レーザ溶接によって結合されたニオブ部品を備えるニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティおよびその製造方法並びに製造装置
ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ(DB)は、最小のHAZ、最小の歪み及び収縮と共に厚さの半分を超えて完全な深さまでの溶け込みを達成するためキャビティの壁の内側の面から溶接されたSCRFキャビティの中に少なくとも1つのレーザビーム溶接部品を含む。方法は、改善された溶接品質及び実質的に溶接欠陥のない表面仕上げを保証する。更に、ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティのレーザ溶接を容易にするように適応された溶接ノズルシステム(NA1NB)及び溶接リグ(CF)が開示される。本発明は、生産性を向上し、一貫した品質及び信頼性を保証し、最小のHAZと共に溶接の溶け込みを向上し、可能な低減コストで溶接継ぎ目の仕上げを滑らかにすることに向けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導無線周波(SCRF)キャビティに関し、具体的には、レーザ溶接を関与させ、可能性として少なくとも1つの溶接継ぎ目が、キャビティの壁の内側の面から、溶接される部品の厚さの半分を超える深さから完全な深さまで溶接され、継ぎ目の良好な強度及び改善された溶接特性を有する超伝導無線周波(SCRF)キャビティの組み立てに関する。更に具体的には、本発明は、場合に応じてRFフィールド領域又はRFフィールド自由領域の継ぎ目のために、キャビティの壁の内側の面から厚さの半分を超えて完全な溶け込みまでレーザ溶接を関与させる、ニオブ及び/又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティの組み立てに向けられ、容易な取り扱い及び製造ステップを用いて、そのような溶接継ぎ目の取得を、はるかに簡単にすることに向けられる。重要なことに、本発明は、SCRFキャビティを組み立てるため、キーホール溶接と伝導溶接との選択的組み合わせを用いて、ニオブ及びその合金をベースとする部品の選択的パルスレーザビーム溶接を行うことへ向けられる。キーホール溶接と伝導溶接との選択的組み合わせにより、最小の熱影響ゾーン(HAZ)を伴う大きな溶け込みの深さ、最小の歪み及び収縮、より制御された精度の機械化/自動化溶接実行によって低減される溶接時間及びコスト、改善された溶接品質及び表面仕上げ、特にSCRFキャビティへ高度に有害となる溶接欠陥/亀裂のない表面を有するSCRFキャビティとしての最終使用に益する溶接特性が達成される。更に本発明は、向上した生産性を有するシステムでニオブ部品をレーザ溶接することによってSCRFキャビティの大量組み立てを可能にすることに向けられる。このシステムにより、一貫した品質及び信頼性、最小のHAZを伴う向上した溶接の溶け込み、溶接継ぎ目の滑らかな仕上げが溶接リグの中で保証される。溶接リグは、低減されたコストで、そのような高性能レーザ溶接を、向上した生産性、品質及び信頼性が得られるように適応されている。
【背景技術】
【0002】
関連分野において、超伝導無線周波(SCRF)キャビティは、高エネルギー粒子加速器の中で粒子ビームを加速するために使用されることが周知されている。これらは、過去30年〜35年の間、稼働されている。SCRFキャビティは、高勾配、無視できるAC電力要求量、及び好ましいビーム力学で動作する利点を有する。これらのSCRFキャビティを製造する今日の技術は、高度に複雑で費用がかかる。現在、SCRFキャビティの大部分は、非常に費用がかかり複雑な組み立て工程を伴うバルクニオブ材料から作られる。
【0003】
当技術分野において、そのようなキャビティの製造中に、ニオブ部品が電子ビーム溶接(EBW)工程によって結合されることも知られている。しかしながら、既存の電子ビーム溶接(EBW)工程は、SCRFキャビティの2つのタイプの継ぎ目、即ち、RFフィールドへ露出される継ぎ目及びRFフィールド領域の外側に入る継ぎ目を溶接するように適用される。これらの継ぎ目は、実施形態において、それぞれRFフィールド領域の継ぎ目及びRFフィールド自由領域の継ぎ目と呼ばれる。SCRFキャビティの組み立てに使用される従来のEBW工程は、次のような欠点を有する。
(a)真空中で遂行されなければならず、EBW機械の資本コストは非常に高いので、費用のかかる工程である。
(b)全ての電子ビーム溶接作業の前に要求される化学エッチングは、費用のかかる危険な作業であり、除かれ得ないにしても最小にされる必要がある。
(c)込み入った継ぎ目を溶接するためには、電子ビーム又は溶接パーツの複雑な操作が要求される。従って、この工程で複雑な継ぎ目を作るのは困難である。
【0004】
EB溶接でSCRFキャビティに作られる継ぎ目は、かなりの量の機械的歪み及び収縮を引き起こす。
【0005】
当技術分野では、EBWの場合、大きな厚さ(1mm以上)を有するSCRFキャビティのNb部品を溶接するための、単位時間当たりに堆積されるエネルギーが大きく、結果として歪み又は収縮の可能性が大きいことも経験された。更に、SCRFキャビティのRFフィールド領域に置かれる溶接継ぎ目は、非常に滑らかな表面仕上げを必要とする。というのは、溶接ビードに先鋭点が存在すると、フィールド放出を引き起こし得るからである。これは既存の高エネルギーEBW溶接工程により一貫して達成するのは困難であり、そのようにして組み立てられたSCRFキャビティの性能に有害な影響を引き起こす。更に、既存のEBW溶接工程は、溶接の取り付け、進行、及び最終溶接ビードを検査する手段をオンラインで提供しない。今日適用される電子ビーム溶接工程は、多数回のセッティングで溶接作業が実行されることを必要とする。従って、真空の中断が何回も必要とされ、これは多くの時間及びコストがかかることを意味する。更に、SCRFキャビティの組み立てに応用される既存の溶接システム及び方法は、電子ビーム物質の相互作用に起因する蒸発プラズマ物質を溶接平面から除去する方法、及びSCRFキャビティの正確な溶接セットアップの中で、込み入った溶接継ぎ目を滑らかにする方法を示唆していない。故に、SCRFキャビティのニオブ部品の組み立てに適用される既存のEBW溶接工程は費用がかかり、生産性が低く、Nb部品の溶接品質の一貫性が低い。
【0006】
特許文献1は超伝導加速管を開示している。この加速管は、超伝導材料から形成された複数の部品の個々の部品が、相互に当接されるように適応された周辺端部を有し、複数の部品が周辺端部で相互に当接され、相互に当接された当接部分が一緒に溶接されるやり方で構築される。特許文献1に従った超伝導加速管において、当接部分はレーザビームによって溶接され、レーザビームが当接部分へ適用されて、部品が相互にレーザ溶接される。好ましくは、加速管は、少なくとも当接部分のそれぞれの内側の面のみがレーザ溶接され、溶接の深さは超伝導材料の厚さの半分よりも大きくなく、150μmよりも小さくないように設計される。
【0007】
重要なことに、特許文献1の示唆によれば、溶接の厚さはシートの厚さの半分を超えないことが好ましい。特に、前記先行技術は、もし溶接の深さが超伝導材料の厚さの半分よりも大きいと、製造された超伝導加速管の寸法精度が溶接部分の収縮によって低下することを記述している。更に、前記先行技術は、もし超伝導材料の厚さが0.1mmよりも小さいと、結果の超伝導加速管の強度は低すぎて、満足なレーザ溶接には管の壁が薄すぎること、一方でもし超伝導材料の厚さが1mmよりも大きいと、熱伝導が低く、必然的に超伝導加速管の使用中に得られる冷却効率が低いことに言及している。
【0008】
故に、前記技術のもとでは、溶接材料の厚さ「t」は0.1<t<1mmの領域に制限され、更に溶接は前記厚さの半分を超過してはならないという教示が、前記US先行技術から明らかであろう。しかしながら、通常、SCRFキャビティを目的とするキャビティ壁の厚さは数年にわたって約2mm以上の範囲にあり、今日の楕円型SCRFキャビティは、一般的に、典型的には3mmの厚さを有するNbから作られる。故に、レーザ溶接に関する前記先行技術は、超伝導キャビティを製造している企業では応用され得ない。
【0009】
更に、NbベースSCRFキャビティの今日の組み立て要件は2mm以上の壁の厚さを要求するが、特許文献1で提案されるように、深さの半分よりも小さく1mmの壁の厚さまでのレーザ溶接は、NbベースSCRFキャビティの所望の強度及び他の特性を有する溶接継ぎ目の提供には不十分であることが、上記の最新技術から明らかであろう。更に、特許文献1で提案されるSCRFキャビティのレーザ溶接は、SCRFキャビティの組み立てに使用される2mm以上のNbの標準的厚さを有する適正な溶接継ぎ目を決して提供し得ない。特に、半分の深さ、更には1mmの厚さよりも小さい深さを超えて、より大きい溶接の深さを特許文献1で提案されている高電力レーザで達成しようとすれば、高いHAZ、大きな溶接の歪み及び収縮という点で、溶接継ぎ目の重大な欠陥を不変に生じるであろう。
【0010】
こうして、関連分野では、レーザ溶接を伴うSCRF加速器キャビティの製造/組み立て技術を進歩させる継続的要求が存在した。それは、より高い信頼性及び生産性を達成し、同時に製造時間及びコストを下げ、厚さの半分よりも大きく厚さの完全な深さまでキャビティの壁の内側の面から溶接を達成するというこれまで可能でなかったことを可能にして、ニオブ及びその合金をベースとする部品を含むSCRFキャビティを組み立てる工程及び機器を提供し、信頼性のある溶接性能を保証するためである。更に、レーザビームを使用する溶接の溶け込みについては、幾つかの重大な要件、例えば、良好な表面仕上げ、強度、及びフィールド放出の危険がないことを満たすことが望まれた。これは、キャビティ内で荷電粒子の加速を稼働している間、RF継ぎ目からの一貫した性能を取得するためである。数年にわたる当技術の他の要件は、最小化されたHAZを伴う高い溶け込みを満たし、溶接表面に先鋭点がない高い表面仕上げを有する信頼性のある溶接品質を保証して、フィールド放出を回避することであった。既存のEBW工程によって、これを一貫して取得することはできない。何よりも、複雑度及び強度と結合された溶接仕上げ、特にSCRFキャビティのRFフィールド領域で要求され、工程及び機器の適切な選択によって満たされる必要がある溶接ビードの滑らかさ、経済性を達成するため溶接工程及びパラメータの最適化の設計、SCRFキャビティ継ぎ目のレーザ溶接のユーザフレンドリな設備の取得は、NbベースSCRFキャビティの組み立てのためにレーザ溶接手法を採用するときの困難な制約であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5239157号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の基本的目的は、特に、キャビティの壁の内側の面から、溶接されつつある材料の厚さの少なくとも半分を超えて完全な深さまでの少なくとも1つの溶接継ぎ目を提供することによって、RFフィールド領域内のレーザ溶接によって結合されたニオブ及び/又はその合金をベースとする部品が、荷電粒子を加速するキャビティの信頼性のある性能及びフィールド放出のない所望の超伝導特性に適した要求強度及び所望の溶接特性を有するニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、公知のレーザ溶接方法並びにそのような目的に使用される従来のEBW工程の制約を克服するように適応されたレーザ溶接を関与させ、費用効果的に、及び更に、向上した生産性及び一貫した品質及び信頼性と共にそのようなSCRFキャビティを組み立てるときの機能的困難を低減しながら、ニオブ及びその合金をベースとする部品を溶接するシステム及び方法を開発することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、キーホール溶接と伝導溶接との選択的組み合わせを伴い、SCRFキャビティの中に所望されないフィールド放出を引き起こす溶接面の上の鋭い点の存在の最小機会を残すように、溶接の所望の深さ、及び更に滑らかな溶接ビード、及びレーザ物質の相互作用に起因して産出される蒸発プラズマ物質の収集の容易性の利点を達成する手法によって、キャビティ内のRFフィールド領域で完全な溶け込みの溶接継ぎ目を備えるSCRFキャビティを組み立てるためのNbシート/部品のレーザ溶接システムを開発することに向けられる。
【0015】
本発明の更なる目的は、任意のタイプのキャビティ、即ち、4分の1波長共振器(QWR)、2分の1波長共振器(HWR)、くぼみ型、楕円型、などのSCRFキャビティのレーザ溶接を備えるSCRFキャビティを組み立てるためのNbシート/部品のレーザ溶接方法を開発することに向けられる。
【0016】
更に、本発明の他の目的は、溶接されつつある材料の厚さの少なくとも半分を超えて完全な深さまでの溶け込みの所望される少なくとも1つの溶接継ぎ目を有する楕円型キャビティを、好ましくはキャビティの壁の内側の面から溶接するように構成された溶接リグシステムに向けられる。
【0017】
本発明の更なる目的は、そのようなキャビティの所望の強度要件を達成しながら、狭いHAZ、最小の歪み及び収縮と共に、Nb部品の1mmの厚さを超えて厚さの完全な深さまでの完全な溶け込みの溶接を達成し得るSCRFキャビティ組み立てNbシート/部品のレーザ溶接システムの開発に向けられる。
【0018】
本発明の更なる目的は、工程、及び時間及び空間定義域における好ましいパルス構成及びその反復周波数の設計を含む溶接パラメータの最適化を選択することによって、高い溶け込み及び最小のHAZが達成されるように選択的溶接パラメータを使用する、SCRFキャビティ組み立て用Nbシート/部品をレーザ溶接するシステム及び方法の開発へ向けられる。
【0019】
本発明の更なる目的は、キャビティの壁の内側の面、例えば、SCRFキャビティの虹彩及び赤道継ぎ目の当接溶接継ぎ目の壁の内側の面から、滑らかな溶接平面を含むRFフィールド領域内の継ぎ目を溶接し、RFフィールド自由領域内の継ぎ目の場合には、幾つかの継ぎ目の要求される溶接を壁の外面から供給する、SCRFキャビティ組み立て用のNbシート/部品のレーザ溶接システム及び方法の開発へ向けられる。
【0020】
本発明の更なる目的は、特にRFフィールド領域内の継ぎ目、及び良好な強度及び漏れ耐性を伴うRFフィールド自由領域内の継ぎ目については、キャビティの壁の内側の面から継ぎ目を溶接する、SCRFキャビティ組み立て用Nbシート/部品のレーザ溶接方法及びシステムの開発に向けられる。
【0021】
本発明の更なる目的は、所望の高速レーザ清掃を得るため、選択的低エネルギー及び高周波パルスを使用して溶接継ぎ目の表面が清掃され、レーザ物質相互作用に起因する蒸発プラズマ物質を溶接表面から除去し、時間を取り危険で費用がかかる従来の化学清掃を最小にした、SCRFキャビティ組み立て用Nbシート/部品のレーザ溶接システムの開発に向けられる。
【0022】
本発明の更に他の目的は、レーザ溶接の仕事の実行並びにガス噴流の提供に適応された選択的ノズル構成、ノズル先端の内側の同心環状通路へ接続された真空ポンプによってレーザ物質相互作用に起因する蒸発プラズマ物質を吸い出す選択的吸い出し機構、又はRFフィールド又はRFフィールド自由領域の継ぎ目の場合には、溶接場所で生成される流体柱/崩壊物の収集及び廃棄を助けるため、垂直線に対して傾斜された単一ノズル/複数ノズルによって溶接されるので、別個のエンクロージャを関与させる、SCRFキャビティ組み立て用のNbシート/部品のレーザ溶接システムの開発へ向けられる。
【0023】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティを組み立てるときの選択的溶接場所で正確な溶接実行を助けるマニピュレータとして機能する機械化手段を構成された溶接リグの集合を関与させる、SCRFキャビティ組み立て用のNbシート/部品のレーザ溶接システムの開発に向けられる。溶接リグは、溶接前及び溶接後の継ぎ目をキャビティの外側からオンラインで検査する手段を含み、必要に応じて溶接を矯正することを含む、生産性が向上した高速大量生産を可能にする。
【0024】
本発明の更に他の目的は、SCRFキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接される継ぎ目のそのような完全な深さの溶け込みを得るとき溶接の歪み及び収縮の問題を緩和するように適応されたニオブ及びその合金をベースとする継ぎ目部品、及び溶接に起因する歪みのオンライン監視/制御を行う手段を関与させた超伝導キャビティへ向けられる。
【0025】
本発明の他の目的は、そのようなキャビティ内の込み入った形状のパーツを簡単及び費用効果的に結合することを可能にするニオブ及びその合金をベースとする溶接結合部品を関与させた超伝導キャビティの製造に向けられる。
【0026】
本発明の他の目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブ部品の選択的な簡単かつ費用効果的溶接を実行するシステム及び方法へ向けられる。このようなシステム及び方法は、資本コスト又は稼働コストを少なくし、SCRFキャビティの優れた品質を保証する。
【0027】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブベース部品のR.F.フィールド領域の選択的溶接システム及び方法に向けられる。ここで、前記選択的溶接は真空又は不活性ガス雰囲気の中で実行される。
【0028】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブベース部品の選択的溶接システム及び方法に向けられる。このようなシステム及び方法は、込み入った形状を所望の正確度/精度で組み立てることを可能にする。
【0029】
本発明の更なる目的は、特にRFフィールド領域に適するように、SCRFキャビティニオブベース部品の選択的レーザ溶接を実行するシステム及び方法に向けられる。ここで、溶接工程は、完全な厚さの溶け込み、溶接に起因する最小の歪み及び収縮、狭いHAZ、フィールド放出のない滑らかな溶接平面を保証し、これは転じて、要求される寸法の正確度、並びに荷電粒子の加速におけるキャビティの信頼性能の保証を助ける。
【0030】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブ部品のレーザ溶接システム及び方法に向けられる。ここで、継ぎ目の溶接を実行するため、遠隔場所からの溶接領域のボロスコープ検査/観察が提供され、所望の溶接品質を達成するための溶接パラメータが適切に制御される。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の基本的態様によれば、本発明は、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接の溶け込みと共にキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって結合されたニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティを提供することへ向けられる。
【0032】
本発明の他の態様は、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接の溶け込みと共にキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって形成されたRFフィールド領域の中の虹彩継ぎ目及び赤道継ぎ目を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティへ向けられる。
【0033】
本発明の更なる態様は、前記赤道及び/又は虹彩継ぎ目のいずれか又は双方が、キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接された完全な深さを備える前記ニオブ又は及びその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティへ向けられる。
【0034】
重要なことに、前記ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティにおいて、キャビティの壁の内側の面からのレーザ溶接継ぎ目の前記厚さは1mmよりも大きい。
【0035】
本発明の更なる態様は、荷電粒子を加速するための単一及び/又は複数のセルSCRFキャビティを備える前記ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティへ向けられる。
【0036】
本発明の更なる態様は、ニオブ又はその合金をベースとする楕円形超伝導無線周波(SCRF)キャビティを備え、前記レーザ溶接継ぎ目は、半セルから産出されたレーザ溶接ダンベル、フランジ及び高次モード(HOM)連結器を含むエンド・グループ本体へ溶接されたエンドグループ部品、外側から溶接された補強輪を含むRFフィールド自由領域の溶接継ぎ目、及び前記キャビティの壁の内側から溶接された赤道継ぎ目及び虹彩継ぎ目を含むRFフィールド領域の継ぎ目、の1つ又は複数を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティに向けられる。
【0037】
本発明の更なる態様によれば、本発明は、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを産出する方法であって、ニオブ又はその合金から作られ、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接で前記キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって結合される少なくとも1つの部品を提供すること、続いて(i)前記キャビティの壁の内側の面から制御されたキーホール溶接を行う第1の段階、続いて(ii)溶接継ぎ目の非常に滑らかな仕上げを達成するため伝導溶接を行う第2の段階、の各ステップを実行することを備え、狭いHAZと共に歪み及び収縮を最小にし、溶接表面の仕上げがSCRFキャビティの信頼性のある動作を達成するように適応された方法に向けられる。
【0038】
上記の方法において、キーホール溶接を実行する前記ステップは、
(i)エネルギーの必要量のみを提供し、パルス周波数を低く維持することによって加熱レートを制御することと、
(ii)時間定義域で変動させてエネルギーを堆積することと、
を備えるキーホール溶接段階で大きなエネルギーを堆積する。
【0039】
本発明の更なる態様は、SCRFキャビティのダンベルを形成するため2つの半セルの間で虹彩継ぎ目のキャビティの壁の内側の面から虹彩のレーザ溶接を実行することを備える前記方法に向けられる。この方法は、
真空容器を備える虹彩溶接リグの中に一緒に保持された半セルを提供することと、
(i)第1の段階で、3つの同心円筒形管を有するノズルを関与させ、RFフィールド領域の壁の内側の面からキーホール溶接を実行することと、ここでレーザビームは最も内側の管を通過し、最も外側の管はガスを高速で供給し、中間の管は吸い出しポートへ接続され、溶接パラメータが選択されて、パルスプロフィールが時相で変動され、最小の歪みと共に完全な深さの溶け込みが取得されることと、
(ii)第2の段階で、継ぎ目のレベルへ持って来られる傾斜ノズルを関与させてレーザ溶接を実行することと、ここでビームは傾斜されて、溶接流体柱が表面と垂直に立ち昇ることと、
レーザ物質相互作用のために形成された蒸発物質が、エンクロージャ形態の物質吸い込み配列を介して吸い出されることと、
を備える。
【0040】
本発明の更なる態様は、単一セルキャビティ又は複数セルSCRFキャビティを構成するダンベルの赤道継ぎ目のレーザ溶接をキャビティの壁の内側の面から実行することを備え、
キャビティの壁の内側の面から溶接を実行する装置及び/又はアタッチメントを有する真空容器を備える赤道溶接リグの中に、インサートによって担持されたダンベルを提供することと、
(i)第1の段階で、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜されたレーザビームを用いてキーホール溶接を実行し、エネルギーを時相で変動させて良好な溶け込みを得ること、続いて(ii)第2の段階で、キーホール溶接が終わった後に非常に滑らかな仕上げを得るため2重ビームを関与させて伝導溶接を実行し、レーザ物質相互作用からの蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、エンクロージャによって収集されるようにすること、を備える2ステップ溶接作業を遂行しながら赤道継ぎ目を次から次へと溶接することと、
を備える方法に向けられる。
【0041】
本発明の更なる態様は、溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査、の順序を備える前記方法へ向けられる。上記の方法において、前記キーホール溶接は、上下に移動するように適応された3同心管型エンクロージャを備える溶接ノズルを関与させて実行され、ここで最も外側及び最も内側の管エンクロージャは高速不活性ガスの流出を提供するように適応され、中間のエンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すように適応され、前記伝導溶接は2重ビームを関与させて実行され、よってレーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動するように適応された別個のエンクロージャによって収集される。
【0042】
更に、前記方法において、RFフィールド自由領域にあるエンドグループ部品の継ぎ目は、キーホール溶接のみを関与させて外側から溶接され、RFフィールド領域の中にある継ぎ目は、伝導溶接及びキーホール溶接の組み合わせによって溶接される。
【0043】
