説明

レーザ蒸着を用いた溶接によりブリスクドラムのブレードを修復する装置

【課題】レーザ蒸着を用いた溶接により、ガスタービン用のブリスクドラムのブレードを修復する装置を提供する。
【解決手段】装置はレーザ光源に接続されビームが長さ方向に偏向等されるモジュール13を備え、CCDカメラ12用のモジュールが接続されCCDカメラで装置を配置し、ブレードへの粉末の蒸着を監視、制御が可能で、モジュール13のカメラモジュールに対向側にレーザビームを成形、集光するモジュール19、モジュール20が隣接する。モジュール20内の長手方向でヘッド21内の溶接粉末供給装置に接続される供給路35が、出射口36へ配向される。出射口にモジュール22が隣接し、これがガス源に接続され対象のブレードを含む開いた保護ガスダクトを形成し、翼端に付加される蒸着金属を保護ガスで封止し蒸着物を融解時等の劣化から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ蒸着を用いた溶接によりガスタービン用のブリスクドラムのブレードを修復する装置に関し、この装置は、集光レーザビームを生成するレーザ光源およびレーザ光学素子、およびレーザビームにより溶解される金属粉末を溶接部位に供給する粉末タンクに接続される粉末供給路を含む。
【背景技術】
【0002】
公知のように、ガスタービンエンジンのコンプレッサのロータは、最適な気流誘導および高コンプレッサ効率を実現するため、軽量なブリスク形式に構成される。このような構成において、ブレードはロータディスク上に一体形成される。前述のように製造されたロータディスクは、溶接もしくはねじ式接続により相互に強固に結合されてロータドラムを形成する。砂塵もしくは例えば石等の異物衝突により大きな負荷を受けたブレードの、詳細には前縁および後縁および翼端を修復するために、ブレードの損傷部分を切断/機械加工により分離し、当該部分を、蒸着を用いた溶接により充填し、その後、当該部分を所定の寸法に再加工する方法が知られている。特許文献1より、レーザー蒸着を用いた溶接によるブレードの修復方法が公知であり、この方法においては、ブレードの損傷部分を翼端の方から分離し、分離した構造部分をレーザー蒸着を用いた溶接により翼端まで置換する。その後、通常の機械加工により最終的な寸法に形成し、熱処理加工する。レーザー蒸着を用いた溶接装置は、冷却出射口を介して粉末材料を溶接部位に供給するアルゴン充填電力リザーバおよび粉末材料を融解する適切な形状のレーザビームを生成するレーザ光学素子を備えるレーザ光源を含む。当該装置によれば、ブリスクのブレードをレーザー蒸着を用いた溶接により翼端から修復可能であるが、ブリスク型コンプレッサドラム内でブレードの段が緊密に隣接するため、公知のレーザー蒸着を用いた溶接装置は必要とする空間が大きく、溶接加工において周囲の外気に無防備に露出するため、当該装置はブリスクドラムのブレード前縁および後縁の損傷部分を高品質に修復するには不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5038014号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の特性は広義には、隣接するコンプレッサ段間の制限された空間においてブレード前縁および後縁を高品質に修復可能な、レーザー蒸着を用いた溶接によりブリスクドラムのブレードを修復する装置を提供することである。
【0005】
本発明の詳細な目的は、本発明の請求項1に記載の特性に基づいて構成されるレーザビーム蒸着を用いた溶接装置により、上述の問題を解決することである。本発明の効果的な変形例は従属請求項より明らかにされる。
【0006】
本発明は本質的には、管状に細長く形成されるモジュラー式溶接装置を提供するものであり、装置は、レーザ光源に接続され、入光するレーザビームが内部で長さ方向に偏向され、並行化される接続モジュールを備える。接続モジュールの一方側にはCCDカメラ用のカメラモジュールが接続され、CCDカメラにより、溶接装置を正確に配置し、各ブレードへの溶解金属粉末の蒸着を監視し、制御することが可能となる。接続モジュールのカメラモジュールに対向する側には、レーザビームを更に成形および集光するビーム成形モジュールおよび細長形状の溶接ヘッドモジュールが隣接し、レーザビームおよび粉末供給路は、溶接ヘッドモジュールの長さ方向に伸長し、かつ蒸着ヘッド内で側方出射口へ向かって配向される溶接粉末供給装置に接続される。出射口には保護ガス源に接続され、解放保護ガスダクトを形成する保護ガスシールドモジュールが隣接し、翼端に付加される蒸着金属を保護ガスにより封止して、蒸着物を融解および冷却時の劣化から保護する。上述のように構成される装置により、ブリスクドラムにおいて隣接する2段が緊密に配置されている場合でも、所定の手順で前加工された損傷ブレードの前縁および後縁をレーザー蒸着を用いた溶接により高精度かつ高品質の蒸着で修復可能となる。
