レーダ装置、レーダ装置の信号処理方法及び、車両制御システム
【課題】方位ばらつきが大きい場合であっても、物標のトラッキングを精度良く行なうことができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナ15のうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補を二つ算出する方位算出部と、方位算出部で算出された二つの方位候補の夫々についてトラキング処理を行なうトラッキング処理部と、誤差が小さい方の方位候補によるトラッキング処理の結果に基づいて物標情報を出力する物標情報出力部として機能するCPU11を備えているレーダ装置10。
【解決手段】互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナ15のうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補を二つ算出する方位算出部と、方位算出部で算出された二つの方位候補の夫々についてトラキング処理を行なうトラッキング処理部と、誤差が小さい方の方位候補によるトラッキング処理の結果に基づいて物標情報を出力する物標情報出力部として機能するCPU11を備えているレーダ装置10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三本以上の素子アンテナのうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位を検出する位相モノパルス方式のレーダ装置、レーダ装置の信号処理方法、及び、当該レーダ装置を用いた車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
位相モノパルス方式のレーダ装置では、素子アンテナの間隔が受信信号の半波長よりも大きくなると、受信信号の位相差φが±πを超えて、2πで折り返された位相差が観測される位相折り返し(アンビギュイティ)現象が発生する場合がある。
【0003】
位相折り返しが生じるような方位に存在する物標からの反射波を受信すると、物標の方位が一意に決定することができないため、通常は、レーダ装置の検知範囲で位相折り返しが発生しないように、素子アンテナの間隔や電波の波長が選択される。
【0004】
しかし、これでは設計の自由度が大きく制限されてしまうという問題がある。そこで、特許文献1には、位相折り返しに起因する誤検知を防止するために、素子アンテナ間での受信信号の位相差から目標物の方位を検出する信号処理部に、複数の素子アンテナのうち間隔d1で配置された素子アンテナ間での受信信号の位相差から目標物の方位を算出して第1予測方位とし、複数の素子アンテナのうち間隔d1と異なる間隔d2で配置された素子アンテナ間での受信信号の位相差から目標物の方位を算出して第2予測方位とする算出手段と、第1予測方位と第2予測方位とを比較し、両者が一致したときの方位を検出方位として採用する判定手段とを備えた位相モノパルス方式のレーダ装置が提案されている。
【0005】
このようなレーダ装置では、第1予測方位と第2予測方位が厳密に一致する場合は稀であるため、通常、夫々間隔が異なる三本の素子アンテナのうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補を位相折り返しによる方位を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せの中から、方位ばらつきが最小となる組合せの方位候補を抽出し、その平均値を物標の方位として算出するように構成されていた。
【特許文献1】特開2000−230974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたような従来技術では、方位ばらつきが最小となる組合せの方位候補を平均処理することにより物標の方位を得ていたため、ノイズの影響や反射波の強度低下、さらには物標の反射点が位相差を検出する素子アンテナ対毎に異なる等の原因により、方位ばらつきが大きくなると、真の物標の方位に対応した方位ばらつきよりも真の物標の方位とは異なる方位の方位ばらつきの方が小さくなり、誤った方位が算出される可能性があった。
【0007】
そのような誤った方位に基づいて物標のトラッキング処理が行なわれると、物標の情報が誤って出力される虞があるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、方位ばらつきが大きい場合であっても、物標のトラッキングを精度良く行なうことができるレーダ装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明によるレーダ装置の特徴構成は、互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナから選択される素子アンテナ対毎に、受信した反射波の位相差に対応する物標の方位候補を位相のずれが±πまでの領域を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補を算出する方位算出部と、当該反射波に基づいて当該物標の相対速度及び相対距離を算出する速度距離情報算出部と、前記方位算出部及び速度距離情報算出部により所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉される場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理部と、所定条件を満たすときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力部と、を備え、前記トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返す点にある。
【0010】
方位算出部では、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補が位相折り返しを含めて複数求められ、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、例えば、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値が第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値が第二方位として夫々算出される。従って、第一方位と第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれる確率が高くなる。
【0011】
速度距離情報算出部では、当該物標の相対速度及び相対距離が算出され、トラッキング処理部では、所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉されているか否かが判断され、連続して捕捉されている場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報が生成される。
【0012】
このとき、トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、何れが真の軌跡情報であるかを推定して、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する。例えば、第一及び第二の軌跡情報のうち、第一方位との差が小さい軌跡情報が物標の真の軌跡情報であると推定して、当該軌跡情報を第一軌跡情報として更新し、第二方位に基づいて他方の軌跡情報を第二軌跡情報として更新する。
【0013】
つまり、上述の例では、第一方位が物標の真の方位であると推定して第一軌跡情報を更新しながらも、第二方位が物標の真の方位である場合を想定して第二軌跡情報をも更新するように構成されているため、方位算出部で算出された第一方位が物標の偽の方位であっても、そのときに真の方位である可能性が高い第二の方位に対しても同時にトラッキング処理が実行されるようになり、第一方位及び第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれている限り、物標を正確にトラッキングできるようになるのである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り、本発明によれば、方位ばらつきが大きい場合であっても、物標のトラッキングを精度良く行なうことができるレーダ装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるレーダ装置、及び、当該レーダ装置を用いた車両制御システムを説明する。
【0016】
図1に示すように、レーダ装置10と、レーダ装置10による物標の検出結果に基づいて車両を制御する制御部であるオートクルーズコントロール(ACC)機能を備えた電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と記す。)20が接続されて、車両制御システムが構築されている。
【0017】
図3に示すように、車両1の前部バンパーには三基のレーダ装置10(10a,10b,10c)が取り付けられ、センターのレーダ装置10aで正面方向の物標が検知され、左右一対のレーダ装置10c、10bで斜め前方から接近する物標が検出されるように構成されている。
【0018】
図1に戻り、ECU20は、CPU、CPUで実行されるプログラムやデータテーブルが格納されたROM、ワーキングエリアとして使用されるRAM、入出力インタフェース等を備えて構成され、入出力インタフェースを介してレーダ装置10、ステアリングセンサ21、ヨーレートセンサ22、車速センサ23等による検出情報が入力可能に接続されるとともに、ブレーキ24、スロットル25、警報器26等に対して制御信号が出力可能に接続されている。
【0019】
ECU20は、ステアリングセンサ21、ヨーレートセンサ22、車速センサ23等の各センサにより検出された情報に基づいて、所定の走行速度で安定して走行するための各種の演算処理を実行し、その結果に基づいてブレーキ24やスロットル25を制御する。
【0020】
さらに、ECU20は、レーダ装置10により検出された車両前方の障害物である物標の方位、相対距離、相対速度の各情報に基づいて、所定の車間距離を維持するように、或は、追突の危険性を認識すると危険回避のためにブレーキ24やスロットル25を制御する。
【0021】
尚、本構成は車両制御システムの一例であり、レーダ装置10が追突被害軽減機能(Pre-Crash Safety Function)を備えたPCS−ECUに接続される場合には、レーダ装置10により検出された前方車両等の物標の方位、相対距離、相対速度の各情報の何れかまたは組合せが所定の閾値を超えるときに、PCS−ECUが追突の危険性を認識してシートベルトプリテンショナやエアバッグ等を駆動する乗員保護のための車両制御システムが構築される。
【0022】
尚、レーダ装置10がCAN(Controller Area Network)バス等のネットワークを介して複数のECUと接続可能に構成されている場合には、上述のACC−ECUやPCS−ECU等の複数のECUと接続した車両制御システムが構築される。
【0023】
各レーダ装置10は、変調器12と、電圧制御発振器(VCO)13と、一本の送信用のアンテナ14で構成される送信部と、アンテナ14から放射された送信波のうち、物標からの反射波を受信する三本の受信用の素子アンテナ15(15a,15b,15c)と、スイッチ回路16(16a,16b,16c)と、ミキサ17と、フィルタ18と、A/D変換器19とで構成される受信部と、送信部及び受信部を制御するCPU11等を備えて構成されている。
【0024】
CPU11には、CPU11で実行されるプログラムやデータテーブルが格納されたROM、ワーキングエリアとして使用されるRAM、入出力インタフェース等が接続され、ROMには位相差マップMが格納されている。
【0025】
ROMに格納されたプログラムを実行するCPU11により、レーダ装置10の演算処理部が構成され、当該演算処理部には、後述するように、位相モノパルス処理部として機能する方位算出部と、反射波をFFT変換して物標の相対速度及び相対距離を演算する速度距離情報算出部と、トラッキング処理部と、物標情報出力部を備えている。
【0026】
送信部では、CPU11により制御される変調器12から出力される所定周期の三角波に基づいて電圧制御発振器(VCO)13が駆動され、当該三角波で周波数変調された送信波(FM−CW波)がアンテナ14から放射される。
【0027】