本発明の更に他の態様によれば、Nd:YAG又は任意の他の固体レーザをレーザ溶接に使用してニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを産出する。
【0044】
本発明の更なる態様は、パルス内でエネルギーを時間変動させ、前記レーザパルスの反復レートを選択することによって、溶け込みの深さを最大にし、歪み、収縮、及び熱影響ゾーン(HAZ)を最小にした前記レーザ溶接を実行することを備える前記ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ産出方法へ向けられる。
【0045】
本発明の更なる態様は、好ましくはパルス内のエネルギーを時間定義域で近台形へ変動させることによって、パルスの時間プロフィールをニオブ又はその合金へ調整し、表面の初期予備加熱で高い溶け込みを生じさせ、終端近くでエネルギーを先細りにして、微小亀裂/空隙/他の欠陥を回避し、よって全体的パルス形状が高い溶け込みの深さ及び低い熱影響ゾーンを保証するようにした、前記ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ産出方法へ向けられる。
【0046】
本発明の更なる態様は、レーザビームは表面へ或る角度で入射し、レーザ物質相互作用からの主な蒸発プラズマ物質が、より小さい固定角度に沿ってのみ射出され、排出ノズルを介して吸い出される前記方法へ向けられる。
【0047】
本発明の更なる態様は、良好な表面仕上げと共に所望の溶け込みを達成するため、選択的ビーム傾斜を有する傾斜レーザビームを関与させて前記キーホール溶接及び伝導溶接を実行することを備え、前記キーホール溶接では、垂直線からのビーム傾斜角が15°〜45°の範囲、好ましくは30°であり、伝導溶接では、垂直線からのビーム傾斜が30°〜60°の範囲、好ましくは45°である前記方法へ向けられる。
【0048】
本発明の上記の方法において、継ぎ目のキーホール溶接の実行は、3つの同心開口を有する特殊溶接ノズルによって、溶接されつつある表面に対して傾斜/直角に衝突するレーザビームで溶接することを備え、ここで最も内側及び最も外側の開口からガスが噴出され、レーザ物質相互作用からの蒸発物質は、排出チャンバとして適応された中間開口によって吸い出される。
【0049】
本発明の更なる態様は、ナノ秒持続時間の短いパルス、好ましくは1〜100ナノ秒の領域にあって、エネルギー密度が約1〜5J/cm2の範囲にある低強度レーザパルスを関与させて溶接領域及び周囲を清掃することを備える前記方法へ向けられる。この場合の重要な態様は、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質が吸い出されることである。
【0050】
本発明の更なる態様は、表面を調整するだけの溶け込みを生じるように適応された低強度非合焦パルスレーザビームを関与させて、継ぎ目表面を平滑化するステップを備える前記方法に向けられる。
【0051】
更に重要なことに、前記方法において、溶接される材料の壁の厚さは1mmよりも大きく、キャビティの壁の内側の面からのレーザ溶接による溶接は、溶接されつつある材料の厚さの半分を超えて完全な深さまでの溶け込みを有する。
【0052】
本発明の更なる他の態様によれば、本発明はニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティなどのレーザ溶接で使用されるキーホール溶接ノズルへ向けられる。このノズルは、
前部でのノズルヘッドを画定する3つの同心管部材、及び溶接領域の溶接及び観察のための、レンズ組立体を収容する中心部の中空円筒シャフトと、
溶接部を溶接及び観察するためのレーザビームを合焦するレンズ組立体及び必要な光学装置を収容する中心領域エンクロージャ並びに高速ガス噴出装置を有する3同心管エンクロージャ組立体と、
中心領域の後ろの第2のエンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに十分な幅であるように適応され、最も外側の第3のエンクロージャは、高速ガスを噴出して蒸発物質の拡散を最小にするように適応されていることと、
ノズルヘッドの最も外側及び最も内側の管エンクロージャは、高速不活性ガスを流出するために提供され、中間エンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すように適応されていることと、
を備える。
【0053】
本発明の更なる態様は、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティなどのレーザ溶接に使用される伝導溶接ノズルシステムであって、
ビームが垂直線に関して好ましくは約45°に傾斜されるように適合されたレンズ組立体を用いて2重ビームレーザを発射するノズル手段、及び上下に伸縮自在に移動するように適応されたエンクロージャを介して、表面と垂直に立ち昇る溶接流体柱を吸い出す手段、
を備えるシステムへ向けられる。
【0054】
本発明の更なる態様は、例えば楕円型SCキャビティなどの溶接を実行するタイプI溶接リグである溶接リグであって、
キャビティ継ぎ目を溶接するためSCRFキャビティのダンベルを形成するように配列された半セルを保持及び操作するためのモータ駆動アタッチメントを有する真空容器と、
ノズル整列機構と、
前記円筒形真空チャンバの内部で前記ダンベルの壁の内側の面からキーホール溶接及び伝導溶接を逐次に実行するように選択的に配置及び適応されたキーホールノズル手段及び伝導溶接ノズルシステムと、
を備える溶接リグへ向けられる。
【0055】
上記溶接リグは、RFフィールド領域内の継ぎ目についてはキャビティの壁の内側の面から、RFフィールド自由領域内の継ぎ目については表面の外側から、キャビティ継ぎ目の前記レーザ溶接を実行するように選択的に配置されるレーザ溶接ノズルを備える。
【0056】
更に、前記溶接リグにおいて、前記溶接ノズルは溶接継ぎ目の線に沿って傾斜溶接を実行するように適応されているが、溶接されるべき周辺の平面では、キャビティの壁の内側の面から、第1の段階でキーホール溶接を実行し、続いて第2の段階で伝導溶接を実行するように適応されている。
【0057】
更に上記の溶接リグにおいて、前記溶接ノズルは、補強輪及び幾つかのエンドグループ部品のためのRFフィールド自由領域の継ぎ目について、外側からキーホール溶接を実行するように適応されている。
【0058】
本発明の更なる態様は、例えば楕円型SCRFキャビティなどの溶接を実行するタイプII溶接リグである溶接リグに向けられる。この溶接リグは、
SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、特にSCRFキャビティの赤道継ぎ目のレーザ溶接を実行するため、異なる装置/アタッチメントを有し、溶接された半セルを相互に組み立ててダンベルを形成するように適応されたリグインサートを格納するように適応された真空容器と、
エンコーダ及び外側からノズルを正確に配置する手段と、
溶接が終わった後に周囲領域を検査するために提供される手段、好ましくはボロスコープと、
前記リグインサートは、3つのタイロッドによって120°の間隔で相互に保持された2つの円形フランジを備え、溶接された半セルを一緒に組み立ててダンベルを形成し、例えばSCRFキャビティのニオブ部品の赤道継ぎ目のレーザ溶接を容易にするように適応されていることと、
このインサートの中に組み立てられ、溶接中にオンラインで歪み監視するように適応された歪みゲージと、
を備える。
【0059】
上記の溶接リグにおいて、
前記異なる装置/アタッチメントは、真空容器、ダンベルシステムを保持するためのタイロッド機構、容器を真空にして不活性ガスを噴出する仕組み、及び真空環境での種々の侵入物に対するシールを備え、
外側からノズルを正確に配置するための前記手段は、レーザヘッドを担持して自分自身の軸の回りで回転し得る中空円筒シャフト、及び更に、上下に移動してレーザ物質相互作用からの蒸発物質を収集するエンクロージャを備え、前記リグは2つのモータ、ボールネジ、及びエンコーダを備える機構を含み、エンコーダは真空環境の外側に留まって精密な回転及び軸方向移動をノズルへ提供し、精密な回転及び軸方向移動はエンコーダによって読み取られ、リグ内で動作的に接続されたパイプラインは溶接領域からの蒸発物質を真空容器の外側へ取り出すように適合されている。
【0060】
本発明の更なる態様は、RFフィールド領域及びRFフィールド自由領域の双方で楕円型超伝導無線周波キャビティ継ぎ目の溶接を実行するリグシステムに向けられる。このリグシステムは、
(i)ダンベルを形成する半セル及びエンドグループ部品の溶接に適応された溶接リグ組立体、及び(ii)SCRFキャビティの壁の内側の面から赤道継ぎ目の溶接を実行するように適応された溶接リグ組立体を備える少なくとも2つの溶接リグの集合、
を備える。
【0061】
本発明の更なる態様は、楕円型超伝導無線周波キャビティ継ぎ目の溶接を実行するリグシステムに向けられる。前記リグの各々は溶接アクセサリを備えて、溶接アクセサリは、制御パルスの形態でレーザビームの発射を容易にするように適応された光ファイバ接続を有し、キーホール溶接のために高エネルギーパルスを発射するように適合されたノズル組立体、伝導溶接用の低エネルギーレーザパルス、ナノ秒持続時間レーザパルスによる溶接平滑化及び清掃用の非合焦低エネルギーパルスの手段、当接エッジ及び溶接継ぎ目を間欠的に観察する手段、欠陥キャビティを検査して問題領域を矯正する手段、レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質の除去と共に溶接の平滑化及び清掃を行う手段、及び容器を真空にしてヘリウム又は他の適切な不活性ガスを導入する手段を含む。
【0062】
本発明の更なる態様は、前記溶接リグ組立体において、4つのタイプのパルスを搬送する光ファイバ配列が提供され、4つのタイプのパルスは、(a)RFフィールド領域並びにRFフィールド自由領域でキーホール溶接を実行するため時間定義域で変動する高エネルギーパルス、(b)伝導溶接用の低いエネルギーのパルス、(c)非合焦ビームとして機能するように適応された一層低いエネルギーのパルス、及び(d)レーザ清掃のために幾つかの表面欠陥が認知されるキャビティ区域へ適用されるナノ秒持続時間の低いエネルギーのパルス、を備えるリグシステムに向けられる。
【0063】
本発明、その目的及び利点は、添付の非限定的図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に従ってSCRFキャビティのレーザ溶接を実行するためのタイプI溶接リグの略図である。
【図1A】図1のタイプIリグの中に格納されたダンベルを形成する半セルの配列及びダンベル内の断面AAの拡大図である。
【図1B】本発明に従ってSCRFキャビティのダンベルの上で補強輪のレーザ溶接を実行するタイプI溶接リグの略図である。
【図2】本発明に従った溶接ノズルタイプAの実施形態の略断面図である。
【図3】蒸発プラズマ物質を取り除くための別個の吸い出しパイプを供給された2重レーザ・ビーム・ノズル・タイプBに基づく溶接工程の略図である。
【図4a】SCRFキャビティのエンドグループの本体を示す。
【図4b】エンドグループ組立体の他の部品、例えば、HOM連結器、NbTiリング、及び連結器フランジを示す。
【図4c】本発明のタイプI溶接リグの内部でNbTiリングをフランジへ溶接するためのセットアップを示す。
【図4d】本発明のタイプI溶接リグの中でHOM連結器を溶接するためのセットアップを示し、自分自身の軸の回りを回転し得るノズルを通過する1つだけのビームを用いてキーホール溶接及び伝導溶接/平滑化を行うことを示す。
【図4e】本発明のタイプI溶接リグの内部で半セルを本体へ溶接するためのセットアップを示す。
【図5】本発明に従ってタイプII溶接リグの中で溶接を実行するために必要なインサート組立体の略図である。
【図6】本発明に従ったタイプIIの溶接リグ、並びに内部に置かれた溶接用ダンベルを担持するインサートの略図である。
【図7】インサート組立体を有しないタイプII溶接リグの略図であって、前記溶接リグの中で使用され、レーザ溶接及び他の所望の機能を実行するための全てのアクセサリ/アタッチメント/駆動器を含む詳細な配列を示す図である。
【図8】タイプAの溶接ノズルを使用して実行されるキーホール溶接工程のB−B(図7でマークされる)の略断面拡大図である。
【図9】キーホール溶接が終わった後にタイプB溶接ノズルを使用して遂行される伝導溶接作業のやり方を示すA−A(図7でマークされる)の略断面拡大図である。
【図10】タイプII溶接リグにおける溶接部のオンラインボロスコープ試験/検査のセットアップを示す略図である。
【図11】本発明に従ったパルスレーザ溶接を実行するために使用される典型的な近台形パルス整形構成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
最初に図1を参照する。図1は、簡単な円筒形真空チャンバを有するタイプ1の溶接リグの略図である。円筒形真空チャンバはダンベルを保持するモータ駆動アタッチメントを有する。これは、例えば、ダンベルを形成するため虹彩継ぎ目を溶接し、SCRFキャビティのダンベルの上に補強輪を溶接するためである。
【0066】
前記図面で明瞭に示されるように、タイプIリグは基本的に円筒形真空チャンバを含む。円筒形真空チャンバは回転機構を収容し、回転機構は、ダンベルを形成する1対の半セルを支持し、溶接を容易にする回転運動に適応されている。RFフィールド領域でキャビティの壁の内側の面からの溶接を達成するため、ノズルが設けられる。エンドグループの他のパーツを溶接するため、溶接ノズルの他の集合も設けられる。全てのノズルは正確な整列機構を設けられている。
【0067】
重要なことに、タイプIリグは、RFフィールド領域の内部の半セルの壁の内側の面から溶接を実行するように適応されている。エンド・グループ本体の部品をエンドグループ部品と一緒に溶接するため、別個のノズル手段(NA)が存在する。RFフィールド領域の半セルの壁の内側の面から、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶け込みを有するように、例えば虹彩継ぎ目の溶接を実行するため、タイプIリグは、キーホール溶接及び伝導溶接用のノズルを提供する。キーホール溶接ノズル及び伝導溶接ノズルのそのような選択的供給配列は、次の図1に示される。図1Aは、図1のタイプIリグの中に格納されたダンベル形成半セル配列の拡大図であり、また同じダンベル拡大図の断面AAを示す。
【0068】
有利には、そのようなノズル及びノズル操縦配列の供給は、例えば、RFフィールド領域の半セルの壁の内側の面からのレーザ溶接を容易にするために提供される。レーザ溶接は、選択的に、(i)第1の段階で、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜したレーザビームを用いてキーホール溶接を実行し、溶け込みを良好にするためエネルギーを時相で変動させ、続いて(ii)第2の段階で、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するため2重ビームを関与させて伝導溶接を実行し、レーザ物質相互作用からの蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、エンクロージャによって収集されるように行われる。
【0069】
本発明の他の態様と同じように、本発明は、キーホール溶接の実行に使用されるタイプAノズル、及び2重ビームを用いる伝導溶接の実行に使用されるタイプBノズルの2種のノズルを提供する。
【0070】
ここで図2を参照する。図2は、本発明に従ってキーホール溶接手法により継ぎ目を溶接するために使用される溶接ノズルタイプAの実施形態の略断面図を示す。それぞれの要素は、レーザ溶接、2つのガス噴流、及び溶接の継ぎ目の位置からの蒸発物質を除去する吸い出し機構という、組み合わせられた仕事を実行するように適応される。レンズ組立体は静止したままであり、エンクロージャは上下に移動する。
【0071】
ここで添付の図3を参照する。図3は、本発明で使用されるタイプBの溶接ノズルを示す。この作業は、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するために遂行される。ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの大きな利点は、レーザ物質相互作用の結果として蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動され得るエンクロージャによって収集されることである。レンズ組立体は、2つのビームが当接エッジへ合焦するような焦点距離を与える。
【0072】
図3は、蒸発物質を除去する2重ビーム溶接の原理を明瞭に示す。図3はタイプBの溶接ノズルを示す。タイプBの溶接ノズルは、RFフィールド領域の継ぎ目について、SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目のレーザ溶接を実行することを目的とする。溶接は、キーホール溶接が終わった後、伝導溶接手法を用いてキャビティの壁の内側の面から遂行される。主な特徴は蒸発物質を収集するエンクロージャであり、このエンクロージャは伸縮自在に上下に移動し得る。垂直線に対して45°の角度に配置された2つのビームによって溶接する典型的な場合が例示されている。
【0073】
こうして、前記キーホール溶接及び伝導溶接ノズルの配列は、滑らかなビードの所望の溶け込みを達成するため、選択的に傾斜されたレーザビームを提供することに好都合である。ここで、前記キーホール溶接の場合、ビームの傾斜角は垂直線に対して15°〜45°の範囲、好ましくは30°である。伝導溶接の場合、2重ビームは垂直線に対して30°〜60°の範囲、好ましくは45°に傾斜される。キーホール溶接の場合でも、結果の溶接ビードが滑らかになるように、傾斜が与えられることを指摘しておく。もしビームが表面へ90°で入射したとすれば、溶け込みは高くなるが、ビードは貧弱になり、これを伝導溶接段階で修復するのは困難である。
【0074】
ここで添付の図4aを参照する。図4aは、本発明に従ったレーザ溶接に関連してSCRFキャビティで使用されるエンドグループの本体を示す。
【0075】
図4c、図4d、及び図4eは、フランジへのNbTiリングの溶接、HOM連結器の溶接、及び本体への半セルの溶接を示す。これらの全ては、図1に示されるタイプIの溶接リグを使用して実行される。重要なことに、簡単な円筒形真空チャンバが同じように示される。円筒形真空チャンバは、溶接を容易にする回転移動に適した回転プラットフォームにキャビティ部品を支持するモータ駆動アタッチメントを有する。RFフィールド領域のエンドグループ部品の継ぎ目を壁の内側の面から溶接する溶接ノズル配列が提供される。外側からのノズル配列は、RFフィールド自由領域のエンドグループ部品の継ぎ目を溶接するために提供される。
【0076】
ここで添付の図5を参照する。図5は、本発明に従ったタイプIIの溶接リグのインサートの略図を示す。この図に示されているように、これは、SCRFキャビティのニオブ部品の赤道継ぎ目をレーザ溶接するため、約120°の間隔の3つのタイロッドによって保持された2つの円形フランジを備えるインサートである。ダンベルを作るためにタイプI溶接リグの中で溶接された半セルは、このインサートの中で正確に組み立てられる。精密な形状のスペーサが、正確な位置決めに使用される。溶接中の歪みをオンラインで監視するため、歪みゲージもインサートの中へ組み立てられる。図6は、タイプIIの溶接リグ並びに溶接用ダンベルを担持するインサートの略図である。本発明によれば、このリグは真空容器を備え、真空容器は、SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、特にSCRFキャビティの赤道継ぎ目をレーザ溶接するための種々の装置/アタッチメントを有する。
【0077】
図5で示されたインサートは、最初にチャンバの中に設置され、次いで溶接が行われる。溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査、の順序を備える。
【0078】
このリグにおいて、溶接作業は2つのステップで遂行される。最初のステップでは、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜されたビームによって、キーホール溶接工程が実行される。この場合、より良好な溶け込みを得るため、エネルギーは時相で変動される。ここで、レンズ組立体は移動しないで中空円筒形シャフトの中に留まる。3つの同心管タイプのエンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側の管エンクロージャは高速不活性ガスの流出に使用され、中間エンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに使用される。
【0079】
第2の段階では、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するため、伝導溶接作業が遂行される。ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの大きな利点は、レーザ物質相互作用の結果としての蒸発物資が、継ぎ目の表面に対して垂直に立ち昇り、上下に移動され得るエンクロージャによって収集されることである。
【0080】
図7は、タイプII溶接リグで使用される機構を示す。図7は、このリグの幾つかの重要な特徴を示している。重要なことに、システムは、ノズル及び光ファイバのような種々の溶接仕掛けについて、キャビティの内部で利用可能な制限空間内に作業道具を提供するように適応されている。溶接リグは、エンコーダ、ボールネジ、及び他のアクセサリを使用し、ノズルの正確な位置が外側から認知され得る。このリグの非常に顕著な態様は、ボールネジ及び円筒形パイプを組み合わせて使用し、キャビティ内部の制限空間へボールネジを挿入することなく、ボールネジの精度が利用され得ることである。溶接が終わった後に周囲領域を検査するためボロスコープが提供される。
【0081】
図8は、タイプAの溶接ノズルによって起こるキーホール溶接工程の図である。ここで、レンズ組立体は移動しないで中空円筒形シャフトの中に留まる。3つの同心管タイプのエンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側のリングエンクロージャは高速不活性ガスの流出に使用され、中間のエンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに使用される。図から明らかなように、ノズルは溶接平面で傾斜されている。
【0082】
図9は、キーホール溶接が終わった後に遂行される伝導溶接作業の図である。この工程はタイプBの溶接ノズルを使用する。この作業は、キーホール溶接が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するために遂行される。ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの主な利点は、レーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動され得るエンクロージャによって収集されることである。レンズ組立体は、2つのビームが当接エッジに合焦されるような焦点距離を与える。
【0083】
図3に関して説明したような、蒸発物質を除去する2重ビーム溶接の同じ原理が使用される。それはタイプBの溶接ノズルを関与させる。タイプBの溶接ノズルは、本発明に従ったタイプIIの溶接リグの中に配列され、RFフィールド領域のSCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目をレーザ溶接することを目的とする。溶接は、キーホール溶接が終わった後、伝導溶接手法を用いてキャビティの壁の内側の面から遂行される。主な特徴は、蒸発物質を収集するエンクロージャであり、このエンクロージャは伸縮自在に上下に移動する。垂直線に対して45°の角度に配置された2つのビームによって溶接する典型的な場合が例示されている。
【0084】
図10は、溶接周囲領域のボロスコープ試験の提供を示す。これは本発明のタイプII溶接リグの中でも提供される。
【0085】
図11は、時間及び空間定義域でパルスエネルギーを変動させながらキーホール溶接を遂行することによってRFフィールド領域並びにRFフィールド自由領域でパルスレーザビーム溶接を実行するための、本発明に従った典型的パルス形状構成(近台形)を示す。このパルス形状構成は、最小のHAZ並びに低い歪み及び収縮と共に非常に良好な溶け込みを達成するように適応されている。
【0086】
重要なことに、SCRFキャビティ製造の上記の選択的やり方を採用し、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでを溶接の溶け込みの深さとして、キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接して結合されたニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティを最初に達成することが可能である。
【0087】
完全溶け込み溶接(キーホール溶接)は、タイプAノズルを提供することによってキャビティの壁の内側の面から取得される。タイプAノズルは3つの同心管を備える。レーザビームは最も内側の管を通過する。最も外側のリングは高速でガスを供給し、中間の管は吸い出し装置へ接続される。溶接パラメータは、パルスプロフィールが時相で変動され、同じ溶け込みの深さについて堆積されるエネルギーを最小にし、よって歪みを低減するようなものである。溶接ノズルは垂直線から30°〜45°の角度で傾斜される。好ましい角度は30°であり、溶接表面の良好な仕上げと共に溶け込みの高い深さが得られる。
