状の樹脂版への成形の観点から、20℃で液状の感光性樹脂組成物を用いることが特に好ましい。
【0044】
前記クッション層に用いる熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
一方、光硬化型エラストマーとしては、前記熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤および光重合開始剤等を混合したもの、プラストマー樹脂に光重合性モノマー、光重合開始剤等を混合した液状組成物などを挙げることができる。
【0045】
前記クッション層の材質としては、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素等の非硫黄架橋型ゴムを用いることもできる。更に、テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
【0046】
本実施の形態において用いられるクッション層の材質としては、微細パターンの形成機能が重要な要素である感光性樹脂組成物の設計思想とは異なり、光を用いて微細なパターンの形成を行う必要がなく、全面露光により硬化させることによりある程度の機械的強度を確保できれば良いため、材料の選定において自由度が極めて高い。
【0047】
本実施の形態の印刷原版は、上述したレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を用いて形成される。ここで、印刷原版の表面には、改質層を形成し、印刷版表面のタックの低減、インク濡れ性の向上を図ることもできる。改質層としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤等の表面水酸基と反応する化合物で処理した被膜、あるいは多孔質無機粒子を含有するポリマーフィルムを挙げることができる。
【0048】
前記シランカップリング剤としては、基材の表面水酸基との反応性の高い官能基を分子内に有する化合物を用いることができる。基材の表面水酸基との反応性の高い官能基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジモノクロロシリル基、モノエトキシシリル基、モノメトキシシリル基、モノクロロシリル基を挙げることができる。また、これらの官能基は分子内に少なくとも1つ以上存在し、基材の表面水酸基と反応することにより基材表面に固定化されることが好ましい。更に、本実施の形態において、シランカップリング剤を構成する化合物は、分子内に反応性官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、パーフルオロアルキル基、及びメルカプト基から選ばれた少なくとも1個の官能基を有するもの、あるいは長鎖アルキル基を有するものが好ましく用いられる。
【0049】
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジ−トリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(オクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルスルフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等の化合物を挙げることができる。
【0050】
表面に固定化したカップリング剤分子が特に重合性反応基を有する場合、表面への固定化後、光、熱、あるいは電子線を照射し架橋させることにより、より強固な被膜とすることもできる。なお、上記のカップリング剤は、必要に応じ、水−アルコール、或いは酢酸水−アルコール混合液を添加して希釈することができる。処理液中のカップリング剤の濃度は、0.05〜10.0質量%が好ましい。
【0051】
上記レーザー彫刻においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、原版上にレリーフ画像を作成することができる。レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施することができるが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版の表面に粉末状もしくは液状の物質が発生した場合に、適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いてそれらを除去することができる。
【0052】
上記印刷原版は、例えば、レーザー彫刻によるフレキソ印刷版用レリーフ画像作成、エンボス加工等の表面加工用パターンの形成、タイル等の印刷用レリーフ画像形成に適したレーザー彫刻印刷原版として用いることができる。
上記印刷原版は印刷版用レリーフ画像の他、スタンプ・印章、エンボス加工用のデザインロール、電子部品作成に用いられる抵抗体、導電体ペーストのパターニング用レリーフ画像、窯業製品の型材用レリーフ画像、広告・表示板などのディスプレイ用レリーフ画像、各種成型品の原型・母型など各種の用途に応用し利用できる。グラビア印刷に用いることが可能である。
【実施例】
【0053】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、各物性の評価は、下記の通りの方法で行った。
【0054】
[平均1次粒径]
電子顕微鏡を用いて1次粒径を観察し、その10点の平均値を平均1次粒径とした。
[DBP吸油量]
JIS K 6217−4:2001に準じて測定した。
[pH]
JIS Z 8802−1984に準じて測定した。
【0055】
[カス残存率(%)、白抜き線深度(mm)、白抜き線形状]
得られたレーザー彫刻用感光性樹脂組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に厚さ1.0mmで塗布し、シート状に成形した。次に、ウシオ社製のUV2519露光機(メタルハライドランプ、出力120W)を用いてレリーフ面、バック面それぞれ積算露光量2000mJ/cmとなるように露光し、印刷原版を作製した。作製した印刷原版を発振波長1.06μmのレーザーを用いて白抜き線の彫刻を行った。レーザー彫刻は芝浦メカトロニクス製 LAF−705ACを用いて行った。レーザーの発振波長は1.06μm、出力10W、彫刻速度は20mm/sで10回走査し、白抜き線でのパターンを作製した。
レーザー彫刻後、アセトンを含浸させた不織布を用いて、レリーフ印刷版上のカスを拭き取った。レーザー彫刻前の印刷原版、レーザー彫刻直後の印刷版、及び拭き取り後のレリーフ印刷版各々の質量を測定し、式(1)により、カス残存率(%)を求めた。
(カス残存率(%))={(彫刻直後の版の質量−拭き取り後の版の質量)/(彫刻前の版の質量−拭き取り後の版の質量)}×100・・・(1)
白抜き線深度(mm)、及び白抜き線形状は、三谷商事社製「WinROOF/OL」(商品名)を用いた顕微鏡観察により測定、観察した。
なお、「白抜き線深度」とは、凸版印刷版のレリーフ上面と、非画像部の白抜き線の最も深い箇所の高低差として定義され、白抜き線の深度が大きいことは、良好な版再現性(太りの少ない優れた印刷再現性)に寄与し得る。なお、白抜き線深度が「測定不可」とは、レーザー彫刻時に十分な彫刻ができなかったことを意味する。
また、白抜き線形状が「良好」とは、版上部から観察した際に直線に崩れがなく、まっすぐなパターンが形成されていることを示す。一方、白抜き線形状が「部分的にのみ彫刻」とは、版上部から観察した際に直線に崩れが見られ、高精細な彫刻ができなかったことを意味する。
【0056】
[実施例1]