受信部では、三本の素子アンテナ15で受信された反射波が、スイッチ回路16で選択的に切り替えられてミキサ17に入力され、送信信号と受信信号がミキシングされて、送信信号と受信信号の周波数の差信号であるビート信号が得られる。
【0028】
図6(a)に示すように、送信信号(図中、実線で示す)は、周波数が直線的に上昇するupチャープ期間と、下降するdownチャープ期間が繰り返される。反射信号(図中、破線で示す)は、車両と物標の相対速度によって、その周波数が送信波の周波数よりドップラー周波数だけシフトするとともに、車両と物標の相対距離Rに応じて送信波より時間T=2R/c(cは光速)だけ遅延して検出される。
【0029】
ビート信号の周波数は、upチャープ期間にfb1、downチャープ期間にfb2となる。すなわち、遅延時間に基づく周波数差にドップラー周波数が重畳された信号が得られる。なお、f0は中心周波数、fmは周波数変調の繰り返し周波数、Δfは周波数変調の周波数遷移幅であり、図6では、受信信号の周波数が送信信号より高く、相対距離が小さくなる方向、つまり物標の接近時の状態を示している。
【0030】
図1に戻り、ミキサ17で得られたアナログビート信号は、ローパスフィルタ18を経て、A/D変換器19でデジタル信号に変換された後にCPU11に入力される。
【0031】
ROMに格納された制御プログラムを実行するCPU11により具現化される速度距離情報算出部により、デジタルビート信号がFFT演算され、図6(b)に示すようなビート信号が得られ、物標の相対速度及び相対距離が算出される。
【0032】
即ち、先ずupチャープ期間のビート周波数fb1及びdownチャープ期間のビート周波数fb2が〔数1〕と〔数2〕に夫々代入され、物標の相対速度が零のときの物標ビート周波数fr及び物標の相対速度に基づくドップラー周波数fdが算出される。
【0033】
次に、物標ビート周波数fr及び物標ドップラー周波数fdが〔数3〕と〔数4〕に夫々代入されて物標までの相対距離Rと物標の相対速度vが算出される。
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
【数4】
【0037】
一方、物標の方位は、ROMに格納された制御プログラムを実行するCPUにより具現化される位相モノパルス処理部としての方位算出部で算出される。
【0038】
図2に示すように、素子アンテナ15は互いのアンテナ間隔が異なるように配置され、例えば、送信波の波長をλとするとき素子アンテナ15aと15bの間隔d1が5λ/4に、素子アンテナ15bと15cの間隔d3が6λ/4に設定されている。
【0039】
図2では、二系統のミキサ17a,17b、フィルタ18a,18b、A/D変換器19a,19bを備え、スイッチ回路16により、一対の素子アンテナ15の出力が各系統に供給され、同時にA/D変換されてCPU11に出力される構成を示しているが、図1に示すように、スイッチ回路16により時分割で各アンテナ対の受信信号がA/D変換されるものであってもよい。何れの場合でも、サンプリング定理に基づいて受信信号がサンプリングされる限り、正確な原信号が再生される。
【0040】
素子アンテナ15aと15bに正面から角度θで入射する反射波が検出される場合を例に説明すると、両素子アンテナ15a、15bで受信された反射波の位相差φから、物標の方位角θは下式に基づいて算出される。
【0041】
θ=sin−1(λφ/2πd1)
【0042】
しかし、素子アンテナ15aと15bの間隔d1が送信波の波長より長い値に設定されているため、位相折り返しが発生し、物標の方位角θは次式で表される複数の候補の何れかとなり、一意に定まらなくなる。
【0043】
θ=sin−1{λ(φ+2πk)/2πd1}、(k=0,1,2,・・・)
【0044】
そこで、レーダ装置10には、検出可能な視野角に応じて設定され、位相差φに対応して複数の方位角が予め算出された位相差マップMが設けられている。本実施形態では、位相のずれが±πまでの領域を含めて、上述したようにROMに位相差マップMが格納されている。
【0045】
図4(a)に示すように、位相差マップMは、横軸を方位角θとし、縦軸を位相差φとする二次元マップであり、素子アンテナ15a,15bで検出される位相差FM1に対応するテーブルデータ、素子アンテナ15a,15cで検出される位相差FM2に対応するテーブルデータ、素子アンテナ15b,15cで検出される位相差FM3に対応するテーブルデータが夫々格納されている。
【0046】
図4(b)に示すように、例えば、位相差FM1が−155度であれば、図中に丸印で示す三点の方位候補が得られ、位相差FM2が55度であれば、図中に三角印で示す三点の方位候補が得られ、位相差FM3が110度であれば、図中に四角印で示す三点の方位候補が得られる。尚、図4に示す位相差マップは、検出可能な視野角が±20度に設定されたレーダ装置10に対応する位相差マップであり、レーダ装置10の正面方向を中心に±90度の範囲で方位が求まるように設定されている。
【0047】
このように、位相差マップMによって、三組の素子アンテナ対に対して夫々三組の方位候補が求められ、合計で27(=33)通りの組合せが得られるが、真の物標に対する方位は一組に限られる。
【0048】
そこで、位相差FM1,FM2,FM3に対応する方位の組合せの中で角度のばらつきが最も小さい組合せを、物標の方位として算出する必要がある。図4(b)の例では、黒丸印、黒三角印、黒四角印で表した方位が最もばらつきが小さいため、例えば、この三点の方位の平均値を物標の方位角θとして求めることができる。
【0049】
しかし、現実にはノイズの影響や反射波の強度低下、さらには物標の反射点が位相差を検出する素子アンテナ対毎に異なる等の原因により、必ずしもばらつきが最小の組合せが物標の真の方位であると保証することができない場合もある。
【0050】
例えば、図5に示すように、黒丸印、黒三角印、黒四角印で表した方位の組合せよりも○印、△印、□印で表した方位の組合せの方が方位ばらつきが小さくなるような場合には、黒丸印、黒三角印、黒四角印で表した方位の組合せが物標の真の方位に対応する組合せであっても、誤って○印、△印、□印で表した方位の組合せが物標の方位であると認識される。
【0051】
このように、物標の方位が誤って認識され、そのような方位に基づいて物標に対するトラッキング処理、つまり、物標の同一性の認識処理が行なわれると、物標の情報が誤って出力される虞がある。
【0052】
本発明はそのような場合に適切に対処できるようになされたものであり、以下に詳述する。
【0053】
方位算出部では、三本の素子アンテナのうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補を、位相差マップMに基づいて複数求める処理が各素子アンテナ対に対して行なわれる。
【0054】
そして、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値を第二方位として算出される。
【0055】
第一方位及び第二方位は必ずしも平均値を採用するものに限られず、中央値であってもよいし、何れかを代表値として採用するものであってもよい。つまり、方位算出部では、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補が算出される。
【0056】
レーダ装置10には、所定インタバルで、速度距離情報算出部により算出される相対速度、相対距離、及び、方位算出部により算出される一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉されているか否かを判断し、連続して捕捉されている場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理部と、所定条件を満たすときに、第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力部を備えている。
【0057】
トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された第一方位との差を比較し、方位差が小さい方の軌跡情報を当該第一方位を反映した第一軌跡情報として更新し、他方の軌跡情報を今回算出された第二方位を反映した第二軌跡情報として更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返す。
【0058】
尚、トラッキング処理部及び物標情報出力部も、ROMに格納された制御プログラムを実行するCPU11により具現化されるものである。
【0059】
つまり、第一方位が物標の真の方位であると推定して第一軌跡情報を更新しながらも、第二方位が物標の真の方位である場合を想定して第二軌跡情報をも更新するように構成されているため、方位算出部で算出された第一方位が物標の偽の方位であっても、そのときに真の方位である可能性が高い第二の方位に対しても同時にトラッキング処理が実行されるようになり、第一方位及び第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれている限り、物標を正確にトラッキングできるようになる。
【0060】
以下、図11に示すフローチャートに基づいて、レーダ装置10の信号処理手順を概説する。
【0061】
先ず、速度距離情報算出部は、素子アンテナ毎に受信信号をFFT演算して、反射波の周波数スペクトラムから複数の物標に対応してピークを示す周波数を複数抽出する(SA1)。
【0062】
方位算出部は、各ピークを示す周波数の位相から素子アンテナ対毎の位相差を求め、当該位相差に対応する三つの方位候補を位相差マップMから求め、次に、27通りの各方位候補の組み合わせの中で、ばらつきが最小となる方位候補の組合せ、及び、その次にばらつきが最小となる第二番目の方位候補の組合せを算出し、各平均値を方位候補として算出する方位演算処理を行なう(SA2)。
【0063】
さらに、方位算出部は、FFT演算された各素子アンテナ対の受信信号のupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々のピークうち、対応するピークをペアリングして、各ペアに対応してばらつきが最小となる方位候補の組合せの平均値同士と、その次にばらつきが最小となる第二番目の方位候補の組合せの平均値同士で夫々平均値を求め、第一方位及び第二方位として算出するペアリング処理を行なう(SA3)。
【0064】
速度距離情報算出部は、上述した、〔数1〕から〔数4〕に基づいて、ペアリングされたピーク周波数に対応する各物標の相対速度及び相対距離を算出する(SA4)。
【0065】
トラッキング処理部は、前回検出された物標と今回検出された物標の同一性を判定し、同一であると判定した物標の第一軌跡情報及び第二軌跡情報を算出する(SA5)。
【0066】
物標情報出力部は、第一軌跡情報が所定条件を満たすときに、第一軌跡情報を当該物標の情報として、例えばCANを介してECU20に出力する(SA6,SA7)。レーダ装置10は、このような信号処理を所定時間間隔で繰り返し、前方の障害物を検知してECU20に出力するのである。
【0067】
上述したステップSA1のピーク抽出処理を、図7及び図12に基づいて詳述する。
【0068】
各素子アンテナ対に対応する受信信号をFFT変換すると、図7(a),(b)に示すように、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で、振幅がピークをとる複数の周波数(fb11,fb12,・・・,fb1n;fb21,fb22,・・・,fb2n)が求まる。夫々のピークは検出された物標からの反射波に対応する。
【0069】
速度距離情報算出部は、変調器12からのタイミング信号に基づいてupチャープ期間とdownチャープ期間を認識して、素子アンテナ対毎に受信信号をupチャープ期間でFFT変換して(SB1)、ピークが最大値となる周波数から順にピークがM番目の大きさとなる周波数までを抽出する(SB2)。同様に、downチャープ期間でFFT変換して(SB3)、ピークが最大値となる周波数から順にピークがM番目の大きさとなる周波数までを抽出する(SB4)。ここで、Mは予め設定された正整数である。
【0070】
上述したステップSA2,SA3の方位演算処理及びペアリング処理を、図8、図13及び図14に基づいて詳述する。
【0071】
図13に示すように、方位演算部は、upチャープ期間で、素子アンテナ15a,15bで受信された反射波のFFT演算結果から、各ピークに対応する位相差FM1(FM11,FM12,・・・,FM1M)を算出して、図4(a)に示す位相差マップMに基づいて三つの方位候補を算出する(SC1)。その結果、最大ピークに対応する三つの方位候補からM番目のピークに対応する三つの方位候補まで夫々の方位候補が求められる。