【0088】
第2のステップでは、傾斜された伝導溶接ノズルが継ぎ目へ持って来られる。ここで、ビームは45°に傾斜され、溶接流体柱が表面と垂直に立ち昇る。レーザ物質相互作用によって形成された蒸発物質は、別個の排出エンクロージャを介して吸い出される。この排出エンクロージャは、溶接継ぎ目に関して上下に移動するように適応されている。有利には、そのような作業を更に続けることによって、一層滑らかなビードがこのステップで取得される。
【0089】
重要な注意点として、厚さの半分より大きく完全な深さまでの溶接を達成するため、RFフィールド領域の継ぎ目に関連する2つの側から溶接することと比較して、そのような深さまでの溶接がRFフィールド領域の壁の内側の面から可能であることは、キーホール溶接に続く伝導溶接の組み合わせに従う本発明によって達成され、下記で説明するような追加の利点が初めて得られる。
A.溶接セッティングの回数が少なくなり、時間と費用が節約される。
B.1回のセッティングで溶接するとき、取り扱い中に遭遇される問題を回避し得る。半溶接されたキャビティは、リグから取り外されて次のリグへ取り付けられるとき、取り扱い中に変形するか汚染される可能性がある。
C.リグ内でキャビティを設置し直すことは、異なる位置にセットアップする危険があることを意味する。
【0090】
最後に、2つの溶融部が合致するか、溶接されない領域が残される、という危険が常にあり、そのような場合、伝導溶接の次にキーホール溶接が続くか、この反対であるかを問わず、溶接品質に問題が予想される。もし、最初にキャビティの壁の内側の面から伝導溶接が実行され、この後で外側からキーホール溶接が実行されるならば、必要を超える溶け込みが存在し、表面仕上げが損なわれる。もし反対であれば、溶接されていない領域が存在する危険性が高い。というのは、伝導溶接は良好な表面仕上げを目的としており、非常に良好な溶け込みの深さは得られないからである。
【0091】
本発明のシステム及び方法の詳細から、有利には、本発明はナノ秒持続時間の低エネルギーパルスレーザによる溶接清掃工程手段を提供することが、更に明らかであろう。この場合、レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質は、適切な吸い出しヘッドの真空ポンピングで溶接部から吸い出されて除去される。複数の同心円形通路部分を有する可撓性ノズルは、溶接用のレーザパルスを出すため適切に設計された光学装置と共に中心に光ファイバを有し、溶接プールを保護するため高速で不活性ガスを導入し、垂直上方方向へ流体柱を駆動する。配置された一体化又は独立の吸い出し手段は、レーザベース物質/金属相互作用からの蒸発プラズマ物質を溶接部から吸い出す。キーホール溶接の場合、単一のノズルは垂直方位又は垂直線に対して小さく傾斜される。伝導溶接の場合、垂直線に対して傾斜方位にある2重ノズルが使用され、溶接表面の仕上げを遂行すると共にレーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質の吸い出しを助ける。重要なことに、引き込み装置を有するボロスコープ手段が、取り付け及び溶接継ぎ目の欠陥有無について溶接前後に実行されるオンライン検査を助け、取り付け及び溶接仕上げ/清掃作業の光学検査装置となる。
【0092】
更に、本発明に従ったシステムは、パルスレーザ溶接の制御されたパルスパラメータを使用することによって、キャビティの異なる溶接場所でSCRFキャビティのレーザ溶接を実行することへ向けられる。パルスパラメータは、例えば、時間定義域での選択的パルス形状、パルス反復、パルス持続時間、溶接がRFフィールドの中であるか外であるかに依存した空間定義域でのパルス重複であって、これらのパラメータは、溶接仕上げ、キャビティの低減された歪み/ねじれ、溶接継ぎ目の放出を生じやすい先鋭点を回避する平滑表面仕上げを含む無欠陥溶接、及び荷電粒子加速稼働中に必要とされる強度、などの所望の要件を満たすパルスエネルギー入力要件に対応する。
【0093】
更に重要なことに、SCRFキャビティの組み立て分野において、好ましくは固体レーザ、例えばNd:YAGレーザ、Yb:YAGレーザ、ファイバレーザ、又は光ファイバを介して発射される他のレーザを使用して、特にキャビティの壁の内側の面から1mmを超える厚さのニオブ又はその合金から作られた部品をレーザ溶接する応用の制限を克服するため、本発明は、次の事項を含む新規で発明的な技術特徴を有することによって、SCキャビティへ応用されたとき十分に優れた溶接品質を保証する。
(a)RFフィールド領域の継ぎ目及び他の選択的溶接場所について、キャビティの壁の内側の面からのキーホール溶接及び伝導溶接を組み合わせて、前記溶接システム/リグ、ノズル、順序、及び選択的パルス特性/パラメータを使用し、制御されたエネルギー入力を伴う高エネルギーパルスレーザ溶接を使用して歪み/収縮を最小にすると共に狭いHAZへの限定によって、1mmを超え典型的には3mmまでの厚さのニオブシート/部品について厚さの半分よりも大きく完全な溶け込みまでの溶接継ぎ目を達成する。ビードを滑らかにする伝導溶接では、溶接平面の垂直線に対して対称的に傾斜されたノズルの2重レーザビームを使用し、低エネルギーパルスレーザビームを搬送して溶接継ぎ目の上で同時に合併させる。
(b)好ましくは、好ましい特性を有する近台形構成を使用するパルス整形、パルス持続時間、パルス反復周波数、具体的応用に適合するために必要な溶接継ぎ目特性とマッチするパルス重複、を備えるパルスパラメータを選択的に設計する。
(c)ビード表面上の表面起伏/溶接波紋は、ミリ秒持続時間の非合焦レーザビーム及びナノ秒持続時間の低エネルギーパルスによる内側の面のレーザ清掃によって滑らかにされ、双方の場合に、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質は取り除かれる。
(d)レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質を吸い出すため、所望の容積を作り出すために真空ポンプ手段へ接続された排出エンクロージャ及びそのような清掃に必要な真空ヘッドを有する特別設計のノズルを関与させ、稼働中のフィールド放出を導く表面欠陥の可能性を最小にする。
(e)SCRFキャビティの信頼性のある性能を得るための滑らかな溶接ビードが保証される。これは、大規模化学処理の必要性を最小にし、時間を取り危険で費用のかかる工程の関連問題を最小にする。
(f)サービス/最終目的の応用に基づいた具体的品質規準を満たすことを要求する複数セルSCキャビティの溶接継ぎ目の各々のタイプ及び場所について、特別構成の溶接リグ及び仕掛けを使用する。これらの溶接リグ及び仕掛けは、信頼性のある溶接品質を保ちながら高速化/自動化工程及び機器に適応し、簡単及びユーザフレンドリなやり方で企業規模での応用に順応する。
【0094】
本発明に従ってSCRFキャビティを組み立てるニオブレーザ溶接システム、及びSCRFキャビティを組み立てるときの異なる溶接場所について上記で説明した2つのカテゴリの溶接リグ、例えばタイプI及びタイプIIの溶接リグを使用してキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接を実現するやり方は、次の広いカテゴリで具体的な実施形態及び図面を参照して更に詳細に説明される。
(1)タイプIリグの中で半セルを溶接してダンベルを形成する。
(2)タイプIリグの中でエンドグループ部品をエンドグループの本体へ溶接する。
(3)インサート及びタイプII溶接リグを使用してキャビティの壁の内側の面からSCRFキャビティの赤道継ぎ目を溶接し、エンド半セルを有するエンドグループをキャビティの残部へ溶接する。
【0095】
<工程の簡単な説明>
以下のステップは、本発明を使用して、どのように楕円型SCRFキャビティが組み立てられるかを例示する。
ステップ1: タイプI溶接リグの中で半セルの壁の内側の面から虹彩継ぎ目を溶接し、2つの半セルからダンベルを形成する。
【0096】
ここで図1を参照する。図1は、タイプIの溶接リグ(WR−I)を使用し、Nbベースのシート材料から事前に形成された半セルを溶接して、SCRFキャビティの組み立てに使用されるダンベル(DB)を形成するレーザビーム溶接の略図である。タイプI溶接リグ(WR−I)は簡単な円筒形真空チャンバを有し、この円筒形真空チャンバは保持及び操作用のモータ駆動アタッチメント(MH)を有する。ここで、RFフィールド及びフィールド自由領域の継ぎ目の溶接、及び特に、キャビティの壁の内側の面から虹彩継ぎ目(IJ)をキーホール溶接し、続いて2重レーザビームで伝導溶接するセットアップが示される。図1は、ダンベル(DB)部分の拡大図を更に示す。ここで、最初の作業としてキーホール溶接するために「A」タイプのノズル(NA)が使用され、続いて第2段階の作業として順序/継続的に伝導溶接し、2重レーザビームによって平滑化されることが示されている。虹彩継ぎ目(IJ)の平面におけるダンベルのA−Aの断面図は、「B」タイプの2重ノズル(NB)の垂直線への選択的傾斜姿勢を示す。これらのノズルは、リグに関して引き込み式に搭載され、溶接作業の所望の順序を維持するため、及び指定された溶接継ぎ目に関して合焦されるため、必要に応じて上下に移動する。実験的な発見として、最適化溶接パラメータは、前記キーホール溶接が垂直線に対して15°〜45°の範囲、好ましくは30°のビーム傾斜角で実行されること、伝導溶接の場合には、所望のビード平滑化を得るために、垂直線からのビーム傾斜が垂直線に対して30°〜60°の範囲、好ましくは45°であることを含む。これは、稼働中にフィールド放出を生じやすい溶接表面先鋭点の回避を含む無欠陥の継ぎ目を取得するためである。溶接リグは、フィードスルー(FT)配列と共にノズル整列機構(NAM)を設けられる。これらは、溶接される継ぎ目にレーザビームを正確に合焦することを可能にする。作業対象はモータ駆動保持器(MH)によって保持され、モータ駆動保持器は、所望の溶接速度にマッチする所望の回転速度で円周溶接シームを実行するための回転運動を受け取る。タイプIリグにおける虹彩継ぎ目のキーホール溶接の第1段階において、使用される「A」タイプノズルは、溶接場所からの蒸発プラズマ物質を排出する同心円筒形通路/管(CR)を組み込まれている。タイプBノズルでは、蒸発プラズマ物質吸い出し装置(SCD)が、2つの傾斜レーザビームの間の中央位置で溶接面に対して垂直に置かれる。SCDは、溶接場所の2つの側から垂直線に対して傾斜方位に置かれた2つのレーザビームによって中央垂直上方方向へ導かれる流体柱を吸い取って廃棄するように適応されている。
【0097】
ここで容器は閉ざされ、10−5mbarの真空にされる。適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンのいずれかが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2回〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0098】
真空容器(VV)は完全な不活性雰囲気の中にあり、作業対象は容器内でモータ駆動配置器/保持器の上に搭載されている。次いで継ぎ目は、内側及び外側から視覚的に適正な取り付けをチェックされる。ビーム焦点が2つの半セルの当接線と完全にマッチすることを保証するため、保持兼操作機構が使用される。次のステップとして、He−Neレーザが使用され、入射するビームの焦点をチェックする。
【0099】
RFフィールド領域に置かれた虹彩継ぎ目は、ほとんど垂直又は垂直方位に対してやや傾斜したレーザ溶接ノズルタイプ「A」(NA)を使用するキーホール溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域があれば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。適当なパルスエネルギーが使用され、典型的には、使用されるNb又はNb合金部品の3mmの厚さまでの溶け込みの完全な深さを達成する。
【0100】
完全溶け込み溶接(キーホール溶接)は、3つの同心管を有するタイプ「A」ノズル(NA)によってキャビティの壁の内側の面から得られる。レーザビームは最も内側の管を通過する。最も外側及び最も内側の管のエンクロージャは、溶接領域へ高速不活性ガスを流出するために使用され、中間管/エンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すために使用される。溶接パラメータは、パルスプロフィールが時相で変動し、同じ溶け込みの深さについて堆積エネルギーを最小にし、よって歪みを低減するものである。溶接ノズルは垂直線に対して15°〜45°の範囲、より好ましくは30°の角度で傾斜され、同じ溶け込みの深さについて良好な表面仕上げを達成する。
【0101】
第2のステップにおいて、傾斜ノズル(NB)は溶接継ぎ目へ持って来られる。ビームは傾斜され、溶接流体柱は表面と垂直に立ち昇る。レーザ物質相互作用を原因として形成された蒸発物質は、排出エンクロージャ/吸い出し装置(SCD)を介して吸い出される。SCDは平面図でのみ見ることができる。同様に、2つのノズル(NB)は上面図でのみ見ることができる。この作業では、非常に滑らかなビードが取得される。
【0102】
次のステップとして、溶接された継ぎ目の壁の内側の面が、継ぎ目を溶接するために使用される同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。周囲は、ボロスコープによって観察される。必要ならば、適切なノズルNA又はNBによって溶接が修復/再溶接され、前に行われたような工程によって蒸発物質が吸い出される。必要ならば、低エネルギー非合焦ビームが使用され、レーザ清掃の後で溶接ビードの表面上の凹凸を滑らかにする。図1Aは、図1のタイプIリグの中に格納されたダンベルを形成する半セルの配列の拡大図を示し、同じ拡大図のダンベルの断面A−Aを示す。
【0103】
取り付け及び工程をチャンバの外側から観察するため、別個の光学装置(OP)が真空容器(VV)のトップ・カバー・フランジ(CF)の上の適切な場所に提供される。図1は、これらの2つのビームの1つだけを前面図として示す。一度作られた継ぎ目は観察され、溶接されていない区域が残されているかどうかを調べられ、次のパスでは同じ場所で修復が遂行される。中央シャフトの軸位置に設けられた引き込み式機構は、垂直な単一ノズル(NA)及びペアになった傾斜ノズル(NB)が、相互に前後する順序で溶接区域へアクセスされ得る。この動きは、リグの外側から制御され得る。
【0104】
次にチャンバが開かれ、適切な取り付け具を用いて、SCRFキャビティの虹彩継ぎ目の上に補強輪(SR)が取り付けられる。ここで容器は閉じられ、10−5mbarの真空にされる。次いで、適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後に、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。RFフィールド自由領域の補強輪(SR)継ぎ目は、キーホール溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域が存在するならば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。
【0105】
ダンベル(DB)組立体は、周囲温度になるまで或る時間だけ放置される。パルスエネルギー入力は選択的に制御されるので、温度の著しい上昇はなく、従って歪み及び収縮が制御される。提供されつつあるガスも冷却を助ける。ダンベル(DB)組立体は取り出され、ビードの滑らかさが少ない領域及び/又は清掃される必要がある領域について、徹底的に検査される。ダンベルがチャンバ内に再び取り付けられ、操作機構が使用されてビームを非合焦にする。ここで容器は閉じられ、10−5mbarにされる。次いで適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。低エネルギーの非常に短いパルスを用いて溶接領域の清掃が遂行され、次いで非合焦低エネルギーパルスを用いてビードの平滑化が遂行される。
【0106】
ここで添付の図1を参照する。図1は簡単な円筒形真空チャンバを有するタイプIの溶接リグの略図を示す。円筒形真空チャンバは、回転機構によってダンベル(DB)を保持及び回転するモータ駆動保持器(MH)/アタッチメントを有する。ノズル整列機構(NAM)及びフィードスルー(FT)によって、正確な溶接場所でタイプ「A」の溶接ノズルを使用し、レーザビームを適切に位置決め及び合焦し、SCRFキャビティの虹彩継ぎ目の円周をカバーしながら、ダンベル上に外側から取り付けられた補強輪が溶接される。全体の組立体及び溶接は、真空容器(VV)に固定されたトップ・カバー・フランジ(CF)の上の適切な光学装置(OP)を介して外側から観察され得る。光学装置は搭載を解除され得る。添付の図1Bも、既に説明したように、キャビティダンベルの壁の内側の面から虹彩継ぎ目を単一/2重レーザビームで溶接するときのレーザ溶接ノズル位置を示す。
【0107】
ステップ2: タイプI溶接リグ内のレーザ溶接による継ぎ目溶接によってエンドグループを組み立てる。
図4aで示されるように、エンドグループ(EG)の本体(MB)が最初に提供される。本体は、ニオブの単一ブロックからの機械加工によって取得される。ニオブの円筒形ブロックを除去するためにはワイヤ切断EDM工程が使用される。このブロックは、エンドグループと一緒に使用されるHOM連結器及び他のフランジを作るために使用される。回転ミルセンタの上で遂行される機械加工の工程は、エンドグループ本体の他の特徴を作る。
【0108】
通常、エンドグループ(EG)継ぎ目はタイプI溶接リグを使用して溶接される。
【0109】
ここで図4cを参照する。図4cは、エンドグループ部品の1つ1つをどのように溶接するかを示す。基本的方法は、ステップ1で例示された方法と同じである。取り付け具及びセットアップだけが異なる。同じタイプIリグが使用され、エンドグループ部品の全ての溶接を実行する。
【0110】
同様に図4bを参照する。図4bは、エンドグループ組立体/組み立てで使用されるHOM連結器、NbTiリング、及び連結器フランジを備えるエンドグループの他の部品を示す。
【0111】
ここで図4cを参照する。図4cは、エンド・グループ・フランジへのNbTiリングの溶接を示す。エンド・グループ・ボディの頂部に取り付けられたNbTiリングを溶接するため、外側からのキーホール溶接によって完全な溶け込みが達成されるように、ノズルは溶接場所の上に垂直に配置されることが添付の図4(b)から明らかである。
【0112】
ここで添付の図4dを参照する。図4dは、エンドグループの本体へのHOM連結器フランジの溶接を示す。ここで、キーホール溶接及び伝導溶接/平滑化は、ノズルを通過する1つだけのビームを用いて達成される。ノズルは、自分自身の軸の回りを回転し得る。
【0113】
ここで図4eを参照する。図4eはエンドグループの本体への半セルの溶接を示す。この溶接は、RFフィールド領域の溶接であり、SCRFキャビティの壁の内側の面から起こる。注意すべきは、この場所での溶接に起因する表面凹凸を回避することであり、従って溶接パラメータを選択的に使用して、完全溶け込み溶接を保証する。この継ぎ目の壁の内側の面から2重レーザビームを使用して仕上げの溶接を行うことは、RFフィールド領域の継ぎ目要件を満たす目的に役立つ。
【0114】
<エンドグループ部品を溶接する方法>
部品の1つ1つは、取り付け具によって本体へ組み立てられる。継ぎ目は、異なるセッティングで作られる。次いで継ぎ目は、適切な取り付けかどうかを内側及び外側から可視的にチェックされる。ビーム焦点が当接線と完全にマッチすることを保証するため、操作機構が使用される。次のステップとしてHe−Neレーザを使用し、内側から入射するビームの焦点をチェックする。同様に、He−Neレーザを使用し、RFフィールド自由領域の継ぎ目について外側から入射する単ビーム/複数ビームの焦点をチェックする。
【0115】
ここで容器は閉じられ、10−5mbarの真空にされる。適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中に導入され、内部で捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0116】
RFフィールド自由領域の継ぎ目は、キーホール溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域があるならば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。
【0117】
RFフィールド領域の継ぎ目は、最初にキーホール溶接手法によって溶接され、続いて伝導溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域が存在するならば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。溶接領域の清掃は、低エネルギーの非常に短いパルスを用いて遂行され、続いてビードの平滑化が行われる。これは低エネルギーパルスを用いて遂行される。
【0118】
ステップ3: 前もって溶接されたダンベル組立体を用いてキャビティを形成するため、タイプII溶接リグの中でインサートの助けを借りて赤道継ぎ目を溶接する。
最初に図5〜図7を参照する。これらの図は、タイプII溶接リグ及びインサート組立体を使用するキャビティの赤道継ぎ目のレーザ溶接を示す。インサート組立体は、正確な取り付け、及びオンラインの歪み監視、及び溶接継ぎ目の制御を行う。このようなリグは、RFフィールド領域内に入るSCRFキャビティの継ぎ目を溶接するために設計される。このようなリグは、本質的に、ステンレススチール(SS 316L)から作られた真空容器から構成される。容器は、それを1つの側から開かれ得る。横面には観察用の少数の窓が存在する。溶接リグ容器は、真空ポンプへ取り付けられる装置を有する。光ファイバを担持する管は、不活性ガスも搬送する。この管は、フィードスルーの助けを借りて溶接チャンバの中へ導入される。4つのタイプのパルスを時分割ベースで結合するため、同じ光ファイバが使用される。この溶接リグの非常に特殊な特徴は、セルの間に歪みゲージ(SG)を提供することによって、歪みをオンラインで監視することである。この溶接リグの第1の部分は、図5で示されるようなインサート(IN)である。これは2つの円形フランジ(CFS)を使用して作られ、円形フランジは、周辺で120°の間隔を取られた3つのタイロッド(TR)によって相互に保持されている。半セル/ダンベル(DB)は、正確な輪郭のスペーサ(SP)を用いて相互に組み立てられることが、図5から明らかである。半セルから作られた全てのダンベルは、エッジを正確に機械加工され、一緒に組み立てられる。歪みゲージ(SG)は、2つの連続する半セル/ダンベルの間に搭載され、溶接中の歪み/収縮を監視及び制御する。タイプI溶接リグの中でダンベル(DB)を作るために溶接された半セルは、このインサート(IN)の中で正確に組み立てられる。ダンベルの同軸性を正確な位置で維持して完全なキャビティを形成するため、正確な形状のスペーサ(SP)が使用される。溶接中に歪みをオンラインで監視するため、このインサートの中へ歪みゲージ(SG)も組み立てられる。
【0119】
次いで、図6で示されるように、この組立体の全体が真空容器の中へ滑り込ませられる。ここで、赤道継ぎ目の溶接は、完全にキャビティの壁の内側の面から行われる。最初に、赤道継ぎ目は、時相で特定のエネルギー変動を有する高エネルギーパルスを用いて溶接され、次のステップで、タイプIリグでの虹彩継ぎ目の溶接を参照して既に説明したように、2重ビーム溶接手法によって溶接ビードの平滑化が行われる。
【0120】
図6は、タイプIIの溶接リグ、並びに溶接用のダンベルを担持するインサートの略図を示す。本発明によれば、このリグは、SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、具体的にはSCRFキャビティの赤道継ぎ目をレーザ溶接するため、種々の装置/アタッチメントを有する真空容器を備える。
【0121】
溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査の順序に従う。
【0122】
このリグの中で、溶接作業は2つのステップで遂行される。第1のステップでは、溶接平面の垂直線に対して15°〜45°の範囲、好ましくは30°の角度で傾斜したビーム/ノズルによって、キーホール溶接工程が行われる。この場合、溶け込みを良好にするため、エネルギーは時相で変動される。使用される溶接ノズルはタイプ「A」である。このノズルは、レーザビーム並びに保護ガスの所望の流量を搬送する3同心管型環状通路、並びに溶接中に生成される蒸発プラズマ物質を除去するための吸い出し装置を有する。ここで、レンズ組立体は移動せず、中空円筒形シャフトの中に留まる。3同心管型エンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側の管エンクロージャは、高速不活性ガスの流出に使用され、中間のエンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すために使用される。
【0123】
キーホール溶接に使用される「A」タイプノズルは、図2に示される。図2は、詳細な構築特徴を断面図で示す。3同心管/環状通路を有するこのノズルによって、キャビティの壁の内側の面からの完全溶け込み溶接(キーホール溶接)が得られる。レーザビームは、最も内側の管を介して発射される。最も外側及び最も内側の管はガスを高速で供給し、中間の管は吸い出し装置へ接続される。ノズルは遠隔の溶接場所へアクセスするための可撓性を有する。その種々の要素は、レーザ溶接、2つのガス噴流の提供、及び溶接継ぎ目の場所から金属蒸気又は他の蒸発物質を除去する吸い出し機構という、組み合わせられた仕事を実行するように適応されている。レンズ組立体は静止したままであり、エンクロージャは上下に移動する。