温度計、攪拌機、還流器を備えたセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリマーカボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.2gとトリレンジイソシアナート30.8gを加え、80℃の加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアナート14.8gを添加し、さらに3時間反応させて、末端がメタアクリロイル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり2個)である数平均分子量が約10000の樹脂(以下、「Lp」と略す。)を製造した。この樹脂は20℃で液状(水飴状)であり、外力を加えると流動し、外力を除いても元の形状には回復しなかった。
(a)成分としてLpを100質量部と、(b)成分としてフェノキシエチルメタクリレート35質量部、ブトキシジエチレングリコール12質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート3質量部の混合物と、(d)成分として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン3質量部と、(e)成分としてC−1504(富士シリシア化学社製。数平均粒子径4.5μm、平均細孔径12nm。)7質量部と、更に(c)成分としてSpecial Black100(Degussa社製、平均1次粒径50nm、DBP吸油量94mL/100g、pH3.3)を全質量に対して0.1質量%となるように配合してレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を形成した。この時、(c)成分は(b)成分の混合物中に一旦ビーズミルで分散させて配合した。
【0057】
[実施例2]
(c)成分として、TOKABLACK A700F(東海カーボン社製、平均1次粒径62nm、DBP吸油量121mL/100g、pH3)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0058】
[実施例3]
(c)成分として、MA220(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径55nm、DBP吸油量93mL/100g、pH3)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0059】
[実施例4]
(c)成分として、MA77(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径23nm、DBP吸油量68mL/100g、pH3)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0060】
[実施例5]
(c)成分として、MA100(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径24nm、DBP吸油量100mL/100g、pH3)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0061】
[実施例6]
(a)成分として、スチレン−ブタジエン共重合体(SB)であるタフプレンA(旭化成社製)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0062】
[比較例1]
(c)成分として、Special Black250(Degussa社製、平均1次粒径56nm、DBP吸油量46mL/100g、pH3.1)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0063】
[比較例2]
(c)成分として、Special Black55(Degussa社製、平均1次粒径25nm、DBP吸油量47mL/100g、pH3.1)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0064】
[比較例3]
(c)成分として、Printex25(Degussa社製、平均1次粒径56nm、DBP吸油量45mL/100g、pH9)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0065】
[比較例4]
(c)成分として、TOKABLACK A400F(東海カーボン社製、平均1次粒径20nm、DBP吸油量68mL/100g、pH7)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0066】
[比較例5]
(c)成分として、Lamp Black101(Degussa社製、平均1次粒径95nm、DBP吸油量117mL/100g、pH7.5)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0067】
[比較例6]
(c)成分として、#4350(三菱カーボンブラック社製、平均1次粒径50nm、DBP吸油量169mL/100g、pH10)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0068】
【表1】

【0069】
表1の結果から、以下の内容が読み取れる。
(1)本実施の形態のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物にて形成された印刷原版は、光による硬化が可能であり、近赤外線レーザー光で彫刻することが可能であり、高精細な彫刻が可能であった。
(2)(a)成分として、易分解性官能基(カーボネート基)が主鎖に導入されたポリマーが用いられた実施例1〜5においては、実施例6に比し、カス残存率がより低減される傾向が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)の各成分、
(a)数平均分子量が1000〜20万の高分子化合物、
(b)分子量が1000未満であり、重合性不飽和基を有する有機化合物、
(c)平均1次粒径が20nmより大きく、80nm未満であり、且つDBP吸油量が60mL/100g〜150mL/100gであるカーボンブラック、
を含むことを特徴とするレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(c)成分のpHが1〜5である請求項1に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(c)成分の含有率が0.01〜30質量%である請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)成分が、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(a)成分の20℃における性状が液状である請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、以下の(d)成分、
(d)成分:重合開始剤、
を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、以下の(e)成分、
(e)成分:酸化物微粒子、
を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のレーザー彫刻用感光性樹脂組成物を用いてなる印刷原版。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷原版にレーザー彫刻を施してなる印刷版。

【公開番号】特開2009−119810(P2009−119810A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298901(P2007−298901)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】