【0007】
本発明の他の特性によれば、保護ガスシールドモジュールは、溶接ヘッドモジュール上に配置される固定ダクト部、各ブレードの形状およびサイズに適合する交換可能な可動ダクト部、および修復対象のブレードに一時的に取付けられ、蒸着加工時に溶接装置および保護ガスシールドモジュールを保持するスロット付摺動素子を含む。したがって、溶接部位は実質的に保護ガスにより封止され、蒸着、融解および冷却時の溶接材料の劣化をほぼ防止する。
【0008】
本発明の変形例においては、水源に接続される冷却回路を介して冷却される、ビーム成形および集光する視準レンズおよび集光レンズは接続モジュールおよびビーム成形モジュール内に配置される。
【0009】
本発明の更なる変形例においてはまた、ビーム成形モジュールは保護ガス源に接続されて、溶接装置の光学素子の劣化を防止する。
【0010】
本発明の変形例においては、接続モジュールおよび溶接ヘッドモジュール内に配置されてレーザビームを偏向させる偏向鏡と、白色光ビームをCCDカメラへ向かって偏向させる反射鏡とを備える。
【0011】
本発明の更なる変形例においては、溶接装置を工業用ロボット等に接続する固定素子が接続モジュールもしくはビーム成形モジュール上に設けられる。
【0012】
本発明の更なる変形例においては、レーザ光を接続モジュールに結合する光ファイバコネクタが設けられ、光ファイバコネクタは接続モジュールに接続され、光ファイバケーブル(15)を介してレーザ光源に接続される。
【0013】
好ましい実施の形態を示す添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、航空機用ガスタービン用のブリスク型コンプレッサドラムにおいて、複数のブレードが前縁もしくは後縁に損傷を受けた状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、レーザー蒸着を用いた溶接によりブリスクドラムのブレードを修復する装置の概略図である。
【図3】図3は、図2に記載の装置内におけるビーム配向を示す図である。
【図4】図4は、蒸着・溶接部位を保護ガスによりシールドする装置の概略図である。
【図5】図5は、レーザー蒸着を用いた溶接において損傷ブレードの前縁に配置される溶接装置の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す四段ブリスクドラムは、相互に強固に接続され、かつ各々が外周に一体化して形成されるブレード2を備える4個のロータディスク1を含み、ブレード2のいくつかは前縁および後縁に異物衝突による損傷部位3を有する。損傷ブレードをレーザー蒸着を用いた溶接により修復するため、損傷部位3を切削し、これにより分離部位4を形成する。前述のように前加工した損傷ブレード上に以下に説明するレーザー蒸着を用いた溶接装置を配置し、保護ガスシールド下で、ブレード材料に適合する溶解金属粉末の複数の層をブレード前縁もしくは後縁の分離部位4上に蒸着し、これにより、ブレード後縁の損傷部位に対して図1に示す蒸着部位5を形成する。次に、蒸着部位5を機械加工し、最終的に修復部位6を形成する。これにより、損傷ブレードの全てを高品質に修復する。
【0016】
図2および図3に示す、前加工済みの損傷翼端をレーザー蒸着を用いて溶接する装置は、加工対象のブレード2上に配置される(図5参照)複合モジュラー型溶接装置7を含み、図2によれば、レーザ光源8、水源9、溶接粉末供給装置10、保護ガス源11、およびCCDカメラ12と連動する。レーザ光源8には、光ファイバコネクタ14および光ファイバケーブル15を介して接続モジュール13が接続される。接続モジュール13は、第一に白色光ビーム17をCCDカメラ12の方へ偏向させる反射鏡16を備えるカメラモジュール18に接続し、第二にビーム成形モジュール19に接続するインターフェース素子である。ビーム成形モジュール19の自由端には、側方出射口36および可動の保護ガスシールドモジュール22を有する蒸着ヘッド21を備える狭小な溶接ヘッドモジュール20が隣接して設けられる。ビーム成形モジュール19は、溶接装置7を工業用ロボットもしくは他のNC(図示せず)に固定する固定素子23に接続される。ビーム成形モジュール19は、溶接粉末供給装置10および水源9に接続される。保護ガス源11は、ビーム成形モジュール19および保護ガスシールドモジュール22に接続される。