【0072】
同様の処理が、素子アンテナ15a,15cで受信された反射波、及び、素子アンテナ15b,15cで受信された反射波に対して夫々実行され(SC2,SC3)、各位相差FM2(FM21,FM22,・・・,FM2M),FM3(FM31,FM32,・・・,FM3M)に対して最大ピークに対応する三つの方位候補からM番目のピークに対応する三つの方位候補まで夫々の方位候補が求められる。
【0073】
同一の物標に対して各素子アンテナで検出されるピーク値に対応する周波数は夫々略等しくなるため、周波数が所定の誤差範囲内に納まるピーク値が各物標に対して一つ特定される。物標毎に特定されたピーク値に対応した素子アンテナ対毎の位相差から、夫々三つの方位候補が得られ、合計で27通りの方位候補の組合せが得られる。その中で、ばらつきが最小となる組合せの方位候補の平均値、及び、ばらつきがその次に最小となる組合せの方位候補の平均値を算出する(SC4,SC5)。このようにして算出された方位候補が、図8のupチャープ期間に対応するピークデータ(図中、左上方)として示されている。
【0074】
downチャープ期間に対しても、ステップSC1からSC5と同様の処理が行なわれ、物標毎に特定された三つのピーク値に対応する三つの方位候補の組合せから、ばらつきが最小となる組合せの方位候補の平均値、及び、ばらつきがその次に最小となる組合せの方位候補の平均値を算出する(SC6〜SC10)。このようにして算出された方位候補が、図8のdownチャープ期間に対応するピークデータ(図中、左下方)として示されている。
【0075】
図14に示すように、方位演算部は、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で、振幅がピークとなる複数の周波数(fb11,fb12,・・・,fb1M;fb21,fb22,・・・,fb2M)の中で、振幅差が所定強度範囲に納まるピーク同士を、最大ピークからN番目のピーク迄のN組ペアリングする(SD1)。ここで、Nは予め設定された正整数であり、ペアリングの判断が素子アンテナ対の組合せ毎に実行され、何れも上述の条件を満足したN組が求められる。所定強度範囲は特に制限されるものではなく、具体的なシステムに応じて適宜設定される値である。
【0076】
ステップSD1でペアリングされたピーク毎に、ステップSC4,SC9で算出されたupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まるときに(SD2)、双方の平均値を第一方位として算出する(SD3)。所定角度範囲も特に制限されるものではなく、具体的なシステムに応じて適宜設定される値である。
【0077】
図8では、upチャープ期間で検出されたピーク1とdownチャープ期間出検出されたピーク2がペアリングされ、夫々の最小ばらつき方位候補同士の平均値が第一方位として、夫々の二番目の最小ばらつき方位候補同士の平均値が第二方位として算出される様子が例示されている。
【0078】
次に、ステップSC5,SC10で算出されたupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々の二番目の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まるときに(SD4)、双方の平均値を第二方位として算出する(SD5)。
【0079】
尚、ステップSD2で夫々の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まらなかったときには、第一方位及び第二方位が検出されず、検出エラーとなり(SD7)、ステップSD4で夫々の二番目の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まらなかったときには、第二方位が検出されず、検出エラーとなる(SD6)。
【0080】
このようにして、ペアリングされたピーク毎に、何れかが物標の真の方位となる可能性が高い第一方位と第二方位が算出され、これらの値が算出の基礎となった複数の方位候補とともにRAMに記憶される。
【0081】
続いて、上述したステップSA5のトラッキング処理を、図9、10及び図15に基づいて詳述する。
【0082】
図9(a)に示すように、ペアリング処理で算出されたN組のペアリングデータ(ペア1,ペア2,・・・,ペアN)の夫々は、第一方位、第二方位、相対速度及び相対距離の各情報で構成されている。尚、一つの物標の相対速度及び相対距離情報に対して第一方位及び第二方位が求められているのであり、第一方位及び第二方位夫々に対して異なる値の相対速度及び相対距離情報が求められるものではない。
【0083】
図9に示すように、トラッキング処理部では、各ペアリングデータに基づいてフィルタデータが順次生成されてRAMに格納される。初回に得られたペアリングデータが「今回フィルタ」に対応する領域に格納され、次回にペアリングデータが得られると、「今回フィルタ」の値が「前回フィルタ」の領域に移され、当該ペアリングデータと「前回フィルタ」のデータとの間で連続性の判定が行なわれ、連続性が認識されると、所定の重み演算が実行されて「今回フィルタ」の値が更新される。連続性が無いと認識されると、今回得られたペアリングデータが「今回フィルタ」に対応する領域に格納され、次回から連続性の判定が再開される。
【0084】
重み演算とは、今回のペアリングデータである方位、相対距離、相対速度の夫々に対して与えられる重み係数Wpと、前回フィルタに格納された方位、相対距離、相対速度の夫々に対して与えられる重み係数Wqによる重み平均演算をいう。
【0085】
例えば、今回の相対距離をLp、前回フィルタに格納された相対距離をLqとすると、新たな相対距離Lが次式に従って算出されて今回フィルタのフィルタデータとして格納される。
【0086】
このような重み演算は、物標の軌跡をスムージングするための演算であり、本実施形態では、重み係数Wpを8に、重み係数Wqを2に設定している。尚、重み係数はこの値に限定されるものではなく、物標の検出精度等、システムの特性により適宜設定される値である。
L=(Wp×Lp+Wq×Lq)/(Wp+Wq)
【0087】
物標に対する連続性の判定は、今回のペアリングデータと「前回フィルタ」のデータの夫々に対して、相対速度及び相対距離の差が所定の範囲に納まっているか否かに基づいて行なわれる。当該所定の範囲とは、同一の物標であると認識可能な最大の速度差及び距離差であり、ペアリングデータが算出される時間間隔に基づいて決定される値である。尚、連続性の判定は、相対速度または相対距離の何れかに基づいて行なわれるものであってもよい。
【0088】
第一方位及び第二方位の二方位に対応して、「今回フィルタ」及び「前回フィルタ」の領域が夫々一対設けられ、各「フィルタ」領域はN組のペアリングデータに対応してData1からDataKのK領域に区画され、ペアn(n=1,2,・・・,N)のデータに対してDatanの領域が使用され、ペアn+1のデータに対してDatan+1の領域が使用される。尚、Data(N+1)からDataKは予備の領域である。尚、KはNより大なる任意の正整数である。
【0089】
図15に示すように、トラッキング処理部は、今回のペア1のペアリングデータに含まれる第一方位と、「前回フィルタ1」または「前回フィルタ2」のData1に含まれる方位の偏差を算出する(SE1)。
【0090】
「前回フィルタ1」との方位偏差の方が小さい場合は(SE2)、当該ペアリングデータと「前回フィルタ1」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、図9(a)に示すように、当該ペアリングデータと「前回フィルタ1」のData1の方位、相対速度及び相対距離との間で夫々上述の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ1」のData1に格納する。さらに、第一方位の算出基礎となった複数の方位候補から第一方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE3)。
【0091】
次に、今回のペア1のペアリングデータに含まれる第二方位と「前回フィルタ2」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、方位、相対速度及び相対距離の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ2」のData1に格納するとともに、第二方位の算出基礎となった複数の方位候補から第二方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE4)。
【0092】
ステップSE2で、「前回フィルタ2」との方位偏差の方が小さい場合は、当該ペアリングデータと「前回フィルタ2」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、図9(b)に示すように、当該ペアリングデータと「前回フィルタ2」のData1の方位、相対速度及び相対距離との間で夫々上述の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ1」のData1に格納する。さらに、第一方位の算出基礎となった複数の方位候補から第一方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE5)。
【0093】
次に、今回のペア1のペアリングデータに含まれる第二方位と「前回フィルタ1」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、方位、相対速度及び相対距離の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ2」のData1に格納するとともに、第二方位の算出基礎となった複数の方位候補から第二方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE6)。
【0094】
つまり、第一方位が物標の真の方位であると推定して第一軌跡情報である「今回フィルタ1」を更新しながらも、第二方位が物標の真の方位である場合を想定して第二軌跡情報である「今回フィルタ2」をもバックグラウンドで更新するように構成されている。
【0095】
従って、方位算出部で算出された第一方位が物標の偽の方位であっても、そのときに真の方位である可能性が高い第二の方位に対しても同時にトラッキング処理が実行されるようになり、第一方位及び第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれている限り、物標を正確にトラッキングできるようになるのである。
【0096】
フィルタデータの更新処理について詳述する。「今回フィルタ1」及び「今回フィルタ2」の更新処理は、上述した連続性の判定処理に加えて、図10(a)に示す判定条件に基づいて、今回検出された第一方位及び第二方位に基づいても行なわれる。
【0097】
今回のペアリング処理で第一方位が検出され、「前回フィルタ1」または「前回フィルタ2」のデータが存在する場合であって、当該第一方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲内に納まり、横位置ばらつきが所定範囲に納まっているときに(図中、条件の欄が「OFF」に対応する)「今回フィルタ1」が更新される。
【0098】
当該第一方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲から外れ、或は横位置ばらつきが所定範囲から外れているときには(図中、条件の欄が「ON」に対応する)、「今回フィルタ1」の値として、今回のペアリング処理で得られた方位、相対距離及び相対速度が格納される。さらに、今回のペアリング処理で第一方位が検出されなかったときには、「今回フィルタ1」の値が初期化される。
【0099】
さらに、今回のペアリング処理で第二方位が検出され、「前回フィルタ1」または「前回フィルタ2」のデータが存在する場合であって、当該第二方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲内に納まり、横位置ばらつきが所定範囲に納まっているときに(図中、条件の欄が「OFF」に対応する)「今回フィルタ2」が更新される。
【0100】
当該第二方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲から外れ、或は横位置ばらつきが所定範囲から外れているときには(図中、条件の欄が「ON」に対応する)、「今回フィルタ2」の値として、今回のペアリング処理で得られた方位、相対距離及び相対速度が格納される。さらに、今回のペアリング処理で第一方位が検出され、且つ、第二方位が検出されなかったときには、「今回フィルタ2」の値が「前回フィルタ2」の値に維持される。
