説明

ロッカカバーの取付構造

【課題】ロッカカバーとシリンダヘッドとのシール面がずれても、また面圧が不均一であってもシール性や振動吸収性が減少しないロッカカバーの取付構造を提供すること。
【解決手段】ロッカカバー10の鈎状の係合部20、21、22がガスケット12の第1の係合部32、33、34と係合し、シリンダヘッド10の鈎状の係合部15、16、17がガスケット12の第2の係合部36、37、38と係合しており、ロッカカバー10、シリンダヘッド11とガスケット12との接触面積が大きく、かつ寸法のずれに対してシール性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関のシリンダヘッド上にガスケットを介して取付けられるロッカカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、内燃機関のピストンを収納しているシリンダブロックの上部にはシリンダヘッドが設けられ、そのシリンダヘッド上には吸気弁および排気弁を開閉するためのロッカアームを覆っているロッカカバーが取付けられている。
【0003】
このロッカカバー内にはブロバイガス等の排気が流入し、また潤滑オイルが飛散するので、シリンダヘッドに対して充分にシールして取付けなければならない。すなわちシール性が不充分であると、排ガスやオイルが漏洩してしまう。
【0004】
そのために、シリンダヘッドとロッカカバーとの取付けに際して両者のシール面間を確実にシールする技術が知られている(特許文献1および2参照)。
【0005】
図5は従来技術の一例を示し、シリンダヘッド1とロッカカバーのフランジ2との間にガスケット3が介在され、そのガスケット3の内外両側にはガスケット3がフランジ2に対して相対的に移動するのを防止する抑え板6、7が設けられ、位置決め用の座金4および締付け用の座金5を介してボルト8で締付けられている。
【0006】
また図6に示されているようにシリンダヘッド1の内側縁部に断面L字状のガスケット2aを設け、ロッカカバー2には抑え部6a、7aを設けボルト8で締付け固定したものも知られている。
このようにガスケット2aに対する接触面積を広くすると、当然のことながらシール性が向上する。
【0007】
しかしながら、内燃機関の大型化や圧力、温度上昇に伴い、シリンダブロックとロッカカバーとのシール面が設計上の所定の位置から動いてしまい、そのためにシール面積が減少し、締付けボルトから離れた位置では締付け力が低下するので、全体的に面圧が不均一となり、その結果、ガス漏れが生じやすい。また内燃機関の振動は面圧の低下を助長するので、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−61539号公報
【特許文献2】特許第4248309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、シリンダヘッドに対してロッカカバーが移動して、その両者のシール面がずれても振動吸収性やシール性が減少することのないロッカカバーの取付構造を提供するにある。
【0010】
本発明の他の目的は、シール面の面圧が不均一であってもシール性や振動吸収性が減少することがないロッカカバーの取付構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、内燃機関のシリンダヘッド(10)上にガスケット(12、12A)を介して取付けられるロッカカバーの取付構造において、そのシリンダヘッド(10)の少なくとも長手方向の一辺(X)にガスケット(12)と係合する鈎状の係合部(15、16、17)が設けられ、ロッカカバー(11)のそのシリンダヘッドに対応する少なくとも一辺(X)にガスケットと係合する鈎状の係合部(20、21、22)が設けられ、そのガスケット(12)は肉厚の主体部(30)を有し、その主体部(30)には前記ロッカカバーの係合部と係合する第1の係合部(22、23、24)と前記シリンダヘッドの係合部と係合する第2の係合部(36、37、38)とが一体に設けられている。
【0012】
また本発明によれば、シリンダヘッドの係合部の外壁(13)に対しロッカカバーの係合部の立上り部分(22)の外面(23)との間に内外方向に長さ(δ)が形成されている。
【0013】
そして本発明によれば、シリンダヘッド(10)およびロッカカバー(11)の長手方向の相対する2辺(X、Y)にそれぞれ係合部が設けられている。
【0014】
さらに本発明によれば、シリンダヘッド(10)およびロッカカバー(11)の長手方向の相対する2辺(X、Y)と幅方向の一辺(V)にそれぞれ係合部が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば下記のすぐれた効果を奏する。
(a) 鈎状の係合部でロッカカバーおよびシリンダヘッドがガスケットと係合しているので、ガスケットの弾性作用と組合されてシール面積が広くなり、シール性が向上する。
(b) シリンダヘッドとロッカカバーとのシール面の上下左右の相対的な移動に対して鈎状の係合部が追従でき、シール性を損うことがない。したがってロッカカバーとシリンダヘッドとが整合しなくてもよく組立てが容易でレイアウトに余裕ができる。
(c) 鈎状の係合部がそれ自体固定機能を有しているので、締付けボルトを省略でき、組立作業が工程を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施したロッカカバーの取付構造の要部を示す断面図。
【図2】本発明を実施したシリンダヘッドにロッカカバーを取付けた所を示す斜視図。
【図3】図2を辺V方向から見た斜視図。
【図4】図1の変形例を示す断面図。
【図5】従来のロッカカバーの取付構造を示す断面図。
【図6】従来のロッカカバーの別の取付構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1はシリンダヘッド10とロッカカバー11とガスケット12との取付け位置関係を示す断面図であり、図面の左側Aは内側であり右側Bは外側である。
【0018】