【0017】
CCDカメラ12を用いると、モジュラー式溶接装置7は修復対象のブレード上に位置的に正しく、かつ各翼端(分離部位4)を横断してわたって配置され、その際、同時に溶接層の蒸着が制御される。
【0018】
接続モジュール13に入光したレーザビームは、第1の視準レンズ24および第1の偏向鏡25により形成される光学素子を介してビーム成形モジュール19内で並行化および偏向され、レーザビーム26はビーム成形モジュール19内で第2の視準レンズ27により再度並行化され、その後、集光レンズ28により集光され、かつ第2の偏向鏡29により噴射金属粉末30へ向けて偏向され、噴射金属粉末30は粉末供給路35を介して溶接ヘッドモジュール20内に供給され、形成される翼端に衝突する。粉末供給路35を介して供給される噴射金属粉末30およびレーザビーム26は、蒸着ヘッド21内で側方出射口36に向かって偏向され、金属粉末は形成される翼端上で溶解し、損傷ブレードの分離部位4に沿って複数の被覆金属層が蒸着して分離部位4を充填する。
【0019】
蒸着ヘッド21上には、保護ガスダクト31を有する、保護ガスシールドモジュール22が配置される。保護ガスダクト31では自由端が開かれて、そこに修復対象のブレード部分を収容し、かつ保護ガスダクト31は、保護ガス源11に接続される。保護ガスダクト31は蒸着ヘッド21の出射口36へ向かって開放されており、これにより、溶解金属粉末が実質的には保護ガスダクト31内で形成される保護ガス雰囲気下で各翼端に蒸着可能となる。保護ガスシールドモジュール22は、蒸着ヘッド21に強固に接続されるダクト部32、ダクト部32上に交換可能に配置され、異なるブレードサイズに適合可能な可動ダクト部33、およびダクト開口部もしくは翼端にそれぞれ対応するスロットを備える摺動素子34を含む。溶解金属粉末を蒸着する際に溶接装置7が進行する際、保護ガスシールドモジュール22は、修復対象のブレードに取付けられる摺動素子34上で誘導される。したがって、溶解金属粉末層は蒸着および冷却の際に局所的な保護ガス雰囲気下に存在することとなり、これにより、蒸着される材料の劣化を防止もしくは少なくとも減少する。図3に示すように、保護ガス源11はまたビーム成形モジュール19に接続され、これにより、溶接装置、詳細にはレンズおよび偏向鏡内での劣化が防止可能である。接続モジュール13およびビーム成形モジュール19内に配置されるビーム成形レンズおよび集光レンズは、水源9に接続される冷却回路(図示せず)により冷却される。
【0020】
上述の溶接装置7の前部には狭小な溶接ヘッドモジュール20が設けられ、狭小な溶接ヘッドモジュール20内では、溶接ビーム26および噴射金属粉末30が並行して伸長し、かつ保護ガスシールドモジュール22が隣接する側方出射口36へ向かって偏向され、これにより、ブリスクドラムの隣接するブレード列間の制限された空間においても局所的な保護ガスシールド下でブレード前縁および後縁に確実に良好に到達可能となり、これにより、ブリスクドラムのブレードを高品質かつ比較的低コストおよび小さい労力で容易に修復可能となる。
【符号の説明】
【0021】
1 ロータディスク
2 ブレード
3 2の損傷部位
4 2の分離部位
5 蒸着部位
6 修復部位
7 溶接装置
8 レーザ光源
9 水源
10 溶接粉末供給装置
11 保護ガス源
12 CCDカメラ
13 接続モジュール
14 光ファイバコネクタ
15 光ファイバケーブル
16 反射鏡
17 白色光ビーム
18 カメラモジュール
19 ビーム成形モジュール
20 溶接ヘッドモジュール
21 蒸着ヘッド
22 保護ガスシールドモジュール
23 固定素子
24 第1の視準レンズ
25 第1の偏向鏡
26 レーザビーム
27 第2の視準レンズ
28 集光レンズ
29 第2の偏向鏡
30 噴射金属粉末
31 解放保護ガスダクト
32 固定ダクト部