【0124】
第2の段階では、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するため、伝導溶接作業が遂行される。このために2重ビーム溶接手法が使用される。溶接地点に対して2つの側から垂直傾斜方位に2重レーザビームを配することの大きい利点は、レーザ物質相互作用に起因して生成された蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下方向に移動するように適応されたエンクロージャによって容易に収集され得ることである。
【0125】
赤道溶接は、図5で示されるSSチャンバの中で遂行される。インサートはチャンバ内で組み立てられ、次いで継ぎ目が適正な取り付けを内部から可視的にチェックされる。ビーム焦点が半セルの当接線と完全にマッチすることを保証するため、操作機構が使用される。次のステップとして、入射するビームの焦点を外側からチェックするため、He−Neレーザが使用される。ここでチャンバが閉ざされ、10−5mbarの真空にされる。次いで、適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0126】
RFフィールド領域の赤道継ぎ目は、キーホール溶接手法によって溶接される。低い熱影響ゾーン及び完全な溶け込みの深さを生成するため、時間でのパルス内エネルギー変動及び空間でのパルス重複が使用される。使用されるパルスは図11に示される。溶接パラメータは、パルスプロフィールを時相で変動させ、歪みを最小にしながら完全な溶け込みの深さを得るようなものである。パルスの時間プロフィールは、ニオブ又はその合金について調整される。この調整は、好ましくは、パルス内のエネルギーを時間定義域で近台形の形状へ変動させ、表面の初期予備加熱が高い溶け込みを生じ、終端近くでエネルギーを先細りにすることによって行われ、微小亀裂/空隙/他の欠陥が回避されるようにする。これによって、全体的パルス形状は高い溶け込みの深さ及び低い歪みを保証する。
【0127】
継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域が残されていれば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。インサートが取り出され、スペーサ及び歪みゲージが取り外される。
【0128】
図7は、タイプII溶接リグで使用される機構を示す。それは、この設計の幾つかの重要な特徴を示している。溶接チャンバの内部へ入るボールネジは存在しない。というのは、発明者らは、内部で利用可能な小さい空間を、ノズル及び光ファイバのような種々の溶接仕掛けに利用したいからである(これは楕円キャビティの大部分の場合である)。溶接リグはエンコーダ及び他のアクセサリを使用し、ノズルの正確な位置が外側から認知され得る。溶接が始まる前の継ぎ目の取り付け、及び更に、溶接が終わった後の溶接継ぎ目及び周囲領域に、矯正を必要とする欠陥があるかどうかを検査するため、ボロスコープ(BS)が提供される。
【0129】
方法は同じである。即ち、真空化、純度ガスの導入、蒸発物質の吸い出しを伴う溶接、及び取り出される前の組立体の冷却である。SCキャビティのダンベルの少数の取り付けについて少数の試行を実行することによって、初期データが歪みゲージから生成され、溶接順序が標準化される。
【0130】
周辺で120°の間隔を取られた3つのタイロッドによってダンベル組立体を保持するため、特別に設計されたインサートが使用される。次いで、この組立体の全体は図7で示されるタイプII溶接リグの真空容器の内部へ滑り込ませられる。
【0131】
全ての継ぎ目は、ただ1つのセッティングで作られる。ビーム焦点が当接線と完全にマッチすることを保証するため、最初に継ぎ目は光ファイバ及びレンズ機構を介して観察される。この仕事のために、He−Neレーザ(又は、可視スペクトル内の任意の適切なレーザ)が使用され、外部から観察しながら、入射するビームの焦点がチェックされる。ここで容器は閉じられ、10−5mbarの真空にされる。適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0132】
RFフィールド領域の赤道継ぎ目は、図7の「断面B−B」を表す図8で示されるように、最初にキーホール溶接手法によって溶接される。ここで、レンズ組立体は移動しないで中空円筒形シャフトの中に留まる。3同心管型エンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側の同心環状エンクロージャは、高速不活性ガスの流出に使用され、中間エンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに使用される。図から明らかなように、ノズルは溶接平面で傾斜している。単一のレーザビームを使用するキーホール溶接では、好ましい角度は30°である。
【0133】
継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によってオンラインで観察される。もし溶接されないで残された領域が存在すれば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。
【0134】
ビードの平滑化は、低エネルギーパルスを用いる第2のステップで遂行される。2つの傾斜レーザビームが使用され、これらのビームはノズルの別個の集合によって発射されて導かれる。引き込み式の蒸発物質吸い出し配列は、その開放端が溶接シームの近くにあるように提供され、同心エンクロージャを介して収集する手段を有する。これは、図6の断面「A−A」を表わす添付の図9で示される。この作業は、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを得るために遂行される。
【0135】
ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの大きな利点は、レーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動するエンクロージャによって収集されることである。レンズ組立体は、2つのビームが当接エッジに合焦するような焦点距離を有する。
【0136】
図3は、2つの傾斜ノズル配置の拡大図であり、蒸発物質を除去する2重ビーム溶接の原理を示す。この図は、本発明に従ったタイプIIの溶接リグ(WR−II)の中に配列されたタイプBの溶接ノズル(NB)を示す。ノズルのセットアップは、RFフィールド領域のSCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目をレーザ溶接することを目的としている。溶接は、キーホール溶接が終わった後、伝導溶接手法を用いてキャビティの壁の内側の面から遂行される。主な特徴は、伸縮自在に上下に動き得る蒸発物質収集エンクロージャである。垂直線と45°の角度で配置された2つのビームによって溶接する典型的な場合が示されている。
【0137】
次のステップでは、チャンバを開くことなく溶接領域全体並びに周囲を観察するため、中央シャフトに取り付けられたボロスコープが使用される。ボロスコープ検査のセットアップ及び手順は、図10で略図的に示されている。最後のステップで、ダンベル組立体が容器から引き出される。
【0138】
このように、本発明によって、ニオブ及びその合金をベースとするキャビティのレーザ溶接によって組み立てられる超伝導無線周波キャビティを開発し、前記レーザ溶接がニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティを達成させるようにすることが可能である。超伝導無線周波キャビティはニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備え、部品はキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接によって結合される。溶接の溶け込みの深さは、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの範囲にある。転じて、これは、良好な表面仕上げ及び強度を有し、フィールド放出の危険を緩和し、キャビティ内の荷電粒子の加速を稼働しながらRF継ぎ目から一貫した性能を取得し得るキャビティの多くの必要な溶接継ぎ目の産出を容易にする。重要なことに、本発明のシステム、装置、及び方法は、タイプI及びタイプIIの溶接リグ及び特殊なノズル構成/方位を使用し、2つのステップ、即ち、最初に高エネルギーレーザパルスを使用してキーホール溶接を行い、次いで第2のステップで、垂直線に対して選択的に傾斜された2重レーザビームを用いて低エネルギーレーザパルスで溶接の平滑化を行うことによって、SCRFキャビティの壁の内側の面から、1mmを超えて典型的には3mm以上の厚さのNb又はNb合金部品を溶接する完全な溶け込みの深さを達成するように特別に構成される。レーザ物質相互作用からの蒸発物質を吸い出すため、引き込み式の同心管排出配列が提供され、レンズ及び合焦手段はタイプIIリグのシャフト/ケーブルの中空軸中央コア内に格納される。更に、レーザ溶接は、人の最小介入、最小の歪み/廃棄、狭いHAZを有する卓越及び一貫した溶接品質、低い歪み及び収縮、高い強度、先鋭点のない溶接表面、及びキャビティの高速産出を伴いながら、RFフィールド領域及びRFフィールド自由領域のSCRFキャビティの様々な部品について種々の溶接場所で正確に実行され、よって卓越した品質を有し、キャビティの動作中にファイルド放出の危険なしに荷電粒子を加速する信頼性能を有するSCRFキャビティの組み立てを可能にする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導無線周波(SCRF)キャビティに関し、具体的には、レーザ溶接を関与させ、可能性として少なくとも1つの溶接継ぎ目が、キャビティの壁の内側の面から、溶接される部品の厚さの半分を超える深さから完全な深さまで溶接され、継ぎ目の良好な強度及び改善された溶接特性を有する超伝導無線周波(SCRF)キャビティの組み立てに関する。更に具体的には、本発明は、場合に応じてRFフィールド領域又はRFフィールド自由領域の継ぎ目のために、キャビティの壁の内側の面から厚さの半分を超えて完全な溶け込みまでレーザ溶接を関与させる、ニオブ及び/又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティの組み立てに向けられ、容易な取り扱い及び製造ステップを用いて、そのような溶接継ぎ目の取得を、はるかに簡単にすることに向けられる。重要なことに、本発明は、SCRFキャビティを組み立てるため、キーホール溶接と伝導溶接との選択的組み合わせを用いて、ニオブ及びその合金をベースとする部品の選択的パルスレーザビーム溶接を行うことへ向けられる。キーホール溶接と伝導溶接との選択的組み合わせにより、最小の熱影響ゾーン(HAZ)を伴う大きな溶け込みの深さ、最小の歪み及び収縮、より制御された精度の機械化/自動化溶接実行によって低減される溶接時間及びコスト、改善された溶接品質及び表面仕上げ、特にSCRFキャビティへ高度に有害となる溶接欠陥/亀裂のない表面を有するSCRFキャビティとしての最終使用に益する溶接特性が達成される。更に本発明は、向上した生産性を有するシステムでニオブ部品をレーザ溶接することによってSCRFキャビティの大量組み立てを可能にすることに向けられる。このシステムにより、一貫した品質及び信頼性、最小のHAZを伴う向上した溶接の溶け込み、溶接継ぎ目の滑らかな仕上げが溶接リグの中で保証される。溶接リグは、低減されたコストで、そのような高性能レーザ溶接を、向上した生産性、品質及び信頼性が得られるように適応されている。
【背景技術】
【0002】
関連分野において、超伝導無線周波(SCRF)キャビティは、高エネルギー粒子加速器の中で粒子ビームを加速するために使用されることが周知されている。これらは、過去30年〜35年の間、稼働されている。SCRFキャビティは、高勾配、無視できるAC電力要求量、及び好ましいビーム力学で動作する利点を有する。これらのSCRFキャビティを製造する今日の技術は、高度に複雑で費用がかかる。現在、SCRFキャビティの大部分は、非常に費用がかかり複雑な組み立て工程を伴うバルクニオブ材料から作られる。
【0003】
当技術分野において、そのようなキャビティの製造中に、ニオブ部品が電子ビーム溶接(EBW)工程によって結合されることも知られている。しかしながら、既存の電子ビーム溶接(EBW)工程は、SCRFキャビティの2つのタイプの継ぎ目、即ち、RFフィールドへ露出される継ぎ目及びRFフィールド領域の外側に入る継ぎ目を溶接するように適用される。これらの継ぎ目は、実施形態において、それぞれRFフィールド領域の継ぎ目及びRFフィールド自由領域の継ぎ目と呼ばれる。SCRFキャビティの組み立てに使用される従来のEBW工程は、次のような欠点を有する。
(a)真空中で遂行されなければならず、EBW機械の資本コストは非常に高いので、費用のかかる工程である。
(b)全ての電子ビーム溶接作業の前に要求される化学エッチングは、費用のかかる危険な作業であり、除かれ得ないにしても最小にされる必要がある。
(c)込み入った継ぎ目を溶接するためには、電子ビーム又は溶接パーツの複雑な操作が要求される。従って、この工程で複雑な継ぎ目を作るのは困難である。
【0004】
EB溶接でSCRFキャビティに作られる継ぎ目は、かなりの量の機械的歪み及び収縮を引き起こす。
【0005】
当技術分野では、EBWの場合、大きな厚さ(1mm以上)を有するSCRFキャビティのNb部品を溶接するための、単位時間当たりに堆積されるエネルギーが大きく、結果として歪み又は収縮の可能性が大きいことも経験された。更に、SCRFキャビティのRFフィールド領域に置かれる溶接継ぎ目は、非常に滑らかな表面仕上げを必要とする。というのは、溶接ビードに先鋭点が存在すると、フィールド放出を引き起こし得るからである。これは既存の高エネルギーEBW溶接工程により一貫して達成するのは困難であり、そのようにして組み立てられたSCRFキャビティの性能に有害な影響を引き起こす。更に、既存のEBW溶接工程は、溶接の取り付け、進行、及び最終溶接ビードを検査する手段をオンラインで提供しない。今日適用される電子ビーム溶接工程は、多数回のセッティングで溶接作業が実行されることを必要とする。従って、真空の中断が何回も必要とされ、これは多くの時間及びコストがかかることを意味する。更に、SCRFキャビティの組み立てに応用される既存の溶接システム及び方法は、電子ビーム物質の相互作用に起因する蒸発プラズマ物質を溶接平面から除去する方法、及びSCRFキャビティの正確な溶接セットアップの中で、込み入った溶接継ぎ目を滑らかにする方法を示唆していない。故に、SCRFキャビティのニオブ部品の組み立てに適用される既存のEBW溶接工程は費用がかかり、生産性が低く、Nb部品の溶接品質の一貫性が低い。
【0006】
特許文献1は超伝導加速管を開示している。この加速管は、超伝導材料から形成された複数の部品の個々の部品が、相互に当接されるように適応された周辺端部を有し、複数の部品が周辺端部で相互に当接され、相互に当接された当接部分が一緒に溶接されるやり方で構築される。特許文献1に従った超伝導加速管において、当接部分はレーザビームによって溶接され、レーザビームが当接部分へ適用されて、部品が相互にレーザ溶接される。好ましくは、加速管は、少なくとも当接部分のそれぞれの内側の面のみがレーザ溶接され、溶接の深さは超伝導材料の厚さの半分よりも大きくなく、150μmよりも小さくないように設計される。
【0007】
重要なことに、特許文献1の示唆によれば、溶接の厚さはシートの厚さの半分を超えないことが好ましい。特に、前記先行技術は、もし溶接の深さが超伝導材料の厚さの半分よりも大きいと、製造された超伝導加速管の寸法精度が溶接部分の収縮によって低下することを記述している。更に、前記先行技術は、もし超伝導材料の厚さが0.1mmよりも小さいと、結果の超伝導加速管の強度は低すぎて、満足なレーザ溶接には管の壁が薄すぎること、一方でもし超伝導材料の厚さが1mmよりも大きいと、熱伝導が低く、必然的に超伝導加速管の使用中に得られる冷却効率が低いことに言及している。
【0008】
故に、前記技術のもとでは、溶接材料の厚さ「t」は0.1<t<1mmの領域に制限され、更に溶接は前記厚さの半分を超過してはならないという教示が、前記US先行技術から明らかであろう。しかしながら、通常、SCRFキャビティを目的とするキャビティ壁の厚さは数年にわたって約2mm以上の範囲にあり、今日の楕円型SCRFキャビティは、一般的に、典型的には3mmの厚さを有するNbから作られる。故に、レーザ溶接に関する前記先行技術は、超伝導キャビティを製造している企業では応用され得ない。
【0009】
更に、NbベースSCRFキャビティの今日の組み立て要件は2mm以上の壁の厚さを要求するが、特許文献1で提案されるように、深さの半分よりも小さく1mmの壁の厚さまでのレーザ溶接は、NbベースSCRFキャビティの所望の強度及び他の特性を有する溶接継ぎ目の提供には不十分であることが、上記の最新技術から明らかであろう。更に、特許文献1で提案されるSCRFキャビティのレーザ溶接は、SCRFキャビティの組み立てに使用される2mm以上のNbの標準的厚さを有する適正な溶接継ぎ目を決して提供し得ない。特に、半分の深さ、更には1mmの厚さよりも小さい深さを超えて、より大きい溶接の深さを特許文献1で提案されている高電力レーザで達成しようとすれば、高いHAZ、大きな溶接の歪み及び収縮という点で、溶接継ぎ目の重大な欠陥を不変に生じるであろう。
【0010】
こうして、関連分野では、レーザ溶接を伴うSCRF加速器キャビティの製造/組み立て技術を進歩させる継続的要求が存在した。それは、より高い信頼性及び生産性を達成し、同時に製造時間及びコストを下げ、厚さの半分よりも大きく厚さの完全な深さまでキャビティの壁の内側の面から溶接を達成するというこれまで可能でなかったことを可能にして、ニオブ及びその合金をベースとする部品を含むSCRFキャビティを組み立てる工程及び機器を提供し、信頼性のある溶接性能を保証するためである。更に、レーザビームを使用する溶接の溶け込みについては、幾つかの重大な要件、例えば、良好な表面仕上げ、強度、及びフィールド放出の危険がないことを満たすことが望まれた。これは、キャビティ内で荷電粒子の加速を稼働している間、RF継ぎ目からの一貫した性能を取得するためである。数年にわたる当技術の他の要件は、最小化されたHAZを伴う高い溶け込みを満たし、溶接表面に先鋭点がない高い表面仕上げを有する信頼性のある溶接品質を保証して、フィールド放出を回避することであった。既存のEBW工程によって、これを一貫して取得することはできない。何よりも、複雑度及び強度と結合された溶接仕上げ、特にSCRFキャビティのRFフィールド領域で要求され、工程及び機器の適切な選択によって満たされる必要がある溶接ビードの滑らかさ、経済性を達成するため溶接工程及びパラメータの最適化の設計、SCRFキャビティ継ぎ目のレーザ溶接のユーザフレンドリな設備の取得は、NbベースSCRFキャビティの組み立てのためにレーザ溶接手法を採用するときの困難な制約であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5239157号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の基本的目的は、特に、キャビティの壁の内側の面から、溶接されつつある材料の厚さの少なくとも半分を超えて完全な深さまでの少なくとも1つの溶接継ぎ目を提供することによって、RFフィールド領域内のレーザ溶接によって結合されたニオブ及び/又はその合金をベースとする部品が、荷電粒子を加速するキャビティの信頼性のある性能及びフィールド放出のない所望の超伝導特性に適した要求強度及び所望の溶接特性を有するニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、公知のレーザ溶接方法並びにそのような目的に使用される従来のEBW工程の制約を克服するように適応されたレーザ溶接を関与させ、費用効果的に、及び更に、向上した生産性及び一貫した品質及び信頼性と共にそのようなSCRFキャビティを組み立てるときの機能的困難を低減しながら、ニオブ及びその合金をベースとする部品を溶接するシステム及び方法を開発することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、キーホール溶接と伝導溶接との選択的組み合わせを伴い、SCRFキャビティの中に所望されないフィールド放出を引き起こす溶接面の上の鋭い点の存在の最小機会を残すように、溶接の所望の深さ、及び更に滑らかな溶接ビード、及びレーザ物質の相互作用に起因して産出される蒸発プラズマ物質の収集の容易性の利点を達成する手法によって、キャビティ内のRFフィールド領域で完全な溶け込みの溶接継ぎ目を備えるSCRFキャビティを組み立てるためのNbシート/部品のレーザ溶接システムを開発することに向けられる。
【0015】
本発明の更なる目的は、任意のタイプのキャビティ、即ち、4分の1波長共振器(QWR)、2分の1波長共振器(HWR)、くぼみ型、楕円型、などのSCRFキャビティのレーザ溶接を備えるSCRFキャビティを組み立てるためのNbシート/部品のレーザ溶接方法を開発することに向けられる。
【0016】
更に、本発明の他の目的は、溶接されつつある材料の厚さの少なくとも半分を超えて完全な深さまでの溶け込みの所望される少なくとも1つの溶接継ぎ目を有する楕円型キャビティを、好ましくはキャビティの壁の内側の面から溶接するように構成された溶接リグシステムに向けられる。
【0017】
本発明の更なる目的は、そのようなキャビティの所望の強度要件を達成しながら、狭いHAZ、最小の歪み及び収縮と共に、Nb部品の1mmの厚さを超えて厚さの完全な深さまでの完全な溶け込みの溶接を達成し得るSCRFキャビティ組み立てNbシート/部品のレーザ溶接システムの開発に向けられる。
【0018】
本発明の更なる目的は、工程、及び時間及び空間定義域における好ましいパルス構成及びその反復周波数の設計を含む溶接パラメータの最適化を選択することによって、高い溶け込み及び最小のHAZが達成されるように選択的溶接パラメータを使用する、SCRFキャビティ組み立て用Nbシート/部品をレーザ溶接するシステム及び方法の開発へ向けられる。
【0019】
本発明の更なる目的は、キャビティの壁の内側の面、例えば、SCRFキャビティの虹彩及び赤道継ぎ目の当接溶接継ぎ目の壁の内側の面から、滑らかな溶接平面を含むRFフィールド領域内の継ぎ目を溶接し、RFフィールド自由領域内の継ぎ目の場合には、幾つかの継ぎ目の要求される溶接を壁の外面から供給する、SCRFキャビティ組み立て用のNbシート/部品のレーザ溶接システム及び方法の開発へ向けられる。
【0020】
本発明の更なる目的は、特にRFフィールド領域内の継ぎ目、及び良好な強度及び漏れ耐性を伴うRFフィールド自由領域内の継ぎ目については、キャビティの壁の内側の面から継ぎ目を溶接する、SCRFキャビティ組み立て用Nbシート/部品のレーザ溶接方法及びシステムの開発に向けられる。
【0021】
本発明の更なる目的は、所望の高速レーザ清掃を得るため、選択的低エネルギー及び高周波パルスを使用して溶接継ぎ目の表面が清掃され、レーザ物質相互作用に起因する蒸発プラズマ物質を溶接表面から除去し、時間を取り危険で費用がかかる従来の化学清掃を最小にした、SCRFキャビティ組み立て用Nbシート/部品のレーザ溶接システムの開発に向けられる。
【0022】
本発明の更に他の目的は、レーザ溶接の仕事の実行並びにガス噴流の提供に適応された選択的ノズル構成、ノズル先端の内側の同心環状通路へ接続された真空ポンプによってレーザ物質相互作用に起因する蒸発プラズマ物質を吸い出す選択的吸い出し機構、又はRFフィールド又はRFフィールド自由領域の継ぎ目の場合には、溶接場所で生成される流体柱/崩壊物の収集及び廃棄を助けるため、垂直線に対して傾斜された単一ノズル/複数ノズルによって溶接されるので、別個のエンクロージャを関与させる、SCRFキャビティ組み立て用のNbシート/部品のレーザ溶接システムの開発へ向けられる。
【0023】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティを組み立てるときの選択的溶接場所で正確な溶接実行を助けるマニピュレータとして機能する機械化手段を構成された溶接リグの集合を関与させる、SCRFキャビティ組み立て用のNbシート/部品のレーザ溶接システムの開発に向けられる。溶接リグは、溶接前及び溶接後の継ぎ目をキャビティの外側からオンラインで検査する手段を含み、必要に応じて溶接を矯正することを含む、生産性が向上した高速大量生産を可能にする。
【0024】
本発明の更に他の目的は、SCRFキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接される継ぎ目のそのような完全な深さの溶け込みを得るとき溶接の歪み及び収縮の問題を緩和するように適応されたニオブ及びその合金をベースとする継ぎ目部品、及び溶接に起因する歪みのオンライン監視/制御を行う手段を関与させた超伝導キャビティへ向けられる。
【0025】
本発明の他の目的は、そのようなキャビティ内の込み入った形状のパーツを簡単及び費用効果的に結合することを可能にするニオブ及びその合金をベースとする溶接結合部品を関与させた超伝導キャビティの製造に向けられる。
【0026】
本発明の他の目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブ部品の選択的な簡単かつ費用効果的溶接を実行するシステム及び方法へ向けられる。このようなシステム及び方法は、資本コスト又は稼働コストを少なくし、SCRFキャビティの優れた品質を保証する。
【0027】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブベース部品のR.F.フィールド領域の選択的溶接システム及び方法に向けられる。ここで、前記選択的溶接は真空又は不活性ガス雰囲気の中で実行される。