【0101】
トラッキング処理部では、このような処理がN組のペアリングデータの夫々に対して実行される。
【0102】
横位置ばらつきについて説明する。図17に示すように、レーダ装置10から出力された送信波に対する物標Oの反射点が異なると、同一物標であっても各素子アンテナ対で検出される位相差が異なる。上述した横位置ばらつき(od)とは、このような物標Oの反射点のばらつきがどの程度であるかを評価する指標であり、次の近似式で求められる。
横位置ばらつき(od)=相対距離L×|sinθ1−sinθ2|
【0103】
ここで、θ1及びθ2は、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で算出された最小方位バラつきまたは二番目に小さい方位ばらつきのうち、平均値に対する両方向のばらつきが最大となる方位候補の値である。従って、ステップSE3〜SE6では、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々に対応した横位置ばらつきが算出される。
【0104】
トラッキング処理部で第一方位及び第二方位に対応してupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で算出された各横位置ばらつきは、過去の所定回分がRAMにバッファリングされ、図10(b)に示す更新条件に基づいて順次更新される。
【0105】
図10(b)に示す条件「OFF」「ON」は、図10(a)の説明と同じである。また、未検出完全外挿とは、上述の条件が「ON」となり、前回と今回の距離差が予め設定された値以上となり、従って連続性の判定ができない場合の処理をいい、このときには、前回算出された横位置ばらつきが保持される。
【0106】
上述したステップSA6及びSA7のフィルタ処理及び物標選択処理を、図16に基づいて詳述する。
【0107】
図16に示すように、物標情報出力部は、第一軌跡情報である「今回フィルタ1」の値に基づいて、トラッキング処理部で物標の連続性がありと過去三回連続して判定されているときに(SF1)、過去の所定回分の横位置ばらつきに基づいて、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で所定の判定基準を満たすか否かを判定し(SF2,SF3)、upチャープ期間とdownチャープ期間の何れかで横位置ばらつきが判定基準を満たしている判断すると(SF4)、方位、相対速度及び相対距離を出力可能な物標であると確定判断する(SF5)。
【0108】
ステップSF1で物標の連続性がありと過去三回連続して判定されていない物標、及び、ステップSF4でupチャープ期間とdownチャープ期間の双方で横位置ばらつきが所定の判定基準を満たさない物標は、対応する物標を出力対象から除外される(SF8)。
【0109】
全ての物標について判断が終了すると(SF6)、確定判断した複数の物標に対して、当該レーダ装置10に接近していると判断した物標の中から「今回フィルタ1」の相対速度及び相対距離に基づいて算出される衝突予測時間の最短物標から順次四つの物標を抽出してECU20に出力する(SF7)。
【0110】
ステップSF2,SF3の横位置ばらつきに基づく判定基準は、以下の通りである。先ず、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で算出された各横位置ばらつきのうち、小さい方が所定回数(例えば三回)連続して第一の閾値od(th1)未満であれば、ステップSF5に移行する。
【0111】
当該条件を満たさない場合は、小さい方の横位置ばらつきが過去に設定比率以上の回数で第二の閾値od(th2)以下であり、且つ、以下の三条件の全てを満たす場合にステップSF5に移行し、その他の場合にはステップSF8に移行する。
【0112】
三条件とは、二番目に小さい横位置ばらつきがそのうち所定回数で第三の閾値od(th3)以上であること、最小の横位置ばらつきの前回値と今回値の差が第四の閾値od(th4)以上となることが過去に設定比率未満の回数であること、過去の所定回数の中で未検出完全外挿が設定回数未満であることを指す。
【0113】
尚、ステップSF2,3で説明した設定比率や所定回数、さらにはこれらの閾値は、レーダ装置の回路構成、信号処理部の演算精度等に基づいて適宜設定される値である。
【0114】
即ち、物標情報出力部は、横位置ばらつき情報が所定範囲に収束しているときに、第一軌跡情報を当該物標の情報として出力するように構成されている。
【0115】
以上説明した一連の信号処理が各レーダ装置10(10a.10b,10c)で実行され、ECU20に出力される。
【0116】
その結果、例えば、図3に示す右端のレーダ装置10bでは、物標の軌跡が図18(a)のように正確に捕捉されるようになる。これに対して、本発明とは異なり、同じ物標に対するペアリングデータを、従来の第一方位のみに基づいてトラッキングする場合には、図18(b)に示すように、本来の物標の位置とは全く異なる軌跡となる。これは、例えば、初期に誤った方位に基づいて重み演算によりトレースされる結果、その誤りが累積的に影響を与えるためである。
【0117】
レーダ装置10の適正検出角度範囲はレーダ装置により夫々設定される値である。従って、図10に示した「OFF」「ON」の条件等、適正検出角度範囲に依存する各種の条件は、夫々の適正検出角度範囲に基づいて設定されるものである。
【0118】
上述した実施形態では、図3に示すように、車両の前方の障害物を検知するためにレーダ装置20を前部バンパーの三箇所に設置した場合を説明したが、一箇所に設置するものであってもよいし、車両の後方の障害物を検知するためにレーダ装置20を後部バンパーに設置するものであってもよい。
【0119】
以上、三本の受信用の素子アンテナ15を備えたレーダ装置について説明したが、受信用の素子アンテナの数は三本に限るものではなく、三本以上の複数本の素子アンテナを備えるものであってもよい。また、各素子アンテナの間隔は、上述した値に限定されるものではない。
【0120】
尚、上述の実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等は適宜変更設計できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明による車両制御システム及びレーダ装置のブロック構成図
【図2】レーダ装置の要部のブロック構成図
【図3】レーダ装置の車両への取り付け位置を示す説明図
【図4】(a)は位相差マップの説明図、(b)は位相差マップを活用する場合の説明図
【図5】位相差マップから算出される方位ばらつきの説明図
【図6】(a)は送信波と反射波の説明図、(b)はビート信号の説明図
【図7】反射波のビート信号を示し、(a)はupチャープ期間のビート信号の説明図、(b)はdownチャープ期間のビート信号の説明図
【図8】方位算出部で実行されるペアリング処理の説明図
【図9】トラッキング処理部で実行されるフィルタデータの更新手順の説明図
【図10】トラッキング処理部で実行される連続性判定処理の条件説明図
【図11】レーダ装置の動作を説明するフローチャート
【図12】ピーク抽出処理を説明するフローチャート
【図13】方位演算処理を説明するフローチャート
【図14】ペアリング処理を説明するフローチャート
【図15】トラッキング処理を説明するフローチャート
【図16】フィルタ処理及び物標選択処理を説明するフローチャート
【図17】横位置ばらつきの説明図
【図18】トラッキング処理の結果を示す説明図であり、(a)は本発明に対応する説明図、(b)は従来技術に対応する説明図
【符号の説明】
【0122】
10:レーダ装置
11:CPU(方位算出部、速度距離情報算出部、トラッキング処理部、物標情報出力部)
12:変調器
13:VCO
14:送信用アンテナ
15:受信用素子アンテナ
16:スイッチ回路
17:ミキサ
18:フィルタ
19:A/D変換器
20:ECU
M:位相差マップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、三本以上の素子アンテナのうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位を検出する位相モノパルス方式のレーダ装置、レーダ装置の信号処理方法、及び、当該レーダ装置を用いた車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
位相モノパルス方式のレーダ装置では、素子アンテナの間隔が受信信号の半波長よりも大きくなると、受信信号の位相差φが±πを超えて、2πで折り返された位相差が観測される位相折り返し(アンビギュイティ)現象が発生する場合がある。
【0003】
位相折り返しが生じるような方位に存在する物標からの反射波を受信すると、物標の方位が一意に決定することができないため、通常は、レーダ装置の検知範囲で位相折り返しが発生しないように、素子アンテナの間隔や電波の波長が選択される。
【0004】
しかし、これでは設計の自由度が大きく制限されてしまうという問題がある。そこで、特許文献1には、位相折り返しに起因する誤検知を防止するために、素子アンテナ間での受信信号の位相差から目標物の方位を検出する信号処理部に、複数の素子アンテナのうち間隔d1で配置された素子アンテナ間での受信信号の位相差から目標物の方位を算出して第1予測方位とし、複数の素子アンテナのうち間隔d1と異なる間隔d2で配置された素子アンテナ間での受信信号の位相差から目標物の方位を算出して第2予測方位とする算出手段と、第1予測方位と第2予測方位とを比較し、両者が一致したときの方位を検出方位として採用する判定手段とを備えた位相モノパルス方式のレーダ装置が提案されている。
【0005】
このようなレーダ装置では、第1予測方位と第2予測方位が厳密に一致する場合は稀であるため、通常、夫々間隔が異なる三本の素子アンテナのうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補を位相折り返しによる方位を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せの中から、方位ばらつきが最小となる組合せの方位候補を抽出し、その平均値を物標の方位として算出するように構成されていた。
【特許文献1】特開2000−230974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたような従来技術では、方位ばらつきが最小となる組合せの方位候補を平均処理することにより物標の方位を得ていたため、ノイズの影響や反射波の強度低下、さらには物標の反射点が位相差を検出する素子アンテナ対毎に異なる等の原因により、方位ばらつきが大きくなると、真の物標の方位に対応した方位ばらつきよりも真の物標の方位とは異なる方位の方位ばらつきの方が小さくなり、誤った方位が算出される可能性があった。
【0007】
そのような誤った方位に基づいて物標のトラッキング処理が行なわれると、物標の情報が誤って出力される虞があるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、方位ばらつきが大きい場合であっても、物標のトラッキングを精度良く行なうことができるレーダ装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明によるレーダ装置の特徴構成は、互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナから選択される素子アンテナ対毎に、受信した反射波の位相差に対応する物標の方位候補を位相のずれが±πまでの領域を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補を算出する方位算出部と、当該反射波に基づいて当該物標の相対速度及び相対距離を算出する速度距離情報算出部と、前記方位算出部及び速度距離情報算出部により所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉される場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理部と、所定条件を満たすときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力部と、を備え、前記トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返す点にある。