33 可動ダクト部
34 スロット付摺動素子
35 粉末供給路
36 側方出射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン用のブリスクドラムのブレードをレーザー蒸着を用いた溶接により修復する装置であって、集光レーザビームを生成するレーザ光源およびレーザ光学素子と、粉末リザーバに接続されて前記レーザビーム(26)により溶解される噴射金属粉末(30)を溶接部位に供給する粉末供給路(35)とを含み、モジュラー式溶接装置(7)は、
前記レーザ光源(8)に接続され、入光する前記レーザビーム(26)が内部で成形および偏向される接続モジュール(13)と、
CCDカメラ(12)用に前記接続モジュール(13)の一方側に接続されるカメラモジュール(18)と、
他方側に接続されて前記レーザビーム(26)を成形および集光するビーム成形モジュール(19)と、
前記ビーム成形モジュール(19)に隣接し、前記レーザビーム(26)および前記粉末供給路(35)が溶接ヘッドモジュール(20)の長さ方向に伸長、かつ蒸着ヘッド(21)内で側方出射口(36)へ向かって配向される細長形状の溶接ヘッドモジュール(20)と、
前記出射口(36)に隣接し、保護ガス源(11)に接続され、開かれた保護ガスダクト(31)を形成し、翼端に付加される蒸着金属を融解および冷却時に劣化から保護する保護ガスシールドモジュール(22)とを含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記保護ガスシールドモジュール(22)は、
前記溶接ヘッドモジュール(20)上に配置される固定ダクト部(32)、各ブレードの形状およびサイズに適合する交換可能な可動ダクト部(33)、および修復対象のブレードに一時的に取付けられ、蒸着加工時に前記溶接装置(7)および前記保護ガスシールドモジュール(22)を保持するスロット付摺動素子(34)を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記接続モジュール(13)およびビーム成形モジュール(19)内に配置されてビーム成形および集光する視準レンズ(24、27)および集光レンズ(28)と、水源(9)に接続されて前記レンズを冷却する冷却回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ビーム成形モジュール(19)は前記保護ガス源(11)に接続されて、前記溶接装置(7)の光学素子の劣化を防止することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記接続モジュール(13)および前記溶接ヘッドモジュール(20)内に配置されて前記レーザビーム(26)を偏向させる偏向鏡(25、29)と、白色光ビームを前記CCDカメラ(12)へ向かって偏向させる反射鏡(16)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記溶接装置(7)を工業用ロボットに接続する固定素子(23)が前記接続モジュール(13)もしくは前記ビーム成形モジュール(19)上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
レーザ光を前記接続モジュール(13)に結合する光ファイバコネクタ(14)が前記接続モジュール(13)上に設けられ、前記光ファイバコネクタ(14)は光ファイバケーブル(15)を介して前記レーザ光源(8)に接続されることを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172963(P2010−172963A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−2660(P2010−2660)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(505421788)ロールスロイス ドイチランド リミテッド ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Rolls−Royce Deutschland Ltd & Co KG
【住所又は居所原語表記】Eschenweg 11,15827 Blankenfelde−Mahlow,Germany
【Fターム(参考)】