【0028】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブベース部品の選択的溶接システム及び方法に向けられる。このようなシステム及び方法は、込み入った形状を所望の正確度/精度で組み立てることを可能にする。
【0029】
本発明の更なる目的は、特にRFフィールド領域に適するように、SCRFキャビティニオブベース部品の選択的レーザ溶接を実行するシステム及び方法に向けられる。ここで、溶接工程は、完全な厚さの溶け込み、溶接に起因する最小の歪み及び収縮、狭いHAZ、フィールド放出のない滑らかな溶接平面を保証し、これは転じて、要求される寸法の正確度、並びに荷電粒子の加速におけるキャビティの信頼性能の保証を助ける。
【0030】
本発明の更なる目的は、SCRFキャビティ組み立て用のニオブ部品のレーザ溶接システム及び方法に向けられる。ここで、継ぎ目の溶接を実行するため、遠隔場所からの溶接領域のボロスコープ検査/観察が提供され、所望の溶接品質を達成するための溶接パラメータが適切に制御される。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の基本的態様によれば、本発明は、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接の溶け込みと共にキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって結合されたニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティを提供することへ向けられる。
【0032】
本発明の他の態様は、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接の溶け込みと共にキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって形成されたRFフィールド領域の中の虹彩継ぎ目及び赤道継ぎ目を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティへ向けられる。
【0033】
本発明の更なる態様は、前記赤道及び/又は虹彩継ぎ目のいずれか又は双方が、キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接された完全な深さを備える前記ニオブ又は及びその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティへ向けられる。
【0034】
重要なことに、前記ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティにおいて、キャビティの壁の内側の面からのレーザ溶接継ぎ目の前記厚さは1mmよりも大きい。
【0035】
本発明の更なる態様は、荷電粒子を加速するための単一及び/又は複数のセルSCRFキャビティを備える前記ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティへ向けられる。
【0036】
本発明の更なる態様は、ニオブ又はその合金をベースとする楕円形超伝導無線周波(SCRF)キャビティを備え、前記レーザ溶接継ぎ目は、半セルから産出されたレーザ溶接ダンベル、フランジ及び高次モード(HOM)連結器を含むエンド・グループ本体へ溶接されたエンドグループ部品、外側から溶接された補強輪を含むRFフィールド自由領域の溶接継ぎ目、及び前記キャビティの壁の内側から溶接された赤道継ぎ目及び虹彩継ぎ目を含むRFフィールド領域の継ぎ目、の1つ又は複数を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティに向けられる。
【0037】
本発明の更なる態様によれば、本発明は、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを産出する方法であって、ニオブ又はその合金から作られ、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接で前記キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって結合される少なくとも1つの部品を提供すること、続いて(i)前記キャビティの壁の内側の面から制御されたキーホール溶接を行う第1の段階、続いて(ii)溶接継ぎ目の非常に滑らかな仕上げを達成するため伝導溶接を行う第2の段階、の各ステップを実行することを備え、狭いHAZと共に歪み及び収縮を最小にし、溶接表面の仕上げがSCRFキャビティの信頼性のある動作を達成するように適応された方法に向けられる。
【0038】
上記の方法において、キーホール溶接を実行する前記ステップは、
(i)エネルギーの必要量のみを提供し、パルス周波数を低く維持することによって加熱レートを制御することと、
(ii)時間定義域で変動させてエネルギーを堆積することと、
を備えるキーホール溶接段階で大きなエネルギーを堆積する。
【0039】
本発明の更なる態様は、SCRFキャビティのダンベルを形成するため2つの半セルの間で虹彩継ぎ目のキャビティの壁の内側の面から虹彩のレーザ溶接を実行することを備える前記方法に向けられる。この方法は、
真空容器を備える虹彩溶接リグの中に一緒に保持された半セルを提供することと、
(i)第1の段階で、3つの同心円筒形管を有するノズルを関与させ、RFフィールド領域の壁の内側の面からキーホール溶接を実行することと、ここでレーザビームは最も内側の管を通過し、最も外側の管はガスを高速で供給し、中間の管は吸い出しポートへ接続され、溶接パラメータが選択されて、パルスプロフィールが時相で変動され、最小の歪みと共に完全な深さの溶け込みが取得されることと、
(ii)第2の段階で、継ぎ目のレベルへ持って来られる傾斜ノズルを関与させてレーザ溶接を実行することと、ここでビームは傾斜されて、溶接流体柱が表面と垂直に立ち昇ることと、
レーザ物質相互作用のために形成された蒸発物質が、エンクロージャ形態の物質吸い込み配列を介して吸い出されることと、
を備える。
【0040】
本発明の更なる態様は、単一セルキャビティ又は複数セルSCRFキャビティを構成するダンベルの赤道継ぎ目のレーザ溶接をキャビティの壁の内側の面から実行することを備え、
キャビティの壁の内側の面から溶接を実行する装置及び/又はアタッチメントを有する真空容器を備える赤道溶接リグの中に、インサートによって担持されたダンベルを提供することと、
(i)第1の段階で、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜されたレーザビームを用いてキーホール溶接を実行し、エネルギーを時相で変動させて良好な溶け込みを得ること、続いて(ii)第2の段階で、キーホール溶接が終わった後に非常に滑らかな仕上げを得るため2重ビームを関与させて伝導溶接を実行し、レーザ物質相互作用からの蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、エンクロージャによって収集されるようにすること、を備える2ステップ溶接作業を遂行しながら赤道継ぎ目を次から次へと溶接することと、
を備える方法に向けられる。
【0041】
本発明の更なる態様は、溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査、の順序を備える前記方法へ向けられる。上記の方法において、前記キーホール溶接は、上下に移動するように適応された3同心管型エンクロージャを備える溶接ノズルを関与させて実行され、ここで最も外側及び最も内側の管エンクロージャは高速不活性ガスの流出を提供するように適応され、中間のエンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すように適応され、前記伝導溶接は2重ビームを関与させて実行され、よってレーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動するように適応された別個のエンクロージャによって収集される。
【0042】
更に、前記方法において、RFフィールド自由領域にあるエンドグループ部品の継ぎ目は、キーホール溶接のみを関与させて外側から溶接され、RFフィールド領域の中にある継ぎ目は、伝導溶接及びキーホール溶接の組み合わせによって溶接される。
【0043】
本発明の更に他の態様によれば、Nd:YAG又は任意の他の固体レーザをレーザ溶接に使用してニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを産出する。
【0044】
本発明の更なる態様は、パルス内でエネルギーを時間変動させ、前記レーザパルスの反復レートを選択することによって、溶け込みの深さを最大にし、歪み、収縮、及び熱影響ゾーン(HAZ)を最小にした前記レーザ溶接を実行することを備える前記ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ産出方法へ向けられる。
【0045】
本発明の更なる態様は、好ましくはパルス内のエネルギーを時間定義域で近台形へ変動させることによって、パルスの時間プロフィールをニオブ又はその合金へ調整し、表面の初期予備加熱で高い溶け込みを生じさせ、終端近くでエネルギーを先細りにして、微小亀裂/空隙/他の欠陥を回避し、よって全体的パルス形状が高い溶け込みの深さ及び低い熱影響ゾーンを保証するようにした、前記ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ産出方法へ向けられる。
【0046】
本発明の更なる態様は、レーザビームは表面へ或る角度で入射し、レーザ物質相互作用からの主な蒸発プラズマ物質が、より小さい固定角度に沿ってのみ射出され、排出ノズルを介して吸い出される前記方法へ向けられる。
【0047】
本発明の更なる態様は、良好な表面仕上げと共に所望の溶け込みを達成するため、選択的ビーム傾斜を有する傾斜レーザビームを関与させて前記キーホール溶接及び伝導溶接を実行することを備え、前記キーホール溶接では、垂直線からのビーム傾斜角が15°〜45°の範囲、好ましくは30°であり、伝導溶接では、垂直線からのビーム傾斜が30°〜60°の範囲、好ましくは45°である前記方法へ向けられる。
【0048】
本発明の上記の方法において、継ぎ目のキーホール溶接の実行は、3つの同心開口を有する特殊溶接ノズルによって、溶接されつつある表面に対して傾斜/直角に衝突するレーザビームで溶接することを備え、ここで最も内側及び最も外側の開口からガスが噴出され、レーザ物質相互作用からの蒸発物質は、排出チャンバとして適応された中間開口によって吸い出される。
【0049】
本発明の更なる態様は、ナノ秒持続時間の短いパルス、好ましくは1〜100ナノ秒の領域にあって、エネルギー密度が約1〜5J/cm2の範囲にある低強度レーザパルスを関与させて溶接領域及び周囲を清掃することを備える前記方法へ向けられる。この場合の重要な態様は、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質が吸い出されることである。
【0050】
本発明の更なる態様は、表面を調整するだけの溶け込みを生じるように適応された低強度非合焦パルスレーザビームを関与させて、継ぎ目表面を平滑化するステップを備える前記方法に向けられる。
【0051】
更に重要なことに、前記方法において、溶接される材料の壁の厚さは1mmよりも大きく、キャビティの壁の内側の面からのレーザ溶接による溶接は、溶接されつつある材料の厚さの半分を超えて完全な深さまでの溶け込みを有する。
【0052】
本発明の更なる他の態様によれば、本発明はニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティなどのレーザ溶接で使用されるキーホール溶接ノズルへ向けられる。このノズルは、
前部でのノズルヘッドを画定する3つの同心管部材、及び溶接領域の溶接及び観察のための、レンズ組立体を収容する中心部の中空円筒シャフトと、
溶接部を溶接及び観察するためのレーザビームを合焦するレンズ組立体及び必要な光学装置を収容する中心領域エンクロージャ並びに高速ガス噴出装置を有する3同心管エンクロージャ組立体と、
中心領域の後ろの第2のエンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに十分な幅であるように適応され、最も外側の第3のエンクロージャは、高速ガスを噴出して蒸発物質の拡散を最小にするように適応されていることと、
ノズルヘッドの最も外側及び最も内側の管エンクロージャは、高速不活性ガスを流出するために提供され、中間エンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すように適応されていることと、
を備える。
【0053】
本発明の更なる態様は、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティなどのレーザ溶接に使用される伝導溶接ノズルシステムであって、
ビームが垂直線に関して好ましくは約45°に傾斜されるように適合されたレンズ組立体を用いて2重ビームレーザを発射するノズル手段、及び上下に伸縮自在に移動するように適応されたエンクロージャを介して、表面と垂直に立ち昇る溶接流体柱を吸い出す手段、
を備えるシステムへ向けられる。
【0054】
本発明の更なる態様は、例えば楕円型SCキャビティなどの溶接を実行するタイプI溶接リグである溶接リグであって、
キャビティ継ぎ目を溶接するためSCRFキャビティのダンベルを形成するように配列された半セルを保持及び操作するためのモータ駆動アタッチメントを有する真空容器と、
ノズル整列機構と、
前記円筒形真空チャンバの内部で前記ダンベルの壁の内側の面からキーホール溶接及び伝導溶接を逐次に実行するように選択的に配置及び適応されたキーホールノズル手段及び伝導溶接ノズルシステムと、
を備える溶接リグへ向けられる。
【0055】
上記溶接リグは、RFフィールド領域内の継ぎ目についてはキャビティの壁の内側の面から、RFフィールド自由領域内の継ぎ目については表面の外側から、キャビティ継ぎ目の前記レーザ溶接を実行するように選択的に配置されるレーザ溶接ノズルを備える。
【0056】
更に、前記溶接リグにおいて、前記溶接ノズルは溶接継ぎ目の線に沿って傾斜溶接を実行するように適応されているが、溶接されるべき周辺の平面では、キャビティの壁の内側の面から、第1の段階でキーホール溶接を実行し、続いて第2の段階で伝導溶接を実行するように適応されている。
【0057】
更に上記の溶接リグにおいて、前記溶接ノズルは、補強輪及び幾つかのエンドグループ部品のためのRFフィールド自由領域の継ぎ目について、外側からキーホール溶接を実行するように適応されている。
【0058】
本発明の更なる態様は、例えば楕円型SCRFキャビティなどの溶接を実行するタイプII溶接リグである溶接リグに向けられる。この溶接リグは、
SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、特にSCRFキャビティの赤道継ぎ目のレーザ溶接を実行するため、異なる装置/アタッチメントを有し、溶接された半セルを相互に組み立ててダンベルを形成するように適応されたリグインサートを格納するように適応された真空容器と、
エンコーダ及び外側からノズルを正確に配置する手段と、
溶接が終わった後に周囲領域を検査するために提供される手段、好ましくはボロスコープと、
前記リグインサートは、3つのタイロッドによって120°の間隔で相互に保持された2つの円形フランジを備え、溶接された半セルを一緒に組み立ててダンベルを形成し、例えばSCRFキャビティのニオブ部品の赤道継ぎ目のレーザ溶接を容易にするように適応されていることと、
このインサートの中に組み立てられ、溶接中にオンラインで歪み監視するように適応された歪みゲージと、
を備える。
【0059】
上記の溶接リグにおいて、
前記異なる装置/アタッチメントは、真空容器、ダンベルシステムを保持するためのタイロッド機構、容器を真空にして不活性ガスを噴出する仕組み、及び真空環境での種々の侵入物に対するシールを備え、
外側からノズルを正確に配置するための前記手段は、レーザヘッドを担持して自分自身の軸の回りで回転し得る中空円筒シャフト、及び更に、上下に移動してレーザ物質相互作用からの蒸発物質を収集するエンクロージャを備え、前記リグは2つのモータ、ボールネジ、及びエンコーダを備える機構を含み、エンコーダは真空環境の外側に留まって精密な回転及び軸方向移動をノズルへ提供し、精密な回転及び軸方向移動はエンコーダによって読み取られ、リグ内で動作的に接続されたパイプラインは溶接領域からの蒸発物質を真空容器の外側へ取り出すように適合されている。
【0060】
本発明の更なる態様は、RFフィールド領域及びRFフィールド自由領域の双方で楕円型超伝導無線周波キャビティ継ぎ目の溶接を実行するリグシステムに向けられる。このリグシステムは、
(i)ダンベルを形成する半セル及びエンドグループ部品の溶接に適応された溶接リグ組立体、及び(ii)SCRFキャビティの壁の内側の面から赤道継ぎ目の溶接を実行するように適応された溶接リグ組立体を備える少なくとも2つの溶接リグの集合、
を備える。
【0061】
本発明の更なる態様は、楕円型超伝導無線周波キャビティ継ぎ目の溶接を実行するリグシステムに向けられる。前記リグの各々は溶接アクセサリを備えて、溶接アクセサリは、制御パルスの形態でレーザビームの発射を容易にするように適応された光ファイバ接続を有し、キーホール溶接のために高エネルギーパルスを発射するように適合されたノズル組立体、伝導溶接用の低エネルギーレーザパルス、ナノ秒持続時間レーザパルスによる溶接平滑化及び清掃用の非合焦低エネルギーパルスの手段、当接エッジ及び溶接継ぎ目を間欠的に観察する手段、欠陥キャビティを検査して問題領域を矯正する手段、レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質の除去と共に溶接の平滑化及び清掃を行う手段、及び容器を真空にしてヘリウム又は他の適切な不活性ガスを導入する手段を含む。
【0062】
本発明の更なる態様は、前記溶接リグ組立体において、4つのタイプのパルスを搬送する光ファイバ配列が提供され、4つのタイプのパルスは、(a)RFフィールド領域並びにRFフィールド自由領域でキーホール溶接を実行するため時間定義域で変動する高エネルギーパルス、(b)伝導溶接用の低いエネルギーのパルス、(c)非合焦ビームとして機能するように適応された一層低いエネルギーのパルス、及び(d)レーザ清掃のために幾つかの表面欠陥が認知されるキャビティ区域へ適用されるナノ秒持続時間の低いエネルギーのパルス、を備えるリグシステムに向けられる。
【0063】
本発明、その目的及び利点は、添付の非限定的図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に従ってSCRFキャビティのレーザ溶接を実行するためのタイプI溶接リグの略図である。
【図1A】図1のタイプIリグの中に格納されたダンベルを形成する半セルの配列及びダンベル内の断面AAの拡大図である。
【図1B】本発明に従ってSCRFキャビティのダンベルの上で補強輪のレーザ溶接を実行するタイプI溶接リグの略図である。
【図2】本発明に従った溶接ノズルタイプAの実施形態の略断面図である。
【図3】蒸発プラズマ物質を取り除くための別個の吸い出しパイプを供給された2重レーザ・ビーム・ノズル・タイプBに基づく溶接工程の略図である。
【図4a】SCRFキャビティのエンドグループの本体を示す。
【図4b】エンドグループ組立体の他の部品、例えば、HOM連結器、NbTiリング、及び連結器フランジを示す。
【図4c】本発明のタイプI溶接リグの内部でNbTiリングをフランジへ溶接するためのセットアップを示す。
【図4d】本発明のタイプI溶接リグの中でHOM連結器を溶接するためのセットアップを示し、自分自身の軸の回りを回転し得るノズルを通過する1つだけのビームを用いてキーホール溶接及び伝導溶接/平滑化を行うことを示す。
【図4e】本発明のタイプI溶接リグの内部で半セルを本体へ溶接するためのセットアップを示す。
【図5】本発明に従ってタイプII溶接リグの中で溶接を実行するために必要なインサート組立体の略図である。
【図6】本発明に従ったタイプIIの溶接リグ、並びに内部に置かれた溶接用ダンベルを担持するインサートの略図である。
【図7】インサート組立体を有しないタイプII溶接リグの略図であって、前記溶接リグの中で使用され、レーザ溶接及び他の所望の機能を実行するための全てのアクセサリ/アタッチメント/駆動器を含む詳細な配列を示す図である。
【図8】タイプAの溶接ノズルを使用して実行されるキーホール溶接工程のB−B(図7でマークされる)の略断面拡大図である。
【図9】キーホール溶接が終わった後にタイプB溶接ノズルを使用して遂行される伝導溶接作業のやり方を示すA−A(図7でマークされる)の略断面拡大図である。
【図10】タイプII溶接リグにおける溶接部のオンラインボロスコープ試験/検査のセットアップを示す略図である。
【図11】本発明に従ったパルスレーザ溶接を実行するために使用される典型的な近台形パルス整形構成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
最初に図1を参照する。図1は、簡単な円筒形真空チャンバを有するタイプ1の溶接リグの略図である。円筒形真空チャンバはダンベルを保持するモータ駆動アタッチメントを有する。これは、例えば、ダンベルを形成するため虹彩継ぎ目を溶接し、SCRFキャビティのダンベルの上に補強輪を溶接するためである。
【0066】
前記図面で明瞭に示されるように、タイプIリグは基本的に円筒形真空チャンバを含む。円筒形真空チャンバは回転機構を収容し、回転機構は、ダンベルを形成する1対の半セルを支持し、溶接を容易にする回転運動に適応されている。RFフィールド領域でキャビティの壁の内側の面からの溶接を達成するため、ノズルが設けられる。エンドグループの他のパーツを溶接するため、溶接ノズルの他の集合も設けられる。全てのノズルは正確な整列機構を設けられている。
【0067】
重要なことに、タイプIリグは、RFフィールド領域の内部の半セルの壁の内側の面から溶接を実行するように適応されている。エンド・グループ本体の部品をエンドグループ部品と一緒に溶接するため、別個のノズル手段(NA)が存在する。RFフィールド領域の半セルの壁の内側の面から、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶け込みを有するように、例えば虹彩継ぎ目の溶接を実行するため、タイプIリグは、キーホール溶接及び伝導溶接用のノズルを提供する。キーホール溶接ノズル及び伝導溶接ノズルのそのような選択的供給配列は、次の図1に示される。図1Aは、図1のタイプIリグの中に格納されたダンベル形成半セル配列の拡大図であり、また同じダンベル拡大図の断面AAを示す。
【0068】
有利には、そのようなノズル及びノズル操縦配列の供給は、例えば、RFフィールド領域の半セルの壁の内側の面からのレーザ溶接を容易にするために提供される。レーザ溶接は、選択的に、(i)第1の段階で、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜したレーザビームを用いてキーホール溶接を実行し、溶け込みを良好にするためエネルギーを時相で変動させ、続いて(ii)第2の段階で、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するため2重ビームを関与させて伝導溶接を実行し、レーザ物質相互作用からの蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、エンクロージャによって収集されるように行われる。
【0069】
本発明の他の態様と同じように、本発明は、キーホール溶接の実行に使用されるタイプAノズル、及び2重ビームを用いる伝導溶接の実行に使用されるタイプBノズルの2種のノズルを提供する。
【0070】
ここで図2を参照する。図2は、本発明に従ってキーホール溶接手法により継ぎ目を溶接するために使用される溶接ノズルタイプAの実施形態の略断面図を示す。それぞれの要素は、レーザ溶接、2つのガス噴流、及び溶接の継ぎ目の位置からの蒸発物質を除去する吸い出し機構という、組み合わせられた仕事を実行するように適応される。レンズ組立体は静止したままであり、エンクロージャは上下に移動する。
【0071】
ここで添付の図3を参照する。図3は、本発明で使用されるタイプBの溶接ノズルを示す。この作業は、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するために遂行される。ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの大きな利点は、レーザ物質相互作用の結果として蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動され得るエンクロージャによって収集されることである。レンズ組立体は、2つのビームが当接エッジへ合焦するような焦点距離を与える。
【0072】
図3は、蒸発物質を除去する2重ビーム溶接の原理を明瞭に示す。図3はタイプBの溶接ノズルを示す。タイプBの溶接ノズルは、RFフィールド領域の継ぎ目について、SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目のレーザ溶接を実行することを目的とする。溶接は、キーホール溶接が終わった後、伝導溶接手法を用いてキャビティの壁の内側の面から遂行される。主な特徴は蒸発物質を収集するエンクロージャであり、このエンクロージャは伸縮自在に上下に移動し得る。垂直線に対して45°の角度に配置された2つのビームによって溶接する典型的な場合が例示されている。
【0073】