【0010】
方位算出部では、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補が位相折り返しを含めて複数求められ、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、例えば、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値が第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値が第二方位として夫々算出される。従って、第一方位と第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれる確率が高くなる。
【0011】
速度距離情報算出部では、当該物標の相対速度及び相対距離が算出され、トラッキング処理部では、所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉されているか否かが判断され、連続して捕捉されている場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報が生成される。
【0012】
このとき、トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、何れが真の軌跡情報であるかを推定して、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する。例えば、第一及び第二の軌跡情報のうち、第一方位との差が小さい軌跡情報が物標の真の軌跡情報であると推定して、当該軌跡情報を第一軌跡情報として更新し、第二方位に基づいて他方の軌跡情報を第二軌跡情報として更新する。
【0013】
つまり、上述の例では、第一方位が物標の真の方位であると推定して第一軌跡情報を更新しながらも、第二方位が物標の真の方位である場合を想定して第二軌跡情報をも更新するように構成されているため、方位算出部で算出された第一方位が物標の偽の方位であっても、そのときに真の方位である可能性が高い第二の方位に対しても同時にトラッキング処理が実行されるようになり、第一方位及び第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれている限り、物標を正確にトラッキングできるようになるのである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り、本発明によれば、方位ばらつきが大きい場合であっても、物標のトラッキングを精度良く行なうことができるレーダ装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるレーダ装置、及び、当該レーダ装置を用いた車両制御システムを説明する。
【0016】
図1に示すように、レーダ装置10と、レーダ装置10による物標の検出結果に基づいて車両を制御する制御部であるオートクルーズコントロール(ACC)機能を備えた電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と記す。)20が接続されて、車両制御システムが構築されている。
【0017】
図3に示すように、車両1の前部バンパーには三基のレーダ装置10(10a,10b,10c)が取り付けられ、センターのレーダ装置10aで正面方向の物標が検知され、左右一対のレーダ装置10c、10bで斜め前方から接近する物標が検出されるように構成されている。
【0018】
図1に戻り、ECU20は、CPU、CPUで実行されるプログラムやデータテーブルが格納されたROM、ワーキングエリアとして使用されるRAM、入出力インタフェース等を備えて構成され、入出力インタフェースを介してレーダ装置10、ステアリングセンサ21、ヨーレートセンサ22、車速センサ23等による検出情報が入力可能に接続されるとともに、ブレーキ24、スロットル25、警報器26等に対して制御信号が出力可能に接続されている。
【0019】
ECU20は、ステアリングセンサ21、ヨーレートセンサ22、車速センサ23等の各センサにより検出された情報に基づいて、所定の走行速度で安定して走行するための各種の演算処理を実行し、その結果に基づいてブレーキ24やスロットル25を制御する。
【0020】
さらに、ECU20は、レーダ装置10により検出された車両前方の障害物である物標の方位、相対距離、相対速度の各情報に基づいて、所定の車間距離を維持するように、或は、追突の危険性を認識すると危険回避のためにブレーキ24やスロットル25を制御する。
【0021】
尚、本構成は車両制御システムの一例であり、レーダ装置10が追突被害軽減機能(Pre-Crash Safety Function)を備えたPCS−ECUに接続される場合には、レーダ装置10により検出された前方車両等の物標の方位、相対距離、相対速度の各情報の何れかまたは組合せが所定の閾値を超えるときに、PCS−ECUが追突の危険性を認識してシートベルトプリテンショナやエアバッグ等を駆動する乗員保護のための車両制御システムが構築される。
【0022】
尚、レーダ装置10がCAN(Controller Area Network)バス等のネットワークを介して複数のECUと接続可能に構成されている場合には、上述のACC−ECUやPCS−ECU等の複数のECUと接続した車両制御システムが構築される。
【0023】
各レーダ装置10は、変調器12と、電圧制御発振器(VCO)13と、一本の送信用のアンテナ14で構成される送信部と、アンテナ14から放射された送信波のうち、物標からの反射波を受信する三本の受信用の素子アンテナ15(15a,15b,15c)と、スイッチ回路16(16a,16b,16c)と、ミキサ17と、フィルタ18と、A/D変換器19とで構成される受信部と、送信部及び受信部を制御するCPU11等を備えて構成されている。
【0024】
CPU11には、CPU11で実行されるプログラムやデータテーブルが格納されたROM、ワーキングエリアとして使用されるRAM、入出力インタフェース等が接続され、ROMには位相差マップMが格納されている。
【0025】
ROMに格納されたプログラムを実行するCPU11により、レーダ装置10の演算処理部が構成され、当該演算処理部には、後述するように、位相モノパルス処理部として機能する方位算出部と、反射波をFFT変換して物標の相対速度及び相対距離を演算する速度距離情報算出部と、トラッキング処理部と、物標情報出力部を備えている。
【0026】
送信部では、CPU11により制御される変調器12から出力される所定周期の三角波に基づいて電圧制御発振器(VCO)13が駆動され、当該三角波で周波数変調された送信波(FM−CW波)がアンテナ14から放射される。
【0027】
受信部では、三本の素子アンテナ15で受信された反射波が、スイッチ回路16で選択的に切り替えられてミキサ17に入力され、送信信号と受信信号がミキシングされて、送信信号と受信信号の周波数の差信号であるビート信号が得られる。
【0028】
図6(a)に示すように、送信信号(図中、実線で示す)は、周波数が直線的に上昇するupチャープ期間と、下降するdownチャープ期間が繰り返される。反射信号(図中、破線で示す)は、車両と物標の相対速度によって、その周波数が送信波の周波数よりドップラー周波数だけシフトするとともに、車両と物標の相対距離Rに応じて送信波より時間T=2R/c(cは光速)だけ遅延して検出される。
【0029】
ビート信号の周波数は、upチャープ期間にfb1、downチャープ期間にfb2となる。すなわち、遅延時間に基づく周波数差にドップラー周波数が重畳された信号が得られる。なお、f0は中心周波数、fmは周波数変調の繰り返し周波数、Δfは周波数変調の周波数遷移幅であり、図6では、受信信号の周波数が送信信号より高く、相対距離が小さくなる方向、つまり物標の接近時の状態を示している。
【0030】
図1に戻り、ミキサ17で得られたアナログビート信号は、ローパスフィルタ18を経て、A/D変換器19でデジタル信号に変換された後にCPU11に入力される。
【0031】
ROMに格納された制御プログラムを実行するCPU11により具現化される速度距離情報算出部により、デジタルビート信号がFFT演算され、図6(b)に示すようなビート信号が得られ、物標の相対速度及び相対距離が算出される。
【0032】
即ち、先ずupチャープ期間のビート周波数fb1及びdownチャープ期間のビート周波数fb2が〔数1〕と〔数2〕に夫々代入され、物標の相対速度が零のときの物標ビート周波数fr及び物標の相対速度に基づくドップラー周波数fdが算出される。
【0033】
次に、物標ビート周波数fr及び物標ドップラー周波数fdが〔数3〕と〔数4〕に夫々代入されて物標までの相対距離Rと物標の相対速度vが算出される。
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
【数4】
【0037】
一方、物標の方位は、ROMに格納された制御プログラムを実行するCPUにより具現化される位相モノパルス処理部としての方位算出部で算出される。
【0038】
図2に示すように、素子アンテナ15は互いのアンテナ間隔が異なるように配置され、例えば、送信波の波長をλとするとき素子アンテナ15aと15bの間隔d1が5λ/4に、素子アンテナ15bと15cの間隔d3が6λ/4に設定されている。
【0039】
図2では、二系統のミキサ17a,17b、フィルタ18a,18b、A/D変換器19a,19bを備え、スイッチ回路16により、一対の素子アンテナ15の出力が各系統に供給され、同時にA/D変換されてCPU11に出力される構成を示しているが、図1に示すように、スイッチ回路16により時分割で各アンテナ対の受信信号がA/D変換されるものであってもよい。何れの場合でも、サンプリング定理に基づいて受信信号がサンプリングされる限り、正確な原信号が再生される。
【0040】
素子アンテナ15aと15bに正面から角度θで入射する反射波が検出される場合を例に説明すると、両素子アンテナ15a、15bで受信された反射波の位相差φから、物標の方位角θは下式に基づいて算出される。
【0041】
θ=sin−1(λφ/2πd1)
【0042】
しかし、素子アンテナ15aと15bの間隔d1が送信波の波長より長い値に設定されているため、位相折り返しが発生し、物標の方位角θは次式で表される複数の候補の何れかとなり、一意に定まらなくなる。
【0043】
θ=sin−1{λ(φ+2πk)/2πd1}、(k=0,1,2,・・・)
【0044】
そこで、レーダ装置10には、検出可能な視野角に応じて設定され、位相差φに対応して複数の方位角が予め算出された位相差マップMが設けられている。本実施形態では、位相のずれが±πまでの領域を含めて、上述したようにROMに位相差マップMが格納されている。
【0045】
図4(a)に示すように、位相差マップMは、横軸を方位角θとし、縦軸を位相差φとする二次元マップであり、素子アンテナ15a,15bで検出される位相差FM1に対応するテーブルデータ、素子アンテナ15a,15cで検出される位相差FM2に対応するテーブルデータ、素子アンテナ15b,15cで検出される位相差FM3に対応するテーブルデータが夫々格納されている。
【0046】
図4(b)に示すように、例えば、位相差FM1が−155度であれば、図中に丸印で示す三点の方位候補が得られ、位相差FM2が55度であれば、図中に三角印で示す三点の方位候補が得られ、位相差FM3が110度であれば、図中に四角印で示す三点の方位候補が得られる。尚、図4に示す位相差マップは、検出可能な視野角が±20度に設定されたレーダ装置10に対応する位相差マップであり、レーダ装置10の正面方向を中心に±90度の範囲で方位が求まるように設定されている。
【0047】
このように、位相差マップMによって、三組の素子アンテナ対に対して夫々三組の方位候補が求められ、合計で27(=33)通りの組合せが得られるが、真の物標に対する方位は一組に限られる。
【0048】
そこで、位相差FM1,FM2,FM3に対応する方位の組合せの中で角度のばらつきが最も小さい組合せを、物標の方位として算出する必要がある。図4(b)の例では、黒丸印、黒三角印、黒四角印で表した方位が最もばらつきが小さいため、例えば、この三点の方位の平均値を物標の方位角θとして求めることができる。
【0049】
しかし、現実にはノイズの影響や反射波の強度低下、さらには物標の反射点が位相差を検出する素子アンテナ対毎に異なる等の原因により、必ずしもばらつきが最小の組合せが物標の真の方位であると保証することができない場合もある。
【0050】