シリンダヘッド10の外壁13に沿って一体に上方に延びるシリンダヘッドの取付部14は上方に延びる第1の部分15と、その第1の部分15の上端から内方に(内側Aに向って)延びる第2の部分16とその第2の部分16の内端から下方に延びる第3の部分(17)とで鈎状に形成されており、この第1の部分15と第2の部分16と第3の部分17とはシリンダヘッドの係合部を構成している。
【0019】
図示の例ではシリンダヘッド10の取付部14はシリンダヘッド10の頂部の縁部に直接に一体に設けられているが、シリンダヘッドの設計によっては、シリンダヘッド10の外壁13と一体に上方に延びる延長部を設け、その延長部の上端に取付部14を設けることができる。また設計によってはその延長部や取付部は外側13より内側に設けてもよい。
【0020】
ロッカカバー10の下端に設けたロッカカバーの取付部20は外方に(外側Bに向かって)延びる水平部分21とその水平部分21の外端から上方に延びる立上り部分22とより成り、全体的に鈎状に形成されている。このロッカカバーの取付部20の下部と水平部分21と立上り部分22とはロッカカバー10の係合部を形成している。
【0021】
ガスケット12は前記シリンダヘッド10の第2の部分16の上面に載置され、肉厚の主体部30を備え、その上面には傾斜部31が形成されている。そしてガスケットにはこの主体部30から上方に延びる上方部分32と、その上方部分32から内側Aに向って内方に延びる第1の水平部分33と、その第1の水平部分33から下方に延びる垂下部分34とを備え、主体部30と一体に形成された上方部分32と第1の水平部分33と垂下部分34とはロッカカバー10の係合部と係合するガスケットの第1の係合部を構成している。
【0022】
そしてガスケット12の主体部30の下面には、一体に形成された水平方向内方に延びる第2の水平部分35と、その第2の水平部分が下方に延びる垂直部分36と、その垂直部分36から水平方向外方に延びる第3の水平部分37と、その第3の水平部分37から上方に延びる突出部分38とを備え、それらの垂直部分36と第3の水平部分37と突出部分38とはシリンダヘッド10の係合部と係合するガスケット12の第2の係合部を構成している。
【0023】
したがって、図1に示すようにロッカカバー11の係合部にガスケット12の第1の係合部を係合させ、そしてシリンダヘッド10の係合部にガスケット12の第2の係合部を係合させることにより、シリンダヘッド10に対してロッカカバー11を固定できる。また各係合部のシール面積が広くなり、その分シール性を向上できる。
また、シリンダヘッドの係合部の外壁面13とロッカカバー11の立上り部分22の外面23との間に内外方向に長さδがあっても充分にシールでき、振動を吸収しやすい。
【0024】
またガスケット12の主体部30が肉厚であるために充分な剛性を持たせることができる。さらに、ロッカカバーとシリンダヘッドとの上下方向および左右方向の相対変位を充分に吸収できる。そして脱落の問題も生じない。
【0025】
図2は本発明を実施したガスケットを用いてシリンダヘッド10にロッカカバー11を取付けた所を示す斜視図であり、図3は図2を幅方向の短辺Vから見た部分斜視図である。
図2に示すように長手方向の長辺XおよびYと、幅方向の短辺Uとの3辺が本発明を実施したガスケット12で固定されており、残りの短辺Vのみが公知のガスケットGを用い、ロッカカバー11に設けたフランジFを公知の態様でボルトCで固定した例である。
【0026】
しかしながら、本発明を実施したガスケット12は少なくとも長辺X又はYのいずれか一方のみに実施することができ、また、長辺XおよびYの両方にガスケット12を用いることができる。本発明を実施したガスケット12を用いない辺は公知の平板状のガスケットGを適用すればよい。いずれの場合も本願の効果を奏することができる。
【0027】
図4は本発明を実施したガスケット12Aの変形例である。この変形例のガスケット12Aは図1の寸法δが零の場合である。この変形例では実質的に図1の場合と同様な構成および作用効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0028】
10‥‥シリンダヘッド
11‥‥ロッカカバー
12‥‥ガスケット
13‥‥外壁
14‥‥シリンダヘッドの取付部
15‥‥第1の部分
16‥‥第2の部分
17‥‥第3の部分
20‥‥ロッカカバーの取付部
21‥‥水平部分
22‥‥立上り部分
30‥‥主体部
31‥‥傾斜部
32‥‥上方部分
33‥‥第1の水平部分
34‥‥垂下部分
35‥‥第2の水平部分
36‥‥垂直部分
37‥‥第3の水平部分
38‥‥突出部分
A‥‥内側
B‥‥外側
C‥‥ボルト
F‥‥フランジ
G‥‥ガスケット(従来)
X、Y‥‥長手方向の辺
U、V‥‥幅方向の辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッド上にガスケットを介して取付けられるロッカカバーの取付構造において、そのシリンダヘッドの少なくとも長手方向の一辺にガスケットと係合する鈎状の係合部が設けられ、ロッカカバーのそのシリンダヘッドに対応する少なくとも一辺にガスケットと係合する鈎状の係合部が設けられ、そのガスケットは肉厚の主体部を有し、その主体部には前記ロッカカバーの係合部と係合する第1の係合部と前記シリンダヘッドの係合部と係合する第2の係合部とが一体に設けられていることを特徴とするロッカカバーの取付構造。
【請求項2】
シリンダヘッドの係合部の外壁に対しロッカカバーの係合部の立上り部分の外面との間に内外方向に長さが形成されている請求項1記載のロッカカバーの取付構造。
【請求項3】
シリンダヘッドおよびロッカカバーの長手方向の相対する2辺にそれぞれ係合部が設けられている請求項1記載のロッカカバーの取付構造。
【請求項4】
シリンダヘッドおよびロッカカバーの長手方向の相対する2辺と幅方向の一辺にそれぞれ係合部が設けられている請求項1記載のロッカカバーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112010(P2011−112010A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271031(P2009−271031)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】