こうして、前記キーホール溶接及び伝導溶接ノズルの配列は、滑らかなビードの所望の溶け込みを達成するため、選択的に傾斜されたレーザビームを提供することに好都合である。ここで、前記キーホール溶接の場合、ビームの傾斜角は垂直線に対して15°〜45°の範囲、好ましくは30°である。伝導溶接の場合、2重ビームは垂直線に対して30°〜60°の範囲、好ましくは45°に傾斜される。キーホール溶接の場合でも、結果の溶接ビードが滑らかになるように、傾斜が与えられることを指摘しておく。もしビームが表面へ90°で入射したとすれば、溶け込みは高くなるが、ビードは貧弱になり、これを伝導溶接段階で修復するのは困難である。
【0074】
ここで添付の図4aを参照する。図4aは、本発明に従ったレーザ溶接に関連してSCRFキャビティで使用されるエンドグループの本体を示す。
【0075】
図4c、図4d、及び図4eは、フランジへのNbTiリングの溶接、HOM連結器の溶接、及び本体への半セルの溶接を示す。これらの全ては、図1に示されるタイプIの溶接リグを使用して実行される。重要なことに、簡単な円筒形真空チャンバが同じように示される。円筒形真空チャンバは、溶接を容易にする回転移動に適した回転プラットフォームにキャビティ部品を支持するモータ駆動アタッチメントを有する。RFフィールド領域のエンドグループ部品の継ぎ目を壁の内側の面から溶接する溶接ノズル配列が提供される。外側からのノズル配列は、RFフィールド自由領域のエンドグループ部品の継ぎ目を溶接するために提供される。
【0076】
ここで添付の図5を参照する。図5は、本発明に従ったタイプIIの溶接リグのインサートの略図を示す。この図に示されているように、これは、SCRFキャビティのニオブ部品の赤道継ぎ目をレーザ溶接するため、約120°の間隔の3つのタイロッドによって保持された2つの円形フランジを備えるインサートである。ダンベルを作るためにタイプI溶接リグの中で溶接された半セルは、このインサートの中で正確に組み立てられる。精密な形状のスペーサが、正確な位置決めに使用される。溶接中の歪みをオンラインで監視するため、歪みゲージもインサートの中へ組み立てられる。図6は、タイプIIの溶接リグ並びに溶接用ダンベルを担持するインサートの略図である。本発明によれば、このリグは真空容器を備え、真空容器は、SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、特にSCRFキャビティの赤道継ぎ目をレーザ溶接するための種々の装置/アタッチメントを有する。
【0077】
図5で示されたインサートは、最初にチャンバの中に設置され、次いで溶接が行われる。溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査、の順序を備える。
【0078】
このリグにおいて、溶接作業は2つのステップで遂行される。最初のステップでは、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜されたビームによって、キーホール溶接工程が実行される。この場合、より良好な溶け込みを得るため、エネルギーは時相で変動される。ここで、レンズ組立体は移動しないで中空円筒形シャフトの中に留まる。3つの同心管タイプのエンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側の管エンクロージャは高速不活性ガスの流出に使用され、中間エンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに使用される。
【0079】
第2の段階では、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するため、伝導溶接作業が遂行される。ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの大きな利点は、レーザ物質相互作用の結果としての蒸発物資が、継ぎ目の表面に対して垂直に立ち昇り、上下に移動され得るエンクロージャによって収集されることである。
【0080】
図7は、タイプII溶接リグで使用される機構を示す。図7は、このリグの幾つかの重要な特徴を示している。重要なことに、システムは、ノズル及び光ファイバのような種々の溶接仕掛けについて、キャビティの内部で利用可能な制限空間内に作業道具を提供するように適応されている。溶接リグは、エンコーダ、ボールネジ、及び他のアクセサリを使用し、ノズルの正確な位置が外側から認知され得る。このリグの非常に顕著な態様は、ボールネジ及び円筒形パイプを組み合わせて使用し、キャビティ内部の制限空間へボールネジを挿入することなく、ボールネジの精度が利用され得ることである。溶接が終わった後に周囲領域を検査するためボロスコープが提供される。
【0081】
図8は、タイプAの溶接ノズルによって起こるキーホール溶接工程の図である。ここで、レンズ組立体は移動しないで中空円筒形シャフトの中に留まる。3つの同心管タイプのエンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側のリングエンクロージャは高速不活性ガスの流出に使用され、中間のエンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに使用される。図から明らかなように、ノズルは溶接平面で傾斜されている。
【0082】
図9は、キーホール溶接が終わった後に遂行される伝導溶接作業の図である。この工程はタイプBの溶接ノズルを使用する。この作業は、キーホール溶接が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するために遂行される。ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの主な利点は、レーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動され得るエンクロージャによって収集されることである。レンズ組立体は、2つのビームが当接エッジに合焦されるような焦点距離を与える。
【0083】
図3に関して説明したような、蒸発物質を除去する2重ビーム溶接の同じ原理が使用される。それはタイプBの溶接ノズルを関与させる。タイプBの溶接ノズルは、本発明に従ったタイプIIの溶接リグの中に配列され、RFフィールド領域のSCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目をレーザ溶接することを目的とする。溶接は、キーホール溶接が終わった後、伝導溶接手法を用いてキャビティの壁の内側の面から遂行される。主な特徴は、蒸発物質を収集するエンクロージャであり、このエンクロージャは伸縮自在に上下に移動する。垂直線に対して45°の角度に配置された2つのビームによって溶接する典型的な場合が例示されている。
【0084】
図10は、溶接周囲領域のボロスコープ試験の提供を示す。これは本発明のタイプII溶接リグの中でも提供される。
【0085】
図11は、時間及び空間定義域でパルスエネルギーを変動させながらキーホール溶接を遂行することによってRFフィールド領域並びにRFフィールド自由領域でパルスレーザビーム溶接を実行するための、本発明に従った典型的パルス形状構成(近台形)を示す。このパルス形状構成は、最小のHAZ並びに低い歪み及び収縮と共に非常に良好な溶け込みを達成するように適応されている。
【0086】
重要なことに、SCRFキャビティ製造の上記の選択的やり方を採用し、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでを溶接の溶け込みの深さとして、キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接して結合されたニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティを最初に達成することが可能である。
【0087】
完全溶け込み溶接(キーホール溶接)は、タイプAノズルを提供することによってキャビティの壁の内側の面から取得される。タイプAノズルは3つの同心管を備える。レーザビームは最も内側の管を通過する。最も外側のリングは高速でガスを供給し、中間の管は吸い出し装置へ接続される。溶接パラメータは、パルスプロフィールが時相で変動され、同じ溶け込みの深さについて堆積されるエネルギーを最小にし、よって歪みを低減するようなものである。溶接ノズルは垂直線から30°〜45°の角度で傾斜される。好ましい角度は30°であり、溶接表面の良好な仕上げと共に溶け込みの高い深さが得られる。
【0088】
第2のステップでは、傾斜された伝導溶接ノズルが継ぎ目へ持って来られる。ここで、ビームは45°に傾斜され、溶接流体柱が表面と垂直に立ち昇る。レーザ物質相互作用によって形成された蒸発物質は、別個の排出エンクロージャを介して吸い出される。この排出エンクロージャは、溶接継ぎ目に関して上下に移動するように適応されている。有利には、そのような作業を更に続けることによって、一層滑らかなビードがこのステップで取得される。
【0089】
重要な注意点として、厚さの半分より大きく完全な深さまでの溶接を達成するため、RFフィールド領域の継ぎ目に関連する2つの側から溶接することと比較して、そのような深さまでの溶接がRFフィールド領域の壁の内側の面から可能であることは、キーホール溶接に続く伝導溶接の組み合わせに従う本発明によって達成され、下記で説明するような追加の利点が初めて得られる。
A.溶接セッティングの回数が少なくなり、時間と費用が節約される。
B.1回のセッティングで溶接するとき、取り扱い中に遭遇される問題を回避し得る。半溶接されたキャビティは、リグから取り外されて次のリグへ取り付けられるとき、取り扱い中に変形するか汚染される可能性がある。
C.リグ内でキャビティを設置し直すことは、異なる位置にセットアップする危険があることを意味する。
【0090】
最後に、2つの溶融部が合致するか、溶接されない領域が残される、という危険が常にあり、そのような場合、伝導溶接の次にキーホール溶接が続くか、この反対であるかを問わず、溶接品質に問題が予想される。もし、最初にキャビティの壁の内側の面から伝導溶接が実行され、この後で外側からキーホール溶接が実行されるならば、必要を超える溶け込みが存在し、表面仕上げが損なわれる。もし反対であれば、溶接されていない領域が存在する危険性が高い。というのは、伝導溶接は良好な表面仕上げを目的としており、非常に良好な溶け込みの深さは得られないからである。
【0091】
本発明のシステム及び方法の詳細から、有利には、本発明はナノ秒持続時間の低エネルギーパルスレーザによる溶接清掃工程手段を提供することが、更に明らかであろう。この場合、レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質は、適切な吸い出しヘッドの真空ポンピングで溶接部から吸い出されて除去される。複数の同心円形通路部分を有する可撓性ノズルは、溶接用のレーザパルスを出すため適切に設計された光学装置と共に中心に光ファイバを有し、溶接プールを保護するため高速で不活性ガスを導入し、垂直上方方向へ流体柱を駆動する。配置された一体化又は独立の吸い出し手段は、レーザベース物質/金属相互作用からの蒸発プラズマ物質を溶接部から吸い出す。キーホール溶接の場合、単一のノズルは垂直方位又は垂直線に対して小さく傾斜される。伝導溶接の場合、垂直線に対して傾斜方位にある2重ノズルが使用され、溶接表面の仕上げを遂行すると共にレーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質の吸い出しを助ける。重要なことに、引き込み装置を有するボロスコープ手段が、取り付け及び溶接継ぎ目の欠陥有無について溶接前後に実行されるオンライン検査を助け、取り付け及び溶接仕上げ/清掃作業の光学検査装置となる。
【0092】
更に、本発明に従ったシステムは、パルスレーザ溶接の制御されたパルスパラメータを使用することによって、キャビティの異なる溶接場所でSCRFキャビティのレーザ溶接を実行することへ向けられる。パルスパラメータは、例えば、時間定義域での選択的パルス形状、パルス反復、パルス持続時間、溶接がRFフィールドの中であるか外であるかに依存した空間定義域でのパルス重複であって、これらのパラメータは、溶接仕上げ、キャビティの低減された歪み/ねじれ、溶接継ぎ目の放出を生じやすい先鋭点を回避する平滑表面仕上げを含む無欠陥溶接、及び荷電粒子加速稼働中に必要とされる強度、などの所望の要件を満たすパルスエネルギー入力要件に対応する。
【0093】
更に重要なことに、SCRFキャビティの組み立て分野において、好ましくは固体レーザ、例えばNd:YAGレーザ、Yb:YAGレーザ、ファイバレーザ、又は光ファイバを介して発射される他のレーザを使用して、特にキャビティの壁の内側の面から1mmを超える厚さのニオブ又はその合金から作られた部品をレーザ溶接する応用の制限を克服するため、本発明は、次の事項を含む新規で発明的な技術特徴を有することによって、SCキャビティへ応用されたとき十分に優れた溶接品質を保証する。
(a)RFフィールド領域の継ぎ目及び他の選択的溶接場所について、キャビティの壁の内側の面からのキーホール溶接及び伝導溶接を組み合わせて、前記溶接システム/リグ、ノズル、順序、及び選択的パルス特性/パラメータを使用し、制御されたエネルギー入力を伴う高エネルギーパルスレーザ溶接を使用して歪み/収縮を最小にすると共に狭いHAZへの限定によって、1mmを超え典型的には3mmまでの厚さのニオブシート/部品について厚さの半分よりも大きく完全な溶け込みまでの溶接継ぎ目を達成する。ビードを滑らかにする伝導溶接では、溶接平面の垂直線に対して対称的に傾斜されたノズルの2重レーザビームを使用し、低エネルギーパルスレーザビームを搬送して溶接継ぎ目の上で同時に合併させる。
(b)好ましくは、好ましい特性を有する近台形構成を使用するパルス整形、パルス持続時間、パルス反復周波数、具体的応用に適合するために必要な溶接継ぎ目特性とマッチするパルス重複、を備えるパルスパラメータを選択的に設計する。
(c)ビード表面上の表面起伏/溶接波紋は、ミリ秒持続時間の非合焦レーザビーム及びナノ秒持続時間の低エネルギーパルスによる内側の面のレーザ清掃によって滑らかにされ、双方の場合に、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質は取り除かれる。
(d)レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質を吸い出すため、所望の容積を作り出すために真空ポンプ手段へ接続された排出エンクロージャ及びそのような清掃に必要な真空ヘッドを有する特別設計のノズルを関与させ、稼働中のフィールド放出を導く表面欠陥の可能性を最小にする。
(e)SCRFキャビティの信頼性のある性能を得るための滑らかな溶接ビードが保証される。これは、大規模化学処理の必要性を最小にし、時間を取り危険で費用のかかる工程の関連問題を最小にする。
(f)サービス/最終目的の応用に基づいた具体的品質規準を満たすことを要求する複数セルSCキャビティの溶接継ぎ目の各々のタイプ及び場所について、特別構成の溶接リグ及び仕掛けを使用する。これらの溶接リグ及び仕掛けは、信頼性のある溶接品質を保ちながら高速化/自動化工程及び機器に適応し、簡単及びユーザフレンドリなやり方で企業規模での応用に順応する。
【0094】
本発明に従ってSCRFキャビティを組み立てるニオブレーザ溶接システム、及びSCRFキャビティを組み立てるときの異なる溶接場所について上記で説明した2つのカテゴリの溶接リグ、例えばタイプI及びタイプIIの溶接リグを使用してキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接を実現するやり方は、次の広いカテゴリで具体的な実施形態及び図面を参照して更に詳細に説明される。
(1)タイプIリグの中で半セルを溶接してダンベルを形成する。
(2)タイプIリグの中でエンドグループ部品をエンドグループの本体へ溶接する。
(3)インサート及びタイプII溶接リグを使用してキャビティの壁の内側の面からSCRFキャビティの赤道継ぎ目を溶接し、エンド半セルを有するエンドグループをキャビティの残部へ溶接する。
【0095】
<工程の簡単な説明>
以下のステップは、本発明を使用して、どのように楕円型SCRFキャビティが組み立てられるかを例示する。
ステップ1: タイプI溶接リグの中で半セルの壁の内側の面から虹彩継ぎ目を溶接し、2つの半セルからダンベルを形成する。
【0096】
ここで図1を参照する。図1は、タイプIの溶接リグ(WR−I)を使用し、Nbベースのシート材料から事前に形成された半セルを溶接して、SCRFキャビティの組み立てに使用されるダンベル(DB)を形成するレーザビーム溶接の略図である。タイプI溶接リグ(WR−I)は簡単な円筒形真空チャンバを有し、この円筒形真空チャンバは保持及び操作用のモータ駆動アタッチメント(MH)を有する。ここで、RFフィールド及びフィールド自由領域の継ぎ目の溶接、及び特に、キャビティの壁の内側の面から虹彩継ぎ目(IJ)をキーホール溶接し、続いて2重レーザビームで伝導溶接するセットアップが示される。図1は、ダンベル(DB)部分の拡大図を更に示す。ここで、最初の作業としてキーホール溶接するために「A」タイプのノズル(NA)が使用され、続いて第2段階の作業として順序/継続的に伝導溶接し、2重レーザビームによって平滑化されることが示されている。虹彩継ぎ目(IJ)の平面におけるダンベルのA−Aの断面図は、「B」タイプの2重ノズル(NB)の垂直線への選択的傾斜姿勢を示す。これらのノズルは、リグに関して引き込み式に搭載され、溶接作業の所望の順序を維持するため、及び指定された溶接継ぎ目に関して合焦されるため、必要に応じて上下に移動する。実験的な発見として、最適化溶接パラメータは、前記キーホール溶接が垂直線に対して15°〜45°の範囲、好ましくは30°のビーム傾斜角で実行されること、伝導溶接の場合には、所望のビード平滑化を得るために、垂直線からのビーム傾斜が垂直線に対して30°〜60°の範囲、好ましくは45°であることを含む。これは、稼働中にフィールド放出を生じやすい溶接表面先鋭点の回避を含む無欠陥の継ぎ目を取得するためである。溶接リグは、フィードスルー(FT)配列と共にノズル整列機構(NAM)を設けられる。これらは、溶接される継ぎ目にレーザビームを正確に合焦することを可能にする。作業対象はモータ駆動保持器(MH)によって保持され、モータ駆動保持器は、所望の溶接速度にマッチする所望の回転速度で円周溶接シームを実行するための回転運動を受け取る。タイプIリグにおける虹彩継ぎ目のキーホール溶接の第1段階において、使用される「A」タイプノズルは、溶接場所からの蒸発プラズマ物質を排出する同心円筒形通路/管(CR)を組み込まれている。タイプBノズルでは、蒸発プラズマ物質吸い出し装置(SCD)が、2つの傾斜レーザビームの間の中央位置で溶接面に対して垂直に置かれる。SCDは、溶接場所の2つの側から垂直線に対して傾斜方位に置かれた2つのレーザビームによって中央垂直上方方向へ導かれる流体柱を吸い取って廃棄するように適応されている。
【0097】
ここで容器は閉ざされ、10−5mbarの真空にされる。適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンのいずれかが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2回〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0098】
真空容器(VV)は完全な不活性雰囲気の中にあり、作業対象は容器内でモータ駆動配置器/保持器の上に搭載されている。次いで継ぎ目は、内側及び外側から視覚的に適正な取り付けをチェックされる。ビーム焦点が2つの半セルの当接線と完全にマッチすることを保証するため、保持兼操作機構が使用される。次のステップとして、He−Neレーザが使用され、入射するビームの焦点をチェックする。
【0099】
RFフィールド領域に置かれた虹彩継ぎ目は、ほとんど垂直又は垂直方位に対してやや傾斜したレーザ溶接ノズルタイプ「A」(NA)を使用するキーホール溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域があれば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。適当なパルスエネルギーが使用され、典型的には、使用されるNb又はNb合金部品の3mmの厚さまでの溶け込みの完全な深さを達成する。
【0100】
完全溶け込み溶接(キーホール溶接)は、3つの同心管を有するタイプ「A」ノズル(NA)によってキャビティの壁の内側の面から得られる。レーザビームは最も内側の管を通過する。最も外側及び最も内側の管のエンクロージャは、溶接領域へ高速不活性ガスを流出するために使用され、中間管/エンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すために使用される。溶接パラメータは、パルスプロフィールが時相で変動し、同じ溶け込みの深さについて堆積エネルギーを最小にし、よって歪みを低減するものである。溶接ノズルは垂直線に対して15°〜45°の範囲、より好ましくは30°の角度で傾斜され、同じ溶け込みの深さについて良好な表面仕上げを達成する。
【0101】
第2のステップにおいて、傾斜ノズル(NB)は溶接継ぎ目へ持って来られる。ビームは傾斜され、溶接流体柱は表面と垂直に立ち昇る。レーザ物質相互作用を原因として形成された蒸発物質は、排出エンクロージャ/吸い出し装置(SCD)を介して吸い出される。SCDは平面図でのみ見ることができる。同様に、2つのノズル(NB)は上面図でのみ見ることができる。この作業では、非常に滑らかなビードが取得される。
【0102】
次のステップとして、溶接された継ぎ目の壁の内側の面が、継ぎ目を溶接するために使用される同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。周囲は、ボロスコープによって観察される。必要ならば、適切なノズルNA又はNBによって溶接が修復/再溶接され、前に行われたような工程によって蒸発物質が吸い出される。必要ならば、低エネルギー非合焦ビームが使用され、レーザ清掃の後で溶接ビードの表面上の凹凸を滑らかにする。図1Aは、図1のタイプIリグの中に格納されたダンベルを形成する半セルの配列の拡大図を示し、同じ拡大図のダンベルの断面A−Aを示す。
【0103】
取り付け及び工程をチャンバの外側から観察するため、別個の光学装置(OP)が真空容器(VV)のトップ・カバー・フランジ(CF)の上の適切な場所に提供される。図1は、これらの2つのビームの1つだけを前面図として示す。一度作られた継ぎ目は観察され、溶接されていない区域が残されているかどうかを調べられ、次のパスでは同じ場所で修復が遂行される。中央シャフトの軸位置に設けられた引き込み式機構は、垂直な単一ノズル(NA)及びペアになった傾斜ノズル(NB)が、相互に前後する順序で溶接区域へアクセスされ得る。この動きは、リグの外側から制御され得る。
【0104】
次にチャンバが開かれ、適切な取り付け具を用いて、SCRFキャビティの虹彩継ぎ目の上に補強輪(SR)が取り付けられる。ここで容器は閉じられ、10−5mbarの真空にされる。次いで、適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後に、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。RFフィールド自由領域の補強輪(SR)継ぎ目は、キーホール溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域が存在するならば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。
【0105】
ダンベル(DB)組立体は、周囲温度になるまで或る時間だけ放置される。パルスエネルギー入力は選択的に制御されるので、温度の著しい上昇はなく、従って歪み及び収縮が制御される。提供されつつあるガスも冷却を助ける。ダンベル(DB)組立体は取り出され、ビードの滑らかさが少ない領域及び/又は清掃される必要がある領域について、徹底的に検査される。ダンベルがチャンバ内に再び取り付けられ、操作機構が使用されてビームを非合焦にする。ここで容器は閉じられ、10−5mbarにされる。次いで適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。低エネルギーの非常に短いパルスを用いて溶接領域の清掃が遂行され、次いで非合焦低エネルギーパルスを用いてビードの平滑化が遂行される。
【0106】
ここで添付の図1を参照する。図1は簡単な円筒形真空チャンバを有するタイプIの溶接リグの略図を示す。円筒形真空チャンバは、回転機構によってダンベル(DB)を保持及び回転するモータ駆動保持器(MH)/アタッチメントを有する。ノズル整列機構(NAM)及びフィードスルー(FT)によって、正確な溶接場所でタイプ「A」の溶接ノズルを使用し、レーザビームを適切に位置決め及び合焦し、SCRFキャビティの虹彩継ぎ目の円周をカバーしながら、ダンベル上に外側から取り付けられた補強輪が溶接される。全体の組立体及び溶接は、真空容器(VV)に固定されたトップ・カバー・フランジ(CF)の上の適切な光学装置(OP)を介して外側から観察され得る。光学装置は搭載を解除され得る。添付の図1Bも、既に説明したように、キャビティダンベルの壁の内側の面から虹彩継ぎ目を単一/2重レーザビームで溶接するときのレーザ溶接ノズル位置を示す。
【0107】
ステップ2: タイプI溶接リグ内のレーザ溶接による継ぎ目溶接によってエンドグループを組み立てる。
図4aで示されるように、エンドグループ(EG)の本体(MB)が最初に提供される。本体は、ニオブの単一ブロックからの機械加工によって取得される。ニオブの円筒形ブロックを除去するためにはワイヤ切断EDM工程が使用される。このブロックは、エンドグループと一緒に使用されるHOM連結器及び他のフランジを作るために使用される。回転ミルセンタの上で遂行される機械加工の工程は、エンドグループ本体の他の特徴を作る。
