説明

レーザ治療装置

【課題】レーザ光照射によるレーザ治療装置において、装置を使用する際に危険を防止するための保護めがねが正しく着用されていることを検出し、誤照射等の事故に対する操作者の安全を確保するレーザ治療装置を提供する。
【解決手段】患者患部にレーザ光を導くために操作者が把持する把持部6と、前記把持部に取り付けられ、近距離での電波通信を行う通信回路7と、操作者が着用する保護めがね8と、前記保護めがねのフレームに取り付けられ、前記把持部に取り付けられた通信回路と通信するための通信回路9と、を備え、操作者が着用した保護めがね8とレーザ光を導くために操作者が手に持つ把持部6がある一定の距離に近づいたときに双方に取り付けられた通信回路7、9どうしが通信を行い、操作者が保護めがねを着用していることを認識し、誤照射や想定外からの反射レーザ光に対し、操作者を保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体組織に対する蒸散、凝固、止血、切開といった、レーザ光の効能、効果を利用して治療を施すレーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光は歯肉、神経組織、髄質などを含む柔軟な組織の切開、蒸散などをはじめ種々の手術をなすために医科および歯科の分野で広く治療用として使用されている。
【0003】
レーザ光を生体に照射したとき、その熱エネルギーにより止血しながら切開をする手術などの有益な治療が行える半面、使い方を誤ると致命的なけが・事故を引き起こす危険性があり、従来、レーザ光が治療の患部から外れその反射光量が一定値以下に低下した時レーザ光の発振を停止することで安全性を高める装置(例えば特許文献1参照)が示されている。
【0004】
しかし、従来のレーザ治療装置では、例えば眼への誤照射などの事故を防ぐために、装置を使用する場合は保護めがねを着用していただくことを取扱説明書や警告表示ラベルで注意喚起しているが、実際に保護めがねを着用するかどうかは操作者すなわち医師の意識にゆだねられているのが実情である。
【特許文献1】特開昭58−32758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の通り、従来のレーザ治療装置では、保護めがねの着用は操作者の意識に依存しており、うっかりミスで保護めがねをかけ忘れる場合がある。特に口腔外科領域においては、義歯や手術器具などレーザ光を反射するものが多く存在するので、保護めがねの着用なしでレーザ照射を行った場合、想定外の部分からのレーザ光の反射が操作者の眼に入光する可能性を否定できない。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、レーザ治療装置を使用する上で、保護めがねが正しく着用されているかを検出し、操作者の安全を確保することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明にかかるレーザ治療装置において、操作者が手に持つ把持部と保護めがねのフレーム双方に無線等による通信が可能な通信回路を備えることを第1の特徴とする。通常の医療用レーザ装置においては、患者患部を目視確認しながら、狭い領域にレーザ光を照射し治療を行うので、把持部と保護めがねの間の距離は、例えば30cm以内になるなど必然的に近くなる。よって電波通信可能な距離を30cm以内となるようあらかじめ通信回路の設定を行えば、把持部の近傍で正しく保護めがねが着用されているかを検出することができる。なお、単に保護めがねが把持部の近傍に放置されている場合もあるので、例えば保護めがねの耳掛け部等にマイクロスイッチを取り付け、操作者が着用することでこのマイクロスイッチが作動したときのみ保護めがねの通信回路が機能するようにすれば、より正確に、操作者が保護めがねを着用していることを検出できることとなる。
【0008】
また、保護めがねをかけ忘れている場合など、保護めがねと把持部の通信が正しく行われなかった場合、保護めがねの着用を促すために警報等で操作者に認知させることができるようレーザ治療装置本体に警報を発する機能を持たせることを第2の特徴とする。なお、より安全を重視するならば、保護めがねの着用が検出できなかった場合は、警報のみならず、強制的にレーザ照射を緊急停止する処置としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成により、保護めがねの着用忘れに起因して、操作者の眼がレーザ光にさらされる事故を未然に防止し、使用者にも安全なレーザ治療装置を実現できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態にかかるレーザ治療装置について、図1を用いて説明する。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるレーザ治療装置の構成図である。
【0012】
本体制御部1はレーザ治療装置に内蔵され、装置全体を制御する。レーザ共振器2はレーザ光を発振・出射し、電源3はレーザ共振器を放電励起したり、本体制御部1の動作に必要な電力を供給する。操作部4で操作者が装置の設定を行い、導光路5はレーザ共振器2から出射されたレーザ光を導くため光路を形成し、把持部6は導光路5の先端に取り付けられ、治療を行うために操作者が手に持つ部位で、把持部6には通信回路7を備えている。通信回路7は導光路5内部にあるレーザ光を導く部分とは別配線で本体制御部1に接続されている。
【0013】
保護めがね8は操作者が自身の眼を保護するもので、保護めがね8に備えた通信回路9で把持部6に取り付けられた通信回路7と無線電波等による通信を行う。なお、通信回路9の電源としては、小さいコイン型電池を用いてもよいし、あるいはICチップなど磁界を媒体とした起電力を利用するものでもよい。
【0014】
保護めがね8の耳掛け部などに保護めがね8を操作者が装着していることを検出するためのセンサーとしてマイクロスイッチ10を備えている。保護めがね8の耳掛け部などに配置され、操作者が保護めがねをかけたときの押し圧等でスイッチが動作する構成とする。警報装置11は装置の異常などを外部に知らしめるために本体制御部1に接続されている。