例えば、図5に示すように、黒丸印、黒三角印、黒四角印で表した方位の組合せよりも○印、△印、□印で表した方位の組合せの方が方位ばらつきが小さくなるような場合には、黒丸印、黒三角印、黒四角印で表した方位の組合せが物標の真の方位に対応する組合せであっても、誤って○印、△印、□印で表した方位の組合せが物標の方位であると認識される。
【0051】
このように、物標の方位が誤って認識され、そのような方位に基づいて物標に対するトラッキング処理、つまり、物標の同一性の認識処理が行なわれると、物標の情報が誤って出力される虞がある。
【0052】
本発明はそのような場合に適切に対処できるようになされたものであり、以下に詳述する。
【0053】
方位算出部では、三本の素子アンテナのうち、任意の二本の素子アンテナ対で受信された反射波の位相差から物標の方位候補を、位相差マップMに基づいて複数求める処理が各素子アンテナ対に対して行なわれる。
【0054】
そして、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値を第二方位として算出される。
【0055】
第一方位及び第二方位は必ずしも平均値を採用するものに限られず、中央値であってもよいし、何れかを代表値として採用するものであってもよい。つまり、方位算出部では、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補が算出される。
【0056】
レーダ装置10には、所定インタバルで、速度距離情報算出部により算出される相対速度、相対距離、及び、方位算出部により算出される一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉されているか否かを判断し、連続して捕捉されている場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理部と、所定条件を満たすときに、第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力部を備えている。
【0057】
トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された第一方位との差を比較し、方位差が小さい方の軌跡情報を当該第一方位を反映した第一軌跡情報として更新し、他方の軌跡情報を今回算出された第二方位を反映した第二軌跡情報として更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返す。
【0058】
尚、トラッキング処理部及び物標情報出力部も、ROMに格納された制御プログラムを実行するCPU11により具現化されるものである。
【0059】
つまり、第一方位が物標の真の方位であると推定して第一軌跡情報を更新しながらも、第二方位が物標の真の方位である場合を想定して第二軌跡情報をも更新するように構成されているため、方位算出部で算出された第一方位が物標の偽の方位であっても、そのときに真の方位である可能性が高い第二の方位に対しても同時にトラッキング処理が実行されるようになり、第一方位及び第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれている限り、物標を正確にトラッキングできるようになる。
【0060】
以下、図11に示すフローチャートに基づいて、レーダ装置10の信号処理手順を概説する。
【0061】
先ず、速度距離情報算出部は、素子アンテナ毎に受信信号をFFT演算して、反射波の周波数スペクトラムから複数の物標に対応してピークを示す周波数を複数抽出する(SA1)。
【0062】
方位算出部は、各ピークを示す周波数の位相から素子アンテナ対毎の位相差を求め、当該位相差に対応する三つの方位候補を位相差マップMから求め、次に、27通りの各方位候補の組み合わせの中で、ばらつきが最小となる方位候補の組合せ、及び、その次にばらつきが最小となる第二番目の方位候補の組合せを算出し、各平均値を方位候補として算出する方位演算処理を行なう(SA2)。
【0063】
さらに、方位算出部は、FFT演算された各素子アンテナ対の受信信号のupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々のピークうち、対応するピークをペアリングして、各ペアに対応してばらつきが最小となる方位候補の組合せの平均値同士と、その次にばらつきが最小となる第二番目の方位候補の組合せの平均値同士で夫々平均値を求め、第一方位及び第二方位として算出するペアリング処理を行なう(SA3)。
【0064】
速度距離情報算出部は、上述した、〔数1〕から〔数4〕に基づいて、ペアリングされたピーク周波数に対応する各物標の相対速度及び相対距離を算出する(SA4)。
【0065】
トラッキング処理部は、前回検出された物標と今回検出された物標の同一性を判定し、同一であると判定した物標の第一軌跡情報及び第二軌跡情報を算出する(SA5)。
【0066】
物標情報出力部は、第一軌跡情報が所定条件を満たすときに、第一軌跡情報を当該物標の情報として、例えばCANを介してECU20に出力する(SA6,SA7)。レーダ装置10は、このような信号処理を所定時間間隔で繰り返し、前方の障害物を検知してECU20に出力するのである。
【0067】
上述したステップSA1のピーク抽出処理を、図7及び図12に基づいて詳述する。
【0068】
各素子アンテナ対に対応する受信信号をFFT変換すると、図7(a),(b)に示すように、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で、振幅がピークをとる複数の周波数(fb11,fb12,・・・,fb1n;fb21,fb22,・・・,fb2n)が求まる。夫々のピークは検出された物標からの反射波に対応する。
【0069】
速度距離情報算出部は、変調器12からのタイミング信号に基づいてupチャープ期間とdownチャープ期間を認識して、素子アンテナ対毎に受信信号をupチャープ期間でFFT変換して(SB1)、ピークが最大値となる周波数から順にピークがM番目の大きさとなる周波数までを抽出する(SB2)。同様に、downチャープ期間でFFT変換して(SB3)、ピークが最大値となる周波数から順にピークがM番目の大きさとなる周波数までを抽出する(SB4)。ここで、Mは予め設定された正整数である。
【0070】
上述したステップSA2,SA3の方位演算処理及びペアリング処理を、図8、図13及び図14に基づいて詳述する。
【0071】
図13に示すように、方位演算部は、upチャープ期間で、素子アンテナ15a,15bで受信された反射波のFFT演算結果から、各ピークに対応する位相差FM1(FM11,FM12,・・・,FM1M)を算出して、図4(a)に示す位相差マップMに基づいて三つの方位候補を算出する(SC1)。その結果、最大ピークに対応する三つの方位候補からM番目のピークに対応する三つの方位候補まで夫々の方位候補が求められる。
【0072】
同様の処理が、素子アンテナ15a,15cで受信された反射波、及び、素子アンテナ15b,15cで受信された反射波に対して夫々実行され(SC2,SC3)、各位相差FM2(FM21,FM22,・・・,FM2M),FM3(FM31,FM32,・・・,FM3M)に対して最大ピークに対応する三つの方位候補からM番目のピークに対応する三つの方位候補まで夫々の方位候補が求められる。
【0073】
同一の物標に対して各素子アンテナで検出されるピーク値に対応する周波数は夫々略等しくなるため、周波数が所定の誤差範囲内に納まるピーク値が各物標に対して一つ特定される。物標毎に特定されたピーク値に対応した素子アンテナ対毎の位相差から、夫々三つの方位候補が得られ、合計で27通りの方位候補の組合せが得られる。その中で、ばらつきが最小となる組合せの方位候補の平均値、及び、ばらつきがその次に最小となる組合せの方位候補の平均値を算出する(SC4,SC5)。このようにして算出された方位候補が、図8のupチャープ期間に対応するピークデータ(図中、左上方)として示されている。
【0074】
downチャープ期間に対しても、ステップSC1からSC5と同様の処理が行なわれ、物標毎に特定された三つのピーク値に対応する三つの方位候補の組合せから、ばらつきが最小となる組合せの方位候補の平均値、及び、ばらつきがその次に最小となる組合せの方位候補の平均値を算出する(SC6〜SC10)。このようにして算出された方位候補が、図8のdownチャープ期間に対応するピークデータ(図中、左下方)として示されている。
【0075】
図14に示すように、方位演算部は、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で、振幅がピークとなる複数の周波数(fb11,fb12,・・・,fb1M;fb21,fb22,・・・,fb2M)の中で、振幅差が所定強度範囲に納まるピーク同士を、最大ピークからN番目のピーク迄のN組ペアリングする(SD1)。ここで、Nは予め設定された正整数であり、ペアリングの判断が素子アンテナ対の組合せ毎に実行され、何れも上述の条件を満足したN組が求められる。所定強度範囲は特に制限されるものではなく、具体的なシステムに応じて適宜設定される値である。
【0076】
ステップSD1でペアリングされたピーク毎に、ステップSC4,SC9で算出されたupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まるときに(SD2)、双方の平均値を第一方位として算出する(SD3)。所定角度範囲も特に制限されるものではなく、具体的なシステムに応じて適宜設定される値である。
【0077】
図8では、upチャープ期間で検出されたピーク1とdownチャープ期間出検出されたピーク2がペアリングされ、夫々の最小ばらつき方位候補同士の平均値が第一方位として、夫々の二番目の最小ばらつき方位候補同士の平均値が第二方位として算出される様子が例示されている。
【0078】
次に、ステップSC5,SC10で算出されたupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々の二番目の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まるときに(SD4)、双方の平均値を第二方位として算出する(SD5)。
【0079】
尚、ステップSD2で夫々の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まらなかったときには、第一方位及び第二方位が検出されず、検出エラーとなり(SD7)、ステップSD4で夫々の二番目の最小ばらつきに対応する方位平均値が所定角度範囲に納まらなかったときには、第二方位が検出されず、検出エラーとなる(SD6)。
【0080】
このようにして、ペアリングされたピーク毎に、何れかが物標の真の方位となる可能性が高い第一方位と第二方位が算出され、これらの値が算出の基礎となった複数の方位候補とともにRAMに記憶される。
【0081】
続いて、上述したステップSA5のトラッキング処理を、図9、10及び図15に基づいて詳述する。
【0082】
図9(a)に示すように、ペアリング処理で算出されたN組のペアリングデータ(ペア1,ペア2,・・・,ペアN)の夫々は、第一方位、第二方位、相対速度及び相対距離の各情報で構成されている。尚、一つの物標の相対速度及び相対距離情報に対して第一方位及び第二方位が求められているのであり、第一方位及び第二方位夫々に対して異なる値の相対速度及び相対距離情報が求められるものではない。
【0083】
図9に示すように、トラッキング処理部では、各ペアリングデータに基づいてフィルタデータが順次生成されてRAMに格納される。初回に得られたペアリングデータが「今回フィルタ」に対応する領域に格納され、次回にペアリングデータが得られると、「今回フィルタ」の値が「前回フィルタ」の領域に移され、当該ペアリングデータと「前回フィルタ」のデータとの間で連続性の判定が行なわれ、連続性が認識されると、所定の重み演算が実行されて「今回フィルタ」の値が更新される。連続性が無いと認識されると、今回得られたペアリングデータが「今回フィルタ」に対応する領域に格納され、次回から連続性の判定が再開される。
【0084】
重み演算とは、今回のペアリングデータである方位、相対距離、相対速度の夫々に対して与えられる重み係数Wpと、前回フィルタに格納された方位、相対距離、相対速度の夫々に対して与えられる重み係数Wqによる重み平均演算をいう。
【0085】
例えば、今回の相対距離をLp、前回フィルタに格納された相対距離をLqとすると、新たな相対距離Lが次式に従って算出されて今回フィルタのフィルタデータとして格納される。
【0086】