【0108】
通常、エンドグループ(EG)継ぎ目はタイプI溶接リグを使用して溶接される。
【0109】
ここで図4cを参照する。図4cは、エンドグループ部品の1つ1つをどのように溶接するかを示す。基本的方法は、ステップ1で例示された方法と同じである。取り付け具及びセットアップだけが異なる。同じタイプIリグが使用され、エンドグループ部品の全ての溶接を実行する。
【0110】
同様に図4bを参照する。図4bは、エンドグループ組立体/組み立てで使用されるHOM連結器、NbTiリング、及び連結器フランジを備えるエンドグループの他の部品を示す。
【0111】
ここで図4cを参照する。図4cは、エンド・グループ・フランジへのNbTiリングの溶接を示す。エンド・グループ・ボディの頂部に取り付けられたNbTiリングを溶接するため、外側からのキーホール溶接によって完全な溶け込みが達成されるように、ノズルは溶接場所の上に垂直に配置されることが添付の図4(b)から明らかである。
【0112】
ここで添付の図4dを参照する。図4dは、エンドグループの本体へのHOM連結器フランジの溶接を示す。ここで、キーホール溶接及び伝導溶接/平滑化は、ノズルを通過する1つだけのビームを用いて達成される。ノズルは、自分自身の軸の回りを回転し得る。
【0113】
ここで図4eを参照する。図4eはエンドグループの本体への半セルの溶接を示す。この溶接は、RFフィールド領域の溶接であり、SCRFキャビティの壁の内側の面から起こる。注意すべきは、この場所での溶接に起因する表面凹凸を回避することであり、従って溶接パラメータを選択的に使用して、完全溶け込み溶接を保証する。この継ぎ目の壁の内側の面から2重レーザビームを使用して仕上げの溶接を行うことは、RFフィールド領域の継ぎ目要件を満たす目的に役立つ。
【0114】
<エンドグループ部品を溶接する方法>
部品の1つ1つは、取り付け具によって本体へ組み立てられる。継ぎ目は、異なるセッティングで作られる。次いで継ぎ目は、適切な取り付けかどうかを内側及び外側から可視的にチェックされる。ビーム焦点が当接線と完全にマッチすることを保証するため、操作機構が使用される。次のステップとしてHe−Neレーザを使用し、内側から入射するビームの焦点をチェックする。同様に、He−Neレーザを使用し、RFフィールド自由領域の継ぎ目について外側から入射する単ビーム/複数ビームの焦点をチェックする。
【0115】
ここで容器は閉じられ、10−5mbarの真空にされる。適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中に導入され、内部で捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0116】
RFフィールド自由領域の継ぎ目は、キーホール溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域があるならば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。
【0117】
RFフィールド領域の継ぎ目は、最初にキーホール溶接手法によって溶接され、続いて伝導溶接手法によって溶接される。継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域が存在するならば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。溶接領域の清掃は、低エネルギーの非常に短いパルスを用いて遂行され、続いてビードの平滑化が行われる。これは低エネルギーパルスを用いて遂行される。
【0118】
ステップ3: 前もって溶接されたダンベル組立体を用いてキャビティを形成するため、タイプII溶接リグの中でインサートの助けを借りて赤道継ぎ目を溶接する。
最初に図5〜図7を参照する。これらの図は、タイプII溶接リグ及びインサート組立体を使用するキャビティの赤道継ぎ目のレーザ溶接を示す。インサート組立体は、正確な取り付け、及びオンラインの歪み監視、及び溶接継ぎ目の制御を行う。このようなリグは、RFフィールド領域内に入るSCRFキャビティの継ぎ目を溶接するために設計される。このようなリグは、本質的に、ステンレススチール(SS 316L)から作られた真空容器から構成される。容器は、それを1つの側から開かれ得る。横面には観察用の少数の窓が存在する。溶接リグ容器は、真空ポンプへ取り付けられる装置を有する。光ファイバを担持する管は、不活性ガスも搬送する。この管は、フィードスルーの助けを借りて溶接チャンバの中へ導入される。4つのタイプのパルスを時分割ベースで結合するため、同じ光ファイバが使用される。この溶接リグの非常に特殊な特徴は、セルの間に歪みゲージ(SG)を提供することによって、歪みをオンラインで監視することである。この溶接リグの第1の部分は、図5で示されるようなインサート(IN)である。これは2つの円形フランジ(CFS)を使用して作られ、円形フランジは、周辺で120°の間隔を取られた3つのタイロッド(TR)によって相互に保持されている。半セル/ダンベル(DB)は、正確な輪郭のスペーサ(SP)を用いて相互に組み立てられることが、図5から明らかである。半セルから作られた全てのダンベルは、エッジを正確に機械加工され、一緒に組み立てられる。歪みゲージ(SG)は、2つの連続する半セル/ダンベルの間に搭載され、溶接中の歪み/収縮を監視及び制御する。タイプI溶接リグの中でダンベル(DB)を作るために溶接された半セルは、このインサート(IN)の中で正確に組み立てられる。ダンベルの同軸性を正確な位置で維持して完全なキャビティを形成するため、正確な形状のスペーサ(SP)が使用される。溶接中に歪みをオンラインで監視するため、このインサートの中へ歪みゲージ(SG)も組み立てられる。
【0119】
次いで、図6で示されるように、この組立体の全体が真空容器の中へ滑り込ませられる。ここで、赤道継ぎ目の溶接は、完全にキャビティの壁の内側の面から行われる。最初に、赤道継ぎ目は、時相で特定のエネルギー変動を有する高エネルギーパルスを用いて溶接され、次のステップで、タイプIリグでの虹彩継ぎ目の溶接を参照して既に説明したように、2重ビーム溶接手法によって溶接ビードの平滑化が行われる。
【0120】
図6は、タイプIIの溶接リグ、並びに溶接用のダンベルを担持するインサートの略図を示す。本発明によれば、このリグは、SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、具体的にはSCRFキャビティの赤道継ぎ目をレーザ溶接するため、種々の装置/アタッチメントを有する真空容器を備える。
【0121】
溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査の順序に従う。
【0122】
このリグの中で、溶接作業は2つのステップで遂行される。第1のステップでは、溶接平面の垂直線に対して15°〜45°の範囲、好ましくは30°の角度で傾斜したビーム/ノズルによって、キーホール溶接工程が行われる。この場合、溶け込みを良好にするため、エネルギーは時相で変動される。使用される溶接ノズルはタイプ「A」である。このノズルは、レーザビーム並びに保護ガスの所望の流量を搬送する3同心管型環状通路、並びに溶接中に生成される蒸発プラズマ物質を除去するための吸い出し装置を有する。ここで、レンズ組立体は移動せず、中空円筒形シャフトの中に留まる。3同心管型エンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側の管エンクロージャは、高速不活性ガスの流出に使用され、中間のエンクロージャは、レーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すために使用される。
【0123】
キーホール溶接に使用される「A」タイプノズルは、図2に示される。図2は、詳細な構築特徴を断面図で示す。3同心管/環状通路を有するこのノズルによって、キャビティの壁の内側の面からの完全溶け込み溶接(キーホール溶接)が得られる。レーザビームは、最も内側の管を介して発射される。最も外側及び最も内側の管はガスを高速で供給し、中間の管は吸い出し装置へ接続される。ノズルは遠隔の溶接場所へアクセスするための可撓性を有する。その種々の要素は、レーザ溶接、2つのガス噴流の提供、及び溶接継ぎ目の場所から金属蒸気又は他の蒸発物質を除去する吸い出し機構という、組み合わせられた仕事を実行するように適応されている。レンズ組立体は静止したままであり、エンクロージャは上下に移動する。
【0124】
第2の段階では、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを取得するため、伝導溶接作業が遂行される。このために2重ビーム溶接手法が使用される。溶接地点に対して2つの側から垂直傾斜方位に2重レーザビームを配することの大きい利点は、レーザ物質相互作用に起因して生成された蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下方向に移動するように適応されたエンクロージャによって容易に収集され得ることである。
【0125】
赤道溶接は、図5で示されるSSチャンバの中で遂行される。インサートはチャンバ内で組み立てられ、次いで継ぎ目が適正な取り付けを内部から可視的にチェックされる。ビーム焦点が半セルの当接線と完全にマッチすることを保証するため、操作機構が使用される。次のステップとして、入射するビームの焦点を外側からチェックするため、He−Neレーザが使用される。ここでチャンバが閉ざされ、10−5mbarの真空にされる。次いで、適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0126】
RFフィールド領域の赤道継ぎ目は、キーホール溶接手法によって溶接される。低い熱影響ゾーン及び完全な溶け込みの深さを生成するため、時間でのパルス内エネルギー変動及び空間でのパルス重複が使用される。使用されるパルスは図11に示される。溶接パラメータは、パルスプロフィールを時相で変動させ、歪みを最小にしながら完全な溶け込みの深さを得るようなものである。パルスの時間プロフィールは、ニオブ又はその合金について調整される。この調整は、好ましくは、パルス内のエネルギーを時間定義域で近台形の形状へ変動させ、表面の初期予備加熱が高い溶け込みを生じ、終端近くでエネルギーを先細りにすることによって行われ、微小亀裂/空隙/他の欠陥が回避されるようにする。これによって、全体的パルス形状は高い溶け込みの深さ及び低い歪みを保証する。
【0127】
継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によって観察される。もし溶接されていない領域が残されていれば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。インサートが取り出され、スペーサ及び歪みゲージが取り外される。
【0128】
図7は、タイプII溶接リグで使用される機構を示す。それは、この設計の幾つかの重要な特徴を示している。溶接チャンバの内部へ入るボールネジは存在しない。というのは、発明者らは、内部で利用可能な小さい空間を、ノズル及び光ファイバのような種々の溶接仕掛けに利用したいからである(これは楕円キャビティの大部分の場合である)。溶接リグはエンコーダ及び他のアクセサリを使用し、ノズルの正確な位置が外側から認知され得る。溶接が始まる前の継ぎ目の取り付け、及び更に、溶接が終わった後の溶接継ぎ目及び周囲領域に、矯正を必要とする欠陥があるかどうかを検査するため、ボロスコープ(BS)が提供される。
【0129】
方法は同じである。即ち、真空化、純度ガスの導入、蒸発物質の吸い出しを伴う溶接、及び取り出される前の組立体の冷却である。SCキャビティのダンベルの少数の取り付けについて少数の試行を実行することによって、初期データが歪みゲージから生成され、溶接順序が標準化される。
【0130】
周辺で120°の間隔を取られた3つのタイロッドによってダンベル組立体を保持するため、特別に設計されたインサートが使用される。次いで、この組立体の全体は図7で示されるタイプII溶接リグの真空容器の内部へ滑り込ませられる。
【0131】
全ての継ぎ目は、ただ1つのセッティングで作られる。ビーム焦点が当接線と完全にマッチすることを保証するため、最初に継ぎ目は光ファイバ及びレンズ機構を介して観察される。この仕事のために、He−Neレーザ(又は、可視スペクトル内の任意の適切なレーザ)が使用され、外部から観察しながら、入射するビームの焦点がチェックされる。ここで容器は閉じられ、10−5mbarの真空にされる。適切な超純度不活性ガス、ヘリウム又はアルゴンが容器の中へ導入され、内部に捕捉された空気と置換される。2〜3回のそのようなサイクルの後、汚染ガスはチャンバ内に存在しないことが合理的に保証され得る。
【0132】
RFフィールド領域の赤道継ぎ目は、図7の「断面B−B」を表す図8で示されるように、最初にキーホール溶接手法によって溶接される。ここで、レンズ組立体は移動しないで中空円筒形シャフトの中に留まる。3同心管型エンクロージャは上下に移動する。最も外側及び最も内側の同心環状エンクロージャは、高速不活性ガスの流出に使用され、中間エンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しに使用される。図から明らかなように、ノズルは溶接平面で傾斜している。単一のレーザビームを使用するキーホール溶接では、好ましい角度は30°である。
【0133】
継ぎ目は、継ぎ目を溶接するために使用された同じレンズ機構を使用する観察機構によってオンラインで観察される。もし溶接されないで残された領域が存在すれば、それはチャンバを開くことなく再び溶接される。
【0134】
ビードの平滑化は、低エネルギーパルスを用いる第2のステップで遂行される。2つの傾斜レーザビームが使用され、これらのビームはノズルの別個の集合によって発射されて導かれる。引き込み式の蒸発物質吸い出し配列は、その開放端が溶接シームの近くにあるように提供され、同心エンクロージャを介して収集する手段を有する。これは、図6の断面「A−A」を表わす添付の図9で示される。この作業は、キーホール溶接作業が終わった後、非常に滑らかな仕上げを得るために遂行される。
【0135】
ここで2重ビーム溶接手法が使用される。ここでの大きな利点は、レーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動するエンクロージャによって収集されることである。レンズ組立体は、2つのビームが当接エッジに合焦するような焦点距離を有する。
【0136】
図3は、2つの傾斜ノズル配置の拡大図であり、蒸発物質を除去する2重ビーム溶接の原理を示す。この図は、本発明に従ったタイプIIの溶接リグ(WR−II)の中に配列されたタイプBの溶接ノズル(NB)を示す。ノズルのセットアップは、RFフィールド領域のSCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目をレーザ溶接することを目的としている。溶接は、キーホール溶接が終わった後、伝導溶接手法を用いてキャビティの壁の内側の面から遂行される。主な特徴は、伸縮自在に上下に動き得る蒸発物質収集エンクロージャである。垂直線と45°の角度で配置された2つのビームによって溶接する典型的な場合が示されている。
【0137】
次のステップでは、チャンバを開くことなく溶接領域全体並びに周囲を観察するため、中央シャフトに取り付けられたボロスコープが使用される。ボロスコープ検査のセットアップ及び手順は、図10で略図的に示されている。最後のステップで、ダンベル組立体が容器から引き出される。
【0138】
このように、本発明によって、ニオブ及びその合金をベースとするキャビティのレーザ溶接によって組み立てられる超伝導無線周波キャビティを開発し、前記レーザ溶接がニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティを達成させるようにすることが可能である。超伝導無線周波キャビティはニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備え、部品はキャビティの壁の内側の面からレーザ溶接によって結合される。溶接の溶け込みの深さは、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの範囲にある。転じて、これは、良好な表面仕上げ及び強度を有し、フィールド放出の危険を緩和し、キャビティ内の荷電粒子の加速を稼働しながらRF継ぎ目から一貫した性能を取得し得るキャビティの多くの必要な溶接継ぎ目の産出を容易にする。重要なことに、本発明のシステム、装置、及び方法は、タイプI及びタイプIIの溶接リグ及び特殊なノズル構成/方位を使用し、2つのステップ、即ち、最初に高エネルギーレーザパルスを使用してキーホール溶接を行い、次いで第2のステップで、垂直線に対して選択的に傾斜された2重レーザビームを用いて低エネルギーレーザパルスで溶接の平滑化を行うことによって、SCRFキャビティの壁の内側の面から、1mmを超えて典型的には3mm以上の厚さのNb又はNb合金部品を溶接する完全な溶け込みの深さを達成するように特別に構成される。レーザ物質相互作用からの蒸発物質を吸い出すため、引き込み式の同心管排出配列が提供され、レンズ及び合焦手段はタイプIIリグのシャフト/ケーブルの中空軸中央コア内に格納される。更に、レーザ溶接は、人の最小介入、最小の歪み/廃棄、狭いHAZを有する卓越及び一貫した溶接品質、低い歪み及び収縮、高い強度、先鋭点のない溶接表面、及びキャビティの高速産出を伴いながら、RFフィールド領域及びRFフィールド自由領域のSCRFキャビティの様々な部品について種々の溶接場所で正確に実行され、よって卓越した品質を有し、キャビティの動作中にファイルド放出の危険なしに荷電粒子を加速する信頼性能を有するSCRFキャビティの組み立てを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ溶接によって結合されるニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティであって、
キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接される継ぎ目の材料は1mmから4mmの厚さを有し、内側からの溶接の溶け込みの深さは、前記厚さの半分よりも大きく、溶接されつつある材料の4mmへ達する前記内側溶接の完全な深さまでの範囲にある、ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項2】
レーザ溶接によって形成されたRFフィールド領域における虹彩継ぎ目及び赤道継ぎ目を備え、キャビティの壁の内側の面からのレーザ溶接継ぎ目の材料は1mmから4mmの厚さを有し、内側からの溶接の溶け込みの深さは、前記厚さの半分よりも大きく、溶接されつつある材料の4mmへ達する前記内側溶接の完全な深さまでの範囲にある、請求項1に記載のニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項3】
荷電粒子を加速するための単一及び/又は複数セルSCRFキャビティを備える、請求項1又は2に記載のニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項4】
ニオブ又はその合金をベースとする楕円形超伝導無線周波(SCRF)キャビティを備え、前記レーザ溶接継ぎ目は、半セルから産出されたレーザ溶接ダンベル、フランジ及び高次モード(HOM)連結器を含むエンド・グループ本体へ溶接されたエンドグループ部品、外側から溶接された補強輪を含むRFフィールド自由領域の溶接部、及び前記キャビティの壁の内側から溶接された赤道継ぎ目及び虹彩継ぎ目を含むRFフィールド領域の継ぎ目、の1つ又は複数を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法であって、
ニオブ又はその合金から作られ、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接で前記キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって結合される少なくとも1つの部品を提供すること、続いて
(i)前記キャビティの壁の内側の面から制御されたキーホール溶接を行う第1の段階、続いて
(ii)溶接継ぎ目の非常に滑らかな仕上げを達成するため伝導溶接を行う第2の段階、の各ステップを実行することを含み、
狭いHAZと共に歪み及び収縮を最小にし、溶接表面の仕上げがSCRFキャビティの信頼性のある動作を達成するように適応された製造方法。
【請求項6】
キーホール溶接を実行する前記ステップは、
(i)エネルギーの必要量のみを提供し、パルス周波数を低く維持することによって加熱レートを制御することと、
(ii)時間定義域で変動させてエネルギーを堆積することと、
を含むキーホール溶接段階で大きなエネルギーを堆積する、請求項5に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項7】
SCRFキャビティのダンベルを形成するため2つの半セルの間の虹彩継ぎ目の壁の内側の面から虹彩のレーザ溶接を実行することを含み、
真空容器を備える虹彩溶接リグの中に一緒に保持された前記半セルを提供することと、
(i)第1の段階で、3つの同心円筒形管を有するノズルを関与させ、RFフィールド領域の壁の内側の面からキーホール溶接を実行することであって、ここでレーザビームは最も内側の管を通過し、最も外側及び最も内側の管はガスを高速で供給し、中間の管は吸い出しポートへ接続され、溶接パラメータが選択されて、パルスプロフィールが時相で変動され、最小の歪みと共に完全な深さの溶け込みが取得されることと、
(ii)第2の段階で、継ぎ目のレベルへ持って来られる傾斜ノズルを関与させてレーザ溶接を実行することであって、ここでビームは傾斜されて、溶接流体柱が表面と垂直に立ち昇ることと、
レーザ物質相互作用のために形成された蒸発物質が、エンクロージャ形態の物質吸い出し配列を介して吸い出されることと、
を備える、請求項5又は6に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項8】
単一セルキャビティ又は複数セルSCRFキャビティを構成するダンベルの赤道継ぎ目のレーザ溶接をキャビティの壁の内側の面から実行することを含み、
インサート内の前記ダンベルを提供し、前記キャビティの壁の内側の面から溶接を実行する装置及び/又はアタッチメントを有する真空容器を備える赤道溶接リグの内部に前記インサート内の前記ダンベルを担持することと、
(i)第1の段階で、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜されたレーザビームを用いてキーホール溶接を実行し、エネルギーを時相で変動させて良好な溶け込みを得ること、続いて
(ii)第2の段階で、前記キーホール溶接が終わった後に非常に滑らかな仕上げを得るため2重ビームを関与させて伝導溶接を実行し、レーザ物質相互作用からの蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、前記エンクロージャによって収集されるようにすること、を含む2ステップ溶接作業を遂行しながら前記赤道継ぎ目を次から次へと溶接することと、
を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項9】
前記溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査、の順序を備える、請求項8に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項10】
前記キーホール溶接は、上下に移動するように適応された3同心管型エンクロージャを備える溶接ノズルを関与させて実行され、ここで最も外側及び最も内側の管エンクロージャは高速不活性ガスの流出を提供するように適応され、中間のエンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すように適応され、前記伝導溶接は2重ビームを関与させて実行され、よってレーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動するように適応された別個のエンクロージャによって収集される、請求項5から9のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項11】
RFフィールド自由領域のエンドグループ部品継ぎ目は、キーホール溶接のみでキャビティの壁の外側の面から溶接され、RFフィールド領域のエンドグループ部品継ぎ目は、伝導溶接及びキーホール溶接の組み合わせによって溶接される、請求項5から10のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項12】
Nd:YAG又は任意の他の固体レーザをレーザ溶接に使用してニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを産出する、請求項5から11のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項13】
パルス内でエネルギーを時間変動させ、前記レーザパルスの反復レートを選択することによって、溶け込みの深さを最大にし、熱影響ゾーン(HAZ)を最小にした前記レーザ溶接を実行することを含む、請求項5から12のいずれか一項に記載の、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項14】