【0015】
以上のように構成されたレーザ治療装置において、その動作を説明する。装置の使用形態としては、操作者は保護めがね8を装着し、次に電源投入による装置起動後、操作部4を操作して治療に必要なレーザ照射条件を設定する。本体制御部1は、操作部4によって設定されたレーザ照射条件に基づいてレーザ共振器2を制御する。操作者は導光路5の先端に取り付けられた把持部6を手に持ち、操作部4の操作でレーザ照射条件を変更したり、レーザ光の出射/休止を行いながら患者患部の治療を行う。
【0016】
前述の通り、医療用のレーザ治療装置においては、常に患者患部の状態を目視確認しつつ、口腔内などかなり狭い領域にレーザ照射をおこなうので、操作者の眼とレーザを照射する把持部の距離は、例えば30cm以内など必然的に近くなる。本発明では、把持部6に取り付けられた通信回路7と保護めがねに取り付けられた通信回路9の間で無線電波等による通信を行い、通信が正常に行われた場合のみ、少なくともレーザ照射が行われる近傍に保護めがね8が存在するということを本体制御部1が認識でき、正しく保護めがねが着用されているかを検出することができる。
【0017】
この距離は、距離検出部ににより、電波強度から所定の範囲内に入ったかどうかを検出するようにしても良い。
【0018】
なお、単に保護めがねが把持部の近傍に放置されている場合もあるので、例えば保護めがねの耳掛け部等に感圧式のマイクロスイッチを取り付け、操作者が着用することでこのマイクロスイッチが作動したときのみ保護めがねの通信回路が機能するようにすれば、より正確に、操作者が保護めがねを着用していることを検出できることとなる。
【0019】
つまり、この構成だけでは、レーザ照射部分の近傍に保護めがね8を放置するだけでも通信が行われ、保護めがね8が着用されていると誤認識する可能性があるので、さらに保護めがね8の耳掛け部等に装着を検出するための感圧スイッチ等のマイクロスイッチ10を取り付け、保護めがね8を正しく着用した時に皮膚等による押し圧等でマイクロスイッチ10が動作し、マイクロスイッチ10が動作したときのみ通信回路9が機能するような構成にしておけば、本体制御部1は保護めがね8が正しく着用された状態で装置が使われているということを確実に認識できることとなる。
【0020】
さらに、本体制御部1には、警報装置11が接続されている。操作者が保護めがね8を着用し忘れてレーザ治療装置を動作させようとした場合、通信回路7と通信回路9が正常通信できないので、本体制御部1は保護めがね8が正しく着用されてないと判断し、警報装置11を駆動して音・光・表示等で警報を発することによって操作者に保護めがね8の着用を促す構成としている。これにより、義歯や手術器具からの反射レーザ光や誤照射による眼の損傷などの事故を未然に防止するという安全性の高いレーザ治療装置を実現できる。
【0021】
また、通信回路7及び通信回路9の少なくともいずれか一方は、電波強度、周波数、及び連続、パルス等で複数の種類の電波を発信可能とすることで、保護めがね8との距離の変化に対応して、出力をコントロールする、あるいは、複数の装置が近くに設置された場合にもお互いを識別可能とすることができるとともに、操作者近辺で、補助者も装着しているかどうかを検出して、出力を制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明にかかるレーザ治療装置は、レーザ光照射による治療において、誤照射や想定外からの反射レーザ光に対し、操作者を保護するという効果を有しレーザ治療装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態におけるレーザ治療装置の構成図
【符号の説明】
【0024】
1 本体制御部
2 レーザ共振器
3 電源
4 操作部
5 導光路
6 把持部
7 通信回路
8 保護めがね
9 通信回路
10 マイクロスイッチ
11 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ共振器と、前記レーザ共振器から出射されたレーザ光を導光する導光路と、前記導光路に取り付けられた操作者が把持する把持部と、前記把持部に取り付けられ電波で通信を行う第1の通信回路と、操作者が着用する保護めがねと、前記保護めがねに取り付けられ前記第1の通信回路との間で通信するための第2の通信回路と、を備えたことを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項2】
前記保護めがねと前記把持部が所定の距離に近づいたことを検出する距離検出部を備え、所定の距離に近づいたことを検出すると前記第1の通信回路及び第2の通信回路間で通信を行うことを特徴とする請求項1記載のレーザ治療装置。
【請求項3】
操作者が保護めがねを着用していることを検出する装着検出回路を有し、前記距離検出部が前記保護めがねと前記把持部が所定の距離に近づいたことを検出した場合であっても、前記装着検出回路が非装着を示した時はレーザ光の出射を停止することを特徴とした請求項2記載のレーザ治療装置。
【請求項4】
前記装着検出回路が非装着を示した時、操作者に保護めがね着用を促すために報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3に記載のレーザ治療装置。
【請求項5】
前記第1の通信回路または第2の通信回路の少なくとも一方が通信するために複数の種類の電波を出力できることを特徴とする請求項1ないし4記載のレーザ治療装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−253377(P2008−253377A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96253(P2007−96253)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】