このような重み演算は、物標の軌跡をスムージングするための演算であり、本実施形態では、重み係数Wpを8に、重み係数Wqを2に設定している。尚、重み係数はこの値に限定されるものではなく、物標の検出精度等、システムの特性により適宜設定される値である。
L=(Wp×Lp+Wq×Lq)/(Wp+Wq)
【0087】
物標に対する連続性の判定は、今回のペアリングデータと「前回フィルタ」のデータの夫々に対して、相対速度及び相対距離の差が所定の範囲に納まっているか否かに基づいて行なわれる。当該所定の範囲とは、同一の物標であると認識可能な最大の速度差及び距離差であり、ペアリングデータが算出される時間間隔に基づいて決定される値である。尚、連続性の判定は、相対速度または相対距離の何れかに基づいて行なわれるものであってもよい。
【0088】
第一方位及び第二方位の二方位に対応して、「今回フィルタ」及び「前回フィルタ」の領域が夫々一対設けられ、各「フィルタ」領域はN組のペアリングデータに対応してData1からDataKのK領域に区画され、ペアn(n=1,2,・・・,N)のデータに対してDatanの領域が使用され、ペアn+1のデータに対してDatan+1の領域が使用される。尚、Data(N+1)からDataKは予備の領域である。尚、KはNより大なる任意の正整数である。
【0089】
図15に示すように、トラッキング処理部は、今回のペア1のペアリングデータに含まれる第一方位と、「前回フィルタ1」または「前回フィルタ2」のData1に含まれる方位の偏差を算出する(SE1)。
【0090】
「前回フィルタ1」との方位偏差の方が小さい場合は(SE2)、当該ペアリングデータと「前回フィルタ1」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、図9(a)に示すように、当該ペアリングデータと「前回フィルタ1」のData1の方位、相対速度及び相対距離との間で夫々上述の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ1」のData1に格納する。さらに、第一方位の算出基礎となった複数の方位候補から第一方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE3)。
【0091】
次に、今回のペア1のペアリングデータに含まれる第二方位と「前回フィルタ2」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、方位、相対速度及び相対距離の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ2」のData1に格納するとともに、第二方位の算出基礎となった複数の方位候補から第二方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE4)。
【0092】
ステップSE2で、「前回フィルタ2」との方位偏差の方が小さい場合は、当該ペアリングデータと「前回フィルタ2」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、図9(b)に示すように、当該ペアリングデータと「前回フィルタ2」のData1の方位、相対速度及び相対距離との間で夫々上述の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ1」のData1に格納する。さらに、第一方位の算出基礎となった複数の方位候補から第一方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE5)。
【0093】
次に、今回のペア1のペアリングデータに含まれる第二方位と「前回フィルタ1」のData1との間で連続性を判定して、連続性があると認識すると、方位、相対速度及び相対距離の重み演算を行なって、その結果を更新回数とともに「今回フィルタ2」のData1に格納するとともに、第二方位の算出基礎となった複数の方位候補から第二方位に対して夫々最もばらつきのある方位候補を求め、物標の横位置ばらつきを算出してRAMに区画された横位置ばらつき格納領域に格納する(SE6)。
【0094】
つまり、第一方位が物標の真の方位であると推定して第一軌跡情報である「今回フィルタ1」を更新しながらも、第二方位が物標の真の方位である場合を想定して第二軌跡情報である「今回フィルタ2」をもバックグラウンドで更新するように構成されている。
【0095】
従って、方位算出部で算出された第一方位が物標の偽の方位であっても、そのときに真の方位である可能性が高い第二の方位に対しても同時にトラッキング処理が実行されるようになり、第一方位及び第二方位の何れかに物標の真の方位が含まれている限り、物標を正確にトラッキングできるようになるのである。
【0096】
フィルタデータの更新処理について詳述する。「今回フィルタ1」及び「今回フィルタ2」の更新処理は、上述した連続性の判定処理に加えて、図10(a)に示す判定条件に基づいて、今回検出された第一方位及び第二方位に基づいても行なわれる。
【0097】
今回のペアリング処理で第一方位が検出され、「前回フィルタ1」または「前回フィルタ2」のデータが存在する場合であって、当該第一方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲内に納まり、横位置ばらつきが所定範囲に納まっているときに(図中、条件の欄が「OFF」に対応する)「今回フィルタ1」が更新される。
【0098】
当該第一方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲から外れ、或は横位置ばらつきが所定範囲から外れているときには(図中、条件の欄が「ON」に対応する)、「今回フィルタ1」の値として、今回のペアリング処理で得られた方位、相対距離及び相対速度が格納される。さらに、今回のペアリング処理で第一方位が検出されなかったときには、「今回フィルタ1」の値が初期化される。
【0099】
さらに、今回のペアリング処理で第二方位が検出され、「前回フィルタ1」または「前回フィルタ2」のデータが存在する場合であって、当該第二方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲内に納まり、横位置ばらつきが所定範囲に納まっているときに(図中、条件の欄が「OFF」に対応する)「今回フィルタ2」が更新される。
【0100】
当該第二方位または「前回フィルタ」の方位の何れかが、レーダ装置10の正面方向に対する適正検出角度範囲から外れ、或は横位置ばらつきが所定範囲から外れているときには(図中、条件の欄が「ON」に対応する)、「今回フィルタ2」の値として、今回のペアリング処理で得られた方位、相対距離及び相対速度が格納される。さらに、今回のペアリング処理で第一方位が検出され、且つ、第二方位が検出されなかったときには、「今回フィルタ2」の値が「前回フィルタ2」の値に維持される。
【0101】
トラッキング処理部では、このような処理がN組のペアリングデータの夫々に対して実行される。
【0102】
横位置ばらつきについて説明する。図17に示すように、レーダ装置10から出力された送信波に対する物標Oの反射点が異なると、同一物標であっても各素子アンテナ対で検出される位相差が異なる。上述した横位置ばらつき(od)とは、このような物標Oの反射点のばらつきがどの程度であるかを評価する指標であり、次の近似式で求められる。
横位置ばらつき(od)=相対距離L×|sinθ1−sinθ2|
【0103】
ここで、θ1及びθ2は、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で算出された最小方位バラつきまたは二番目に小さい方位ばらつきのうち、平均値に対する両方向のばらつきが最大となる方位候補の値である。従って、ステップSE3〜SE6では、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々に対応した横位置ばらつきが算出される。
【0104】
トラッキング処理部で第一方位及び第二方位に対応してupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で算出された各横位置ばらつきは、過去の所定回分がRAMにバッファリングされ、図10(b)に示す更新条件に基づいて順次更新される。
【0105】
図10(b)に示す条件「OFF」「ON」は、図10(a)の説明と同じである。また、未検出完全外挿とは、上述の条件が「ON」となり、前回と今回の距離差が予め設定された値以上となり、従って連続性の判定ができない場合の処理をいい、このときには、前回算出された横位置ばらつきが保持される。
【0106】
上述したステップSA6及びSA7のフィルタ処理及び物標選択処理を、図16に基づいて詳述する。
【0107】
図16に示すように、物標情報出力部は、第一軌跡情報である「今回フィルタ1」の値に基づいて、トラッキング処理部で物標の連続性がありと過去三回連続して判定されているときに(SF1)、過去の所定回分の横位置ばらつきに基づいて、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で所定の判定基準を満たすか否かを判定し(SF2,SF3)、upチャープ期間とdownチャープ期間の何れかで横位置ばらつきが判定基準を満たしている判断すると(SF4)、方位、相対速度及び相対距離を出力可能な物標であると確定判断する(SF5)。
【0108】
ステップSF1で物標の連続性がありと過去三回連続して判定されていない物標、及び、ステップSF4でupチャープ期間とdownチャープ期間の双方で横位置ばらつきが所定の判定基準を満たさない物標は、対応する物標を出力対象から除外される(SF8)。
【0109】
全ての物標について判断が終了すると(SF6)、確定判断した複数の物標に対して、当該レーダ装置10に接近していると判断した物標の中から「今回フィルタ1」の相対速度及び相対距離に基づいて算出される衝突予測時間の最短物標から順次四つの物標を抽出してECU20に出力する(SF7)。
【0110】
ステップSF2,SF3の横位置ばらつきに基づく判定基準は、以下の通りである。先ず、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で算出された各横位置ばらつきのうち、小さい方が所定回数(例えば三回)連続して第一の閾値od(th1)未満であれば、ステップSF5に移行する。
【0111】
当該条件を満たさない場合は、小さい方の横位置ばらつきが過去に設定比率以上の回数で第二の閾値od(th2)以下であり、且つ、以下の三条件の全てを満たす場合にステップSF5に移行し、その他の場合にはステップSF8に移行する。
【0112】
三条件とは、二番目に小さい横位置ばらつきがそのうち所定回数で第三の閾値od(th3)以上であること、最小の横位置ばらつきの前回値と今回値の差が第四の閾値od(th4)以上となることが過去に設定比率未満の回数であること、過去の所定回数の中で未検出完全外挿が設定回数未満であることを指す。
【0113】
尚、ステップSF2,3で説明した設定比率や所定回数、さらにはこれらの閾値は、レーダ装置の回路構成、信号処理部の演算精度等に基づいて適宜設定される値である。
【0114】
即ち、物標情報出力部は、横位置ばらつき情報が所定範囲に収束しているときに、第一軌跡情報を当該物標の情報として出力するように構成されている。
【0115】
以上説明した一連の信号処理が各レーダ装置10(10a.10b,10c)で実行され、ECU20に出力される。
【0116】
その結果、例えば、図3に示す右端のレーダ装置10bでは、物標の軌跡が図18(a)のように正確に捕捉されるようになる。これに対して、本発明とは異なり、同じ物標に対するペアリングデータを、従来の第一方位のみに基づいてトラッキングする場合には、図18(b)に示すように、本来の物標の位置とは全く異なる軌跡となる。これは、例えば、初期に誤った方位に基づいて重み演算によりトレースされる結果、その誤りが累積的に影響を与えるためである。
【0117】
レーダ装置10の適正検出角度範囲はレーダ装置により夫々設定される値である。従って、図10に示した「OFF」「ON」の条件等、適正検出角度範囲に依存する各種の条件は、夫々の適正検出角度範囲に基づいて設定されるものである。
【0118】
上述した実施形態では、図3に示すように、車両の前方の障害物を検知するためにレーダ装置20を前部バンパーの三箇所に設置した場合を説明したが、一箇所に設置するものであってもよいし、車両の後方の障害物を検知するためにレーダ装置20を後部バンパーに設置するものであってもよい。
【0119】
以上、三本の受信用の素子アンテナ15を備えたレーダ装置について説明したが、受信用の素子アンテナの数は三本に限るものではなく、三本以上の複数本の素子アンテナを備えるものであってもよい。また、各素子アンテナの間隔は、上述した値に限定されるものではない。