好ましくはパルス内のエネルギーを時間定義域で近台形へ変動させることによって、パルスの時間プロフィールをニオブ又はその合金用に調整し、表面の初期予備加熱で高い溶け込みを生じさせ、終端近くでエネルギーを先細りにして、微小亀裂/空隙/他の欠陥を回避し、よって全体的パルス形状が高い溶け込みの深さ及び低い熱影響ゾーンを保証するようにした、請求項5から13のいずれか一項に記載の、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項15】
前記レーザビームは前記表面へ或る角度で入射し、レーザ物質相互作用からの主な蒸発プラズマ物質が、小さい立体角に沿って排出され、排出ノズルを介して吸い出される、請求項5から14のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項16】
良好な表面仕上げと共に所望の溶け込みを達成するため選択的ビーム傾斜を有する傾斜レーザビームを関与させて前記キーホール溶接及び伝導溶接を実行することを含み、前記キーホール溶接では、垂直線からの前記ビームの傾斜角が15°〜45°の範囲、好ましくは30°であり、伝導溶接では、垂直線からのビーム傾斜が30°〜60°の範囲、好ましくは45°である、請求項5から15のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項17】
継ぎ目のキーホール溶接の実行は、3つの同心開口を有する溶接ノズルによって、溶接されつつある表面に対して傾斜角/直角で衝突するレーザビームにより溶接することを含み、ここで最も内側及び最も外側の開口からガスが噴射され、レーザ物質相互作用からの蒸発物質は、排出チャンバとして適応された中間開口によって吸い出される、請求項5から16のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項18】
表面を調整するだけの溶け込みに適応された低強度非合焦パルスレーザビームを関与させて継ぎ目の表面を平滑化するステップを含む、請求項5から17のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項19】
ナノ秒持続時間の短いパルス、好ましくは1〜100ナノ秒の領域にあって、エネルギー密度が約1〜5J/cm2の範囲にある低強度レーザパルスを関与させて溶接領域及び周囲を清掃することでレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しを容易にすることを含む、請求項5から18のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項20】
溶接されつつある前記材料の壁の厚さは1mmよりも大きく、溶接は、キャビティの壁の内側の面又は外側の面からのレーザ溶接によって行われ、溶接されつつある前記材料の厚さの半分を超えて完全な深さまでの溶接の深さを有する、請求項5から19のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項21】
楕円型SCRFキャビティなどのダンベルの溶接を実行し、請求項5から20のいずれか一項に記載の製造方法を実現するように適応されたタイプIの溶接リグであって、
キャビティ継ぎ目を溶接するためSCRFキャビティのダンベルを形成するように配列された半セルを保持及び操作するためのモータ駆動アタッチメントを有する真空容器と、
ノズル整列機構と、
円筒形真空チャンバの内部で前記ダンベルの壁の内側の面からキーホール溶接及び伝導溶接を逐次に実行するように選択的に配置及び適応されたキーホールノズル手段及び伝導溶接ノズルシステムと、
を備える溶接リグ。
【請求項22】
RFフィールド領域内の継ぎ目についてはキャビティの壁の内側の面から、RFフィールド自由領域の継ぎ目については表面の外側から、キャビティ継ぎ目のレーザ溶接を実行するように選択的に配置されるレーザ溶接ノズルを備える、請求項21に記載の溶接リグ。
【請求項23】
溶接ノズルは、溶接継ぎ目の線に沿って傾斜溶接を実行するように適応されているが、溶接されるべき周辺部平面では、キャビティの壁の内側の面から、第1の段階でキーホール溶接を実行し、続いて第2の段階で伝導溶接を実行するように適応されている、請求項21又は22に記載の溶接リグ。
【請求項24】
溶接ノズルは、補強輪及び幾つかのエンドグループ部品のようなRFフィールド自由領域の継ぎ目については外側からキーホール溶接を実行するように適応されている、請求項21から23のいずれか一項に記載の溶接リグ。
【請求項25】
例えば楕円型SCRFキャビティなどの溶接を実行し、請求項5から20のいずれか一項に記載の製造方法を実現するように適応されたタイプIIの溶接リグであって、
SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、特にSCRFキャビティの赤道継ぎ目のレーザ溶接を実行するため、異なる装置/アタッチメントを有し、溶接された半セルを相互に組み立ててダンベルを形成するように適応されたリグインサートを格納するように適応された真空容器と、
エンコーダ及び外側からノズルを正確に配置するための手段と、
溶接が終わった後に周囲領域を検査するために提供された手段、好ましくはボロスコープと、
前記リグインサートの中に組み立てられ、溶接中にオンラインで歪みを監視するように適応された歪みゲージと、
を含み、
前記リグインサートは、3つのタイロッドによって120°の間隔で相互に保持された2つの円形フランジを備え、溶接された半セルを一緒に組み立ててダンベルを形成し、例えばSCRFキャビティのニオブ部品の赤道継ぎ目のレーザ溶接を容易にするように適応されている溶接リグ。
【請求項26】
前記異なる装置/アタッチメントは、真空容器、ダンベルシステムを保持するためのタイロッド機構、前記容器を真空にして不活性ガスを噴出する仕組み、及び真空環境への種々の侵入物に対するシールを含み、
前記外側からノズルを正確に配置するための手段は、レーザヘッドを担持して自分自身の軸の回りを回転し得る中空円筒形シャフト、及び更に、上下に移動してレーザ物質相互作用からの蒸発物質を収集するエンクロージャを含み、前記リグは2つのモータ、ボールネジ、及びエンコーダを備える機構を更に含み、前記エンコーダは真空環境の外側に留まって精密な回転及び軸方向移動をノズルへ提供し、前記精密な回転及び軸方向移動は前記エンコーダによって読み取られ、前記リグの中で動作的に接続されたパイプラインは、溶接領域からの蒸発物質を前記真空容器の外側へ取り出すように適応されている、
請求項25に記載の溶接リグ。
【請求項27】
(i)請求項21から24のいずれか一項に記載された、ダンベルを形成するための半セル及びエンドグループ部品を溶接するように適応された溶接リグ組立体、及び(ii)請求項25又は26に記載された、SCRFキャビティの壁の内側の面からの赤道継ぎ目の溶接を実行するように適応された溶接リグ組立体、を備える少なくとも2つの溶接リグの集合を備える、請求項5から20のいずれか一項に記載の製造方法によりRFフィールド領域及びRFフィールド自由領域の中で楕円型超伝導キャビティの溶接を実行するリグシステム。
【請求項28】
前記リグの各々は溶接アクセサリを備え、該溶接アクセサリは、キーホール溶接のために高エネルギーの制御されたレーザパルス、及びナノ秒持続時間のレーザパルスによる溶接平滑化及び清掃のための低エネルギー非合焦レーザパルスの発射を容易にするように適応された光ファイバ接続を有するノズル組立体、当接エッジ及び継ぎ目の溶接を間欠的に観察する手段、欠陥キャビティを検査して問題領域を矯正する手段、レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質を除去することによって溶接を平滑化及び清掃する手段、及び前記容器を真空にしてヘリウム又は任意の他の適切な不活性ガスを導入する手段を含む、請求項27に記載された楕円型超伝導キャビティ部品の溶接を実行するリグシステム。
【請求項29】
前記溶接リグ組立体において、4つのタイプのパルスを搬送する光ファイバ配列が提供され、前記4つのタイプのパルスは、(a)作業対象に関して時間定義域での変動並びに空間定義域での高いパルス重複を有し、好ましくはRFフィールド領域及びRFフィールド自由領域でのキーホール溶接を実行するように適応された高いエネルギーのパルス、(b)伝導溶接のための低いエネルギーのパルス、(c)非合焦ビームとして機能するように適応された一層低いエネルギーのパルス、及び(d)レーザ清掃のために幾つかの表面欠陥が認知されるキャビティ区域へ適用されるナノ秒持続時間の低いエネルギーのパルス、を備える、請求項27又は28に記載のリグシステム。
【請求項1】
レーザ溶接によって結合されるニオブ又はその合金から作られた少なくとも1つの部品を備えるニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティであって、
キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接される継ぎ目の材料は1mmから4mmの厚さを有し、内側からの溶接の溶け込みの深さは、前記厚さの半分よりも大きく、溶接されつつある材料の4mmへ達する前記内側溶接の完全な深さまでの範囲にある、ニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項2】
レーザ溶接によって形成されたRFフィールド領域における虹彩継ぎ目及び赤道継ぎ目を備え、キャビティの壁の内側の面からのレーザ溶接継ぎ目の材料は1mmから4mmの厚さを有し、内側からの溶接の溶け込みの深さは、前記厚さの半分よりも大きく、溶接されつつある材料の4mmへ達する前記内側溶接の完全な深さまでの範囲にある、請求項1に記載のニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項3】
荷電粒子を加速するための単一及び/又は複数セルSCRFキャビティを備える、請求項1又は2に記載のニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項4】
ニオブ又はその合金をベースとする楕円形超伝導無線周波(SCRF)キャビティを備え、前記レーザ溶接継ぎ目は、半セルから産出されたレーザ溶接ダンベル、フランジ及び高次モード(HOM)連結器を含むエンド・グループ本体へ溶接されたエンドグループ部品、外側から溶接された補強輪を含むRFフィールド自由領域の溶接部、及び前記キャビティの壁の内側から溶接された赤道継ぎ目及び虹彩継ぎ目を含むRFフィールド領域の継ぎ目、の1つ又は複数を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のニオブ又はその合金をベースとする超伝導無線周波(SCRF)キャビティ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法であって、
ニオブ又はその合金から作られ、溶接されつつある材料の厚さの半分よりも大きく完全な深さまでの溶接で前記キャビティの壁の内側の面からレーザ溶接することによって結合される少なくとも1つの部品を提供すること、続いて
(i)前記キャビティの壁の内側の面から制御されたキーホール溶接を行う第1の段階、続いて
(ii)溶接継ぎ目の非常に滑らかな仕上げを達成するため伝導溶接を行う第2の段階、の各ステップを実行することを含み、
狭いHAZと共に歪み及び収縮を最小にし、溶接表面の仕上げがSCRFキャビティの信頼性のある動作を達成するように適応された製造方法。
【請求項6】
キーホール溶接を実行する前記ステップは、
(i)エネルギーの必要量のみを提供し、パルス周波数を低く維持することによって加熱レートを制御することと、
(ii)時間定義域で変動させてエネルギーを堆積することと、
を含むキーホール溶接段階で大きなエネルギーを堆積する、請求項5に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項7】
SCRFキャビティのダンベルを形成するため2つの半セルの間の虹彩継ぎ目の壁の内側の面から虹彩のレーザ溶接を実行することを含み、
真空容器を備える虹彩溶接リグの中に一緒に保持された前記半セルを提供することと、
(i)第1の段階で、3つの同心円筒形管を有するノズルを関与させ、RFフィールド領域の壁の内側の面からキーホール溶接を実行することであって、ここでレーザビームは最も内側の管を通過し、最も外側及び最も内側の管はガスを高速で供給し、中間の管は吸い出しポートへ接続され、溶接パラメータが選択されて、パルスプロフィールが時相で変動され、最小の歪みと共に完全な深さの溶け込みが取得されることと、
(ii)第2の段階で、継ぎ目のレベルへ持って来られる傾斜ノズルを関与させてレーザ溶接を実行することであって、ここでビームは傾斜されて、溶接流体柱が表面と垂直に立ち昇ることと、
レーザ物質相互作用のために形成された蒸発物質が、エンクロージャ形態の物質吸い出し配列を介して吸い出されることと、
を備える、請求項5又は6に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項8】
単一セルキャビティ又は複数セルSCRFキャビティを構成するダンベルの赤道継ぎ目のレーザ溶接をキャビティの壁の内側の面から実行することを含み、
インサート内の前記ダンベルを提供し、前記キャビティの壁の内側の面から溶接を実行する装置及び/又はアタッチメントを有する真空容器を備える赤道溶接リグの内部に前記インサート内の前記ダンベルを担持することと、
(i)第1の段階で、溶接平面の垂直線に対して或る角度で傾斜されたレーザビームを用いてキーホール溶接を実行し、エネルギーを時相で変動させて良好な溶け込みを得ること、続いて
(ii)第2の段階で、前記キーホール溶接が終わった後に非常に滑らかな仕上げを得るため2重ビームを関与させて伝導溶接を実行し、レーザ物質相互作用からの蒸発物質が継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、前記エンクロージャによって収集されるようにすること、を含む2ステップ溶接作業を遂行しながら前記赤道継ぎ目を次から次へと溶接することと、
を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項9】
前記溶接方法は、当接エッジの観察、キーホール溶接、観察、修復、観察、2重ビーム伝導溶接/平滑化、ボロスコープを用いる領域全体の観察、レーザ清掃、非合焦レーザを用いる最終平滑化、ボロスコープを用いる最終検査、の順序を備える、請求項8に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項10】
前記キーホール溶接は、上下に移動するように適応された3同心管型エンクロージャを備える溶接ノズルを関与させて実行され、ここで最も外側及び最も内側の管エンクロージャは高速不活性ガスの流出を提供するように適応され、中間のエンクロージャはレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質を吸い出すように適応され、前記伝導溶接は2重ビームを関与させて実行され、よってレーザ物質相互作用の結果としての蒸発物質が、継ぎ目の表面と垂直に立ち昇り、上下に移動するように適応された別個のエンクロージャによって収集される、請求項5から9のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項11】
RFフィールド自由領域のエンドグループ部品継ぎ目は、キーホール溶接のみでキャビティの壁の外側の面から溶接され、RFフィールド領域のエンドグループ部品継ぎ目は、伝導溶接及びキーホール溶接の組み合わせによって溶接される、請求項5から10のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項12】
Nd:YAG又は任意の他の固体レーザをレーザ溶接に使用してニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティを産出する、請求項5から11のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項13】
パルス内でエネルギーを時間変動させ、前記レーザパルスの反復レートを選択することによって、溶け込みの深さを最大にし、熱影響ゾーン(HAZ)を最小にした前記レーザ溶接を実行することを含む、請求項5から12のいずれか一項に記載の、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項14】
好ましくはパルス内のエネルギーを時間定義域で近台形へ変動させることによって、パルスの時間プロフィールをニオブ又はその合金用に調整し、表面の初期予備加熱で高い溶け込みを生じさせ、終端近くでエネルギーを先細りにして、微小亀裂/空隙/他の欠陥を回避し、よって全体的パルス形状が高い溶け込みの深さ及び低い熱影響ゾーンを保証するようにした、請求項5から13のいずれか一項に記載の、ニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項15】
前記レーザビームは前記表面へ或る角度で入射し、レーザ物質相互作用からの主な蒸発プラズマ物質が、小さい立体角に沿って排出され、排出ノズルを介して吸い出される、請求項5から14のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項16】
良好な表面仕上げと共に所望の溶け込みを達成するため選択的ビーム傾斜を有する傾斜レーザビームを関与させて前記キーホール溶接及び伝導溶接を実行することを含み、前記キーホール溶接では、垂直線からの前記ビームの傾斜角が15°〜45°の範囲、好ましくは30°であり、伝導溶接では、垂直線からのビーム傾斜が30°〜60°の範囲、好ましくは45°である、請求項5から15のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項17】
継ぎ目のキーホール溶接の実行は、3つの同心開口を有する溶接ノズルによって、溶接されつつある表面に対して傾斜角/直角で衝突するレーザビームにより溶接することを含み、ここで最も内側及び最も外側の開口からガスが噴射され、レーザ物質相互作用からの蒸発物質は、排出チャンバとして適応された中間開口によって吸い出される、請求項5から16のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項18】
表面を調整するだけの溶け込みに適応された低強度非合焦パルスレーザビームを関与させて継ぎ目の表面を平滑化するステップを含む、請求項5から17のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項19】
ナノ秒持続時間の短いパルス、好ましくは1〜100ナノ秒の領域にあって、エネルギー密度が約1〜5J/cm2の範囲にある低強度レーザパルスを関与させて溶接領域及び周囲を清掃することでレーザ物質相互作用に起因する蒸発物質の吸い出しを容易にすることを含む、請求項5から18のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項20】
溶接されつつある前記材料の壁の厚さは1mmよりも大きく、溶接は、キャビティの壁の内側の面又は外側の面からのレーザ溶接によって行われ、溶接されつつある前記材料の厚さの半分を超えて完全な深さまでの溶接の深さを有する、請求項5から19のいずれか一項に記載のニオブベース超伝導無線周波(SCRF)キャビティ製造方法。
【請求項21】
楕円型SCRFキャビティなどのダンベルの溶接を実行し、請求項5から20のいずれか一項に記載の製造方法を実現するように適応されたタイプIの溶接リグであって、
キャビティ継ぎ目を溶接するためSCRFキャビティのダンベルを形成するように配列された半セルを保持及び操作するためのモータ駆動アタッチメントを有する真空容器と、
ノズル整列機構と、
円筒形真空チャンバの内部で前記ダンベルの壁の内側の面からキーホール溶接及び伝導溶接を逐次に実行するように選択的に配置及び適応されたキーホールノズル手段及び伝導溶接ノズルシステムと、
を備える溶接リグ。
【請求項22】
RFフィールド領域内の継ぎ目についてはキャビティの壁の内側の面から、RFフィールド自由領域の継ぎ目については表面の外側から、キャビティ継ぎ目のレーザ溶接を実行するように選択的に配置されるレーザ溶接ノズルを備える、請求項21に記載の溶接リグ。
【請求項23】
溶接ノズルは、溶接継ぎ目の線に沿って傾斜溶接を実行するように適応されているが、溶接されるべき周辺部平面では、キャビティの壁の内側の面から、第1の段階でキーホール溶接を実行し、続いて第2の段階で伝導溶接を実行するように適応されている、請求項21又は22に記載の溶接リグ。
【請求項24】
溶接ノズルは、補強輪及び幾つかのエンドグループ部品のようなRFフィールド自由領域の継ぎ目については外側からキーホール溶接を実行するように適応されている、請求項21から23のいずれか一項に記載の溶接リグ。
【請求項25】
例えば楕円型SCRFキャビティなどの溶接を実行し、請求項5から20のいずれか一項に記載の製造方法を実現するように適応されたタイプIIの溶接リグであって、
SCRFキャビティのニオブ部品の継ぎ目、特にSCRFキャビティの赤道継ぎ目のレーザ溶接を実行するため、異なる装置/アタッチメントを有し、溶接された半セルを相互に組み立ててダンベルを形成するように適応されたリグインサートを格納するように適応された真空容器と、
エンコーダ及び外側からノズルを正確に配置するための手段と、
溶接が終わった後に周囲領域を検査するために提供された手段、好ましくはボロスコープと、
前記リグインサートの中に組み立てられ、溶接中にオンラインで歪みを監視するように適応された歪みゲージと、
を含み、
前記リグインサートは、3つのタイロッドによって120°の間隔で相互に保持された2つの円形フランジを備え、溶接された半セルを一緒に組み立ててダンベルを形成し、例えばSCRFキャビティのニオブ部品の赤道継ぎ目のレーザ溶接を容易にするように適応されている溶接リグ。
【請求項26】
前記異なる装置/アタッチメントは、真空容器、ダンベルシステムを保持するためのタイロッド機構、前記容器を真空にして不活性ガスを噴出する仕組み、及び真空環境への種々の侵入物に対するシールを含み、
前記外側からノズルを正確に配置するための手段は、レーザヘッドを担持して自分自身の軸の回りを回転し得る中空円筒形シャフト、及び更に、上下に移動してレーザ物質相互作用からの蒸発物質を収集するエンクロージャを含み、前記リグは2つのモータ、ボールネジ、及びエンコーダを備える機構を更に含み、前記エンコーダは真空環境の外側に留まって精密な回転及び軸方向移動をノズルへ提供し、前記精密な回転及び軸方向移動は前記エンコーダによって読み取られ、前記リグの中で動作的に接続されたパイプラインは、溶接領域からの蒸発物質を前記真空容器の外側へ取り出すように適応されている、
請求項25に記載の溶接リグ。
【請求項27】
(i)請求項21から24のいずれか一項に記載された、ダンベルを形成するための半セル及びエンドグループ部品を溶接するように適応された溶接リグ組立体、及び(ii)請求項25又は26に記載された、SCRFキャビティの壁の内側の面からの赤道継ぎ目の溶接を実行するように適応された溶接リグ組立体、を備える少なくとも2つの溶接リグの集合を備える、請求項5から20のいずれか一項に記載の製造方法によりRFフィールド領域及びRFフィールド自由領域の中で楕円型超伝導キャビティの溶接を実行するリグシステム。
【請求項28】
前記リグの各々は溶接アクセサリを備え、該溶接アクセサリは、キーホール溶接のために高エネルギーの制御されたレーザパルス、及びナノ秒持続時間のレーザパルスによる溶接平滑化及び清掃のための低エネルギー非合焦レーザパルスの発射を容易にするように適応された光ファイバ接続を有するノズル組立体、当接エッジ及び継ぎ目の溶接を間欠的に観察する手段、欠陥キャビティを検査して問題領域を矯正する手段、レーザ物質相互作用からの蒸発プラズマ物質を除去することによって溶接を平滑化及び清掃する手段、及び前記容器を真空にしてヘリウム又は任意の他の適切な不活性ガスを導入する手段を含む、請求項27に記載された楕円型超伝導キャビティ部品の溶接を実行するリグシステム。
【請求項29】
前記溶接リグ組立体において、4つのタイプのパルスを搬送する光ファイバ配列が提供され、前記4つのタイプのパルスは、(a)作業対象に関して時間定義域での変動並びに空間定義域での高いパルス重複を有し、好ましくはRFフィールド領域及びRFフィールド自由領域でのキーホール溶接を実行するように適応された高いエネルギーのパルス、(b)伝導溶接のための低いエネルギーのパルス、(c)非合焦ビームとして機能するように適応された一層低いエネルギーのパルス、及び(d)レーザ清掃のために幾つかの表面欠陥が認知されるキャビティ区域へ適用されるナノ秒持続時間の低いエネルギーのパルス、を備える、請求項27又は28に記載のリグシステム。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−510463(P2013−510463A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536015(P2012−536015)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000621
【国際公開番号】WO2011/055373
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(510031062)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000621
【国際公開番号】WO2011/055373
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(510031062)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]