【0120】
尚、上述の実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等は適宜変更設計できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明による車両制御システム及びレーダ装置のブロック構成図
【図2】レーダ装置の要部のブロック構成図
【図3】レーダ装置の車両への取り付け位置を示す説明図
【図4】(a)は位相差マップの説明図、(b)は位相差マップを活用する場合の説明図
【図5】位相差マップから算出される方位ばらつきの説明図
【図6】(a)は送信波と反射波の説明図、(b)はビート信号の説明図
【図7】反射波のビート信号を示し、(a)はupチャープ期間のビート信号の説明図、(b)はdownチャープ期間のビート信号の説明図
【図8】方位算出部で実行されるペアリング処理の説明図
【図9】トラッキング処理部で実行されるフィルタデータの更新手順の説明図
【図10】トラッキング処理部で実行される連続性判定処理の条件説明図
【図11】レーダ装置の動作を説明するフローチャート
【図12】ピーク抽出処理を説明するフローチャート
【図13】方位演算処理を説明するフローチャート
【図14】ペアリング処理を説明するフローチャート
【図15】トラッキング処理を説明するフローチャート
【図16】フィルタ処理及び物標選択処理を説明するフローチャート
【図17】横位置ばらつきの説明図
【図18】トラッキング処理の結果を示す説明図であり、(a)は本発明に対応する説明図、(b)は従来技術に対応する説明図
【符号の説明】
【0122】
10:レーダ装置
11:CPU(方位算出部、速度距離情報算出部、トラッキング処理部、物標情報出力部)
12:変調器
13:VCO
14:送信用アンテナ
15:受信用素子アンテナ
16:スイッチ回路
17:ミキサ
18:フィルタ
19:A/D変換器
20:ECU
M:位相差マップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナから選択される素子アンテナ対毎に、受信した反射波の位相差に対応する物標の方位候補を位相のずれが±πまでの領域を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補を算出する方位算出部と、
当該反射波に基づいて当該物標の相対速度及び相対距離を算出する速度距離情報算出部と、
前記方位算出部及び速度距離情報算出部により所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉される場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理部と、
所定条件を満たすときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力部と、
を備え、
前記トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記方位算出部は、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値を第二方位として算出し、
前記トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された第一方位との差を比較し、方位差が小さい方の軌跡情報を当該第一方位を反映した第一軌跡情報として更新し、他方の軌跡情報を今回算出された第二方位を反映した第二軌跡情報として更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記方位算出部は、周波数変調された送信波のupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で求めた各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補同士の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補同士の平均値を第二方位として算出するように構成され、
前記トラッキング処理部は、前記第一及び第二軌跡情報として、前記第一方位及び第二方位に対応して、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々の方位候補から当該物標の横位置ばらつき情報を算出することを特徴とする請求項1または2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記物標情報出力部は、前記横位置ばらつき情報が所定範囲に収束しているときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力することを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
【請求項5】
互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナから選択される素子アンテナ対毎に、受信した反射波の位相差に対応する物標の方位候補を位相のずれが±πまでの領域を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補を算出する方位算出ステップと、
当該反射波に基づいて当該物標の相対速度及び相対距離を算出する速度距離情報算出ステップと、
前記方位算出ステップ及び速度距離情報算出ステップにより所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉される場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理ステップと、
所定条件を満たすときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力ステップと、
を備え、
前記トラッキング処理ステップは、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とするレーダ装置の信号処理方法。
【請求項6】
前記方位算出ステップは、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値を第二方位として算出し、
前記トラッキング処理ステップは、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された第一方位との差を比較し、方位差が小さい方の軌跡情報を当該第一方位を反映した第一軌跡情報として更新し、他方の軌跡情報を今回算出された第二方位を反映した第二軌跡情報として更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置の信号処理方法。
【請求項7】
請求項1から4の何れかに記載のレーダ装置による物標の検出結果に基づいて車両を制御する制御部を備えている車両制御システム。
【請求項1】
互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナから選択される素子アンテナ対毎に、受信した反射波の位相差に対応する物標の方位候補を位相のずれが±πまでの領域を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補を算出する方位算出部と、
当該反射波に基づいて当該物標の相対速度及び相対距離を算出する速度距離情報算出部と、
前記方位算出部及び速度距離情報算出部により所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉される場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理部と、
所定条件を満たすときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力部と、
を備え、
前記トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記方位算出部は、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値を第二方位として算出し、
前記トラッキング処理部は、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された第一方位との差を比較し、方位差が小さい方の軌跡情報を当該第一方位を反映した第一軌跡情報として更新し、他方の軌跡情報を今回算出された第二方位を反映した第二軌跡情報として更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記方位算出部は、周波数変調された送信波のupチャープ期間とdownチャープ期間の夫々で求めた各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補同士の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補同士の平均値を第二方位として算出するように構成され、
前記トラッキング処理部は、前記第一及び第二軌跡情報として、前記第一方位及び第二方位に対応して、upチャープ期間とdownチャープ期間の夫々の方位候補から当該物標の横位置ばらつき情報を算出することを特徴とする請求項1または2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記物標情報出力部は、前記横位置ばらつき情報が所定範囲に収束しているときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力することを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
【請求項5】
互いに間隔が異なる三本以上の素子アンテナから選択される素子アンテナ対毎に、受信した反射波の位相差に対応する物標の方位候補を位相のずれが±πまでの領域を含めて複数求め、各素子アンテナ対に対応する方位候補から、方位ばらつきが小さい順に第一方位及び第二方位の一対の方位候補を算出する方位算出ステップと、
当該反射波に基づいて当該物標の相対速度及び相対距離を算出する速度距離情報算出ステップと、
前記方位算出ステップ及び速度距離情報算出ステップにより所定インタバルで算出される相対速度、相対距離及び一対の方位の何れかに基づいて、当該物標が連続して捕捉される場合に一対の方位に対応した第一及び第二の軌跡情報を生成するトラッキング処理ステップと、
所定条件を満たすときに、前記第一軌跡情報を当該物標の情報として出力する物標情報出力ステップと、
を備え、
前記トラッキング処理ステップは、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された方位との差に基づいて、今回算出された第一方位または第二方位の何れかを反映した第一及び第二の軌跡情報に更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とするレーダ装置の信号処理方法。
【請求項6】
前記方位算出ステップは、各素子アンテナ対に対応する方位候補の組合せのうち、方位ばらつきが最も小さい方位候補の平均値を第一方位、方位ばらつきが次に小さい方位候補の平均値を第二方位として算出し、
前記トラッキング処理ステップは、前回生成した一対の軌跡情報に含まれる各方位と今回算出された第一方位との差を比較し、方位差が小さい方の軌跡情報を当該第一方位を反映した第一軌跡情報として更新し、他方の軌跡情報を今回算出された第二方位を反映した第二軌跡情報として更新する処理を、前記所定インタバルで繰り返すことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置の信号処理方法。
【請求項7】
請求項1から4の何れかに記載のレーダ装置による物標の検出結果に基づいて車両を制御する制御部を備えている車両制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−264968(P2009−264968A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115838(P2008−115838)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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